H-放課後I-いらないT-タイム!

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1:歩:2011/01/25(火) 18:26

けいおんの二次創作です。
ひたすら原作崩壊なので、耐性ない方は注意。
※欝小説です

2:歩:2011/01/25(火) 18:29

校門に鮮やかな桜が舞う4月。
平沢唯は、中学校を卒業して、「桜が丘女子高等学校」に入学した。
新しい紺の制服を身に纏い、心機一転、新しい生活に向かう彼女は、端から見れば大変初々しく、見る者を微笑ませるほどだったが、何故なんだか、当の彼女は、全く、それどころではない様な、重く沈んだ顔をしている。
顔つきは青く、冷や汗が絶え間なく流れ、目は泣いているのかいないのか、赤く染まり、周囲の様子を伺ってはビクビク身体を縮こませていたのである。
――何かしらの病気なのか?
と周囲から思わせる彼女の奇怪な姿勢は、おおよそ、他人からはその原因が掴みきれる様子もさらさらなかった。
いや、実はあった。何人かはなんとなく気づいていた。
しかしその原因は、あまり安易に人に喋るべきではなかったので、その気づいた何人の女子は、何も指摘せず、彼女を遠巻きに眺めながら、ただただ、友人と世間話を楽しんでいたのである。

3:歩:2011/01/25(火) 18:57

クラス分けが済んだ女子生徒達は教室に入った。
平沢唯は登校中以前から、前述の様子で体調が悪い。
他のクラスメイトにも話題の種になっていた。

「あの娘どうしたんだろうね? なんか具合悪そう」
「関わらない方がいいって」
「でも、なんか結構美人じゃん。ちょっと行ってみない?」
「やめなって」
「……なんか、あんなの街でたまに見るよ」
「え?」
「なんか凄いぎこちなくてさ、気持ち悪いヤツ、挙動不審な……」
「人混みが怖いんじゃないの」
「……」
「あー……」

少女達は黙り込む。
平沢唯は机につっ伏している。
耳では、絶えず周囲の様子を伺い、他人の会話に聞き耳を立てている。

「……」
(……怖いよ……頑張って登校するって……朝決めたのに。もうやだよ……帰りたい……)

平沢唯は震えていた。
対人恐怖症だった。
酷く怯えた平沢唯は、一刻でも早い帰宅を願っている。

次第次第、教室にも新しい登校生が増えてきた。
窓際で、黒板前で親しいグループを作り、適当な世間話を語りだしす。
――当然、平沢唯の耳にも飛び込んでくる。

「……」
(やっぱり笑われてるんだろうな。……変だもん、私。
「……」
(嫌だよ、入学初日イジメになんか遭いたくないよ)

度々女子生徒が笑う。
他愛ない笑い話だ。
その笑い声を聞くたび、平沢唯は――私の容姿がおかしいから。と一人、心を痛めていた。

4:歩:2011/01/25(火) 19:24

「……」

妙に胸が苦しくなった。
三半規管が捻れたような、地に足がつかないような。
身体全体がフワフワして、おぼつかない。
血の気がサッと引いていく。

(――あの娘、キモくない?)
(――1人で被害妄想ぶって、自意識過剰なんだよブス)

平沢唯の耳に飛び込んできた。
実際、言われているか、被害妄想の幻聴なのか、本人にも区別はつかない。
ただただ耳を傾ける。

(――さっさと帰れよ)
(――元不登校児ってヤツ? 人間以下じゃん)

平沢唯は無性に悲しくなる。
充血した目から、小さく涙がこぼれた。

(……馬鹿馬鹿しい)

心の何処かでそう思っている。
けれど何故だか、教室にいる全員が、自分を攻撃している様に感じている。

耐えきれなくなってきた。

5:歩:2011/01/25(火) 19:47

「……うえッ」

ゲボゲボゲボ、――粘りッこい衝撃音がクラスに響いた。
吐いたのである。
土色の嘔吐の中には、朝食と思われる、グズグスになったパンの切れ端、白く濁った牛乳などが異臭を放つ。

脊髄反射の様だった。
女子が「ひっ」やら「ぎゃっ」やらの悲鳴を上げ、飛び上がると、続く様に他生徒からも、絶叫が響いく。

教室中、阿鼻叫喚になった。
寄生飛び交う中、周囲の生徒は急いで自分の机を避難させる。
皆、教室の隅に避難する。
――端から「気持ち悪い」だの「死ね」だの、平沢唯を叩く陰口がボツボツ、聞こえ始めた。

