SSもどき置き場

葉っぱ天国 > 小説 > スレ一覧 [書き込む] Twitter シェアする? ▼下へ
1:かふかにゃふたー ◆rSJ.:2011/03/21(月) 19:59

その名のとおり。

ぐだぐだとか意味不明なのもあるかと思われますが生暖かい目で見てやってください。
誤字などは脳内互換でお願いいたします。

2:かふかにゃふたー ◆rSJ.:2011/03/21(月) 20:00

「自殺志願の大魔女と世間を揺るがす大盗賊」


 ――これは、大都市ルルイエの神殿に封じられ続けているというかつての大魔女「ク・リトル・リトル」と。
大都市ルルイエにて様々な悪事を続ける大盗賊「ニャルラトテップ」の、旅が始まる前の出会いの物語である。


――

 鎖に繋がれて座らされた、首までの水位の水の中に佇む少女。外見は十代後半といった程度の、曖昧な推測から判断された外見。俯いたままのその少女の名は、かつて世を恐れさせた大魔女「クトゥルフ」の抜け殻、自殺志願の魔女「ク・リトル・リトル」。鎖に繋がれ、風ひとつ通すこともない神殿に封じ込まれ、長い日々が過ぎて弱体化してしまったが故にその風貌、その名を持っている、否、持たされている。
「――――……――」
 掠れた声で少女が何かを呟いた。しかしそれは、水滴が滴り落ちる音に掻き消されてしまった。彼女が何を伝えたいのかはわからない。しかし、恐らくだが彼女はここから出してほしいのだろう。俯いてよく見えない顔から首筋へと、涙が伝っていた。彼女は大魔女であったその時も、死ぬほどまでに苦しい時、深い悲しみ以外に涙を流したことなんて無かったからである。それ程苦しいのか、はたまた悲しいのだろう。外に出られない、その苦しみと悲しみ。
 ――ひゅう、と一つの風が入り込んできた。この場所に、風が入る事等有り得ないというのに。そしてその風音のすぐ後に、足音がした。ぺたぺたと、サンダルを鳴らすような足音。その足音の主らしき人物の、混沌とした夜空のように黒い影が、すっとク・リトル・リトルの身体にかかる。
「……よぉ、大魔女さんよ」
 言葉遣いからして、男と推測できた。ク・リトル・リトルを繋ぐ鎖の側に設置された炎の明かりが、その人物を照らし出す。……そしてその人物がすぐに、男と断定できた。外見からして、十代後半から二十代前半といった所だ。
 彼の名は、「ニャルラトテップ」。世間を大きく騒がせた大盗賊、ニャルラトテップである。這い寄る混沌と謳われる大盗賊。その彼がク・リトル・リトルにわざわざ神殿の厳しい守りを掻い潜ってまでやってきた理由は一つ。
ク・リトル・リトルの力を借り、この世の全てを盗もうと企んでいた。ただそれだけであり、しかしそれ以上は無い理由である。しかしかつての大魔女クトゥルフではなく、その抜け殻と化しているク・リトル・リトルをまじまじと見つめたニャルラトテップは、残念そうに溜息を吐いた。
 ――が、その後すぐにク・リトル・リトルの鎖を短剣フランベルジェで断ち切る。元から水のせいで錆びていたせいだろう、すぐにその鎖は崩れ去るように切る事が出来た。その事にク・リトル・リトルは気づいたらしく何十年振りかに顔を上げれば、ニャルラトテップを見つめる。
「…………」
 その瞳は、感謝の念がこもっていた。はっきりとそれが分かる程に、その瞳は明るかった。その様子を見つめたニャルラトテップは、「礼なんぞいらねぇからついてこい」とだけ言うとク・リトル・リトルの手を引いて外へと向かう。彼が考えるに、外の世界でまた魔法を使っていけば、最初は弱くとも後からかつてのような魔法を操れるのではないかと考えたのだ。だからこうして、手を引いている少女を見捨てることなく外へと連れ出しているのである。
 ――外の世界を何十年振りかに見た少女は、その眩しさに片目を瞑り。
 ――外の世界を知りつくしたその大盗賊は、その広大さに大きく笑い。
「……よし、旅に出るぞ」
「…………?」
 少女はその言葉に頭上にクエスチョンマークを浮かべていたが、それもつかの間。ひょいっと大盗賊に抱きかかえられ、神殿の入り口に居た大盗賊の愛馬「アザトース」に大盗賊が乗った瞬間、その後ろに乗らされ「しっかり捉まってろよ」と言われると、ぎゅっと大盗賊の服を強く掴む。
そして大盗賊が馬の鞭を軽く叩くと、アザトースは大きく鳴いた後勢いよく走りだした。


