フルスイング

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1:匿名さん:2012/02/18(土) 14:57 ID:7d.


総合的宇宙開発社
通称「ウツノミヤ」は、我が町の名物である。正確には、つい最近なったばかりでだった。
3年前、マバセ市で起きた騒動。「アイロンの落日」のすぐ後、このナダセ市に巨大な黒い
球体が落ちてきて、すぐに国が総動員してこの球体を取り囲み、後はドミノ倒しのように
マスコミが押し寄せ、あっという間にナダセは人で溢れかえっていたんだ。寂れた商店街
は観光通りへ姿を変え、球体の周りにはショッピングモールや上から見渡せる展望台、更
には遊園地まで出来る次第だ。3年で町は街になり、今では誰もが知る有名観光名所。

ただ元々住んでいた人は、3年経っても変わりなく日常を過ごしていた。

2:匿名さん:2012/02/19(日) 11:56 ID:7d.


「普通さぁ、こういうのって教育上悪いじゃん。休校とかにしてくんないのかなぁ?」
「いやいや休校にした方が教育上悪いだろ。俺的には、この道のりが健康上悪いという
理由で休みにして欲しいところだ」

 3年経って街の風景は丸変わりしたが、観光客やそのバス、報道陣の波にそれに乗って
漂う煙草の臭い。グチャグチャ、カオス、シュール。何の言葉でも当て嵌まりそうだ。未だ
この道を僕達は通り続けている。正直地獄だ。これも学生の仕事の内だと言うのなら、是非
給料を支給してもらわなければ割に合わないだろう。市長も知事も大臣も、もう少し全体
じゃなくてピンポイントで問題に取り組む姿勢を見せて欲しいところだ。こうしてガチで
苦しむ子供達が居るのだから。

 だから僕は、3年前からこの街が嫌いだった。

「何眉間にシワ寄せて黙ってんだよヤス」
「…別に、学生が僕等の仕事なんだから、それにあんな学校にそんなの求める方が間違ってる」
「「確かに」」

 我が校の校訓は『己が力を信じ続けろ 君こそが世界だ』と意味の分からない天上天下唯我独尊
を貫く馬鹿校だ。教師は揃って体育系の熱血共。全生徒無遅刻無欠席を目標とし、そうなろうとし
た者を、先生自ら来て連れて行くという親馬鹿以上に徹底した馬鹿集団だ。

「俺等は全員あの馬鹿達に一度捕まってるからなぁ。二度とあんな目に会いたくねぇ…」

トーポは寝坊で
綾未は風邪で
僕はサボリで
 それぞれ強制連行された事がある。綾未は保健室で療養したが、僕とトーポは校長室にて、教師と
校長総動員で熱い指導を受けた。実際その熱気で死にそうだったのを覚えている。そんなことをし
ても自分達の給料が上がる訳ではないのに、どうしてそこまでするのか理解に苦しんだ。はっきり
言えば、彼等のやっている事は『大きなお世話』というやつで、『お節介」なのだ。そんな事をし
たって、数年すれば学校から居なくなるのだ。子供のように見ているだって?あんな奴等に、子供
大人の区別など決めて欲しくはないのだ。そう思う自分もやはり子供なのは悔しいけど。

3:匿名さん:2012/02/19(日) 18:47 ID:7d.


後は普通に小学生をしている。それ以外は普通の学校だ。救いといえば救いだ。
「お、ヤスの嫁じゃんあれ」
「あ?」
 家の塀を歩いてる人影が見える。大人達がゴミゴミと道を遮っている横で両手
を伸ばし水平を保ちながら女性が歩いていた。ああ、あの後姿をあの状態で見る
のだけは嫌だな。あいつは動じないから困る。
「あれは嫁じゃない。どちらかと言えばペットの部類だ」

 そう言って僕達は横の路地に入る。結局あの道を通るが、此処を通れば半分程
は地獄を見なくて住む。間違ってもあの女のようには行かない。あいつの後ろだ
けは歩きたくない。
「いいのかよ、追いかけなくて」
「いいんだよ、ほっとけば」

関われば僕はまた消えるから…




「はーい集まれ小娘小僧ども。今日は先週入院した沢良宜先生に代わって新しい
担任を紹介するぞー」

4:si ◆SpOo:2012/02/25(土) 22:35 ID:7d.

「先生、美人ですか!!」
「喜べマセガキども、目が潰れるぐらいの美人だ。ついでに玉も潰すか?」
 いつも通りのテンションだなこいつ・・・誰もがそう思うが、この先生愛沢明は、
おそらくこの学校で唯一自堕落な教師だと誰もが知っている。だからこそ今まで
このクラスの生徒は洗脳を受けずに生活してこれたのだ。

 なので例え美人教師が来たとしても、半分ぐらいこの先生にこのまま残って欲しい
と思う者がいるのだ。主に女子達なのだが。

5:匿名さん:2012/02/26(日) 03:57 ID:7d.


