小説かいてみます。まとめ

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1:猛 ◆BD7k:2009/07/02(木) 20:54

小説かいてみます。のまとめスレです。
小説かいてみます。というスレで書いた小説を読みやすくまとめたものです。

2:猛 ◆BD7k:2009/07/02(木) 20:56

『硝子と太陽』

●序章●

てらてらと灯りに照らされ、気味悪く反射するのは誰のものとも言えぬどす黒い血。
僕はその、おそらく自分の血も混ざっているであろう血を、床に横たわりながらうつろな目で見る。
そうしている間にも、僕の胸はどくどくと脈打ち、大量の血を溢れ出させている。

(ああ、僕は死ぬのか)



●序章2●

握った包丁からぽたぽたと床に滴り落ちる血。
自分の足下には、動かなくなった家の主達が大量の血を流しながら哀しそうなうつろ目をして横たわっていた。
どくんどくんと自分の心臓がいつもより一層速く脈打ち、まるで速く逃げろとでも言いたげだった。
俺はふらつく足で必死に身体を支えながら、金を詰め込んだ鞄を持ってその家を後にした。

(ああ、やってしまった)

自分の足音がやけに大きく聞こえて、自分を責めているように思えた。

3:猛 ◆BD7k:2009/07/02(木) 20:57

●第1章●

朝日ヶ丘大学第二学部四年、早乙女勇馬。
現在、科学研究会というサークルの部長をしていて、学校での成績も優秀で所謂“優等生”というもの。
ただしそれは「表向き」の自分であって、「本来」の自分ではない。

本当は、人を殺め金を奪った 殺人強盗犯 だと言うことは誰も知らないし知られる気もない。

俺があの夜、あの家族4人を殺してから三ヶ月は経っただろうか。
ニュースや新聞では・・・、凶悪な殺人強盗犯、被害者の自宅にあった大金を持ち逃走、未だ見つからず。
なんてことが報道されていた。
犯行に及んでしまった最初の一ヶ月間くらいは生きている心地が全くしなかった。

(いつ捕まるんだ、俺は。今日か、明日か・・・)

そんなことを考えて過ごしていたが、今になっては何ともなくなっていた。
ニュースでも新聞でも、次々と凶悪な犯罪が取り上げられ、俺のことは全然騒がれなくなっていたからだ。
ふと、トゥルルル・・・という携帯の鳴る音が部屋に響く。

「もしもし? 早乙女ですけ―・・・」
「あら、勇馬君? 勇馬君かしら!? 直海おばさんよ! 覚えてるー?」
「・・・・っはい、父のお姉さんでしたよね。 珍しいですね」

早乙女ですけど、と言い終わる前に聞き覚えのある甲高い大きな声が耳元で喋りだした。
あまりにも大きな声だったので耳が痛かったが、なんとか気を取り直し話を続ける。

「急にゴメンねェー? ちょっとお願いがあるのよっ、いいかしら?」
「はぁ・・・、内容にもよりますが・・・。 出来る限りは」

俺の言葉を聞いて、本当っ!?と歓びに満ちた声を上げる直海おばさんはきっと今、目が光ってるに違いない。
そのまま相づちをうちながら話を聞く。
暑いわね、とか。もうすぐ夏休みじゃない、とか。旦那と旅行に行くのよ、とか。
そんなことを一通り話した後、おばさんは本題にはいった。

「・・・―というわけなの」
「・・・・・夏休みの間ずっとですか?」
「ええ、お願いできる?」

俺は直海おばさんの言葉を疑った、まさか俺に・・・・・・・・・・・・。

(子守を押しつけてくるとは・・・)

4:猛 ◆BD7k:2009/07/02(木) 20:59

直海おばさんに子守の依頼を受けて数週間、夏休みになった。
昨日、直海おばさんが来て預けていった子供は、海常東学院という学院の中等部に所属しているらしい。
海常東学院は小学校から大学までエスカレーター式の学院で、ここいらじゃ至って珍しい学校だ。
それを電話越しに聞いたときは、一体どんな奴が来るんだろうかと期待に胸を寄せていた。
だが、昨日そいつの顔を見たとき俺は驚愕した。
直海おばさんが連れてきた子供は・・・・・・・・。

(他人のそら似どころじゃないだろ、“これ”は)

俺が数ヶ月前に殺した一家の子供に瓜二つだった。

「じゃぁ、この子よろしくね。夏休み分の生活費、この封筒に入ってるから」
「はい、確かにお預かりしました」
「ほら、挨拶しな。いとこの勇馬お兄さんよ」
「・・・・こっこんにちは、佐山一紀です」
「・・・っ!!」

・・・ーそれから24時間経った今まで、俺は生き地獄状態だった。
一紀が初対面の俺を見るときのおどおどしたような目が、怖がっているような目が、あの子供を連想させる。

(これは神から俺への嫌がらせか・・・っ!!)