 大都市を、馬と馬に乗った二人の少年少女が駆け抜けた。
 片方は、世間を揺るがし続ける大盗賊の大悪党。
 片方は、かつて世界を脅かした偉大なる大魔女。


   ―fin―

3:全自動不良品:2011/03/22(火) 01:22

あのこれ、続きとかってえ。いや、あのー……あのあのー、続編とかあ。
ええとお、あのお……気になるっていうかあ、うーん、続きがあ、あのー……
はっはっは……なんていうかあ、そのお……


これの続編予定とかってないんですか!!!!11111

4:かふかにゃふたー ◆rSJ.:2011/03/22(火) 14:48

続編予定はわかりませんのう。ほっほっほ。
書くとなったらお知らせをここにしますが、細かい設定考えるのに時間かかりますな。
クトゥルフ神話の関係を多少扱いますね。
そんなに続編が気になる作品を書けて作者の自分としては幸いですねぇ。


追記.自分の作品は文学作品ではなく、ちょっとしたライトノベルとして暇潰し程度に見てくださると嬉いです。
自分も同じような感覚でSSやら小説やらを書いておりますので。
そして話が早めに完結してしまったら2シーズンがあると思ってくださいな。

5:かふかにゃふたー ◆rSJ.:2011/03/27(日) 18:34

 もしも、今目の前のキミに足があったら一緒にこの部屋から見える、すぐ近くの公園で思いっきり走って、遊べるのにね。片足でも、無くしちゃうと走れなくなっちゃうんだね。ごめんなさい。でも、そんなキミも大好きだよ。だって、――してるから。キミはそんなこと気にしないでいいよって言ってくれたけど、それでもわたしはキミが心配なんだよ。
 もしも、今目の前のキミに腕があったら手を握ることが出来たのにね。右腕だけじゃ満足できないよ、左腕とも一緒に握手したいよ。しっかり腕があるのに、きみを抱きしめたいのに、きみに抱きしめてもらうことしか出来ないよ、凄く悲しいよ、それなのにきみは抱きしめてくれない。でもわたしは、そんなキミが大好き。どんなに変わってしまっても、――してるもん。こんなままでも、ずっとずうっと、大好きでいるから、きみをずっと大好きで居たいんだ。
 もしも、今目の前のキミに耳があったらこの声を聞かせてあげられるのに。どうしてキミの耳はすぐ取れちゃうの? わたしの声を聞いてよ。キミは喋ってくれないよね。なんでだろう。キミはどうして喋らないのかな? 前から無口だったけど。よりいっそう、無口になっちゃった。そしてどんどん、キミの体はぼろぼろになっていってしまうね。針で縫った後が、いっぱいあるよ。
 もしも、今目の前のキミに瞳があったらわたしを見てくれるのにね。きみは見てくれなくなってしまった、きみが――している人が、ここに居るのに。キミは本当に、何もできなくなっちゃったね。キミはずっと表情を変えない。きみはずっとこっちを見てくれない。
 ――もしもキミに心があったらこの好きで包んであげられるのに。キミは喋ってくれない、キミは表情を変えてくれない、キミはわたしが見えない。こんな悲しいこと、ないよ。キミはいつから、わたしを嫌っちゃったの? きみはいつから、一人で居るようになってしまったの? ここに居るよ。居るんだよ。だからお願い、見てちょうだい。
 ……もしもきみに心があったら、この――で包んであげられるのに。きみはもう、見てくれないのかな。一人ぼっちは悲しいよ、どうしてきみは、きみは。
「ねえ、こっちを見てよ、お願い」そう言っても、きみは無視する。なんで、なんできみは。こんなに悲しいのに、なんでキミはわたしに喋ってくれないの、わたしを慰めてくれないの。とってもとっても、悲しいよ。……こんなに、――してるのに。
「――してるのに、キミはわたしを見てくれない」そう嘆くけれど、キミは喋ってくれない。きみっていう、――してる人に嫌われるって、悲しいな。こんなに、こんなに、――しているんだよ、けれどキミはなぁんにも、反応してくれない。どうしよう、こうしよう、そうしよう、そんな心中会議。でもそれは聞こえのいい自己淘汰。でも、しょうがないよ。きみはこっちを見てくれないんだもん。だからね、思うんだ。

