制御室

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1:工場長:2011/05/09(月) 17:30

身寄りも無く、職も無く、金も無く、頭も悪く、友達も恋人もいない、人見知りで臆病な俺は
犯罪に手を染める勇気も無く、自殺する勇気も無く、ただフラフラと町を歩いていた。
もう歩くのも限界だった。4日間何も食べていない。しかし、誰かに助けを求める事も俺にはできない。
もう限界だ死のう。どこか高い所から飛び降りてバラバラになろう。
俺は住宅街を歩き続け、どこか高い所は無いかと辺りを見回す。しかし高い場所など無かった。
「…神は…このまま餓死しろと言うのか…俺に楽な死を与えてさえくれないのか…」
もう無理だ歩けない。もう疲れた。人生、辞めたい。俺は最後の力を振り絞り、3メートル先の空地に向かった。
あそこの草むらなら、誰にも発見されずに静かな最後を迎えられるだろう。
真夏の暑い陽射しを受けながら3メートルの距離を2分かけて歩き、草むらに飛び込んだ。
しかし草むらに入ってすぐ、草むらに入ったことを後悔した。目の前に気持ち悪い虫が沢山いて、俺に近づいて来る。
「うわぁあああ」
俺は空地を出た。空地を再度見る。虫は追って来ないようだ。
「どうしたらいいんだ…」
しかしもう、空地しかない。空地に答えを求めるかのように、空地を見渡すが何も無い。
再度見渡すが、やはり何もない。あの気持ち悪い虫がいる草むらに飛び込むしかないのか…。
最後にもう一回空地を見渡す。すると、空地の真ん中に妙なものが見えた。
夏の暑い日のため陽炎かと思っていたそれは、縦2メートル横1.5メートル程の長方形の半透明な何かだった。
虫に構わず草むらに入り、謎の物体に近づいていく。
透明な何かは、地面から50cm程浮かんでいた。?何だろう?。
触れてみる。何で作られているのか…触ったことのない感触に謎が深まる。
しかし、その謎もすぐに解けてしまった。
透明な長方形の左端の真ん中に、円形の突起のようなものがついていた。
これはドアだ。
しかしドアの後ろの空間には何もない。
だが俺はドアノブに手をかけ開けた。その扉を…。

2:工場長:2011/05/10(火) 12:22

開けたが何もない。そこに空地が広がっているだけだ。
しかし、透明なドアは存在する。何のためにこんな物があるのだろう。
何となく何となくだが…入ってみたくなった。そこに何もないのに。
さっきまで死にかけだったけれど、今はこのドアを調べる事で生きたいと思う事ができた。
入ってみたが、やはり何もない。透明な部屋が隠されていると思ったが、期待は見事に裏切られた。
再度ドアを見る。しかし、不思議な事にもうそこには何も無かった。
半透明なドアは消えていた。透明になったのか?と思い念のためドアがあった空間を調べてみるが…
やはり何も無い。ドアは完全に消えていた。何だったんだろう?
俺は空地を出て、アスファルトの地面に座り考える。
死の間際に見た幻想だったという説が一番有力だが、なぜこんな幻想を?と問われれば答えられないのもまた事実。
再度空地を見てみる…が、信じられない事にそこには家が建っていた。
「そんな…馬鹿な…!」
思わず家を凝視する。特に変わったところは無い普通の一軒家だ。
なんだ…?どういうことだ…?
俺は公園に移動し、ベンチに座り再度考える。時刻はもう夜7:00を過ぎていた。
それから数時間、答えのない自問自答を繰り返し時刻が夜11:00を過ぎた頃…。
「どうしたの?僕?迷子になっちゃったの?」
そう俺に声をかけられたような気がした。しかし子供に話しかけるような口調のため、俺では無いと反射的に思考し無視する。
「ねぇ僕?どこか怪我してるの?お家はどこなの?お母さんの所に連れて行ってあげるよ?」
だがどうやら俺に声をかけているらしい。歳が30過ぎたオッサンに、こういう話しかたをする奴は普通じゃない。
不良が女声で挑発しているのか、あるいは変態が誘っているのか。
どちらにせよ、俺はこの場から全力で離脱することにした。

