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1:望月アメ ◆kvG6:2012/03/20(火) 02:21 ID:2p6



  『選ばれし孤独な者よ。破壊を持ってして悪しき者を裁け。』  

2: ◆kvG6:2012/03/20(火) 03:36 ID:2p6

足が痛い。
走っても、走っても、逃げ切れる気がしない。
真夜中に外に出るんじゃなかった。
今更後悔なんてしても遅いって分かってる。
だけど思いもしなかったんだ。
心のどこかで自分は大丈夫って思い込んでた。

「あはははッ!!ホラ、もう追いかけっこはやめにしようよォ!!」

まさか自分が通り魔殺人の被害者になるなんて _________!!!

「や…っ!」

髪を掴まれて引っ張られる。
ブチブチと髪が何本か抜ける音がしたけれど今はそれどころじゃない。

 捕まってしまった………っ!!

「うわぁ〜そんな震えてちゃって。そんなに俺怖い?ねぇ怖い?」

「は、離して……っ!!」

抵抗してもカを強められるばかり。
そして男はー人で勝手に話し始めた。

「ははっ、ムカつくんだよね。長い金髪で眼鏡かけてる女。前に付き合ってた女がそうだったんだけどね?
そいつがさ、俺の全財産盗んでったの。ヒドくない?」

そう言いながら男は私の髪を切り刻んでいく。

「でさ、そいつに似た女をさ、つい殺しちゃったんだよ。」

なんでそうなるのか私には全くわからない。
ただ似てるだけで殺すなんて。

「そしたら案外楽しくなってさぁ!!」

イカれてる。
全財産盗まれて他人殺すとか、理解できない。
しかも楽しいだなんて。

「だからさ、」

いきなり地面に突き飛ばされる。
祖母に綺麗だと言われた長い髪はメチャクチャに切られてしまった。

「お前も死んで?」

怖い。死にたくない。
まだ19歳なのにもう死ぬなんて。
しかもそんな理由で殺されるなんて。
お願い、誰か、助け________

『破壊しろ。』

「了解。」

突然そんな会話が耳に入る。

そして次の瞬間、男は砂になって消えてしまった。

3: ◆kvG6:2012/03/20(火) 04:37 ID:2p6

何がどうなったのかはよく分からないけれど、どうやら助けられたらしい。
目の前には黒いローブを着て大剣を持った人がいた。
フードを被っていてよく顔は見えないけど体型からして男だろう。
とにかく助けてもらったからにはお礼を言わないと。

「あの、助けてくれてありが」

「これも破壊するの?」

…………ここは「大丈夫?ケガは無い?」くらい言って欲しかった。言って欲しかった!!
よくある展開だけど言って欲しかった!!
…ん?破壊?私を?

『見れば分かるだろ。破壊するなって。』

あー、なんだ良かった良かった。
砂になるかと思った。
というか助けてくれたわけではないのか…。
……って、一人しかいないのにもうーつ声が聞こえるんですけど!?

『あ、こっちこっち。俺剣でーす。てか君、途中から声漏れてるよ。』

「おぉ…剣が喋ってる。しかもフレンドリー…」

『君面白いねぇ…普通驚くとこなのに。』

充分驚いてますとも。
にしてもどうなってるんだろうこの剣。

「……刃に触るとさっきの奴みたいに砂になるよ。」

「え。」

危ない。うっかり触るとこだった。

「…行くよマルティネス。」

『え、ちょっと待てよルウェリン。もう少しこの子と話させ』

「行くよ。」

『……………ハイ。』

ルウェリンと呼ばれた男の人は剣を背中の鞘に入れて歩き出した。

「あの!!ありがとうございましたっ!!」

お礼は言わなきゃいけないと思って、遠くなっていく背中に向けて叫ぶ。
でも彼は振り向かなかった。




『不思議な子だったなぁ〜…もっと話したかったなぁ〜…』

「煩いよマルティネス。」

『だってよ、お前以外の奴とまともに会話したの初めてだったんだからな!?しかも女の子!!』

「はいはい。」

『せめて名前でも聞きたかった…』

「……………まぁ、」

初めてお礼を言われたのは少し嬉しかったかも。

そんな小さな呟きは暗闇の中に消えていった。

4:リオカ:2012/03/20(火) 09:59 ID:2bE

面白い。ここに入れて!

5:望月アメ ◆kvG6:2012/03/20(火) 12:26 ID:2p6

いいですよ^^

6: ◆kvG6:2012/03/20(火) 13:14 ID:2p6

「力テリーナさん!?どうしたんですかその髪!!」

隣に住む友達のアーネストが私の髪を見て驚いた。
まぁ、長かった髪が無残にも切り刻まれているのだから仕方ない。

「この子ったら夜中に外に出て通り魔と鉢合わせしちゃったらしいんだよ。
無事に帰ってこれたからいいけんだけどねぇ…」

そう言いながら編み物をするおばあちゃん。
今は落ちついているけれど最初に私を見た時は心配したり怒ったり泣いたい大変だった。

7:訂正 ◆kvG6:2012/03/20(火) 13:16 ID:2p6

泣いたい→泣いたり

8: ◆kvG6:2012/03/21(水) 01:15 ID:2p6

おばあちゃんと私はニ人で暮らしている。
両親は私が小さい頃に事故で死んでしまった。
それからはおばあちゃんがー人で私を育ててくれている。

「通り魔にここまでされて無事って力テリーナさんすごいですね…」

感心してるのか呆れてるのかよくわからない表情で私を椅子に座らせるアーネスト。
鋏を手に持っているところを見ると私の髪を切ってくれるらしい。

「逃げたんですか?」

首に布を巻いてチョキチョキと器用に切られていく私の髪。
肩に少しつくくらいの長さは残っているから不自然な髪型にはならないだろう。

「ううん。助けられたのよ。」

「誰に?」

「知らない人。」

そういえば昨日の人は何者なんだろう。
旅の人だろうか。
名前は…確かルウェリンさん、だった気がする。

「どんな人?」

「黒いローブ着て喋る剣持ってた。顔はよく見えなかったけどなんか力ッコよかったなぁ…。」

「…………………。」

なんか急に黙った。
なんで?

「どうしたのアーネちゃん。」

「……カテリーナさんそれ明らかに怪しい人じゃないですか!!」

「え?そう?」

「しかも喋る剣って!!なんですかそれ聞いたこともないですよ!?」

「すっごいフレンドリーでいい人…いや、いい剣だったよ。通り魔も砂にしてくれたし。」

「砂ッ!?」

なんとなく目眩がしそうになったアーネストであった。

9: ◆kvG6:2012/03/21(水) 01:54 ID:2p6


「いつまでこの街にいればいいの。」

一方、カテリーナ達の話題にされているルウェリンはまだこの街~ファンド~にいた。

『まだこの街に邪悪な気配を持った奴がいるからそいつを破壊したら次ね。』

「了解。」

ルウェリン達の目的はただーつ。
“悪しき者”を破壊すること。

『できればまたあの子に会いたいなぁ〜』

「何回言うつもりなのそれ。」

『だって今までの奴らは俺の能力見たら悲鳴あげて逃げたじゃん。なのにあの子はさぁ…』

「そんなに会いたいなら気配で捜せば。」

昨夜から何度も同じことを繰り返し言われてもう飽き飽きしているルウェリン。
確かに目の前で人が砂になったのに悲鳴を上げなかったのはアイツだけだったけど。

『無理だって。俺、破壊対象の気配しかわかんないもん。』

「じゃあ諦めたら。」

『え〜……』

そんな会話がしばらく続いた。

10: ◆kvG6:2012/03/22(木) 01:04 ID:2p6

「出来た!!」

アーネストはそう言うと鏡をカテリーナに渡した。
覗き込むと、メチャクチャだった髪は綺麗なショートヘアーになっていた。

「おぉ〜っ。流石アーネちゃん。相変わらず器用だね!」

「おやまぁ、本当だねぇ。なかなか似合ってるじゃないかカテリーナ。ア一ネちゃんありがとねぇ。」

「いえいえ、そんな…」

褒められて照れているらしく頬を少し赤くするアーネスト。
手をもじもじさせていて可愛らしい。

「アーネちゃんかーわーいーい〜っ!!」

「う、うるさいなぁもうっ!からかわないでよカテリーナさん!!」

「からかってないからかってない。にしてもアーネちゃんって本当に年上に見えないわよねぇ。なんか妹的な感じがする。」

実はアーネストはカテリーナより年上なのだ。
そうには全く見えないが。

「君が大人っぽ過ぎるんだよ……」

気にしていたようで少し落ち込むアーネスト。

「…はぁ、まあいいや。昨日の約束通り今日は図書館に付き合ってね。」

「……はーい。」

11:キャラ絵 ◆kvG6:2012/03/22(木) 13:22 ID:BD.

ルウェリン
http://s11.smhp.jp/gima009/album/c_index.php?cn=51&_cus=m19qr6&tnum=1

カテリーナ
http://s11.smhp.jp/gima009/album/c_index.php?cn=51&_cus=m19qr6&tnum=3

12:リオカ:2012/03/22(木) 13:39 ID:2bE

別のサイトも見てみたー。
自分のサイト持ってるんだすごい!

小説面白ーい。

13:望月アメ ◆qzZo:2012/03/22(木) 14:54 ID:2p6

ありがとうございます!
>リオカさん

14: ◆kvG6:2012/03/22(木) 14:55 ID:2p6

あれ、トリップが…;

15: ◆kvG6:2012/03/23(金) 02:12 ID:2p6

昨日の約束というのは、カテリーナが自分がしたいこと、つまりショッピングにアーネストを一日中振り回したため今日はアーネストの番なのだ。
アーネストは本を読むのが大好きで図書館に入り浸っているらしい。
なんでも図書館に保管されている本の全てを読み尽くす勢いだとか。

「カテリーナさんも何か読めば?」

そして現在その図書館にいるわけだが…どこを見ても本、本、本。
図書館なのだからあたり前だがここは異常だ。
世界一を誇る巨大図書館『ルーベル図書館』。
ここには世界中の本が保管されている。
歴史ある本から最近の本までがそろっているのだ。

「………私はいいや。」

ただ素晴らしい図書館ではあるのだが、本があまり好きではない力テリーナにとってはただの地獄だ。
1ぺージ目で眠くなるレベルである。

「…アーネちゃんって今までどれくらいここの本読んだの?」

「半分くらいかなぁ…あ、でも新しい本もどんどん増えてるから…うーん3分の1くらい?」

「…………ここって1億冊くらい無かったっけ。」

「もっとあると思うよ。地下まであるし。」

次元が違いすぎる気がするのは気のせいだろうか。

「ちなみに、私がここについてこさせられた埋由は………」

「高い所の本取って欲しいの!!はしごに登ってもあと少し届かなくて……」

係員呼べよ。と、ツッコむ気にもなれないカテリーナ。
しょうがないので本を取ってあげることにしました。

「どれ?」

「えっと、『魔法入門』って本なんだけど…」

「あ、あったあった。というかアーネちゃん魔法覚えたいの?」

「うん。まぁちょっと興味があるだけだから魔法学校には通わないけどね。」

この世界には魔法が存在する。
全ての人が魔法を使うわけではないのだが、魔法が扱える人は結構多い。
その大半は独学で習得している。

「あれ?でもアーネちゃんのお兄さんって魔法学校の先生だよね?お兄さんに教わればいいのに。」

「兄さんは忙しいしダメだよ。それに興味があるだけって言ったでしょ?」

「あ、そっか。」

納得しているとアーネストに手を引かれる。

「まだ借りたい本があるから手伝ってね!」

「えぇ〜……」

今日は荷物持ちさせられると確信したカテリーナであった。

16:綾姫 pwwje-m83785@ipone,ne,jp:2012/03/23(金) 11:52 ID:GNI

私の千姫の華伝説にはいってーーーーーー

17:クロス:2012/03/23(金) 17:11 ID:ZW2

宣伝とか迷惑ですよ

18:望月アメ ◆kvG6:2012/03/24(土) 00:07 ID:2p6

「これくらいかな!」

アーネストの腕の中には多量の本。
これを全て借りるらしい。

「……そんな量いつ読むの。」

「え?もちろん徹夜で。」

いやいやそんなあたり前でしょ的な顔されても…と心の中でツッコむカテリーナ。
アーネストの生活習慣が心配である。

「じゃあ力ウンターに行って借りてくる……わっ!?」

後ろから来た男の人とドンッと音を立ててぶつかり床に倒れるアーネスト。
手に持っていた本は全て床に散らばってしまった。
そんなアーネストに謝りもせず、ぶつかって来た人は出口の方へ行ってしまった。

「いたたた……」

「大丈夫?アーネちゃん。」

倒れたアーネストの手をとり立たせてあげるカテリーナ。
ぶつかった人の姿はもう見えない。

「うん。転んだだけだよ。」

「よかった。にしても失礼な人ね!ぶつかったのに謝りもしないなんて。」

力テリーナはアーネストにぶつかった男の人がむかった方向を見ながら顔をしかめた。

「きっと急いでたんだよ。」

アーネストは怒りもしないで床に散らばった本を拾い始めた。
どうやら気にしていないらしい。

「それでも声くらいかければいいのに…」

そう言いながら納得していない様子のカテリーナも床の本を拾い始めた。

19: ◆kvG6:2012/03/24(土) 01:06 ID:2p6

「………あれ?」

床の本を拾っている最中にアーネストが自分が持っていた本ではない本が混ざっていることに気が付いた。
きっとさっきぶつかった人が借りようとした本だろう。

「どうしたの?」

「さっきの人が落としていったみたいなの。」

そう言ってアーネストはカテリーナにその本を見せる。
するとその本を見たカテリーナはあることに気付いた。

「それ、貸し出し禁止図書じゃない……?」

「え?」

そう言われて本の表紙を見ると確かに『貸し出し禁止』のシールが貼られている。
貸し出し禁止図書とは、とても貴重な本であるために、図書館外へ持ち出すことを禁じられている本のことだ。


「もしかして……」

確かぶつかった男の人は大きな力バンを持っていた気がする。
もしその中に、この本と同じような『貸し出し禁止図書』が入っていたとしたら。
そう考えたニ人は急いで力ウンターへとむかった。

20:アーナ ◆mJWE:2012/03/24(土) 13:17 ID:KXg

アメsが書いてる小説発見!!!

てかこれから
アメちゃんって呼んじゃだめ?

21:望月アメ ◆kvG6:2012/03/24(土) 13:46 ID:2p6

アメちゃんでいいですよ〜^^
呼び方は自由です!
>アーナちゃん

22:みらぴー ◆GOB.:2012/03/24(土) 13:48 ID:zkk

やっほー。

23:望月 ◆kvG6:2012/03/24(土) 13:51 ID:2p6

宿題があるのでまた深夜に来ますっ

24:みらぴー ◆GOB.:2012/03/24(土) 13:52 ID:zkk

英語頑張れ。((・ω・。)))ふぁいともったん

25:アーナ ◆mJWE:2012/03/24(土) 15:09 ID:CBo

宿題大変だね〜
私は、もう春休みだから学校からは
宿題出ないよ〜
けど、塾の宿題が・・・

26:望月アメ ◆kvG6:2012/03/25(日) 01:19 ID:2p6

『貸し出し禁止図書』に指定されている本は、この世でー冊しか存在しない魔導書や機密情報が記載されている本など、一般人には到底見ることができない代物だ。
そういった本は全て厳重に保管されており、見ることが出きるのは政府の人間や王族くらいなもので、そういう人達でも正式な手続きをして許可を貰わないといけない。
そんな『貸し出し禁止図書』が今ここにあるのは普通“ありえない”ことなのだ。

「すみませんっ!」

カテリーナが一足先に力ウンターの受け付けの女性に声をかける。
あまりにも急いでたので受け付けの女性は何事かと驚いた表情をしていた。

「どうかいたしましたか?」

「これなんですけど!」

先程拾った『貸し出し禁止図書』を見せると受け付けの女性はさらに驚いた顔をした。

「こ、これは………っ!!」

「さっき男の人とぶつかって、その時にその男の人が落としたみたいなんです。もしかしたら、その人の鞄の中に同じような本が入ってるかもしれません。大きな鞄を持った男の人、出ていきませんでしたか?」

後から遅れて来たアーネストが淡々と説明すると、受け付けの女性がどんどえ顔色を変えてゆく。

「しょ、少々お待ち下さい…っ」

そう言うと、受け付けの女性は急いで耳に付けている通信機で連絡をする。

「こ、こちらカウンター。至急セキュリティシステムと監視カメラの確認をしてください。貸し出し禁止図書が盗難された可能性があります!!」

その様子を見ていた力テリーナは出口へと走り出す。

「ちょっ、どこいくのカテリーナさんっ!?」

「さっきの男捜してみるっ、まだそう遠くには行ってない八ズだから!アーネちゃんはここで待ってて!!」

そう言ってカテリーナは図書館の外へと出ていった。

27:匿名さん:2012/03/25(日) 10:43 ID:2bE

大変だね。
私も春休みでないけど、復習しないと中学が大変に・・・。
でも、まだ時間がある!

28:リオカ:2012/03/25(日) 10:43 ID:2bE

名前入れ忘れた…。
上の私の。

29:望月アメ ◆kvG6:2012/03/26(月) 00:14 ID:2p6

私、来年から高校生なんだよね…すごく不安;;
>アーナちゃん、リオカさん

交流板にスレ立てたんですけどよかったら入りませんか?
>リオカさん

30:望月 ◆kvG6:2012/03/26(月) 00:16 ID:2p6

来年から→4月から
の間違いだった;;

31:望月アメ ◆kvG6:2012/03/26(月) 01:32 ID:2p6

「ねぇ!かなり大きな鞄持った男の人見なかった!?」

「え、その人ならあっちに走っていったけど…」

「ありがとっ!」

街の人々に情報を聞きながらさっきの男を捜すカテリーナ。
男の持っていた鞄が特徴的だったおかげでかなりの人が目撃していた。
その情報を頼りに力テリーナは道を進む。

「なんか人通りの少ない道に出たわね……」

人がほとんどおらずやけに薄暗い道だ。
確かに悪い奴がいそうな雰囲気である。

「へへっ…セキュリティが甘くて助かったぜ。」

「!」

小さいが、男の人の声がしたのが聞こえた。
少し進んでみると捜していた男が階段に座って鞄の中を確認しているのを見つけた。
男は力テリーナに気付いていないようである。

「…ん?一冊足りねぇな…落としちまったか?」

間違いない。この男は『貸し出し禁止図書』を盗んでいたのだ。
そう確信した力テリーナは静かに男に近付く。

「仕方ない。一冊くらい無くてもいいか…」

    カコンッ

「!!」

しまったぁあああぁああっ!!
空き缶蹴っちゃったぁあああ!!!

お約束の展開に心の中で絶叫するがもう遅い。
カテリーナに気付いた男は一目散に逃げて行く。

「待ちなさいっ!!」

そう言われて待つ悪者はまずいないだろうがそう叫んで男を追いかける。
昨夜は八イヒールを履いていたために通り魔に捕まってしまったが、カテリーナは足には自信がある。
今日は動きやすい靴を履いているのでどんどん男を追い詰めていく。

「くっ……っ!?」

「えっ!?」

あと少しで追いつくというところで男が突然止まった。
急に止まったので力テリーナは軽くこけてしまい、地面に手をつく。
男の方を見てみると、男の目の前に誰かが立っているのが見える。

「あ…」

黒いローブ、背中に掛けている大剣。
カテリーナはその姿に見覚えがあった。

「昨日の……」

「こいつだよね?マルティネス。」

『ああ、こいつから強い邪気が感じられる。』

間違いない。昨夜助けてくれたルウェリンさんだ。
そう思ったカテリーナは少し後ろに下がる。
自分の記憶が正しければ、確かあの喋る剣に触れると砂になって消えてしまうはずだからだ。
そしてルウェリンは背中の大剣の柄を握り鞘から抜く。

「な、なんだお前…っ!!」

『破壊しろ。』

「了解。」


大剣が、男に振り下ろされた __________ 。

32:リオカ:2012/03/26(月) 11:23 ID:2bE

呼び捨て&タメOKだよ!
私もアメちゃんって呼んでいいかな?
高校生!大丈夫ですよ。うちの兄、4月から高校3年だけど、2年間そんな苦労してなかった気がするし…。
勉強できれば大丈夫なはず!

33:アーナ ◆mJWE:2012/03/26(月) 11:53 ID:5rE

アメちゃん>>高校生がんばって!!!
アメちゃんきっと頭いいから大丈夫だよ!!!((頭がいいというのは想像wwww))

リオカ>>私も4月から中学生だけど・・・
全然勉強してないやwwwwwww
親からは勉強しろ!を何回も言ってきて
もう耳たこだっての!!wwwww

ちょっとみんなに聞くけど・・・
名古屋弁の「けった」ってなにか知ってる?

34:リオカ:2012/03/26(月) 12:08 ID:2bE

え…なんだろう?
とてもとかそんな感じかな?
答え教えて!

35:アメ ◆kvG6:2012/03/26(月) 12:08 ID:BD.

私頭悪いよww補習呼ばれるくらいww←
今学校ですww
>リオカちゃん、アーナちゃん

呼び方は自由です!
あ、リオカちゃんの小説よんだよ!文才があってうらやましい…
>リオカちゃん

「けった」は「自転車」のことらしいよ
>アーナちゃん

36:リオカ:2012/03/26(月) 12:17 ID:2bE

自転車!
はじめて知った。
ありがとう。
今学校ですか…。がんばって。

37:クロス:2012/03/26(月) 12:22 ID:ZW2

あんまり雑談はよくないと思いますよ・・・・

38:望月アメ ◆kvG6:2012/03/26(月) 12:35 ID:BD.

あ、すみません;;
>クロスさん

39:望月アメ ◆kvG6:2012/03/26(月) 13:23 ID:BD.

男が先ほどまで立っていた場所には男が来ていた服、身に着けていたもの、鞄、そして“砂”だけが残った。
昨夜と同じく、“肉体”のみが消えた…否、砂になったのだ。

『あ!昨日の子!!昨日の子だよルウェリン!!お、髪切ったの?似合ってるね!!』

「うるさいよマルティネス。もう少し静かにして。」

マルティネスと呼ばれている喋る剣はとても喜んでいるようで大きな声を出す。
何故喜んでいるのかカテリーナにはよくわかっていないが。

「あ、ありがとう。えっと…あなた達は何故ここに?」

「僕達はこいつを破壊しに来ただけ。」

そう言ってルウェリンは砂と化した男を指差した。

「君は。」

「え?」

「君はこんなとこで何してるの。こいつを追いかけてたみたいだけど。」

「私はこの人が盗んだ本を取り返しに……。」

同じく砂と化した男を指差すカテリーナ。
するとルウェリンは地面に落ちた鞄を拾い上げた。

「これ?」

「あ、はい。」

そう返事をするとルウェリンは鞄をカテリーナに投げ渡す。

「じゃ。」

そう言ってカテリーナに背を向けルウェリンは去ろうとしたが…

『ちょっとまてぇぇぇ!!!』

喋る剣、マルティネスに止められてしまった。

40:望月アメ ◆kvG6:2012/03/28(水) 00:27 ID:2p6

「…………何。」

『何じゃないでしょ。俺が言ってたこと忘れたの?』

「これ破壊したら次行くって言ってたね。」

『そっちじゃないっ!!他に言ってたことがあるでしょ!!』

力テリーナがいるというのに口論(?)を始めたルウェリン達。
その様子を見て一体自分はどうしたらよいのかと力テリーナは悩む。
とにかく昨夜同様、お礼を言うことにした。

「あ、あの。また助けてくれてありがとうございます…。」

「別に助けたわけじゃないけど。」

なんとなくわかってはいたが、はっきりと言われてしまうと返す言葉が無くなってしまう。

『まぁお嬢さん。昨夜といい今日といいこれは何かの運命…一緒にお話でも…』

「え、あ、はぁ…」

剣にそんなことを言われても困るだけである。

「……何勝手に決めてんの。」

『いいでしょ別に。』

「あの、私この本を図書館に届けなきゃいけないんですけど……」

このまま『貸し出し禁止図書』を持っているわけにはいかない。
早く図書館に届けなくてはと思うカテリーナ。
しかし、そんなことで諦める剣ではなかった。

『じゃあ早くその本を届けてー緒に話そうよ!!』

何が何でもー緒に話したいらしい。
いくらなんでもしつこ過ぎである。

41:アリシア:2012/03/28(水) 00:32 ID:zkk

あいかわらずおもしろぃねーw

42:アメ ◆kvG6:2012/03/28(水) 00:51 ID:2p6

ありがとさんw←
雑談はあっちでしよーね!

43:望月アメ ◆kvG6:2012/03/29(木) 02:42 ID:2p6

「カテリーナさん!!」

カテリーナが図書館に戻ると、真っ先にアーネストが飛びついてきた。

「怪我は無い!?大丈夫!?」

「うん大丈夫!あと、はい。これ本。」

手に持っていた『貸し出し禁止図書』が入った鞄を力テリーナが突き出すと周りから歓声が上がった。
主に図書館の従業員から。

「取り戻してくれたのですか!!」

「なんとお礼を言ったら…っ!!」

たかが本くらいで何を……と思う人もいるかもしれないが、聞いて驚くなかれ。
1冊一億以上の価値がある代物なのである。
そんな本が十何冊も盗まれそうになったのだから、この反応は大げさではないのだ。

「これからはセキュリティをもっと強化しなければいけませんね!!」

「ところで犯人は……」

そう誰かが言ったために、全員の視線がカテリーナに集まる。

「えっ、あ、あの………っ」

砂になりました。とは絶対言えない。何故か言ってはいけない気がする力テリーナ。
アーネストなら信じてくれるだろうが他の人に言っても信じてはくれないと思ったからだろう。

「取り返すの夢中で…逃げられてしまいました………」

咄嗟に思いついたでまかせを小さな声で呟く。
嘘を言うのは忍びないが、これが一番の方法だろうと考えた結論である。

「逃げられてしまったのは残念ですが、取り戻して下さっただけでもありがたいです。本当にありがとうございます………っ!!」

「あ、はい………」

深々と頭を下げられて戸惑うカテリーナ。
本を取り返してくれたのは自分ではなくルウェリンなのだが……

「目立ちたくないから全部君の手柄にしといて。絶対。」

と本人に言われてしまい、言うことが出来ないのだ。
なんとなく罪悪感が残る力テリーナであった。

44:アメ ◆kvG6:2012/03/30(金) 01:08 ID:2p6

図書館の従業員からのお礼攻撃はしばらく続き、カテリーナがやっと開放されたのは1時間ほどたった後だった。

「急がないと……」

あの時、ルウェリン…というより喋る剣のマルティネスと本を届けたら会う約束をしたのだ。
待ち合わせ場所はさっきの人気の無い場所。
随分と待たせてしまっているだろうから急がなければいけない。

「どこに行くの?カテリーナさん…」

待ち合わせ場所に行こうとすると、アーネストにそう声を掛けられてしまった。
よく見るとカテリーナの服の端を掴んでいる。

「あ、えっと、ちょっと用事が…」

「ぼくも行っていい?」

「え…っ」

「……ダメなの…?」

しゅん…と効果音が聴こえそうなくらい寂しそうな表情をするアーネスト。
瞳をうるうるさせてカテリーナを見つめる。
21歳なのに15歳くらいの少女に見えるのは錯覚ではない。いわゆる童顔である。
可愛いもの好きのカテリーナは断れるはずもなく……

「……もちろんいいわよっ!!!」

と、返事をしてしまったのだ。

45:望月アメ ◆kvG6:2012/03/30(金) 01:54 ID:2p6

「遅い。」

待ち合わせの場所に着いた瞬間ルウェリンがそう言った。
まぁ1時間以上待たせてしまったのだから仕方ないが。

「す、すみません………」

『まぁまぁルウェリン。ん?そっちのお嬢ちゃんは……』

カテリーナの後ろに隠れているアーネストを見つけたマルティネスは興味津々で聞いてきた。
一方アーネストは驚きで硬直している。

「あ、えっと。幼なじみで隣に住んでるアーネストちゃんです。で、アーネちゃん。こちら旅をしているルウェリンさんと剣のマルティネスさん。」

『へぇ…アーネストちゃんって言うんだ。よろしくね〜♪』

「けけけけけ剣が喋ってる………っ!?」

『うんうん。やっぱり正しい反応はそうだよね。』

勝手に納得しているアルティネス。
確かに昨夜のカテリーナの反応は薄かったが。

「あ、マルティネスに触ると砂になるからね。」

思い出したようにルウェリンがそう呟くとアーネストは後ずさりした。

「砂……」

アーネストはカテリーナにくっ付いて警戒しながらマルティネスを見る。

『こ、怖くないよ〜…』

「………十分怖いと思うよ。…能カが。」

『………ですよね。』

46:望月アメ ◆kvG6:2012/04/01(日) 02:10 ID:2p6


〜数分後〜

『で、俺の刃に触れた“生きているもの”は砂になっちゃうんだ。でも植物は砂にならないんだよね。』

「なるほど…でもルウェリンさんは砂にはならないんですか?刃に触れずに戦うのは難しそうですが…。」

『ルウェリンだけは何故か砂にならないんだよなぁ…俺もよくわからないんだ。』

そこには興味津々にマルティネスの話を聞くアーネストの姿があった。
先程までの警戒はどこへやら。

「……なんか私が呼ばれたはずなのに放置された…………。」

「…マルティネスは誰かと喋れたらそれでいいんだよ。」

「なんかショック………」

マルティネス達の横では放置されたカテリーナとルウェリンがニ人で話していた。
ふと、力テリーナはルウェリンの顔をじっと見る。
茶髪に緑色の瞳。顔も結構整っている。昨日は暗くて、しかもフードを被っていたからよくわからなかったが、こんな顔をしていたのかと力テリーナは思った。

「…………何。」

「え、あ、その…かっこいいなぁ…って思って。彼女とかいるんですか?」

「………いない。」

「へー…良かったら私と…」

「ごめんタイプじゃない。」

グサァッと何かが、いや、言葉の矢がカテリーナに刺さる。

「…冗談ですよ。なーんちゃってまで言わせてくださいよ!!しかも即答って!!」

冗談とはいえ即答で断られるとか悲し過ぎる。
せめて最後まで言わせてほしかった。

「だってタイプじゃないし。」

「………じゃあどんなタイプが好きなんですか?」

「無言な人とか。」

…………無言な人がタイプってどういうことだ。

「………えっと、ようするに大人しい人ってことですか?」

「……多分。静かならそれでいい。」

「へ、へー…………」

なんと返事をすればいいのかわからなくなってしまった。

47:望月アメ ◆kvG6:2012/04/02(月) 02:22 ID:2p6

「………今までどんな所を旅してきたんですか?」

しばらく沈黙が続いたが、やっと話題を思いついた力テリーナがそう言った。
カテリーナは一度もこのファンド共和国から出たことがない。
この国は全部で35地区あり他の国と比べると大きい方だ。
そしてカテリーナ達はファンド共和国第1地区、首都スファケイトに住んでいる。
工業や経済、魔術などが発達しており、とても豊かな国なのだ。
外の国の話は学校や死んだ両親くらいからしか聞いたことがない。

「………どんな所って聞かれてもよく分からない。1つの国にそんな滞在しないから。」

「そうですか……」

「でも、」

「?」

「国とか地域によって服とか料理が違う。家の造りとか、風景とか。」

ちらりとルウェリンはカテリーナを見る。
カテリーナはキラキラとした目をしながらルウェリンの話を聞いていた。
…帰る場所を失って旅を始めてからこういうふうにマルティネス以外と会話をしたのは何年ぶりだろう。ふと、ルウェリンはそう思った。
ルウェリンは今まで、何人もの悪人を“破壊”してきた。
それは誰かに命令されたわけでなく、自分が勝手にやってきたことだ。
そして襲われている人の前で悪人を“破壊”して助けても、礼を言われたことはなかった。
『化け物』『人殺し』と、言われたことはあるが。
確かにルウェリンがしていることは人殺しと何一つ変わらない。たとえ“破壊”した人間が悪人でも。
けれど力テリーナはルウェリンに礼を言った。
目の前で人間が砂になったというのに。
彼女は今までの人と何かが違うのだ。

「……外の世界のことがそんなに知りたいのなら、」

もし彼女が、自分に全く『恐怖』を感じていないのなら、

「自分の目で確かめたらいいよ。」



この孤独から解放されるだろうか?