 ――もしも××に××があったら。


  ―fin―

6:かふかにゃふたー ◆rSJ.:2011/03/28(月) 18:19

遅ればせながらあとがき。
解釈モノかな。一応ジャンルとしては――とやらがつくのかな。
よく読んでも読まなくても解釈は成立するのかな。
ある曲イメージしたらこうなった結果。やっちゃったんだぜ。

作者の解釈もありますがね。書いているうちに、それイメージして書いてしまったような。

では。

7:かふかにゃふたー ◆rSJ.:2011/03/29(火) 11:58



 ――これは、かの大魔女「クトゥルフ」の娘と兄弟の。
一つの物語。世間を揺るがす大盗賊と、世界を脅かす大魔女が旅立ったその時に紡がれていた、物語である。


――

 壁の四つのランプに灯された火が燃え盛る洞窟の中。小さなスペースにある大きな書斎の椅子に、「黄衣の王」こと「ハスター」は腰掛けていた。ようやく、一仕事が終わったかのように。かつては偉大な錬金術師であり、様々な魔女や魔法使いの手助けをしてきた彼は金と権力に困らなかった。しかしそんな彼が、何故こんな洞窟に住んでいるかというと――彼の妹、かの大魔女クトゥルフと因縁があったからである。だから彼は、母以外の魔女を、魔法使いを嫌い、その仕事をしなくなったからだ。――在りし日、クトゥルフとハスターはいがみ合うこともなく、ただ単に仲の良い兄妹であり、その二人の弟「ヴルトゥーム」とも仲睦まじい関係にあった。しかしある日、クトゥルフが世界を支配出来る程の力を持ち、まず兄を殺そうとしたのが始まりだった。ハスターの義妹であるクトゥルフは、ハスターを義兄だと知らなかった。ハスターもまた、同じようにそれを知らなかった。血の繋がらぬ兄妹だとわからぬまま、二人はいがみ合うことになってしまった。血が繋がっていることがわかれば、ハスターも安易にその縁を断ち切る事が出来、因縁を生み出すことにはならなかったのだ。
「お兄様、私の愛しいお兄様。どうか私に栄光をくださいませんか」クトゥルフはそう言えば、ハスターはあっさりと了承した。妹のことならば、なんでもやってみせようと。母親もまた偉大な大魔女だった。だから妹にもそのように立派になってほしかったからだといえる。しかしそれが、因縁を作り出した一番の原因でもあった。ハスターの了承を聞けば、クトゥルフは直ぐハスターの首に手をかける。ハスターの蒼白の仮面を取って、床に投げ捨て。大きな屋敷の大理石の床にその仮面が転がれば、ハスターは目を見開き驚いた後、直ぐ首を絞められて苦痛に顔を歪ませる。それを見、クトゥルフがとても満足そうに、嬉しそうに、愛らしい笑みを浮かべる。「嗚呼お兄様、貴方はとてもお優しいのですね。嗚呼お兄様、愛しています」クトゥルフがそう言えば、彼の首から手を離す。突然のクトゥルフの行動に驚くも、彼は悲しみも覚えず、憎しみの心を覚えるだけだった。ハスターがその状態から解放されるも、床に仰向けになって転がった。クトゥルフはその状態の彼の上に乗り、懐から取り出したナイフで彼を刺そうとするが――。
 その兄妹の弟、花遣いのヴルトゥームがそれを目撃していた。彼は驚いたかと思えば、直ぐ泣き出しそうになる。自分の愛する兄と姉が、クトゥルフの一方的な攻撃ながらも殺し合っていたのだから。彼が大声で泣けば、二人は慌てて弟に駆け寄り、クトゥルフは弟を抱き締め、ハスターはその頭を撫でる。そしてヴルトゥームが二人に謝る様に泣きながら願えば、二人は和解する。――正確には、和解したフリを。表面上で和解し。お互い心の中ではまだ憎み合う。ヴルトゥームはまだ幼かった為か二人が完全に和解したように見え、このような事態は二度と起こらないと思っていた。そして花の様に無垢な少年は、後に事実を知り心が歪んでしまうことになる。
 ――ハスターがこの洞窟に住んでいるのは、以上の様に因縁の所為。水と風は元々対なる者同士。水の象徴の大魔女と、風の象徴の錬金術師がここまで仲が良かったのがおかしいぐらいだと、彼らは言われていた。
「…………そろそろ、だな。我が弟がやって来るのは」ハスターがそう呟いた。蒼白の面を顔につけ、書斎の椅子に腰掛けたままハスターは書斎の真後ろ――自分の後ろにある本棚の本を眺める。何か、暇潰しに良さそうな本は無いかと。しかしいくら眺めてもそのような本は見つからず、溜息を吐くと書斎の机に広げてあった紙を見つめる。書きかけの手紙。――かつて、妹に贈ろうとしていた手紙を。