「先生、どうしてこの時期に新しい担任なんですか?愛沢先生が続けないんですか?」
「ああ〜まぁ私は副担任だしな。臨時を兼ねて受け持っていただけの事だ。次が決まれば
ガキのお守りはお終いってね〜」
 自堕落が極まってただの面倒臭がりだったよこの野郎。特徴が仇となってしまったか。
まぁ美人教師というぐらいなのだから、おしとやかであるのを祈れクラスメイト達。僕は
端っこで日向ぼっこしている時間が変わらなければ、誰でも構わないのだから。

「納得いきません」
 全員が諦めムードの中、しかしというかやはりというか、この少女だけは頑なだった。
「何が納得いかないんだ白井。私は今回キチンとした手順を踏まえたと思うが?お前の言うルール
は、今回正式に認められた手順じゃないのか」
「いいえ先生。それは大いなる間違いです」

 少女A、白井真実(しらい まみ)に常識的ルールは通用しない。
「私は意見します。先生はまだ生徒達と『絆』というルールを確立していません!!」
「・・・あ?」
 俺を含め、クラスメイトは首を傾げてアングリが良い感じに伝わったのか。白井は説明を開始
する。今日も結構に長くなりそうだ。寝てぇ・・・
「寝たら制裁だぞ朱峰。分かっているな?」
 例の如く脅迫が入りましたどーぞー。なんでこんなどうでもいい事に口を出し自分ルールを即座
に採用出来るんだこいつは。キリストだってもう少しマシに考えるぞ。

6:匿名さん:2012/02/26(日) 18:57 ID:7d.

「先生、そもそも小学校教師というのは、単に生徒に授業を受けさせるという事を
義務付けられているだけの存在。なんて本気で言いませんよね?教師とは、生徒を
正しき道で導く者です。ならば生徒と教師の間に必要な事柄は一つ、時間を掛け、
共に笑い、泣き、そして構築されていく美しき絆です!!そうは思いませんか?」

 学校で、このクラスで唯一学校の望んだ人物像を完璧に再現したこの女にとって、
正直まともな答えは最初から期待していない。しかしまた酷く熱血だな。お前は体
育教師になれるよ白井。
「それに、美人教師ですって?今は私立受験を控えている生徒だっているのですよ?
それをいきなり環境を変え生徒達を戸惑わせ、支障が出たらどうするつもりですか」
「ふむ、一理ある。が、もはや決まった事だ。一生徒であるお前にどうこう出来る
問題ではないよ。文句は教育委員会にでも言ってくれ」

 逃げ口上にしては普通だな。
「そうやって・・・わかりました」ん?

7:匿名さん:2012/02/29(水) 18:40 ID:7d.


いつもとは少し違うがどうした。
「あー、では紹介するがぁ・・・いいな白井?」
「はい」

「じゃあ入ってくれ〜」
 教室のドアが開くその瞬間、何故だか僕は少し予感というか。どうしようもなく掻き立てられる
衝動に駆られた。その姿が見える直前まで、後ろから何かでぶん殴られるような危険なそれが、教
室のドアの向こうから伝わって来る。その指先が見えた瞬間汗が吹き出すのを感じた。その足が見
えた瞬間心臓が波打った。その体が見えた瞬間身体の震えが止まらなくなった。その顔が見えた瞬
間目を背けたいのに顔が動かなくなったというか身体が金縛りあった気がした。そして

そして目が合った瞬間、僕は教室を走り出していた。
あまりにも危険なそれが、僕の存在ごと食い散らかされてしまうと思ったから。


「ふ〜ん、あの子良いね先生」
「いいから早く教室に入ってくれないか?」

8:匿名さん:2012/03/06(火) 01:37 ID:7d.



 訳が分からず走ってたどり着いた先は、河川敷の橋の下。
「はぁ・・・はぁ、なんなんだよ一体」
 ようやく頭を整理する余裕が出てきたが、まずはこの乱れた呼吸を直して、
どこか落ち着ける場所に行きたい。しかしこの時間帯に落ち着ける場所に行こう
とすれば即補導対象だろう。家に帰るのが妥当だが、家は交番の横に設置して
あるのだ。そして