48:訂正 ◆kvG6:2012/04/02(月) 02:50 ID:2p6

なんか見直したら前書いたのファンドは街だったww
でも正しくは国です!!←
間違いだらけですみません。((土下座
まあ誰も見てないだろうけど……………orz

49:望月アメ ◆kvG6:2012/04/03(火) 01:27 ID:2p6

「以外と面白い人達だったね!」

「んー………」

夕方、カテリーナとアーネストはルウェリン達と別れ、帰る途中だった。

「………どうしたのカテリーナさん。さっきから様子が変だよ。」

ルウェリン達と別れてからカテリーナの様子が変だった。
話しかけても軽い返事をするだけ。
何かあったのかとアーネストは心配になる。

「ちょっと考え事……」

「そうですか…」

実はカテリーナは先程ルウェリンにこう言われたのだ。

『外の世界を見てみたいのなら、僕達についてきなよ。』

何故ルウェリンが自分を誘ったのかはわからないが、外の世界は是非とも見たい。
けれど、自分がこのまま旅に出てしまったら、おばあちゃんはどうなるのだろう。
できれば、おばあちゃんを一人にしたくない。

『明日の朝7時に出発する。もし一緒に来たいのなら、またここに来て。』

タイムリミットは明日の午前7時。
それまでに、どうするかを決めなければいけない。

50:望月アメ ◆kvG6:2012/04/03(火) 02:26 ID:2p6

『何考えてるんだルウェリン。』

二人が帰った後、マルティネスは少し責めるような声でルウェリンにそう言った。

「……なんだ聞いてたの。」

『まあね。アーネストちゃんは聞こえてなかったみたいだけど。……で、どういうつもりなわけ?』

「…………。」

ルウェリンはマルティネスの問いに答えようとしない。

『あの子は普通の人間なんだよ?わかってるのか?』

「……わかってるよ。」

『ならどうして、』

「悪人やモンスターからはちゃんと守るよ。」

『もし、カテリーナちゃんに俺が当たったらどうするつもりだ。砂になるんだぞ。戻せないんだぞ!?』

「………………。」

ルウェリンは言い返すことができなかった。
マルティネスの言っていることは正しい。
一度でもカテリーナがマルティネスの刃に触れてしまったら彼女は“破壊”されてしまう。そしてニ度と戻すことは出来ない。

『…………まさか、俺と出会う前のことを思い出したのか?』

「………。」

マルティネスがそう言うと、ルウェリンはうつむいた。
マルティネスと出会う前、彼はごく普通に暮らしていた。
だけど全てを失った。両親も、友人も、知り合いも。
一人になった彼は、自分が生きる“意味”を求めた。
そして辿り着いたのが“悪しき者の破壊”だった。

「……そんなんじゃない。」

『……あっそ。』

強がりだな、とマルティネスは心の中で呟いた。
本当は、心のどこかで寂しいと感じているくせに。

『しょうがない。このマルティネス様が対策を考えてあげよう。』

「え。」

『寂しがり屋で強がりなバカのために。』

「な………っバカにしないでよ…。」

『本当のこと言ったまでだよーん。』

「………………。」

ルウェリンがそっぽ向いてしまった。
やり過ぎたかとマルティネスは心配したが、ルウェリンは小さな声でこう言った。

「ありがとう。」

と。

51:望月アメ ◆kvG6:2012/04/04(水) 01:31 ID:2p6

一方、カテリーナはまだ悩んでいた。
旅に出たいという気持ちと祖母を一人にしたくないという気持ちがあり決めることができないのだ。

「……荷物はー応まとめたけど……やっぱり……でも……あああっもうっ!!」

ベッドに倒れ込み、天井を見る。

「………やっぱりおばあちゃんをー人になんて……」

そう呟くと、コンコンとドアをノックする音が聴こえた。祖母だ。

「入るよ、カテリーナ。」

祖母はドアを開けてカテリーナの部屋に入る。
そしてベッドの上にいるカテリーナに近付いた。

「どうしたの?おばあちゃん。」

カテリーナは起き上がって祖母と向き合う。
祖母は目を閉じた後、ゆっくりと口を開いた。

「カテリーナ、自分がやりたいことをやりなさい。」

「……え?」

「…あんたは本当にヘレンに似てるよ。私に遠慮して、やりたいことを諦めようとするところとか。」

ヘレンとは、今は亡きカテリーナの母親そして祖母の娘のことだ。

「…なんで、」

わかったの、とカテリーナが言う前に祖母は続けた。

「表情がね、ヘレンが旅に出るか迷ってた時と全くー緒だった。やっぱり親子だねぇ。」

母も、旅に出たいと思っていたのかとカテリーナは初めて知った。
今思えば、母が昔話してくれた外の世界の話は自身が体験した話だったのかもしれない。

「いいの?旅、しても…。」

「私のことは大丈夫さ。そんな弱い女じゃないよ。
あんたはやりたいことをやればいい。やらなきゃ、絶対後悔する。私は、後悔だけはして欲しくない。」

「おばあちゃん……」

祖母は優しくカテリーナに微笑んだ。

52:望月アメ ◆kvG6:2012/04/05(木) 01:16 ID:HnI

そして翌朝。
まだ午前6時で周りは薄暗く、風が少し冷たいが、天気予報では晴れると言っていた。
そのうち暖かくなるだろう。
カテリーナはそう思いながら玄関の外で祖母を待っていた。
なんでも渡そうと思ってた物をテーブルの上に置いてきてしまったらしい。

「待たせたねぇ。」

玄関から出てきた祖母の手には、指の部分がない赤い手袋が握られていた。

「これを持っておいき。あんたの父親が使ってた物だよ。」

「…お父さんが?」

父の手袋にしては小さいと思ったが、伸縮性の布らしく、触ってみるとよく伸びる。
使う人のサイズに合せるようになっているらしい。

「不審者とかモンスターに会ったらそれをつけて………」

「つけて?」

「思いっきり殴りなさい。」

「……殴るの?え、殴るの!?」

「そう、とにかく殴りなさい。なんでも、力が倍になるらしいから。」

祖母の口から殴るという言葉が出てきて驚いたカテリーナ。
というか他にもっと女性向きの武器がある気がするのだが。

「あ、ありがとう。」

カテリーナは少し戸惑ったが、祖母の気持ちは嬉しいようで、早速手袋を身に付ける。


「……じゃあ行ってくるね。おばあちゃん。」

「…体には気を付けるんだよ。」

「うん!」

そう返事をして歩きだす。

「いってらっしゃいカテリーナ!」

「いってきます!!」

祖母に手を振りながら、カテリーナは昨日の場所へと向かった。

53:望月アメ ◆kvG6:2012/04/06(金) 01:15 ID:HnI

「………来たね。」

ルウェリンはこちらに向かってくるカテリーナを見てそう呟いた。
カテリーナが目の前に来た所で立ち上がる。

「お待たせしましたっ!」

「……じゃあ行くよ。」

そう言ってカテリーナに背を向けて歩きだす。
すると、ルウェリンの背中に掛けられている剣のマルティネスがあることに気付いた。

『カテリーナちゃん荷物は?』

マルティネスがそう言ったのでルウェリンは思わず立ち止まる。
よく見るとカテリーナは荷物を何も持っていなかった。
まさかついて来ないつもりだっだのかとルウェリンとマルティネスは一瞬思う。

「あ、荷物は全部この中に入ってます。」

そう言ってカテリーナは服に付けている紅色の石のブローチを指差す。

「…何それ。」

「これは四次元収納ブローチっていう便利アイテムなんです。服とか道具とか食料とか入れられるんですよ〜知らなかったですか?」

『うん、知らなかった。最近の世の中って便利だねぇ…何でも入るの?それ。』

「大き過ぎる物とか公共の物とか動物や人間は入れられないようになってるのよ。」

「……ふーん。じゃあ行こう。」

一通り聞いたルウェリンはまた歩き出した。
その後ろをカテリーナはついて行く。

「ルウェリンさんが聞いたくせに興味無さそうな返事しないでくださいよ〜……」

「最後に質問したのはマルティネスだよ。」

『最初に質問したのはルウェリンでしょうが。』

「…喧嘩始めないでね?そういえばルウェリンさんの荷物は無いんですか?」

「ローブの中に全部ある。」

ルウェリンの荷物はローブの中に全て入っているらしい。
ローブの中がどうなっているのか気になるところである。
後で見てみようとカテリーナは思った。

54:望月アメ ◆kvG6:2012/04/07(土) 01:53 ID:HnI

「そういえばどこに行くんですか?」

第1地区のスファケイトから出たところでカテリーナはルウェリンとマルティネスにそう聞いた。
次はどこに行く予定なのだろうか。

「…確かこの国の地区全部回ったよね?」

『うん。多分。』

「じゃあ隣の国行こう。」

「…………………え、行き先今決めたんですか?」

「うん。」

ルウェリンはこくりと頷いた。
そしてしばらく沈黙が続く。
少し考えた後、カテリーナはおそるおそる口を開いた。

「………もしかして、今まで計画とか立てないで旅してました?」

「『うん。』」

即答の上にハモりましたよこいつら。

「だって地図持ってないし。」

『適当に辿り着いたとこ回ってたね。』

「……………………。」

呆れ過ぎて言葉も出ないカテリーナ。
ノープランでしかも地図を持っていないとなると本当に適当に旅をしてきたらしい。
ここは自分がなんとかしなければ。

「…計画立てるわよ。」

『えー面倒く』

「立てるわよ?」

『はい立てましょうすみません!!』

カテリーナのあまりの威圧感にビビるマルティネス。
それにしてもこの剣、ヘタレ過ぎである。

55:望月アメ ◆kvG6:2012/04/08(日) 01:39 ID:HnI

カテリーナが四次元収納ブローチにそっと触れると、ポンッと小さな音を立てながら薄いカード状の機械が出てきた。

『またなんか不思議な道具が出てきたな…』

「だね。」

ピッ、とカテリーナが機械の画面をタッチすると、立体映像の地図が浮かび上がった。

「わー…すごいね。」

「これは立体映像機っていって地図とかを立体映像で映し出すことができるのよ。」

『名前通りだな。』

「まぁそうね。で、今私達がいる所はここ。」

カテリーナが指差した所には矢印があった。
どうやら現在地がわかるようになっているらしい。

「ルウェリンさん達ってレイサルトとエバイオス、どっちの国からこの国に入った?」

レイサルトとエバイオスとはファンド共和国に接しているニつの隣国のことだ。
ファンドに入るにはどちらかの国を通らなければいけない。
ルウェリン達がまだ行っていない国に行った方がいいのでカテリーナはそう聞いたのだ。
海に面しているので船で来たという線もあるのだが、ルウェリン達の適当さを考えるとまず無い気がする。

「エバイオスはもう行ったよ。」

「じゃあ行き先はレイサルトね。レイサルトに行く道は…」

立体映像機をカテリーナが操作すると、地図上に光る線が浮かび上がった。

「これが道順?」

「そうよ。うーん…、この距離だと今日中には無理かな。」

『じゃあ今日はどこまで進むんだ?』

「このあたりじゃない?」

ルウェリンは大体3分の1くらいの所を指差す。

「うん。そこで休むなら明日の昼には着きそうね。」

『決定だな。』

こうして今日の計画を立て終えたルウェリン達。


ちなみにカテリーナがあまりの適当さに呆れたところから敬語を使わなくなったのをルウェリンとマルティネスは気付いていない。

56:訂正 ◆kvG6:2012/04/08(日) 01:51 ID:HnI

最後の文の↓

×敬語を使わなくなったのを

○敬語を全く使わなくなったのを

57:望月アメ ◆kvG6:2012/04/09(月) 01:10 ID:HnI

「おはようございます、カトリーヌおばさん。」

朝8時、ルウェリン達がレイサルトへ向かっている頃、スファケイトにあるカテリーナの家に何も知らないアーネストがいつも通りやって来た。

「おはようアーネちゃん。さ、中にお入り。」

「お邪魔します。」

中に入っていくと、アーネストはカテリーナがいないことに気付いた。

「カテリーナさんはまだ寝てるんですか?」

そうカテリーナの祖母であるカトリーヌに聞いた。
いつもなら既に起きていてリビングに居るのに、と不思議に思うアーネスト。

「おや?アーネちゃんカテリーナから聞いてなかったのかい?」

「え?」

「あの子、旅に出たよ。」

その後、アーネストは30分ほど硬直していたという。

58:望月アメ ◆kvG6:2012/04/11(水) 01:29 ID:HnI

同時刻。
昨日、『貨し出し禁止図書』を盗もうとした男が“破壊”された場所に、一人の男性の姿があった。

「……団員が着ていた服…それと大量に付着している砂…これは……」

“破壊”された男の服を見て、なにやらぶつぶつと呟いている。
この男性の様子からすると、“破壊”された男のことを知っているようだ。
男性は立ち上がると、耳に付けている通信機器に手をあて誰かと話し始めた。

「報告します。昨日魔導書を盗みに行かせた団員の着ていた服を発見いたしました。」

『………服?』

通信機器から聞こえてきたのは女性の声だった。

「はい。それと……服に、大量の砂が。」

『……砂……!!』

女性は心あたりがあるのか、驚いたような声でそう言った。

「……おそらく、“サニバルの魔剣”かと。」

『ばかな…あの剣を使える者がまだいるというのか……!?』

「……そのようですね。」

ニ人が話している“サニバルの魔剣”
とは、おそらくマルティネスのことだろう。

『……まさかエスパーニャの娘が…』

「いえ、あの娘があの大剣を使いこなすことはまず無理でしょう。その前に我々が各地に捨ててきた剣のー本をー人で探しだせたとは思えません。」

エスパーニャの娘…とは一体誰のことなのだろうか。

『では他に“サニバルの魔剣”を使える者がいる、ということで間違いないな…。
リダム、引き続きエスパーニャの娘を捜すと共に“サニバルの魔剣”を使える者も捜し出して捕まえろ。抵抗するなら殺してもかまわない。』

「承知。」

このニ人の会話の内容は分からないことばかり。
何を言っているのか、理解できないことだろう。
ただ一つ、分かったことは…

“ルウェリンに危険が迫っている”ということだけだ。

59:望月アメ ◆kvG6:2012/04/12(木) 00:49 ID:HnI

「今日はここまでだね。」

時は進み、周りが薄暗くなってきた午後の6時。
ルウェリン達は今日決めた目的地まで辿り着いた。
マルティネスを木が立っている所に置き、ルウェリンは野宿をする準備を始めた。

『野宿だけど、カテリーナちゃん大丈夫?』

「大丈夫よ!むしろ野宿はしてみたかったくらいだし!!」

女性であるカテリーナを気遣って聞いたマルティネスにそう返すカテリーナ。
心なしか目がキラキラと輝いているように見える。

『……カテリーナちゃんってちょっと変わってるね。』

全くもってマルティネスの言う通りである。

「ちょと、話してないで手伝ってよ。」

「あ、ごめんっ。何すればいい?」

不機嫌な感じに言われたので、すぐさまルウェリンに駆け寄るカテリーナ。
当然マルティネスは剣なので何もできないため木に置いたまま放置である。

「とりあえず木の枝、拾ってきて。」

「はーいっ」

嬉しそうに元気よく返事をするカテリーナ。
どうやら本当に野宿を楽しんでいるらしい。
普通の女性なら野宿は嫌がるはずなのに。

『やっぱ変わってるなぁ…』

木に寄りかかっているマルティネスは、そんなカテリーナの様子を見て再びそう呟いた。

60:綾姫 pwwje-m83785@ipone,ne.jp:2012/04/13(金) 17:20 ID:GNI

審判しに来たよ〜!

59>2行目の「今は」か「多分今は」を入れたら?
  読んでもらっている人の気持ち考えながらやりなさい!
  はっきり・・・何ていいたいのか・・・わかんない!!
  
これだけ!これだけね?後はこれを直せばおk!
この直すのを次の物語の宿題!おk?明日かあさって、来るから!

61:ヒマワリ:2012/04/13(金) 21:45 ID:etc

60>ちょっと言い方キツイよ……
   書いている人の気持ちも考えなよ。

62: ◆SJiw:2012/04/13(金) 23:02 ID:Rc6

>>60
読んでもらってるのは書き手じゃねp`;
ていう素朴な疑問。

何て言いたいかわからないっていうのは、読み手が浅読みをしてるからか書き手が陶酔してるかだね。
てことも考えた?

言うけどさ、読む人の気持ち考えるのって難しいと思うよ。
それが出来たら苦労しない、ってやつだね。

此処のいいところは携帯小説風に書いてないとこ。
あれは分かりやす過ぎて面白くないし、感情が///とかで表記されてて面白くない。
それじゃない分、私は好きだな。

あくまで私の評価。お気になさらず、どう捉えるかは本人次第。強制するなんて図々しいこと出来る程偉くもないので、、

長文失礼。

PS、周りの風景や状況が掴みづらいため、手を加えてもらえるとありがたいです。

>つっきー

63:望月アメ ◆kvG6:2012/04/14(土) 00:19 ID:HnI

とにかく私に足りないのは「表現力」と「文章力」ということですね。
そこのところ頑張ってみますっ!
>60、62

64:あしゅりー ◆SJiw:2012/04/14(土) 01:18 ID:Rc6

>つっきー

というより、、周りの状況がよくわからんのp`;
阿呆でごめんなさい((←
多分重点を置いてないのかもって思うからあまり言えないけど、付け足してもらえると幸いだよ!((

応援してるよー

文章力以前に常識が無い私←

65:望月アメ ◆kvG6:2012/04/14(土) 01:32 ID:HnI

しばらくすると、林の中から両手に大量の木の枝を持ったカテリーナが帰ってきた。
周りに草木が生い茂っているため、ところどころ服や髪に葉っぱが付いている。

「拾ってきたわよっ!」

カテリーナ本人は服が汚れてしまったことを全く気にしていないようで、
笑顔で拾ってきた木の枝を地面に置いた。

「次は何をすればいい?」

期待に満ちた瞳でルウェリンからの言葉を待つカテリーナ。
その姿はまるで好奇心旺盛な子供のようだ。

「……じゃあ自分のテントでも建てておいて。」

「了解しましたっ」

既にほとんどの準備が出来ていたため、ルウェリンがそう言うと、カテリーナは弾んだ声でそう返事をして、ビシッと敬礼をした。
木の枝を置いた所から少し離れたスペースに行き、四次元収納ブローチから取り出したテントを組み立て始めるカテリーナ。
よほど楽しいのか鼻歌まで歌いだした。

「……………そんなに楽しい?」

ルウェリンは楽しそうにするカテリーナを不思議に思い、そう尋ねてみた。
こんな暗くて、狭くて、木に囲まれた場所で野宿をするのは怖くないのだろうか?
カテリーナは手を止めてルウェリンの方に振り向く。

「そりゃ楽しいわよ。スファケイトじゃこんな体験できないから。」

そう言ってカテリーナはニッコリと微笑んだ。
スファケイトは大都会であるために、木や草などの自然がほとんど無いのだ。
地面は特殊レンガで敷き詰められ、家や建物は便利な機能で溢れている。
そんな中で育ったカテリーナにとって今の状況は素晴らしいと言えるくらい楽しいことなのである。

66:綾姫 pwwje-m83785@ipone,ne,jp:2012/04/14(土) 11:29 ID:GNI

だって・・・7レベでしょ?ズバって言うほうなんだもん!
7れべはキツクて当たり前!
うちもそう言われて小説出してきたんだし?
小説家になりたいんだったらきつい事言われてもいいようにしなきゃ!

67:綾姫 pwwje-m83785@ipone,ne,jp:2012/04/14(土) 11:31 ID:GNI

人に読んでもらいたい!とか楽しませたい!って言う気持ちは誰にでもあるはず!
だから、その気持ちを思いっきりぶつけると気持ち伝わると思うよ?

68:あしゅりー ◆SJiw:2012/04/14(土) 16:37 ID:Rc6


>>66
小説家になりたいと、此処のスレ主が言ったの?
評価にレベルも何もないだろ。
読み手として感じたことをそのまま言う。
レベル1だかなんだか知らないけど審査してほしいって思って来た人に気持ちをうやむやにした審査結果言うとか…よくそんなことが出来るよね。人として。1が一番優しい?優しくとか厳しくとか言う時点で評価じゃないんじゃない?

あまりレスするとスレ主に迷惑かかるからこの辺で私は黙る。

69:望月 ◆kvG6:2012/04/16(月) 02:37 ID:HnI

「ルウェリンさんはテント張らないの?」

カテリーナは自分のテントを建て終えた後、準備が終わったらしく岩の上に座っていたルウェリンにそう訪ねた。

「……木の上で寝るから、テントは必要無い。」

「……落ちないの?」

『ツッコむとこそこ!?』

普通そこは「木の上で寝るの!?」とかなんとか言うところだろう。
そう思って木に掛けられたままのマルティネスはツッコんだ。

「あ、そういえばいたっけマルティネス。」

「すっかり忘れてたわ。」

『お前らヒドいな!?』

二人の自分の扱いの悪さに泣きそうになるマルティネス。
といっても剣なので泣けるはずがないのだが。

「ごめんごめん。マルティネス影薄いから忘れてた。」

『お前は毎日俺といるだろ!!なんで忘れるの!?』

「マルティネスが剣だからじゃないかしら?」

『いやいや理由になってないよカテリーナちゃん!?』

そう必死に叫ぶマルティネス。
どうやらニ人はからかっているようで笑いをこらえている。
なんとなくマルティネスが不憫に思えてきた。

『もうやだこいつら…………』

マルティネスはできるだけニ人聴こえないように小さくそう呟いた。

70:望月アメ ◆kvG6:2012/04/17(火) 02:22 ID:HnI

翌日。
ルウェリン達は昨日と同じようにレイサルトへと向かうべく道を歩いていた。
しばらくすると、緑豊かな風景に似合わない金属でできている大きな壁がルウェリン達の目に入った。

「何、ここ。」

最初はレイサルトに着いたのかと思ったルウェリンだが、よく見ると『立ち入り禁止』の看板が立っていることに気付いたらしく、カテリーナにそう尋ねた。
どうやらレイサルトの入り口ではないらしい。

「ここは元々研究所だったらしいんだけど、実験に失敗したらしくて敷地内に暴走したモンスターが放たれちゃったらしいの。危険だから研究所は20年前に閉鎖されたままずっと放置されてるんだって。」

立体映像機の情報画面を見ながらそう説明するカテリーナ。
そして立体映像の地図を映し出した。

「この壁に沿いながら進んでいけばレイサルトまであと少しよ。」

そう言ってルウェリン達に地図を見せる。

『お、本当だ。レイサルトに続く道に出られるんだな。にしてもこの研究所大き過ぎだろ……これのせいで遠回りしなきゃいけないじゃん。』

この研究所はとてつもなく大きく敷地を囲む壁が楕円状になっているため、壁に沿って進むとかなりの遠回りになってしまうのだ。

「この研究所さえなければ真っ直ぐに行けて早いんだけどね〜…。」

そんなことをカテリーナが呟く。
するとルウェリンが口を開いてこう言った。

「……だったら敷地内通ればいいんじゃない?」

71:望月アメ ◆kvG6:2012/04/18(水) 02:12 ID:HnI

「えっと……話聞いてた?」

「うん。」

「中、危険なんだよ…?あと入り口は開かないようになってるし…。」

敷地内には凶暴化したモンスターがいる。
その前に入り口はモンスターが出てこないように厳重に鍵が掛かっているのだ。
その中をどうやって通ろうというのか。

「モンスターはいざとなったらマルティネスを使えば大丈夫だよ。君に当たると危険だから本当に危ないとき以外は普通の剣を使うけど。」

「あ、なるほど〜…………って、その前に入り口が無いから中には入れないんだって……。」

先程から言っているように、ここの入り口は開かないようになっている。
壁を登ってなら中に入れそうだが、高さがあるうえに足をかける所が無い。
乗り物を使うか魔法を使うしか方法は無い気がするが、乗り物を持っているわけもなく、ニ人は魔法も使えない。
ようするに中に入ることは出来ないのだ。

72:望月アメ ◆kvG6:2012/04/19(木) 01:28 ID:HnI

「ちょっといい?」

「へ?」

ルウェリンはそう言うとカテリーナの腕を掴み引き寄せた。
一体何をするつもりなのだろうか?