8:かふかにゃふたー ◆rSJ.:2011/03/29(火) 11:58


 彼が暇を持て余していれば、洞窟の入り口に設置したドアのノック音が聞こえた。誰だろうかは予想出来ている。弟のヴルトゥームだろう。滅多に人が尋ねることのないこの洞窟に、久しぶりの来客が来るのだから。妹は憎くても、弟は可愛いのだろう。自分達が殺し合っていたことにあんなに泣いてくれたのだから。――それも昔のことで、今はすっかり変わってしまったが、それでも兄である自分を敬ってくれている。それだけのことなのに、ハスターは喜びを覚えるのだ。ドアに向かい、そのドアを開ける。
「やあ、兄様。元気だったかな。お邪魔させてもらうよ」なんて言いながら、昔の幼い姿とは打って変わって成長し、背が高く整った顔立ちの少年が洞窟に入る。その後ろには、美しい容姿の少女が居て。ハスターは二人を迎え入れる。その少女の方は、自分の憎きクトゥルフの愛娘であることに気づくも、何も言わない。手も出さない。例え憎き大魔女の愛娘であろうが、その人物に罪は無いのだから。例え自分の弟と婚約していても、何も咎めはしない。弟がその少女を選んだだけなのだ。弟には幸せになってほしい。だから婚約を許すのだ。「……よく来たな、とりあえずそのソファに腰掛けてくれ」ハスターが素っ気なくそんな言葉を放てば二人はそれに従い、書斎のすぐそばのソファに腰掛ける。ありがとう、と二人は口を揃えて。
「――それで兄様、ぼくがここに来たことなんだけど……」
「ああ、わかっている。……ニャルラトテップの悪事のことだろう? それなら、そこの本棚に一冊だけある金色の表紙の本にまとめてある」
「ありがとう、兄様」
 そんな会話を交わせば、その金色の表紙の本を本棚から取り出し、内容を読む。気になる文章をよく読み込み、記憶にしっかりと刻み込む。読む事数分をかけ。その本を本棚に戻し。ソファに腰掛け、疲れたように溜息を吐くと「いい情報が見つかった。ありがとう兄様」と言い、ハスターに向けて笑う。花遣いの隣の少女――クトゥルフの愛娘、「秘密の姫」こと「クティーラ」は無言のまま。――彼女はあまり喋らない。母親はよく喋る方ではあったが、それの真逆のようだ。
「……さて、兄様。ニャルラトテップを殺す為、そろそろクトゥグアの封印が解かれるらしいよ。なんでもニャルラは次の盗みのターゲットを――『クトゥルフ』に変えたからね。今は弱っているだろうけど、すぐクトゥルフの力は戻ってしまいそうだから重大な問題だ」
「そうか……。クトゥグアの封印地は確か、ン・カイか。あそこのツァトゥグアが指揮官になって封印を解いているのか……」
「大当たりさ。……ねえ兄様、それにクティーラ。もしクトゥルフが蘇ったら、何をするんだい?」
ヴルトゥームがそう尋ねる。するとハスターは「私はアイツを殺しに行く」と言えば、書斎に置いてあった珈琲を飲み。クティーラは少し戸惑ったように「え、えと……、……お礼と挨拶を言いに行きたいです。『産んでくれてありがとう、お母様』って。そして貴方を紹介して、『私の婚約者ですよ、お母様』って、……言いたいです」純粋な気持ちで、純粋無垢で潔白な心を持った彼女はそう言った。苦笑いをしながら、頬を少し掻き。そしてすぐ苦笑いは満面の笑みへと変わり。「……そうか。二人共意見が別れてるね。……ぼくは姉さんに、花束をプレゼントしてあげたいな」なんて彼が言えば、クティーラとハスターが笑う。捻くれていた彼にも、こんな子供らしい一面があるのだと。二人に笑われた花遣いは少し顔を赤くさせ、自分も笑う。珍しく、兄が笑ってくれたことに喜びと嬉しさを感じながら、「おかしいかな」なんて呟いてまた笑い。

