special秘密警察特殊部隊

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1:大和:2012/04/16(月) 18:35 ID:i3s

ここは「秘密警察特殊部隊」だす!
皆様のおかげで本編は完結することができました。
本編に関してはこちらをどうぞ〜
http://ha10.net/novel/1318412500.html



さて、今回も更新は遅いはぐだぐだだわ……

みなさんに本編を見なくてもわかってもらえるよう
文章にはいろいろと解説をいれていきたいとは思っていますのでご安心を♪


感想、アドバイスなどもらえるとうれしいです!
な、覗く程度でもいいので…

また、そこらへんに関しては交流掲示板にて
「special秘密警察カフェ」で雑談、感想、アドバイスお願いします。

多少ならここでも話してよいのでしょうが…
基本雑談禁止です。


ではでは…
こんなオワタな僕ですがお付き合いしてくれると喜びまふ〜

2:大和:2012/04/16(月) 19:05 ID:i3s

あと前スレでのお返事は「special秘密警察カフェ」にてお返事させていただきました!

3:ここな:2012/04/16(月) 19:57 ID:TPQ

オワてないよ〜っ!
期待wktk & 支援保守っ(・ω<)b
頑張てね(・ω・)

4:大和:2012/04/16(月) 20:20 ID:i3s

番外編〜「二人の蜜時間」〜

「んん……………さぁ〜くらぁぁ〜…………」

そう言いながら昴は桜へと抱きつく。

「……ちょ、ちょ……昴………」
「ん?どったのぉ?ふふ、かぁいい〜……♪」

といういつもとは色んな意味で頭がおかしくなっている昴。
前までの昴は……こんなに甘い声もだすことなど一度としてなかった。
そして改めて知る。

嗚呼、俺はホントに桜が好きなんだ。

そう実感していた。
ベッドの上で二人ゴロゴロともったいないような、それでいて
とても幸せが感じるような………。
確かに、せっかくの休日だと言うのにベッドの上でゴロゴロはもったいないであろう。
だが二人にとってコレが唯一の………
幸せだったのだろう。

「桜…………」

言いながら昴はあるモノを取りだした。





さぁ、みんな。
一度だけこの出来事が起こった数時間前に戻ろうか。

5:大和:2012/04/16(月) 20:42 ID:i3s

あの事件からも月日はたち、ようやく仕事も落ち着いてきた今日この頃。
なにかと大変だった日々も普段の様子を取り戻してきた。

桜はもうすでに満開を向かえ、やっと「春」らしさを感じてきた。
どこもかしこも不安と期待で一杯の季節。

昴と戦った恩は無事元気になり今ではよく秘密警察に遊びにくる。
だが遊びにきては桜にちょっかいを出し、昴も更に桜から目を離せなくなっていた……

はずなのに。




またも恋の事件はおきる。


桜の話によると、



「昴が女の子と歩いていて………」

6:大和:2012/04/17(火) 17:50 ID:i3s

えっとですね、
まず改行をしましょう。
なにもかもを続けてかかれてはとても読みにくくなります。

次、一人称と三人称が混ざっています。
このケースは多くの人があることなので少しずつ改善していけばいいですよ。

最後。
伝えたいことをどう伝えるか。
これが重要です。全てをいきなりぶつけられても読者には意味がわかりません。
ですから自分だけその思いをわかっていても相手がわからなければ
意味がありません。
なので文章(ナレータである三人称)か、人物(一人称)
での表し方、表現の仕方をもうすこしわかりやすく、そして簡単にするといいです。

以上のことぐらいですのでいきなりではなく
すこしずつ改善していくといいですよ。
では長々&失礼なことばかりで申し訳ありませんでした……
お役にたてれば光栄です〜
>>白鳥夕さん

7:大和:2012/04/17(火) 20:27 ID:i3s

今日は全体休日という、みんなが休みの日。
そんな休みの日ということもあり遠足気分でわくわくする
桜は子供のように前日の夜眠れなくなってしまった。

「…………しょーがない……購買にでもいこ〜…………」

そう言ってつまらなくなった自分の部屋から出ると桜は購買へと向かう。
購買は便利なことに24時間営業。
この秘密警察という仕事柄、朝だろうと夜だろうと関係なくなってしまう………
自分にとっての朝というのは実は夜だったり……
と、それぞれの任務や活動があるためどうにもこうにも
キッカリ時間を守って帰ってくることはまず難しいだろう。


そわそわした落ち着かない感じで購買へと行くと
そこからは明かりが灯っていて数人の話声や笑い声が聞こえてくる。
桜は主に宴会など楽しい席が好きなので混ぜてもらおうと声をかけた。

「すみませ〜ん、私もまぜーーーーーーーー」

そう小声で言った刹那、




いままでの楽しい思いはどこへやら。
違う意味で心臓は高鳴り、さらに落ち着かなくなってくる。

昴が4人の、しかも見たことのない女の子達と飲んでいたのだ。
未成年ということで飲んではいけないはずだが、
この秘密警察の幹部は許されるのだ
スパイなどという仕事のとき、飲まざるをえないから…………
しかし飲んでいい量は決まっている。

ーーーーーそれでも。
それでも昴はほろ酔いなのか、他の女の子達と楽しそうに話をしていた。
特に少女漫画のような、「好きな人の話をしていたから楽しかった」
などという可愛い言い訳はもはやできない。

何故なら桜になど1mmも関係のない話をしていたのだから。

「え〜?俺は〜……みぃちゃんもかわいいとおも〜よ〜?」
「なぁんで〜?そしたらぁ〜……私と付き合ってもよくな〜い?」
「それは〜……浮気になっちゃうからだめぇ〜」
「隠れてつきあっちゃお?これから気持ちいいことしたいぃ〜!!」

…………。


聞いてはいけなかったのかもしれない。
そう思い、桜は購買を後にした。

8:大和:2012/04/17(火) 20:53 ID:i3s

こんなことがあっても桜は周りに元気に振る舞ったし、
仕事もなんなくこなした。
何故か空回りするどころか仕事の調子はよく、とても充実した日々が続く。

それでも桜は昴に黙っていた。
あの時昴が他の女の子達と飲んでいること………
そして今日の今までもまだ一緒に飲み続けていること。
大人数で飲むときもあれば、少人数のときも……
日によってさまざまだ。
しかしどんな人数であろうと変わらなかったことがある。
一つ、昴以外の男はいないということ。それ以外は全て女の子。
二つ、菜々子という女の子は必ずいて、必ず昴の隣に座ること…

9:大和:2012/04/18(水) 06:13 ID:i3s

いつも見ないようにしよう、見ないようにしようとするが
心のざわめきは一向に落ち着こうとせず、
どうしても見に行ってしまう。

いつ気づかれるかわからない。
もしかしたらもう気づかれてるのかもしれない。

だが最近はもっと目が離せなくなった………
あの菜々子という女の子と昴は二人っきりで飲むことが多くなり
そして恋人特有の甘い雰囲気を漂わせていた。

顔もかなりの美人………いや、どちらかというと可愛い方の美人だし
胸だって見たところ、E〜Gカップぐらいであろう…………
それに女性海軍幹部官の総長でもあった。
頭もよければ愛想もいい。
完璧なのに気どらない…………という、

まさに理想の女の子。

ただ。
性格は何故か桜に似ていた。
桜よりも少し落ち着きがあって少しばかり大人な感じだが、
昴にとってはちょうどいい性格だったのだろう。

そして今日もまた。

ただ二人っきり………………
だが目にしたものの代償は大きい。



「ん……んふ………………チュ……は……ふ……っぅ……」
「……はん………クチュ……ぁ……ふ……」

…………。
見事なまでの色っぽいキス。
舌をつかって更にいやらしく。

嗚呼。
なにがあったのだろう。

落ち着きを取り戻せずに状況を把握しきれない………

そんなところにある人物が…………

「お?桜〜……………?」
「め…………恩……………!?」

すると恩はふるふると震えた桜を見て、
とうかしたの、と首を傾げる。
そうすると桜は座りこみ昴達の方向へ指指す。

…………………………。
恩は一瞬、唖然とした。
そして怒りがこみ上げる……………………

オマエはその程度の愛で俺と戦ったんだ……と。

恩は桜のほうを向き、抱き上げる。





その後にはただ色めかしい男女の姿

「昴ゥッ…………!!!」
「はん……………ふ……………ん……」
「ね………シよ?私昴と……一つがいい……」

そしてその瞳は桜を捉えた。

10:大和:2012/04/18(水) 07:11 ID:i3s

「ダメだよ。俺も菜々子も………きちんと彼氏彼女がいるんだら…ね?」
「でもッ………………いいじゃない…?一回ぐらい……」

少しでも桜と性格が似てるなんて思った俺がバカだった。
菜々子はなに一つとっても完璧だがそれ同様、なに一つとっても
桜と似てるとこなどない。

昴はそう思いながらも我が儘を言う菜々子の相手をしている……

「だから、ダメだって………流石にしつこいよ?」
「どうして〜……………??」

ほとんど出せる肌は全て出し、色気を出してのせようという作戦らしいが、
昴には効かない。
もうほんとに興味など散ほどないのだから。

とくにこの菜々子がどう言おうとなにもしない。
最近はやけに誘ってくるがそれも全部丁重にお断りした。


昴の問題はここじゃない。



桜にこの現場を見られたこと。

さてーーーーーーー
どうしたものか……………

11:大和:2012/04/18(水) 20:24 ID:i3s

相変わらず菜々子は絡めてくる。
そのことに少々ウンザリしながらも昴は頭を巡らさせていた。

どうしたらこの誤解がとけるだろう。

と、いうか………………
桜はどこからどこまでを見ていたのか…。

それが気になって仕方ない。

「はぁ………」

そうため息をつくと同時に昴は席をたつ。

12:大和:2012/04/18(水) 20:38 ID:i3s

一方、桜と恩は桜の部屋へと来ていた。

「よいしょ……と、大丈夫?」
「はい、……すみません…………ここまで…」
「あぁ、いいのいいの。それより…さっきの…」

そう言われて桜は少し焦りを見せるがまた前のように
性格もすべて「いつもの」桜にもどる。

「まぁ……昴もいろいろあるんでしょうし…………」
「………それで…いいの?いろいろあるからって………」
「…いいんです」

桜はそう強く言い切った。

13:大和:2012/04/19(木) 06:04 ID:ux2

「いいわけないだろ?」
「………私だってそうは思いました…けど……」

その言葉だけで恩にとっては十分だった。
桜を引き寄せては強く抱きしめる 

そうして騎士は言うのだった………

本当の真実はなにか。

「そうだね、桜。もういいよ………後は俺に任せて?」
「……はい……!!!」

泣き崩れてしまう桜を胸にうめながら恩はただひたすらに………


憎しみだけを覚えていた。

何故オマエは愛しいと言った奴を悲しませることしかしない?
どうして………………こんなに周りくどいことを………。

恩はそう思いながら大事に桜を優しく抱きしめた…………

桜の目は涙で赤く腫れてしまい泣き疲れで寝てしまった。



「大丈夫だよ、俺が守るからね………」

14:大和:2012/04/19(木) 06:18 ID:ux2

その幸せは、俺が掴もうとしても無理なものだった。

そしてその幸せを昴はもっている。

正直言えば羨ましい。
嘘を言えばめでたい。

だが昴はその幸せを今離そうとしているんだ。

きっとそれは、あまりにも多くの幸せに恵まれすぎたから………

だからもっともっとと幸せを望んでしまう。


俺は好きか嫌いかのただそれだけで十分。
なのに…………昴は愛されることを願っている。

俺はーーーーーーーーーー

ピーンポーン

恩がいると、
桜の部屋のインターフォンがなった。

ここに今来る人は一人しかいない。

そう思い恩は玄関へと行く………

「はい………」
「さく…………なんで恩が………?」
「聞きたい?」
「あぁ。それよりそこどけろよ」
「嫌だね。ここじゃなくて外で話そう?」

昴はなにかを察し、ムキになるが
相変わらず恩はニコニコと笑っているばかり…………



ただ単に怒りをこめて。

15:大和:2012/04/19(木) 07:03 ID:ux2

「俺は桜にようがあってきた。
彼女の部屋に他の男がいておかしいと思うのなんて彼氏として普通だろ?」

この言葉を聞いた時、
こいつはふざけているのかと思った。
自分がどういうことをして
どうやって自分のいう彼女を傷つけたのかわかっているのか、と……

彼氏?なんの面してそんな言葉が言える?
オマエなぞに。
そんなことを言える資格はあるのか?


ないに決まっているだろう。

「そうか。その彼氏は少々浮気をしていたみたいだけど?」
「オマエ……ッ……アレ見てたのか!?」

昴はさっきとは打って変わって焦った顔になる。
そんな昴に対して恩は更に追い討ちをかけた。

「なんでそんな焦んの?キス現場ぐらい彼女もどうってことなかったみたいだけど……」
「……!?!?桜も………!?……オマエ……」
「おっと………悪いけど桜が見てるとこに俺が来たんだからな?」

そう言うと昴は信じられんとばかりに驚いた。
なんで?
どうして?

昴は段々と震えを隠せずにいた……………

それはこのことがバレたから……などという可愛いものではなく…

桜に捨てられるかもしれないという……恐怖感から。

それを見て恩はそのことを察した。
だが同時に思いだす。

あの時桜も同じ思いをしていた……………。


二人で怖がってばかりでなにができる?

やはり昴は臆病でとても桜を幸せにすることなど……




「んなことより…………………桜はどこだよ!!」



獅子は豹変した。

16:大和:2012/04/19(木) 21:03 ID:ux2

「……こん中。だけどな昴………通さないよ?」
「通せ」

どちらも一歩もひかない…
有無を言わさぬ気迫で言い切る。

オスの獅子はなにかを守るために戦う。

燃えあがるのだ…………

「ていうかさァ……あんなことしといてよく彼女のトコなんて行けるんだ?」
「テメェに関係ないだろ?ひっこんでろ、部外者」

この二人はただの友達なんかじゃない。
ただの上っ面だけの友達。
そんな汚れただけの友達で終わるふたりじゃないから………


だからこそぶつけあうことを覚え学ぶ。


「桜を傷つけたクセに平気な面して来るな!!!」
「ハッ、今の俺を見て平気だと思うか?あ”ぁ!?」
「思うよ。どれほどの苦しみが桜にあっかもしらないで……」

そこまで言われると昴はなにも言えなくなった。




俺は桜の気持ちを考えていただろうかーーーー?

17:大和:2012/04/20(金) 06:06 ID:ux2

とある数日前のこと…………………

俺は最近仕事が絶好調でずっと暇してた…
だけど桜は反対になんだか上手くいってないらしく、
すぐにこなせる仕事も今回はなかなか手がかかった。

俺達は付き合ってるともいえど仕事をどうしても優先しなくちゃならない。
だから桜は俺にかまってくれないしなんか冷たくなってきた。
そのくせ恩とは楽しそうに話しているし……………

正直それを見て苛立ってきた俺はここの者でもない、
海軍監査、中佐、少佐、幹部官、総長等をよんで飲むことにした。
その時はまだとりあえず女と飲めればいいとかそういう理由だった気がする……

だが意外によく見るとこの海軍は綺麗で可愛い女の子ばかり……
そこで俺は最近の桜と恩のことを話し、桜に嫉妬させたい、
というこの計画に協力をしてもらった。

何度か協力してもらって、そろそろいいだろうと思った最後の飲み会………
その時に一人の女の子に言われる……

「菜々子さん、昴さんのこと本気にしてますから気をつけてください……」

最初は信じられなかったが、二人っきりで飲もうと誘われたことも何度かあるし、
毎度色気のある服装でくる。

それに海軍総長ともなればそう簡単に突き放すわけにもいかない……
そんなことをしたらこれからの組織がどうなるかわからない。

だからこそ余計に手出しできない相手だった。




だから俺は相手のことばかり考えて桜のことは…………


考えてなどいなかったであろう。

18:大和:2012/04/20(金) 07:09 ID:ux2

確かに、恩が言う通り、俺は彼氏など……

言える立場じゃない。

彼女のことをなにも考えていない彼氏なんて。


そんなのは愛とすら呼べない。


「…………俺は………」



そう口を開きかけた獅子の前に豹変する恩の姿。

19:大和:2012/04/20(金) 20:16 ID:ux2

「ふざけるなァ!!!!」

ダンッッーーーーーーー!!!!!

思い切り壁を叩く恩。
その瞳は怒りに満ちて燃えていた。

「……いい加減に通せよ恩…」
「桜をなんだと思ってんだよ!!オマエの玩具じゃねェんだよ!!!!!」

そうだ。
昴ただ一人の自己満足に付き合うような玩具ではない。
桜だってたった一人の女の子。
感情だってあるし泣くこともある……
だから大切にしなくちゃいけない。


たったひとつのタカラモノ。

20:大和:2012/04/20(金) 21:09 ID:ux2

「………女とあんなコトしてるとこ見た時の桜の思いがオマエにわかるか!?」
「でも俺は………………俺は桜に嫉妬してほしかった……////……」

こんな真剣な場だというのに昴は顔を赤らめ
顔を手で隠す。

「俺だって…………………んなことでこんなに桜を悲しませるなんて…
思わなかった。でも…////………それでも…////」




なんていう子供なのだろうか、この子は。

21:大和:2012/04/20(金) 21:58 ID:ux2

周りから見てみればとても大人に見える彼。

まず見た目からしても顔の輪郭は整い、普段の私服姿だって
子供に見えないぐらいのオシャレ。
そして中身は滲みでるほどにある気品。
あの笑顔ですら綺麗と感じる。

だからといって決して女の綺麗というのではなく、
これこそが男の綺麗なのだろう。

誰もが魅力された。

なんて綺麗なモノだろうと。


それと同時に欲した。

皆が自分のモノにしたいと思った。

だがどんな手をしかけても彼は落ちない………

なにをもっても興味を示さない。

ただそんな彼がずっと続けていたのがこの秘密警察の仕事。
自分にとって人生を大きく変えた人の意志を継ぐためだ、と
誰かが聞いた気がする。

しかし。

この素迷桜という女の子と出会って。
驚いた。

正直に生きるあの笑顔。
すべてに本気をかける姿勢。

その全部が昴にとって新鮮で仕方なかった。

なぜこんなにも美しいのだろう。


昴は心からそう思った。



「俺は桜が好きだ」

22:芽実:2012/04/20(金) 22:30 ID:rls

元瑠璃です♪
芽実(めぐみ)とよみます!!
そういえば物語にもめぐみさん…いましたよね?(間違っていたらすみません!)
新しい作品はいつ各予定ですか??
楽しみにしています!

23:大和:2012/04/21(土) 09:27 ID:ux2

お〜!!!!いますよ、恩〜♪
そちらもがんばってるみたいでなによりです〜!!

新しいのは今のところ妹と相談してストーリーを作ってるところです!
このもろもろ番外編と同時進行か……またはこちらが終わってからだと思いますね。
同時進行の場合は更新が共に遅くなります。

新しいストーリーの内容としては、
恋愛一本か、恋愛×何か。このどちらかですね〜
でもたぶん恋愛一本だと短編になる可能性が……

24:大和:2012/04/21(土) 09:40 ID:ux2

「好きなんだよ!!どうしても………………」
「……………ったく…オマエはいつもそうやって大事なものを
取り損ねる。いいか、つぎはないからね?」
「ありがとう、恩……………」

そう言って昴は桜の部屋へと入っていった。

どうしてこんなに俺は昴に対して甘いのだろう。
昔の弟のような昴はもういないのに。
もうそんな年頃でもなければそんな感じもしないのに。
なのに……………………

どうしても自分の兄のような雰囲気だけが消えない。
どうしても許してしまう。

「はいはい、仕方ないなぁ〜……」

って。
そうやって俺はいつも昴を甘やかす。

どれだけ酷いことをされても
どれだけ酷いことを言われても。

俺は昴を突き放すことなんてできない。

だっていつものその笑顔で。

「ありがとう、恩」

そう言う昴はあまりにも幸せそうに笑っているから………


恩は桜の部屋を後にした。


二人の幸せを願って。

25:大和:2012/04/22(日) 07:20 ID:ux2

「桜ッッ!!!!」

桜が熟睡してるであろう部屋に飛び込んだ昴は勢いよくドアを開ける。
そこで桜は瞳を腫れさせながらすうすうと寝ていた。

昴は静かにそっ…と近づく………
まるであの童話シーンのように昴は愛おしそうに桜をみつめて。
頬を優しく撫でても桜はなんの反応も見せない。
よっぽど疲れてしまったのだろう…………

昴はこの可愛い寝顔をずっと見ていたい半面、
このどうしようもない気持ちを伝えたくてたまらなくなった。

その頬に添えた手に少し力を入れ昴の顔は近づいてくる。

一直線に見つめる昴の瞳は一体なにを捕らえるのか……………


ただ一人の。
なんの変哲もない女の子を捕らえる。

もう逃がさまいと。

誓いながら…………

そんなことは絶対に無理だと……

どこかで理解しながら。

もがき、苦しみ、喜び、

幸せを望む。

「桜……………………」

二度目の彼女の名前を呼んだその声は
酷く心地よく、とても落ち着いた声だった。

そう呼ぶと昴は優しく桜に触れるだけのキスをする。

どうか…………

離れないでくれ。


「…………………昴……………」

パチ、と桜が目を開ける。
それでももう昴は動揺したりなんかしない。

「桜…………ごめん。いっぱい話さなきゃならないことある。」
「う……………ん………」
「でもそのまえに…。俺は桜が好きだよ……」

後に誤解は解けたのか………。
だが、この今に至ることを見てその答えは言わずとも分かるであろう?

「ね〜ほんとかわいいよ、桜は」
「…………だんだんウザくなってきますよ〜…」
「………ひっど〜い…………」

とまぁ。ベタ惚れなわけで。




完。

26:大和:2012/04/22(日) 07:28 ID:ux2

わぁ、25で終わった〜〜!
ほんとに短編でございますよ〜〜
えっと、一応昴と桜の………イチャじゃありませんでしたね。
ほんとすみません……………今度時間があったらチャレンジしまふ。

さて…………あとはホラーとスミレと生徒×先生でしたっけ…………………??
ホラーと先生×生徒……あまりいける気がしない………。
スミレの話はもう出来上がっているので大丈夫ですが……………
残り2つは思いっきり駄文になる!!!
でも時間があったら頑張りたいと思います〜♪

では短編ここまでのお付き合い、またトークありがとうございました!!