「静かにしててね」

「え、ちょっ!?」

カテリーナを肩に乗せて落ちないようにルウェリンはしっかりと持つ。
そして、足に思いっきり力を込めて壁の上へと飛び跳ねたのだ。

「ええぇえぇええぇぇぇっ!!!?」

思わず驚きの声を上げるカテリーナ。
軽く10mはあるであろう金属の壁を脚力だけで飛び越えるなんて普通ならまずありえない。
しかしルウェリンはなんなく飛び越えてしまったのである。
しかもカテリーナを抱えながら、だ。
トンッと敷地内に着地し、ルウェリンはカテリーナを肩から下ろした。
カテリーナはまだ何が起こったのかよくわかっていないようで目を見開いている。
そしてしばらくしてやっと何が起こったのか理解したカテリーナはぽつりと呟いた。

「一体どういう身体してんのよ………」

「………さぁ?」

もはや超人レベルである。

73:望月アメ ◆kvG6:2012/04/23(月) 02:04 ID:HnI

敷地内の中をみてみると、そこは森のように草木が生い茂っていた。
20年も放置されていたのだから当然のことだろう。
ルウェリンはマルティネスではなく、ごく普通の剣で伸び過ぎた草などを切り裂き道を作って進んで行く。

「……マルティネスを使った方が早いんじゃない?」

カテリーナがルウェリンに気をつかいそう言った。
マルティネスは植物は砂にできないけれど、細身の剣よりも大剣であるマルティネスを使った方が効率が良いだろうと思ったからだ。

「……さっき言ったでしょ。君に当たると危ないから本当に危険なときしか使わないって。」

「でも…」

『まぁまぁ。カテリーナちゃんの安全を第一に考えてのことだから。ね?』

自分のせいでルウェリンがマルティネスを使いにくくなっているということを少し申し訳なく思うカテリーナ。
これじゃただのお荷物だ。
そう考えると、何故ルウェリンは自分を誘ったのかとカテリーナは疑問に思う。
居ない方が楽なはずなのに。
そう色々とカテリーナが考えていると、突然ルウェリンが立ち止まった。

「どうかした?」

「…………あれ。」

ルウェリンが指差した所を見てみると、そこは木が折れ、草や花は真っ平らに潰れていた。
近寄って見てみると、明らかに人のものではない巨大な足跡があった。

「なにこれ……モンスターの足跡かしら?」

「……大きさもそれくらいだし…多分。」

これほど大きな足跡はあまり見たことがない。
恐らく研究所で実験に使われて変異したモンスターか何かだろう。
ルウェリンは足跡を観察するように見る。

「……この足跡かなり新しいよ。」

「え?」

「まだ近くにいると思う。」

「えぇ!?」

カテリーナが驚いてそう叫ぶと、突然ドスンッ、と大きな音が周りに響いた。
ニ人の声に反応してこちらに向かっているらしい。

「………少し離れてて。」

「あ、う、うん……」

ルウェリンはカテリーナを自分から遠ざけた。
そしてマルティネスの柄を握る。

『本当に危険なときにしか使わないって言ったばかりなのにな〜…いきなり危険なのに遭遇かよ。』

「うるさい集中して。」

『はいはい。』

ルウェリンは大剣マルティネスをかまえる。
そして……

足跡の主が姿を現した。

74:不良品:2012/04/23(月) 16:25 ID:hGI

■なぜ主人公は真夜中に外に出ていたのか?
・主人公が通り魔に追いかけられるはめになった背景や事情が見えず、ただただ首を傾げながら読むばかりです。

■通り魔とは突発的に現れたものなのか? それとも以前からたびたび現れ噂されていたのか?
・突発的に現れたものなら、通り魔に遭遇する描写がないと緊迫感に欠けます。
・以前からたびたび現れていたものなら、「わたしなら大丈夫っしょwwww」といわゆる死亡フラグの立つ描写を挟むなど、もうひとつパンチが欲しかったです。

■髪を切り刻まれる描写があったが、一体なにを使って切り刻まれたのか?
・まさか素手で切り刻んだわけではないですよね?
・凶器を使っていたなら、ナイフでも鉈でもチェーンソーでもなんでも、とにかく凶器を所持している描写が欲しかったです。

■「これも破壊するの?」という発言に対する主人公のリアクション……。
・それまで通り魔に襲われていたのだから、もっとパニックをおこしていてもおかしくないはず。
・空気を読みすぎてるというか……。もっと「状況が把握できずに右往左往している」描写をいれてもいいくらいです。

■あー、なんだよかったよかった。砂になるかと思った。
・ルウェリンが直接マルティネスを用いた描写がないのに、どうしてルウェリンが通り魔を砂にしたのだと理解できているのか。
・砂になってしまった通り魔を見て、主人公はなぜなんとも思わないのか。まったく怖がってないですよね?
・破壊というワードを聞いて、なぜ「砂になる」という風に直結して捉えられるのか。
・普通なら「破壊wwwなに言ってんだこいつわろすwww今助けてくれたんとちゃうんwww」くらいのリアクションをとってもいいはず。

>>3まで読んだ感想です。
全体を通して筋が通ってない部分が多すぎたように見受けられました。辻褄が合ってないというか。
失礼いたしました。

75:望月アメ ◆kvG6:2012/04/23(月) 18:45 ID:HnI

Σおぉっ的確な問題点指摘ありがとうございます。
たしかに辻褄あってないですね…すみません;;
通り魔が砂になっても何とも思わないのは色々と事情があるんですけどネタバレになるので伏せておきます。
不良品さんがおっしゃってくれた問題点に気を付けて訂正しておきます。
ありがとうございます。
>>74

76:一週間ぶりの更新 ◆kvG6:2012/05/01(火) 01:17 ID:AgQ

「ゴーレム…………!!」

ドスン…ッ、と音を立てながら現れたのは身長3mほどの人型ゴーレムと呼ばれるものだった。
頑丈な石の体には苔や草がこびりついている。

『侵入者、確認。排除シマス。』

ゴーレムはルウェリン達を確認すると、機械音の声でそう言った。
どうやらこの研究所の防犯用ゴーレムだったらしい。
ここが閉鎖されてもなお作動し続けていたのだ。
ゴレームがルウェリン目掛け大きな拳を振り下ろした。
しかしルウェリンは攻撃を避け、外れたゴーレムの拳は後ろにあった木に当たり、その木はメキメキと嫌な音を立てて倒れた。
ルウェリンは素早くゴーレムの後ろに周りマルティネスを振り上げる。

「………………。」

ガンッ!!、と鈍い音が響くが、ゴーレムは全くダメージを受けていない。
ルウェリンはゴーレムから距離をとる。

「……やっぱ無理っぽいね。」

『………だな。』

そう…このゴーレムは“生き物”ではない。
そのため、マルティネスの力が効かないのだ。

77:みき ◆GOB.:2012/05/03(木) 19:51 ID:zkk

もっちゃーん、 8行目の最初ゴーレムじゃなくてゴレームになっとるょ。

78:アメ ◆kvG6:2012/05/03(木) 19:55 ID:AgQ

Σマジだwwww
訂正版は直しとくww
ありがとみらぴー!!

79:みき ◆GOB.:2012/05/03(木) 23:05 ID:zkk

訂正版どこにあるかおしえてーw

80:みき ◆GOB.:2012/05/03(木) 23:07 ID:zkk

あ、あとごめん地学部はいれなさそう、ってなわけでおやすみ

81:アメ ◆kvG6:2012/05/05(土) 03:07 ID:AgQ

『………どうする?ただひたすら攻撃してもダメージは与えられそうにないんだが…。』

「……………。」

マルティネスの言う通り、このゴーレムはとても頑丈に出来ているらしくダメージは与えられそうにない。
先程攻撃した部分もかすり傷程度。このままでは逆にマルティネスが壊れてしまうかもしれないのだ。
魔法でも使えれば倒せるかもしれないが、前にも言った通りルウェリンもカテリーナも魔法は使えない。
となると残る道はただ一つ…

「よし…逃げる。」

逃げるのかい!!とカテリーナは遠くから心の中でツッコむ。
けれどゴーレムの歩く速さはたかが知れているし逃げた方がてっとり早いに違いない。
ここはひとまずこのゴーレムから逃げて急いでこの敷地内から出よう。
だからこの危険な研究所の敷地内なんかに入りたくなかったんだと小さく呟くカテリーナ。
しかしルウェリン達にはカテリーナのそんな呟きは聴こえていない。
ルウェリンは逃げようと素早くカテリーナの方向へ向かおうとした。

しかし、

ギュインッ!!と次の瞬間ゴーレムはルウェリンに向けて、頭部にある目の形を模した機械からレーザービームのような攻撃をしてきたのだ。
ギリギリの所でかわしたが、これでは簡単には逃げられない。

『ちくしょう…このゴーレム何でもアリかよ…!!』

マルティネスは困ったようにそう言った。
頑丈な体、凄まじい腕力、強力なレーザー攻撃。
一体、どうすればよいのだろうか………?

82:アメ ◆kvG6:2012/05/10(木) 01:05 ID:AgQ

遠くからルウェリンとゴーレムの様子を見ていたカテリーナは自分がどうすればよいか考えていた。
はっきり言ってカテリーナにはゴーレムを倒せるような力は無い。
都会育ちで実戦経験などないわけだから当然のことである。
しかし、ただこのまま黙って見ているだけではダメなのだ。
カテリーナはなんとかしてこのゴーレムから逃げる方法を考える。
まず彼女はこのゴーレムを観察していて分かったことを頭の中で整理してみた。

まず一つ目。このゴーレムの攻撃の仕方。
“殴る”と“レーザー光線”
まずここでカテリーナは疑問に思った。
何故最初からレーザーで攻撃をしなかったのか?
殴るよりレーザーで攻撃した方が早い上に楽だろう。
ここから考えられる推測は2つ。
“エネルギーに限りがある”もしくは“攻撃できる範囲が限られている”
このどちらかだろう。
このゴーレムが20年間動き続けているのならばエネルギーが限られているとは考えにくい。
ならばおそらくこのゴーレムは攻撃範囲が限らているのだろう。
もしかしたら自分から数メートル離れていないとレーザー光線が打てないのではないだろうか?
だからルウェリンが近くにいたときは拳を使ったということなのではないか?
そしてニつ目。“何故自分には攻撃してこないのか?”
ルウェリンには今も攻撃を続けている。
しかしカテリーナには一切攻撃してこないのだ。
それは何故か?
確かゴーレムが現れたとき、カテリーナはルウェリンに言われた通り少し離れていた。そして草むらの中に身を潜めたのだ。
ということは、ゴーレムはカテリーナが居ることに気が付いていないのではないのだろうか。
ならば、ゴーレムが確認したのは『ルウェリン達』ではなく、『ルウェリンただ一人』ということになる。
そこでカテリーナは閃いた。
このゴーレムから逃げる方法を。

83:望月アメ ◆kvG6:2012/05/16(水) 02:22 ID:AgQ

カテリーナが思い付いた作戦。それは“ゴーレムを仰向けにする”という内容だった。
一見馬鹿らしいと思うかもしれないが、ゴーレムの行動パターンからしてこれが一番いいとカテリーナは思ったのだ。
横に倒してしまえば殴ることも出来ないし、ゴーレムの首は固定されていて動かないためレーザー光線がこちらに当たることはない。
ゴーレムが立ち上がってしまう前に全力で走れば逃げられるはずだと彼女は考えた。
問題はどうやってゴーレムを仰向けにするかなのだが…

「…………。」

カテリーナは自分の手に見に付けている手袋を見た。
彼女の祖母、カトリーヌが旅に出る直前に渡してくれた殴る力が倍になるという父の形見の手袋。
この手袋の力がどれほどあるかは知らない。
しかし今はこの手袋の力を信じるしかないのだ。
カテリーナは拳に力を込め、茂みに身を隠しながらゆっくりと、気付かれないように後ろからゴーレムに近付いていく。
深呼吸をし、覚悟を決めてゴーレム目掛けて走り出しす。
そして…

「うぉおおぉおぉおおおぉおおりゃぁああぁあぁぁッッッ!!!!」

カテリーナは大きな声で叫びながら渾身の力でゴーレムの右足を殴りつけた。


ズドォォォオオオオオオオオンッッ!!!!

次の瞬間、カテリーナが殴りつけたゴーレムの右足は粉々に砕け、バランスを崩したゴーレムは凄まじい音をたてて後ろへと倒れた。
カテリーナは倒れてきたゴーレムを避け、ゴーレムから距離をとる。

「そ、想像以上……………」

バランスを崩させるだけのつもりだったのだが、マルティネスで攻撃してもかすり傷程度だったゴーレムの右足が粉々になってしまい驚くカテリーナ。
力が倍になるとは聞いていたが、ここまでとは思っていなかった。
一体これ何十倍ですかおばあちゃん。

「って、ぼーっとしてる場合じゃないわ!急いで逃げるわよルウェリンさん!!」

「え、あぁ…うん。」

突然の出来事にただ呆然としていたルウェリンの手を引きカテリーナは急いでこの場から逃げ去った。

84:望月アメ ◆kvG6:2012/05/17(木) 01:18 ID:AgQ

「ここまで来れば大丈夫かしら…」

ゴーレムが居た所から大分離れたところまで逃げて来たカテリーナとルウェリン。
しかしゴーレムが一体だけとは限らないためまだ油断は出来ない。
先程より進む速さを緩めるが、周りを注意深く警戒しながら進んで行く。

『……カテリーナちゃんってさぁ………怪力少女だったんだね。』

突然そんな発言をしたマルティネスにカテリーナは驚き、はぁ!?と声を上げた。
彼女が着けている手袋のことを知らないためそう勘違いしたのだろう。

「違うわよ!?あ、あれはこの手袋のおかげなわけで…!断じてあれは私の力じゃないの!!」

誤解を解くため必死で説明するカテリーナ。
しかしマルティネスはへ〜…ふ〜ん…と全く信じていないような返事ばかりを返してくる。
ルウェリンに至っては先程の怪力を見て若干引いているようだ。

「ち、違うの!ちょっとルウェリンさん、マルティネス!信じてよ!!」

野宿を楽しんだり服が汚れても気にしない彼女だが、どうも怪力だと思われるのは嫌らしい。
なんともよく分からない思考である。

85:大工 hoge:2012/05/17(木) 23:54 ID:09I

初めまして〜
とても面白いですね♪
\('ω' = 'ω')/

86:アメ ◆kvG6:2012/05/18(金) 00:16 ID:AgQ

ありがとうございます^^

87:望月アメ@10日ぶりの更新 ◆kvG6:2012/05/27(日) 02:29 ID:AgQ

色々あったものの、その後は何事もなくルウェリン達は敷地の反対側まで辿り着くことができた。
ゴーレムのせいでこの近道が良かったのかよく分からないが時間は短縮できたのでまあいいとしよう。

「全く…こんな危険な敷地内の中を通って近道をしようと考えるなんてきっとルウェリンさんだけよ?」

ルウェリンのせいで危ない目にあったカテリーナはまだ少し不機嫌な様子でそう呟いた。
そんな彼女をマルティネスがまあまあと言ってなだめる。
しかし当のルウェリンは先程からずっと上を向いていてカテリーナの話を聞いていなかった。

「………ルウェリンさん?」

そんな彼の様子を見て不思議に思いカテリーナはルウェリンに声を掛けた。
彼女がどうしたの?と言う前にルウェリンはねぇ、と呟き壁の真上を指差す。

「あれって…人だよね?」

え?とカテリーナはルウェリンの指差した方向を見てみると、確かに壁の一番上の所に人影が見える。
遠くてよく見えないが間違いなく人だ。
そしてその人影は壁から飛び降りニ人の目の前に勢い良く着地した。

88:アメ@更新停滞中 ◆kvG6:2012/06/05(火) 01:26 ID:twA

ニ人の目の前に着地したのはレイサルト人特有の褐色肌をした18歳くらいの少年だった。
髪を上で束ね、ニ本の白と黒の剣を背中に背負っている。
少年はルウェリンとカテリーナを一瞬驚いた様子で見た後、しばらくしてから口を開いた。

「……まさかここに人がいるなんてな…。お前らなんでここに?」

「あ、ちょっと近道に…」

カテリーナの返事を聞き、ならいい。と、少年は呟くと、ニ人の前を通り過ぎる。
カテリーナは慌てて少年を呼び止め、この先にはゴーレムがいるから危険だと伝えたが、少年は問題ないと言ってそのまま林で覆われた敷地内へと進んでいってしまった。
大丈夫かしら…と心配するカテリーナにルウェリンは知らない人だから気にしなくてもいいと言って、入ってきた時と同じように塀を飛び越え、ニ人は敷地内から出ていった。




『シン…侵入…者…削除、削除削除削除削除削除削除削除削除』

右足をカテリーナに破壊されたゴーレムは、新たな標的を見つけ倒れた体を何とか起こそうとしていた。
そんなゴーレムを少年はぼんやりと見る。

「もう研究所には誰も居ないっていうのに20年間も守り続けてたんだな。こいつ。」

近くには自分とゴーレム以外誰も居ないはずなのにそう少年は呟く。
すると少年は背中の剣を一本だけ抜き取り、その剣をゴーレムに向けた。

「…これは“物質”だよな?」

『ああ。』

少年の問い掛けに、どこからか別の声が応える。
なら大丈夫だな。と少年は言うとゴーレムに剣を振りかざした。



そして次の瞬間。ゴーレムは砂となり消えてしまった。

89:アメ@テスト終わったので復活! ◆kvG6:2012/06/26(火) 02:12 ID:twA

しばらくしてルウェリン達は目的地であるレイサルト王国に到着した。
巨大な門をくぐるとそこには活気溢れる街が広がっていて、様々な店が並んでいる。
自分の住んでいた国と少し違った雰囲気にわくわくしているカテリーナは周りを隅々まで見渡し始めた。
今にも走り出しそうにそわそわしているカテリーナを見て、ルウェリンがどこか行きたい所はあるか、と尋ねるとカテリーナは凄い勢いでルウェリンの方へと振り返った。

「まず街を隅々まで見て回りたいの!!」

大きな声でそう叫んだ彼女の目はとても輝いていた。
こうなるとカテリーナは止まらない。
まあルウェリンには止めるつもりなど全く無いが。

「じゃあ色々と回ってみようか。」

「やった!」

そう言った途端彼女は早足で歩き出した。
どうやら一刻も早くレイサルトの街並みを見てみたいらしい。
軽くスキップをしているカテリーナを見て、やっぱりどこか面白い人だと思いながら、嬉しそうに歩くカテリーナの後ろをルウェリンはついて行った。

90:アメ ◆kvG6:2012/07/13(金) 20:12 ID:twA

時の流れとは早いもので、街を隅々まで見て回っていたらいつの間にか夕方になってしまっていた。
街並みはオレンジ色に染まり、人々は次々と家の中へと入って行く。
そろそろ宿にでも入ろうかとルウェリンが考えていると、ニ人は小さな広場に出た。
人があまり来なさそうな広場でニ人の目に入ったのはいかにも古そうな巨大な鏡。
何故こんな所に鏡があるのだろう?
そんな疑問がカテリーナの頭に浮かんだ。
鏡をよく見てみると縁にはかなり凝った装飾が施してある。
色は所々剥がれ落ちているものの、その不思議な模様には何か惹かれるものがあり、ついつい見入ってしまう。
ルウェリンも何かを感じるようで、カテリーナと同じように鏡をじっと見つめている。
しばらく鏡を見ていると、突然ニ人の目に信じられないものが映った。

ぼんやりと、しかし確実に…ルウェリンの背後に見知らぬ男性の姿が鏡に映っていた。

91:アメ ◆kvG6:2012/07/15(日) 22:11 ID:twA

ルウェリンとカテリーナの二人は咄嗟に振り返る。
しかしルウェリンの背後、それどころか広場にはニ人以外誰も居ない。
もし居たとしてもルウェリンなら気配で分かるはずだ。
気のせいかと思ったが、ルウェリンとカテリーナのニ人共が鏡に映った男性の姿を見ていた。
もう一度鏡に目をやってみるが、先程の男性の姿などどこにも映っていない。

「い、今のは一体…」

奇妙な出来事にカテリーナが困惑していると、今度は足音が聞こえてきた。
カテリーナは肩をびくりと震わせルウェリンの後ろに隠れる。
ローブを掴んだ手はルウェリンにも分かるほど震えていた。
足音はニ人が通って来た道からしているようだ。
どんどん大きくなっていく足音。
緊迫する空気。


「あれ、こんな所に誰か居るなんて珍しい。」

しかし現れたのは意外にもただの少女だった。

安心感からなのかカテリーナはへなへなと地面に膝をつく。
そんな彼女の様子を見て少女は驚いたのかカテリーナに駆け寄ってきた。
大丈夫ですか?と尋ねる少女にカテリーナは頷いてちらりと鏡を見る。
さっきのは一体なんだったのかとカテリーナが思っていると、少女がもしかして…と呟いた。
不思議に思いルウェリンとカテリーナは少女の方を見る。
すると少女は言葉の続きを口にした。

「何か、見えたんですか?」

少女は意味深に鏡に視線を向ける。

「…この鏡のこと、何か知ってるの?」

そんなルウェリンと問いに少女はこくりと頷く。

「この鏡は見えないものが見える鏡……



 “サニバルの鏡”という鏡なんです。」

92:アメ ◆kvG6:2012/07/16(月) 16:21 ID:twA

サニバルの一族というのは知っていますか?という少女の問いに二人は首を横に振る。
まぁ知らないのは当然ですよね。と少女は呟いた。

「この鏡のことが気になって色々と調べてみたんですよ。鏡の縁の模様の中に一際目立っている印があるでしょう?それがサニバルの一族の証らしいんです。」

言われた通り縁の模様を見てみると、確かに一際目立っている印がある。
まるでアルファベットの“S”のような…。
その印を見てルウェリンはあれ、と声をあげる。
不思議に思ったカテリーナはどうかした?と尋ねたが、ルウェリンは何も言わなかった。

「サニバルの一族はこの世に存在する全ての魔法や魔道具の起源と言われている一族なんですよ。
簡単に言うと異端者、つまり不思議な力を持っている人達の集まり。
遥か昔、人並み外れた魔力を持っていたために異端児として村を追い出されてしまったエリウ=サニバルという少女が、自分と同じ境遇の者を集めたことが始まりとされています。
この鏡はそのサニバルの一族が作り出した魔道具の一つということです。」

「…でも魔法とかの起源だったら学校とかで習いそうなことだけど、そんな一族聞いたこと無いわよ?あなたは一体どうやって調べたの?」

カテリーナはそう不思議に思い少女にそう尋ねた。
カテリーナは学校に通っていたがサニバルの一族なんて聞いたこともないのだ。
すると少女は、そりゃそうですよ。と笑った。

「サニバルの一族についての文献はこの世に数冊しか存在しないんですよ。本当にそんな一族が存在していたのか定かでない以上、学校などで教えるわけがありません。ただの伝説だと言う人もいますし。
まぁ、私はサニバルの一族が存在していたと信じていますけどね。
ちなみにウチがどうしてサニバルの一族のことをここまで調べられたのかは秘密ということにしておきますかね。コネがあったとだけ言っておきましょう。」

得意げに話す少女を見てカテリーナは、あなたは一体…と呟いた。
少女は、あぁ、そういえば名乗ってなかったですね。と言う。

「ウチはミーリア。ただの占い師だよ。」

彼女はそう言って微笑んだ。

93:うにゃ ◆4AUw:2012/07/16(月) 23:06 ID:HpQ

きゃわみゃぁあああ!!!!!(Σ

神が、髪が後輪なすったぁぁあああ!!!(誤変換やめ



天と地の差である文才を見せつけてくれてどうもありがとう。^p^。

94:アメ ◆kvG6:2012/07/17(火) 00:29 ID:twA

Σうぇええええ!!?;
うにゃさんの小説の方が圧倒的に神じゃないですかぁああ!!!!

95:アメ ◆kvG6:2012/07/19(木) 02:12 ID:twA

カテリーナは少女、ミーリアの名前を聞いた途端に、えぇっ!?と驚きの声をあげる。
何事かと思いルウェリンがカテリーナの方を見ると、彼女は驚きと喜びが入り混じったような表情をしていた。
思わずルウェリンがどうしたの…?と尋ねると、カテリーナは知らないの!?と声を荒げる。

「天才占い師ミーリア。わずか16歳ながらもその実力は折り紙付きであり今までにない独特の占い方法で過去も未来も言い当てる占い師!
だけど一定の場所には留まらず神出鬼没だからめったに会うことができないことで有名な人なのよ!!」

「へ、へぇ……」

カテリーナの迫力ある解説にどう対応したら良いのか分からないルウェリン。
軽く返事を返したが、カテリーナは既にミーリアの前に行き占ってもらえないかと頼んでいた。
ミーリアはカテリーナの申し出を快く了承し、四次元収納ブローチからテーブルと三つの椅子を取り出すと、ニ人に椅子に座るように指示をする。
二人が座ったのを確認し、ミーリアはタロットカードのようなものを二枚と虹色をした羽ペンを取り出した後、
二人にフルネーム、年齢、誕生日は?と尋ねた。

「私はカテリーナ・マッカーシー。年齢は19歳で誕生日は3月31日よ。」

「……ルウェリン・スタンフォード。24歳。3月1日。」

ミーリアは二人のフルネームと年齢、誕生日をそれぞれのカードに羽ペンで書いていく。
カテリーナは少し驚いた様子でルウェリンを見ていたが、すぐにミーリアの方に向き直す。
カードに書き終えたミーリアは、テーブルにカードを裏を面にしてそっと置いた。
カードに手をかざし、彼女は呪文のようなものを囁く。

「アーリエルト=エータルファノ…」


そしてカードはまばゆい光を放ち始めた。

96:スランプ中のアメが更新してみるぜ!! ◆kvG6:2012/07/31(火) 08:47 ID:FZM

占いの結果を聞きミーリアと別れた二人は宿へと向かっていた。
辺りは薄暗く、肌に触れる空気が冷たい。
人は既に建物の中に入ってしまったようで道には誰もいなかった。
カテリーナは誰も居ないという状況がこんなにも恨めしいと思ったことは無い。
通り魔に襲われた時にも思ったかもしれないが、それとはまた別の話だ。
現在二人の間では妙な沈黙が続いていた。
その原因は間違いなくミーリアの占い結果である。


ミーリアの占いでカテリーナは両親を失ったことを指摘された。
まさか両親のことについて言われるとは思っていなかったカテリーナは驚いたのだが、ミーリアは構わず言葉を続けた。

「あなたのせいでは無いんです。」

突然言われたその言葉の意味はカテリーナにはわからない。
けれどもミーリアの表情があまりにも真剣で、カテリーナは頷くしかなかった。

…ここまではまだよかったのだ。
問題はこの次、現在のこの妙な沈黙の原因になったルウェリンについての占い結果である。

「ルウェリンさんの過去はウチが今まで見てきた誰よりも凄かったよ。
あんなことがあってよく立ち直れたね。でも…」

ミーリアはルウェリンの過去について話そうとしたのだ。
しかしルウェリンは彼女が全てを言う前に素早く席を立ってしまった。
おそらくミーリアが口にしようとしたことは、ルウェリンにとって触れて欲しくないことだったに違いない。
あーあ・・・と残念そうにするミーリアは小さい声で、現実から目を背けちゃダメなのにな。と呟いた。
それからミーリアは、ルウェリンを追いかけようとしているカテリーナを引き止めて、彼の未来のことについて話した。

「ルウェリンさんに伝えてください。
未来のルウェリンさんには大切な人達がいると。
あなたは独りではないということを。」

お願いします。そう頼まれたカテリーナは急いでルウェリンを追いかけた。


そして現在に至る訳だが、カテリーナはミーリアに頼まれたことを未だにルウェリンに伝えられないでいた。
伝えるどころか話し掛けることすら出来ていないのだ。
ルウェリンが先程から不機嫌オーラを放っているせいで。

「一体どうすればいいのよ……」

ルウェリンには聞こえない程の小さな声でそう呟くカテリーナ。
とにかくこの沈黙からは抜け出したい。
しかし今、彼に話し掛けたら砂にされてしまうのではないかと彼女は思ってしまう。
ルウェリンがカテリーナにそんなことをするわけがないのだが、そう思ってしまう程に彼の不機嫌は明らかなのだ。
どうすれば良いのか悩んでいると、カテリーナの頭にふと何かが過ぎった。
そういえば自分は何か忘れているのではないかと。
そして彼女は思い出した。自分が忘れていたことを。
人を砂にするのはルウェリンではない。ルウェリンが使う剣だ。
そしてその剣は人格を持っていることを彼女はすっかり忘れていた。

そうだ、どうしてもっと早く気付かなかったんだ。

『なんで二人共黙ってるんだ?』

この沈黙を打破出来るマルティネスという救世主がいたことに。

97:アメ ◆kvG6:2012/08/31(金) 23:37 ID:twA

助かったとカテリーナはホッとして溜め息をつく。
それにしても今までマルティネスは何故喋らなかったのだろうか。
思い返してみるとマルティネスは研究所を出た辺りから今まで一言も喋っていない。
そんなことをカテリーナが考えていると、マルティネスが構ってくれと言わんばかりに無視しないでくれよ俺泣いちゃうぞ?と言い始めた。
剣だから泣けないだろうに。
ルウェリンはというとマルティネスのことを完全に無視し、相変わらず不機嫌オーラを放っていた。
あまり状況は変わっていないが、話し相手が出来ただけでも有り難いと彼女はマルティネスに今までどうして喋らなかったの?と話し掛ける。
すると寝ていたという返事が返ってきた。
剣が寝るのか、とツッコミたい所だがその前に剣が喋ること自体が普通に有り得ないことなので触れないでおこう。
マルティネスが言うには、普段からルウェリンに人が多い所では喋るなと言われているらしい。
そういう時は暇を潰すために寝るんだとか。

『それで?何があったの。ルウェリン物凄い不機嫌だけど。』

やはりルウェリンが不機嫌だということが気になるようだ。
しかし本人が居る前で先程のことを話すのは気が引ける。

「えと、まぁ、その、色々あったのよ……。」

後で事情を話すから、とマルティネスに言い、納得させるカテリーナ。
しかし再び話題が無くなり沈黙が訪れた。
なにか話題になりそうなことはないかとカテリーナは考える。
何でもいいから話題になることを……

「そ、そういえばルウェリンさんのファミリーネームってスタンフォードなのね!アーネちゃんと同じでびっくりしちゃったわ!!」

カテリーナの口から咄嗟に出て来たのは先程ミーリアに占って貰うときに聞かれたフルネームのことだった。
ルウェリンがスタンフォードだと名乗ったときにカテリーナが驚いた様子で彼を見たのは、彼女の親友であるアーネストとファミリーネームが同じだったからである。
ファミリーネームが同じというのはそう珍しいことではないのだが、やはり親友と同じだということで気になるらしい。
しかしこの話題だとマルティネスに話し掛けているはずがルウェリンに話し掛けているようにしか聞こえない。
カテリーナはしまったと思ったが、ルウェリンは全く興味が無いらしく、先程と変わらない様子だ。

『へぇ、アーネストちゃんもスタンフォードっていうのか〜。ルウェリンとは性格が真逆だけど。』

「同じスタンフォードでも全然違うわよね。あ、でも私が初めてアーネちゃんと出会ったときルウェリンさんみたいな雰囲気だったわよ。」

『え、マジで?想像出来ないなぁ〜』

意外にも会話が弾み、しばらくの間カテリーナとマルティネはアーネストのことについて話していた。
この場に居ないにもかかわらず話のネタにされているアーネストが少し可哀相だ。

『というかさ、カテリーナちゃんに頼りっきりのアーネストちゃんがよくお前に旅に行くの許したよね。結構騒いだりしたんじゃない?』

マルティネスのその一言でカテリーナはピタリと動きを止めた。
よく見ると額に冷や汗をかいていて少し顔が青ざめている。
まさか……とマルティネスは思い恐る恐る尋ねてみた。

『……旅に出ること言ってないとか?』

「どうしよう忘れてた……っ!!」

おいおいそれでも親友なのかとマルティネスは言いたいがカテリーナがこれ以上ないくらいに動揺しているのでそれどころではない。
とりあえず電話でもしてみたらどうだとマルティネスは提案し、カテリーナは慌てて携帯電話でアーネストに電話をかける。
しかし数回のコール後、アーネストは電話に出ることはなく、携帯電話からはブツリという音が鳴り響いた。
その後カテリーナは泣き出し、流石のルウェリンも驚いたようでマルティネスと共に泣き止ませるのに大変苦労したという。

98:アメ@スランプ脱出したかもしれない ◆kvG6:2012/09/04(火) 20:36 ID:twA

一方ルウェリン達別れたミーリアは広場の鏡の前である人物を待っていた。
既に辺りは暗く、彼女は今回もダメかな、と溜め息をつく。
しかしその直後、彼女が待っていた人物が広場に現れた。

「遅くなって悪い。」

「本当に遅かったねぇ。どうしたのさウフェ君。」

ウフェと呼ばれたレイサルト人の少年は疲れたように肩に担いでいた大きな袋をレンガが敷き詰められた地面に下ろす。
袋の中には古そうな道具のような物が沢山入っていた。

「どうしたもこうしたもモンスターに囲まれたんだよ。
研究所にあんな大量にいるなんて聞いてねぇぞ。」

「多分増殖したんじゃないかなぁ。ウチだって知らなかったんだから仕方ないでしょ〜?
今までに依頼してきた人達は研究所に行ったっきり戻って来ないし。」

それを先に言ってくれと深い溜め息をつくウフェ。
彼はミーリアに依頼されてあの研究所からとある物を取って来たのだ。
ミーリアがこの依頼をしたのは彼が初めてではないようだが、研究所から無事に帰って来たのはウフェが初めてのようだ。
恐らくゴーレムに倒されたのかモンスターの餌食になったかのどちらかだろう。疲れ気味のウフェを気にもとめずミーリアは袋の中を確認し始めた。

「うんっ。頼んだ物に間違いないね。研究所の所長だった男が集めていたサニバル族の魔道具!ウチ、これが欲しかったんだよねぇ〜。」

満足そうに魔道具を眺めるミーリア。
よく見るとその魔道具には広場の巨大な鏡に刻まれている印と同じものが刻まれていた。

「……それにしてもレイサルトにこんな鏡があるなんてな。」

「ここは一部の人しか知らない場所だからねぇ。ウフェ君の村はもっと西にあるし知らないのも無理ないよ。」

鏡を見ながらまぁそうだなと呟いた後、ウフェはあることに気付く。

「……俺、お前に故郷のことは言ってないはずなんだが。」

「あ、ごっめーん。勝手に占っちゃった。」

ミーリアの手には“ウフェ・バルニー 18歳 8月7日”と書かれたカードがあり、そのカードを鏡ごしに見た彼は、勝手人の人生を見るなとミーリアを睨む。
バツが悪そうにミーリアが目を反らすと、ウフェが突然声をあげた。
どうしたのかと驚いたミーリアは急いでウフェの方を見る。
彼は驚いた様子で鏡を指差しながら、今何か知らない奴が鏡に映っていたと言う。
しかし鏡にはウフェとミーリアしか映っていなかった。

「君も何か見たんだね……。」

「君もってどういうことだよ。お前も見たのか?」

「ウチは見て無いんだけどさ、実はさっき男女の二人組がここに居てね。その二人も何か見たらしーの。」

ここは心霊スポットか何かかとウフェは青ざめる。
しかしミーリアは見たかったと呑気なことを言いだした。

「もう暗いしウチはもう帰ろっと。はい依頼料っ!」

ミーリアはかなりの額の札束をウフェに投げ渡すと、魔道具を袋ごと四次元収納ブローチへと入れる。
ウフェはというと渡された額のあまりの多さに目を見開いていた。
そんな彼の様子をみたミーリアはクスクスと笑い、村大変なんでしょ?と言った。

「……そこまで見たのかよ。」

「ごめんね〜ウチってそういうの見たくなる人なのっ!」

あははと笑うミーリアを見て再び深い溜め息をつくウフェ。
じゃあなと去ろうとした彼にミーリアは、最後に一つだけ良いことを教えてあげると言う。

「近々ウフェ君は年上の人と色々な出会いをするよ!」

色々ってどんな出会いだよと言ったウフェにミーリアは内緒と笑いながら暗闇の中に去って行った。

99:お知らせ ◆kvG6:2012/09/05(水) 22:42 ID:twA

はい。一区切りついたところで訂正版を載せようと思います。
訂正版といってもまだ完全に修正出来ていませんが……←
しょっちゅう修正するので話変わってしまっていたらすみません。
まぁ私の小説なんかを見てくれている心の広い方なんてごく一部の方でしょうが…orz
ちなみに1話が加筆修正のやり過ぎで全く違うものになっています。
なので今から見てやんよというお方は訂正版の方を見て下さると助かります。

http://s11.smhp.jp/ualk1206/book/?id=ualk1206&cn=6&_cus=m9volj

アドバイス絶賛受付中なのでもしアドバイスをくれるという方は交流板にある「集え小説板住人よ!!」のスレにお願いします!