9:かふかにゃふたー ◆rSJ.:2011/03/29(火) 11:59


 そしてそんな穏やかな雰囲気を打ち消すように、ランプに燃え盛っていた火が消える。そして、強烈な念力が彼ら三人を襲う。テレパシーだろう。そしてこの事を一番理解していたのは――。
「拙い、お母様の封印がッ……!!」
クティーラだった。クトゥルフの娘であるが故に、一番早く気付けたのだろう。その言葉にやや焦りつつ、ハスターが口を開く。「……かなり強い。死者が出るレベルだな、これは」なんて平然そうに言うも、蒼白の仮面を外して眉を顰める。どこか苛立った様な声色で、「……あの野郎が」と呟くと花遣いと秘密の姫に駆け寄り、二人を心配したような言葉をかけると「……ぼくは大丈夫だったよ。それよりクティーラは……?」クティーラのことを気遣えば、クティーラがヴルトゥームに向けて口を開く。ゆっくりと。「私は大丈夫でした……。……お母様の娘だからでしょうか、テレパシーに何も……」やや震えた口調でそう言った彼女の頭を優しく花遣いの少年が撫でる。慰める様に抱き締めて相手の頭を撫で、黄衣の王へ向けて口を開く。「兄様、クトゥグアの封印を解く手伝いに行こう!!」真剣な表情でヴルトゥームが言うと、ハスターも頷き蒼白の仮面を顔につけ、その黄衣を吹き込んで来た隙間風に靡かせながら「ああ、行くとするか。……そのまま行けるようだろうから、すぐ行くぞ」ハスターの言葉に深くヴルトゥームが頷くと、クティーラの手を引き既に外に向かったハスターの後を追う。外に出ると、洞窟の中の暗さと打って変わった明るい空に眩しそうに目を細めた後、ハスターが用意していた馬車に乗り込み。ハスターが二人が乗車したのを確認すると、鞭を打って馬を走らせる。けたたましい声をあげた馬は早いスピードで走って行き、砂漠を駆け抜ける。クトゥグアの封印されるン・カイへ向けて。
 その砂漠を、違う方向ながらもそのかつての大魔女と、世間を揺るがす大盗賊がアザトースという馬に乗って駆けていることも知らずに。ルルイエからとうに逃げたその二人は、今もまだ逃げ続けているのだろう。


 大砂漠を、馬と馬車に乗った三人が駆けた。
 一人は、かつての偉大なる錬金術師の黄衣の王。
 一人は、捻くれながらも純粋な心を持つ花遣い。
 一人は、かつての大魔女の愛娘である秘密の姫。


  ―fin―

10:かふかにゃふたー ◆rSJ.:2011/03/30(水) 00:44

あとがき。

魔女盗の続きかいてみました。
なんか前より台詞が多くなってしまったことを後悔。
なんとなくそこそこいい出来になったとは思ってます。




次回案構想。
ボーカロイド曲をベースに二次創作予定です。

11:かふかにゃふたー ◆rSJ.:2011/04/04(月) 02:55



「――ゆーくん、殺してあげる」

 そう言って、肩までの茶髪に茶色い瞳を持っている袖無しで黒いフリルが装飾された可愛らしいワンピースを着た、黒いサイハイソックスと茶色いローファーを履いている少女はぼくの目の前に現れた。
今亡き最愛の少女がぼくを呼ぶ時と同じ呼び方で。――今はもう名前を忘れてしまったけど。そしてぼくは突然その少女がぼくの部屋に現れたことと、その名前で呼ぶことに驚いてぼくは目を見開く。
その様子がおかしいのか、目の前の少女は「ふふっ」と笑う。その様子を見たぼくは一回深呼吸をして落ち着くと、目の前の少女に「きみは誰だい?」と問いかける。
すると「私はね、人殺しのカミサマだよ」と返って来た。人殺しのカミサマなんて聞いたことないがぼくはリスカ大好き自殺志願少年なので、是非とも殺してほしいと一瞬思った。
生まれてこれなかった命に申し訳ないが、生きたくても生きれない人達に申し訳ないが、それでもぼくは死にたいのだ。何処へ行っても、ぼくには何も無い。
家族だって失ってしまった。最愛の少女だって失ってしまった。だからぼくは、目の前のカミサマに縋り付く。