「ゆ・・・勇馬さん、どうしたの? 元気ないね」
「・・・・・・ああ、問題ない。一紀、飯にするか?」
「うんっ・・・!」

一紀の顔をずっと晴れさせていれば、俺の罪が消えるような気がして成らない。


一紀を預かって約三週間、夏休みも後半にさしかかった。
相変わらず一紀の顔を見ると、あの夜のことが瞼の裏によみがえる。

「美味しいね、今度作り方教えてよ」
「・・・・・あ? ああ、今度な・・・」

いつもは一人で適当に軽くすませる食事も、一紀がいるので手を抜くわけにはいかず。
肉じゃがやシチュー、ハンバーグ等の時間のかかる料理をよく作るようになった。

(あの子供もこんな風に笑っていたのか・・・)

目の前で嬉しそうに飯をつつく“殺した子供の顔をした別の子供”。
俺は最初、“こいつ”と夏休み中やっていけると思わなかった。
また“こいつ”を殺してしまいそうだったからだ。

「勇馬さん、また元気ないね」
「いや、暑くて食欲があまりわかないだけだ。一紀は気にせず食え」
「・・・無理しないでね、しんどいなら」

一紀は良い奴だ、嫌いではない。

「大丈夫、しんどくないから」

ただ・・・・。

「そう?本当、無理しないでね」

(お前は俺が人殺しだと知ったら・・・、あの子供と“同じ顔”をするのか?)

5:猛 ◆BD7k:2009/07/02(木) 21:01

●第二章●

海常東学院・中等部一年、佐山一紀。
今は、小学校の頃から好きだったサッカー部の部員として活動中。

お母さんとお父さんが僕を置いて旅行に行くらしく、夏休み中いとこのお兄さんの家に預かられるようだ。
大学四年生で頭の良いしっかりした人だ、優しい人だから大丈夫だって言っていたけど。

(元気ないな・・・・、勇馬さん)

明らかに僕が来てから時折元気がなかったり、ボー・・・っとしてたりしている。
お母さんと話してるときは凄く元気そうだった、僕を“見て”から元気がない。

「元気ないね」
「・・・ああ、大丈夫だ。心配ない」
「そう?」

このやりとりばかり毎日繰り返す。

「しんどいの?」
「いや、食欲がないだけだ。しんどくないから」
「無理しないでね?」

さっきだってそうだった、勇馬さんは・・・・・・。

(時々僕のことを睨んだり、哀しそうな目でみたりしている気がする・・・)

僕はその目を、前に見たことがある気がする。



時刻は夜中の4時をまわったくらい、僕は未だに寝ていない。
ここ3日間くらいはこの調子で、寝不足な日々が続いている。

見たいテレビがあるとか。したいゲームがあるとか。宿題をやっているとか。
ただそんな、如何にも夜更かし中ですよ、みたいな理由で起きているワケではない。

(今日も、か・・・・)

勇馬さんはここ3日間くらい、何故か夜中になると起きてどこかに出かけてしまう。
僕は、勇馬さんのその行動が気になって起きていたのだ。

「・・・一紀、行ってくる・・・・」

本当は起きているけど、僕が寝ていると思っている勇馬さんは静かにそう言ってから出かける。

「いってらっしゃい、勇馬さん」

僕は勇馬さんが出て行ったドアに向かって呟き、静かに眠りに着いた。
これが、勇馬さんの行動を知ってからの日課になっていた。

6:猛 ◆BD7k:2009/07/02(木) 21:03


「勇馬さん、この問題の解き方教えてよ」
「・・・・ああ、ちょっと待ってくれ・・・」

ごろりと横になり、だらだらとしている目の前の大人。
忙しくもないのに、待ってくれだとか。後でとか。言い訳じみたことを口走る。

(こうもだらしない人だったかな・・・、勇馬さん・・・)

夜中に出かけているのは知っているし、そのせいで寝不足なのも知っている。
心配なのは確かだが、ここまで自堕落になってもらうとこっちまでそれが移ってしまいそうになる。

「・・・・寝不足ですか、よく休むといいですよ」

僕に背を向け、だらだらと寝そべっている大人に向かってそう言い放ち、外に出かける準備を始める。
勇馬さんは僕の言葉に反応し、先程と違う顔色で此方を見た。

「おい、一・・・・」
「散歩に行ってくる、二・三時間もすれば帰ってくるよ」

いってきます、と笑顔でそう言ってからドアの外へと出かける。
勇馬さんが何か言おうとしたが、聞く気はない。

(勇馬さん、相談でも何でもしてくれれば良いのに・・・)