「見つけたぞ、ヤス君!」
 婦警は僕の姉さんだ。
「おそらく此処だろうと思っていたぞ。ヤス君、君はいつも通りの横道反れ雄
なのか?私は悲しいぞヤス君。小さい頃はあんなに艶かしく私に抱きついて、
純情を思うがまましゃぶり尽くしていた無垢な少年だったと言うのに!!」
「」
 思考が停止すると人間として終わってしまいそうだったので、僕は意識を今すぐ
切る努力をしたかったが、否定と増悪と皮肉をミックスした言葉の限りをぶつけて
やりたかったが、どうにも僕の教養が足りないのか、それともあまりの姉の変態発
言ぶりに惚けてしまったのか、上手く考えが纏まらない。

「どうしたヤス君?良いんだよ、昔みたいに私の胸に飛び込み思う様顔を埋めグリ
グリしても!あの何とも言えない感覚を私に味あわせて良いんだよ?」
「そんないやらしいシスコン性癖を持った弟になった覚えは今も昔も金輪際も
ありえねぇよ馬鹿!」

9:si ◆SpOo:2012/04/04(水) 12:37 ID:7d.

「そ、そんな。私自分で言うのもなんだけれど、結構スタイルに自身あるんだよ?それこそ
そこらへんの馬鹿でうす汚れたド三流の男達の熱い血を呼び覚まし悩殺させてしまいそうなぐらいには。
そんな私を君は自由に、その欲望のままに吐き出せるんだよ!?いいじゃないか、青春して
いいんじゃないか!大人の階段カモンベイベーじゃないか!!」
「小学生相手に何トチ狂った狂言吐いてんだ馬鹿野郎!!」
「おや?もしかしてヤス君は野郎がお好みなのか?待っていてくれ、今バンドをするから」
「死ね!氏ねじゃなくマジで死ね姉貴!それで世界はきっと、少なくともこの街の平和は少し
だけ明るくなるはずだから」

 こいつはこんな奴だ。周りの人間に対しては完璧なまでの瀟洒ぶりを発揮する聖人みたいな
女なのに、そこだけ見れれば俺としては誇りに持てる良い姉なのに、黙っていればそこらの女なんて
話にならない程度の美人なのに、何故名瀬こうなったのか。いや、昔からそれは変わらないから
どうしようもないんだが、しかし昔はここまでじゃななかったじゃないか?もっと純粋な
姉弟愛に溢れてなかったか?

・・・
無かったわ

10:匿名さん:2012/04/04(水) 18:16 ID:7d.

「それにはそれにしてヤス君、ちょっと真面目な話。学校はどうしたんだい?例の自堕落先生
から電話が来てびっくりしたんだぞ?お宅の生徒が美人教師の登場に耐え切れず家に非生産的
行為をしに向かってしまったと。だからお姉ちゃんこうして君を探しに来たんだからな?家だ
っていくつの抜け穴を探した事か」
 本当にちょっと真面目だから反応に困る。
「まぁ、心配掛けたのは悪かったよ。ちょっと気分が悪くなったんだ。先生には後で電話しておく
から、仕事戻ってくれよ姉貴」
「えー非生産的行為しないのー」
「するか馬鹿!!」

 結果的に、姉は「ちぇっ、じゃあ美人婦警は仕事に戻るけど、ちゃんと子供の仕事をこなすんだぞ?」
とブー垂れながらいそいそと立ち去ってくれた。一日分の元気をごっそり持ってかれ少し疲れた、少し
此処で寝ていこうと川原の芝に腰を下ろすと、また見慣れた人物の顔が見ないか周りを確認する。まぁ
幸いまだ午前10時、人通りはほぼ皆無だ。安心して昼寝ならぬ二度寝に勤しむとしよう。寝る子は育つ、
姉の持論には間違っていないのさ。

11:si ◆SpOo:2012/04/07(土) 15:48 ID:7d.


「目標補足しました」
「ああ、確認したよしっかりとな」

 とある場所のとある地下のとある施設で、今日からやっと本来の職務に戻る事が出来た瞬間
だった。つい数分前までは、ナダセ市「謎の黒い球体」の事についての調査と、マバセ市支部
の尻拭いをしていた最中だった。しかしこの女が現れた事により、それ等全ての調査は後回し
とされる。それについては、作業員達は士気を上げるばかりだ。

「しかし笑えない冗談ですね、まさか小学校教師で潜伏してくるとは」
「だな、本人はあれで装っているようだが、見つけてくれと言っているような…いや、わざと
見つかりたかったような具合か」
「な、なんのために?」

 入国管理官の駆け出しである私には先輩の言っている意図を掴むのは毎度の事ながら困難を
極める。しかし今回の仕事は稀な筈なのだから、それ以上も以下の意味も成さないのかもしれ
ないが、どうなのだろうか。
「ただの目立ちたがりか…いや、厄介な手を使ってくる」
「??」
 やっぱり深い意味がありそうだ。


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