3:工場長:2011/05/11(水) 13:35

俺はその場から全力で駆け出した。
「あ…待って…!」
不審者の声を無視し、公園から出るとしばらく走り続けた。
自殺を考えていた自分のどこに、こんな体力が隠されていたのだろう。少し不思議に思ったが、すぐに忘れてしまった。
これだけ走ったらもう大丈夫だろう…と後ろを向く…後ろには誰もいなかった。
いつの間にか…雨が降っていた。
地面に水たまりができている。降りはじめたのは俺が走っていた時らしい。
水たまりを見ていると、そこに少年が写っているような気がした。もちろん周りに誰もいない。
降り続ける雨のせいで、水たまりに写る何かはよく見えなかった。
雨に打たれ続け水たまりを凝視する。が…遠くのほうで人が駆けてくる音が聞こえた。
耳を澄ませると「待ってー!」と言う声がはっきりと聞こえた。
俺はまた駆け出した。「まだ追ってくるのかよ」
降り続ける雨の中、無我夢中に全力疾走する。
不審者との距離はどんどん離れていく、俺は最後の力を振り絞り加速する。
すると突然 不審者から「危ない!!」という叫び声が聞こえた。
しかし遅かった。何もかも遅かった。
いつの間にか俺は道路に出ていて、右隣から高速で接近する大型トラック。
クラクションの音が耳に響く、だがもう遅い。
トラックとの距離1cm。
……0cmそこで俺の意識は途切れ、闇に呑まれた。

4:工場長:2011/05/12(木) 14:15

死後の世界というものは、闇の中で温水プールに入っているような感じだ。
いや、この温水プールの水が液状化した俺の肉体なのだろう。
とても心地良い。このまま永久にこのままでいたいと思えるくらいに
しばらくすると眠くなった。しかし眠ってはいけないと、なぜか思った。だから眠らなかった。
そうなると、ひまだ。闇の中で永遠に等しい時間を過ごす手段は深い眠りしかない。
しかし眠らない。眠りたくない。眠れば終わってしまう気がする…全てが。
あれから、何日いや何年経っただろうか?俺は意識を保ったままの浅い眠りを繰り返して何とか意識を保っている。
そして異変に気づいた。俺に手がある!足がある!体がある!!。
すると、無限に続いていると思われた闇が一気に狭くなった。
そして俺の足もとには、閉じている穴のようなものがあった。
出たい!そう思った。俺は力いっぱい穴を蹴り、外に出ようとした。
しかし開かない。穴は柔らかく衝撃を受け流すため、開ける事は不可能だと思えた。
しかし俺は出たい!この闇の中から、出たいんだ!
全力で穴を蹴り続ける。
すると…いきなり穴が開いた。
眩い閃光が、穴から漏れ出ていく。
俺は穴に滑り落ちた。
訳も無く悲しくなって、声を上げて泣いてしまう。
閃光が目に焼き付いて、辺りを確認できない。
だが肌に感じる感触で、誰かに抱きかかえられているような気がした。
「お母さん…元気な女の子ですよ」

5:工場長:2011/05/13(金) 08:41

俺は死んだ。だがどうやら俺は再び人間の子として、生まれてきてしまったようだ。
だが後悔は無い。あの無限にも思える時間を闇の中で過ごすのは、もう嫌だ。
前世のような失敗はしない。俺には前世の記憶と身体能力が継続されている。
大した能力では無いが、赤ん坊の頃からそれを持っているという事は
他の人間よりも遥かに有利な立場にあるということだ。
しかし、唯一つ失敗した点があるとするのならば、それは女に生まれてきたという事だ。

6:工場長:2011/05/16(月) 09:54

最初は外国で生まれたと思った。日本以外のどこか別の国に。
新しい母親や出産に立ち会った人間の風貌は外国人だけれど、喋っている言葉は日本語?のようだ。
窓から覗く美しい景色は、ヨーロッパを連想した。空気も非常に澄んでいて、とても良い所だ。


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