僕は、彼を思うが故に突き放す。



うっすらと夏の澄んだ青い空が紅の色に滲んできた頃、少し涼しげな風が吹いていた。
僕は勇馬さん宅から、そう遠くない所にある自動販売機の前に居た。
ちゃりん、という小銭の落ちる音が自動販売機の中から微かに聞こえた。
音と共に自動販売機の下からひょっこりと顔を出したお気に入りのミックスジュースを手に取る。

(冷たい・・・・)

おもむろに小銭をもう一度自動販売機に入れ、ボタンを押す。
出て来たコーラを空いてる方の手で持ち、家路へと付く。

数分経った頃、前から見覚えのある人影が見えた。

「・・・・勇馬さん、迎えに来たの?」
「・・・・・いや、コーラでも買おうかと・・・」

勇馬さんはふい、と視線を少し僕から外して遠慮がちに言った。
素直じゃない人だと。嘘ばかり言う人だと。何も打ち明けてくれない人だと。秘密がある人だと。
僕は最近、この子供のように不器用な大人のことを理解しはじめた。
例えそれが氷山の小さな小さな一角だとしても、これから知ればいい。

「コーラ一つ余ってるから、一緒に一服しようよ」
「・・・ああ」

笑ってコーラを差し出すと、苦い笑いを浮かべて受け取る“大人”。

「一紀・・・・・大事な話が、あるんだ。聞いてくれるか?」

苦い笑いを浮かべたまま言う彼は、とても哀しげだった。

(あれ・・・、話してくれるのは・・・・嬉しいはずなのに・・・・)

風邪が一瞬とても痛かったのは気のせいだと思いたい。

7:猛 ◆BD7k:2009/07/02(木) 21:04

●第3章●

夏の暑い日差しが僕らの地上を焦がす頃、蝉はたった7日間の儚い命をもって生まれくる。
人間の長い一生と比べれば、とても短い一生だろう。
でも蝉はそう思ってはいないのではないだろうか、きっとそうだと僕は思う。

人間だって、同じようなものだろう?
亀や象と比べたら、人間なんて儚い命だもの。


「お世話になりました」

灰色に塗装を施された鉄の戸を押し開け、夜逃げでもするのかと言わんばかりの荷物を運び出す。
今の状況を大げさに言うとこんな感じ。
夏の生ぬるい風が、ほのかに秋の涼やかな風に変わる8月下旬。
夏休みがあと数日で終わるので、もう家に帰るのだ。

「また暇なときに遊びに来るね、勇馬さん」
「・・・ああ、“また”な」
「うん“また”、お母さんの車が下で待ってるからもう行くね」

重い荷物を背負い、手を振り階段を勢いよく駆け下りる。
階段を下り終わると、お母さんが笑顔で待っていた。

「一紀久しぶりね、勇馬君とは仲良くしてた?」
「うん、まぁね。お母さんが言うとおりいい人だったよ」
「そう」

お母さんとたわいもない会話をしながら、荷物を車内に放り込み自分も乗り込む。
エンジンがかかる重低音が頭に響き、車は勇馬さんのアパートから離れていく。

(・・・・・勇馬さん、大丈夫かな)

「あら、勇馬君が手振ってるわよ」
「え?・・・・・あっ」

バックミラーに映った手を振る勇馬さんの姿を目にして、直ぐさま窓を開け身を乗り出して振り返す。
それが夏休みに見た勇馬さんの最後の姿。


それから次に勇馬さんの姿を見たのはテレビに映った姿だった。

【早乙女勇馬容疑者・先日、殺人強盗犯として警察に自首】

そんな文字と共に。






初夏の厳しい日差しと共に風が吹き、大勢の蝉が大合唱を繰り広げる季節。
ある三十過ぎの男が刑務所から解放された。
それを迎えるは成人を迎えて間もない青年。

この二人は丁度“10年前”に、親しい関係になり友情を築いた二人である。

「おかえりなさい、勇馬さん」
「ああ、ただいま一紀・・・」

早乙女勇馬、10年前に“殺人”強盗犯として自首し、刑務所に送られた。
強盗を行い、人を死亡させた場合、「死刑」もしくは「無期懲役」。

なのに何故この男は生きているのか・・・・・・。

それは10年前の“あの時”に遡ることになる。

8:猛 ◆BD7k:2009/07/02(木) 21:05

○第4章○

「一紀・・・・・大事な話が、あるんだ。聞いてくれるか?」

苦い笑いを浮かべたまま言う彼は、とても哀しげだった。

(あれ・・・、話してくれるのは・・・・嬉しいはずなのに・・・・)