27:ここな:2012/04/22(日) 10:20 ID:w4A

乙っっ!!
読んでましたよ〜♪
楽しませて頂いたのでホラーは無理して書かなくてもいいでふよ〜(´∀`)
これからも応援してまふね('-')bシャキーン

28:大和:2012/04/22(日) 19:05 ID:ux2

番外編no.2〜「本当の想い」〜

「ぁ、スミレ〜これよろしく」
「はぁ?なんで私がアンタのやらなくちゃいけないの?」
「だってオマエ生徒会だろ?」

スミレは今会いたくもない奴と会い、そして
話たくもないやつと話ていた。

ここは特殊科学校。
秘密警察に所属する者が通う学校だ。
平均年齢15歳の幹部がいるこの秘密警察では義務教育である
教育をそれぞれしなくてはならない。
それにあたって普通科の学校では秘密警察に入ってから
雑用すらままならないと判断し、
表では普通科学校。
そして裏では秘密警察専用の特殊科学校となっている。
だから朝普通科の生徒達が登校してくるのと反対で
特殊科は夜登校となる。
特殊科は主に秘密警察での基礎を身につけるのだが……………
そこでもまたズバ抜けた成績を残す生徒は飛び級で
秘密警察の隊員になれる。
しかし……………………………

そこには信じられないぐないの者が存在し、
その者は入学試験後からいきなり特殊科ではなく
秘密警察の幹部入りとなる。
そのありえない者の生徒を皆はこう言う……

SS、と。
SSとは「Superhuman skill」つまりは「神技」の略。

毎年数人のSSが必ずでる。
そしてその中からまたも絞られ勝ち抜いていったのが今の秘密警察幹部となる。
いくら勉学がよくとも所詮は勉学。
採用されるのは実力である。
SSにはならなくともその下のランク、Sになる者も隊員入りを果たせる。

そしてスミレもまたそれと同じ分類であった………………

「生徒会もなにも光也が生徒会長でしょ…」
「ふぅん〜……………白夜昴って奴の言う事はよく聞くのに?」
「……………わかった…………やるよ。……」

生徒会室の一番偉い椅子に座るのはスミレの腐れ縁である光也。
実力、勉学共に学年一位。
ランクはSS。
顔はイケメン、トークは楽しい。
先生方には白夜昴以来の栄光だと言われた。
そんな完璧主義の光也がこよなく愛しているのがこのスミレ………
しかしどうやってもスミレは光也に落ちなかった。
容姿も顔もすべて完璧、そして気品があるという点では
昴となんら変わりはない。
だがスミレが重視したいのはそこではなく、
昴と光也の決定的に違う性格だ。
Sっ気タイプな昴と、俺様タイプな光也。
そしてもちろんスミレは断然Sっ気タイプなのだ。

29:大和:2012/04/22(日) 20:27 ID:ux2

「ごーめん。嘘だよ…可愛い女の子にそんなことさせるわけないじゃん?」

そして決定的に違うのはこれだけではなかった。
もう一つ、光也(コウヤ)には悪いクセがある……………

「あ、ねぇねぇ君〜♪君可愛いね、何組??」
「はは。俺はいつも君だけの王子様だよ☆」

女遊びが激しい。
いや、こういっては悪く聞こえるが実は光也から女の子に
いわゆるナンパをするのではなく、逆ナンされるということだ。
もちろん今の会話を見ているとナンパをしているようにもみえるが…………
ナンパは少ししかしないしそれほど女子にアタックもしていかない。

だがそこが昴と違う所の一つでもある。
だからこそスミレはいくら光也が甘い言葉をかけようとも、
ただのたわごとだとしか思えないのだ。
こうやって後ろから抱きしめられ、耳元で囁かれても………………
なにも感じない。

ただコイツは私が惚れないからめずらしい、とか
惚れさせてやる、とかそのぐらいの気持ちなんだろう。

それしか感じることができなかった。

光也がスミレへの思いは本気だと知らずに………………。

それでもスミレはどうしても光也をほおっておくことはできない。
なにかと生徒会で疲れている光也の世話をしたりもしていた。

「最近忙しいらしいからいいよ。私がやるし〜」
「いいって、、俺の仕事だから………」
「やります!私がやるかーーーーーーーー」
「いいって言ってんだろ!!!!」

言いかけた言葉は怒鳴りで消える。
ただ心配だっただけなのに。
疲れてるだろうから手伝おうと思っただけなのに。

「そ…な………………そんな………大きい声ださなくても……い…じゃんかあぁ……」

カタカタとスミレは怒鳴りに震えだす。

「ごめ………!!!俺さ……女の子に仕事させるのなんてカッコ悪いと思ってさ……
わりぃ……………ほんと、ごめんな?」

30:大和:2012/04/22(日) 20:52 ID:ux2

「でも俺の心配してくれるオマエのこと、けっこう気に入ってるからな?」
「……………なにその上から目線…………………」
「ん?なに?俺様にたてつく気?会長様だぜ?」

こうしてまたいつもどうりの会話が続く。
笑うことも泣くことも、すべてを同じに過ごしてきた。

「そーいやオマエ白夜昴にフラレたんだっけ?」
「……まぁね〜………」
「いい加減俺にしろっての………」

光也にとってはスミレが昴を好きであろうとなんであろうとかまわなかった。
自分さえがスミレを好きであれば……………

だがそれは大きな勘違い。

最近はそれに気づき、スミレからの愛が欲しくてたまらない………………
もっと意識されたい。
男として。

そう感じるようになった。

急に可愛くなって、急に大人になって。

置いていかれるのではないか。


そう思ったこともある。


けれどどうしても自分のモノにしたい。



「泣き顔見たかったな〜………オマエの泣き顔すげェ可愛いしさ♪」


こんなことも普通に言ってのけてしまう。

31:大和:2012/04/23(月) 07:11 ID:ux2

「なんか…………私泣かなかった……」
「え?フラれたのに?」
「うん……なんでだろーね……」

始めから勝敗をわかっていたわけでない。
スミレの中にも勝つだろうというような思いはあったし、
それほど本気で挑んでいたはずだ。
それでもフラれたとわかったとき……………
泣かなかった。
それよりも、昴が幸せになることを嬉しく思っていた。
だから………………だからこそスミレは涙を見せなかったし、
きちんと本気で笑うこともできる。

「オマエつらくねぇの?」
「ううん。なんかそれよりも……すごい嬉しい……」
「………ヘンだなオマエは………」

はぁ、と溜め息をつく光也に対してスミレは
桜と昴の幸せを願ってただニコニコと微笑んだ。


そんな話からもしばらく立って時は5月ーーーーーーーー

「あったかくなったもんだよなぁ……」

生徒会室に一人ぽつんといるのは光也。
カーテンを開け、窓からは眩しいぐらいの月光が部屋を明るくしていた。
外には段々と登校してくる生徒の姿が見える。
今は今朝と変わって特殊科学校。
さまざまな特殊能力をもった生徒達が集まってくる…………………

そして夜の女狩りがまた行われるのであった。
夜の女狩りとはすなわち朝の普通科で言う女子によるイジメ。
その対象は週によって変わりかなりひどいイジメを受けている。

その一番上の人となる女がーーーーーーーーーー


只今、生徒会長様が二番目に気に入ってる


「あっ、きたきた……………なみちゃん…♪」

伊豆奈美恵(イズ ナミエ)である。

32:大和:2012/04/23(月) 18:59 ID:ux2

ぅお……………不良品さん良いご評価&アトバイスすごいです………!!!!!

みなさまもがんばってくださいね〜

33:大和:2012/04/23(月) 20:16 ID:ux2

コンコン。

一室のドアを叩く音が部屋中に響いた。
ここは先程と同じく場所は変わらず生徒会室。
そこにはまた同じように座っているのは白羽光也(シラハ コウヤ)
ただただ優しい笑みをこぼしながら愛する人を見ていた休み時間…………
普通科でいう昼休み。

そんなところにある一人の少女がやってきた。

「……?誰?」
「奈美恵。」
「ふ………いいよ、入って」

光也は名前を確認すると安心したように微笑み、入会を許す。
生徒会室は生徒会や生徒会長の許しがないかぎり入ることは許されない。
そんな真っ暗闇な生徒会に「いつもの」常連客が訪れた………………

「久しぶり。元気してた…かな?」
「あぁ。…………相変わらずだなぁ伊豆も……」
「なるべくだったら奈美恵って呼んでよ」
「ごめん、ごめん」

こんなたあいもない話をする二人。
端から見れば、暗闇の中に少しの光、密室のなかに男女が二人………
など、条件がそろいすぎではないか?
と思う者もいるだろうがそんなこととはまったく違う。
これでも奈美恵は生徒会に入っているし、なかなか優秀な生徒なのだ。
黒髪で長く、その髪は無駄がない。

だからこそ、この夜の女に誰もが惹かれた。

「今日はなんか仕事ある?」
「今日は………ないかな〜……………?」
「じゃ、久しぶりに…イチャイチャする?」
「そうだね………………」

ここでもまたあの悪いクセがでるのだった。

34:大和:2012/04/23(月) 21:30 ID:ux2

「って、俺達どーいう関係よ、コレ」
「ははは。どーいうのなんでしょうね?」

だがここで一つ規制をかける。
もし今そんなことをしてスミレに見られたら
今まで光也がやってきたことなど水の泡だろう。
光也がスミレを好きという思いはかわらない……

だが、あるこんなような日に誰かに言われた気がする。


あれは確か……………………………



一年前ぐらいだったか。

35:大和:2012/04/23(月) 21:51 ID:ux2

「きゃぁぁ〜!!!!白夜先輩〜!!!!!」
「きゃぁぁ〜!!!!白羽先輩〜!!!!!」

これはとある体育の授業のこと。
3年生と2年生の特別クラス、すなわちSS、またはS
このランクをもらった生徒達で合同体育をやっていたときのことーーーーー

いつも人気がない体育館にはありえないほどの人だかり。
男子が多いこの特殊科に唯一の女子ほとんどが集まるこの時間。
一体体育館でなにをやっているのか………

簡単に言ってしまえばただの体育の授業でヒップホップをやっているだけだ。
それだけで女子がこんなにも集まるだろうか?
周りからは黄色い歓声を浴びているこの二人。
中等部3年2組白夜昴。
同じく中等部2年1組白羽光也。
この二人に問題があるのだ。

ただひたすらに先生から教えてもらったステップにそりながら
音楽に身を委ねる。
頭の中でワン、ツー、スリーフォーファイブ……
シックス……セブン……………エイト!!!

そう唱えながら腕や足の動きを段々と難しくしていく。

今回の授業は二人組になって合わせて踊る。
歌で言えばデュエットのようなもの。
それをしているだけなのだが、
額に流れる汗、息つく唇、お互いに見つめ合う瞳。
全てが美しすぎて女生徒の目を奪っていった。

ただでさえ一人でいても美しいし、気品のある昴と光也なのに
その二人合わせて照りつける太陽がある中、
体育館でキュッキュと音を合わせ踊っているその姿は
ホレざるをえないといっても過言ではない。

なんでもこなす二人だからこそ二人で踊っても一秒のズレもでない。
むしろ調和してる。

「ヤるねぇ、光也〜」
「はッ……昴先輩こそ」

互いの中での最高となる人物がお互いだったからこそ、
この調和はできあがった。

36:大和:2012/04/24(火) 06:03 ID:ux2

だが相変わらず光也は他の女生徒に媚び売ってる………。
やはりそこが昴と違うところだ。
昴はただ笑顔で女生徒達を避けていくが光也は話こんでばかりの状態。

それを見て昴がある時ふと、訪ねてみたーーーーーー

「なぁ…………光也ってさ好きな人いんの?」
「いきなりですね〜。いますよ、本気の子」
「ふぅん。まぁ今のオマエじゃ到底無理だろうけどなぁ〜………」

昴のその言葉に光也は驚いた。
少なからず自分の容姿には自信があったし、
みんなには優しく接してきたつもりでいたから。

すると昴はその心を読み取ったように言った。

「オマエはさみんなに媚び売ってて本当に好きなのかどうかわからねぇよ。
本気で好きならきちんとしろ、いいな?」




その言葉であの時俺は気がついた。

37:大和:2012/04/24(火) 20:31 ID:ux2

そして今に至る。
今だって光也がスミレを好きという気持ちは変わらない。
だから光也はグッと自分自身をこらえる。

「…………なんて………ほら、生徒会の仕事〜」

だが先のこの怪しい雰囲気を変えたのは奈美恵のほうだった。
いつもなにかと一緒にいようとする奈美恵だが今日はちがう。

昴は真っ直ぐに桜を思った。

光也はどうだろう?
本当に真っ直ぐにスミレを思っただろうか?
上辺だけでの感情でないのは確実。
だがその思いの伝え方に問題がある………

何を何度言われようとスミレを好きという気持ちを変える気はない。

そう誓ってはいる。

なら、その思いをどう伝えるーーー?
どう愛情表現をする??


奈美恵はただ単に光也と近づいているわけではない。
いつも一緒にいたら普通、生徒もなにかと気がつくものだろう。
あの生徒会長と仲良くしているなど学校中の噂となる…………
しかし奈美恵は生徒会長といてもおかしくない存在の副会長なのだ。
だからどう見ても近くにいておかしいのはスミレの方である。

38:大和:2012/04/25(水) 20:28 ID:ux2

だが光也はスミレを離そうとはしない。
スミレを生徒会へと繋ぎとめる鍵なのだ。

「そろそろ時間だから行くね」
「いってら〜…………」

そう言って奈美恵は生徒会室を出ていく。
室内には月光と静けさしか残っていない…………

シーンと…………夜の鳥の声が聞こえる。

只今の時刻はPM.23:35

町の明かりは殆ど消え、
人々は落ち着きながら眠る。

「ふぁ〜…………。暇だな……」

そんな独り言でさえ闇に消え入る。

闇の時間はこれから。


これから人々の知らない物語。

39:大和:2012/04/26(木) 19:56 ID:ux2

「只今から、第104回汝秘密警察実力テストを行います!!!」

そうとある先生が大声で言った。
秘密警察実力テスト。
それは毎年一度行われる特殊科のみの、大行事である。
一般の普通科でいう「クラス分け」のようなものだ。
そのランクによってクラス分けさせられる…………

一番すごいクラスがSS、次にAS、それからS。
このAS、またはSに入ると秘密警察隊員や雑務など
秘密警察で本格的な始動がはじめられる。
しかしSSはそのクラスに入ったからと言って、
AS.Sのように隊員入りはできず、まだ学校で実技授業をすることとなる
だがSSは秘密警察の幹部、また副隊長が休みや病気など……
なんらかの理由で欠席せざるをえない場合
いきなりそれに任命され任務を果たすこととなる。
だがSSの多くは副隊長を務めることが多い。

それ以下となった生徒は毎年そんなに出るこはないが…………
その生徒達はまた一から普通の授業と実技授業の2つという
地獄の生活がはじまる………………

しかし、この秘密警察という組織は表側の警察と比べて
確実に規模が大きい。
本部はここ、京都であった。
そして次の第二本部は東京。
何故本部が京都にあるかというと東京には表側の本部があり、
秘密警察はあくまで人に知られない身でないといけないのだ。
まぁそれだけ規模が大きいからこそ人員も多く必要となってくる。

「ではまずAクラスから!!!!」

それぞれのクラスには秘密警察が用意した対戦相手がいて
その対戦相手を倒す、倒さないによってランクは決まる。

ただそんな秘密警察の特殊学校に例年、とんでもない生徒が二人いた。

その生徒の一人はとてつもない身体能力で
入学試験後から秘密警察幹部入り。
もう一人の生徒は…………
秘密警察アメリカ本部から派遣された帰国子女だった。

40:大和:2012/04/26(木) 20:19 ID:ux2

そしてその帰国子女は只今3年生。
3年生はこれは普通科と同じ中学3年生である……
この特殊科は年齢があまり関係なく学校が行われ、
そのランクによりクラスが分けられるため年齢は問わない。
しかし年齢は問わずとも流石に小等部、中等部、高等部と別れており
その中等部の中のSS、AS、Sクラスと分けられる。
だから実際はそんなに大差に離れた人はクラスにいないということ……
だがやはりSSクスともなると一年生は愚か、
二年生もいるかいないかのようなもので、SSクラスは
ほぼ3年生のクラスとなってしまう。
3年生でもSSランクを取るのまとても難しい。

だがあの秘密警察アメリカ本部からおくられてきた帰国子女は違った。

1年生の時からすでにSSランクの3年生がほぼいるSSクラスにいて、
それからというものそのクラス以外行ったことのない…………


つまりはSSランク以外はとったことのないという天才少年だった。

41:大和:2012/04/27(金) 21:14 ID:ux2

だがその一年前にもう一人………………
この少年はもう人間ではないであろう身体能力。
それこそが白夜昴。

だからいつもお互いがベストでいてとてもいい敵になった。
そんな生活をしてきた少年にもはや常人のやることなど
すべて序の口どころか遊びですらない。

だからこそこのような大行事も少年にとってはなんの一部でもなかった。
少年にとってここにいる意味など一つしかないのだ………………

スミレを手に入れること以外なにでもない。

それほどに事をこなし、完璧に生きてきた。

42:大和:2012/04/28(土) 06:42 ID:ux2

だからこそそれなりに周りからの期待は受けていた。

もっと、もっと上を目指せと……………

しかし少年にとってもうこれ以上の上はないと思ったし、
これ以上前へ進みたいとも思わなかった。
すべてができすぎてもう欲がなくなってしまうほどに…………

だが人間欲という恐ろしいものがなくなると突然にきれいになる。
とてもとても美しい生き物になるのだ。

だから少年は誰かと同じように愛を望む…………

永遠に絶えることのない愛を。

そんなこと馬鹿な話だとわかっていながらも彼女との未来を想像してしまう……

どんなことをしてるだろう…?

と。



しかし…………


一体天才はなにをもたらすか。

43:大和:2012/04/29(日) 18:37 ID:ux2

そしてその青年の愛は変わることがなかった。
決して揺らがることのない愛。

それでも彼女は振り向こうとしなかった。

「では3年SSクラス、白羽光也、始め!!」

そういわれた瞬間に光也は神経を一点へと集中させる…………

いつか言われたあの言葉を思いだして……

本当に小さな頃はスミレのほうが上達が早く、とても優秀だった。
それに比べて光也は下手というわけではなかったが、
しかしうまくも下手でもないただ平凡なぐらいの強さ。
その時はなにもかもがスミレに負けていると光也は思った……………

負けているのがくやしくて……仕方なくて…………
スミレをこえたくて。
だが光也はしだいにスミレをこえたい、という目標から
なにかがズレてきた。


それがスミレを守りたいと思うことになる。

44:大和:2012/04/30(月) 07:00 ID:ux2

その時に言われたのだ、他でもない誰かに。

「強くなりたい?
だったらね、神経を集中させることだよ。
それを一点に集中させることでより多くの力を発揮できる。
だけど問題はここ。どれだけの速さで神経を集中させるかってね…………」

それだけを言いのこしたかと思うとその誰かは立ち去ってしまった。
その言葉通りに光也がやると一度でできた。

そう、、、この少年は元からの天才


だから何事も普通にこなす。

大変だと思ったことなんてない…………

愛しい人を守るためなら……手段は選ばない。

そこで血迷ってしまったらしまいだ…………………



だが……………



「すぐ近くにオマエを思っている奴はいるんだから、それも傷つけるなよ」



意味がわからなかった。


すぐ近くに……………………………

45:大和:2012/05/03(木) 18:25 ID:ux2

すぐ近くに俺を思っているヤツはいる。

そんなのはもうわかりきっているものだ。
案外好きになられるとわかってしまうもので…………

意外と俺はカンが当たるほう………
だからなおさらなのだろうか…?

そう昔のことを思い出しながら体中の神経を一点に集め、
相手のみぞを打つ。
そうするとあっけなく相手は倒れて
相変わらずつまらないな…
と光也は思った。

だがなぜか今日は秘密警察達の審査の様子がおかしい。

いつものシジイ共なら普通に「ハイ、SS」

そう言われてただ普通に席に戻るだけ

だが今日はなにが違うっていうのは、人が違う。

若い男性が数人と女性二人。

名札には
向日葵紅葉、凍江藜、藍染寿、響如黒。
女性は仇緋我愁、恋琴波。

どれも見たことのない人達。



誰だろう?

だが俺はあのとき確かに感じた。



この知らない人達と俺はなにかで繋がっている。

46:大和:2012/05/04(金) 19:16 ID:ux2

「どっしよねぇぇ〜…………?」
「構わんだろう、、、面倒くさい………」
「私はいいとおもうわぁ〜♪」


「じゃ、そういうことで…………………」

秘密警察達がなにやらごちゃごちゃと話していると、
一人の「藍染寿」と書かれた男が立ち上がり光也にとって
人生を最も変えることを伝える。


「只今を以て白羽光也を新入幹部入りとします。じゃ、席に戻ってね〜」


光也の心臓は一度大きく脈打ってから鼓動は早くなる。
なぜこんなにも鼓動がはやくなるのかわからない。
わからないけれど……………

嬉しいのか、

なんなのか。
それすらもわからないほどに驚いた。

「いい?僕らはめったに幹部を選ばないよ。
本当に凄い奴しか選ばない。
だから覚悟しておくといいよ、幹部というのがどれほどのものなのか………ね?」

向日葵紅葉。
ニッコリと可愛い微笑みを魅せる彼の奥底には計りしれないなにかがあった。
だが向日葵紅葉がそれだけ言うと彼等はすぐにこの場から立ち去る。

「まぁ、オマエの身体能力なら仕事に支障は出ない」

凍江藜。
感情を表情に表さないような人。

そして気づく。



後ろには六角形の紋章。







あれは最高部幹部である。

47:大和:2012/05/06(日) 17:40 ID:ux2

光也は息を飲んだ。

目の前は見えぬほどの光に溢れる。

太陽が昨日降った雨の水たまりをキラキラと輝かせていた。

夏もそろそろ近づこうという梅雨入りな5月後半。

すでにこの時から光也の心には光が差していた……………

「すごい………あれが………



あれが特殊警察…………………………!!!!!」


もう感嘆しか出てはこない。
三年生のいきなりの幹部入り。
これは飛び級制度の一部である。
飛び級というのは一年生からいきなり三年生などへ行くのと同じで、
普通は秘密警察の
雑用→隊員訓練→隊員。
このようなことがあってやっと
あの大勢の中にいる一人の隊員としてやっていける。
大勢の中の一人というのは恐ろしいぐらいに価値がない。
だがその一人が大きな勢力に関わるという、
なんとも複雑な形式になっている。

隊員から幹部になれるということはまずない。
幹部になるということは始めから身体能力が優れているということだ。

そして今回初めて出たのが



「新入幹部員」


ということだ。

48:大和:2012/05/08(火) 21:46 ID:ux2

この「新入幹部員」はいままで出たことのないランクであり、
他幹部の人達も少々戸惑いを隠せなかった。
なにしろそのなことを思いつきもしなかったし、
経験上なにをすればいいのかなどと分からないことが沢山あった。

しかしそんなことがあってでも決まったのはやはり光也の存在が大きく関わった。
今まで秘密警察にすら入りもしなかった光也。
だがそれは光也の実力不足ということではなく
そのころからもうすでに「新入幹部員」という企画を考えていた。
だからこそ昴は光也を秘密警察には入れなく、
今のいままで特殊科学校でレベルを上げた。

光也は秘密警察に入らなくともスミレは副隊長などを務めているのは、
これもまた同じでただ育てる場所が違うだけだ。
光也にはこれからの秘密警察。
つまりは昴を継ぐぐらいの責任がかかっている。
だからこそこの天才を大切に育てあげねばならない。
この組織を10年ぶりにまとめた少年、



「白夜昴」



この少年の後を追わせるために。




この少年が来た時から…………

いや、存在したときから。

すべては180度変わったと言っても言いすぎではないだろう。




なにせ今の秘密警察からは考えられないほどのーーーーーーーーーーーー

49:大和:2012/05/11(金) 07:19 ID:ux2

考えられないほどのーーーーー





クズ警察だったのだから。


クズ警察というのはそのままであり、なにもできない名だけの警察ということだ。
なにかをするまでもない。
だがそのクズ警察こそが起こした事件がこの世界の天才達を変えた。


あの事件の起きた日、起きた時間。

全てが奇跡に起こったことだった。



だから言っていいであろう………………


あの時日本にいたとき、あの事件を目の当たりにしたのは奇跡だったと。


言っていいだろう。

50:大和:2012/05/14(月) 20:48 ID:ux2

その時からすべての歯車は「きちんと」動きだした。
まるでこれから世界が始まるように。

今までの「汚れた世界」などではなく。

しっかりと動きだしたのだ。


彼等の決意と共に。

ただの殺人事件にすぎなかったのだ。
誰かが誰かを殺した。
それだけであって。
なのに。
悪かった。

あの人を殺したのがワルカッタ。


それが恩と昴の才能を目覚めさせた。

もう眠ることなき獅子の才能を。

恩の新しき母親を目の前で殺した。
恩と昴の前で殺した。
簡単だった、殺すのは。

いろいろな感情が混ざりすぎて………………


なにもワカラナクなって。


二度とあの瞳に戻ることはないであろう。



そう誰かが彼等の後ろから思った。


もの凄い勢いで走ってきたあの人。



あの人がたからこそ………………………

51:大和:2012/05/19(土) 16:59 ID:ux2

彼等は今立派な警察となることができたのだろう。

警察だからと言ってなにもかもが正しいわけじゃない。
人には人の事情がある。
秘密警察とはかくして、表側の警察官とは違い
本当の真実を貫いている。

志はそれでも、やっていることは汚い仕事だった。
「赤」、すなわち「血」を見るのは日常茶飯事。
どれだけグロテスクだろうがおかまいなし。
そういう表情をひょうひょうとできる。
無表情というのとではちがう。

52:大和:2012/05/19(土) 17:34 ID:ux2

そんな彼等の跡を継いでほしいからこそこの「新入幹部員」は完成した。
これからの彼等の未来。
人々の未来を守るために人並み外れた能力を持つ者が選ばれ、
そして人を守る。

だまって口だけの警察などもういらない。


これからが平和を取り戻す時なのだ


どんな手段を持ってでも。

53:大和:2012/05/20(日) 18:07 ID:ux2

あの試験があってから一週間後、
未だに光也は特殊科学校に通い続けていた。
普通ならば3、4日で引っ越し等を済ませて
一週間というともう基本的なことを教わっている時期だが、
光也は今年三年生ということもあり、卒業をしてから本格的に幹部に入るとのことだった。
目指すは世界一の警察。
それでも今はトップ警察のなかに入ってもいるが
アメリカ、イギリス、ドイツ共に敵対しているのである。
だからこそ絶対安全を確保できる警察にしたい。

それに光也はこの学校の生徒会会長ということが
今回の光也の新入幹部員入会を遅れさせた一つの種である。
この白羽光也という有能な人材が消えた今、
学校を守る一つの守護神がいなくなってしまう。
特殊科学校は秘密警察の卵の学校ということもあり、
生徒が学校を守るという基本的なことになっている。
警察は守ることが仕事であるからにして、そのような警備となった。
こんな治安が悪い世の中で警察を無駄に使うわけにはいかない。
それだって警察を作る元となるところなのだ。
警察を使うわけになど絶対にいかないだろう。
その一番優秀な警察がいきなり欠けるということは
学校の危険がかなり増すということだ。
だからこそ、それなりの準備をしてから光也を送る。
毎年毎年そのようにしているという理由があって光也の移転は遅れた。



そしてまた現在、生徒会室の会長机に膝をつくのはこの俺様しかいないであろう?