100:祝!!100!! ◆kvG6:2012/09/05(水) 22:43 ID:twA

宿に着いたルウェリン達は一つの部屋を借りて体を休ませていた。
カテリーナは未だにアーネちゃん怒ってるよどうしようと呪文のように繰り返している。
泣いていたために彼女の目は赤くなっていて、目のまわりも擦った跡があり痛そうだ。
そんなカテリーナの様子をルウェリンとマルティネスはベッドに座って見ていた。

「……部屋の隅でじめじめしたオーラ出さないでくれない?」

『いや、お前もさっき出してたから。』

マルティネスのその一言で部屋は静まり返る。
先程と打って変わり完全に立場が逆転してしまったルウェリンはどうしたらいいのかわからない。
取り合えずベッドから立ち上がり部屋の隅でうずくまっているカテリーナの隣に座ってみる。
暫くの沈黙の後、ルウェリンはカテリーナの頭に手を乗せてごめんと呟いた。

「……どうしてルウェリンさんが謝るの。」

「僕が君を旅に誘ったりしなければ君の親友を怒らせることも無かったでしょ。」

二日前、確かに彼がカテリーナを旅に誘わなければこんなことにはならなかっただろう。
しかしカテリーナはルウェリンのせいだとこれっぽっちも思ってはいない。
でも、と言う彼にカテリーナは、じゃあ一つだけ聞かせてとルウェリン見る。
その目があまりにも真剣でルウェリンは少し驚いた。

「どうして私を誘ったの?私は実戦経験なんてまるで無いし役にもたたないのに。」

「それは……」

彼がカテリーナの質問にこたえようとしたとき、マルティネスがルウェリンの名を呼んでそれを遮った。
二人はマルティネスの方を見る。

『お取り込み中の所悪いが少しヤバイ奴がいる。』

ルウェリンはわかったと言うと、ベッドの上に置いていたマルティネスを肩に掛け、部屋の窓から身を乗り出す。
どうやら窓から外に出るらしい。
君はここで待っててとカテリーナに言うと、彼女は黙って頷く。
するとルウェリンはさっきの質問だけど、と続けた。

「僕が君を誘った理由はね。」



「一人でいるのが辛くなったからだよ。」

そう言って彼は窓から外へと飛び降りる。
一瞬、ルウェリンが悲しそうな表情をしたのをカテリーナは見逃さ無かった。

101:姫♪ ◆F4eo:2012/09/12(水) 15:12 ID:c1s

>>アメ様
…こんな神小説を俺なんかが審査していいのかって話ですわw

えーっと…じゃあ気になった点を…。

ルウェリンとマルティネスのコンビが面白いのですが、キャラがこすぎて主人公ちゃんの影がたまに薄くなることが…。
別にそれはいいんですけどね、ルウェリン達メインで話を進めているのなら…。

文章に向上心が感じられます。
一回一回場数を踏むことでどんどん実力つけてますね…。恐るべしアメ姫…w
読者を引き付けることに大成功してます。
少し長めの文章で、個性的なキャラクターを躍らせると、目にとまったときに見たくなりますから。

売らないし、ミーリアの説明が少し不足しています。
おそらくこれから重要になるキャラクターなので、もっと読者にイメージを植え付けれるように…。
個性を表に出して、ミーリアの事を知ってもらえばよいかな…。



…神小説すぎてアドバイスができない。

102:アメ ◆kvG6:2012/09/12(水) 20:01 ID:LTA

Σ神小説では断じて無いですから
その、誠に言いにくいのですが……実は主人公ルウェリンなんですすみません紛らわしいですよね本当にすみません!!!
ルウェリンが主人公のはずなのにカテリーナ目線が多いのが問題なのはわかっているのですがね……
でもカテリーナの影が薄いというのならもっと影を強くできるように頑張らせていただきます。
実力がついてるなんて…褒めていただき嬉しいです。
早く姫ちゃんくらいのレベルになってみたいものですね。
占い師のミーリアはこの後そんなに出ては来ませんがもう少し個性を出してみますね。
訂正版の方で色々書き直してみます!
いや十分アドバイスできてますから……
今回は審査ありがとう御座います!!

103:ミキ:2012/09/13(木) 22:31 ID:zkk

別にいいんじゃねーのウチだから←

104:アメ ◆kvG6:2012/09/13(木) 22:32 ID:LTA

暗闇の中、入り組んだ街は終わりの見えない迷路のようだ。
そんな中を一人の少女は逃げ回っていた。

「捜せ!まだ近くに居るはずだ!!」

男の怒鳴る声が聞こえてきて少女は恐ろしくなり体を震わせる。
しかし彼女はこんな所で捕まるわけにはいかなかった。

「必ずエスパーニャの娘を捕らえろ!!」

ここで捕まってしまえば、今まで五年間も逃げていた意味が無くなってしまうのだから。



「マルティネス。後どのくらい?」

『このまま真っ直ぐ行けばもうすぐだ。いつもより人数多いから気をつけろよ。』

ルウェリンはマルティネスに了解と返事をすると、走る速さを上げる。
しばらく進むとマルティネスは彼に止まるように指示した。
どうやらこの辺りらしい。
すると突然何かを殴るような鈍い音と、苦しむようなうめき声が彼等の近くで響く。
その音が聞こえた場所に急いでルウェリンが向かうとそこには地面に倒れ込んだ一人の少女と、それを囲むように立って笑っている十人程の男性の姿があった。

「…………あいつら?」

少し遠い所から男達を指差すルウェリンにマルティネスはそうだと返事をする。
そして倒れている少女を見るとマルティネスは苛々したように舌打ちした。

『最近の馬鹿共は女性を襲うが趣味なのかな?
……倒れてる女の子以外は全員破壊しろ。ルウェリン。』

その怒りの篭った声に了解と返事をしたルウェリンは鞘からマルティネスを抜き、鼻で笑う。
一瞬で終わらせるよと呟くと目にも留まらぬ速さで間合いを詰め、男達が彼の存在に気付く前に砂にしていった。
動きには無駄がなく美しいとも言える程。
光る刃が当たり血の代わりに砂が飛び散る。
人の形など残らない。
残るのは何の変哲もない砂。
先程まで人であったそれを見下ろすルウェリンの瞳は恐ろしいくらいに冷たかった。

105:姫♪ ◆F4eo:2012/09/14(金) 19:43 ID:aPo

>>102
…神小説をかく神作者がなにを謙遜を…。
いえいえ、俺の理解力がないだけ…w
カテリーナちゃんの影ももう少し濃くすれば、カテリーナちゃんが消えることはありませんね。
実力がついて来てるのは本当なんですから謙遜は必要ありません。
…私レベル?とっくの昔、かき始める前から通り過ぎているゼロより何万倍も低いレベルの事ですか?
ミーリアちゃん…あそこまであやしく出したのに!?
キャラクターの個性は大切ですッ!!頑張ってくださいねっ!


いえいえ、依頼されましたらどこへでも参上いたします。

106:王音 ◆5F.I:2012/09/14(金) 20:45 ID:i-.mo

流石アメさんですっ

前からずっと見てましたが、本当憧れます…
頑張ってください!楽しみにしてます^^

107:アメ ◆kvG6:2012/09/14(金) 22:29 ID:LTA

訪れる静寂。
男達全員を破壊したルウェリンの足元には大量の砂と彼らが着ていた衣類や武器。
そして先程まで男達に囲まれていた少女が俯せに倒れていた。
男達が着ていた服に見覚えがあるような気がしながらもルウェリンは倒れている少女に近寄る。
年齢は十代後半といったところだろうか。
もしかしたらカテリーナと同じくらいかもしれない。
ぴくりとも動かない彼女の首に触れ脈を確かめる。
どうやら気絶しているだけのようだ。

「気絶してて良かったね。騒がれなくて済むし。」

『で、どーするよこの子。』

流石にこのまま放置する訳にはいかないだろう。
こんな所に置き去りにしたらまた何があるかわからない。
どうすればいいかルウェリン達が悩んでいると、少女が微かに目を開いた。

「あ、起きた……。」

「ファ……ビア……ン…………さん……?」

少女はとぎれとぎれにそう呟く。
誰かの名前のようなので彼女の連れか何かだろうかとルウェリンは首を傾げた。
少女はしばらくぼんやりとしていたが、ルウェリンが手にしているマルティネスを見た途端、目を見開いて驚いた表情なるとマルティネスに手を伸ばす。
危ないとルウェリンはマルティネスを彼女から離そうとしたが手遅れで、少女は刃に触れてしまっていた。
しかし不思議なことに少女は砂にならない。
そんなことは今までで初めてで、ルウェリンとマルティネスは驚く。
間違いなく少女はマルティネスの刃に触れているのにもかかわらず破壊されていないのだ。

「マルティネス……」

少女はマルティネスの名前を呟くと、糸が切れるように再び意識を失ってしまった

108:アメ ◆kvG6:2012/09/14(金) 22:51 ID:LTA

>>105
Σいやいやいやどこが神なんですか
いえ私の表現力が無いせいです……
頑張って濃くしますね!!
そう言っていただけると嬉しいです。
ちょ、何をww
そんな怪しかったですかね……
頑張りますぜ!!!!

>>106
うああコメント有難うございます!!
精一杯頑張ります^^

109:ミキ:2012/09/17(月) 14:23 ID:zkk

はいは〜いっ ノ ((挙手

107.の最後の文の糸が切れるようになんだけど、ちょっとざっぱすぎてよおわからん^q^
たとえば操り人形いれてみるとか^q^

110:クロス ◆gfIA:2012/09/17(月) 15:10 ID:95g

あなたの想像力を働かせればいいのでは?

111:彼方:2012/09/17(月) 16:08 ID:Bns

アメちゃん、本当に凄い。
尊敬する……

112:アメ ◆kvG6:2012/09/17(月) 17:28 ID:LTA

>>109
OK訂正版ではそうしてみるよ

>>111
私はあなたの小説を尊敬する……

113:ミキ:2012/09/17(月) 18:56 ID:zkk

いやーうちが国語苦手なのよくしってるでしょ?w点数的に
だから別に読解力がないだけなので自由でかまわんよw >もっちゃん

114:アメ ◆kvG6:2012/09/26(水) 15:18 ID:bNs

「あ、ルウェリンさんお帰りなさ……ってその人どうしたの!?」

ルウェリンが少女を背負いながら部屋に入って来たので、ベッドに座ってルウェリン達の帰りを待っていたカテリーナは驚く。
意識の無い少女をもう一つのベッドに寝かせると、ルウェリンはカテリーナに事情を話す。
彼女が男達に襲われていたこと、マルティネスに触れても少女が砂にならなかったこと、
そしてもしかしたらこの少女はマルティネスのことを知っているかもしれないということを。
実はというとルウェリンはマルティネスのことをよく知らない。
そしてマルティネスも自分のことがよくわからないという。
ルウェリンと出会う前の記憶が全く無いらしいのだ。

「成る程、それでマルティネスの名前を知っていたこの人を連れて来たのね。」

『そういうこと。俺達がわかっていることといえば柄に刻まれたマルティネスっていう名前と、生き物を砂に出来るっていうこと。
それと悪い奴の気配を察知できることぐらいだな。それ以外は何もわからないんだ。』

マルティネスがそう言うとルウェリン達はベッドの上で眠っている少女を見る。
今は彼女が目覚めるのを待つしかない。

「そういえばルウェリンさん。忘れてたんだけどミーリアちゃんから伝言が……」

ふと、ミーリアからの伝言を思い出したカテリーナはルウェリンにそう言った。
ルウェリンが不機嫌になるわ、アーネストに連絡が繋がらないわですっかり忘れていたのだ。
今言うのもどうかと思われるが、このままだと再び言うのを忘れてしまうだろう。
しかしルウェリンは露骨に嫌そうな顔をしてカテリーナから少し遠ざかる。
それほどまでにあの占いが嫌だったのだろうか。
そんなルウェリンに大丈夫だよとカテリーナはそのまま続けてミーリアの伝言を伝える。

「未来のルウェリンさんには大切な人達が居るって。独りじゃないって言っていたわ。」

ルウェリンは黙ってカテリーナを見つめる。
彼女は眉を下げて心配そうな表情をしていた。

「だからもう寂しい思いはしないと思う。」

何も知らないくせにこんなこと言ってごめんとカテリーナは人差し指で頬をかきながら笑う。
もしかしたら彼女は、先程ルウェリンが宿から出る時に言ったことを今までずっと気にしていたのかもしれない。
だから突然こんなことを言ったのではないだろうか。
カテリーナは過去に両親を失っているため独りで居ることの辛さを知っている。
それ故にルウェリンの悲しそうな表情を見て放っておけなかったのだろう。
そんな彼女を見てルウェリンは少し表情を和らげた。


そんなやり取りをしていた二人の耳に微かだか声が聞こえ、ベッドの方を振り返る。
寝かせていた少女がベッドから焦げ茶色の髪を揺らしながら起き上がろうとしていた。
あの男達から棒か何かで殴られたのか頭を痛そうに押さえている。
そんな少女の様子を見たカテリーナは急いで駆け寄り大丈夫かと声をかけ、肩を支えてあげた。
少女はカテリーナにか細い声で礼を言うと警戒するように部屋を見渡す。
彼女の茶色の瞳にはまだ不安の色が見え、微かに体が震えていた。
暗闇の中で男達に襲われていたのだから当然の反応だろう。

「私はカテリーナ。ちなみに19歳。あっちの彼はルウェリンさんっていってあなたを助けてくれた人よ。」

怯えている少女にそう笑顔で自己紹介するカテリーナ。
明るく振る舞って彼女を安心させようとしているのだ。

「わ、私はラプ……ラプ・エスパーニャと言います。その、助けて下さり有難うございました……。」

ラプと名乗った少女は深々と頭を下げた。
二人の様子を見て悪い人ではないと判断したのか少し安心したような表情を見せる。

『へぇ。ラプちゃんっていうのか〜俺は剣のマルティネス。よろしくなー。』

軽く挨拶をするマルティネスにカテリーナは小さな声で叱る。
マルティネスの名前を知っているからといってマルティネスが喋ることを知っているとは限らない。
驚かれてまた怯え出したらどうするとマルティネスを睨みつける。

「………………え?」

そうラプが声を上げたので彼女に視線を戻す。
マルティネスを見つめるラプはまるで絶望に突き落とされたような、そんな深刻な表情になっていた。

115:ミキ:2012/09/28(金) 17:21 ID:zkk

ラプがそんな表情なったのってたしかマルティネスの記憶きえてたからだっけー?

116:彼方:2012/09/28(金) 17:34 ID:Bns

>>112
尊敬されるような小説を書いた覚えは…ないぞ?

なんていうか…凄い。

117:アメ ◆kvG6:2012/09/29(土) 09:47 ID:bNs

これから書くこと暴露するでない。
>ミキ

あるでしょうが!!
ありがとう〜
>彼方ちゃん

118:薫(ユッピン♪):2012/09/29(土) 10:55 ID:Omg


ちーっす←

文才が半端ないですな。
羨ましい。

てか私のこと覚えておりますかな?←

文才のありすぎるアメ様からは綺麗さっぱり忘れ去られてるかもしれませんがw

119:アメ ◆kvG6:2012/10/01(月) 21:25 ID:bNs

『ラプ様のこと、覚えていないのですか……?』

ぽつりとそう聞こえてきたのは可愛らしい少女の声。
しかしその声の主は明らかにカテリーナやラプではなかった。
一体誰の声だとルウェリンとカテリーナは部屋を見渡してみるが勿論ルウェリン達以外は誰も居ない。
するとラプはベッドの横に立てられていた細身の剣を持ち上げて二人に見せるように膝へと置く。
まさか、と思ったルウェリン達がその剣をじっと見ると、先程と同じ声で初めましてという言葉がラプの剣から発せられた。

「マルティネスと同じ…………」

そう言ったルウェリンはマルティネスを見る。
まさかマルティネスと同じように喋る剣があるとは思っていなかったのだろう。
マルティネスもどうやら驚いているようで何やらぶつぶつと呟いている。

「マルティネスが覚えていない……ということはあなた達はマルティネスのことを知ってるってことで間違いないのね?」

カテリーナの問いにラプはこくりと頷く。
ルウェリン達の思った通り、ラプはマルティネスのことを知っているようだ。

「……マルティネスは僕と出会う前の記憶が全く無いんだ。だからマルティネスが一体何なのかを知るために君をここに連れてきた」

「記憶が……全く、無い……?」

マルティネスの以前の記憶が全く無いと聞いたラプは動揺を隠せない。
そんな、と呟き悲しそうな表情で彼女は俯いた。
心なしか彼女の瞳が潤んでいるように見える。

『ラプ様……』

ラプが持っている剣が心配そうに彼女の名前を呼ぶ。
剣に大丈夫と返事をし、顔を上げ何かを決意したような表情でルウェリンを見つめた。

「ルウェリンさんに、どうしても聞いて頂きたい頼みがあります」

突然そう告げたラプにルウェリンは頼み?と不思議そうな顔をする。
初めて会う人物にする頼みとは一体何なのだろうか。
ラプの顔は何やら思い詰めた表情で小さな頼みではないことが伺える。

「まず、全てをお話します」

彼女は一度深呼吸をして再びルウェリン達を見つめた。

「サニバルの一族はご存知でしょうか?」

120:アメ ◆kvG6:2012/10/01(月) 21:27 ID:bNs

私に文才などありませんよ;;
覚えてますとも!!私があなたを忘れるわけないでしょう!!
>薫ちゃん

121:アメ ◆kvG6:2012/10/24(水) 20:04 ID:bNs

更新できてなくてすみません。
上げます。

122:薫:2012/10/24(水) 20:05 ID:mDc


うあああ嬉しいです…覚えててくれた…
いえ、アメ様は恐ろしいほどに文才を持ってますよ!

123:剣はつるぎと読んでくれると嬉しいです ◆kvG6:2012/11/05(月) 20:30 ID:My.

“サニバルの一族は知っているか”

本日二度目の質問に二人は頷いた。
マルティネスは寝ていてミーリアの話を聞いていないためわかってはいなかったが、ルウェリンが後で教えると言ってマルティネスを黙らせラプの話に集中する。
まさか知っているとは思っていなかったようでラプは少し驚いたが、話が早いとそのまま続けた。
まずマルティネスのことですが、とラプはマルティネを見て口を開く。

「サニバルの一族を知っているのでしたらエリウ様のこともご存知ですよね?」

「…………サニバルの一族を作った人でしょ?」

ルウェリンの返答に彼女は首を縦に振る。

「……そしてマルティネスは、エリウ様が作り出した魔剣の一つです」

ラプのその発言にルウェリン達はあまり驚かない。
サニバルの一族という単語が出て来た時点でなんとなく予想は出来ていたのだろう。
魔法を生み出した人物であるエリウ=サニバルが作った剣ならば、マルティネスがあの生きているものを砂にしてしまう不思議な能力を持っているのも納得できる。

「魔剣の一つということはもしかして他にも何かあるのかしら?」

そう疑問に思ったカテリーナがラプに聞いてみると、その通りですと返って来た。

「破壊の魔剣と再生の聖剣という剣が肉体・物質・精神の三種ずつ、計六本存在します。」

「……マルティネスは肉体破壊の魔剣ってことだね」

ルウェリンにはいと答えたラプは他の剣についても教えてくれた。
肉体破壊のマルティネスと対になる
肉体再生の“アルバーレス”
物質破壊の“ティーチ”
物質再生の“ピュール”
精神破壊の“バティスタ”
そしてラプが手にしている細身の剣が
精神再生の“ガーディアル”

「そんなにあるのね……ところで再生って具体的にどんな能力なの?」

「簡単に説明しますと対象の状態を戻すことが出来ます。
例えば肉体再生ですとどんな致命傷を負っても傷が無かった状態に戻すことができ、
物質再生は物が原型がわからなくなるまで粉々になっても元の形に戻すことができるのです。
精神再生は発狂してしまった方でも元の精神状態に戻せます」

成る程、とカテリーナは納得する。
次にルウェリンはずっと疑問に思っていたことを口にした。

「君がマルティネスに触れても砂にならなかったのは何故?」

124: ◆kvG6:2012/11/17(土) 23:54 ID:9zU

先程ラプを男達から助けた後、間違いなく彼女はマルティネスに触れたのだ。
しかしラプは破壊されなかった。
そうなると何か理由があるに違いない。

「……肉体破壊のマルティネスと精神破壊のバティスタには破壊対象外に指定されている人間が存在するのです」

「破壊対象外?」

「はい。エリウ様はもしサニバルの一族の者が誤って魔剣発動時に触れてしまった時のために、サニバルの一族は魔剣の破壊の対象外にしたのです」

それじゃあ君はサニバルの一族なの?というルウェリンの質問にラプは頷く。
大体予想はしていたが彼女はサニバルの一族だったのだ。

「……ねぇ。“発動時”ってどういう意味?」

カテリーナは彼女が言った“発動時”という言葉に違和感を持った。
“魔剣に触れてしまった”ではなく“魔剣発動時に触れてしまった”と言ったからだ。
普通なら発動時とは言わないだろう。

「魔剣と聖剣は普通の人間が触れただけでは能力は発動しません」

ラプのその一言でルウェリン、カテリーナ、マルティネスは同時にえ?という声を上げた。
彼女の話によると六本の魔剣、聖剣は正しい者が使用しない限り能力は発動されないのだという。
普通の人間が使うとただの剣と全く同じなのだ。

「その正しい者っていうのは?」

「魔剣、聖剣が使える人間は2パターンあります。一つ目は名前に剣の名がある者です」

名前に剣の名がある者。
その昔、エリウは六本の剣を生み出した時に、それぞれの剣の名を最も信頼する六人のファミリーネームにしたらしい。
その六人の血を引く者がそれぞれの名の剣を扱えるという訳だ。
なお、ファミリーネームが剣の名であったとしても血縁者でなければ能力は発動しない。

「六本の剣は我々サニバルの一族が最も大切に護ってきたエリウ様の遺品…………。五年前までは厳重に保管されていました」

「五年、前……」

ルウェリンが五年前という言葉に反応する。
五年前はルウェリンとマルティネスが出会った年だ。
その年に、サニバルの一族に何があったのだろうか。

「五年前、事件が突然起きたのです」


そしてラプは語り出した。

125:アメ ◆kvG6:2012/12/09(日) 11:39 ID:cBQ

我々サニバルの一族は五年前まで島国のグランドフィル共和国付近にあるバーラナ島という島で平和に暮らしていたのです。
しかしある日突然、DEORT(デオルタ)と名乗る組織が島を襲撃してきたのです。
島に住む人間、つまりサニバルの一族の者は次々と捕らえられてしまいました。
彼らの目的は、サニバルの一族に代々伝えられてきた究極魔法。
使い方を間違えてしまえば恐ろしいことになると言い伝えられてきた魔法です。
彼らはそんな究極魔法がこの世界を創り直すのに必要なのだと言っていました。
その人達な究極魔法を渡してはいけないと思ったサニバルの一族の長である私の父は、
その場にいた私と剣の名を持つ子供達に究極魔法が記された魔導書と六本の剣を持たせ隠し通路から逃げるように指示したのです。
後からすぐに追い掛けると言われたのですが父達は追い掛けてくることはありませんでした。
恐らくすぐに捕まってしまったのでしょう。
隠し通路を抜けると既に組織の一員であろう一人の女性が先回りしていました。
まさか隠し通路の出口を知られているとは思ってもいなかったのでその時は本当に驚いて冷静な判断をすることが出来ず、私は何も出来ませんでした。
魔導書を持った私を逃がすために、一緒に逃げていた仲間は次々と捕らえられていきました。
他の団員とは比べものにならないくらいにその女性は強く、剣を使っても魔法で能力を防がれて全く歯が立ちません。
最後に残ったのは私を含めた三人。
その中で一番年上だった男の子は魔導書を持った私と一番年下だった女の子を草むらに隠し、転送魔道具を渡しました。
転送魔道具で遠くの場所まで移動するには魔力をある程度溜めないといけないので、それまで時間を稼ぐと。
私はただ怖くて、泣くことしか出来なくて、彼が頑張っているのに、苦しんでいるのに動くことすら出来ませんでした……。
しかし何も出来ない私の横で、最年少であるはずの女の子は彼を助けるために草むらから飛び出したのです。
その瞬間、辺りが光に包まれ、彼の逃げ切ってくれという叫び声が聞こえたと同時に女性の左右で色が違う冷たい瞳と目が合いました。
そして気が付くと知らない場所に飛ばされていたのです。

…………私、一人が。

126:アメ ◆kvG6:2012/12/09(日) 12:44 ID:cBQ

ラプは自分を責めているような表情でルウェリン達に全てを話した。
重い空気が部屋を包む。

「私の足元には魔導書と、何故かこの聖剣ガーディアルが落ちていました。
もしかしたら、彼が私に向けて投げてくれたのかもしれません……。
残りの剣はどうやら組織の人達が世界各地に捨てたようです。
DEORTにとってエリウ様の六本の剣は計画の邪魔になるようで……」

つまりDEORTという組織が五年前に世界各地に捨てた五本のうちの一本であるマルティネスをルウェリンが偶然拾ったということだろう。
しかしここで疑問が生まれる。
先程ラプは魔剣と聖剣は普通の人間が触れただけでは発動しないと言った。
ルウェリンはマルティネスというファミリーネームではない、それどころかサニバルの一族ですらないのだ。
ならば何故ルウェリンはマルティネスを扱うことが出来るのだろうか。

「話が脱線してしまいましたね。申し訳ありません」

最初の話からズレてしまったことに気付いたラプはルウェリン達に謝る。
そしてルウェリン達が疑問に思っていることにもラプは気付いているようで話を続けた。

「先程も言いましたが魔剣、聖剣を使える人間には二パターンあるのです。
一つ目は名前に剣の名がある者。そして二つ目は……剣の適合者です」

「適合者?」

「はい。エリウ様は六本の剣を作り出したとき、本当に剣を持つのに相応しい人間がいつか現れることを予言しておられました。
その人間は血の繋がり関係なく剣を扱うことが出来ます。それが剣の適合者です。
その者が剣に触れた時、選ばれた証としてサニバルの印が体の何処かに刻まれるはずです」

ラプはそう言うとスカートをまくりあげる。
彼女の左足の太股には広場にあった鏡に刻まれていたものと全く同じ印が刻まれていた。

「私はこのガーディアルの適合者です。まさかサニバルの一族の中から適合者が出るとは思っていなかったようで一族の皆からは驚かれましたが……。
ルウェリンさんにも同じ印が体の何処かにあるはずです」

どうでしょう?と言ったラプはルウェリンをじっと見つめる。
それにつられてカテリーナもルウェリンに視線を向けた。
彼はそっと右手に着けていた黒い手袋に手をかける。

「あの広場にあった鏡を見た時は驚いたよ」

手袋をするりと外すと、ルウェリンは右手の甲をラプに見せた。
そこにはラプの左足にある印と全く同じサニバルの印が刻まれていた。

127:アメ ◆kvG6:2012/12/09(日) 12:45 ID:cBQ

「君が言ったように五年前、マルティネスに初めて触れた時に突然浮かび上がったんだ」

ルウェリンが見せた手の甲の印を見て、彼がサニバルの鏡を見た時に驚いた表情をしたのはこの印を見たからだったのかとカテリーナは納得した。

『あの時お前凄い驚いてたよな』

「黙れ」

今まで静かにしててやったのに酷いと嘆くマルティネス。
そういえば途中からマルティネスに人格があるのをすっかり忘れていたとカテリーナは心の中で呟いた。
というかラプが手にしているガーディアルという剣も全く喋っていない。

「……今の話を聞いて何か思い出したことはありませんか?」

恐る恐るラプはマルティネスにそう尋ねる。
もしかしたら今の話を聞いて思い出したことがあるかもしれないと思ったのだ。

『いや……確かに初めて聞く話じゃないって感覚は少しあったけどやっぱり何も……』

「そうですか……やはり五年前に何かされたとしか考えられませんね……」

五本の剣を奪った後、DEORTという組織の人間が忘却魔法か何かをかけたのだろう。
しかし何故DEORTはマルティネスの記憶を消したのだろうか。
剣もわざわざ捨てる必要は無いはずだ。
彼等は一体何のために…………?