「――ええ、どうかぼくを殺して下さい」

 と。ぼくは泣いて縋り付く様に、目の前のカミサマを抱き締めてそう言った。カミサマは、ふんわりと優しく笑むとぼくの唇に、自分の唇を重ねる。
そしてカミサマはぼくに「どんな殺し方がいいの?」と尋ねて来た。ぼくはその言葉に返事をせず、少し考えた後。口を開く。

「――きみと一緒に、この世界を殺しに旅をしたい。この世界を殺した後、ぼくは君に殺されたい。……それじゃあ駄目かな?」
「……ううん、全然平気。むしろとっても素敵。……それじゃあ、世界を殺しに行きましょう」

 彼女のそんな言葉を聞いた後、ぼくは自分の部屋には居なかった。居た場所は自分の家の前で、右手に握られたカッターナイフと、カプセル薬の入った瓶とそれを飲むための水が入ったショルダーバッグを肩からかけて、左手ではカミサマの手を握っていた。
ぼくはカミサマに向けて少し笑む。カミサマはそれに微笑み返す。ぼく達は歩み出す。カミサマは嬉しそうにぼくの隣を歩いている。

12:かふかにゃふたー ◆rSJ.:2011/04/04(月) 02:56

その姿に、ふと涙がこぼれた。何故なのか、言えるもんか。ぼくは立ち止まり、涙を拭おうとするけれど――カミサマは心配そうに、ぼくの顔を覗き込む。
そのカミサマの仕草や、全てが。愛おしくて、愛おし過ぎて、ぼくはカミサマを抱き締めた。カミサマは少し驚いていたけど、すぐにぼくの頭を撫でてくれた。
ぼくは、寂しかった。家族も今亡き最愛の少女も居なくなってから、誰もぼくをわかってくれないと思っていた。ぼくは学校でも孤独で、いじめられていた。だから、人の温もりが恋しくて、落ち着く為だけではなくて、誰かに構ってほしくて、リストカットをしていた。だけど、今はもう救われたような気がするんだ。
目の前の、カミサマに。カミサマはそっと、ぼくの耳元で囁いた。

「……ゆーくん、もう貴方をいじめる人は居ないよ。ゆーくん、もう貴方は独りぼっちじゃないよ。ゆーくん、私は、ここに生きてるよ」
「っ、……カミサマ……、……そうじゃない……、……まーちゃん……!!」
「そうだよ、……嘘吐いててごめんね、私は、……まーちゃんだよ、……まりあだよ。……ユウ、ゆーくん」

 ――会いたかった。ようやく、会えた。まーちゃん、まりあ。忘れていた、ぼくの名前も思い出した。ぼくの名前は御崎ユウで、目の前の子は観崎まりあ。ぼくの苗字はみさきで、まりあの苗字はみざき。そう、ちゃんと、――まるで埃の積もった絵画の埃を全て吹き飛ばしたように、鮮明に思い出せた。――これからは、ぼくはまた、生きて行けるかもしれない。ぼくはまーちゃんからそっと離れる。ぼくは彼女を本名では呼ばない。まーちゃんと呼ぶ方が、何故か安心するから。それに、まーちゃんもその呼び方を気に入っているから。

「……まーちゃん、ぼくはもう、きみに殺してもらおうとは思わない。……だから、一つ我侭を言っていいかな……」
「なぁに? 一つだけなら、なんでも叶えてあげるよ、ゆーくん」
「ありがとう。それじゃあ、言うよ。――お願いだから、ずっと側に居て欲しい。……駄目、かな……?」
「……ううん、いいよ。ずっとずっと、一緒に、――側に居てあげる」

 まーちゃんはそう言うと、天使の様に微笑んで、ぼくの唇に、自分の唇を重ねた。
 それは深く深く、とても甘い口付けだった。
 そしてまーちゃんとぼくは、口を揃えて。


『愛してるよ』


書き込む 最新10 サイトマップ