「んじゃ、これから第13回、生徒会会議を始める!」

そこにはいつもと違った凛とした姿の光也。




これから熱い夏の日が始まる。

そんな日差しが窓から差し込んだいつもの昼頃

54:大和:2012/05/23(水) 20:49 ID:ux2

セミの声はまだ遠く、
その気温はもう近く。
朝の日差しを受けながらめずらしく早起きをした今日この頃。
窓を開けると懐かしさに包まれた夏の匂いが漂う。
なんとなくわかるこの感じ。
夏がくる。
自然と笑みをこぼしてしまうのは不意になのか、
それともなんらかの感情からなのか。

時々になって意外としおらしいことを考えるようになり、
少し大人になったいつもの自分。
だが彼をいつも誰かが必要としている
絶えることなどなく、いつもいつも。

そろそろ夏服に身を包み、気分も気温も上昇してしまうような夏。
若者達の話題はいつも様々な色をもったものばかり。
気持ちがうわずったことからくだらないことで楽しくなり、
些細なことで幸せを感じるようになった中学三年生の夏。
彼は年下の女の子に恋をした。


同じ学年なのに年は違う。


なんとも複雑な出来になっている心の形。





これは、そんな彼の恋物語。



ただ一つの恋物語。






だが、まだセミはなかない。
いくらかの数えるぐらいの運命だとわかりながらも、
何故にその命を全うするのか。


どこかで寂しさを感じながらも、ただ「今」を幸せに懸命に、生きる。


なにを以てのことだったろうか。

55:大和:2012/05/25(金) 15:24 ID:ux2

入学式は一緒じゃない。
二年間も一緒じゃない。
一年間が一緒だった。
最初はなにからはじまったのだろうか。
そう、昼休みの元気に遊ぶ君の姿からだろうか。
名前は知らない。
顔はどこかで見たことのある顔。
たしか後輩だったけど学年は一緒。
今のところ特に興味ナシ。
それよりも俺は好きな子がいるから。

いくら特殊科の生徒といえど、違うのは授業と少し変わった行事が増えるぐらいで
基本とした学校生活は普通科と変わることはない。
なにせ一度しかない人生の絶頂期なのだから。
それは楽しんでもらわねばならないだろう。



あの時ナイタ蝉のように。


だがいつからだろうか。

好きだったあの子に告白をして付き合ってから1ヶ月。
興味が失せたのは。
それよりも君に興味が惹かれるようになったのは。
だからと言って彼女が嫌いだったわけではない。
もちろん好きだった。

なのに。
興味だけは君にいく。
本当は後輩の君に。
三年生の俺が一年生の君に。

性格は似ていたとおもう。
一年生の君。
二度とないあの夏をいつになっても忘れることはないだろう。
今日の天気予報は「曇りのち雨」
明日の天気予報は「快晴となるでしょう」

とにかくどれでもいいニュースの中から意外と
天気予報のことは放送せずに色々なことを話す中で
やっとのことで見つけた天気予報。
「明日は快晴となるでしょう」
そう言ったアナウンサーはニコニコと営業スマイル。
なぜだかそのことにくだらなさを感じTVを消す。
そして次の朝、晴れてることを君は願っているかな?
そんなことをふと思った。

「いってきま〜す」

56:大和:2012/05/25(金) 15:40 ID:ux2

朝は毎朝君に会う。
君と話すのが楽しくて。
恋愛感情はない。
友好感情はある。
そんな対象の君。

最初は。

ジリジリと照りつける太陽になったり、
ジメジメと蒸し暑い曇り空になったり。

そのたび俺達を弄ぶかのように気分は変わる。

われながら心は現金で。

57:大和:2012/05/25(金) 17:54 ID:ux2

中学生なんてまだ子供なのに。
年下から見てしまえば、
中学一年生と三年生の差はものすごく大きく見える。
一年生にとって三年生とは大人に見える。
世間にとっては中学生という枠など子供なのに。
やることなすこと大人に見えて、がんばって真似てみるものだ。
普通の子なら追いつけそうで追いつけない。
そこで終わるはずなのに、君は違った。

もうすでに君は大人で俺達のところまできていた。


君はもうすでに大人だった。



どこか子供でどこか大人な…………。


そんな君で。


君の面影。




だからこそ大勢いる後輩の中で君だけをあまり後輩と意識することはなかった。
隣にいることが当たり前だと。



そう思ってた。

58:大和:2012/05/26(土) 18:31 ID:ux2

だから春の終わりを告げるかのように、天気予報の
今週の予報は全て晴れマーク。
テレビの向こうのニュースキャスターはなんとも夏らしい
半袖の格好。
「熱中症にお気をつけください」
もう夏は俺達の目の前まできている。

時刻は6:37。

空は冬のように暗く闇に包まれるどころか、
犬の散歩をしているおばあさんがいたり、
ジョギングをしている若者もいる。

ふんわりと夕食の臭いがしてきて思わずお腹は鳴ってしまう。

君のことを思ってしまう。

なにもやることがなくただぼーっとしている彼の頭に思い浮かんでくるのは
ただ一人の女の子。

早く明日になってほしいと感じながらも、この休みを堪能したいという
願望も残っている。

「ぁ〜………お腹すいたぁあ………」
「光也も手伝いなさいよ〜」
「はいはい……」

面倒臭いと思って上げた腰は割と軽く、
スラッと伸びた軽い足はしなやかに歩きだす。



今君はなにをしているのだろう。



気がつけば考えていたと思う。



君を。




「ン………ィー……ミ……ン…ミーン…ミン……」




今、確かに蝉のナキゴエが聞こえた気がした。



プロローグ • 終

59:大和:2012/05/26(土) 21:54 ID:ux2

二次創作掲示板にて
「小説にアドバイスや審査をしたいと思います」
というスレをしているのでよろしかったらみなさんそこへどうぞ〜〜

60:大和:2012/05/27(日) 06:20 ID:ux2

第一章〜日向に映る君の影〜

普通に起きて、
普通に朝食を食べて
普通に学校へ行く。

全てこれは普通ということになっている。
人間ははじめ異常な生活を不安、かつ楽しくなったりしながら
異常を日常に変える。
だがそれが日常になってしまうと人の興味は失せ、
また違う異常という面白いものに興味がいく。

それがもう中学3年生ともなってしまえば
ほとんどのものが日常になってしまい普段の「日常生活」が
つらくなってしまう。
そして各々に考えてしまうのだ、「なにか異常なことが起こってほしい」と。


ただ恋愛をしたて付き合ったりなど「今」を幸せに生きている者を
若者は「リア充」と呼ぶようだ。

なんてこないだ朝テレビの特集でやっていた気がする。
われがならつまらない話だ。
ただ単に「リアル充実」という言葉が省略された。
たった一行で説明できることを何故にこんなに騒がしいのだろう。
なにが楽しいのか。

黙ってテレビを見ながらまたも考えなくてもいいような
くだらないことを光也は考えていた。
もう頭の造りから違うのだろうか?
客観的意見が違う。
一般にとっての異常が彼にとっての普通。
というよりは、彼はほとんどのものに客観的視点で見てしまう。

「ごちそーさま……んじゃ、行ってくんね」

そう言って出て行った光也の茶碗には少々ご飯が残され

「ちゃんと綺麗に食べていきなさいよ〜」

と光也を呼ぶ母の声を無視し、光也は快く晴れは空へと足を踏み入れる。




昨日降った雨は嘘のように晴れ、椿の葉からは朝露か、



否、




昨日の雨か。




否、誰かの涙なのか。



滴が落ちた。

61:大和:2012/05/27(日) 14:08 ID:ux2

「あっちィ………………」

そう小声で呟いたのは3時限目。
今日の最高気温は23度とテレビでやっていたのを
思いだしながら授業を受ける。
長年使い続けた下敷きはペラペラと暑さに負けたように曲がる。
一つの暑さを紛らわす道具が消え、黒板を見ると気持ち悪くなるぐらいの文字。
こうしているときは景色でもみたいものだが生憎に座る席は窓が遠く、
こうしてジッと授業を終わるのを待つことでしか選択肢は残されなくなった。

もうすでにわかりきっていることを
授業でこうも長々と話されると眠気が襲う。
カンカンと照りつける太陽の下では何年生かが体育をしている。
色々な声が聞こえる中で君を思ってしまう。
不幸ながらクラスは違い、君のことを考える時間が多くなった。

なにも変わらない景色をただずっと眺めてみたり、
少し自信のある絵を書いてみたり。
勿論ノートなど書く気にもなれず、書いては消しの繰り返し。

黒板を見てるフリをしながらずっと時計を見る。



彼女と同じように。


ただあの聞き慣れた音を待つ。


みんなが密かに楽しみにしている。



速く終わらないか………と。


キーンコーンカーンコーン……



学校全体に鐘は鳴り響く。

62:大和:2012/05/27(日) 21:31 ID:ux2

「ぉ……スミレ、はよ〜」
「あれっ……光也先輩………?」
「馬鹿、先輩いらねェよ」

ほんとに最初の頃はこんな感じだった。
スミレもスミレで周りに気をつかい、敬語で話していたし
先輩と呼ぶことも多かった。

いくら2ヶ月といえどもうそれが習慣になってしまえば
変えるのは難しいらしい。
小学校からずっと中学3年生へと飛ぶために勉強をして
やっとのことで上がれたらしい。

そもそも、あの時の彼等の接点は部活であった。
秘密警察の部活は普通科の部活となんら変わりはないが、
部活がものすごく細かに別れている。
それぞれの部活は専門になっていて部活に対しても
かなり力を入れて、全日本、世界などと幅広く活動している。
まず音楽、スポーツ、勉強、雑学。
この四つに別れた後、また更に別れる。
スミレが入ったのは音楽の分野で
吹奏楽、バンド、合唱、オーケストラ、パレード。
五つの専門となる部活。
中でも人気があるのはオーケストラ部でそこの一番星が

ソロヴァイオリンの白羽光也。

スミレもそこに魅了されて入った。

あまりにも綺麗に奏でるヴァイオリンを見て
決意を決めるものだ。

そこから。




彼らの本格的な夏ははじまった……………







_____________________________________________
二次創作掲示板にて
「小説にアドバイスや審査をしたいと思います」
アドバイス等が欲しい方はそこへどうぞ。
(しばらく宣伝する予te…………)

63:大和:2012/05/28(月) 21:56 ID:ux2

話によると光也はヴァイオリンを中学に入ってから始めやったらしい。
ただ彼には才能があったからこそここまで魅力されるような
ヴァイオリンを奏でることができる。

だがオーケストラ部の人気はそれだけではない。
去年卒業生の白夜昴こそが正式入部していた部活であり、
次期生徒会会長、巴万里(トモエ バンリ)。
そして一年生のスーパールーキー。
様々なスペシャリストが集まったこのオーケストラ部は
なんといっても美麗揃いの男子が多く、
女子ファンが耐えないものだ。

その出身は昴だけでなくフランスの帰国子女、寿もそうなのだ。
寿は元々、フランス育ちだったのだかフランスの秘密警察に入るつもりが
日本人ということもあり日本の秘密警察へと入ることになった。
その入る少し前の半年間はこの特殊科学校で生活し、
その際に入ったのがオーケストラ部。
実際、寿の年齢は昴の一つ年下で光也と同じなのだが
フランスの技術が進んでいたため、
フランスでは一つ年下の学年でも日本でまだそのころは
技術が発展していないために昴達と同じ年となった。

このようにして美麗揃いだけでなく、
様々な留学生などが来ていていつもオーケストラ部は
人で溢れ返っているのだった。


可憐なる伝統……………いや、




ジンクスがあるからこそでもあるだろうか?

64:大和:2012/05/30(水) 21:09 ID:ux2

ジンクス。



それはあの日にできる出来事。


可愛らしい女の子達。


みんなが目指すべき場所は、

オーケストラ部。


そこでただある一人の男のために。



いままでの気持ちをぶつける。



願いは叶わなくとも。


あきらめずに。



どうして恋愛というのはむくわれないものなのだろう。

なんて残酷なのだろう。

だがその先にあるものが大きな幸せだから。

だからこそ…………………

大きな不安をかかえながら立ち向かう。








いつもみんなに頼られる彼女は。

いつも思っていた




頼りたい、と。

65:大和:2012/06/01(金) 20:40 ID:ux2

男は女に頼られるもの。

女は男を頼るもの。

それは、遥か昔平和な江戸であった武士達が「日常」
としてやってきたことだ。
本当の真意を、何かを貫いた者達がやってきたこと。
それはもう男の義務としてやることであり
仕方なくやることではない。

なんなくとやりこなせる。

それこそがモテル男であろう?

なにかを貫くほどの真意をもってる。

これは特殊警察ならではのこと…
普通科ではありえない
楽しいことばかりではないのが秘密警察。
肉体を鍛えられるというよりは
精神を中心とした鍛えが大きい。
肉体などあとからでもどうでもなるのだ。

どれほどの落ち着きをたもっていられるか。

そこがつかみどころとなっている。
どこまでの落ち着いた判断ができるか。

どこまで平然で、かつ客観的に物事を捉えられるか。

秘密警察の幹部などもうあれは人間ではないだろう。

それほどに彼等の精神は狂っている。

66:大和:2012/06/02(土) 21:50 ID:ux2

少し蒸し暑くなってきた今日この頃。

そう思って窓を開けると
虫達の声が微かに聞こえる。

なつかしの匂いを漂わせながら、
星は輝く。

いつか学校の教室で習ったあの星はなんだったろうか。
月は新月を迎えたのか、それとも雲に隠れたのか。

いや、雲に隠れたということはないだろう…
なにせからっとなにもない星屑のセカイなのだから。

君も今ーーーーーー

同じ空を見ていると願って。

もう今は戻ってこない。
だから愛しい君と生きているこの時を全力で生きたい。
いつ死ぬかわからないほどの脆い命ならば、尚更。

「………馬鹿だよなぁ………」

なにに対しての言葉なのかも分からないのに発する言葉。
これを漏らすというのだろう。

「…好きなのか………それとも、………?」

わけのわからないことばかりが口から発せられる

今日、君もこの綺麗な空を見てるかな。
今、同じ気持ちかな。

「光也先輩………………」

俺達の未来はどうなっているんだろう。


ねぇ。



ねぇ?



ねぇ、そうだろう。


「もう夏かぁ…………」

67:大和:2012/06/03(日) 05:53 ID:ux2

なんの鳥かも分からない鳥が朝を告げるようになく。

その鳴き声をかき消すシャワーの音。

どこかのモデル雑誌にでてきてもおかしくない青年。

プルルルル……プルルル……

一つの電子音がシャワールームに鳴り響く。
青年はそれを取ると電子機器の向こうの誰かと話はじめた。

「はい…?……ぁあ………わかったよ」

その後ももごもごと喋っている青年。
シャワールームを出た所には制服らしきものが
正しく畳んである。
胸のネームプレートには…………………

白羽光也。

また今日もはじまる

憂鬱な青年の朝が

68:大和:2012/06/03(日) 21:00 ID:ux2

「今日から衣替え期間を終了とし、
本校指定とする夏服になることを規則とする!」

そう朝の太陽に負けないぐらいの声を張ったのは、
生徒会副会長、巴万里(トモエ バンリ)である。
普通科の生徒達と同じく、特殊科の生徒達も
夏の制服に身を包む。
女子も男子も制服の色は皆白に染まり、見渡すばかりが眩しい。

「会長、あまりにも規則違反者が多すぎます………
本当に夏服期間終了の呼びかけ…しました?」
「はいぃ?知らんね俺は。
たぶんしたんじゃないかなぁ…………」
「俺も知らね」

生徒会生徒で一番マトモとなる人物のはずの
会長は自分の仕事放棄というなんとも自己中な仕事ぶりだったのだ。
昇降口を通る生徒達はさっきから生徒会役員に
捕まってばかりであった。
やはり警察という名の学校……
つまりは養成所ということもあり規則という決まりには
厳しいどころかそれはもう「徹底」されるのだ。
もし注意されても治さない生徒等は謹慎処分、
または退学処分という厳しい処分となっている
それだけ規則というものは徹底されるはずなのだが……………

「会長!!!!貴方、会長のクセして堂々と規則を破るって……
一体どういうことなんですか………」
「ぇ?だってさぁお年頃の男の子だもん。
オシャレもしたくなるじゃん?」



「それだってダメですよ、先輩。
会長なんだから規則くらいは守らないと」


え…………………?

振り返った。

69:大和:2012/06/05(火) 20:51 ID:ux2

「………て、誰………??」

振り返るとそこには見たこともない女の子が一人。
しかしそこには聖ルヴェン学園の紋章が。
ニコニコの綺麗な顔をしながら微笑むその様子は
天使と言っても過言ではないほどの美少女だった。
だがその顔はいつかのどこかで見たような顔。

「はは、まぁわかんなくても仕方ないですよね〜」

そう言いながら下駄箱に向かう彼女はスミレとは違い
とても元気な性格の子。
制服は学校指定のものではなく、異校のもの………

かくして、ルヴェン学園とは超富豪学校である。
そして超富豪学校であるからにして、警備は万全。
その警備を任されているのがこの秘密警察養成所。
なにかと縁は深い学校同士とはいえ、
遂行すべき仕事以外ではお互いテリトリーには入らないという………
複雑な形となっている。

しかし。


何故あの子がいるのか。



「………どうしたんですか……先輩…」

そこにはスミレが朝の日光をうっとおしそうにしながら立っていた。

70:大和:2012/06/06(水) 18:17 ID:ux2

「いや…………ルヴェン学園の子が来てさ……」
「ルヴェン学園…………?」

夏服に身を包んだスミレを見ながら、
チラ、…と見える首筋に内心理性の焦りを感じながらも
しっかりとその姿を目に焼き付ける光也。
微妙にそんなことをしていることが気色悪いとも思う。
しかしこのあまりにも綺麗な髪を一つに結って、
なびかせているポニーテールのスミレも
またさっきの子とは違った意味で綺麗に見えた。
凛としたその姿形が。
眩しいのか、片手で目を覆うスミレの視線の先には
先程のルヴェン学園の女の子がそちらもこっちを向いているようだった。
すでに校舎には入っていて、シューズを片手にぶら下げながら持っている。
鞄は重そうに肩から下がっており、今にも落ちそう。
それでも彼女はスミレを見続けた。

「………スミレ、どうした?」

この二人の事情に気づかぬ一人の問題児は
何事も「ないように」話かける。
あくまでも…………「なにもないように」
甘くみると彼は鬼になるであろう。
ましてや、女にナメられるなど…………
言語道断。
ルヴェン学園の技術も凄い。
しかし秘密警察養成所はそれどころではない。
白夜昴がそれでは終わらせなかった。
ルヴェン学園の恐ろしい所は隠れスパイ学校ということだ。
すでに学校自体がスパイとなっていて、
こちらが秘密警察養成所ならば、
あちらはスパイ養成所となるだろう。

つまり………

表面は超富豪学校×超万全警備の、いい関係を築いてはいるものの……
裏ではスパイ×秘密警察というかなりの敵対した関係にある。

71:大和:2012/06/06(水) 19:00 ID:ux2

廊下を過ぎ行く者達は
誰だろう…?と不思議に思いながらも
さっさと廊下を歩く者も、
とにかくの平常心な者も。
なにもかもを気にしない彼女は周りの視線か痛いことにも
無関心でスミレを見続けていた。
だがしばらくお互いで見続け合うといきなり彼女は
ニッコリと会釈をして持っていたシューズをそのまま床に
バタと置き静かに足をそっと入れると
真っ直ぐに続く廊下を歩いて行った。
一方のスミレはというと、彼女がいなくなった後も
ずっとその静けさを取り戻した廊下を見つめていた。

「………ルヴェン学園かぁ…………」
「……転校生なんですか?」
「よくは分からないけど………そうっぽいね」
「先輩…あの子って……………」

そう言いかけた時、不意に強風が吹いた。
……………いや………つむじかぜか。
飆。
一番肝心なとこが聞こえなかった。
けれど、これでいいのかもしれない。
そうスミレは思い言うのを止める。

「どうした?スミレ、さっきなにか言いかけたけど………」
「……………いいえ。
なんでもありませんよ、じゃぁ」

そうただ一言残してスミレもまた校舎へと歩いていく。
一つの悩みを落として。

照りつける太陽に思わず目を瞑ってしまいそうになる
けれど、何故か瞑ってはいけないような気がして……………

72:大和:2012/06/07(木) 20:03 ID:ux2

考えた。
それほど重要なことではないけれど。
考えた。
通り過ぎてもいいのかもしれないけど。
黒板を見ていても楽しいことなど一つもない。
夏服姿の君の背中が視界に入る。

「……白羽光也!!!」
「…?はいッ!?」

ボーッとしていたそばからいきなり名前を呼ばれて、
光也はまぬけな声を出す。
普通の教室ならばここで笑いが出るなどとありがちな光景で済むだろう。
しかしここは違う。
全てが全て輪廻の周の凍りつうた目。
天気はいくら晴れようとも彼の心が晴れることなどはいつかとしてないだろう。
愛すべきものも守るべきものも………
失った彼に何を求めればいい?
闇の旋律だけが鳴り響く。

「この式の証明をしろ」
「はい…………これの場合、Xの代入法を利用してーーーーーー」
「よろしい……座れ」

なにかを恐れることなど。
なにもない。
なにも変わりはしない永のものを求めて。

「さて…………とりあえず紹介はしておくが……
こちらは転校生として来た、久方茜(ヒサカタ アカネ)さん。」

「先程紹介がありました、久方茜です。
何かとご迷惑をおかけしますが宜しく御願いします」

パチパチと上辺だけの拍手を述べる顔無しの者達。
顔無しというのは感情が無いと言う意味であってそれ以外なにでもない。
眩しい光を放つ今朝の彼女とは違い、
今の彼女はまるで影だった。
顔はなにも悟らない。
ピクリと動きもしない。
肌は真っ白く、とても弱い生き物に見えた。
先程まで勉強をしていた彼の机にはシャープペンシルが一つ。
ノートの上にはケシカスが少々。
けれど書き込まれていることはなにもない。
全て白紙で埋め尽くされたページには珍しく書かれた三文字。
久方茜。

しかしそれは上書きによってぐちゃぐちゃと文字は見えなくなる。

スミレのノートのはじっこに、

「要注意」

ほら。
また誰かが誰かを噂して。

73:大和:2012/06/07(木) 20:34 ID:ux2

久方茜。

席が隣になったのは、偶然か。
否、計算か。

「よろしくね」
「……よろしく…」

さっきとは打って変わった茜の綺麗な微笑みに
光也は返事をするも驚きを隠せないでいた。
あの無表情とも言えぬような顔。
肌は白いが瞳は漆黒に染まり、風でなびいた髪の間から見える
茜は一体誰なのかと疑う程であったのに。
しかしこうして近くで見ると髪も瞳も茶色を持っており、
ショートの髪がよく似合う顔つきである。
スミレの大人びた感じとは違い、
どちらかというとまだ顔には幼さが残っていて、
可愛いらしい感じの顔をしている。
身長は割と高い方で胸もそこそこ男を誘うには十分のボリューム。
指定の制服ではないが、スカートの丈が見えるか見えないかという
微妙なところでその下のニーソもなかなか
食いつきたくなるようにそそる。
スラッと伸びた足はあまりの美脚。
まずこれで男をオトせないということはないだろう。
流石の光也でさえも…………
「美味しそう」
と思ってしまうほどだ。
更に追い討ちをするように彼女、茜は光也に好意的だった。
性格も少し積極的ぐらいでちょこちょこと色目を使ってくる。
例えば?
例えば……………わざと教科書を忘れて見せてもらう時に
さり気なく胸を寄せて強調させてみたり?
わざとしゃがんで見えるか見えないかを強調させてみたり?