「それで、頼みっていうのは?」

分からないことをずっと考えても仕方ないとルウェリンはそう尋ねた。
元々ラプの頼み事というのが話の本題だ。
彼女が頼み事を言う前にわざわざサニバルの一族のことなどを説明したことからラプが何を頼みたいのか、大体の予想はついているが。

「……ルウェリンさんに、DEORTからサニバルの一族を助け出す協力をしていただきたいのです。」

ラプは申し訳なさそうな表情をした後、床に座り頭を下げた。

「迷惑を掛けてしまうのはわかっています。しかしサニバルの一族の皆を助け出すにはマルティネスの適合者であるルウェリンさんの力が必要なのです。
DEORTは恐らく適合者の存在に気付いていません。適合者は剣の能力を最も引き出せる力を持っています。
五年前に全く歯がたたなかったあの女の人にも適合者である貴方なら対抗できるかもしれません。
お願いします。今頼れるのはルウェリンさんだけなのです。」

ラプの声は震えていた。断られるかもしれないという不安、今まで耐えてきた悲しみ、この震えはきっとどちらも含まれている。
ラプが土下座をしているため顔は見えないが、もしかしたら泣いているのではないだろうか。
少しの沈黙の後、ルウェリンは口を開いた。

「いいよ」

その言葉にラプは勢いよく顔を上げた。
目の回りは濡れていてやはり泣いていたということが分かる。
本当ですかと言う彼女にルウェリンは首を縦に振った。

「元々はっきりとした目的が無い旅だったからね。君もそれでいい?」

ルウェリンはそう言うとカテリーナの方を振り返る。
カテリーナはもちろんと言って頷いた。

「むしろ断ってたらルウェリンさんのこと殴ってたわ」

「……君に殴られたら大変だね」

真顔でそう返したルウェリンに冗談よと言うとカテリーナはラプの元へと歩み寄る。
そしてカテリーナは彼女に手を差し延べた。

「これからよろしくね、ラプさん」

そう言って微笑むと、ラプは嬉しさのあまり再び泣き出してしまった。

128:アメ ◆kvG6:2012/12/13(木) 22:47 ID:o2w

ラプが泣きやんだ頃、既に時刻は深夜0時を過ぎていたので、明日のためにももう寝ようということになり、
ルウェリンはカテリーナとラプにベッドで寝るように言った。
借りた部屋は二人部屋、もちろんベッドも二人分だ。
そうなると一人は床で寝ることになる。
男一人、女二人なら男であるルウェリンが床に寝るのは当然だろう。
カテリーナもラプも自分が床で寝ると言い出したが、ルウェリンの無言の圧力には勝てなかったらしい。
普段木の上で寝ているルウェリンには床で寝ることなんて何の抵抗もないのに何故遠慮するのだろうか。
ルウェリンにはその理由がよくわからなかった。

「“DEORT”か……」

ベッドで寝ている二人には聞こえないようにそう呟く。
組織のことは初めて知ったが、その単語の意味をルウェリンは知っていた。

「古代の言葉で、“神”」

自分達が神とでも言いたいのだろうか。
そういえばラプから聞いた話では“世界を創り直す”と奴等が言っていた気がする。

「本当に何をする気なんだろう」

取りあえず今言えることはDEORTという組織に究極魔法を渡さないようにラプを守らなければいけないということだ。
彼女からは今日聞いたこと以外に色々と聞きたいことがある。
詳しいことは明日考えよう。
そしてルウェリンは目を閉じた。

129:大和:2012/12/14(金) 22:16 ID:P96

アメリンがんばってますな…………。

さてー、、俺もがんばらんと……。
今さぁ紅葉の過去編だけど長くなる可能性が高くて………

とりあえずこの調子でがんばれ☆
うん。

130:アメ ◆kvG6:2012/12/15(土) 17:22 ID:o2w

コメントありがとうございますっ!
大和さんも頑張ってください。
いつか大和さんみたいに小説書けるようになりたいです……

131:大和:2012/12/15(土) 19:50 ID:P96

だって、、!!何回最初から読みなおしても面白いしさぁ……!!!!
なんなんだこの文才ヤr……。

132:アメ:2012/12/15(土) 20:50 ID:o2w

面白い?あぁ、大和さんの作品がですか!
大和さんの作品は何回見ても面白いです。
とりあえず文才下さいお願いします((土下座

133:アメ ◆kvG6:2012/12/15(土) 23:11 ID:o2w

カテリーナは考えていた。
旅に出る時、ルウェリンはカテリーナを危険から守ると言った。
しかし今日のことでルウェリンはラプを守ることを優先しなければいけない。
変な組織に狙われているのだ、それはあたり前だろう。
だからこれからは自分の身は自分で守らなければいけないとカテリーナは思っていた。
しかし、三日前に殺人鬼から泣きながら逃げていた自分がそんなことできるのだろうか。
ルウェリンに助けて貰わなければ死んでいたであろう自分が、自分の身を守ることなど本当に……。

“今頼れるのはルウェリンさんだけなのです”

そう、頼れるのはルウェリンさん“だけ”。
自分は別にいなくてもいい人間だ。
何の能力もないただの一般人だ。
いてもいなくてもいい存在……むしろ居ない方がいいだろう。
このままではルウェリンの足出まといになってしまうのだから。

彼に負担はかけたくない。
でも自分は何も出来ない。

そんな思いがカテリーナの頭の中でぐるぐると回る。

「どうしたら、いいんだろう……」

小さくそう呟き枕の横に置いた父の形見の手袋にそっと触れる。
力が何倍にもなる不思議な手袋。
父はこの手袋をどんな風に使っていたのだろうか。
カテリーナは手袋を握り締める。

「強くなりたい」

自分自身を守れるように。
人を守れるように。

そんな思いを胸に秘め、カテリーナはゆっくりと目を閉じた。

134:アメ ◆kvG6:2012/12/16(日) 21:20 ID:o2w

良い人達で助かった。
ラプはベッドの中でそう思っていた。
もし断られていたら、サニバルの一族のみんなを助けられる可能性が無くなっていたかもしれない。
今までラプは何とか逃げ切れていたが、捕まりかけたのは今回が初めてだ。
ルウェリンに助けられなければ今頃彼女はDEORTに捕らえられていただろう。
DEORTはまだこの国にいるだろうし、次に遭遇したらラプ一人では逃げられないと分かっている。
ラプには戦う術がない。
ガーディアルの能力は精神再生であるし、ラプが扱える魔法はサポート魔法くらいしかない。
今まではそのサポート魔法で自らの足を速くしたりしてDEORTに見つからないようにして逃げていたのだ。
しかし今回のことで自分がレイサルト王国にいるのがバレてしまった。
これからの移動ルートも限られているため先回りなどされるだろう。
このまま一人で行動していたら、と考えると寒気がした。
二人に迷惑をかけてしまうのは非常に申し訳ないが、今頼れるのは彼等しかいない。
彼女はふと、五年前のことを思い出した。
あの日、自分を逃がしてくれた人達のことを。
そして今も昔も自分は人に頼ってばかりだと彼女は思った。

自分を信じて大切な魔導書を託し逃がしてくれた父。
共に逃げた十一人の仲間。

「ユマお姉ちゃん、ニコラスさん、セシリアさん、フレディさ……ん、
シャ……トくん、ファビ……アンさ……んっ、フア……ンちゃん、ヒュー……トくんっ、アテ……ノちゃん…………っ」

自分をかばって捕まっていった仲間達の名前を順番に言っていった。
途中から泣いてしまい上手く言えていない。
何故、ガーディアルの適合者が自分なのだろうと今までラプは何度も思ったことがある。
ラプよりも、彼女の姉であるユマという女性の方が力も精神も強い。
もし彼女が自分の立場だったらどうしていたのだろうか。

「ロベルト、さん」

自分に逃げ切ってくれと叫んだ大切な人の名前を呼ぶ。
大好きな、一つ年上のお兄さん。

「ロゼッタちゃん……ごめんね…………っ」

何も出来なくて震えていた自分とは違い、草むらから飛び出していった彼女の名を呼ぶ。
ラプは枕の横に置いていたガーディアルを抱き寄せた。

「絶対、助けるから……っ」

涙で頬を濡らしながら、ラプはそう言って目を閉じた。

135:アメ ◆kvG6:2012/12/16(日) 22:43 ID:o2w

【定期連絡】
訂正版・まとめ(>>2>>134)
http://s11.smhp.jp/ualk1206/book/?id=ualk1206&cn=6&_cus=mf4j39

一番最初の部分が訂正のしすぎで話がかなり変わっているので、これから見てくださる方は上記のURLの訂正版をご覧下さい。

136:ミキ:2012/12/22(土) 14:44 ID:zkk

相変わらず才能あるねー…話してくれた後の内容たのしみにしてるよー←

137:昴サンタ☆:2012/12/24(月) 22:46 ID:P96

………っとと……
ここが「アメ」さんの家か…。
……なんなんだアイツ…
「白夜昴サンタ、アメたん家にプレゼント届けてきて」
とか…。なにが大和サンタだよ……。

あ、桜にもプレゼント……明日、渡さなきゃな…
喜ぶ顔が楽しみだ♪
ははっ、その後かわいーから襲っちゃおうかな〜

ぁ、そうだそうだ、プレゼント置かなきゃ……

いい子に眠ってるなぁ……はは、幸せそう。



今日のよき日、
クリスマスイブが…クリスマスが。
君にとっていい日になりますように……。


それじゃぁね、アメさん。
俺のおつかいは、これで終わり♪

138:アメ ◆kvG6:2012/12/25(火) 11:26 ID:zCE

Σ昴サンタ様がいらっしゃっていただと……!!!?
プレゼントもらっちゃったよやった!!
大和くんありがと〜\(^ワ^)/

139:アメ ◆kvG6:2013/01/07(月) 13:13 ID:rCc

「ここに来てどうするつもりなの?」

翌朝、ルウェリン達は昨日の巨大な鏡、サニバルの鏡がある広場に来ていた。
ラプがどうしてもこの鏡に用があると言ったからである。
ルウェリンが不思議そうに彼女に尋ねると、ラプはニッコリと笑った。

「残りの剣のありかを突き止めるのです」

『えっ、そんなことができるのか』

はいと返事をすると、ラプは鏡に手を伸ばす。
彼女が触れた途端、鏡が眩しい程に光り輝いた。

「昨夜この近くに居たのはこの鏡を見つけるためだったのです。しかし運悪くDEORTに見つかってしまって……」

お二人が鏡の場所を知っていて助かりましたとラプは礼を言う。
そして鏡に向き合い呪文のようなものを唱え始めた。
光が弱まっていくのと同時に、鏡に光の線で何かが刻まれていくのが分かる。
放たれていた光が完全に消えると、鏡の表面には地図のようなものが浮かび上がっていた。

「もしかして、これって世界地図……?」

カテリーナは立体映像機を取り出して確認してみる。
鏡に浮き上がった図は間違いなく世界地図だった。
違う所といえば小さな点がいくつかあることくらいだ。

「レイサルトに四つ、グランドフィルに一つ、ニーバリスに一つ……この点って何かしら?」

「計六つ、ってことは剣の場所を表しているんだと思うよ。
というか剣のありかを突き止めるってさっき言っていたでしょ」

あ、そうかとルウェリンの言葉に納得するカテリーナ。
ラプはその通りですと頷く。

「それよりも……レイサルトに四つの点ということはマルティネスとガーディアルの他にあと二本、この国にあるということですね。
思ったより早く回収出来そうで安心しました」

「見た所、この二本は首都に有るみたいね。列車で行けば一時間で着くわ」

「じゃあ行き先は首都で決まりだね」

ルウェリンの言葉に二人は頷く。
カテリーナは立体映像機の地図に鏡に浮き出ている地図の点を打ち込んだ。
これで剣の場所は忘れないだろう。
そして三人は首都へと向かうべく列車乗り場へと向かった。


「エスパーニャの娘と例の二人を確認。追跡します」

怪しい人影が後をつけているとは知らずに。

140:大和:2013/01/07(月) 17:09 ID:P96

わーい、更新されてる〜

今回もありがたく頂きました。

141:アメ@定期連絡 ◆kvG6:2013/01/18(金) 22:53 ID:rCc

審査スレのアドバイスを参考に再び訂正しました。
1、2、3話が大幅に変わりましたので見てくださっている方はご確認ください。

>>135のURLからどうぞ

142:アメ ◆kvG6:2013/01/19(土) 17:35 ID:rCc

カタンコトンと音を立てて揺れる列車内。
ルウェリン達は向かい合わせの席に座っていた。
ラプを窓際に座らせ、その隣にカテリーナ、ラプの向かいの席にはルウェリンが座っている。
これで怪しい奴が急に現れてもラプが連れて行かれることは無いだろう。

「そういえば、剣の適合者はどうやって探すつもりなの ?」

ルウェリンはラプにそう尋ねた。
これは彼が昨夜から気になっていたことの一つだ。
流石に自分一人でサニバルの一族を助け出すには無理がある。
そうなると他の剣の適合者の協力も必要になるだろう。
残りの剣を回収しようとしているのだからラプもルウェリンと同じことを考えているはずだ。
しかし剣の適合者を探すなんてどうすればいいのだろう。
何十億人もいるこの世界であてもなく探すなんて無茶である。

「その点は安心して下さい。剣と適合者は自然に引き寄せられる運命なのです。
それぞれの剣の適合者はこの長い時代の中でたった一人とされているのでちゃんとした確証はありませんが、
ルウェリンさんとマルティネスが出会えたように、剣と適合者は何かで繋がっています」

「……長い時代でたった一人ってどういうこと ?」

「それぞれの剣の適合者はたった一人だけなのです。
エリウ様はこの剣が本当に必要となった時に適合者が現れると言われておりました。
そして適合者が現れたこの時代がその“本当に必要な時”なのです。
そしてこの先、もう二度と六本の剣の適合者が現れることはありません」

ラプのこの発言でルウェリンは“適合者”がどれだけ重要なのかが分かった気がした。
剣が本当に必要な時が今なら、サニバルの一族を救うには六本の剣と六人の適合者が絶対に必要ということではないのだろうか。
そしてその中の一人に選ばれた自分はとても重要な人物なのだ。

絶対に助けなければ。

五年前から今まで、全てを失ったルウェリンは
意味もなく“悪”を破壊してきた。
それが正しいのか分からない。
むしろやっていることは殺人鬼と同じだ。
そんな自分が必要とされている。
ただそれだけで協力したいと思えた。
サニバルの一族を助け出せなかったら彼女に待っているのは完全な孤独。
それだけは避けなければいけない。


自分と同じ運命を彼女に歩ませないために。

143:アメ ◆kvG6:2013/02/02(土) 20:05 ID:hc.

「首都に到着ーっ !」

目的地、首都のリーアカリフに着き列車から降りるとカテリーナは体を伸ばす。
周りを見渡すと先程いた街とは比べものにならないくらいに人で溢れていた。
少し遠くを眺めると一際目立つ大きく豪華な城が見える。
きっとあそこにはこの国の王様が住んでいるのだろう。
まあ自分には関係の無い次元の話だとカテリーナはルウェリン達の方へと振り返る。

「これからどうする ? 手掛かりは首都にあるってことしか……」

そう言ってルウェリンを見ると、何故か彼は真剣な顔をしていた。
まるで何かを警戒しているかのように。
カテリーナは不思議に思い首を傾げる。

『……ルウェリン』

マルティネスもいつもの陽気さは無く、低い声でルウェリンを呼んだ。

「分かってる」

するとルウェリンはカテリーナとラプを近くに引き寄せて二人にしか聞こえないくらいの声の大きさで耳打ちした。

「後をつけられてる。気付いてないふりをして人気の無い所に誘導するよ」

後をつけられているということはDEORTの団員だろう。
人気の無い所に誘導して破壊するつもりだろうか。
気付いてないふりをするのは相手を油断させるためか。
そう理解したカテリーナは自然な動作で立体映像機を取り出した。

「取り合えず何か食べに行かない ? 私ちょっとお腹すいちゃったわ。ここなんてどう ?」

そう言いながら二人に映像を見せる。
映し出されているのは人気の無い入り組んだ路地までの道のりだ。

「いいと思うよ」

ルウェリンがそう返事をすると三人は歩き出した。



「出てきなよ。いるのは分かっているんだ」

人気の無い路地にたどり着くと、ルウェリンは振り返ってそう言った。
すると一人の男は簡単に三人の目の前に姿を現し、ニヤリと不気味な笑みを浮かべる。
服は昨夜ラプを襲っていた男達と同じ団服である。
DEORTの団員で間違いないだろう。
男はポケットから何かを取り出すと、三人の足元に投げ捨てる。

「………………え ?」

一人の困惑の声は、狭い路地によく響いた。

144:アメ ◆kvG6:2013/02/06(水) 18:00 ID:N2k

目を醒ますと彼女は見覚えのない場所にいた。
一番最初に目に映ったのは木製の天井とただぶら下がっているだけの電球。
起き上がろうとしたが体が自由に動かない。
そこでやっと彼女は自分が縛られていることに気付いた。
声を出そうにも布か何かで口が塞がれている。
ふと頭に浮かんだのは“誘拐”という言葉。
またか、と彼女は内心溜息ををついた。
父は医者、母は研究者。
お金に困ったことは無いし、学校もかなり良い所に通っていたのだから自分は世間でいうお金持ちの部類に入るのだろうと彼女は理解している。
そのせいか彼女は小さいころから何度も誘拐されてきた。
彼女の兄と姉も同じようなことがあったらしいが、末っ子である彼女が一番多かったらしい。
人見知りで体力がなく体が小さくて尚且つ友人が少ないため単独行動が多い。
犯人からしたら絶好のターゲットではないだろうか。
しかしそれは昔の話であり、21歳となった今では誘拐など全くされていない。
体力がなくて体が小さくて友人が少ないのはあまり変わっていないが。
今回の犯人は下調べをしなかったのだろうか。
流石に見た目が小さくても大人を誘拐するなんて。
そこまで考えて彼女は何かに気付き目を見開く。
彼女は連れて行かれた時のことを少し思い出したのだ。
この誘拐は金目当てではない。
犯人の目的は………………

彼女、アーネストは連れていかれる直前の記憶を思い返した。

145:ミキ ◆GOB.:2013/02/06(水) 22:45 ID:zkk

アメにゃが更新するところの彼女の真横にいたミキです←
さすがにかぎ括弧がないぶんつまってる感あるね…
ていうかいっていたのこうゆうことだったのか〜 ふーん。←

146:アメ ◆kvG6:2013/02/15(金) 19:54 ID:hc.

テストがあるので今月中は更新できないと思うので上げておきます。

147:アメ ◆kvG6:2013/03/10(日) 13:56 ID:FrM

それは昨夜のこと。
ルーベル図書館に本を返しに行った帰り、アーネストは双子の姉であるスチュアートと共に自宅へと向かっていた。
辺りは薄暗く、人はもういなくなっている。
いつもはカテリーナが本を持ってくれるのだが、旅に出てしまいもういない。
そのため代わりに姉がついて来てくれたのだ。
一、二冊なら一人でいいものの、アーネストは一度に十冊以上借りてしまうため非力な彼女には本を持ってくれる誰かが必要なのである。
しかし今日は父が珍しい本を手に入れてくれたようなので帰りは手ぶらだ。

「今日はありがとうね。アート」

自分の代わりに本を持ってくれたスチュアートにアーネストは微笑みながら礼を言う。
するとスチュアートは照れたのか顔を少し赤くして目を反らした。
ちなみにアートとはスチュアートの愛称である。

「べ、別に……ボクはアーネのお姉ちゃんだから仕方なく運んだだけだし !」

「アート顔赤いよー」

「う、うるさいっ !」

アーネストとスチュアートは顔が全く一緒だが性格は全く真逆だ。
スチュアートは中々素直になれず、自分の気持ちを正直に伝えることが出来ない。
しかしアーネストはスチュアートが本当は優しいということを誰よりも知っている。
こうして本を自分から持ってくれたのも体力がないアーネストを心配してのことだし、欲しかった本を誕生日でもないのにプレゼントしてくれたこともある。
なんだかんだでスチュアートはアーネストを甘やかしているのだ。

「……どうせボクはあの女の代わりなんでしょ」

突然小さな声でそう呟いたスチュアートにアーネストは驚いた。
あの女、とはカテリーナのことだろう。

「いつもあいつとばっかりいるし、今日一緒に出掛けたのもあいつがいなくなったからだし」

「……嫉妬 ?」

頬を膨らまして明らかに不機嫌になっているスチュアートの顔を覗き込む。
まさか姉がそんなことを思っているとはアーネストは思っていなかった。

「ぼくはアートのことも大好きだよ ? 誰かの代わりなんかじゃないもんっ !」

そう言ってアーネストは勢いよくスチュアートに抱き着く。
アーネストは親友であるカテリーナのことは好きだし、勿論姉のスチュアートのことも大好きなのだ。

「ちょっ !? ははは離してよアーネ !!」

「やーだっ !」

抱き着かれたことに驚き、顔を真っ赤にしながらジタバタと暴れるスチュアート。
そんな彼女をアーネストは力いっぱい抱きしめる。
周りから見たら子供がじゃれあっているようにしか見えないが、これでも二人は21歳である。
しばらくこの状態が続いたが、アーネストが疲れたのかスチュアートを離してしまった。
よほど恥ずかしかったのかアーネストの腕が離れた瞬間スチュアートは走り出す。

「え、ちょっ、アート待ってよー !!」

「先に帰る !」

アーネストとは違い足が速いスチュアートはあっという間に見えなくなってしまった。
ぽつんと一人残されるアーネスト。

「全くアートったら照れ屋さんなんだから〜……」

置いて行かれてしまい、アーネストは頬を膨らましながらそう呟いた。
置いて行かれたといっても家はもうすぐなので別に問題は無い…………はずだった。

148:アメ ◆kvG6:2013/03/10(日) 13:56 ID:FrM

夜の静かな空間に電話のコール音が鳴り響く。
アーネストはポケットから携帯電話を取り出して画面を確認した。
画面に映し出されていたのは昨日自分に何も言わずに旅に出てしまった親友、カテリーナの名前。
彼女のことだからきっと言うのを忘れていたのだろうとアーネストは大体の予想はついていた。
何も言わずに旅に出てしまったのは悲しかったが、カテリーナのやりたいことに口を出すわけにはいかない。
「頑張ってね」、「無茶しないでね」と、応援の言葉をかけようとアーネストは電話に出ようとしたが、それは出来なかった。

「リースピア」

彼女は電話に気を取られて背後から男が近付いていたことに気付くことが出来なかったのだ。
急に体に力が入らなくなりアーネストは地面に崩れ落ちる。
“リースピア”とは相手を眠らせる睡眠魔法だ。
そうとは知らない彼女は突然のことに何が起きたのか理解出来ない。
薄れていく意識の中、彼女は何とか電話の通話ボタンを押そうとしたが男に取り上げられる。
電話のコール音が聞こえなくなった後にグシャリと何かが踏み潰される音が響いた。
もしかしなくても携帯電話を壊した音だろう。

「団員の服の小型カメラに写っていた奴の一人に間違いないな」

アーネストの意識が途絶える前に聞こえたのは、そんな独り言だった。

149:アメ ◆kvG6:2013/03/10(日) 14:16 ID:FrM

お久しぶりです。
テストが終わり結果も返ってきたので更新してみました。
もうすぐ連載一周年になるというのに全く進んでいなくて申し訳ない。
まあきっと更新をまって下さっている心やさしい読者様は片手で数える程しかいないのでしょうが……。
最初の頃とは違い下書きを書くようになったので昔よりはマシになったと思いますが、
私のレベルではまだまだなのだと周りの作者様達を見ていて感じます。
実はまだ物語は一割ほどしか進んでいなくて完結がいつになるかわかりませんが、これからも頑張っていこうと思います。

せめて来年までにはDEORTのボス出したい……orz

何故一周年でもないのにこんなこと書いたのか自分でも謎である。

そもそも私にファンなんていないからこんなこと書いても無駄だったね!!
泣いてなんてないんだからね!!……ぐすん

最後に一言。 私に文才を分けてくれ!!!

150:アメ ◆kvG6:2013/03/10(日) 14:18 ID:FrM

ちなみに呪文は適当である。
150!!

151:訂正 ◆kvG6:2013/03/11(月) 18:52 ID:FrM

>>148の呪文を変更します。
×リースピア
○ルイスピア

152:大和:2013/03/11(月) 21:42 ID:/qE

150おめでとさんだね!

仕方ないから気長にまってやんy((ごめんなさいすみませんしたあっぁぁぁ

高校で忙しいと思いますが、頑張れ!

153:アメ ◆kvG6:2013/03/20(水) 22:57 ID:CZU

とうとう一周年目となりました……。
一向に進む気配がないですね、すみません。
春休み中は宿題で更新できそうにないです。
とりあえず頑張ります!