唯は頭が真っ白になった。
パニック状態である。
とにかく、この場からすぐにでも逃げだしたくて、嘔吐だらけの上履きのまま、教室を飛び出た。

背後から「待てよッ」と怒声が飛んだが、唯の頭には入って来なかった。

6:歩:2011/01/25(火) 21:34

唯は不登校児であった。

小学生時代からイジメに遭い、中学校は三年間殆ど登校していなかった。
幸いにも担任の先生が非常に世話を焼いてくれて、マメに教材を自宅に届けてくれるなどして、どうにか高校受験に合格できる程度の勉強を受ける事は出来ている。

――が、長らく人と接していなかった唯には、自分への劣等感や羞恥心、イジメのトラウマなどで、他人と日常生活を営める協調性を失っていたのだった。

それでも自分が嘔吐するとは、予想外で、
(――ただ教室で待機する事もできないなんて)
と、酷く自分を責めながら、唯は廊下を駆け抜け、逃げ隠れるような形でトイレに引き籠もった。

「……」

バタンと扉を強い力で閉める。
そのまま力が抜け、崩れるように、体育座りのまま黙り込んでしまった。

7:歩:2011/01/26(水) 02:09

(……初日から、こんなの、嘘)
茫然自失。唯はただただ腕に顔を埋め、嗚咽を噛み堪えている。

(夢だ。夢、……夢だったらいいのに)
頭が濁って何も考えられない。
涙が溢れてくる。
人並みの事もこなせない自分に、ただただ呆れるような、蔑むような、憐むような、不思議かつ、凍りついた感情が、次々に自分を責めてくる。

(情けない。悪口なんか、言われてないのに。自意識過剰だよ。このクズ。ブサイク。引きこもり。気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。死ね。死んじゃえ、私なんか)

「……ひっ」
噛み閉めた口から声が漏れた。
肺に詰まった物が込み上げてくるように、嗚咽は喉へとせりあがってくる。
堪らず、唯は泣き叫ぼうとした。
「……くっ、ひっ、ひっ」

はっ、と唯は耳を澄ました。
自分ではない、他の誰かの嗚咽が聞こえたのだ。

気配を凝らし、唯は周囲に意識をそばだてる。

「澪、大丈夫か?」

(……声だ。女の人の声)
唯の隣の個室だった。
嗚咽を漏らした女生徒とは違う、もう1人の声。
2人連れ添って、トイレに来ているらしい。

「よく頑張ったな。無理に登校させてごめんな、もう帰ろ? 私も一緒に、行ってあげるから」
「……うん、うん」

(……泣いてる?)
方一方が方一方を慰めているらしい。
その娘は絶えず、ひく、ひくと嗚咽を出しながら、やがて、連れ添いの女の子につられてか、ギイ、とトイレの扉を開き、やがて廊下へとゆっくり歩いて行った。
その足音は、随分力なく思えた。

8:歩:2011/01/26(水) 06:52

やがて、入れ違う様にして。

「おーい、平沢。大丈夫か?」
男性の声が唯を呼んだ。
担任の教師だろうと、すぐに察しがついた。
教室での異変を誰かが伝えたか、唯の様子を案じて、探しに来たのだろう。

(……)
唯は応えなかった。
(嫌だ。恥ずかしい)

羞恥心で返事が出来なかった。
やり過ごせるわけもないが、唯は黙り込む。

「誰もいないよなー?」
担任教師は、唯以外の生徒がいないかを確認し、女子トイレに入り込んだ。
やがて、ドアの前に立ち、此方をノックする。
そのまま唯に話し掛けた。

「大丈夫か? 平沢」
「……」
「事情は知ってるんだ、先生。お前の中学の先生と知り合いでな」
「……」

「このまま保健室に行こう。人目につかないようにするし、身体の様子だけ見て、もう今日は帰宅していいから」

温厚に語りかけてくる先生に、唯は少しだけ安心した。
用心しながらも、トイレの鍵を明け、少しづつ、ドアを開ける。

「顔色はマシじゃないか。良かった良かった」
「……ごめんなさい」

消え入りそうな小さい声で、呟くように唯は謝った。
教師は笑顔を保ち、気にしない容姿で、で唯の肩を叩く。

「初日はな。大変だろうけど、慣れる様に頑張れよ」
「……はい」

唯は教師の優しさに感じいった。
しかし、心の奥底のどこかで、
――仕事だから私に優しくしてるんだろうな。
と、疑心暗鬼を抱き、そんな自分を
――親切を疑うなんて、最低だ。私。
と、自己嫌悪に陥りもした。


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