みんながみんな平気なフリをしてはいるが、
きっと今にも狼に……「食べたくて」仕方がないだろう。
だから一週間でクラスに馴染んでもしまうし、
学校でもかなりのモテているのだろう
なによりも恐ろしいのは、
性格に裏表がないこと。
いや、正確に言えば表でないようにしている………。

計算高い女。


しかし光也が茜に惹かれたことも嘘ではない。

74:大和:2012/06/08(金) 06:19 ID:ux2

しかし反対に茜と光也が仲良くなっていくのとは
裏腹にスミレと光也は仲が悪いわけではないが距離が保たれるようになった。
スミレからは避けられるようになった。
ましてや茜とスミレの仲など最悪と言ってもいいほどだろう
今の今まで転校してきてから一度も話たことがない。
その変わりーーーーーーーー

「万里くん、きてきて…………」
「はい?どうしました、スミレ先輩」
「これ、面白いでしょ?」
「ふ、ふはははは!これは面白い!」

何故にかスミレが二年生の教室に行って、
まるで今までの光也の居場所を埋めるかのように、
万里と仲良くなったのだ。

最近見なくなった。
彼女の本当の笑顔を。
ずっと光也だけに見せてくれた顔を。
他の奴にも振りまくんだ?
それは嫌だな。
不愉快だよ。
彼が思うに、
もう仲間だとか友達だとか。
そういう上辺だけでも簡単に誰でもできちゃうことじゃ、



もう量れないと思う。


好きか好きじゃないか。
嫌いか嫌いじゃないか。

それじゃダメだよ

愛しているか好きか。

違うよ。

好きか嫌いか。


結果はいつも「どちらか」じゃないと。

なにも決まらないんだ。

曖昧なままじゃ成立はしないだろう。

75:大和:2012/06/08(金) 22:08 ID:ux2

恋の方程式はどこのどこまでが本当かわからない。
どこで落とし穴があるかわからないからこそ
一つ一つ慎重に解いていかなければならない。
永遠に続く方程式。
そして答えのない恋の方程式。


夕方7時を回ったというのに空の色はまだ水色を残していて、
薄暗さが着々と近づいてきた。
明るくなったものだ………
そう鳥一匹飛ばぬ物騒な空に心で呟く…
一番星はもうすでに出ていてキラキラと光っている。
部活から帰る人達も、学校から帰る人達も。
皆が皆…………同じに見えてしまう
ぞろぞろと養成所の寮へと戻っていく生徒達。

空から見たらここから見ている大勢もただの小粒にしかみえないのだろうか。
なにもないただの意味のない大群に
単なる群れに。
光也の心を悟ったのか、一匹の鴉がまるで彼らを馬鹿にするかのように
遥か彼方の高い空を飛んでゆく。
あの漆黒の瞳に、
あの暗黒の翼に。
なにを背負っているのだろう。
なにを一体全うしているのだろう。
問いただしたいことなどたくさんある………
だが前のスミレの言いかけたことが意外にもひっかかってしまい、
集中することに最近欠けてしまうのだ。
どれだけの自由があの空には広がっているのだろうか。
不意に馬鹿らしいことを考えはじめる。
天を仰ぎながらゆっくりと帰り道を歩いていると
急に後ろから勢いよく飛びつかれる。

「やっほ〜!!
なーんでそんなシケた面してんのッ♪」

正直、こういう奴がいるから前向きに物事を考えられるんだよなぁ…

スミレへの思いはいずこへ。
茜の明るさには元気をくれるものがあり、
光也自信、茜を人間としても「女の子」としても好きにはなっていた。
まぁ外見上、この二人が付き合ったところでどうこう言うものはいないだろう。
なにせの美男美女。
これ以上はいないのだから。
周りから見ればちょっとラブラブな恋人。
当人からしてみれば友達以上恋人未満。
光也の腕にさり気なく腕を絡めてももうなにも言わない。
それすらも日常となっていたから。
こうして茜が光也と一緒に帰ることはもう珍しくなかった。
始めは腕を絡めることに抵抗を感じたものの、
全てもうこれは「慣れ」だ。




彼女、スミレの可愛い嫉妬とも知らずに。


自然に彼等は恋人だった。

76:大和:2012/06/09(土) 07:29 ID:ux2

たかが恋人、されど恋人。
どちらかが落とし穴を仕掛けているのか、
それとも本当に恋人なのか。
彼等の真意は分からない。
どこまでが演技?どこまでが本気?
演技と本気の差がないからこそ怖いのだ。
ただ言えるのは、恋人というのは居るだけでも
ドキドキと胸が高鳴るもの。だけど安心する。
そんなような感情があるはずだ。
だがこの二人の場合、決して安心することなどない。
隠れた敵だから。
彼等の立場は自分の感情よりも自分の土台を大切にしなくてはならない。
だからこそ敵対心は忘れない。
我ながら物騒な恋人だ。
すると茜が不意に腕から下へと指を絡めてくる。
普通は女性からではなく男性からなのだが………
しかし茜の場合は「少し積極的」が売りなわけで
今まで光也がそれで流されたことも何度かあった。

「……ねぇ、指…………」
「…嫌………?」
「…そういうわけじゃないけどさ、腕だけにしてよ」

そう光也が冷たく言い放つと茜は大人しく腕にぴったりとくっ付く。



夏の草木逹は風によって揺れ始めざわざわと言う。

一見冷たいように思える二人。
だが冷たいどころか想いは熱くなるばかり。

77:大和:2012/06/09(土) 21:00 ID:ux2

「はぁ…………」

無感情の溜め息を小さくこぼす。
二人の足取りはバラバラでましてやどちらとしても
歩幅さえ合わせようとしない。
きっと上辺だけだから。
上辺だけの恋人だと知っているから。
気持ちが燃え上がるのは敵対心からの興奮であって、
そんな可愛らしいものじゃない。
この特殊科学校でも恋人同士になったりするものは少なくもない。
それなりに普通の生活をさせているためそこまでの自由は縛らない。
どうせ皆上辺の恋人だから。
客観的に見ればそうなるであろう。
なにせ恋人になろうがならまいが、「やるべきこと」は決まっているのだから。
それさえすればいい。
やればそれ相応の自由は与える。

「溜め息なんてらしくないよッ!!
じゃっ、また明日ね〜〜」
「あぁ、じゃぁな」

元気よく言い残すと茜は女子寮へと帰っていく。
その姿を暫く見つめながら光也は男子寮へと向かって行った。
茜はよくスミレと光也の仲を邪魔をする。
特に仲が悪いわけでもない二人なのに話していると
いつも首を突っ込んで話しに混ざる。
正直、そういう時はうざったい。
でもどうしてもあの空になると誰でもいいからそばに居てほしくなって………
よくわからない体質をもつものだ。
いつもいつも…………
現実味のない現実。
ただ音と色のない動画が流れているようでつまらない。
エレベーターで個室に一人、携帯をイジる。
すると、もうすでにメールが一件……………

いや、二件来ていて一つずつボックスを開く。
必要以上の人しか登録のしない光也。
特にメールなどめったにしない。
電話は頻繁に使うもののメールは意味がないと判断し
使わなくなってしまったのだ。

茜はいつも夜にはメールをよこしそこから返信が面倒くさくなり、
電話で話す。しかし電話で話すと止まらなくなって数時間。
こうしていつもの夜は終わっていくはずだった。
なのに。
違った。
なんとスミレからメールがきていた。

差出人:スミレ
タイトル:無題
本文:先輩、最近なんだか元気もないし
溜め息ばかりなので無理せずがんばって下さい。


光也は携帯に映るその文をしっかりと読む。
この文章が無性に嬉しくて。
たまらなく愛しくなってしまって。
どうしたらいい、この愛への居場所を。

78:大和:2012/06/10(日) 07:25 ID:ux2

だが愛の衝動は抑えられなくなり、茜のメールなど無視して
電話をかける。
今すぐ声を聞きたくて……………
少しずつ胸は高鳴っていく。
数回コールが鳴ると突然声が聞こえてきた。

「……光也…先輩……??」
「うん。そうだよ…」
「どうしたんですか………?」
「あのさ、さっきのメールありがとう。すごく嬉しかった。
……ごめん、ただそれだけなんだけどね……」

いつ聞いても変わらない反応に変わらない声。
いくつもの何かがあっても君は「変わらずに」居てくれるだろうか。
時が変わるとなにかも変わる。
時が過ぎ行く中で、変わるものを信じて生きていくのもいいだろう。
しかし、変わらないものはこの大きな空にたったの一握りしかない。
だから変わらぬモノの中に君がいてほしい。
安心するから。心からの安心。

「それだけって………ははは、面白い人ですねぇ」
「そうかな?ごめんね忙しいだろうにさ…」
「いいえ、特に構いませんよ。それでは………」

電話の奥で話すスミレはクスクスと笑い、
静かに電話を切る。

通話時間:2:35

たったこれだけの時間なのにとても長く感じた。
永遠に続くと思った。
とてもとても幸せで、仕方なくて。

光也はソファに背を預けながら携帯を優しく握る。
テーブルの上に置かれたお茶。
ふと、そのお茶を見ると茶柱が立っている。
スミレと同じように光也もまた、美しく微笑んだ。



ーーーーーーーーーーーー一つの電子音が鳴る。
どこかで聞いたことのあるような音楽。
着信音だろうか?
馴染みのあるこの曲は…………??

「はい?もしもし」
「ぁ、光也?今からそっち行ってもいいかな?」

女の子の声が聞こえる。
とても可愛らしい声だ……………なのに青年はあまりノらない様子で答える。

「え?なんでよ」
「なんでも。いい?」
「まぁべつにいいけどさ………」

ふぅ、とお茶を飲んでは溜め息をつく青年
先程まではあんなにも美しい微笑みを見せていたのに。

「じゃ、今から行くから鍵開けておいてね」
「………わかった、じゃ」

そう言い残すと青年は電話をすぐさま切り、
携帯をテーブルの上に置くと、立ち上がる。
リビングらしき所を出ると玄関へ向かい、
家のキーロックへと手を進める。
ガチャ、という音がした後家のドアが開かないかを確認してから
またリビングへと戻っていく。
さっきの女の子はこう言った。

「鍵は開けておいてね」

確かにそう言ったはずなのに。
何故青年は鍵を閉めたのだろうか?

しばらくすると家のインターフォンが静かなリビングへと響く。
青年はあたかもドアの向こうの人物が誰かわかっているらしく、
あっさりとドアの鍵だけを開けると、そこから

「もうッ…開けておいてって言ったのに………
こぉちゃんのイジワルッツ……でも…そういうSなトコも好き……」

わざとらしく頬を膨らませて言う女の子はその後頬を染めて
光也に愛の言葉を述べると静かに靴を脱ぎ、部屋へと上がってくる。

そしてなにを思ったのか、後ろ姿の青年を優しく抱きしめた。

79:大和:2012/06/10(日) 19:05 ID:ux2

うぜぇ。
正直言ってそう思った。
なにがこーちゃん?
なんでオマエ一人のために鍵とかいちいち開けなくちゃいけないの?
なんで後ろから抱きしめんの?
煩いし気色悪いんだよ。
吐き気がする。
腹の中からなにかをえぐり出される感じで、
いい気なんて一つもしない。
迷惑。
近づかないでほしい、関わらないでほしい。
「仕事じゃなかったら」こんなことしねェよ。
わざわざ裏の裏の裏をかいて演技なんかしない。
いちいち頭脳使って顔色伺わないって。
なんの期待してんだか知らないけど……………
馴れ馴れしい。
俺を誰だと思ってんのかな?
オマエが来ることを五年前から想定して仕事場から遠いってのに
一般庶民のフリをする。
面倒くさいこの上ないよ?
だけどさぁ………我慢しなくちゃなんないんだよねぇ。
最悪。
俺はボーッと立ったまま沈黙のオンパレードを続かせる。
茜は俺の体に手を絡めながら抱きしめる。
気持ち悪い。
触んな。

「で、用かなんかあんの?」
「用がなきゃ会いにきちゃダメ?」

面倒くさ。
自分が可愛いとか思ってんのかな?
顔とか……そら客観的に見たら可愛いんじゃん?
だから?
それはただ客観的なだけでしょ?
俺からしてみりゃただのカス以下でしかないよ。
自意識過剰。
俺は茜の腕を掴むと俺の体から離れさせる。
廊下にたたずむ上辺の二人。
シン、と静まり返るこの部屋でなにをしろと?
キッチンには先程食べたばかりの夕食の食器。
つけっぱなしの音楽。
無造作に置かれたティッシュ。
どれもこれも俺の生活。

見られたくない。

「用ないんだったら帰って、ジャマだわ」
「………なんで…………?」
「これから仕事あんの。さ、帰って」

本音をただぶちまける。
後ろでどんな表情をしてるのか………だいたいは予想つくよ?
悔しそーな顔してんね?
ごめんね…………アンタの作戦が上手くいかなくてさ……
色恋で俺をオトせると思うな。
そこまで軽い奴になった覚えはねェから。

「……っ、ごめん。言い過ぎた。俺も疲れたから、今日は……ね?」

こう言ってやるとオマエは可愛らしく微笑む。
作戦が全て台無しになったわけではないんだと、
心で笑いながら。

「そか………じゃ……明日……ね?」
「うん」

俺も早く帰ってほしいあまりに微笑む。
向き合う二人の男女。
一見仲がよさそうに見える奴の目はフシアナ。
どこも良くなどないのだ。
そうしていると茜は物欲しそうな目でこちらを見る。
それを見て俺は気づく………いつものことだ。

キスしてほしい。

そう思っている。
キスをしてもらえればまだ相手が自分に依存しているとでも思うのか?

「ん……ふ………………」
「ぁッ………んんぅ……………」

少し強引にキスしてやるとアイツは嬉しそうにキスをしてくる。


非常につまらない日常。


しかしキスをしながら思う。


明日はもっと憂鬱なことをしなくちゃならないなぁ……と。


ただ唇を重ねるだけの行為に意味など持たない。

80:大和:2012/06/11(月) 20:44 ID:ux2

気が済んだのか、彼女は満足そうな笑みをこぼしながら
その部屋を出ていった。
あの笑みに見える無謀な自信はなんなのか。
そんなこと知りたくもないが彼の能力が低下することなどない。
だからこそ全ての意図を探り当ててしまうことができる。

スパイ養成学校、通称ルヴェン学園。
世界でも10の中に入る富豪学校。
だがただの富豪学校ではないというのがポイントで、
裏ではスパイ養成所となっている。
そんなことはもう知っているだろうが、
スパイ養成学校では最後の卒業試験があるらしい。
その最終試験、いわば卒業試験がスパイだ。
もちろんそれを本業とする故、スパイが出来なければ意味がないので
学校がその人向けの卒業試験場を決める。
しかしいつからだか、その人向けではなく……
その人が一番苦手とする分野での場所を選ぶようになったらしい。
なんでも、なににでも対応できるようにするため……だとか。
秘密警察は心、技、体。
これさえできれば歳など関係なくそれなりのレベルにいける。
しかしスパイ養成所は幼少部、初等部、中等部、高等部
この4つに別れており、誰かがズバ抜けていたとしても
学年など飛び級制度は一切通用しない。
なぜならば同じ時を過ごしてきた奴等と最終試験にて、
どれぐらいの差があるのか。
それを調べるために色々な制度があるらしい。
制度達はすべてモルモット。
ただの実験台。
そんなスパイ養成学校。
女子校と男子校に別れており女子校は特に厳しい。
男子校……男子は割りと力のついた人材がいるからいいものの、
女子は色々な手段を使ってでもスパイをせねばならない。

体を売ってでも。

81:ツリー ◆9hk6:2012/06/11(月) 21:00 ID:4b6

やべぇ…超おもしれぇ…

秘密警察の構成も凄くてドロドロの愛を深く書いてあって人間の欲を緻密に書かれている…

素晴らしい。

82:大和 ◆U7Pg:2012/06/11(月) 21:10 ID:ux2

おおぉ!!
ありがとう御座います!!
やばいよ涙でちゃうよ〜…………
とまぁこんな作品を誉めていただき……!!!

よろしければ交流掲示板にて「特殊警察大会議室」へどうぞ〜!!

83:五月:2012/06/11(月) 21:24 ID:lRk

私も面白いと思います!

こんなに面白い作品はなかなか無いですよね!

今後も拝見させていただいてよろしいでしょうか?

84:大和:2012/06/12(火) 06:19 ID:ux2

ありがとうございます〜!!!!
そんなふうに言っていただけて……
嬉しい限りです!
全然構いませんよ〜!!

85:大和:2012/06/12(火) 21:09 ID:ux2

それほど彼女達にとってはこのスパイという仕事が誇りなのだろう。
しかしその誇りに思うことに対しては共感するものの、
スパイという卑怯な……………いや、本当は真実を探しているのだろうが、
そのような仕事をしている点では秘密警察が対抗せねばならない。
自分の利益を考えるのは構わない。
だが大きなものを犠牲にしてまでの一人の利益というのは
どうも許されることではないだろう。
そこが違うのだ……
きっと目指しているものは同じ。
だけど「やり方」というものがあるであろう?
……………
しかし今。
現在、秘密警察養成学校生徒会会長。
つまりはこの養成学校の中で一番実力のある者。
現在、女子聖ルヴェン学園生徒会会長。
つまりはルヴェン学園の中で一番実力のある者。

白羽光也。
久方茜。

どちらの実力が上なのか。
これが養成所、学園の顔となって戦ってもらうのだ。
だが彼等にとってはなんて悲惨なやり方だろうか。


誰もいなくなった部屋に先程とは違う電子音が流れる。
ディスプレイには「白夜昴」。
その名前を見て焦りを感じ、半ば急いで電話に出ると
相手は思ったよりも深刻な声で話す。
いつもの過程から考えると、昴がこのような時間に電話をかけてくるはずがない。
時計の指す短い針は9を回っていた。
軽い用事ではないことを想定しながらも話の内容に耳を傾ける……

「光也…悪い、こんな時間に」
「いや、それは大丈夫ですけど……どうしたんですか…」
「明日……あの報告書通りに事態を進めて欲しい…」
「…………………わかりました」
「ごめん…光也」


初めて聞いた昴のあの弱々しそうな声に光也は
自分のやる仕事の重さを改めて知る。
本当に成功させなければいけないのだと。
もう電子音のしない部屋は静まり返り、
その中で光也はソファに腰掛けた。
すでに外の色は漆黒へと染まって今にも吸い込まれそうだった……
吸い込まれてしまえばいいと。
つらくはない。
これが仕事だから。
けれど……………

もし我が儘が通ったのなら………

これだけはやりたくなかった。



そうして次の日の眩しいぐらいの光を放つ太陽を見るのは嫌で仕方ない。

86:大和:2012/06/13(水) 06:19 ID:ux2

それはまた、昴も同じであった。
しかし時が止まることはなく今日はくる
陽は昇る。

朝は光を浴びてくる。
見ないでくれないか………
こんな汚い俺を。
その眩しい眼差しで。
「あの子」と似た……………その瞳で。
どうか嫌わないでくれないか。
ずっと支えてはくれないか。

浅はかな願望は何時かの幸せ。

珍しく早く起きた光也はボーっとした頭を覚まそうとキッチンへ向かう。
冷蔵庫を開けるとそこから麦茶を取り出し、コップに注いで飲む。
まだ飲み終わっていないコップを置いて
洗面所へと行くといきなり水を出してまだ冷たいというのにも関わらず
顔を洗う。

気合いを入れなくちゃならない。

そう鏡に映る自分に言い聞かせ、洗面所を出た。

87:大和:2012/06/13(水) 21:12 ID:ux2

手を伸ばせば届きそうなのに。
ずっと伸ばす勇気が無くて…………
ただ眺めているだけ。
それだけでいい……………君が幸せでいられるのなら。
それ以上を望みはしない。



ーーーーーーーーーー
「はよ〜こーちゃん!!」
「……?…あぁ、おはよ」

珍しく愛想良く答えてみたり。

「今日こーちゃん機嫌いいの?」
「え?そうかな……?」

こうやって二人で綺麗な色とりどりの煉瓦の上を歩きながら、
微笑んでみたり。

「なんかいいことあった?」
「いや、特にはないよ」

いつもなら朝は機嫌が悪くて喋りもしないクセに、
今日に限って機嫌が良く、いつも相手からしてくることを
自分から少し積極的になってしてみたり。

「…//……好き………」
「はは、ありがとう」

こうして指を絡めて登校したり。
全部これが筋書き通りと知った時の彼女はなんと思うだろうか。
綺麗な校舎の中へと入る間の道のりを楽しく歩く男女など、
何故なにも違和感を感じないのだろうか。

遠くで好きな人がこの光景を見てると知った時、

彼はどれだけの悲しみと後悔を覚えるだろうか。

自分しかわからない、筋書きの今日。
どうか今日だけは筋書きでいさせてくれ。
今日の気持ちが全て上辺だと君に気づいてほしい。
今日の始まりを告げるチャイムはどこまでも響くような綺麗な音で始まった。






どこかで声を押し殺したような声が聞こえる。
……………女の子の声だろうか?
…………女の子の声は甲高い。
……………………………



「ぁ…!…ァ…ン…ッア……!!!…こ、…ちゃッ…ハン…そこッツ!!……ァ…アンッ……」



彼にとってはただ一つの気持ち悪い嘆き声が誰もいない放課後の教室に響き渡った。




さぁ、ここまでの過程を考えてみようか。

88:大和:2012/06/13(水) 21:15 ID:ux2

はい、15、あるいは18禁きました。
なので無理な方はお戻り下さい。

皆様、これからこのような場面がいくつかありますが、
不快な思いをされた方に深くお詫び申し上げます。
ですが、なにとぞご理解頂けると嬉しいです。

89:大和:2012/06/14(木) 21:37 ID:ux2

ここに至るまで。
なにがあったのか。

朝二人で手を繋いできたところまでは覚えているだろう?

ーーーーーーーーー

一時間目の授業中、一人の青年は黒い黒板を見ようともせずに
ひとつのノートへと目を注いでいた。
そのノートにはびっしりとなにやらスケジュールのようなものがかかれている。
7:20 二人で登校。
    さり気なく手などを繋ぐ。(会話自由)
7:45 学校到着。
    一緒にいながらも監視。
8:00 授業始まり。
    内容確認良し。
8:50 ………………
こうしてズラズラと3ページぐらいかかれたノートに
少年は目を通しながらイメージをする。
何時何分、なにをどのよにしてなど詳しく書いてある
出来事を頭の中で想像をする。

90:大和:2012/06/15(金) 06:10 ID:ux2

第二章〜曇天を歩く青年に傘はない〜

休み時間も、お昼も。
全ての余る時間を使っては頭を回転させる。
絶対に失敗など許されないから………
すると後ろから光也を抱きしめる腕が伸びてくる。
その腕の主が一体誰なのか、そんなものはとうにわかっている。

「どうしたの?元気ないよ?」
「そんなことない…元気♪」

そう話かけてくる茜に対して、愛想よく………
かつ愛があるように返事をする。
これも全てが筋書き通り…………だったらいいのに。
何度としてそう思おうともう過去には戻れない。
今まで晴れていた天気は嘘のように曇天の空へと変わり、
今にも雨が降りそうな天気。
まるでそれは光也の心情を現しているようで、
窓を眺めることはできなかった。

「ねぇ……茜………」
「ん?なに?」
「今日の放課後…………ここに来て」
「………………………」
「来て?」
「ぁ………うん、……わかった」

なにか悪いことを予想したのか、茜の顔色は
この空のように曇り、曖昧ながらの返事を返す。
今日の放課後、なにが起こるのか
心配で仕方なかった茜は無駄な能力を使う。
そんな誘いをしたのが今日のお昼休み。

最後にしようと、光也はもう一度だけノートを開く。

もうじきに夕立が来ても可笑しくないほど空には雲が広がり、
闇の一色だった。
生徒は部活やらなにやらを終わらせて帰っていく。
先生も用事を済ませると帰ってしまい、
この時間生徒会以外の生徒はいない。
とはいえ、生徒会生徒も流石に帰り本格的に学校は
暗闇へと飲み込まれる…………
そんな時、一つの教室では違った。

「……来たけど………どうしたの…?」

そこにいる少女は深刻そうな表情を浮かべながら立っていた。

「大丈夫だよ、そんなに怯えなくても」

向かい会って立っている青年は美しく微笑むと、
少女へと歩みより抱きしめた。
抱きしめられた途端に少女の緊張は解けたのか、
少女もふわりと微笑み青年を強く抱きしめた。
すると青年はその少女に唇を重ね熱くキスをする。
少女はいつか見たような嬉しそうな顔をして同じくキスをする。
青年はそこにあった椅子へと腰かけて顔を少女の胸元へと降ろし、
少女の服を段々と脱がしていく。

「……ンッ………こーちゃん……まさか……」
「……シちゃダメ………?」
「………ううん………嬉しいッ………!!」

すると青年は前だけ釦を開けると来てと言わんばかりの
少女の体の下着を外して吸い付いた。

嗚呼。

嗚呼。

「………ハァン…!…ンッ………ァツ……アッ…アンッ……!!…」

嗚呼。


嗚呼。

彼女が見ているとも限らずに。

91:大和:2012/06/15(金) 20:04 ID:ux2

何故好きでもない女の子とこんなことをしているのだろう。
何故好きでもない男の子とこんなことをしているのだろう。
気持ちよくなんてない。
気持ち悪い。
どうしてこんなことをしているのだろう。
溜め息が出そうになるが、グッと出てしまう前に止める。
行為を続ける光也も茜もある意味同じ気持ちに浸かっていた。
やるせなくて、仕方なくて。
全てを捧げるのは仕事とために、
自分の気持ちを殺す。

ボツ……ボッ……ボツ…ボツボツ……

どこまでも写していくような窓に雨が打ち付ける。
釦雨が大きく窓を濡らし、音を鳴らす。
少女の声などかき消されてしまいその声が聞こえるのは青年だけ。
微妙に震える手に力を入れ、しっかりとした手つきとする。
何故にか目尻が熱くなる。
雫が流れそうになるが、それをこらえる。

こらえる。

ただ一人を除いては。

92:大和:2012/06/16(土) 17:04 ID:ux2

何を思ったのか光也はいきなり行為を止めて、茜に向き直る。
茜はどうしたものかと少し驚きぎみの顔で光也を見つめるが、
光也は窓に雨粒を打ち付ける音にかき消されないよう話出した。