勇馬さんの哀しげなその表情が、愁いを帯びたその表情が、僕をも不安へと駆り立てる。
直ぐ目の付く場所にあったベンチに腰掛け、先程買ったミックスジュースのペットボトルを開ける。
それを見て、勇馬さんもコーラのペットボトルを開けると、炭酸の抜ける音がした。

「・・・・話って何なの?」
「実はな一紀、お前は俺の知ってるある子供にそっくりなんだ。瓜二つ、まるで一卵性の双子のように」

そっくりな子供。一卵性の双子。こんなことを言われても何が言いたいのか全く分からない。
僕には実は双子の兄弟が居た、みたいなおふざけのような話ではないだろうけど・・・。
兎に角黙って話の続きを聞くことにした。

「・・・・お前は3ヶ月ほど前にあった“強盗殺人”のニュースを知ってるか?」

(ゴウトウサツジン・・・・・、強盗、殺人・・・・・)

確か大人2人と子供2人が殺して金を奪ったというニュースを見た覚えがあった。
それに間違いないだろう。

「うん、知ってる。そのニュースがどうしたの?」

勇馬さんの愁い顔が、酷く今まで以上に悲しみと後悔に歪んでいくのが分かった。

「・・・・・・・・・・俺が、その犯人だと言ったらお前はどうする?」


僕は、心臓が止まるかと思った。


「嘘じゃ・・・・ない・・ん・・・だ・・・・?」
「ああ、嘘じゃない」

信じがたい真実をこんなにも急に突きつけられても、受け入れられないのが当たり前。
言われた瞬間は嘘だと思ったが、勇馬さんが嘘を言っているように見えなかったし、言うような人ではない。
兎に角今は言われるまま、聞かされるままに信じ、受け入れることにした。

「・・・・・・・・・軽蔑、しても構わないんだぞ?逃げてもいい、今すぐ通報しても・・・」
「ううん・・・・、今は勇馬さんの話の途中だから。続きを・・・聞かしてよ」
「分かった」

勇馬さんは何処か安心したような顔つきをしていた。
人殺しを許しているワケじゃないし、寧ろ軽蔑したい。
でも、何故か勇馬さんを軽蔑の眼差しで見ることも、心の中で蔑むことさえ出来なかった。

「その殺した家族の一人の子供がな、さっきお前に言ったお前にそっくりな子供なんだ。 
 お前を見たとき、お前と夏休みの間やっていけると思わなかった。
 ・・・・・・けど、お前と居ることで心が穏やかになってな、今お前にこうやって打ち明けることが出来た」
「・・・うん・・・」

勇馬さんは足下に送っていた視線を一旦此方に向けると、また直ぐに視線を足下に送り、話し始めた。

「それとな、さっきニュースを見ていたら、俺の事件の報道に間違いが発覚したというニュースが流れた」
「間違い??」
「ああ、“殺人”ではなかったそうだ。全員辛うじて生きていて、今では大分回復しているらしい・・・・。
 マスコミが早とちりしたらしい、病院側も何度か連絡を試みたがなかなか話が通じず、一旦諦めたそうだ。
 そのせいで、今更やっと間違いだったことが報道されたらしい・・・・」

絶望の先には光が見える、誰かが言っていた言葉は本当だったみたいだ。

「じゃあ、死刑にはー・・・・」
「・・・・ならないだろうな、おそらく」

9:猛 ◆BD7k:2009/07/02(木) 21:07


◆最終章◆

あれから幾度も夏が過ぎ、秋の色が覗いては直ぐに消え、寒さの冬が雪化粧を施し去って、芽生えの春が来た。
そして十回目の夏が来た今、この瞬間。
ぎらぎらと輝き照り続ける太陽の下、彼らは十年越しの再会を果たした。

「さぁ・・・・、一緒に行こうか。勇馬さん」
「・・・何処へ行くんだ?」
「獄卒祝いさ、僕はもう成人をとうに迎えてるんだ。祝杯、とでもいこうじゃないか」

夏はまだ始まったばかり。
僕らの生きるこの地を一番輝かしく照らす季節。
この空の下、二度と心が惑わぬように。闇にとらわれぬように。

「ありがとう、一紀」
「ん? 何か言ったかい? 勇馬さん」
「いや。・・・・・・・・太陽は、まぶしいな」
「夏だからね」
「違うさ、まぶしいのはー・・・・」
「?」

(一紀、お前は俺の太陽だ)

しっかり地を踏みしめ歩こう。

 ・END・
『硝子と太陽』作/猛

10:まかろん:2009/07/17(金) 12:56

読んでみましたぁ〜(^−^)/
てゆうか1日でこんなに書けるなんてスゴイ・・
私じゃ絶対ムリ(笑)


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