ありがとうございます^^
>大和くん

154:アメ ◆kvG6:2013/04/01(月) 23:14 ID:oOc

連れ去られる直前のことをアーネストは全て思い出した。
しかし自分が誘拐された理由がまだいまいち分からない。
意識を失う前に聞こえた男の独り言のことを考えると、金目当てではないだろう。
団員ということは何かの組織なのだろうか。
人を誘拐してしまうくらいだから良い組織では無いのは間違いない。
取り合えず今の状況をなんとかしようとアーネストは考えた。
縛られているのは手首と足首だけということを確認すると、彼女は膝を曲げてなんとか靴に手を伸ばす。
指が自由でよかったと安堵しながら靴を脱ぐと、中から小型の折りたたみ式ナイフを取り出した。
小さい頃から何度も誘拐されてきたアーネストは、今では自力で逃げ出せる程になっていたのだ。
最近は誘拐されなくなっていたが、彼女は念のため常に脱出に必要な道具を体の至る所に隠し持っているのだという。
手首の縄を慎重にナイフで切り、自由になった手で口を押さえられていた布を取る。
息がしやすくなり、空気を目一杯吸い込むと少し気が楽になった。
足首を縛っている縄も切ると、アーネストは立ち上がり体を伸ばす。
長い間縛られていたらしいので体が所々痛い。
持ち物を確認してみると、胸元につけていた四次元収納ブローチとポケットに入れていた立体映像機、そして携帯電話が無くなっていた。
携帯電話は恐らくあの時に壊されてしまったので誰にも連絡は出来ないだろう。
番号は覚えているので、外に出て何処かの公衆電話を使えば助かるかもしれないと考えたアーネストはドアノブに手をかける。
音で気付かれないようにゆっくりとドアノブを回すが、鍵がかかっており開かない。

「まあ、開くわけないよね……想定済みだけど」

アーネストは髪につけていたヘアピンを手にとり形を真っ直ぐにすると鍵穴に差し込む。
器用に動かしていくと鍵が開く音がして簡単に扉が開いた。
人がいないことを確認すると、ゆっくりと部屋から出てもう一度鍵を閉める。
辺りを見回してみるが、他にも幾つか部屋があり何処が出口か分からない。
出来るだけ足音を立てないようにゆっくりと歩き出口を探していく。

「そういえばここは何処なんだろう……」

どこかに窓でもあれば外を見てここが何処なのか判断出来るかもしれないのだが、
今彼女が歩いている廊下にはどこにも窓は無い。
今分かることはここが木造の建物ということだけだ。

155:アメ ◆kvG6:2013/04/01(月) 23:15 ID:oOc

「エスパーニャの娘が見つかったんだってな」

「…… !」

近くで話し声が聞こえ、咄嗟にアーネストは近くの部屋に入った。
薄暗くて部屋全体はよく見えないが、陳列されている沢山の棚を見る限りどうやら倉庫らしい。
扉に背を向けて座り息を潜める。
見つかってしまっては何をされるか分からない。

「ああ。ジェリエの街で見つけたらしい。でも捕まえられなかったんだとよ」

どうやら男二人の会話のようだ。
アーネストはエスパーニャの娘が誰なのかは分からないが、ジェリエはレイサルト王国のファンド共和国との境界線の一番近くにある街の名前だということに気付いた。

「相手は女なのに見つけた奴は何やってんだか」

「いや、それがエスパーニャの娘にサニバルの魔剣使いの仲間がいたらしくてよ。見つけた奴ら全員砂にされたらしいぜ」

“砂にされた”その一言にアーネストはピクリと反応した。
カテリーナを殺人鬼から助けたルウェリンが持つ剣のマルティネスも人を砂にする力を持っている。
人を砂にするなんて彼等以外に聞いたことがない。
恐らくサニバルの魔剣使いというのはルウェリンのことだろう。
しかし彼は一人旅だったはずだ。
そんなことを考えていると、いつの間にか男二人の話し声も足音も聞こえなくなっていた。
アーネストがふと顔を上げると、薄暗い部屋の奥に明るい光を注ぎ込んでいる小さな窓が目に入る。
すぐに立ち上がって小走りで窓に近寄り窓の外を見ると、そこは何処かの港だった。

「もしかして、ここって……船 ?」

そう、今までアーネストが木造の建物だと思っていたのは、木造の巨大な船だったのである。
あまりにも中が広かったために建物と勘違いしてしまったのだ。

「でもこの港、ファンドの港じゃない……」

彼女はファンド共和国内の港なら全て見たことがある。
しかし窓から見える港はアーネストの記憶にはなかった。
そうなるとここはファンド共和国内ではないことなる。
ふとアーネストの頭に浮かんだのは先程男達が言っていた“ジェリエ”という街の名前。

「まさか……ここは、レイサルト…… ?」

156:アメ ◆kvG6:2013/04/17(水) 11:02 ID:S9c

更新遅くてもうしわけない……。
とりあえず上げます。

157:アメ ◆kvG6:2013/04/20(土) 00:21 ID:Yac

「やっぱりここ、レイサルトだ……」

あのあとアーネストはいくつか部屋をまわり、自力で自分の四次元収納ブローチと立体映像機を見つけ出していた。
立体映像機の地図機能で現在地を確認したところ、アーネストの予想した通りここはレイサルト王国だったのだ。

「レイサルトの首都、リーアカリフの港……結構遠くまで連れて来られちゃったなぁ」

帰るのには時間がかかりそうだと溜息をつきながら部屋を出るためドアノブに手をかける。
しかし扉を開けると目の前には一人の男が立っていた。

「見つけたぞ」

男の低く冷たい声にアーネストは動けなくなる。
あまりにも人が少ないために彼女は油断していたのだ。

「まさか簡単に抜け出せるとは思っていなかったな。縄ではなく鎖で縛ればよかったか……。
せっかく幹部であるリダム様がわざわざ捕まえて下さったのに危うく逃がす所だった」

男はまるで無機物を見るかのような眼差しでアーネストを見下ろす。
あまりにも冷たい眼差しに、彼女は恐怖で足が震え、冷や汗まで出て来た。
固まって動けないアーネストの腕を急に強い力で掴むと、男はそのまま何処かへと歩き出した。
抵抗しようとするも力の差は明らか。
逃げ出すことは不可能だった。
静かな廊下に床が軋む音が響く。
ギシリギシリという音が耳に入る度に恐怖で心臓が高鳴り血の気が引いていくのをアーネストは感じていた。
体が震えるのを抑えることが出来ない。
男が一つの部屋の前に止まると、勢いよく扉を開く。
そこには同じ団服のようなものを着た数十人の男達がおり、扉が開かれた瞬間全員がこちらに目線を向けた。

「現在団員の一人がエスパーニャの娘とその仲間をこちらに誘導している。全員配置につけ。標的が来たら作戦を開始する。
エスパーニャの娘を捕らえることが最優先、他の奴は捕らえるかもしくは……殺せ」

男が何の迷いもなくそう発言すると、団員と思われる男達は揃って了解しましたと言い部屋を出ていく。
男はその中の一人を引き止めた。

「どうかしましたかラース隊長」

どうやらこの男はラースというらしい。
ラースは団員にアーネストを差し出した。

「こいつが例の人質だ。手首を鎖で縛って連れていけ」

「了解しました」

団員はアーネストの手首を鎖で縛ると何処かへと連れていく。
彼女はもう無抵抗だった。

“殺せ”

その言葉に彼女は動揺していたのだ。
この組織は簡単に人を殺してしまうような人達の組織だったのかと。
もしかして自分も殺されてしまうのではないだろうか。

死への恐怖が、アーネストを絶望へと突き落としていった。

158:アメ ◆kvG6:2013/04/24(水) 10:48 ID:S9c

ルウェリン達は一人の団員を必死になって追いかけていた。
先程団員がルウェリン達の足元に投げ捨てたのは、
縄で手足を縛られ眠っているアーネストが映し出された立体映像機。
それを目にした時、カテリーナは目を疑った。
状況が飲み込めずただ冷や汗が流れる。
何故、ファンドにいるはずのアーネストが縛られているのか。
カテリーナは考えるよりも先に走り出していた。
立体映像機を拾い上げてルウェリンも逃げ出した団員を追う。
こうして今にいたるわけだ。
悔しいことに団員との距離は全く縮まらない。
ルウェリンの脚力があれば簡単に追いつけるのだが、ラプから離れるわけにもいかず走る速さを二人に合わせている。

「彼女は、お二人のお知り合いの方なのですか ?」

二人の後をついていくように走っているラプはそう質問した。
二人の反応を見て知り合いであることは分かっているが、ラプには彼女が誰なのか分からないのだ。

『カテリーナちゃんの親友。俺達は三日前に一度会っただけだけど一応知り合いだ』

余裕のないカテリーナの代わりにマルティネスがそう応える。
しかしマルティネスの声も低く、いつもの陽気な雰囲気は微塵も感じられない。
最初は生き物を砂にしてしまう能力を持つマルティネスのことを怖がっていたアーネストだが、最終的には興味津々にマルティネスの話を聞いてくれた。
ほんの少しの間会話しただけだが、五年間ルウェリンしか話し相手がいなかったマルティネスにとってそれはとても嬉しいことだったのだ。
その相手を人質にされたのだから怒らないわけがない。

『あの……これが罠だとしたら、ラプ様が行くのは危険なのではないでしょうか…… ?』

ガーディアルのその一言でルウェリンとカテリーナは走りながらも振り返る。
全く喋っていなかったために忘れていたがラプの剣、ガーディアルも人格を持っていたのだったと二人は思い出す。
確かにガーディアルの考えは正しい。
明らかにこれは罠だ。

「それもそうだね。君は何処かに隠れて……」

「いいえ、私も行きます。罠なのは分かっていますが、私がいないと分かったら彼等がカテリーナさんの親友さんに何をするかわかりません。親友を助けるために私も行きます」

「……分かった」

ラプの発言にそうルウェリンは返事をした。
彼女の考えも納得出来るし、現在誘導されている時点で他の団員が自分達を監視している可能性もある。
もしそうだとしたら今更ラプを何処かに隠したとしても見つかってしまうだろう。
ラプはルウェリン達の近くにいた方が良いのがもしれない。
団員を見失わないようにもう一度前を向くと、路地の出口が見えた。
暗く狭い路地に明るい太陽の光が差し込んでいる。
団員は走る速さを上げ、いち早く路地を出てルウェリン達の前から姿を消す。
どうやら鬼ごっこは終わりのようだ。
覚悟を決めてルウェリン達は港へ足を踏み入れた。

159:アメ ◆kvG6:2013/04/27(土) 17:56 ID:Yac

港に出ると、巨大な木造の船の前に先程の団員とは違う男が一人立っているのが視界に入った。
服装は若干違うが、団員と同じ暗い緑色の布地に似たようなデザインの軍服を着ている。
何より男がこちらを見て浮かべているニヤニヤとした不快な笑みが、彼がDEORTの一員であることを示していた。

『あいつ、今までの奴らより邪悪だ。何人もの人間を殺してるのは間違いないな』

男から危険を察知したマルティネスは真剣な声色でそう呟いた。
それを聞いたルウェリンはラプとカテリーナを自分の後ろへと下がらせる。

「初めまして、私はDEORT第三部隊隊長ラースという者だ。……あの映像は見ていただけたかな ?」

ラースという男のその言葉にカテリーナは怒りの篭った目で彼を睨みつけた。
彼女は爪が食い込むほどの握り拳を作り、今すぐにでも飛び出したい衝動を必死に抑え込み、ラースに向けて声を荒げた。

「アーネちゃんに何をしたの !」

カテリーナの怒りの篭った声が港に響く。
そんな彼女の様子を気にもせず、ラースは怪しく微笑んだ。
彼が合図に指を鳴らすと、ルウェリン達の周りを沢山の団員達が囲む。

「エスパーニャの娘をこちらに渡して貰おう」

「嫌だね」

ラースの要求に即答で断るルウェリン。
こうなることは大体予想していた。
ルウェリン達がそう簡単にラプをDEORTに渡すわけがない。

「人質がどうなってもいいのか ?」

船の上に目を向けるラース。
すると船から何かが叩きつけられるような音が響く。
ルウェリン達が音のした方に顔を向けるとそこには団員に押さえられたアーネストの姿があった。
全身を鎖で縛り付けられ髪を捕まれている。
先程の音はアーネストが船の端に叩きつけられた音のようだ。

「アーネちゃん !!」

「カテリーナさん…… !?」

名前を呼ばれてアーネストは船の上から下を覗き込んだ。
まさかカテリーナがルウェリンと共に行動していたとは思っていなかったのだろう。
カテリーナがこの場にいることにアーネストは目を見開き驚愕した。

「もう一度言おう。エスパーニャの娘をこちらに渡せ。さもなくば……彼女がどうなるか、わかるな ?」

アーネストの首に短剣が宛がわれる。
ひやりとした刃が肌に触れ、彼女はびくりと体を揺らした。
涙目になり顔は青ざめており、恐怖で小刻みに震えている。
ルウェリン達は顔を歪めてラースを睨んだ。

「最低だね」

「最低で結構。DEORTは目的のためなら何でもするのが基本だ。人を殺すのも手段の内さ。
しかし……それは貴様も同じようなものだろう ?」

ラースのその発言にルウェリンは眉間に皺を寄せた。
まるでルウェリンのことを知っているかのような彼の口ぶりである。

「ククク……貴様のことは調べさせてもらったよ。
五年前から様々な国で起こっている謎の失踪現象……消えた人間は指名手配犯や殺人鬼、犯罪に手を染めた者ばかりで逃げたと思われて大事になってはいないが、
全て貴様がサニバルの魔剣で殺したのだろう ?
近辺に落ちていた衣服や装飾品、それに不自然なまでに付着している大量の砂……それがなにより証拠だ。
悪を制裁しているつもりなのだろうが、貴様とて殺人を犯している悪ではないか。
そんな奴が我々のことを最低呼ばわりするなど片腹痛いな偽善者よ」

訂正しよう。
「知っているかのよう」、ではなくラースは本当にルウェリンのことを知っていた。
ルウェリンを挑発するかのように放たれたその言葉にカテリーナはルウェリンさんは貴方達と同じではないと怒りを覚えたが、ルウェリンは別のことを考えていた。
それはたった今気付いた違和感だった。
転送装置で逃げたラプの居場所をこの広い世界の中から見つけられるような情報網があるのだから、ルウェリンの情報を調べることができるのは何もおかしくはない。
だがルウェリンがラプと出会い協力すると決めたのは昨夜のことだ。
昨夜に団員からラプを助けた時のあの場の状態から推理し彼の情報を調べたというのはまだ考えられる。
しかしどうしても不可解な点が一つ……あったのだ。

160:アメ ◆kvG6:2013/04/29(月) 12:13 ID:Yac

何故ラプと一度も接触したことのないアーネストが人質にされたのか。
それが不可解な点だった。
そもそもルウェリンがアーネストと会ったのは三日前が初めてだ。
相手が一度しかあったことのない人間を人質にするのはあまりにも不自然過ぎる。
だがラースの様子を見る限り、相手はルウェリン達がアーネストを助けようとするのを確信しているようだ。
そうなると考えられる可能性は一つ。
DEORTはカテリーナの存在を知った上で彼女の親友であるアーネストを人質にしたということだ。
しかしここで再び疑問が生まれる。
カテリーナは昨夜ラプを助けた時、宿で待機していたのだ。
ならば何故DEORTはカテリーナの存在を知っているのか。
宿に帰ったときに他者の視線は感じなかったしマルティネスも反応していない。
そもそもただの一般人であるカテリーナの情報をたった一晩で調べ、ましてやアーネストを誘拐することなど出来るだろうか。
そのいくつかの疑問からルウェリンは一つの結論を導き出した。

「……君達の目的は彼女を捕まるえる他に、もしかしたら僕にも何か用があるんじゃないの ?」

ルウェリンの出した結論はこうだ。
DEORTはルウェリンとラプが共に行動していると気付いたのは昨晩、もしくは今朝。
そしてアーネストは元々ルウェリンとカテリーナを呼び出すための人質だったのではないだろうか。
DEORTはルウェリン達の存在を前から知っていた。
そして彼等とラプが共に行動していると知った彼等は自分達とアーネストを利用しラプを捕らえることに目的を変更したのではないか。
だとするとつじつまが合う。
ラースはルウェリンの言葉を聞き、目を見開いて驚いたような様子を見せた。
そしてすぐに声を上げて笑いながら拍手をし出したのだ。
彼の笑い声と拍手の音が静かな港に鳴り響く。

「いやぁ驚いた。貴様の言う通りだよ。
我々の目的にはサニバルの魔剣使いである貴様の捕獲、もしくは抹殺が含まれている。
しかし……何故分かった ?」

拍手を止めラースはルウェリンに問い掛ける。
だが疑問に思っているようではあったが、動揺はしていないようだ。
むしろ面白がっているように見える。

「人質と僕らの関係を考えればわかることさ。でもそちらこそ何故僕の存在を知っていたんだい ?」

彼の問いに応えたルウェリンは、唯一分からなかったことをラースに問い返した。
こうやって話をすることでラースの気をアーネストから反らすこともできるし、DEORTの情報を知ることも出来る。
幸い相手は得意げに色々と話してくれるから好都合だ。

「私達も貴様の存在を知ったのはつい最近でね。覚えていないか?本を盗んだ男のことを」

「!」

ラースが言っている男というのは恐らくルーベル図書館の貸出禁止図書を盗もうとしていた男のことだろう。
ルウェリンの様子を見たラースはそのまま話を続ける。

「団員の服には小型カメラが付いているのさ。そのデータから貴様の存在を知った。
最初はそこの眼鏡の女を人質にしようと思ったのだがな……情報も少なく居場所も分からずこちらの娘にしたという訳だ。
まさか貴様と共に行動しているとは思わなかったよ。まあこちらの娘がそこそこ有名で情報も沢山あって助かったな」

まさかあの男がDEORTの人間だったとは、とルウェリンは驚いていた。
しかも服に小型カメラ。
こうなったのはあの場に残った服を処分しなかったルウェリンのミスということになる。
自分のミスでアーネストを巻き込んでしまった。
ならば……必ず自分が彼女を助けなければいけない。

161:アメ ◆kvG6:2013/04/29(月) 12:14 ID:Yac

今もなお何かを喋り続けているラースに気づかれないようにルウェリンは小さく深呼吸をした。
そして船の上で団員に捕まっているアーネストに目を向ける。
船の上に居る団員はそう多くはない。
殆どの団員がラプとルウェリンを捕らえるために陸にいるようだ。
彼女の周りにいるのは多くても五人。
さらに指示がまだないと思っているようで、アーネストを押さえている男はナイフをつきつけているものの視線はラースに向けている。
いける。ルウェリンはそう心の中で呟いた。
隊長であるラースは勝手に一人でベラベラと喋っている。
団員達はそんなラースを見て少しとはいえ気が抜けている。
やるなら今しかないと彼は覚悟を決めた。
どう動くかはラースと会話をしていた時に既に決めている。
次の瞬間ルウェリンは地面を蹴り上げた。
彼にとって団員達など何人いようと壁にすらならない。
その強靭な脚力で団員達の頭上を飛び越え着地。
そのまま船のある方向に加速し再び地面を蹴り上げる。
突然のことに団員達やカテリーナ達も呆然としていた。
船の上に着地したルウェリンはそのままアーネストを捕らえている団員に狙いを定める。

そしてルウェリンはマルティネスを振り下ろした。

162:アメ ◆kvG6:2013/04/29(月) 12:30 ID:Yac

決まった。

誰もがそう思っただろう。
しかし現実はそう甘いものではなかった。

「残念、だったな ?」

陸にいたはずのラースが何故かルウェリンの目の前、つまり船の上にいる。
彼の右手にはたった今使ったであろう小型の転送装置が握られていた。
ルウェリンの考えは全て彼によまれていたのである。
そしてあろうことか彼は自らの左腕でマルティネスの刃を受け止めていたのだ。
服は切れ、間違いなく刃は直接肌に触れている。
それなのに破壊されないどころか血すら一滴も出てもいない。
信じられない、そう思った時にはラースの右拳が鈍い音を立てて腹にめり込み、ルウェリンは船の上から吹き飛ばされていた。
レンガが敷かれた地面に彼の体が叩きつけられる。

「ルウェリンさん !!」

カテリーナはルウェリンの名を叫ぶ。
駆け寄ろうにも団員達が邪魔をし動くことができず思わず舌打ちをする。
ルウェリンは膝を地面につき、殴られたところを押さえながらせき込んでいた。
苦しそうにしながらもふら付いた足で立ち上がる。
一方ラプは先程から目を見開き明らかに動揺していた。
恐らくルウェリンと同じことを考えているに違いない。
そんな様子を見たラースは声を上げながら笑い出した。

「私達が魔剣の対策を何も考えていないと思ったか ?」

ニヤニヤと笑うラースは船の上から飛び降りルウェリンの前に立ち、膝をついている彼を見下ろす。
そして先程殴りつけたルウェリンの腹を今度は足で蹴り飛ばした。
港にルウェリンの呻き声が響く。

「貴様の行動は想定済みなんだよ。
私の体には透明で強力なプロテクターが身につけられている。
その魔剣は物質を砂にすることが出来ない。
ならば全身を物質で纏ってしまえばいいだけの話だ」

ラースのその言葉にルウェリン達だけではなく、団員達も驚いていた。
そんな団員達の様子を見たカテリーナが不思議に思っていると団員の一人が口を開く。

「ら、ラース隊長…… ? そのような話は聞いていないのですが、我々の分のプロテクターは……」

そう言った団員にラースは顔を向ける。
そしてニコリと笑った。

「何を言っているんだ」



「お前ら道具同然の奴等にわざわざプロテクターを渡すわけが無いだろう。
貴重な物なのだから私のような上の立場の人間が身につけるのが当然だろう ?」

カテリーナは言葉を失った。
こいつは部下をただの道具だと思っているのかと。
団員達も複雑な表情をしている。
そんな団員達のことも気にせずラースは話を続けた。

「さて、攻撃をされたということは交渉決裂ということだな。
まぁ解放するつもりは最初から無かったがな。……やれ !!」

ラースからの指示に船の上でアーネストを押さえていた団員は反応する。
ルウェリン達も反応し咄嗟に船を上を見上げる。
再び船の上に行こうにもルウェリンの前にはラースが立ちふさがっているうえに先程受けたダメージが彼の動きを鈍くさせていた。
カテリーナも団員達を掻き分けアーネストの元へ向かおうとするも今からでは間に合うわけがない。

アーネストにナイフが振り下ろされるのを見て、彼女はただ叫ぶことしか出来なかった。

163:アメ ◆kvG6:2013/05/01(水) 12:18 ID:S9c

【定期連絡】
訂正版・まとめ(>>2>>162)
http://s11.smhp.jp/ualk1206/book/?id=ualk1206&cn=6&_cus=mf4j39

一番最初の部分が訂正のしすぎで話がかなり変わっているので、これから見てくださる方は上記のURLの訂正版をご覧下さい。

※訂正箇所
 >>159->>162のアーネストに突き付けられていた刃物が途中短剣からナイフになってました。正しくは短剣です。
 >>151魔法の名前再び変えました。『ルイスフィア』です。何度もすみません。

164:匿名さん:2013/05/01(水) 12:33 ID:LjM

すごい文章ですね!
どうやったらそんなものが書けるんですか?
コツがあれば教えてください

165:アメ ◆kvG6:2013/05/01(水) 20:13 ID:Yac

>>164
コメントありがとうございます!
コツですか……私はまだまだ未熟なので、自分よりも文才がある方から様々なアドバイスを貰ったり技術を見たりして勉強しています。
あとは話の流れを小説を書く前にノートなどに書き出したりしています。
これはこの掲示板で小説を書いている尊敬している人のやり方を途中から真似たのですがとても書きやすくなって助かっています。
最初は何も考えずにこのスレを立てて書き始めたのですが今はもうラストまでの流れはノートに書き出してあるんです。
伏線も入れやすくてとてもいいですよ。
実は文章を書くのは苦手で学校とかで何かの感想をかけと言われると小学生の作文みたく今でもなります。
小説を書くときはなるべく文末が同じにならないように気を付けてなるべく台詞を続けて何度も書かないようにしているだけだったりします。
分からなかったらごめんなさい。

166:アメ@戦闘描写が上手く書けなくて泣きそう ◆kvG6:2013/05/08(水) 12:00 ID:S9c

アーネストに短剣が振り下ろされた。
それは間違いない。
しかしラースは違和感を感じていた。
それは異常なまでの静寂。
アーネストの痛みによる悲鳴も、呻き声も、いつまでたっても聞こえてこない。
そしてルウェリンもカテリーナもラプも、さらには団員達までも、ラース以外の陸にいる者は全員が船の上を呆然と見上げていた。
咄嗟にラースも全員の視線の先を見上げる。
そこにはアーネストを片腕で抱きかかえた少年の姿があった。
空いている方の手には漆黒の剣が握られており、彼女に短剣を振り下ろした団員の男に突きつけている。
そしてアーネストを縛っていた鎖は既に無く、彼女は自由になっていた。

「だ、誰だあいつは……!?」

情報のない予想外の人物の乱入に先程まで得意げだったラースはうろたえ始めた。
そうしているうちに少年は団員を蹴り飛ばし船から突き落とす。
先程までアーネストを捕らえていたはずの団員はラースの真横の地面へ激突し気を失った。
そして残りの団員達が一斉に少年に襲いかかるのがラースの目に映る。

「ラース隊長 !」

焦ったような団員の声が聞こえラースが振り返ると、すぐ目の前にマルティネスを自分に振り下ろしているルウェリンがいた。
ラースはその攻撃を避けルウェリンと距離を置く。

「ふん……魔剣の能力は私には効かないというのにどうするつもりなんだ ?」

彼はルウェリンを馬鹿にしたように鼻で笑うと腰にかけていた細身の剣を抜いた。
ルウェリンは何も答えずにラースを睨み付ける。

「……ボスから言われていてね。サニバルの魔剣を扱える君は捕えるのも殺すのも好きにしていいと。
魔剣を扱える君を殺してしまうのは惜しい。だからどうだ、私の部下にならないか ?」

ラースがそう言ってすぐにルウェリンは地面を蹴りマルティネスを振り下ろす。

「お断りだね」

「そうか」

彼はマルティネスの刃を細身の剣で受け止めると、そのままルウェリンを蹴り飛ばした。
受け身を取り着地すると休む間もなくもう一度ラースに切りかかる。

「それは残念だな」

再びマルティネスを剣で受け止めるラース。
ルウェリンは何度もラースに攻撃を続けた。
剣と剣がぶつかり合う音が港に響く。

「無駄な攻撃をし続けるとは……貴様は馬鹿か ? 私をただの団員共と一緒だとでも思っているのか !」

感情的になり叫ぶラースからルウェリンは距離をとる。
確かにこの攻撃は無駄なだけだ。
ラースにマルティネスが命中したところで与えられるダメージなどたかが知れている。
体力が減っていくだけだ。
しかし、何もしないわけにはいかなかった。

「もう諦めたらどうだ」

ルウェリンを冷たい目で見下すラースはそう言い放つ。
するとルウェリンの後ろの方からラプの短い悲鳴が聞こえた。
その悲鳴にルウェリンは急いで振り返る。
団員達は一斉にラプを捕らえにかかっていたのだ。
辛うじてカテリーナが団員を殴る蹴るなどしてラプを必死に庇っているが人数が多すぎる。

「余所見をしてもいいのか ?」

「…… !!」

その声に慌ててルウェリンが前に向き直すと、既にラースの剣は目の前にまで迫っていた。

167:アメ ◆kvG6:2013/05/15(水) 11:31 ID:pJ6

この小説の世界の地図。
ちなみに名前はメルディールといいます。
画像が大きいのでPCで見てください。
http://s11.smhp.jp/gima009/free/?id=gima009&cn=96&_cus=mmtiza

168:アメ@展開早いけど気にしない ◆kvG6:2013/05/15(水) 12:00 ID:pJ6

間に合わない。
ルウェリンは直感でそう思った。
避けなければと頭では分かっているが体が追い付かない。
三度受けたダメージは自身が思っていたよりも体に響いていたようだ。
しかし、切られる……そう思った直後、彼の目の前で驚くべきことが起こった。

「な……っ !?」

一番驚いているのはラースだ。
それもそのはず、突然彼が持っていた細身の剣が“砂になった”のだから。
ルウェリンはこの現象に見覚えがあった。
見覚えがあるというどころか昨夜も見ている。
それはマルティネスで人を破壊した時と全く同じなのだから。

「お前等が一体何者なのかは知らねえけどよ……」

突然のことで呆気にとられていた二人は声がした方に顔を向ける。
そこには先程船の上でアーネストを助けた少年が漆黒の剣を持ちすぐ近くに立っていた。
そして少年の顔を近くで見たルウェリンはあることに気がつく。
レイサルト人特有の褐色肌、頭の上でまとめたこげ茶色の髪、まだ少し幼さが残っている顔。
彼とは昨日、研究所の敷地内で会ったではないか。

「俺、人を見下す奴が一番嫌いなんだよ」

ラースに向けてそう言うと、少年は彼の首に剣を突きつける。

「ルウェリン……だっけか。聞いてた話じゃこいつがつけてるプロテクターっていうやつさえ無ければ勝てるんだな ?」

「……ああ」

ルウェリンは彼が何者なのか、もう既に予想はついていた。
彼が手にしている剣のことも。

「じゃ、よろしく頼む……“ティーチ”」

『まかせろ』

何がどうなっているのか分からず混乱しているラースの首筋に黒い刃が触れる。
その瞬間彼の肌からさらさらと砂が溢れ出した。
恐らくプロテスターが破壊されたのだろう。
ラースの服の中からも大量の砂が出てきていた。

『おいルウェリン……こいつ、まさか』

「多分……いや、間違いないね」

“物質破壊の魔剣ティーチ”
彼が手にしているのは間違いなくそれだろう。
そして彼がその適合者。
そのことに気付き納得しているルウェリンとマルティネスの目の前ではラースがプロテクターを破壊されたのに気付いたのか、体は震え顔は青ざめていた。

「う、嘘だ……そんなはずは……サニバルの魔剣が他にもあるなんて、私は聞いていない…… !!」

「それは残念だったね」

ルウェリンはラースにマルティネスを向ける。
ラースは腰が抜けたのか地面に尻をつけた。

「君……名前は ?」

ルウェリンはふと少年の方へ振り返る。
少年といっても身長はさほどかわらないが。
名前を聞かれた少年は一瞬つり目がちな瞳を丸くした。
まさか名前を聞かれるとは思っていなかったのだろう。

「ウフェだ。ウフェ・バルニー」

「そう……礼を言うよ。君のおかげでこいつを破壊できそうだ」

破壊という言葉に小さな悲鳴を上げるラース。
もはや最初の余裕はどこにもない。
助けてくれと懇願する彼は実に滑稽だ。

「お前みたいな奴を許す程、僕は優しくないよ」

そう言ってルウェリンはマルティネスをラースに突きつけた。

169:アメ@文章雑とか言わないで ◆kvG6:2013/05/19(日) 11:25 ID:ugo

「すげぇ……」

破壊されたラースを眺め、ウフェはそう呟く。
先程までラースがいた場所には彼が着ていた服や装飾品、そして“彼だった”大量の砂があった。
ラースがこの状態になるまでの時間はほんの一瞬。
叫び声を上げることすら出来ず、マルティネスが触れた瞬間、彼は砂と化したのだ。
ラースだった砂を見下ろすルウェリンの瞳は恐ろしい程に冷たい。
感情を読み取れないその暗い瞳にウフェはぞわりと鳥肌が立った。

「……そういえば彼女は ?」

「え、あ、あぁ……ちょっと待ってろ」

ルウェリンからの突然の問いにぎこちなく返事をするウフェ。
こちらを向いたルウェリンの瞳にはもう先程の冷たさは無くなっていた。
その様子にウフェは安心し、アーネストを連れてくるために船の方へと戻り梯子に手をかける。

ウフェがルウェリン達を見かけたのは偶然だった。
喋る剣、ティーチと会話するにあたって人目を避けねばいけないのはいつものこと。
いつも通り人気の無い通路を歩いていた所、深刻な顔をした彼等を目にしたのだ。
昨日少し会話しただけだが、再び会うとは思っていなかった二人。
興味本意でついて行ってみた所、今回の騒動に出くわしてしまったというわけだ。
謎の集団、訳の分からない話。
正直関わりたく無かった彼だが、怯えた少女に刃物が突きつけられているのを見たら助けるしかなかった。