「…………本当の……本当の気持ちも分からないのに………
こんなことって……いいわけ…………?」
「…………………」

窓の奥に写る山脈を見ながらポツリポツリと話す光也を、
茜は黙ってその横顔を見つめていた。
誰もいない教室はシンと静まり返るが、
二人の熱さ以外に湿気の暑さも混ざる…
6月特有のこの蒸し暑さに嫌気が感じるものの、
今や二人の心は冷たく凍る…………
溶け合いもしないのに…何故こんな行為をしなくてはならないのだろう。
どうして好きでもないのに。
どうして自分を犠牲にしてまでも守りたいものなどあるのだろう。

「本当の気持ちを押し殺して…………
どうしてここまで……こんなこと………」
「………………わからない」

わからないけれど。
どうしてと疑問ばかりが浮かぶけれど。
愛しい君を守りたくて。
始めは……………いや、今もそうだと思う。
純真な心だった。
守るとか、正義とか、悪とか。
建て前で作られたものに立ち向かうだけで。
裏とか表とか影とか光とか。
気にも留めなかったし、考えようとすらしなかった。
なのに、どうして僕が表に来る時君は必ず裏なのだろう。
とうして僕が影に来ると君が光なのだろう。
それは、どちらかがとちらかを支えるから
「どっちも」なんて、そんな貪欲な答え………………











求めてもいいだろうか。

93:大和:2012/06/16(土) 21:35 ID:ux2

だけどきっと求めて手に入れたその時、
多くのものを犠牲にするだろう。
その答えがどこかでわかっているから…………
だから人は貪欲には生きられないのだろう。
だから人は愛する人への愛を貪欲にするのだろうか?
……………人はそうだろう。
どこかを犠牲にする代わりにどこかを貪欲にするのだ。
だが彼らは違った。
どこかを犠牲にしようと代わりでどこかを貪欲になどするところはない。
どこかを犠牲にしてでも犠牲……いや、我慢を続ける。

「でも…………なにかのためだと思う」

光也と同じ方向を見ながら、茜はそう呟いた。
なにか望みを持っている瞳だった。
なにかを羨ましがる瞳だった。
それを見て…………初めて光也は思った。

同じ人だと。

同じ道を歩んで来た人なのだろう。
二人が眺めるその向こうには…………一体何があるのか。
茜はなにを思ったのか頬に一筋の涙を流した。

「……なにかを守るなら…欲を伴わせることなど決して許しはしない……」

そう言った後光也は優しく茜の涙を拭き取り、





ただ思うがままに唇を当てた。

94:大和:2012/06/17(日) 15:47 ID:ux2

「え………………………?」

最初はその行動に驚いた茜だったら目からは溢れだすように涙が出た。
それと同時に彼らは決める。
このままでいい。
もうこのままでいいからどうか君を守れるように…と。
そうして二人は先程の行為を続けるのだった。
先程までは上辺だけで気持ちよくもなんともない………………

けど。
今なら。
今なら浸れる気がする。
互いの気持ちに。
本当ではないけれど。

「ァ…!!…………ン……もっ……と……」
「はッ……ふ……シてあげるよ……」

こうして二人は肌を重ねた。
互いの思い人に例えて。

そう考えたとたん、もう行為は止まらなかった。
どうせ届かぬ思いなら代わりで埋めようではないか。
どうせしなくてはならないことなら。
君へと例えばようじゃないか。


「んッ…………ふ……ハァッンッ……」
「ハ…………ハ……」

いい。
もうこれで。

ねぇ。


愛しているんだ「君」を。



その場を目の当たりにしたスミレは泣くことしかできない。

95:大和:2012/06/18(月) 20:33 ID:ux2

嗚呼。
とり返しのつかないことをした。
でもそれでいい。
互いにしたいことがわかったから。
光也が目を覚ますとまだ茜は寝ていて、
光也は先に着替えを済ませる。
すると次第に茜を目を覚まして二人で着替えをする。
あの時の雨はなんだったのか……
もうすでに空は晴れ渡っており薄れた虹がかかっていた。
その虹を見て………………

ふわりと泣いてしまう。

なんて情けないことだろうと思った。

けど。

笑おうと思えば笑えた。
けど。
けど……………その時は。
泣こうと………

今だけは一筋の涙でいいから。

声もあげないから。


だからどうか…………

どうか今だけは泣かせて下さい。

泣かせて下さい、昴先輩。

暁さん。

刻さん。




どうか許して下さい



彼女が好きなことを。


スミレが好きなことを、



どうか。

96:大和:2012/06/19(火) 19:39 ID:ux2

「大丈夫、あなたの思い人はあなたを嫌いになりはしない」

泣く光也を後ろから抱きしめてそう呟く茜
その優しさに涙が溢れ返りそうになるが、
ここで負けてはいけないと自分を厳しくする。

「そうだと嬉しいな…………」
「…………そろそろ…………………行こう?」
「…………?………あぁ、そうだね。
でも俺はもう少ししたら行くよ」
「わかった。それじゃ………」

そう言って茜は教室のドアを開けてここを出ていく。
もうすでにそこにスミレの姿はなかったものの、
誰かがいたということは茜にはわかった。
きっとここにいてあの場面を見たのだろうと。
しかし何故か誰だか知らないその人を信用できてならなかった。
だから見た人を探そうとも思わなかったし、不信にも思わなかった。
スミレとも知らずに
だからどこまでも続くような廊下をただコツコツと歩く。

ただ一つ。

変わったものといえば。

茜の気持ちが変わった。

あんなにも一人を愛する人を………

初めて見たと。

好きな人に好きな人がいる。

つらい事かもしれない。

なのにこんなにも可愛らしく茜の顔が晴れているのはなぜだろうか?


あぁ。


青年よ。



一番つらいのは、

苦しいのは





他の誰でもなく君だろうよ。

97:大和:2012/06/20(水) 18:22 ID:ux2

その後、二人は連絡をすることもなく自分達の寮へと戻った。
はたから見ればお年頃の男女だから仕方あるまい。
むしろ仲がよくていいじゃないか。
この行為をこう受け止めるものは多いと思う。
だが実際の彼等の心情と言ったら裏腹で、まったくの正反対な思い。
幸せでもないし仲良くもない、どこも仕方なくなどない。
幸いにして茜に子供が出来るなどということはしないように
光也が対処はしたものの………もしそのような事態になった時、
責任はやはり男にあるだろう。
自分の子を授かってしまった以上、この事実は変わらないのだ。
そんな大事を予想してまでも。
それでもこの仕事を遂行したのはどのような忠誠心からなのか。
彼等は寝る前の天井をボーっと見ながらそう思った。
扇風機では味わえない自然の風が網戸からひゅうひゅうと
吹き込んできて気持ちがいい。
こんな穏やかな気持ちじゃなかった。
互いに早く終わらせようと焦り、なかなか感情に浸ることが出来なかったのだが、
最後に浸れたことで二人は繋がった。

「あつ……………」

薄目をしながらそう呟く光也の瞳には雫がありツーと頬を辿る。
それを流した後………
光也は闇へ吸い込まれるように眠りへとついた。
また茜も同じように。
同じ道を辿ってきた茜と気持ちが浸り和えた。
それだけでもういい。
それだけでいいから……………。
二人は先ばかりを見越しすぎた。

ただ。
寝る前に思い出したことと言えば………
君のことだろうか。

「……………………」

98:大和:2012/06/21(木) 18:46 ID:ux2

プルルルルル………
深夜の誰もいない時間に電子音が鳴る。
青年の頭部辺りで鳴るそれは同時にヴヴヴとバイブにもなるのだった。
静かな暗闇に鳴る。
着信には「昴先輩」と表示されており、
うっとおしそうに目を開けた青年は電話に出る。
寝起きということでやや機嫌は斜め、声は少し枯れてはいるものの、
すぐにいつもの調子を取り戻す。

「ん……はぃ……………」
「ぁ、光也?ごめんこんな遅い時間に……流石に寝てたよな」
「いや……確かに寝てましたけど…ぁ……ッ…大丈夫です、起きましたから」

未だに顔は眠そうだが一つ大きくあくびをすると
鉛のように重かった体も徐々に軽さを増してきた。

「……早速だけどさ………結局、どうなった?」
「あぁ……アレのことですね」

少しすまなそうに話す昴の声を聞いて、そんなに落ち込まなくてもいいのにと、
内心そう思うが口にはしない。
そして青年は今日の出来事を淡々と口にする。

肌を重ねたこと。
互いの目的は同じこと。
結局はお互いの気持ちではなく、
建て前の気持ちだったこと。
全て。
なにもかもが正反対だった。

「…………………そっか。分かった、ありがとね。」
「いえ………仕事ですからこれぐらい…」
「……こういう仕事、本当は観察型がやるんだけど………まぁ今回はね。
あ、それと…………今、暁さんと刻さんが来てるんだ」

その名を聞いた瞬間光也は本当にハッと目を覚ます。
半ば放心状態で、我を忘れている光也に昴は気にもせず続る。

「今本部のほうにきていてね」
「昴先輩!それは………本当なんですか!!!」

目を見開き、今にも食いつきそうな勢いで電話の相手に怒鳴りつけると
昴はあくまでも冷静さを保つよう話した。




「本当だよ。
でももうすぐ帰るから光也に会われるせることはできない」


青年の目の前は真っ暗になる。

99:大和:2012/06/23(土) 20:38 ID:ux2

暁さんと刻さんが来ている。
その事実があまりにも嬉しいが来ているのに会えないということが
ものすごく絶望でもあった。
深い深い闇の中で光也は闇に絶望に陥るのだった。
今までのことが散りとなり積もりすぎる。
「散りも積もれは山となる」
もしこれが。
光や希望や努力の散りならばどれほどよかっただろう。
もしこれが。
闇や絶望や漆黒の散りならばどれほど苦しみなのだろう。
どれを頼りに生きるだろうか。
それこそが今光也に降りかかっている散りである。
雨のように降り止まない闇を止めることなどできない。

「………光也…………悪い……でもな…これだけは聞けよ……」

昴は語りかけるように光也へと話しかける。

「今の宇宙(そら)を見てみろ……………あまりにも綺麗すぎるだろ…………」
「…………………………………」
「…………………」
「オマエはこれ以上の綺麗なものを見たことがあるか?」

同じ宇宙を見ながら昴は声を震わせながら言った。
窓から見える宇宙は怖いぐらいに綺麗だった。
見惚れてしまうほど。

「………………ないです…………こんなに……綺麗なものは……」
「……俺はさ………………桜を初めて見た時、
「嗚呼、なんでこんなに綺麗なんだろう」
そう思ったんだ……………」
「………………桜先輩が?…」
「うん。この宇宙よりも………どうしてここまで綺麗なんだろう。
不思議で仕方なかった………………」

だから。
結局は。
人を変えるのは人。
それでしかない。

「あそこから変わった。
まだ宇宙の綺麗を頼りにしていたけど………
宇宙にしか涙を見せられなかったけど…………

でも…………………思ったよ。




この人になら涙を見せてもいい




そう………………ね………」

懐かしそうに話す昴の情景が光也には浮かんできた。

「……………………」

今は。
今はこれだけが頼りだけど。
この宇宙が頼りだけど。
でも……………
君という
綺麗が僕の涙を拭ってくれるなら。
僕は安心して君に雫を預けよう。

君じゃないとダメなんだ。

「俺も……………見つけますよ……」

100:大和:2012/06/23(土) 22:04 ID:ux2

「…………憧れじゃなくて、愛だからね。
……それを忘れるな」

憧れと愛。
言葉にすると違いがわかる。
文字にしても違いがわかる。
しかし………
気持ちにすると?
気持ちにすると憧れとは随分分かりにくいもので。

「憧れを愛と間違えると大変なことになる……」

小さく呟く昴の声には過去を噛み締めるような思いがあった。
愛と憧れ。
なにが違うって?
それはその人の気持ち次第なのかもしれない。
けれど、多くの経験をしたことがないと……………
すぐに少しの優しさやありふれた言葉で愛と勘違いする。
ただ少しの隙間にそれが埋まっただけで。
自分が欲しいだけなのだ。
その優しさやありふれた言葉を。
結果は欲望と愛と憧れを間違えた。
そんな人間ばかり。
馬鹿馬鹿しい愛に溢れ我を忘れた。
愛は人を変える。
多いに変える。
だからこそ多くの幸せを取ると多くの犠牲を賄うのだ。

「そこを間違えたら終わりだよ…………それと………
浸ってはいけない」

心臓が大きく脈を打つ。
鼓動はだんだんと早くなり、焦りが光也を襲う。
携帯を持つ手は少々震える。

「…………………浸る?まさか………」
「…………浸りたくなる気持ちもわかる。でも浸る仲間と真実の愛は紡げないから」

芯の通る声で告げた。

「………………光也、愛は蜜であり毒だ」

101:大和:2012/06/23(土) 22:24 ID:ux2

100だぁああああ!!!!!
ということで100。
まずはね、ご恒例の……


ここまで支えてきて下さった皆様!
本当に有難うございます!
そしてこれからも宜しくお願いします!!

本当にありがたいことです〜
SPECIALになってから読者の皆さんが増え…………
とても嬉しく思っています!
第二の本編となるこのお話ですが………
なんか短編のつもりが長編になっちゃった☆
てきなノリです。
はい、ごめんなさーい……m(_ _)m
最近は忙しいということで前よりも更新が遅くなりました………が…!!!
皆様が支えてくれるお陰でなんとかがんばっています!

このお話は「恋愛×警察」というものになっています〜♪
確かにちょっと長いかもしれませんけれど気軽に読んで下さいね〜
あと感想、意見、アドバイス置き場が変わりました!
「秘密警察大会議室」というのになりました!!
雑談とか全然OK。
この小説よんだことなくても全然構いませんよ〜
普通にお話しましょう♪

100いったので余裕があればなにかやりまふ〜






ps.
ここなさん、アメさん。
初期からここまでお付き合い頂き物凄く感謝しています!
雑談などもいつも相手をしてもらって……!!!
本当に有難う御座いまふ!

102:大和:2012/06/25(月) 19:20 ID:ux2

「愛なんて自分達の欲求を満たすことに過ぎない。
しかし愛をすることでその人が持つ大きな力を発揮することができる」

その意味がいまいち愛を経験したことのない光也には曖昧なところだった。
ハッキリと告げる昴の発言に嘘などないのだろう。
ましてや彼の発言はも批評もあれは好評もある。
どちらともの欠点を痛くつく。
その上で下した判断を淡々と告げる昴は光也から見れば、
どこまでも客観的でとても冷めた人だと思わせた。
光也が数えるぐらいでしか昴は桜に会うまで表情を変えることなどなかった。
桜に会って初めて感情を取り戻し、
表情を取り戻し……………そして仲間を取り戻した。
彼にとって桜以外に人生を変えた人。
それは…………
それはーーーーーー。

いや……………これはやめておこう。

このことを考えるのはよそう。
今昴と話している時に考えるのは危険だ。

何故にかそう思った光也は少し思考を停止した。
なんにせよ、ここまで思うほど彼は天才すぎた。
「すぎた」
物事の道理が。
あまりにも全てが筋書き通りのような。
計算されたように彼は上手くいく。
ただ上手くいき「すぎて。」
だから彼は生きるための意味を。
人生というものの意味を。
見ることができなくなった。
夢を大きくもとうとも………………夢は儚く願う。
叶ってしまうから。
だから…………………







つまらない。




全部全部全部全部全部全部。
つまらなくて。
くだらなくて。



馬鹿みたいで。

なにを必死にもがくわけ?
なんでそんなに懸命なわけ?
だってさ。




全ては結果。

全ては終わり。





それさえよければいいよ。




その時の過程なんて……………………

なにも関係ないんだよ。

103:大和:2012/06/27(水) 21:32 ID:ux2

「貴方は……………冷めている」

不意に出てしまった言葉は気づいた時にはもう遅く、
既に昴の耳には届いていた。
慌ててその言葉を訂正しようとするが、今その言葉を訂正したとしても
昴に聞こえたという事実は取り消すことができない。
ならばまだ平然を装ってそのまま会話を進めたほうがいいだろう。
そう思った光也はこれ以上言うのもなんなので黙っていることにする。
すると、向こうは少し考えたのはおもむろに言葉を発した。

「冷めたと思う。
俺自身も……………」

ただそうと呟いた。
遠くを見ているような声で。
どこを見ているのかなど光也にはわからないが、
なにかを眺めていることは光也にも分かる。

「…………………どうして…………
大切な人を失ってからその大切さがわかるんだろう」
「…………………俺が思うに、貴方は全てか全て合いすぎて…………
とても客観的な人だと思います」

なにを見ているのだろう。
なにが大切な人を失ってからその大切さがわかるのだろう。
貴方が一番わからない。
どこまでの平然を装えるのかがわからない。
疑問なことが浮かび過ぎて。
時計の針はすでに3を指していた。
きっともう朝の3時なのだろう。
時計を一度見ると光也はまた耳へと神経を集中させながら
自分の服を着替えた。

「客観的……………か。
まぁそれはわからなくもないかな………
だって自分でも驚くぐらい平然でいられるんだもん」

………
ガダンッ……
耳に当てていた携帯は誰の手からでもなく床に落とされ
鈍い音を静かな部屋に響かせた。
そんなことにもかまわず昴は話続ける。







「ねぇ、自分の死間際の時………光也は誰に会いたい?」

104:うにゃ ◆4AUw:2012/06/30(土) 18:12 ID:BvY

まったくもってどう審査したらいいかわかりません(笑。

ストーリー性はもう言うことなしですね。
物語の中に引き込まれました、俺が。

ただ少しだけ気になったのが、
「ー」や「・・・」の乱用です。
>それはーーーーーー
この場合、そこまで「ー」を使う必要などないと俺には思えます。
例えば
「それは―・・・」
>それはーーーーーー
と比べて、どちらかと言うと「―・・・」の方がシリアスさを醸し出しているように思いませんか?
あ、俺だけですか?そうですね、わかりますすみませんでした。

その他に俺が注意できるポイントはありません。
キャラクター各々の性格等を注意して、これからも頑張ってください!
これからも引き続き、読ませていただきますね(笑。

105:大和:2012/07/03(火) 19:57 ID:ux2

その声は聞こえるはずもない光也に聞こえた。
なぜならば携帯を落としたから。
しかしこの耳に届くような声はなんだろう。
白夜昴。
暗い夜が来ない。
その名前にはどのような意味がこめられているのだろう。
知らない。
知るよしもない。

だが。

この通る声は伝えた。

死ぬ間際に会いたいと思う人はいるか、と。

「……………………………なにを言ってー…」
「なにって?ただ聞いただけさ。単純に答えていいよ」

単純に?
馬鹿が。
答えられるわけがないだろう。
震えた手で携帯を持つのには少しばかり勇気がいることだったが、
この会話の答えがなにかを伝える気がしてならなかった。


「じゃあ、昴さんは誰に会いたいんですか?」
「そうだね。俺は……………………ククッ………」

軽く笑う昴は恐ろしくて仕方なかった。

106:大和:2012/07/06(金) 21:23 ID:ux2

「…………今も故郷にいる義理の母親に会いたいよ」
「は……………?」

唖然とした。
確かに聞いたのは光也だがあまりにも思いもよらぬ答えに唖然とする。
故郷にいる義理の母親。
昴の故郷といえばイギリスであり一度写真を見せてもらったが、
かなりの豪邸となった家だ。
その家に一人の美しい女性と似つくわない一人青年。
どちらも綺麗ではあるが決して似てはいない。
二人は違う世界観があり違う綺麗さがある。
その写真に写る女性を見ながら昴は言った。

「これは俺の義理母(はは)だよ」

そう。
いつもと変わらぬ口調と表情で告げる。
その母親の顔は幸せに満ち溢れていてとても可愛らしくも感じた。
しかしそれが昴の母なのだと。

「なぜ母親に会いたいんですか?わざわざ義理母に」
「義理母だからこそ意味があるんだ。
あの人には最後に快楽を与えてやらないと………………

桜がどうなるかわからないよ」

は?
桜さんがどうなるかわからない。

どういう………………
意味を知ることはできない。
なぜここで桜がでてくるのか。
今は義理母のことを話しているはずなのに。

「どうして桜さんが………」
「本当は。
本当は桜がいいよ。寝ても覚めてもなにをするのも。
全部桜がいい。あんなクソ義理母など死んでしまえばいい………
けれど…………それじゃあ約束が果たされないんだ………」
「約束?」
「うん。
どれだけの人を愛してもかまわない。
その変わり私を一番に愛しなさい。
でないとその大切な人を殺すわ
そう言われたあの時からーーーーー」

光也には昴の過去もなにもよくは知らないので、
どうこうと首挟むつもりはないが昴の事情はどうも気になる。
みなが言っていた噂によると昴の過去は凄まじいらしい。
悲劇以上の悲劇に精神は痛めつけられもうすでにあの精神は壊れていると。
どこで血迷ったか完全にグレた化け物だと昴の同級生は言っていた。

「嫌なんだけどね。あの母の欲求不満を満たすのは俺の役目じゃないのに。
俺が気持ちよくなりたいのはババァじゃない。
桜となんだ。
あの子以外と繋がりたくない……………絶対にね」

先程までにそのような行為をしていた光也にとっては痛い言葉だった。

「だからその分あんな仕事やらせたくなかったのに…………」
「…………その義理母って………昴先輩のこと好きなんですか?」
「そうなしいけど俺はお断り。桜以外受付ないから」


この人自身が狂っていれば、
この人の愛は怖いほど狂っている

107:大和:2012/07/07(土) 21:41 ID:ux2

「俺のことを愛しすぎておかしくなってるんだ、あの人は」

微笑んだような口調の昴はひどく冷めていて、
その言葉に深い意味などもたらさない。
あの写真で見た昴の母親はとても若く、年齢を聞いてみると
外見よりも若いらしい。
つまり、義理母とはいくら母とはいえどそう歳が
いくつも別れているわけではなく、どちらかというと近いらしい。
そう見つかりはしないような美女のあの微笑みにはなにが隠されていたのか。
そして嘘のように笑う美しい青年。
つくり笑いはこの警察養成所に入ってからとてもわかるようになった。
もとから人の感情には敏感に反応し、
わりと相手の気持ちや感情を読み取りやすい光也だったが、
この養成所に入ってますますそれがわかるようになった。
だから今でも脳裏に焼き付いているあのときの写真。
あまりにも印象的すぎた。
あまりにも美しい美男美女。
そしてあまりの作り笑い。
青年は隣で笑う彼女が嫌いなのだと悟る。

「おかしく?……………そんなの………貴方もでしょう?」

昴と同じように薄く笑うと光也はソファから立ち上がり、
キッチンへと向かう。
そうして冷蔵庫を開けると中から麦茶を取り出し
どこまでも透き通ったグラスへと注ぐ。
カラカラになった喉に無理やり麦茶を押し込んで飲む。
すると喉は潤いを増し、いつもの調子に戻る。

「おかしいよ、俺は。
それでも変わらないのは桜を愛してるってことぐらいかな?」
「へぇ……………随分一途な方で」
「………………挑発してんの?」
「特には」

いきなり暗がかった声を出すと昴は変わりだした。

「一途じゃ悪い?俺はさ、そうやって一途に愛していかないと
彼女への愛がどこかで切られてしまうんだよ」
「それって……」
「そう。色んな奴に邪魔されるおかげでね…………」

心底恨みを持っているかのように昴は告げる。
桜を真正面から愛せないこと。
愛していることを伝えられないこと。
それがとてもつらく、もどかしいのだろうか。

「桜をただ愛すことが何故いけないのだろうね?」

108:大和:2012/07/10(火) 21:24 ID:ux2

「んなこと…俺に言われても…」

光也は半ば呆れながらも昴の質問に応答した。
なにがいけないのか。
大抵のことはすべて叶ってしまう彼が求めて止まないもの。
それが手に入らないなどということがあるのだろうか。
しかもそれは誰かの手によって妨げられるものであり、
決して環境のせいではない。
ならば家系のせいなのか?

「オマエはまったく考える力がないね?」
「貴方のように天才ではないかー…」
「煩い!ーーー俺は天才と呼ばれることが大嫌いなんだよ」
「だからどうしたんです」

光也は思ったことを口にした。
くだらない、と。
自分の環境に比べたら幾度のほどマシなものか。
分かっていない。
電話の向こうの相手は少々固まった様子でいたが、
やがて調子を取り戻し恐ろしくなる。
鬼だ。


『へぇ。
  「だから?」だって?調子のいい口をきくんだね』

そう帰ってくると思った。
しかし彼の予想していた反応とは裏腹に昴は思いもよらぬ
反応を返す。

「そうか。君のとっては…
 君の人生にとっては何の支障もださない情報だったね」

ただそう悲しそうにつぶやいた。
その時にわかる。
嗚呼、
この人は過去に悲劇をもたらしたんだ

そう。

愛しいという思いだけで何がつたわるだろう。
何がわかるだろう。
「愛しい」
と言うだけで何がかわるだろう。
結局それはすべて、伝わらなければなにも意味などない。
今までの想いも。
今までの努力も。
全部川にながされる。
止まることのない時のように。
溢れる想いを抑えることなどできず、

無残に散ってゆく花びら。

なんと綺麗でなんと残酷だろうか。

109:大和:2012/07/12(木) 22:03 ID:ux2

「………………そうですよ。
 ……………………では」

そう言って光也は早くもこの状況から逃げ出したくなり、素早く電話を切る。
相手の返事すらも待てないほどに気持ちは焦る。
気づけばすでに体中汗を流していて自分がどれだけ緊張して、
自分がどれだけの恐怖を味わったかを今肌で感じた。
びしょびしょに濡れたTシャツはうっとおしく体につき、
今の電話の感触を思い出させる。
それがどうにも怖く、そしてとてつもなく嫌で仕方ない。
急いで脱ごうとするがべったりと体につきなかなか簡単に脱ぐことができない。

「あぁ”ァア!!!!」

苛立ちの声を上げるがなにも現実は変わりはしない。
しかしなんとかして脱ぐとそのTシャツを思いきり床に叩きつけた。
その瞬間今日の体の感触を思い出す。
急に頭はクラクラとしてまたもソファに倒れこむようになる。
すると見計らったかのように光也の部屋のインターフォンは鳴った。
それこそ出るのは嫌だったが本部等からの連絡や
送り物であると大変困るので光也は鉛のような体を起き上がらせて
玄関へと出ていくことにした。
そして玄関を開ける。


ーーーーー…………

「ぁの…………………光也先輩…………?」



か細く発した声の主に驚き、思わず光也は彼女を抱きしめた。







スミレだ。

110:大和:2012/07/13(金) 21:45 ID:ux2

「ぇぅっ!?」

予想外のことに大変驚いたのか、スミレは思わず間抜けな声を出してしまう。
しかし光也にはその声すら愛おしく感じてしまい、
スミレを抱きしめていた腕に力を込める。
会いたかった。
ただその純粋な気持ちをわかってほしくて。
なんの隠しもなく、なんの裏もなく…
ただ。
本当という白のキャンパスに初めて絵を描いたような…
ただの心で。
好きだよ。
喉の奥からでてしまいそうになるこの思いは
先ほども思い出したように汚い現実によってかき消されてしまう。
その感じがどうももどかしくて。
好きだと伝えたい言葉さえもだせない。
相変わらずどう対応していいのか分からずにいるスミレは
少顔を赤くしながらも抵抗せずに黙って光也の行為を受け止めてる。
光也は思った。
少しふくっとしたスミレの体をだきしめながら。

もう『好き』じゃ、とまらないかもしれない。
いつ…いつ『愛してる』に変わるかが怖い。

きっと愛してるに変わった時、欲望を抑えきれるだろうか。
愛してやまない彼女が目に居る前で。
光也の気持ちは「愛してる」に変わってしまった。
スミレの体を堪能した後、ゆっくりと体を離すと
光也は自らの指をスミレの唇に当ててなぞる。
流石にこの行為にはスミレも赤面してしまい、カチこちと固まった状態になってしまった。



光也は薄く目を閉じると自分の唇をスミレの唇に当てる。



「は…っ…ぅん…」


欲望が止まるなどという都合のいいことはなく、
そのまま舌も絡める。
まるで今までの隙間を埋めるかのように。
今までとどかなかった気持ちをスミレへ届けるように。
光也は押し当てた。
抑えることのできなくなった気持ち。
現実は偽りのくせに、気持ちは本当の。
居場所のなくなった…ー







この僕自身を。








貴女は、受け止めてくれますか?

111:大和:2012/07/15(日) 23:08 ID:ux2

「っ……光也せんぱー……ぅ…ん…」

息すらままならないほどに光也はスミレにキスをする。
逢いたくてたまらなくて。
会いたくて。
何を夢中になっているのか。
それすらわからないほどにキスをした。
一方的だったと思う。
けどそれでいい、伝わらないならそれで分からせるから。
他の誰でもない俺が君を幸せにする。
ありきたりだとわかってるよ?
いつのまにか愛してると変わった気持ち。
届きそうで届かないから余計に火は炎へと変わる。
可笑しいぐらいに嫉妬して喜んで。
生暖かい君の唇は俺の唇と一番相性がいい。
気持ちいいからいつまでもこうしていたい、
これ以上に進みたい。
君のすべてを僕に塗りつぶしたい。
過去に戻るぐらいなら君を追う未来へと進みたい。

「ハ…………はぁ…………好き…………」

嘆くようにそう呟いた光也はスミレの首へと顔をやり、肩に預ける。
玄関のドアへと両手をやりスミレの逃げ場を塞ぐ。
捕まえた。
俺の餌食を。
二人の口からは銀の糸がまだ繋いでおりやさしくまた唇へとキスをする。
すでに顔は真っ赤になっているスミレはされるがままの状態になっており、
光也はただ思いを行為に込めるだけだった。

112:大和:2012/07/16(月) 20:45 ID:ux2

ふとスミレの瞳から涙がこぼれる。
その涙にスミレは気づくと急いで涙を拭う。
そしてうつむいたまま光也へと語りかけた。

「こうやって。
 いつもこうして同じ女性を虜にしてるんですか、先輩は」

もしこれが軽く言った言葉だったとしても、
とっさに出てしまった言葉だとしても。
光也にはとても重く感じられそして突き刺さる。
目を見開きながらスミレを見つめる光也をよそにスミレはまだ話す。

「他の女性と肌を重ねても、このような行為をするのですか」
「誰かれかまわずとはいかずとも…………簡単にしてしまうのですか」

まて。
まて。




違う。





そう叫びたい。
君だけだと。
愛しているのは君だけ。
これから先どれだけ声が枯れてもいい。
嫌われてもいい。
でも、俺は君が好きで。

違う。

君以外なんて………………



誰が俺を受け止める?

「こうして。私もその一人ですか」





「違う!!!!!!」




唇と唇が触れ合うぐらいの距離で彼は叫んだ。
違う。

「スミレじゃないと………………君でないとこんなこと…………しない…ッ!!!」
「じゃあ何故茜さんと体を…………!!!!」

驚いた。
スミレの瞳には大粒の涙が溜まっており、今にも流しそうな……………
光也にはわからない。
どうしてそんなに必死になっているのか。
ムキになっているのか。

「あれは違う!!」
「なにが違うのです!?事実でしょう?」
「確かに事実であることには変わりはない!けど……………………違う」

「何が!?」
「あれは昴先輩からの任務だよ!」
「………………………」




…………………。






伝わらない。





伝わらない。






「……………………あなたはズルイ男性だ…………」

113:大和:2012/07/17(火) 22:02 ID:ux2

「ねぇ、スミレ……………聞いてよ?」

今まで見たことのない光也のとてつもなく悲しそうな顔。
腰をかがめて下からそっとスミレの顔を伺うようにそう聞いた光也。
怒っているはずなのに。
なのにあまりにも近いこの距離にスミレはついつい顔を赤らめてしまう。
どうしたらいいだろう。
怒りたいのに君が好きでたまらなくて。
わからない。
君がなにを考えているのか。

「聞きたくありません」
「ねぇ……聞いー…「聞きたくないです」

言おうとすると言葉を挟まれてしまう。
玄関にたたずむ二人。
シーンとしたこの玄関には夏特有の暑さなのか、
それとも二人の恋の熱さなのか。
スミレはうつむいたままただ反論を続ける。

わかってるよ。
無理だって。
でも…………………君のそんな赤らめた顔を見たら…
諦めがつかなくなる。
またどこかで期待をする。
その後の絶望がどれほどのものかわかってるのに。
それでも構わずに君へ愛を捧げる。
可愛いなぁ。


「俺はスミレが好きだよ。
 ………………信じてもらえなくていい。
スミレが持っている誤解さえ解ければ」
「…………!?……………………………わ……わた……………

私を…………光也先輩が好き?……………ぇ…………嘘……………」
「嘘じゃない」

相当光也が言ったことがびっくりしたのか半信半疑といった様子で
光也の言うことを聞く。
信じられないという感じで。
それでも光也は真剣に本当と答える。

「ぇ……………や…………………」
「や?嫌なの?それはそれで傷つくけど…」
「ぅあ!?…違くて!!!ぁあぁわ……と、とにかく今日は失礼させてもらーーー」


トン。



そう言って玄関のドアノブに手をかけたスミレを光也は優しく抱きしめる。
そうして耳元で囁く。


「今日はどこにも行かせない……………」

114:大和:2012/07/18(水) 22:09 ID:ux2

「えと…光也先輩?」
「だめ、光也って呼んでよ」

スミレを抱きしめたまま光也は耳元で囁く。
耳が弱いと知っていながらもわざと感じるように。

「それよりさぁ…スミレの俺が好きっていうことに対しての応えはないの?」

ゆっくりと赤い顔を見せながらこちらを振り向くスミレ。
まっすぐに光也を見つめる瞳は怖いぐらいに綺麗だった…
すぐに応えをださなければいけないこともわかっている。
早く応えないといけないことも。
けれど、二人が肌を重ねたその日、スミレは偶然に見てしまった。
二人が肌を重ねているとこを。
すぐに立ち去ろうと思った。
けれど瞳と体が言うことをきかなくなりその場からはなれることはできない。
ダメだと知っていたのに。
だから怖い。
いつどこで自分を裏切られるか。
自分に満足しなくなった光也はいつ自分を手放すのか。
ちょっとした変化ですぐに嫉妬してしまいそうな自分に嫌気がさし、



捨てられるのか。




一方の光也もわかっていた。
あの場を見られていたことも。
スミレがすぐに応えをだせない理由も。
でも、たまらないくらい好き。
依存症かと思うくらいに一緒にいないとすまない。
その反応が可愛い。
嫌いというとものすごく悲しそうな顔をして。
好きというと困った顔をする。

ここまでどうしようもない子はいないだろうよ。



ずっとそう思ってきた。



けど、いつからかー…

115:大和:2012/07/19(木) 20:38 ID:Xdo

いつからか、「もっと」という感情が生まれた。
もっと一緒にいたい。
もっと………………………
いわゆる束縛で。
そんなこと、自分のためにも、ましてや相手を傷つけることだともわかってる。
けれど君が他の男と話していると思ってしまう。

君は今その男と話している時間を俺には費やしてはくれないのか。

そんなことを思いながらも自分はおかしいことに他の女と話す。
もちろん気があう子もいれば合わない子もいる。
それは人それぞれかもしれないけど、本当に心から楽しいと思うことはあまりない。
本気の心…………………というよりは……
心を許せない。
癒やされない。
だからずっと欲しかった……………
全てを預けられる人が。
安心を与えてくれる人が。
とても求めたかった。
求めたくて、なのにいなくて。
そんな日々に君が現れる。
始めはコワカッタ。
この人に捨てられた時、自分は絶望から立ち上がれるのか。

無理だろう。

だから、だからどうかーーー


「離れないで欲しい………ずっと……
          一緒にいたい……………」


たまらなく愛おしそうな顔をして溜め息をつきながら囁く。
その甘い甘い声で。
優しくスミレを抱きしめる腕はしっかりとスミレを捕まえて、
二度と離すまいと彼女を自分自身で束縛する

もうどこにもいかせない。


君が泣いてもいい。



そんな……………そこまで我が儘は言わないよ。
ただ、そばに……居てほしい。
欲しい。

116:大和:2012/07/19(木) 20:38 ID:Xdo

いつからか、「もっと」という感情が生まれた。
もっと一緒にいたい。
もっと………………………
いわゆる束縛で。
そんなこと、自分のためにも、ましてや相手を傷つけることだともわかってる。
けれど君が他の男と話していると思ってしまう。

君は今その男と話している時間を俺には費やしてはくれないのか。

そんなことを思いながらも自分はおかしいことに他の女と話す。
もちろん気があう子もいれば合わない子もいる。
それは人それぞれかもしれないけど、本当に心から楽しいと思うことはあまりない。
本気の心…………………というよりは……
心を許せない。
癒やされない。
だからずっと欲しかった……………
全てを預けられる人が。
安心を与えてくれる人が。
とても求めたかった。
求めたくて、なのにいなくて。
そんな日々に君が現れる。
始めはコワカッタ。
この人に捨てられた時、自分は絶望から立ち上がれるのか。

無理だろう。

だから、だからどうかーーー


「離れないで欲しい………ずっと……
          一緒にいたい……………」


たまらなく愛おしそうな顔をして溜め息をつきながら囁く。
その甘い甘い声で。
優しくスミレを抱きしめる腕はしっかりとスミレを捕まえて、
二度と離すまいと彼女を自分自身で束縛する

もうどこにもいかせない。


君が泣いてもいい。



そんな……………そこまで我が儘は言わないよ。
ただ、そばに……居てほしい。
欲しい。

117:大和:2012/07/21(土) 22:30 ID:Xdo

全力で君を守るから。
いくら自分が傷ついても構わない

永遠の愛を知らない光也は子供のようにあがいて、
どうすればいいかわからないこの感情にぶっかっていた。
真っ暗闇に染まっている夜はとても星が綺麗。

優しくて。
眩しくて。

結局弱いのは自分じゃないかと。

そう思わせるこの宇宙はこの永遠の愛と同じように、永遠に続いていた。
インテリアに包まれ、フローラルな匂いが漂う。
薄暗くされたその部屋は色気を感じさせるような部屋。
その部屋の奥には大きなグランドピアノが置いてあり、
それはたまに光也がひくためのものである。
自分の知らないスミレはどんなだろう。
それが知りたくなってたまらなかった。
君の幸せになることをしたい
そう何度も思った。
しかしいつも思うだけで、なにもできない。
繊細に響く君の声。

「………か………本当に、ですか……?」
「うん。本当だよ。……………俺は本当にスミレと一緒にいたい」

初めて気持ちが通った気がして。
初めて溢れる思いを受けとめられた気がして。
実際はそうでなかったかもしれない…………
自分のどこかで抱いていた夢。
それは何でも得られることのない永の愛だろう。
偽りばかりの生活をしてきたこの日々で一番に欲しかった。

「いいよ。ゆっくり考えるといい……」

本当は今にも返事がほしい。
そう思いながら光也はそっと優しくスミレを離す。
物凄く穏やかな微笑みを見せて。
少し縮こまり気味のスミレの体は暖かい温もりから解放されてなのか、
もう時間が時間だからなのか。
床に崩れ落ちた。

118:大和:2012/07/22(日) 22:25 ID:Xdo

暗い闇の中に眩しい光がさす。
空の色はみずみずしい青が広がる。
雲一つないこの空はまさに晴天と言える天気だった。
網戸の窓からはふわりと風が入り、カーテンを優しく揺らす。
それと同時に太陽のまぶしい光も同じく差し込んで、彼女の瞼を照らす。
長く伸びたその髪はベットに広がって、風が入るたびさわさわとした。
汚れのないその美しい顔は何の色ももたらさないような
無色という表情をして、なにもしらない純白の。
気持ちよさそうにすぅすぅと寝息をたてていた。

するとそこに彼女のことを気づかってなのか静かにスリッパの音がだんだんと近づく。
いつもとは雰囲気が違い、眼鏡をかけていてゆったりとした服装。
しかし驚くほどの整った顔立ちは優しい微笑みを絶やしていた。
そっと寝ている彼女に近づくと彼女の頬を撫でた。
すると彼女は少し身動きをする。
その反応が可愛かったのか頭を撫でてあげるとまた先程と同じように、
気持ちよさそうに寝息をたてた。

「ふふ、でもね、そろそろおはようの時間かな?」

そう耳元で囁くと彼女は恥ずかしそうに違う方を向き、
また眠りにつこうとする。
しかし時計の針は10を指しており、流石にもうそろそろ起きてもいい時間だ。
このまま寝かせてあげるのも彼の本願だが、
ずっと寝かせたままというのもつまらないので彼はおこすことにした。

「おはよう、スミレ」

彼女の名前に口にして囁くと驚いたように彼女はハッと目を覚ました。

「え……………えっ!?」
「ん?どうしたの?」
「あああああ、あの……ま、まさか私……私…………」

ベットには彼女が座っておりベットの隣には彼が立っている。
彼女の顔はなぜかみるみる赤くなりうつむいてしまう。
いきなりの出来事に彼はどうしたものかと思うが少しそっと声をかける。

「どうしたの?」
「わ、私……そ、その、、、、一夜を過ごしたとかないですよね?」






「さぁ、それはどうだろうね?」



彼は不適に笑う。

119:大和:2012/07/24(火) 22:13 ID:Xdo

「………ぁ…………ぁあ……!!……す、すみません……私ッ」

先程と赤さとは比べものにならないぐらい顔はもっと赤くなり、瞳には涙が溜まる。
一瞬その涙を見たとき光也は一生の焦りを感じたが、
きっとこれは「悲しみの涙」ではないと思い謝ることをやめる。
もし。
もしも君の涙が悲しいものなら。
もしも君が孤独になることがあるのなら。
それなら……………
それなら俺はなにをしてあげられるだろう。
君の涙を止めるために君のために何ができるだろう。

青年は頬を赤く染めてうつむく彼女に優しく微笑んで彼女の頭を撫でる。
きっと今彼女が瞳に溜めている涙は悲しい涙じゃない。
そうどこからくる自信なのかもわからないまま青年はなぜか確信がもてた。
体操座りに座っている彼女は青年にとってはとても大事な存在となっている。
とても、とても。



命をかけてもいい。
君が幸せでいれるのならもういい。
それで終わりで。
この癒やしはとてつもないもので…………
浸透していく。
体の奥底まで………………
俺を満たしてくれる。
眠くなって……
朝日が俺達を差してくれて。








「光也先輩……………………私、答えてませんでした。
…………………昨日の返事のこと」




大きく心臓は脈打つ。
ドク
一拍一拍確実に。



「……………え…………………」

120:大和:2012/07/25(水) 22:27 ID:Xdo

「いや、別に今答えなくてもいいよ?」

青年の心拍数は徐々に上がっていき、ついには聞こえてしまうのではないかと
思うほどに大きな音を奏でていた。
頭はよく回転しなくなって少々パニック冗談に。
笑顔を取り繕ってはいるが内心焦っているのがわかる。
行動や言動も少ししどろもどろとしてくる。
知っている。
本当は光と絶望にわかれていること。
その答えが怖いこと。
自分が期待をもっていること。
このなにひとつとして安心することのない気持ちはなんとも
もどかしくて仕方がない。

「でも…………ちゃんと答えはでました」
「そ……っか………そうだね…じゃぁ…………」

声は震える。
らしくないと思いながらも焦りが消えることはなく、
むしろ募っていくばかり……



「……………………ごめん………………」



「………え………………………………」





目の前はモノクロ世界。
なにも色などついていない。
ただの画面。

嗚呼。



震えが止まらない。

121:そよかぜ ◆Ujv6:2012/07/25(水) 23:05 ID:S0o

すいません、大和さんの小説に惚れました。
その文才をオレに下さ(殴

122:大和:2012/07/26(木) 20:31 ID:Xdo

あはは〜〜
ありがとうございます〜!!
文才などみじんもありません………………
むしろ欲しいです。
欲しいですよ、ほんとに。((真顔w

123:大和:2012/07/26(木) 20:53 ID:Xdo

そんなとき、ふいにカタカタとリビングのまた奥のほうから音がするのが聞こえた。
誰もいないはずのリビングのほうから音など聞こえてくるはずがないのに。
しかし神経はやはりスミレの答えのほうにいってしまい、
どうにもその音の正体を仕留めることができない。
なにせスミレの答えで光也の大部分………
いや、人生が変わってしまうと言っても過言ではないのだから。
たがいつまで経っても忍びよるようなカタカタという音は止まなく、
むしろその音は徐々に大きさを増していった。
流石にそのことに神経を揺らがせた光也はリビングの方向へと敵対心を向ける。

「ごめん、スミレ…………ちょっと…待って?」
「ほぇ?…………あの、でもちゃんと答えてから……」
「………さっきのごめん、は「怖くて聞けないや」のごめん。
で、今のごめん……は…ちょっとヤバイから中断のごめん、ね?」

そう優しく言うとスミレはよく理解もしないまま
とりあえずうん、と頷いておき大人しくしていることにした。
すると次はスミレの神経さえも動かすカタカタという音がした。
忘れてはいないだろうか?
スミレはこの頃からもうすでに秘密警察一番隊副隊長となっていた。
それに対して光也は時期総長候補。




光也は静かに言った。




「今すぐ去るか、それとも逝くか……好きなほうを選べると思うな」



ゆっくりと光也は立ち上がり鉄製のアタツシュケースに手を伸ばすと
その中から銃を取りだし弾を入れる。

「こういうの…………使いたくないけど手っ取り早いからこれにするよ」

独り言のようにそう呟くと誰もいるはずのないドアに向かって銃を向ける。
黙ってその姿を見つめるスミレ。
そこに銃声が響くが気に留めるものは多くとしていないだろう。

なにせこれが日常だから。

普通だから。


赤を見るのは日常で。
血があるのはいつもで。
死体など苦痛にもならなくて。





ただ知りたいのは純粋な心で。
君の気持ちで。

124:そよかぜ ◆Ujv6:2012/07/26(木) 20:57 ID:S0o

いやいや、オレなんて文才ないですから。
赤ちゃんの頃母さんのお腹の中に忘れてきました。

125:大和:2012/07/26(木) 21:02 ID:Xdo

忘れていたんですかwww
そりゃ取りにいかねば〜
僕なんか元からないです。
恵んで〜…………

126:そよかぜ ◆Ujv6:2012/07/26(木) 21:45 ID:S0o

でも、後から妹が産まれたんで、妹に持っていかれました。

127:大工 ◆AUoo:2012/07/27(金) 00:07 ID:d3I

宣伝スレご利用ありがとうございました

ええええええええ?
クオリティーハンパ無いじゃないですか!!
色んなジャンルを使い分けて入れれるのがすごいです!!
それに比べて私のは.......オワタwww

引き続きよませていただきます(tkもう読んでるww)

128:大和:2012/07/29(日) 18:44 ID:Xdo

あらら…………
>>そよかぜさん

オワてないです。
全然いいと思いますよ〜?
どもです
>>大工さん

129:大和:2012/07/29(日) 18:56 ID:Xdo

「ごめん、スミレ……………今すぐ処理を呼ぶよ……」
「い、いえ…………これぐらいなら私が……!!」
「いい。……………
  それより、さっきの続き…………」

後方に死体があるのにも関わらず光也は甘い声と顔をして
ゆっくりとスミレに近づく。
キスをしてしまいそうなくらいの唇の近さ。
見つめあわさるおえない瞳の近さ。
全部が全部熱くてしかたない。
吐息、感じ、気持ち。



「ねぇ、言って?俺のこと好き??」



「………ぁ…………………ぅ………」



「好き?」



「好き……………………」



スミレの声はか細く。
しかし唇を動かすと同時に光也の唇に塞がれる。


甘い。




後ろに死体はある。





憂綺麗。

130:大和:2012/07/31(火) 20:02 ID:Xdo

「ん……………………」

キスをしながらゆっくりと光也はスミレの髪をすいていく。
その時光也は静かに思う。
ここに君がいてくれてありがとう。
ここに君という存在があってありがとう。
ありがとう。
生まれてきてくれて……………。
これ以上の幸せなどないだろう。
あたりまえだと思ったその時から君への幸せは薄れる。
あたりまえのものを当たり前と思わない……
その心は大事だとは思う。
けれど実際そんなことは思えないのだ
当たり前のものが当たり前にリアルにあるとき。
それを大事には思えない。
しかしいつか大事には思える。
いつか、だと?
…………………………いつか。

いつだろうか。


失ったとき。



失った時こそ初めてわかる。
今まで大事なものだったからこそ。
それが当たり前だったからこそ。
失ったとたんに急にその大事さを身をもって知ることになる。

だから。
そういう経験をしたことのある光也だから。
もうこれ以上とない幸せを知ることができた。
ただ抱きしめあうことに意味をもたらさなかった前。
今、光也には大きな意味をもたらした。

「ありがとう、スミレ…………」



君に感謝を称えよう。

131:大和:2012/08/01(水) 20:56 ID:Xdo

「………ありがとう……!!」

抱きしめる光也の声は震える。

今まで幾度とない夜を過ごして、
今まで幾度とない朝を過ごして………
今すぐ君に逢いたいとどれだけ思ったことか。
ただ。
ただ好きで。
ただ愛していて。
空を宇宙を見ればいつも淋しい気持ちになって。
なにかの温もりに包まれたくて。
ただ本当に心から許しあえる人に。
本当に愛している君に。
逢いたくて。
それのなにがいけないのかがわからなくて。
安心して眠れる時など永遠にこない毎日に嫌気がさす。
だから好きな人を思い浮かべては気持ち悪いながらも妄想する。
君が自分を好きで。
二人で愛しあっていて。
それで眠る時側に温もりがある。
安心できる。
なにもかもを忘れられる。
今まではそれに浸っているだけでよかった。
けれどそれじゃ我慢できなくなって。
もうそれじゃ恐怖から逃れることができなくなって。
時が進むのが怖くなって。

君と過ごしてみたい。
少し物足りないないぐらいの夏風が網戸から入ってくる夕方。
暑くて思わず煩いと言ってしまう蝉の声。
いまでも太陽が沈んでほしくないとふいに思ってしまう夜も。
何故にか涙を流してしまうほど綺麗な満月も。
この夏を………春も、秋も、冬も。
君でいい。

「こちらこそ……ありがとうございます!!」
「ははっ…………逢えてよかった……」

彼等は笑い会う。
あの時の彼等のように。
幸せに包まれる。
また一つの電子音は鳴る。

悪魔の電子音。
闇の電子音が。




こんな可愛く終わるほど彼等の恋愛が上手く、甘く、いくと思うか?
どこぞの少女漫画じゃない。
馬鹿が。
この程度の終劇などスリルがない。
嗚呼、悪魔は追う。
彼を。




誰かは不敵に微笑む。





「さぁ、笑わせるなよ。
           なぁ光也」

132:大和:2012/08/02(木) 21:01 ID:Xdo

っていうわけで終わり。

あはは、みんな
「は?どこが終わりなの?イヤイヤ、最後の余韻なに?」
みたいだと思いますが………………
終わりです。
んと一応ね。
これの続きというか…………第二幕のようなものはまた次に。
そんでもって次は思いっきり警察でいきます。
この話、ほぼ恋愛だったので…………
次のやつはほぼ警察で。
まぁ多少は恋愛入るけどほぼ入れないつもりでいきます。

それが終わったらなにしよーかなぁ……
小説掲示板引退とか?