「大丈夫か ? 一人にして悪かったな」

一応倒した団員は全員海に落としたとはいえ、一人で船に残っているのは怖かっただろう。
ウフェが戻って来たことに安堵し、アーネストは彼に近寄った。

「あの、助けてくれてありがとう」

そう言ってウフェに頭を下げるアーネスト。
そんな彼女の頭に彼は手を置き、くしゃりと黄色い髪を撫でた。
アーネストは驚き、自分よりもかなり背の高い彼を見上げる。

「それ、あいつ等にも言ってやんねーと。お前助けるために頑張ったんだからよ」

そう言って微笑むウフェに、アーネストはこくりと頷いた。

170:アメ ◆kvG6:2013/05/22(水) 12:00 ID:pJ6

口から泡を吹いて倒れている団員。
それに囲まれているようにして立っている二人の女性。
ウフェとアーネストが船から降りて真っ先に目に入ったのはそんな光景だった。

「カテリーナさん凄いです !」

「取り敢えず殴ってみたけど案外倒せるものね ! でも力加減が難しいわ……」

キラキラとした目でカテリーナを見るラプと団員を倒せたとはしゃぐカテリーナ。
カテリーナは恐らく力が倍増するあの手袋を使ったのだろう。
団員はピクリとも動かない。
彼女の言動から察するに一応手加減はしようとしたのだろう。
しかし団員の様子を見れば力をコントロール出来ていないのは一目瞭然。
多分骨は数本折れているのではないだろうか。
何がどうなっているのか分からないウフェとアーネストは驚き過ぎて目が点になっている。
一体この短時間で何があったというのか。

『……ウフェ、海の方も見てみろ』

「え…… ?」

ティーチに言われ海のある方へウフェは振り向く。
彼の目に映ったのは遠くで浮いている十名程の団員達。
その光景にウフェは言葉を失った。
あそこまで団員達は吹っ飛ばされたというのか。

「……一体何があったんだよ」

どこか遠い目でカテリーナ達を眺めているルウェリンにウフェはそう尋ねてみる。
しかし彼はゆっくりと首を横に振った。

「僕に聞かれても分からないよ……振り向いたらこうなってたんだ」

「……そうか」

取り敢えず二人は泡を吹いて倒れている団員達に同情することにした。

171:アメ ◆kvG6:2013/05/25(土) 22:41 ID:Zlc

「アーネちゃぁあああん !!」

アーネストは少し苦しそうにしているがどこか嬉しそうにしていた。
アーネストに気付いたカテリーナは自分よりも二十センチほど低い小さな彼女の体を力いっぱい抱き締めた。
ふわふわとした黄色い髪の頭に頬を擦り付ける。

「怪我とか痛い所は無い ? 変なことされなかった ?」

過保護な親のごとくそう聞いてくるカテリーナに苦笑しながらもアーネストは大丈夫と首を縦に振る。
すると彼女は良かったと呟きアーネストを抱き締める力を強めた。
そんなカテリーナの様子にアーネストは申し訳なさそうに俯く。

「……ごめんなさい」

昨夜、自分がもっと周りを警戒していたらカテリーナに心配をかけなかったかもしれない。
あの時、すぐに船から脱出していればルウェリン達に迷惑を掛けなかったかもしれない。
そんな後悔から出てきたアーネストの謝罪の言葉。
カテリーナはそんな彼女の頭を優しく撫でる。

「アーネちゃんは何も悪くないじゃない。謝ることはないわよ。悪いのは全部あいつ等なんだから !」

彼女がそう言って笑うと安心したのか、アーネストはありがとうと口にして微笑んだ。


「ふふっ、しっぱーい。面白くなってきたわぁ……」

「これの何処が面白いんだ……邪魔者が増えただけだろう」

港から少し離れた上空。
そこからルウェリンたちを監視する二人の男女がいた。
二人は宙を浮いており魔法の使い手であることが伺える。
一人は長い黒髪をツインテールにしている女。
彼女のツインテールにしている髪は先が不自然に分かれており、一本一本がまるで生き物のように奇妙な動きをしていて気味が悪い。
血の気がない白い肌、吸い込まれそうな黒い瞳には光がなく、漆黒のドレスに身を包んだ彼女は動かなければ人形と見間違えそうだ。
そんな彼女はルウェリン達を眺めながら楽しそうに微笑んでいた。
そんな彼女を見て溜め息をつくのはツリ目で三白眼の男。
紫、青、緑の混じり合った毒々しい色の特徴的な髪をしている。
未だにくつくつと笑う彼女を彼は眉間に皺を寄せて睨み付けた。

「わかってないわねぇリダム。簡単に事が進むなんてつまらないわ。少しくらい刺激があった方が良いでしょう ?」

「……クロウナ、毎回言っているが俺はお前の考えが理解出来ない。あの方のためには素早く事を進めた方が良いに決まっている」

どうやらこの二人は気が合わないようだ。
彼、リダムは再び深い溜め息をついた。
クロウナと呼ばれた女性は先程と変わらず笑顔のままだ。

「そういえば、どうしてラースにプロテクターを渡したの ? 確かまだ完成段階ではなかった筈だけれど」

ふと思い出したのかクロウナはリダムにそう尋ねた。
あぁそのことか、と彼は返すとそのまま話を続ける。

「実際に使用出来るか実験するように“奴”に頼まれてな。
その実験台をあいつ本人がラースに指定したんだ。
実力は申し分ないが、最近団員からの評判がすこぶる悪かったからな。
いなくてもまあ別に問題ないだろう。
プロテクターは肉体破壊の魔剣に対しては問題無いようだが……物質破壊にはやはり効果が無いようだな」

「あはっ、別に居なくても問題無いってかわいそーう」

彼の説明に応えた彼女の返事は棒読みである。
間違いなくラースのことなど微塵も可哀想たとは思っていないだろう。
ラースがサニバルの魔剣について詳しく知らされていなかったのはこのためだ。
彼は知らない間に実験台にされていたのである。

「それにしても……馬鹿よねぇ、彼」

そう言ったクロウナの笑みは愉快なものから残酷なものへと変わっていた。
殺気、というよりも狂気に近いものを放っている。
彼女の黒い口紅が塗られた唇は美しい弧を描いていた。

「自分だって道具のくせに偉そうにしちゃって……部隊長だからって調子に乗り過ぎよねぇ。アタシ達は全員、主のための道具だというのに」

「それには同意見だな。DEORTの人間は全てアルベディ様のモノ。アルベディ様以外の者が我々を道具扱いすることは許されない」

第一幹部リダム・ロズベルク
第ニ幹部クロウナ・ロフティング
彼等は最もボスに信頼されている四人の内のニ人。
DEORTで、二番目の権力と実力を持つ者達である。

172:アメ ◆kvG6:2013/05/25(土) 22:45 ID:Zlc

訂正です。
コピペに失敗して一部文章の順が入れ替わりました。

誤→アーネストは少し苦しそうにしているがどこか嬉しそうにしていた。
  アーネストに気付いたカテリーナは自分よりも二十センチほど低い小さな彼女の体を力いっぱい抱き締めた。
  黄色い髪の頭に頬を擦り付ける。

正→アーネストに気付いたカテリーナは自分よりも二十センチほど低い小さな彼女の体を力いっぱい抱き締めた。
  ふわふわとした黄色い髪の頭に頬を擦り付ける。
  アーネストは少し苦しそうにしているがどこか嬉しそうにしていた。

173:アメ ◆kvG6:2013/05/29(水) 11:28 ID:pJ6

【定期連絡】
訂正版・まとめ(>>2>>172)
http://s11.smhp.jp/ualk1206/book/?id=ualk1206&cn=6&_cus=mf4j39
一番最初の部分が訂正のしすぎで話がかなり変わっているので、これから見てくださる方は上記のURLの訂正版をご覧下さい。

>>169 >>170を訂正版では繋げました。ルウェリンとラースの戦闘描写を少しだけ増量。


この小説の世界の地図。
画像が大きいのでPCで見てください。
http://s11.smhp.jp/gima009/free/?id=gima009&cn=96&_cus=mmtiza

174:アメ ◆kvG6:2013/05/29(水) 17:03 ID:pJ6

あの後彼等は宿をとることにした。
まだ昼間だがルウェリンの怪我の手当てをした方がいいということになったのだ。
本人は別に大丈夫だと言い張っていたが、船から突き落とされたり腹を三度も集中的に攻撃されたりとどう考えても大丈夫ではない状況である。
そして宿の部屋で彼の体を確認したところ、案の定体の至るところに痣や傷が出来ていた。
特に集中的に攻撃された腹は内出血しており紫色に変色していた。

「い、痛そう……」

ルウェリンの痣を見たカテリーナは心配そうに眉を下げる。
その痛々しい痣にマルティネスも大丈夫かと彼に声を掛けていた。

「これくらいどうってこと……」

「強がってはいけませんよ、ルウェリンさん」

今もなお強がるルウェリンの言葉を遮ったのはラプ。
彼女は彼を強い眼差しで見つめ、歩み寄る。

「私は強力なものではありませんが治癒の魔法が使えます。
多少時間はかかりますが、今回の件は元はといえば私のせいですので……責任を持って治させていただきます」

自分のせいでルウェリンが怪我をした。
ラプはそう感じていたのだ。
そもそもの原因は自分にあると思ったラプは治癒魔法でルウェリンの傷を治すことに決めたのである。
彼女の申し出を断ることも出来ず、ルウェリンはじゃあよろしく頼むよと返した。

「あの、ぼくも手伝っていいかな…… ?」

ラプの言葉を聞いて恐る恐るそう尋ねたのはアーネスト。
彼女もまた、今回の件に責任を感じている一人だ。

「ほ、ほら……治癒魔法って集中力も体力もかなり使う高度な魔法だから、一人で全部の傷を治すのは大変でしょ ?
ぼく、まだ魔法は使えないけど手当てするのは得意だから……君の負担を少しでも減らせるかなって」

魔法の勉強をしているアーネストは治癒魔法の使用が大変なことを知っている。
彼女はラプのことも心配していたようだ。
まだラプの名前すら知っていないアーネストだが、彼女のことを放っておけなかったらしい。

「……では、お願いできますか ? アーネさん」

アーネストの好意が嬉しく、ラプはそう言ってふわりと微笑む。
まさか名前を呼ばれるとは思っていなかったのか、彼女は少し驚いた表情をした後こくりと頷いた。

「うん、まかせて !」

そう元気に微笑むアーネストはルウェリンの手当てをするため、救急箱を手に取った。

175:若宮鈴音 ◆RCWE:2013/05/31(金) 23:15 ID:ez-dcU

こんばんは★
葉っぱ天国作家プロフィールスレッドに来ていただいたのでアメ様が執筆中の小説にお邪魔させていただきました。
迷惑でしたら申し訳ないです。
アメ様のような描写の上手い方...
憧れます^ ^

176:アメ ◆kvG6:2013/06/01(土) 23:41 ID:Zlc

ありがとうございます!^ワ^
>>175

177:アメ ◆kvG6:2013/06/05(水) 11:06 ID:pJ6

ルウェリンの治療は思いのほか早く済むことが出来た。
アーネストが小さな傷を手当てしてくれたおかげでラプが治癒魔法をかける場所が少なくなったのだ。
アーネストの手際の良さに手当ての最中、一同は関心していた。
カテリーナだけは得意げにアーネちゃんは凄いんだからと言っていたが。
こうして治療を終えたラプは休憩することなくウフェの元へ歩み寄る。
ラースを倒したあと、すぐさま立ち去ろうとした彼を無理を言って引き止め宿に連れて来たのだ。
その理由は彼が背中にかけている漆黒の剣。
物資破壊の魔剣、ティーチのことでだ。

「ウフェさん、貴方に頼みたいことがあるのです」

「……サニバルの一族を助けるのを協力して欲しいんだろ ?」

「え……っ」

どうしてそれを、と目を見開き驚くラプ。
そんな彼女の様子を見たウフェは壁に立てかけられているガーディアルを指さした。

「お前らがそいつを治療してる間に全部こいつから聞いた」

『忙しそうだったので先に説明させていただきました』

ガーディアルは忙しそうだったラプを気遣いあらかじめウフェに全てを説明していたのだ。
サニバルの一族のこと、剣のこと、五年前のこと。
そしてウフェがティーチの適合者であること。
昨夜ルウェリンに話したことを全て。

「……お前には悪いけど協力は出来そうにない」

だがウフェは申し訳なさそうな表情でその頼みを断った。
ラプはそうですかと呟き俯く。
彼女は他の適合者が必ずしもルウェリンのように快く協力をしてくれるとは思っていなかったが、いざ断られると残念な気持ちになる。
しかし彼の話はまだ終わってはいなかった。

「ただ、レイサルト国内までなら協力というか……DEORTって奴等からお前を守る手伝いは出来る」

「え…… ?」

ラプはウフェの言葉に顔を上げる。
彼は目をそらし指で頬をかいていた。

「色々事情があって俺はこの国から出るわけにはいかないんだ。だから国内までしかお前らについて行くことはできない。それでもいいのなら協力すっけど……」

どうやら最後まで協力出来ないのことを申し訳なく思っているようだ。
しかしラプにとってはレイサルト国内までとはいえ、協力してくれる人が増えるのはとても心強い。
彼女は有難うと言って頭を下げた。

『お、仲間が増えたな』

「まぁ協力者が増えるのは有難いね。……でもまだ問題が一つあるよ」

ルウェリンはカテリーナの隣にいるアーネストを見る。
彼が言う問題とはDEORTのせいでここまで連れてこられてしまったアーネストをどうするかだった。
何の戦う術のない一般人である彼女を旅に連れていくのは危険だ。
ここは彼女をファンドに帰してあげるのが妥当だろう。

「ぼくもついて行きたい」

しかしアーネストは予想外の言葉を口にした。
ついて行きたいというのはどう考えても旅のことだろう。
その発言に真っ先に反応したのはカテリーナであった。

「ダメよ、アーネちゃんは帰った方がいいわ。この旅は危険なのよ ?」

「でもついて行きたいの」

「でもアーネちゃんは体力もないし第一戦えないじゃない」

「傷の手当てなら出来るよ」

確かにアーネストは戦えないが先程ルウェリンの傷の手当ては中々のものだ。
けれどもカテリーナはどうしても首を縦に振ることは出来なかった。
理由は明確。
彼女に、どうしても傷ついて欲しくないからだ。
しかしアーネストは諦めるつもりはないらしい。

「それでもアーネちゃんは家に戻るべきだわ」

もう一度、彼女を説得しようとカネリーナがそう言う。
するとアーネストは下を向き、黙りこんだ。
少しの間の後、微かに鼻をすする音と共に肩が小刻みに震えだす。

「あ、アーネちゃん……」

「何も言わないで旅に出ちゃったくせに、会えたと思ったら帰れなんてそんなこと言わないでよ……」

アーネストの震えた声で呟いたその言葉は、部屋にいる全員の耳に届いた。

178:アメ ◆kvG6:2013/06/05(水) 11:14 ID:pJ6

【連絡】
今月は中間テストがあるのでテスト勉強のためしばらく更新をお休みします。
ですがたまに現実逃避で更新する可能性もあります。

179:アメ ◆kvG6:2013/06/24(月) 20:34 ID:su.

上げ
現在まとめ版大幅修正中

180:アメ ◆kvG6:2013/06/26(水) 11:04 ID:pJ6

五人部屋にしては少し小さめの空間に気まずい空気が流れる。
そんな中でカテリーナは激しい後悔に襲われていた。
色々なことが立て続けに起こっていたためか、忘れていたのだ。
自分が彼女に何も言わずに旅に出てしまったことを。
アーネストはカテリーナよりも二つ年上だ。
しかし彼女は精神的に幼かった。
お姉さんのように振舞おうとしたり、頼れる面もある。
それでも寂しがり屋で子供っぽい面がアーネストの大半をしめていた。
その原因はカテリーナもよく知らない。
だが初めて会った九年前、自室の隅で大量の本に囲まれ寂しそうにうずくまっていた彼女を見た時、カテリーナは何かあったのだと感じた。
そんな彼女を外に連れ出したのは他でもないカテリーナで、アーネストにとってカテリーナはたった一人の友人なのだ。
それなのにカテリーナは自分の好奇心のためにアーネストに旅に行くと伝えるのも忘れ置いてきてしまった。
きっとショックを受けたに違いない。
アーネストのことを思って帰った方がいいと言っていたカテリーナ。
しかしアーネストの気持ちまでは考えていなかった。

「ごめんね。私はただ、アーネちゃんを危険な目に合わせたくないだけなの……」

「カテリーナさん……」

アーネストは自分の言ってることが我がままで、カテリーナに迷惑をかけているということを分かっていた。
それでも彼女はどうしてもついて行きたいのだ。
訳のわからない団体に誘拐され、船の上で団員達に囲まれたカテリーナを見てアーネストは思ったことがある。

彼女は自分が知らない何処か遠くに行ってしまうのではないか。
もう二度と会えないのではないか。

根拠は分からないが、何故かそう不安に思ってしまったのだ。
だから旅について行きたい。
たった一人の友人について行きたい。
それが彼女の、アーネストの意思だった。

181:アメ ◆kvG6:2013/07/03(水) 11:01 ID:pJ6

「……取りあえずこいつの要望通り、旅に連れてってみればいいじゃねえか。それで危険だと全員が判断したら船とかで無理やりにでも帰らせろ」

溜息をついた後、そう発言したのは壁に寄り掛かったウフェだった。
部屋にいる全員の視線が彼に向けられる。

「で、でも、何かあってからじゃ遅いじゃない」

そう反論するカテリーナにウフェは再び溜息をつく。
呆れた表情で二人に近づき、彼は口を開いた。

「そもそもお前も一般人だろうが。武器があるといっても素人。そんな奴がこいつに危険だの傷ついてほしくないだの言える立場じゃないだろ。お前過保護過ぎなんじゃないのか ?」

「うっ」

カテリーナは彼の言葉に言い返せない。
ウフェの言葉は何一つ間違っていないからだ。
自分はただの一般人で、武器であるあの手袋を手にしたのもほんの数日前。
使い方も今だに良く分かっていない。
本当ならば、自分もファンドに帰った方がいい人間だ。

「だから決断はあっちの二人にしてもらえ」

ウフェはルウェリンとラプに視線を向ける。
確かにこの旅の重要人物であるあの二人に決めてもらうのが一番良いのだろう。
カテリーナはアーネストを説得するのを諦め、ルウェリン達に任せることにした。
二人は互いに顔を見合わせた後、三人の方へ視線を戻す。

「別にいいんじゃない ?」

「私もかまいませんよ。むしろ私の方が迷惑をかけてしまうと思いますが……それでもよろしいのでしたら」

ルウェリンとラプはウフェの言う通り、試しにアーネストを連れて行き、危険ならば帰すことにするようだ。
それを聞いたウフェはアーネストの方を向き、彼女の頭に手を乗せた。

「それじゃあお前は家族に連絡しろ。親に反対されたら仕方ねえけど諦めろ」

「うん !」

彼を見上げアーネストはそう返事をする。
にこにこと笑みを浮かべる彼女は本当に嬉しそうだ。
しかしふと何かを思い出したのかアーネストはくるりとカテリーナの方へと振り返った。

「携帯壊されたからカテリーナさん貸して〜」

「壊されたの !?」

182:アメ ◆kvG6:2013/07/10(水) 11:00 ID:pJ6

「はい、そうです。アーネちゃんは私の所にいます。無事ですよ」

カテリーナがアーネストの家に電話をかけてみると、思った通り大騒ぎになっていた。
壊された彼女の携帯が道に落ちていたら誘拐されたと思うのはアーネストの家だから当然だろう。
昔もよくこんなことがあったなあ、とカテリーナは頭の隅で思っていた。
何があったのかをカテリーナは彼女の家族に説明する。
もちろんDEORTのことなどは隠してだ。
サニバルの一族や魔剣のことを話してもすぐには信じてくれないだろう。
カテリーナが説明している間ルウェリン達はというと、これからのことについて話し合っていた。

「仲間が増えて剣も一本見つかって、一日で結構な収穫だね。……というかこれ二本じゃないの?」

ちらりとルウェリンはウフェのそばに置いてある黒と白の剣に目を向ける。
色が違うだけでどちらも全く同じ形、模様をしているのだ。
その二本の剣を見たラプは首をも傾げた。

「ティーチは黒い方の剣ですよ。……そちらの白い剣はどうされたのですか?」

ルウェリンの問いにこたえ、次にウフェに尋ねるラプ。
聞かれたウフェは白い剣を持ち上げた。

「俺、戦うとき剣は二本使うスタイルなんだよ。そんで金稼ぐ為に受けた依頼で依頼主が鍛冶屋だった時があってな、礼に武器作ってやるって言われてよ。
その時にティーチと全く同じ形のこれを作ってもらったんだ。同じ形の剣の方が扱いやすいからな」

そう説明された二人はなるほど、と呟いた。
剣の模様までもが寸分の狂いなく同じに彫られている所を見ると、そうとう腕の立つ鍛冶屋だったようだ。
サニバルの一族を示す紋章も完璧である。

「へぇ……で、レイサルトにはあと一本あるんだよね。この首都のどこかに」

「はい、一体どこにあるのでしょうか……」

今日は運良く物質破壊の魔剣ティーチとその適合者であるウフェと出会えたものの、もう一つの剣はこのリーアカリフのどこかにあるということしか手掛かりがない。
首都に範囲が絞られているとはいえ、広いことには変わりないのだ。
リーアカリフ全体を調べるのにはかなり無理がある。

「剣同士が近付くと反応するとかねーの?」

『それはないな。ガーディアルとティーチが近付いても何も感じなかったし』

『お役に立てなくて申し訳ありません……』

ウフェの質問にマルティネスとガーディアルがこたえる。
ティーチは無言のままだがこたえは同じだろう。
どうやら剣同士の繋がりのようなものはないようだ。

183:アメ ◆kvG6:2013/07/17(水) 11:12 ID:pJ6

「なんでよ兄さん! お父さんとお母さんは許してくれたよ!?」

突然部屋にアーネストの大きな声が響き三人はそちらに視線を向けた。
どうやら彼女は兄と言い争っているようだ。
恐らく旅に出ることを反対されているのだろう。
アーネストは瞳に涙をためており、隣ではカテリーナが心配そうにしていた。

「兄さんの馬鹿! 大嫌い!!」

何を言われたのかは分からないがアーネストの様子を見る限りかなり反対されているようだ。
しかし彼女の先程の発言以降沈黙が続く。

「え、いいの!?」

次に発せられたアーネストの声は実に嬉しそうであった。
沈黙している間に一体何があったのかと全員が疑問に思う。
ただカテリーナは何が起こったのか大体察しがついているらしい。

「うん、分かった。ちゃんと連絡する。兄さん大好き!」

ルウェリン達が呆然とする中、アーネストは話がついたようで通話をきる。
彼女はよほど嬉しかったのか携帯を持ったままぴょんぴょんと飛び回りだした。
何が起きたのか分からない一同は手招きでカテリーナを呼び寄せる。
近寄ってきた彼女に小声でどういうことか聞いてみると、カテリーナは苦笑した後に口を開いた。

「アーネちゃんのお兄さんは重度のシスコンなのよ……」

シスターコンプレックス。略してシスコン。
女姉妹に対する強い愛着心や愛情を抱くことである。
成る程、アーネストの兄は大嫌いの言葉にショックを受け手の平を返したのか。
一同は何とも言えない表情をしていたがカテリーナは続ける。

「アーネちゃんは一番上のお兄さん以外全員女な四人兄妹なんだけどね、そのお兄さんが下の三人を溺愛してて……。
妹は天使って言うのは当たり前、男が妹に近付こうものなら鬼の形相で睨み付け、妹に手を出そうとした男にはトラウマを植え付けさらには……」

『うん、もういいよカテリーナちゃん !!』

長々と続きそうなアーネストの兄についての話をマルティネスは無理やり止める。
これは止めて正解だろう。
三人は内心止めてくれて良かったと安堵していた。
もしかしたらアーネストに友達がいないのはその兄のせいもあるかもしれない。

「何の話をしてるの?」

四人が集まって話をしているのに気付いたのかアーネストはひょこっと顔を覗かせる。
君の兄がシスコンだという話とは言えないので、マルティネスが大したことじゃないよと返すと簡単に引き下がってくれた。
どうやら彼女は自分達に別の用事があったようだ。

「あのね、みんなで自己紹介しない?」

こちらの様子を伺いながらそう言うアーネスト。
よく考えてみると彼等は互いのことをあまり知らない。
今日新しく仲間に加わったメンバーもいるし自己紹介は丁度良いだろう。
こうして彼等は互いに自己紹介を始めた。

184:アメ ◆kvG6:2013/08/03(土) 01:23 ID:b8w

http://s11.smhp.jp/ualk1206/dook/?id=ualk1206&cn=6&_cus=mf4j39
全話修正完了しました。
設定がちょくちょく変わってしまったので見直して下さると助かります。
また、これから見て下さる方もこちらから見て下さると助かります。

185:アメ ◆kvG6:2013/08/03(土) 01:25 ID:b8w

>>184
すみませんURL失敗しました。
申し訳ありませんが>>173のURLからご覧下さい。

186:アメ ◆kvG6:2013/08/14(水) 10:18 ID:UC.

彼らの自己紹介は案外長引きかなり時間がかかってしまった。
それほど互いにのことを知らなかったのだろう。
ただどうしても口にしたくないことがある者もいるようで互いのことを全て知ったわけではないが、ほんの少しでも相手のことを知っているほうが安心できる。
互いに紹介し合っていた彼らは少し楽しそうで、ルウェリンのファミリーネームを聞いたアーネストが「ぼくと同じだね」と微笑んだり、彼女の年齢にカテリーナ以外の全員が驚いたりもしていたのだ。
実年齢より五・六歳は低く思っていたようで、特にウフェは頭を数回撫でていて完全に年下だと思ってやっていたのでしばらく呆然としていた。
そんなウフェは十八歳であり、ルウェリンが二十四、アーネストが二十一、カテリーナとラプが十九歳なのでこのメンバーの中では最年少ということになる。
最年少といってもそんなに年はかわらないのだが彼は軽くショックを受けたらしい。

『……気にしなくてもいいと思うぞ』
「あぁ、うん……」

今もなおどこか年齢を気にしている様子を見せるウフェにそう声を掛けたのはティーチだ。
ティーチはマルティネスと違ってあまり喋らないためどんな性格をしているのかよく分からないが、彼のことを励ます所を見ると優しい性格なのかもしれない。

「そうだよ、ウフェ君。年齢なんて気にしなくていいと思うよ。ぼくなんていつも年下に見られるけど気にしてないし」

ウフェの隣からひょっこりと身を乗り出しティーチの意見に賛同するアーネスト。
だが年下に思われて気にしないのはどうなのだろうか。
むしろ彼女の場合気にした方が良いように思える。

「いや、でも年下扱いして悪かったな……」
「だから気にしなくてもいいよ? それにいつも撫でられたりされているし」

そう言いながら彼女はテレビ番組を眺めているカテリーナの方を見る。
よく思い返してみると、アーネストの実年齢を知っているカテリーナですら年下にするような行動をしていた。
年下扱いされるのは彼女にとって日常茶飯事ということだろう。

『見た目以前に中身が子供だから年下に見られるのだと俺は思うのだがな』

アーネストに向かってそう言ったのはティーチで、先程のウフェに対しての気遣うような雰囲気ではなくどこか小馬鹿にしたような態度である。
その言葉に呆然としている彼女が口を開く前にティーチは言葉を続けた。

『さっきからお前の発言や行動は成人している大人とは思えない。いくら年齢が二十歳超えているからって中身がそれじゃあ子供と一緒だろう』

ティーチの嫌味な発言にアーネストは苛立ちを隠せず、今日初めて会った人にこんな言いぐさはないだろうと顔をしかめた。
そんな彼女の様子を見てティーチは鼻で笑う。

「……ぼく、君に何かしたかな?」
『ただ俺がお前のようなガキが嫌いなだけだ』

その返答に納得いかない彼女はティーチを睨み付けるが、彼は彼女に対して喧嘩腰のままだ。
声を荒げてはいないが棘の含んだ言葉がアーネストとティーチの間を飛び交う。
彼女たちが発する険悪な雰囲気に、どうしてこうなったとウフェは冷や汗をかきながら傍観するしかなかった。

187:アメ ◆kvG6:2013/08/14(水) 10:22 ID:UC.