とまぁ僕がいなくなってもほぼというか全く変わりはないので…………
まぁどうにかします。


皆様ここまで人気0の僕を小説掲示板においてくださりありがとうございました!!!

だからといって今はまだ大丈夫です。
この小説がきちんと終わってからとなりますので………………

ではまたお会いしましょー

133:大和:2012/08/02(木) 21:24 ID:Xdo

長い髪の伸びた彼女。
暗い真夏の夜中にベッドの上で座る。
下にある携帯に目を向けながら無表情のまは見つめた。
満月の光で彼女のベッドは照らされる。
そこにふわりと風は入る。
一度窓辺を振り返るがまた携帯へと目はいく。

{受信ボックス}

そう表示された所を押すと一つの名前がズラリと並ぶ。
その並名前以外は映っていない。
一つ一つ名前を押していくと愛の言葉がそこにはかかれていた。
すぐそばにかかれている時間には今から数秒前のメールも。
そして彼女はこのようなメールを送った。

{• • • ごめん。
  • • •本気で好きになった}

するとすぐに返事は帰ってくる。

{これが運命だから}

{ • • そういうので終わらせるの?}

{違う}

{じゃあなに?}

{もう関係は断ち切る。これ以上は無駄だ}

{本当に?}

{嗚呼}

{じゃあ、最後くらい体合わせて}

{なんで?}

{最後だから}

{はぁ • • }

{いい?}

{最後だからいいよ}

{なら今から来て}

{わかった}

そこで彼女達のメールは途切れる。
彼女は携帯の電源を切ると何故にか自分から服を脱ぎだした。
そして全裸へとなるとベッドの隅へと服を投げすてる。



{仕事の遂行は終わった}



その言葉がしみる。

134:エリカ iop:2012/08/03(金) 11:30 ID:ups

大和さん
エリカです!
読んでてすごく面白かったですよ
点数は・・・98点です
これからも頑張ってください!

135:大和:2012/08/04(土) 08:51 ID:Xdo

ありがとうございます〜

そう言っていただけると励みになります……

136:大和:2012/08/04(土) 21:01 ID:Xdo

わかってる。
もう仕事は終えたのだと。
それでもー…



彼女達は肌を重ねる。
二度目の。

綺麗すぎな夜には見合わないほど汚れた彼女達。

そして似合わないこのぐちゃぐちゃな関係。


いっそ真っ白でよかったの。


なのに。



この世界にプロローグという言葉があって

いつかを見れることがあったなら。


幸せであったと思う。


愛しい人など……



いなければよかった。

137:大和:2012/08/04(土) 21:51 ID:Xdo

ーー照りつける太陽の元、5列に渡って並んだ男女。
そこには今までに見慣れた顔が。
その5列に渡る前に10人の人影。
1列目の人達はその10人を目の前にして少し怯えているようにも見える。

「只今から秘密警察隊員選抜を行う。」

そう声を張り詰めたのは前に並ぶ10人の一人。
小さくとても小柄だが、その声はとても迫力のあるもので、
聞いた瞬間皆の緊張は高まる。

「1、幹部員紹介。
  幹部員は一人一人名前を告げて下さい」

そう先程と同じ……少年が言うと一番端にいる少女から名前を告げていく。
聞いたことがあるだろうか、この名前を。

「一番隊長、素迷桜」
「二番隊長、藍染寿」
「三番隊長、凍江藜」
「四番隊長、向日葵紅葉」
「五番隊長、凛音雅」
「六番隊長、響如黒」
「七番隊長、壬狼兎」
「八番隊長、壬狼狐」
「九番隊長、恋琴波」
「十番隊長、仇緋我愁」


「………総長、白夜昴」

10人の幹部員が名前を告げた後で、皆の後ろから自らの名前を言う人物。
白夜昴。
総長。
総長とは思えないほどの若さに一度は唖然とした。

138:大和:2012/08/06(月) 22:08 ID:Xdo

だが声を出す者はいなく、そこにいる幹部員達がクスクスと笑う。
そしてそのまま事態は進められた。

「……2、試験発表」
「さて………この試験は貴方達が卒業するための、
そして…秘密警察へと入るための試験となります。
万が一にでも、手を抜いた生徒は即刻退場となりますのでご了承を。
試験詳細については先程話た通りです。」

一通りの説明が終わるとそこで幹部員達はいきなり試験生徒に対して

銃を向けた。

「もしもやる気も…………もちろん殺る気も。
ないんなら……この銃で死ねる覚悟すらないのなら………………
秘密警察なんざ入る必要性もねェよ」

豹変した声と顔で昴は試験生徒へと脅s………いや宣戦布告をする。
だが本当なのだ。
これぐらいの覚悟がなければ。
人を殺すことに恐怖を覚え。
人の死体に恐れと情けを為す。
それならばいなくていい。
心を無にできぬのなら。
いい。
いらない。
存在がなくていい。
在らなくていい。

「只今から、試験生徒による卒業試験を行う!!!!」

赤旗は上がる。
挙がる。

139:大和:2012/08/07(火) 20:11 ID:Xdo

今回用意された秘密警察試験。
いわゆる卒業試験とやらは簡単に言うと、
現在における秘密警察隊員と戦うという形になる。
流石に幹部員とは戦わないが、その下につく隊員等と戦うことに。
場所はこれから生徒達が使うであろう秘密警察本部の敷地内。
あまりにも広いその敷地内でのバトルとなった。
これは決してチームプレイを競うものではない。
あくまで個人競技。
なので一人一人に与えられたカードには一人の人の特徴が書いてある。
それを元にとても多くいる隊員の中から一人を選び掴まえる。
しかし見つけただけで捕まえられなければそこで終わりだ。
捕まえてこその終わり。
でないと警察の意味がない。
見つけるだけなら普通に誰でもできる。
しかし捕まえるというのは身体を鍛え、備えたものにしかできないこと。
結局はそれをしてほしいのだ。
人を守る力を。

140:薫 ◆0rlM:2012/08/07(火) 20:16 ID:snE

こんにちは!

一時的に規制解除らしいのです♪

相変わらず文才が…

分けてくださいよ←


頑張って下さい!

141:大和:2012/08/08(水) 13:28 ID:Xdo

おおお!!
久しぶりです〜〜!!!
まだ完璧な解除はされてないのですね……………

ていうか!薫さんのがあるでしょ!!!!

とりまがんばります!!

薫さんも頑張って下さい!!
そして余裕あれば難民のほうの小説も更新しまふ……

142:大和:2012/08/08(水) 13:48 ID:Xdo

そしてどれだけ早く、素早く捕まえることができるか。
なるべく銃を使わず武道だけで手錠をかけることができるか。

しかしこれはまだ第一次試験でしかない。
二次試験、三次試験となってくるとレベルは難しくなってくる。
まず一次試験ではなによりも大事な肉体的なこと。
その次からは精神的なことからの試験となった。

秘密警察ということもあり死体を見ることは愚か、
体内のモノなどといったグロテスクなものを見てそれを取り、
採集、または顕微鏡にかけたりなどして犯人を見つけることもある。
なのでそのような状況下にいる中どれだけ普通を保てるか。
そしてどれだけそれを普通と受け止められるか。
精神的な問題は多くなってくる。

特に研究チーム、医療チームなどは精神的面ではかなりキツイ仕事となるだろう。
それに加えて死体処理管は肉体的にも精神的にも危ない。
だが死体処理管は幹部員が行うことになっているのでまだいいが…………
その幹部員こその肉体、精神。
それは並を超えている。
もう己をなくしているのか。
それとも己を信じきっているのか。
どちらにしろ、殺し、死体を見、解体する。
だから紅など、血など。
見慣れ。普通。
それで片付けるのだ。

「まぁ一次試験はだーいたいみんな残るよねぇ……ねぇ桜ちゃん?」
「あ、紅葉さん………確かに…
そう…ですね〜……問題は二次試験?」
「うんうん。秘密警察は採用する人数は決まってないから合格する確率は高い」
「ーー…はずなのに………なぜか合格率は10%」
「みんな精神的に弱いからねぇ〜……」
「………………紅葉さんは異常なんですよ……」
「なんで??」
「だって………昴を越して、精神面一位になったのあなたでしょう?」
「………………昴を越して…………まぁ確かにそうだね〜
昴は二位だったけど対して差なんてなかったよ」
「へぇ……………………

まぁ。

今年の皆さんにも頑張ってもらいましょっか……」

143:大和:2012/08/08(水) 14:30 ID:Xdo

なんか………妹が
「夏祭り的な話やりたい」
とかほざきだして……ですね。
まぁお分かりのとおりすることになりました。
本編が途中なのにも関わらず。
はい、すみません。

たぶん………………甘々…だろうな……。

がんばって短編にします。

144:薫 ◆0rlM:2012/08/08(水) 16:13 ID:snE

あれ?w
大和くんてあたしのこと薫さんって言ってたっけ?w

大和くんの方がかなり年上なんですから
呼び捨てでいいんですよ(・∀・)

夏祭り…見たいです♪w

145:大和:2012/08/08(水) 18:35 ID:Xdo

自分でも呼んでて違和感感じました……
そうそう、呼びすてでしたよね〜!!!

がーんばりまーす……

146:薫 ◆0rlM:2012/08/08(水) 19:11 ID:snE

ちょ、ええ…

忘れちゃった?w

147:大和:2012/08/08(水) 19:49 ID:Xdo

あー!!!!!!!!
せっかくかなり長く書いたのに消えたぁあいあああああああ!!!!!!!
すげぇイラつくくくくくくくく

148:薫 ◆0rlM:2012/08/08(水) 19:59 ID:snE

せせせせ、性格が変わってますよぉぉ

怖い怖い怖いw

149:大和:2012/08/08(水) 20:11 ID:Xdo

意味わかんねぇえええええ!!!!!!
んだよ「長ッ」って!!!
また書いたのにさぁ!!!!
ふざけてんじゃねぇよ!!!!!!!!!
あーもー殺したい殺人したい。
キャラ殺してぇ。
ザクザクに切り刻んでやりたい。
なんなの!?書きこむなって!?
うぜぇよ!!!!!!!!

すげぇイライラくる!!!!!!

150:薫 ◆0rlM:2012/08/08(水) 20:18 ID:snE

怖いです怖いです怖いです怖いです

戻ってー(´;ω;` )

151:大和:2012/08/08(水) 20:23 ID:Xdo

だってー……………………
あーもう今日は更新する気さらさらない。
もう無理だね。

152:薫 ◆0rlM:2012/08/08(水) 20:25 ID:snE

そっかー(´;ω;` )

いつでもいいので更新待ってます(`・ω・´ )

153:大和:2012/08/08(水) 20:33 ID:Xdo

うん。明日あたりがんばる〜…

154:薫 ◆0rlM:2012/08/08(水) 20:37 ID:snE

了解です(`・ω・´ )ゞ

頑張って下さい♪

155:大和:2012/08/09(木) 10:39 ID:Xdo

番外編〜夏祭り〜

事の発端と言えば、確かあの二人であって…
決して自分ではないと思いながらも、
綺麗な光や屋台を纏ったその道を歩いた。
――――――
――――

バタバタバタッ!

「ねぇねぇ、見てみて〜!」
「これ、いいでしょ?」

そう嬉しそうに走ってきたのは兎と狐。
幹部員専用バーにて雑談やなにやらとしていた幹部達は、
兎と狐の言うことだ、たいしたことではないだろうと思い、
普通に雑談をいつものように続けようと思ったが、
今日の狐と兎は一味違った。
なぜなら、二人の姿はというと和風の甚平を着ていたから。
流石にその姿には幹部達も釘づけ。

「おおぉぉ!すげぇ!」
「なになに、それどうしたの?」

思わずみんなで集まってしまう。

156:大和:2012/08/09(木) 10:51 ID:Xdo

彼等にとって甚平とはとても新鮮なもので。
兎と狐も髪をピンで止めたりなどして楽しんでいる。

秘密警察養成所に居る時から外へ行くのは控えられ、
秘密警察本部に入ってからというもの、
幹部という立場もあり、
外へ遊びに行ったり、外出したりなどは
仕事もかなり忙しい彼等のとっては行く気力すらなくさせた。

それに多くのものと戦っている状況下で
恨みを買われる事も多く、ますます外出というのをしなくなった。

中にいてつらくないのか?という疑問が上がると思うが、
それこそ精神を鍛えるためでもあり、
なによりもここ秘密警察本部は広く、
幹部達でもまだ行ってないところがあるほどだ。

そんな中で今まで暮らしてきたため、
外のものはとても新鮮に感じられる。

「これからね、お祭りに行くんだぁ」
「ふふふ、楽しみだなぁ」

満面の笑みを抱えながら楽しそうに話をする二人に、
ついに幹部達の抑えていたものは溢れだした。

157:大和:2012/08/09(木) 11:06 ID:Xdo

「いいなぁ!」
「俺も行きてぇ!」
「行こうよ!」

本当に久しぶりの外なので、喜びの声が上がる。
そして、そこには似合わない冷たい声が響いた。

「俺達がここを出て行ったら誰がここを守る?
  いつ何時でも、危険な状況にいることを忘れるな」

昴だった。
しかし昴の言ってることが最もすぎて…
反論の声はあがらない。
確かに、幹部達が出て行ってしまえば、
この秘密警察本部を守れる者はいなくなってしまう。
たまたま敵が来たら。
それがひとりならまだしも、大人数で来られたら手も足もでないであろう。
だからこそ昴は適格な答えをだした。

すると幹部達は一斉に静まりかえり、同意の声を出す。

「そうだよなぁ〜」
「俺達が外へ行ける時なんてねぇよ」

みんな作り笑いをして溜息をつく。
するとまた同じ声が響いた。

「馬鹿かオマエ等。嘘だよ、行ってこいって」

またも昴が言った。

158:大和:2012/08/09(木) 11:25 ID:Xdo

「は……」

昴の近くにいた寿は唖然とした。
まさか昴がそんなことを言うとも思わなくて。

「いや、でも…ここどうすんの?」

先ほど言ったことは本当に気にかけなくてはならないことだから。
ここを出て行ってしまえば、危険が招じる。

「え?あぁ、俺いるよ」
「それはダメだろ」

眼鏡をかけながら、外国の新聞を読み続ける昴。
いつも人の倍我慢をしている昴だから…
これ以上の我慢を彼に重ねると思うと、、
もどかしくて。

「それなら俺が―…」
「いいって。行ってきな?」
「……ありがとう。昴。
  あ、でもなんかあったら言ってよ?」
「りょーかぁい」

そう言うと幹部達はすごく嬉しそうにして本部を出て行く。

「やったぁぁっぁ!」
「祭りだぁぁぁぁぁ!」

159:薫 ◆0rlM:2012/08/09(木) 11:48 ID:snE

えー
昴さん行かないんですか…(´・з・`)

続き楽しみにしてます〜

160:大和:2012/08/09(木) 12:16 ID:Xdo

まぁ昴くんもいろいろあるからね〜〜

161:大和:2012/08/09(木) 12:43 ID:Xdo

「ふぅ…」

一人になると疲れの溜息なのか。
なんの溜息なのか。
眼鏡をかけたまま、また外国の新聞を読む。
すると、ポンと両肩に手を置かれた。
なにかと思って後ろを振り返ると、
そこには愛しい人の顔が。

「桜……」

嬉しいのか驚きなのか…
さっきみんなと一緒にいた桜は
てっきりお祭りに行っていたものだと思っていた昴。

「お祭り……なんで?」
「だって…昴が行かないのに、私が行くわけないよ」
「馬鹿。そういうのはいいの。行ってきなって!」

桜にまで我慢させることはないと、昴は思うが
桜は違った。

「確かに…みんなといても楽しいよ。
 でも…やっぱり一番は昴と一緒がいい……」

そう、赤くなる顔で言った。
そんな彼女が、桜が。
やはり愛しくて。

「ありがとう、桜。
 じゃぁ……
   
   今日はいっぱいイチャイチャできるね」


そう微笑んだ昴は怖すぎるぐらい爽やかで。
とにかくSの笑みだった。

162:うにゃ ◆4AUw:2012/08/09(木) 19:05 ID:3PY

いや正直マジ言うところないんですけど。
完璧すぎてツッコむ場所がないんですけど・・・!!

あ、最後に唯一俺が言えること
キャラが多いがために、キャラそれぞれの個性が目立ちません。
口調の違いなどをもう少しだけ頑張ってみてください。

それだけです。
恐れ多くて本当すんません。
ちょ、そこに土下座しておきますm(_ _)m

163:大和:2012/08/09(木) 19:56 ID:Xdo

ああああああ。
そうなんですよ……………………
それを今ッ………あ、でも大丈夫。僕の妹が無理やり変えるとかって言ってましたかr
まぁそこは妹に任せやす。

ありがとうございました!!

164:大和:2012/08/09(木) 20:15 ID:Xdo

「え……………いや。ちょっ、…」
「ん?なに?コッチおいで?」
「ぁ……やめようって……」
「な、ん、で?」

腰に手を回した昴に対して、
桜は危険を感じたのか制しの声をかける。
しかし昴がこの二人っきりという状況の中、桜を離すわけもなく。
なんなく自分の胸に桜を収めた。

「ちょッ………やめて下さいって…!!」
「あれ?なんでいきなりいつも口調?
二人っきりなんだから、二人の口調に戻せばいいのに……」

後ろから抱きしめた昴はそう桜の耳元で囁くと、
桜はか弱い声を出した。

「ぁぅ〜…………耳ッ!!耳ッ!!」
「弱いんだよね?耳。ふぅ〜………ど?」
「っァ………息!!」
「ははは…可愛いなぁ……もぅ…」

耳元で話しかけたり、耳に息を吹きかけたり…………
桜で楽しむ昴はどんなときの顔より………………
イキイキしていた。
そう、イキイキ。

「……………」
「あれ?どうした??」

黙ってしまう桜にやりすぎたものかと心配して声をかける。
桜の顔を伺うとそこには顔を赤くした桜が。

「そーんな可愛い顔してるとちゅぅしちゃうよ〜……」

165:大和:2012/08/10(金) 11:04 ID:Xdo

そんなラブラブな中煩いぐらいのドアの音が響いた。
勢いよく開けられたそのドアからは藜が………

「え……………藜?」

ちょっとこの雰囲気を壊されたことに残念さを感じる半面、
またも驚き半面。
時間はまだ少ししか経っていないはずなのだが……

「俺はもういいと思ってな…………もうのちに皆帰ってくるだー…ぅあ!?」

藜が静かにそう言った矢先、後ろから飛びつく人物。

「寿!!」

兎や狐、紅葉達の小柄な体格で抱きつくならまだしも……
寿となると慎重もそこそこ、体格もそこそこ……………
流石に………といったところだろう。

「オイオイ………なんで帰ってきてんの…」
「んー?次は昴と桜ちゃんで行ってきなよ〜」

166:薫 ◆0rlM:2012/08/10(金) 12:00 ID:FR.

うわ…

リア充爆発しr(((((殴


わーわーっ

桜ちゃんと昴さんのデート?(*'▽'*)

167:大和:2012/08/10(金) 12:56 ID:Xdo

ほんっと…………爆発しろぉぉおぉぉおおおお!!!!!!
ふぅ…………って感じですよねww

まぁ…………そんな感じかな?

168:大和:2012/08/10(金) 13:22 ID:Xdo

そしてこの今に至る……っと………。
そう昴は桜と手を繋ぎ、歩きながら思った。

「めずらしいものでいっぱい……」

目をキラキラさせながら屋台を見る桜を見ながら、
先程同様、何か欲しいのかと思い声をかけようとするが止める。
なぜならきさっきから二度とほど「欲しいのあった?」と何度か聞いているのだが……
桜の反応はというと、「ううん。見てるだけで楽しいよ!」
という。本当に欲のない子だと思いながら歩く。
まぶしいぐらいの光。
煩い人。
それでも心地よくなってしまうのはなぜだろうか。

「うわっ…………」

すると桜がふいに人に当たり、バランスを崩す。
昴は素早く桜の体を支える。

「大丈夫?」
「ぁ、…うん。ありがとう………」

そうは言ったものの、桜の足取りは先程とは少し違う。
その様子に可笑しいと思った昴は桜の足元を見てみると、
ヒールのサンダルを履いていた桜の足は赤い。

特にお祭りだからと言って着物を着ているわけでも、
下駄を履いてるわけでもないので靴づれするハズはないのだが……………

「桜、こっちおいで…………」

そう言って昴は桜の手引いた。

169:薫 ◆0rlM:2012/08/10(金) 15:57 ID:RSs

あははははは(^言^)

爆発してしまえ←

170:大和:2012/08/10(金) 22:16 ID:Xdo

桜の手を引いて着いた所はあまり人気の少ない所。
ブロックの上に桜を座らせると傍目から見ると
姫に膝つく王子のようだった。
そのまま昴は桜と足を取るとヒールのサンダルをゆっくり脱がせた。
桜はというと昴の行動に少々恥じらいを感じながらも、
その昴の行動をただ見つめるだけであった。

「………痛い…?」
「うん…ちょっとだけ……」

171:大和:2012/08/12(日) 08:37 ID:Xdo

「………………………」
「……ど、どうしたの?」

昴はそれだけ言うといきなり黙り始め、ただ桜の足を見つめる。
すると、昴は何も言わずに桜足を自分の口元へと持っていくと、
ゆっくりとその足をキスをする。
桜はその行動に驚き、思わず足を引っ込めてしまおうとするが、
それは許されない。

「ぁ…の…昴……」
「………?…ん?どうしたの…?」
「い、いいよ。もう……私は、これで…」
「どうしてーー」
「え?」

昴は言いかけた言葉を止める。
桜にこのようなことは言ってもいいのかどうか……
一瞬躊躇いを持ったものの、すぐに桜へとその言葉を向けた。

「どうして今までこれを黙っていたの!?」
「えっ……………」

いきなり怒鳴られたことに桜も流石に驚きを隠せず、唖然とする。
その気迫、迫力。
秘密警察の総長というのが伊達でないのがわかる。

「……ねぇ…どうして?」
「………だって…昴に迷惑とか…かけたくない」
「俺が桜の言動に迷惑なんて思うことはない……!!!」

それは絶対として言えること。
昴が桜を好きだとか愛しているだとか 
それは全て忠誠で成り立っているから。

172:大和:2012/08/13(月) 19:40 ID:Xdo

「………………よし!!」

昴は笑顔のままそう言うと桜をまた見つめなおした。
桜は見つめられたことにまたも躊躇するが、
しっかりとその瞳で昴を捉える。

「俺が姫様抱っこして帰る」
「はぇ!?ちょ………え…」

驚く桜を気にせず、昴は桜を軽々持ち上げる。

「ちょ、ダメダメ……だめだって!」

そんな桜の叫びも聞かずに昴は本部へと帰るのだった。

その後どうなったかはご想像にお任せしよう。

173:大和:2012/08/13(月) 19:57 ID:Xdo

はい。無理やり終わらせましたね。
すみませんした。

そんでもってこれから本編に戻ります。
>>142 >>141
あたりからの本編です。

174:大和:2012/08/14(火) 16:29 ID:Xdo

>>142からの続き。

「平均的に捕まえるまで約一時間前後といったところですね」
「へぇ、、そんなかかるんだ〜」
「だってあの大人数の隊員の中から一人を捕まえるんでする?」
「あ、そか。
 でもそー考えると割と難しいのかもね〜」
「どうなんでしょうね…」

桜と紅葉は立ちながらそんな話をするも、
二人はずっと遠くに行った試験生徒達を見ていた。
幹部にとっては何人残るか、という考えであり、
何人受かるか、という考えではない。
ーーするとまた桜は紅葉に話しかけた。

「このタイムは誰が一位だったんですか?」
「これ?これは……如黒あたりじゃない?」
「え?如黒さん?」
「うん。相手の特徴を見るの得意だからね」

二人は如黒のほうへと目線を向けると、
当人である如黒はいつもの調子でただ何も言わずに立っている。
普通の日常でも発する言葉は少なく、大体みんなの様子を伺っている。
身長も長身のため、怖がる人も多いが怒ることなどめったにない。

「……………どうした」

そう二人の方を見ずに言った如黒はそのままの視線のまま、続けた。

「何か気になるものでもあるのか…」
「…………びっくりしたぁ……」
「び、びっくりですね…」

どこまでの視野が見えるのかという疑問は後にして、
二人とも驚きというよりはとてつもなくビビっている様子だった。

175:大和:2012/08/16(木) 16:49 ID:Xdo

「四つの目に見られたらいくら嫌でもわかるだろう…」
「……四つの目?」
「うん。ほら、僕と桜ちゃんの目を合わせてよっつ♪」
「あ、あぁ………そういう…」

如黒が四つの目というものだからてっきり怪談話かと思った桜は
一瞬寒気を感じたものの、安心した気持ちと少し残念な気持ちが入り混ざっていた。
そんな桜の様子に異変を感じたのか、如黒は桜に話かけるーー

「どうした?」
「ぇっ!?……あ、なんでもないですよー?」

そう軽くごまかしてみる桜だったが、
その反応が更に如黒が異変に感じることとなり逆効果になってしまう。
特に隠すつもりもなかったが特に知られていいものでもないと思い桜は黙っているつもりだった…

「……明かに可笑しいだろ」
「……そうですかね?」
「ぁ、桜ちゃん、如黒へんなトコで頑固だから気をつけて〜」

そう他人事のように言う紅葉は
信じられないくらいの笑顔を浮かべてその場を去ろうとする。

「ちょっ、紅葉さん!!」
「ぐっばぁ〜い♪」
「桜」
「はぁいぃ!?」

桜の助けの声は愚か、スッと空に消えていくだけだった。
その変わり、如黒の名前を呼ぶ声が降り桜は恐れる。

「そ……そんなに恐れることか…」
「ぃ、いえッ!!あっはは〜」
「何故笑う?」
「ぁ、すみません…」

そう慌てて言う桜に如黒は面白かったのか、
あのめったに笑わない如黒が笑いながら桜の頭を撫でた。

「ふっ…くくく…ッ……」
「ぇ。ちょ。なに笑ってんですか…!?」
「悪い。面白くてなッ…くくツ…」

ついにはお腹を抱えて笑う如黒にあまりにもめずらしい出来事に、
桜ばかりでなく幹部達全員が唖然として如黒を見つめた。

如黒が笑ってる!?