アーネスト達が険悪な雰囲気を醸し出している中、他のメンバーはテレビの前で色々と話し合っていた。
先程も一度話し合っていたが、サニバルの剣をどうやって探し出すかだ。
ただいくら話し合っても良い方法は見つからず、一同は悩んでいた。
カテリーナに至ってはマルティネスと共にテレビ番組を見始めてしまっている。

「やはり聞き込みなどをするしかなさそうですね……」
「そうなるとかなり時間が掛かるね。それにDEORTもいるだろうし警戒していかないと」

ルウェリンの言う通り、聞き込みをするにあたって気を付けなければいけないのはDEORTの存在だ。
今日の事でラプがリーアカリフ内にいることは敵に筒抜け、恐らく他にも団員はいると思われ首都のあらゆる場所に潜んでいる可能性は十分にある。
そうなると移動手段である列車の駅や出入口は当然見張られているだろうし、首都に留まっていることが知られてしまう。
現在首都にいる団員がラプを捕えるために仲間を呼んでしまえば逃げることがより困難になるだろう。
結論を言えば首都に留まる期間が長ければ長い程自分達は危険に晒されるということだ。

「君達もテレビばっかり見てないで何か意見を……」

先程から耳に入ってくるテレビ番組の騒がしい音が気に障るのか、ルウェリンはカテリーナ達の方にそう言葉を発しながら顔を向けた。
しかし彼が言い切る前にテレビからけたたましい音楽が鳴り響き、あまりの音量の大きさにルウェリンとラプも画面に釘付けになる。
どうやらカテリーナ達が見ていたバラエティー番組が終わりニュース番組へと切り替わったようだ。

『皆さんこんにちは。夕方のニュースの時間です』

レイサルト人の女性が画面の中で作り笑顔を浮かべこちらに語りかける。
どことなく豪華に飾りたてられたスタジオが目に痛い。

『王子の誕生日が明後日に迫り、王宮では着々とパーティーの準備が進められています。パーティーには各国の王族が出席予定であり……』

開始早々にニュースキャスターの女性は明後日のレイサルト国王子の誕生日について話始めた。
どうやら王子の誕生日パーティーが開かれるようで、延々とその話題しか出してこない。
旅の途中である他国の人間のルウェリン達にとってこの国の王子の誕生日が迫っていようが関係がないのでテレビを消そうとルウェリンはリモコンに手を伸ばす。
レイサルトの国民であるウフェは先程からアーネストと何やら話して番組を見ていないので関係ないだろう。

『なんと国王と中継が繋がっています!』

キャスターがそう言うと画面が変わり、髭を蓄えた初老の男性が映った。
レイサルト王国の国王デイヴィッド・プレトリウスである。
きらびやかな部屋の中心で高価そうなソファに座り、番組を見ているであろう国民に話かけ始めた。
彼がいる部屋にはアンティークな置物や芸術的な壺などが置かれており、壁には有名な画家の絵画が金の額縁に入れられ飾られている。
流石王族といった所だろうか、部屋にある物全てが高価な物で統一されている。
しかし国王には興味がないルウェリンはこれ以上この番組を見る理由がないので一度止めた手を再びリモコンへと伸ばす。
だがルウェリンがリモコンを手にした瞬間、ラプが突然大声で叫び出した。
普段大人しいラプが叫んだことにより部屋にいる全員の視線が彼女に集まる。
当の本人であるラプはわなわなと震え驚愕の表情を浮かべていた。

「ど、どうしたの、ラプちゃん……?」

ラプの様子に心配したカテリーナがそう声をかけると、彼女は震える手で画面のある一点を指差した。
全員、彼女が指差した所に視線を移しラプは口を開く。

「物質再生の聖剣……ピュールです……!!」

ラプが指を差した先、そこには美しい装飾が施された短剣が棚に飾られていた。

188:アメ ◆kvG6:2013/08/14(水) 12:05 ID:UC.

「まさか、剣が王宮の中にあるなんて……」

澄み渡る青空を見上げそう呟いたカテリーナは、ベンチの背もたれに力なく寄りかかり気力を失っていた。
昨日のニュース番組で映った王宮の中の一室に飾られていた美しい装飾の短剣、物質再生の剣ピュール。
ラプが間違いないと言うのだから、彼女達が求めている剣の一本なのは確定的だ。
しかし剣のありかがよりにもよって王宮内、手に入れるための難易度が高過ぎる。

「明日はパーティーですし警備は強化……一般人、しかも異国の旅の者など城内に入れてもらえるわけがありません」

カテリーナの隣に座るラプもまた、途方に暮れていた。
あれから情報収集してみるも、剣を手に入れる手段が全く見つからないのだ。
王宮には関係者以外入ることは出来ず、それ以外の者は関係者の中でも上層部の人間の招待状がなければいけない。
パーティーの参加者も同様である。
もちろんルウェリン達が招待状を手に入れる手段などあるはずもなく、残された手段は不法侵入だけだ。
しかしなるべく目立つ行動はするわけにはいけない。
王宮に侵入となれば大事になるに決まっているのだ。

「……一度諦めるという選択肢は」

ここは一度諦め、他の剣を探しにいこうという意味を込めベンチの横に立つルウェリンがラプに声を掛ける。
幸い物質再生の能力は戦闘向きでは無いし、DEORTからサニバルの一族を助け出すにあたって必ずしも必要な能力ではない。
それならば仕方ないがピュールは諦めて先に進めば良いのだ。

189:アメ ◆kvG6:2013/08/14(水) 12:06 ID:UC.

「それはいけません!」

だがラプはそれを受け入れず、勢い良く立ち上がりルウェリンに詰め寄る。
そんな彼女の様子にルウェリンもカテリーナも目を見開いた。

「どうしても、剣は全て回収しなければいけないのです……何があっても!」
「ご、ごめん……」

ラプの真剣な眼差しに思わずたじろぐルウェリン。
彼女には剣を諦める気など全く、きっと方法はあるはずだと彼に訴える。

『まぁまぁラプちゃん、落ち着いて』
『……そうですよ、ラプ様。ルウェリン様は別に……ピュールを見捨てようという意味で言ったのではないのですから』

熱くなるラプにそう声をかけたのはマルティネスとガーディアル。
ガーディアルの言葉から考えるとラプはピュールを見捨てろと言われたと勘違いしたようだ。
その間違いに気付きラプはすぐさまルウェリンに頭を下げる。

「……いや、僕の言い方が悪かったよ。ごめん」

恐らくラプにとってサニバルの剣は人同然なのだろう。
マルティネスやガーディアル、ティーチに人格があるように、ピュールにも人格があるに違いないのだ。
そのピュールを諦めろと言われたら見捨てろと言われたと解釈しても無理ない。

「みんなー! 待たせてごめんね〜」

少し気まずい雰囲気が漂っている空間にそんな間延びした声が響く。
声がした方を三人が振り向くとアーネストが手を振り、こちらに向かってゆっくりと歩いていた。
その隣を歩くウフェは白い紙袋を持ち何気にアーネストの歩幅に合わせている。
彼女に無理をさせないようになのか彼もゆっくりとしたペースだ。
何故二人がルウェリン達と別行動だったのかというと、アーネストの携帯端末を買うために店に行っていたのである。
元々持っていたものは先日壊されてしまったので、家族との連絡手段確保のためにカテリーナが彼女に買うように言ったのだ。
因みにウフェは女性一人では危ないということで付き添いである。

「見て〜最新型だよ!」

アーネストはカテリーナに駆け寄り新しい携帯端末を見せた。
嬉しそうにはしゃぐ彼女を可愛がるようにカテリーナはベンチに座りながら頭を撫でてあげる。
カードのように薄いそれは一見脆そうに見えて頑丈に作られており、そう簡単には壊れない仕様になっているらしく機能も様々なものがあってかなりの優れ物だ
CMで宣伝されていた最先端の新商品だなとカテリーナはぼんやりと思い出していた。

「私ちょっと飲み物買ってくるわね」

全員が揃った所でみんなのために飲み物を買ってこようとカテリーナはベンチから立ち上がる。
ルウェリン達は情報収集のために歩きまわり、アーネスト達は携帯端末を買うために少し遠くまで出向いたのだ。
きっと喉は渇いているだろう。

「何か飲みたいものある?」
「何でもいいよー」

そうアーネストから返事が返ってきたのでその場で美味しそうな飲み物でも探すとしよう。
ついでに昼食用の食べ物でも買ってこようかと考えながらカテリーナは出店のある商店街へと向かった。

190:アメ ◆kvG6:2013/08/14(水) 12:10 ID:UC.

商店街は昨日と比べ物にならないくらいに活気付いていた。
店には王子の誕生日を祝う言葉やイラスト、派手な飾りなどが装飾され、カフェなどでは看板に期間限定メニューと強調された王宮に見立てたケーキが掲示されたりもしている。
出店もかなり多く一言で表すのならばお祭り騒ぎだ。
レイサルト国王子の誕生日前日でこうなのだから当日にはどうなってしまうのだろうか。

「人、多いわね……」

当然人も多く、道が狭まりカテリーナは中々前に進めずなんとか人と人の隙間を通っている状況だ。
取りあえずお目当ての物が売っている出店を探そうと彼女は辺りを見渡す。
人が多いので背伸びをしたりして探していると、宣伝を云っているのであろう男性の声がカテリーナの耳入った。

「特製フルーツソーダ一本100M(メルデ)だよ〜、一緒に熱々の一個150Mのホットドックもいかがですか〜」

飲み物と昼食になりそうな食べ物、正にカテリーナが求めている二つが一つの出店で売っている。
これだ、と思ったカテリーナはざわついている人混みを掻き分け先程の宣伝が聞こえた方へと進んで行った。
お目当ての出店はすぐに見つかり彼女は店のおじさんに話しかける。

「フルーツソーダとホットドック五個ずつ下さい。出来れば袋に入れてくれれば助かるわ」
「あいよ〜。お、お嬢ちゃん異国の人だね。観光かい?」

出店の男性はカテリーナを見てそう尋ねた。
褐色肌で茶色や黒色の髪のレイサルト人とは違い、白い肌に金色の髪の彼女はこの人混みではよく目立つのだ。
カテリーナはそんな感じ、と言って微笑む。

「お嬢ちゃん美人だから1000Mにまけて上げよう! 今包むからちょっと待っていてくれな〜」
「あら、ありがとう!」

お世辞なのだろうと分かっていても美人と言われれば嬉しくなる。
カテリーナは初対面の人に美人と言われたことが無いようで、どこか上機嫌だ。
それに加え1250Mだった支払額が1000Mになり、少しとはいえ彼女は得した気分になって今日は良い日かもしれないと心の中で喜ぶ。
しかしそんな気分に浸っていると、少し遠くで女性の短い悲鳴が響いた。
何事かと振り向くと、女物の鞄を抱えながら通行人を突き飛ばしこちらへ向かってくる男性の姿がカテリーナの目に入る。

「その人泥棒です誰か捕まえて!」

どうやら男はひったくりのようで、地面に尻餅をついた女性がその男を指差し叫ぶ。
だが通行人の人々は犯人を捕まえようともせず、逆に道をあけていった。
なんと周りの人々の殆どが問題事に関わりたくないという表情をしているのだ。

「……」

ふとカテリーナの脳裏に自分を殺そうとした殺人鬼と本を盗もうとした男の姿がよぎる。
どちらもルウェリンが解決してくれて、彼女はただ助けられただけだった。
これからの旅では助けられてばかりではいけない、“自分が助ける”立場にならなければいけないのだ。

「……私だって誰かを助けられるようにならなくちゃ」

誰にも聞き取れない程の小さな声でカテリーナはそう呟く。
まずはほんの些細なことから出来るようにすればいいのだ。
幸い男は武器を持っておらず両手で鞄を持ちただひたすら走っている。
犯人が近付いてくるとカテリーナ以外の人々は次々と通路の横に避け、道の真ん中には彼女一人がぽつんと立ちふさがる状態になった。

「どけぇえええ!!」

男はカテリーナを突き飛ばそうと右手を鞄から離し彼女へと伸ばす。
しかしカテリーナは伸ばされた男の右腕を左手ではじくと、男の頭に向けて今度は自分が右手を伸ばした。
彼女は昨日の事件で手袋について気付いたことがある。
それは手袋が殴るだけではなく叩いたり押したりする力も上がること。
力加減はまだ難しいが、手の平で押す程度ならば相手に大怪我を負わせることもない。
それを利用しカテリーナは犯人の頭を右手の手の平で押しバランスを崩させる。
さらにとどめと言わんばかりに足払いをかけ、犯人を地面に叩き付けた。

191:アメ ◆kvG6:2013/08/14(水) 12:17 ID:UC.

男が地面に叩き付けられると周りから歓声が上がった。
彼は頭を打ち付け気を失ったようで目を回している。
カテリーナは男が盗んだ鞄を拾い上げ持ち主の女性に渡し、大丈夫ですかと声をかけると被害者の女性は頷いて何度もお礼を言った。
なんでもその女性の子供は病気で、鞄の中には子供の治療費が入っていたらしいのだ。

「本当に助かりました……ありがとうございます」

女性の安心した表情を見て、カテリーナは勇気を出して良かったと思う。
もし他の人と同じように何もしなかったら今頃後悔していたことだろう。
ひったくり犯は誰かが呼んだ警察官に連行され一件落着し、これからは気をつけてくださいねと女性を見送るとカテリーナは出店の男性に声をかけられた。
手には紙袋が握られており、注文した物が詰め終わったことが伺える。

「お嬢ちゃん凄いなぁ……!」

しかし彼は先程の一部始終をばっちりと見ていたようで、感動したのか目を輝かせてカテリーナを見つめていた。
彼女は向けられる尊敬の眼差しにどうしたらよいのか分からなくなる。
実際のところ自分の力ではなく手袋の力を借りているので、カテリーナは彼に私は凄くなんかないですよと言った。

「いいえ、貴方は間違いなく素晴らしい方ですよ」

すると彼女の背後からそのような声がかけられる。
カテリーナか振り向いてみると、そこには二十歳くらいの男性が立っていた。
こげ茶色の髪をヘアバンドで少し上げており、清楚的な白いシャツを着ている。
垂れ目でやわらかい表情、瞳はイエローサファイアのように綺麗に輝いていた。
ウフェや街の人々よりもほんの少しだけ肌の色が薄く見えるが、褐色肌に茶色の髪なのだからレイサルト人なのは間違いないだろう。
国民が褐色肌の国は他にもあるが、他の国はもっと色が濃く褐色肌で一番色が薄めなのがレイサルト王国なのだ。

「ひったくり犯を捕まえたあの勇気ある行動……あれはそう簡単に出来ることではありません。自分は非常に感激しました」

彼はあの男を捕まえたことよりも、カテリーナの勇気ある行動に感動したのだという。
終始微笑んでいる彼はそのことを伝えるために彼女の近くに来たようで、カテリーナに握手を求めた後、すぐに人混みの中へと姿を消していった。

「……なんか有名人になった気分ね」

自分の行動を褒められるのは悪い気分ではなく、その出来事に照れた様子でカテリーナは頬をかく。
出店の男性から品物を貰って、代金を渡し、カテリーナは上機嫌でルウェリン達のもとへと向かった。

192:アメ ◆kvG6:2013/08/21(水) 00:37 ID:NE6

今まで訂正版を載せるために使っていたサイトのサービスが8/30に終了してしまうので新しいサイトを載せておきますね〜
http://lyze.jp/ame1821/

193:アメ ◆kvG6:2013/09/13(金) 00:18 ID:1nU

上げます……

194:アメ ◆kvG6:2013/10/02(水) 11:06 ID:pJ6

結局、ピュールを手に入れる手段も思いつかないまま迎えた王子の誕生日パーティー当日。
半ば諦めかけていた一同が宿の外に出ると、入り口の前に何故か黒塗りの高級車が止まっていた。
一体何事かと彼らが驚愕するのも束の間、車から降りて来たきっちりとスーツを着込んだ人達によって一同は車内に連れ込まれる。
マルティネスが反応しなかったため悪い人達でないのは間違いないのだが、連れて行かれる意図が全く分からない。
そして分けのわからぬまま連れて行かれた先は彼らがどうやって入れてもらおうかと頭を悩ませていた王宮であったのだ。

「ど、どういうこと……?」

未だに困惑している一同の心情を代弁するかのようにそう呟くカテリーナ。
続いて城内から出て来た使用人らしき人達がメンバーを囲み、男女別々の場所へと案内される。
連れて行かれた先は更衣室のようで、男性陣の部屋にはスーツやタキシード、女性陣の部屋には煌びやかなドレスやいかにも高価そうなアクセサリーが取り揃えられていた。
それから一時間程たったころ、ルウェリン達五人はドレスアップされた状態で客室に集められたのである。
マルティネス達を含む武器は使用人達によって別の場所に移動させられたようだ。
「初めまして、旅人の皆様。私はレイサルト王国第二王女ミサーナ・プレトリウスと申します」
そして現在、彼らの目の前でにこやかに微笑んでいるのはこの国の王女だという少女ミサーナ。
一国の王女である彼女が何故一般人である彼らに微笑みかけているのか不思議なのだが、それよりもルウェリン達がどうして城にまで連れてこられたのかが最大の謎である。
彼女はルウェリン達が困惑しているのを分かっているようで、突然このようなことをして申し訳ないと謝罪した。

「実は皆様をお呼びしたのは、兄様の要望で……」
「……王子が?」

ミサーナ王女の兄というと、当てはまる人物は一人しかいない。
今日のパーティーの主役であるレイサルト王国第一王子である。
しかし一同は王子と面識はなく、城に呼ばれる覚えは微塵もない。
そう疑問に思っている一同にミサーナ王女は言葉を続ける。

「はい。兄様は是非カテリーナ様とそのお仲間である皆様をパーティーのゲストにと」
「わ、私!?」

突然の名指しに、さらに困惑するカテリーナ。
何かの間違いでは、人違いでは、と慌てふためく彼女にミサーナ王女は貴女で間違いありませんよと言いながらクスリと笑う。

「兄様は気まぐれなのです。カテリーナ様とは昨日初めてお会いして、ほんの少しだけお話ししただけだとおっしゃっていましたよ?」

昨日会った、というのを聞いてカテリーナが真っ先に頭に思い浮かべたのはあの時の出店のおじさんだったがすぐさまその考えを振り払う。
出店の彼はかなり年はいっていたし、まさか王子が出店なんてする筈がないだろう。
そもそも王子が出店なんてしていたら大騒ぎだ。
ひったくりの被害にあったのは女性だったので除外し、あとは一体誰と知り合ったのだろうかと彼女は目をつむり、首を捻る。

「あっ」

何かを思い出したのかカテリーナは目を見開いてそう声を出し、それと同時に部屋の扉が開かれた。

「おや、皆さんお揃いですね」

客室に入ってきたのは一人の男性。
煌びやかで気品溢れる白い衣装に身を包んだ美しい姿勢の彼は、微笑みながら一同のもとへと歩み寄る。
焦げ茶色の髪、垂れ目でやわらかい表情、イエローサファイアのような瞳、少し薄めの褐色肌。

「自分はスティーブ・プレトリウス、レイサルト王国第一王子です。この度は自分の誕生日パーティーのためにお越し頂き誠にありがとうございます。そして少々強引な真似をしてしまったことをお詫びします」

そう言ってお辞儀をする彼は、昨日カテリーナに握手を求めたあの男性であった。

195:アメ ◆kvG6:2013/11/03(日) 01:55 ID:pro

「あ、貴方、王子だったの……!?」

彼から丁重な挨拶を受けた後、カテリーナが開口一番に口にしたのはそんな一言だった。
彼女が驚くのも無理はない。
街中で自分に握手を求めた男性がまさか一国の王子であったなんて誰が予想できるのだろうか。
王族の人間が護衛もつけず周りの人間と同じような服装で街中を歩いているなんて誰も気付くはずがない。
思わずそう言ってしまったカテリーナだったが、相手が王子であることを思い出し慌てて口を手で塞ぐ。
王子に向かって馴れ馴れしくタメ口を使うなど、恐れ多いことだと彼女は気付いたからだ。
しかしスティーブはカテリーナの行動を見ると、別にそのままでいいですよと微笑む。

「今回皆様は、自分の友人ということで話を通してあります。どうぞパーティーをお楽しみください」

どうしてどこの誰かも分からない自分達を大切な誕生日パーティーに招待してくれたのだろう。
彼女は優しく微笑む王子を見てそう疑問に思った。
昨日は本当に握手をしただけで、二人は会話といええるようなやり取りすらしていない。
宿泊先を教えていないのにどうやって迎えに来たのかというのも謎だが、カテリーナはそのことが気にかかっていた。
もし危険な人間だったらどうするつもりだったのだろう。
そんな思いで彼女が視線を投げかけると、スティーブは彼女の言いたいことが分かったのかクスリと笑う。

「自分は貴女のような方に祝ってもらいたいのですよ。ひったくり犯を捕まえて困っている女性を助けた貴女が自分に害を加えるような方だなんてありえませんしね」

196:アメ ◆kvG6:2013/11/03(日) 01:58 ID:pro

私情により一度に更新する文章の量が少しになります。
短くて申し訳ありません。

197:アメ ◆kvG6:2013/11/13(水) 12:35 ID:jwg

カテリーナにそう伝えた彼は自信に満ちた笑みを浮かべたまま、自分にはまだ用事が有るので失礼しますと言って客室から出ていった。
それに続きミサーナ王女が扉を開き、会場へご案内しますと一同に声をかける。
一国の王女に案内させるわけにはいかないと遠慮するも、兄様の大切なお客様ですからと言って彼女は譲らない。
結局ミサーナ王女に案内してもらうことになり、五人は彼女の後ろをついていく。

「ぼく、カテリーナさんの運の良さに驚きが隠せないのだけれど……」
「偶然街で出会った方が王子様だなんてまるで童話のようですね。素敵です……!」

赤いカーペットの廊下を歩きながら小声で話すアーネストとラプの二人。

198:アメ ◆kvG6:2013/12/09(月) 23:58 ID:V.o

ラプに至っては目を輝かせながら前方を歩くカテリーナを見つめている。
二人がそんな会話をしている一方、後方を歩く男二人はこれからのことについて話していた。

「……王宮に入れてもらえたのは良かったけどよ、肝心のピュールはどうするんだ?」
「譲って貰えないか話してみようか……頼むのなら王子である彼にだね。国王に直接なんて一般人である僕達には無理だろうし」
「ならカテリーナが適任か。王子に気に入られているみたいだし……王子は今回の主役で忙しいからタイミングはパーティーの後ぐらいが丁度いいな」
「あとはパーティーの最中に話せたら一応話してみようか……」

199:アメ ◆kvG6:2013/12/11(水) 11:19 ID:W9.

本来なら入れないはずの王宮に今回足を踏み入れることが出来たのは奇跡に近い。
カテリーナの運が良かったのもあるが、一番助かったのはスティーブ王子のあの性格だろう。
普通、一度しか会ったことがなくろくに会話もしていない旅人とその仲間を大切な自分の誕生日パーティーに招くだろうか。
いや、ありえない。言うなればあの王子は少し特殊なのだ。
ただスティーブ王子がカテリーナ達を信頼しているからといって、彼の親であるデイヴィッド国王までもがそうとは限らない。
このまま調子にのって国王に会わせてくれなどと言えば怪しまれて城を追い出されるのがオチだ。
よって、カテリーナのことを気に入っているスティーブ王子に頼んでみることが最善の方法なのである。

200:アメ ◆kvG6:2014/01/01(水) 22:44 ID:zUo

あけましておめでとうございます(遅い)
亀更新ですが今年もどうぞよろしくお願いいたします。

201:アメ ◆kvG6:2014/01/02(木) 02:17 ID:zUo

「会場はこちらになります」

きらびやかな装飾が施された巨大な扉をくぐり抜けると、そこには想像を超える光景が五人を待っていた。
先程の客室の二十倍はありそうな広さの会場、そこに並べられたテーブルの上には見たことのないような美しい料理がこれでもかと言わんばかりに置かれている。
綺麗で繊細な模様の絨毯に一歩踏み出すと靴ごしであるにもかかわらずその柔らかさが足伝わり、天井を見上げてみればシャンデリアが会場を照らしていた。
会場内には高価そうな装飾品を身に付けドレスやタキシードで着飾った招待客で溢れ、四方八方から楽しそうな談笑が聞こえてくる。
ここに居る殆どの人間が様々な国の王族や政治家なのだから驚きだ。

「……あまりにも自分が場違い過ぎて今すぐ全力で逃げ出したい」
「ウフェ君気を確かに……顔色悪いけど大丈夫?」

田舎育ちであるウフェは普段とは次元が違い過ぎるその光景を遠い目で見つめており、心なしか顔が青い。
彼はこの状況に慣れるまで会場の隅に居ると言って四人のもとを離れる。
そんな様子を見て心配したのか、アーネストは三人許可をとった後駆け足で彼を追いかけていった。

202:アメ ◆kvG6:2014/01/02(木) 02:47 ID:zUo

こんなことで気分が悪くなるとは自分でも驚きだ、とウフェは思う。
彼はこのようなきらびやかな場所とは正反対の自然溢れる田舎の村で育ってきた。
この場所に居るのが息苦しいと感じてしまうのは、環境が違い過ぎて拒絶反応でも起きているからなのかもしれない。
だが物質再生の聖剣ピュールを手に入れるまではこの城から出るわけにはいかないので、早くこの環境に慣れなければとウフェは自分に言い聞かせる。

「……ウフェ君大丈夫?」

椅子に腰掛けた状態のまま彼が顔を上げると、黄色いふわふわの髪に視線がいった。
眉を下げながらエメラルドグリーンの大きな瞳で心配そうにじっとウフェを見つめるのはアーネスト。
心配してくれてありがとうな、と言って半ば無意識にその黄色い頭を彼が撫でると彼女はふわりと微笑む。
そして何か飲み物と食べ物を貰ってくると彼女は薄い黄緑色をしたフリルのドレスのスカートを揺らしながらテーブルの方へと駆け足で向かっていった。

「具合が悪いのか?」

アーネストが彼のもとを離れた直後に、ウフェは白い肌で茶髪の眼鏡を掛けた青年に声をかけられる。
青年は医務室に案内しようかと言ってくれたのだが、流石にそこまで大事ではないのでウフェは丁重に断った。
無理をしない方がいいぞ、と青年は水の入ったコップを差し出す。

「ありがとう……お前は他国の人、だよな?」
「あぁ、招待されたとある王族の護衛をしている。そっちは?」
「……スティーブ王子に招待された一般人だ」

ただの国民がこのパーティに参加していることが珍しいのか、一般人なのかと青年は目を見開いた。
色々あってな、とウフェは軽く笑いながら答える。

「……ところで、あそこで人に囲まれているのはお前の連れじゃないか? さっき一緒にいたよな?」
「……えっ」

203:アメ ◆kvG6:2014/01/05(日) 19:17 ID:zUo

眼鏡の青年が指差した方を見てみると確かにアーネストが複数の人に囲まれていた。
数分もしない内に一体何をやらかしたのかとウフェは思ったが、よく見ると彼女自身は涙目であるものの囲んでいる人々の様子は嬉々としている。
距離があり周りが騒がしいのもあって微かにしか聞こえないが、スティーブ王子は貴女のような方とも交流があったのか、素晴らしい、など称賛の声がアーネストに絶えず投げかけられていた。
流石に違和感を覚えウフェが首を傾げていると隣で青年がなぁ、と彼に声をかける。
なんだ? とウフェが返事をすると、青年は一拍の間を置いて口を開いた。

「彼女、まさかとは思うが……アーネスト・スタンフォードじゃないよな……?」

204:アメ ◆mDY:2014/03/20(木) 11:44 ID:qhA

(誰も見てないとは思いますが)上げておきます

205:アメ◆DY:2014/04/27(日) 14:26 ID:zUo

「美味し〜い!」

一口料理を口にするたび、顔をうっとりさせ歓喜の声を上げるカテリーナの様子を遠くから見て、ルウェリンは溜め息をついた。
ここは王族や政治家が集まるパーティーなのだから少しは大人しくして欲しいものだと彼は頭を押さえる。
まあまあ、とルウェリンに声をかけるラプも苦笑を浮かべていた。

「カテリーナさ〜ん!」
「あ、アーネちゃん!」

少し遠くからこちらに手を振り、アーネストが歩いてくる。
彼女の隣にはちゃんとウフェがおり、まだ若干顔が青いものの彼は一応この場所に慣れたようだ。
カテリーナは二人のもとに駆け寄り、皿にのせた料理を食べつつ話しかける。

「ウフェ、もう大丈夫なの?」
「あ〜……おう。多分……」

微妙な返事をしつつ彼は手に持っていたコップの水を飲み干す。
どうやら本当にこのような環境が苦手なようだ。
そんな彼を心配するようにアーネストは寄り添い、空になったウフェのコップを受け取って新しい水の入ったコップを彼に渡した。
心なしか先程より距離が縮まっているような気がするとカテリーナは思う。
命の恩人だからなのか、人見知りである筈のアーネストはウフェに懐いている節がある。
ルウェリンやラプとは接し方が全く違うのだ。
親友であるカテリーナとしては、心を開ける人物が増えたことが嬉しい反面、少し寂しい気持ちもある。

「あ、そういえば王子は?」
「まだ来ていないみたいだよ」

周りをキョロキョロと見回すカテリーナにルウェリンはそう声をかけた。
彼の言う通り、パーティーの主役であるスティーブ王子はまだ会場にいない。
まだ準備が整っていないのだろうかと考えながら、カテリーナは再び料理を口に運ぶ。

「……ピュール、譲ってもらえるでしょうか」

ぽつり、ラプはか細い声でそう呟いた。
眉を下げ、少し俯いた彼女の瞳には不安の色が見え隠れしている。
国王のコレクションの一つになっているピュールを譲って下さいと言ったとして、ただの一般人であるラプ達に無償で譲ってくれるという可能性は限りなく低いだろう。
しかも自分達にはピュールの代わりになるような価値のある物を国王に献上出来るような力は無い。
彼女が不安になるのは無理もないのだ。

「今から不安になっていても仕方がないわラプちゃん。まずは当たって砕けろよ!」
「いや、砕けたらダメなんじゃ……」
「例えよ、例え。 とにかく、ラプちゃんのためにも譲って貰えるまで私は諦めないわよ!」
「ふふ……頼もしいです」

だが、諦めるわけにはいかない。
そんな前向きなカテリーナの言葉に、ラプは安心したかのように微笑んだ。

206:碧:2014/05/09(金) 15:31 ID:Ifw


 小説、拝見させていただきました。
 情景描写、キャラクター、ストーリーなどどれも素晴らしく、すごいなあと思いました。尊敬します。
 アメ様のような小説を書けるよう、頑張りたいです……!!
 お忙しいとは思いますが、これからも更新頑張ってください! 応援しています。

207:にっきー:2014/12/02(火) 12:10 ID:q8U

アメ様の小説を以前から読んでいたんですけど

本当に本当に素晴らしいですね!
文才がすごすぎると言うか!

ストーリも面白いですし、思いつけるのが凄いです!
これからも頑張ってください


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