という驚きを抱えながら。

176:大和:2012/08/18(土) 22:45 ID:Xdo

「なんでもないならそれでいい…」

そう微笑みながら言う如黒は桜の頭らゆっくりと手を降ろす。
他の幹部が唖然としている中、お花畑状態の如黒に皆が先程同様驚いたのは他でもなかった。

そんな第一次試験開始から1時間30分ほど経過したころーー…
一つの知らせは来た。

「全幹部員、また総長に告げる。
 只今本部西塔に侵入者。門を通り抜けたことからスパイと判断。
幹部は試験生徒を素早く非難させ、侵入者に対抗せよ。
またーー……………」

その知らせを聞いた瞬間、彼らの空気は変わった。
そして彼らは豹変した。
先程まであった楽しい雰囲気はどこへ、
引き締まりのある雰囲気に変わり、皆は神経を尖らせる。

「いいか、まずは試験生徒の非難優先。
しかし相手が中に入りこまれても困るので、1〜5番隊はスパイ対応に。
6〜10番隊は試験生徒非難、また試験生徒護衛に回れ。
俺は全体指揮をするから色々回るけど、知らせはマイクにて。
では開始!!!!」

昴の素早い指示によることで幹部達は一斉に返事をしてやるべきことに努める。


「第一事件発生、完了しました。」

ボソと昴はマイクに向かって呟く。

177:大和:2012/08/20(月) 14:17 ID:Xdo

本部敷地内にてーー…

「試験生徒至急集合!!!!!」

そう張り詰めた声が敷地内へと響く。
どこまでも聞こえるようなその声は
呼ばれた試験生徒達を思わず震え上がらせるほど。
一瞬固まる試験生徒だったが、その命令に従い集まってくる。
流石と言っていいかはわからないが養成所で鍛えられた「命令絶対」
これは上のものから与えられた命令は絶対。
そして集合や返事などは素早く。
そう教えられてきた養成所の試験生徒達は
突然の集合に戸惑いながらも素早く集まることができた。
意外にも速く集まった試験生徒に安心した幹部達。
そして集合を呼びかけた女性幹部員一強い仇緋我愁(キュウヒガ ウレイ)の所へと皆は集まる。

「一度しか言わないから話を聞いてね。
今本部西塔より侵入者が入ったらしいの。
それで本部に侵入したことからスパイと判断して、
試験生徒を非難させることとなってる。
なので今からあなた達は非難場所へと非難してもらうわ。いいわね?」
「はい!!!!!」

愁の問いかけに全員がキッチリと答えるとその答えを合図に動き始める。
そう言って非難場所となる東塔へと走り出した時。
愁へと銃は向けられた。

「…………!?」
「………生が惜しけりゃ伏せろ」
「……誰がそんな!!」
「……有利なのがとちらかもわからないオンナじゃないだろ?」
「……ッ…………」
「どうする」

晴れる。
空は雲一つない。
全てが青のペンキで塗りつぶされたようだった。
そんな時、銃を向ける男の瞳は猛獣に捕らえられた。

178:大和:2012/08/22(水) 14:08 ID:Xdo

真っ直ぐ前を向く愁の横顔に銃を向ける男。
その男はおそらく今西塔から侵入してきたスパイのグルであろうと愁は思う。
しかしグルであろうとなかろうと、
今この状況をどうにかしなければ事は進まない。
愁の後ろにいる幹部達への合図もなにをすればいいか…
そして同じように後ろにいる幹部達も、
自分達だけで勝手に動いては愁の命が危ない。
いくら銃といえど、されど銃。
しかももう突きつけられている。
こうなると事態は難しい。
試験生徒の非難もあるため尚更だ。

「…………構わないわ」

焦り混じりの愁のその声が合図だった。
しかしその声も愚か。

「動いたらうつ」

男にとってはその言葉だけで全てが十分だった。
全てが動かせた。
愁の声を合図に動こうとしていた幹部はまた先程と同じように固まってしまう。
これでは先程となんら変わりないように。

しかし。

ヒールほどではないが、靴の音はなる。
静かに、かつ性格に。

「動いたら……殺すっつったよな?」
「だからどうした」

いつもの口数の少ない口調。
どうでもいいような眼差し。
黒い瞳。
怯えることない、戸惑うことのない如黒。



漆黒の如く、その暗闇は暗黒に。
そして美しく。
華麗なる残酷の「如黒」

179:大和:2012/08/23(木) 18:39 ID:Xdo

「オイ、いいのか?コイツ殺すぞ」
「……どうして選択肢が二択なんだ」
「は?なにがだよ」
「オマエの頭の中には、
動いたら殺す、黙っていれば殺さない。
この2つの選択肢だろ?」

口数の少ない如黒はなるべく言葉を省き簡単に事を言う。
普段から喋るのが嫌いなわけではないのだが、
必要以上の言葉を話すことに意味があるのかと考えてしまい、
あまり話さないらしい。

180:大和:2012/08/24(金) 20:51 ID:Xdo

「俺の中には4つの選択肢がある。
オマエが思っているものの他に、
動いても殺されない、黙っていても殺される。」
「…………どちらにしろテメェは後者になるけどな!!!」
「……無意味なことはしない趣味だ。
前者にきまっているだろう」

そう如黒は言いながらゆっくりと近づいてくる。
そして丁度愁の前に来た時、足音は止む。
それと共に、銃口も如黒へと向く。
しかしその行動に驚くことなく如黒は愁へと話しかけた。

「心配は大丈夫だ」

ただそれだけの言葉だったが愁にとっては安心の言葉だった。

「自分の立場わかって言ってんならとんだ馬鹿だな!!」
「………はぁ…」

その重い溜め息をついた如黒は、
少し顔を上げるとその男の瞳を見つめ言う。

「捕らえたものを俺は逃がしはしない」

181:大和:2012/08/25(土) 18:58 ID:Xdo

なんの感情も入っていないただの瞳で男を見つめる。
男はその真っ直ぐなのに残酷な瞳に捕らえられて、
重く唾を呑む。
一瞬の時間が止まるのを感じた。
それで如黒には十分であり、
男にとっては多すぎた。

ーー…
しかし男は迷わず引き金を引いた。
重く鈍い銃声がその静まり返った場に響く。
誰もが今目の前の状況を疑った。
誰もが今を「今」というモノを嘘だと思いたかった。
だがそんな浅い願望などは崩れる。
しかしその崩れに彼は反する。

「最期は俺が迎えてやろう」

少しかすれた声は男の手を取ると、
とっさに引き寄せて胸になにかをあてる。

あてた刻こそが最期。

182:大和:2012/08/27(月) 14:12 ID:Xdo

また同じ重く鈍い音が響く。
次ことは外れることはない。
確実に中心を射抜く。
手に少し振動が伝わる。

「っ…がッ………ハッ……」
「………」
「…かはッ…ぁ…ぁ…」

男はおもむろに叫びをあげる。

183:大和:2012/08/30(木) 19:49 ID:Xdo

そして男はその場にうめき声をあげながら倒れた。

「………」

如黒はそこに黙ったまま立っているだけ。
男から解放された愁は緊張が解けたようになり、少し安心していた。

試験生徒達は物凄く驚いてはいたが、誰一人として言葉を発することはない。
するとふいに如黒は言葉を出した。

「………これが秘密警察というものだ」

これからを担う試験生徒への言葉。
しかしその言葉は重く幹部達にも突き刺さる。
自分達では頼りないのか、と。
どこかですれ違いは起きた。

184:大和:2012/08/30(木) 20:55 ID:Xdo

………最近更新さぼってました………

すみません。

これからまた頑張りたいと思いますね

185:ピカチュウ ◆2s92:2012/08/30(木) 21:53 ID:/b2

頑張ってね!!

186:大和:2012/08/31(金) 05:42 ID:Xdo

ぉお!ありがとうございます!!
そう言っていただけると励みになります〜!!!

187:大和:2012/09/01(土) 21:36 ID:Xdo

しかし当の本人はというと
誰かを守りたいならそれ相応の覚悟をもって秘密警察に入れ
という意味であっただろう。
だがやはり普段無口な如黒が言うのと、
普段からお喋り口調な寿などが言うのではまた違うだろう。
だからこそ。
この如黒が言うからこそ大切なのだろう。

誰かを守りたいと思う気持ち。
だがそれだけでは足りないという現実。
そして結局は、覚悟。
どれだけの覚悟があるか。

「あれが………響隊長なのか…」
「すごい威圧感がある…………」

試験生徒達はコソコソと話しはじめた。
しかし如黒は気にも留めない。
彼にとって今一番大切なのはそんなことではないから。
彼が大切なことは、この如黒の話をしている試験生徒達を守るということである。

188:大和:2012/09/02(日) 18:18 ID:Xdo

「……さっさと東塔に行くぞ」

そう如黒が一声かけると、また一度は「はい!!」
と威勢のいい返事をして東塔へと行くのだった。
本来ならばこの今の場合の指揮官は愁のはずであるが、
愁本人は自分で指揮官をやろうという気持ちは今更になってはなく
それよりも如黒に指揮官を任せてついていこうという気持ちだ。
一方の西塔では激戦がくり広げられていた。
一人であったはずのスパイはなんと、幹部等数人で来ることに気づき、
もう着いた時にはすでに幹部人数以上の人数がいて取り囲まれてしまった。
しかし取り囲まれたと言っても、藜、寿、紅葉。
敵にして面倒臭そうな人No.5に入っている3人というスパイには最悪な組み合わせだった。
そんな3人を取り囲んだスパイ達は力は愚かなので人数勝負でかかってくる。

「………大丈夫?息ハァハァしてるよ?いやらしいね」

ニコッと優しく微笑みながら容易でないことを言う寿に、
そのあまりのしつこさに苛立つスパイ。

「そんな、ハァハァしてナニしてほしわけ?
え、まさか淫行……とか?ちょっとそーいうのは専門じゃないから…」

だのなんだの、互いに銃で戦い合っているのにも関わらず
その減らぬ口と並外れた持久力にスパイは倒されていく。
また紅葉も紅葉でめんどくさい戦いだった。

「下等嘔吐生物………。はぁ……小さいからってなめんなよ!!!」

誰も小さいなどと言っていないのに、
勝手に小さいと言われたような演技をしてスパイを撃っていく。
そう、紅葉は身長が小さい。

「おい、この俺が直々に出向いて、
しかも俺のお気に入りNo3に入っているこの銃で殺してやるんだぞ?
これは感謝だよな?いいか、この銃で殺されるときは快感という顔をして死ぬんだぞ?それからー…」

ずっと怒鳴り散らしながら俺様視点からの発言が続く藜。
あまりの我が儘俺様視点に嫌気がさすほどだったが、
藜自身はNo3に入っている銃を使っているということでなぜか変にニコニコとしながらうちつづけていた。

189:大和:2012/09/02(日) 18:19 ID:Xdo

久しぶりですたね

190:彼方:2012/09/02(日) 18:21 ID:Bns

そですたな(´ω`)

頑張って下せぇww

191:大和:2012/09/03(月) 19:18 ID:Xdo

あーとーざいますっ!!!

さぁて、あと9レスがんばってこ

192:大和:2012/09/06(木) 21:06 ID:Xdo

「ふはは!!いい様だ!!!」

まるで鬼かとでも思う程に藜は笑っていた。
相手にとってはそれこそ不幸の笑顔だが、
本人にとっては爽快感のある笑顔。
鳴り止まない銃声を心地よく思ってしまう彼等は
ここに長く居たからなのか。
それとも心から、芯からそうなのか。

「綺麗に散れよ!!!」

そして止まないその声。
いつまで経っても相手をけなし続ける。
本当に汚いと。
本当に下等生物なんだと。

193:大和:2012/09/08(土) 08:52 ID:Xdo

男性3人が戦っているところで、女性2人。
つまりは桜と雅はまた侵入者である本人を追っていた。
いくら女性といえども「秘密警察」
もちろん、足の速さはそれこそ男性よりは遅いかもしれないが
普通の女性に比べると鍛えあげられてきたものがわかる。

「相手もスパイなだけある………速いわ」
「そうですねー。…ッなら…!!」

そう言うと桜はポケットから小さいマイクのようなものを出すと言った。

「総長出動願います」

その声は外で総合指揮をしていた昴のマイクへと繋がった。

「了解。」

昴は西塔へと走る。

194:N♯0822:2012/09/08(土) 17:20 ID:ez-PuE

こんにちは(^O^)
復活したぜ(^w^)

195:大和:2012/09/10(月) 18:16 ID:Xdo

え!?まじでか。
でもやっぱ来てもたまに?

196:大和:2012/09/10(月) 19:35 ID:Xdo

柵に片手をつくと、その勢いで両足を宙に浮かせて柵をこえる。
そうするとまた目的の場所へと走っていくのだった。
まだまだ夏を感じさせる昼間だが、きっと夕方になっていくにつれて
次の季節が来ることを誰かが鳴きながら伝える。

「はッ…………」

少し息を切らしながら走る昴は、
眩しいではすまされないほどの光を放つ太陽を横目でチラと見て思った。
全体指揮をしていた場所から西塔までは少し遠く、
昴は走りながらも自分の体力量などを調整しながら走っている。
まさかのハプニング。
しかしこれは仕組まれた罠であり試験である
試験生徒がこの緊急時にどのような対処をするか。
そう、今日という1日はすべて試験生徒のためにる。

197:大和:2012/09/12(水) 06:12 ID:Xdo

他と同じく正常通りの試験を行ったところでは、
なにも変わらないのだ。
「本当に強い人」というのが見つからない。
上辺だけの強さなど本当にいらない。
必要としているモノだけさえあれば全てはすれで片せる。
ならば余計なものはいらない。
そう昴は今回総長という役目について思った。
歴代からしてもこの若さで総長というのはダントツで、
昴より若いと言えば、30代ぐらい。
それぐらいにして昴は強かったー…強い。

目的の場所へと着くと昴はすでに銃を片手に持っていて、
腕をならす仕草をすると目の前の風景を見て
すぐさま猛獣のような顔つきになり、銃をかまえる。
重く煩い音が迫力を得て何発も聞こえる。

それは昴が精神を高めた今、当たることが当たり前とされた弾。


「女の子にぐらいー…イヤ、ていうか他の女はいいんだけど…
ウチの女の子ぐらい優しくしてよ。
特に桜には」

198:りっこ:2012/09/12(水) 16:28 ID:kuo

審査結果




もうカンペキです!

言う事ありません!

情景描写も分かりやすく、人物の気持ちも自然と思い浮かぶようです。

何故自分は今までこんな素晴らしい小説を見ていなかったのだろうと後悔しています。

これからも更新頑張ってくださいね。



以上です。

ご依頼ありがとうございました。

199:大和:2012/09/13(木) 18:50 ID:Xdo

ありがとうございます〜!!
そのように言っていただいて光栄です。

まだまだ未熟+ぐだぐだですが………
宜しくお願いします。

200:大和☆200だぁあああ!!!!:2012/09/13(木) 19:39 ID:Xdo

ついに200!!

ありがとうみんなぁあぁ!!
本当にありがとうございます!!
更新遅いわ、小説はぐだぐだだわ………
そんな僕を支えて下さり本当にありがとうございます!
また交流掲示板にて「集え!小説板住人共!」
でもうまくトークもできませんが構っていただき……。
ありがとうございます。

さてさて………200ということで……
そろそろ物語も終盤。
自分としては……ですねぇ……
一旦この話を終わらせてから……
一度休みをもらい…新作書くか、
それともまだ秘密警察を続けるか。
迷ってる感じですね。

それはさておき。

毎度毎度何かやってるので。
流石に短編は時間がないので。

なにか考えておきます。

では、みなさんこれからもよろしくおねがいします。

201:N:2012/09/16(日) 21:39 ID:ez-xXY

うん、そうだね〜
携帯からだから、毎日とかは来れないかな(´・ω・`)

でもちょくちょくは見に来るから、頑張ってね〜(^ω^)/

202:大和:2012/09/16(日) 21:57 ID:Xdo

あり、携帯もってたっけ?
まぁいいや。
がんばるよ、ありがとう。

あ、そういえばTちゃんよろしくね〜
優しく教えてやって下さいな(* v *)/

203:大和:2012/09/17(月) 06:59 ID:Xdo

そんな言葉をスパイ達が聞くはずもなく……
ただただ反論の声が上がるだけだった。

「王子面もいいものだな」
「なにをのんきにしていることか……」

「俺の所有地で暴れないでほしい」

太陽に照らされて、斜めにできたカゲボウシ。
周りは茜色に染められる。
ユラリユラリと前へ進むカゲボウシ。
くっきりと写るその姿は恐ろしく。
形わからぬほどに重なる幾つものカゲボウシは脆く。
前夜は始まる。
遠くで鴉は煩くナイタ。
茜色が綺麗に写るコンクリートに、紅は落ちる。
同じようにまた綺麗に、血という赤は舞う。

笑う声が聞こえる。

「喉から殺すのがいい?それじゃつまらない?
だったら、足から一つずつ?ねぇ、なにがイイの?」

カゲボウシは笑う。
銃声が飛び交う中で。
一つのカゲボウシは逞しく、
幾つものカゲボウシは散っていき。


その晩餐会は終わった。

204:N:2012/09/17(月) 10:24 ID:ez-xXY

携帯買ったんだよ。
だからパソコンからじゃないんだよ〜♪

うん。
Tちゃんはいい子だからね〜。
言ってることもすぐ理解してくれてやりやすいよ。

大和も部活頑張れよ〜♪

205:大和:2012/09/17(月) 16:49 ID:Xdo

そ、そうだったのか……………!!!

それ伝えたらTは飛んで喜ぶだろうw

辞めそうになったがな…ww

206:N:2012/09/17(月) 17:31 ID:ez-J1E

そうなんだよ〜♪
フィルタリングかかってないからやりやすいんだよww


と、飛んじゃうの!?
そういうキャラだっだっけ!?


え、マジで(°□°)

207:大和:2012/09/17(月) 17:41 ID:Xdo

あー確かに。

おとなしそうにみえて……だからwwww

うん。本気で。

208:N:2012/09/17(月) 17:45 ID:ez-PuE


え、何!?何なの!?

そうなんだ……(´・ω・`)
何故に?

209:大和:2012/09/17(月) 17:57 ID:Xdo

………………まぁ、、ね。

……え、Nの同期の人達が原因でwww
あとテナーに移ったからかな。

210:N:2012/09/17(月) 18:03 ID:ez-1R2

何さ!何なのさ!?

嘘ぉ!?マジで!!!?
詳しく教えて!!!

あ、移ったんだ!
バリトンより軽いでしょーww

211:大和:2012/09/17(月) 19:00 ID:Xdo

よし、これ以上話したら雑談になるから、
紙かなんかに返事書いて渡すわ。
うん、……いつかwwwww

212:大和:2012/09/20(木) 19:43 ID:Xdo

「処理OKだよ〜〜」
「無事終了〜」

廊下の向こう側から可愛らしい声が聞こえる。
ひょこひょこと走ってくるのは双子の幹部、狐と兎。
その二人に続くようにしているのは寿だった。
どこかへ行こうと歩いていた昴の背中を見つけて、
三人は声かけた。

「もう終わった?」
「うん!」
「そっか、どうだったの?」
「……どこもこうも…人数が多かったよ」
「…………」

やれやれとでも言いたげに寿は言うと
ぴっちりとはめてある黒手袋を外した。
黒手袋には黒のはずなのに色が少し明るいのが所々。
昴はそれを見て軽く息を吐くと何故か押し黙ってしまった。

「…処理もな…いい仕事じゃないよな」
「……それでも。この組織がある限り仕方ないことなんだよぉ?そーちょー」

昴の問いかけに軽い口調で答える狐はなんの不服もなさそうに言った。
きっとなんの不服もなさそうに聞こえた、だけなのだろうが。
しかし毎度のように狐と兎には処理を任せていた。
だからきっと慣れなのだろう。
陽は隠れ月が昇り。
辺りは闇に染まれながらもこの建物は休む暇なく灯りがともっていた。
4人は横に並ぶようにして歩き始めると
会話を再開した。

「最初は一人だったのに。段々と増えて…」
「面倒ったらありゃしないよねぇ」

小柄なわりには仕事をこなす狐と兎。
身長はやはり昴や寿と比べると小さいものの、
処理についてきちんとわかっているのはこの二人であろう。

213:大和:2012/09/22(土) 17:40 ID:Xdo

「昔みたいに処理部でもなんでも作ればいいんじゃない?」
「……それはもうしない」

寿の問いかけに昴は断固拒否という感じに答えた。
寿は昴の横顔を盗み見るとその顔は
まるで苦い思い出をみるようにしかめていた。

「幹部でなんとかすればいい話…
なんて言って…いつも迷惑かけてるよな…」
「……迷惑?今更な気づかいだなぁ」

クククと喉で笑う寿。
そんな寿を見て昴もまた「本当に今更だった」と微笑みながら言う。
頭上で笑う二人。
狐と兎も二人で顔を見合わせると笑った。
そして兎は寿に話しかける。

「でも暁がいればもっと早くはかどったんだけどねぇ」
「そうかもね。陽が暮れる前には片していたかも」

214:大和:2012/09/24(月) 20:29 ID:Xdo

「かつては暁と刻二人での処理だったしね」
「あの二人か………」
「……」
「すごかったもんね」

苦笑しながら天を向く寿。
そんな寿に昴もまた同意しざるをえない。
暁と呼ばれた人物。
刻と呼ばれた人物。
彼らにとってどんな存在なのか。
狐と兎も少々呆れ顔で天井をみる二人を見守っていた。

215:大和:2012/09/27(木) 21:05 ID:Xdo

「まぁ……この話は後にして。さて、試験生徒達はどうしてるかな〜?」

過去のはなしからパッと表情と話を切り替える昴。
その顔は期待や悪戯が入り混じり楽しそうなニヤニヤしている顔だった。
そんな昴を見て、寿、狐、兎もまた同じような表情になる。
コツコツと歩くこの長い廊下に一つの大きな扉が立ちはだかる。
そこには「東塔境界扉」とかかれてあり、
その扉の中央辺りに四角い電子機器がある。
その電子機器は4人が来たことをセンサーで察知し自動的につく。
そこに昴がいくつかの暗証番号のようなものを入れると扉は開く。

「心拍数、外面、ありとあらゆる精神」
「…?どうした、寿?」
「どこまで耐えていられるか。」
「はは、光也あたりはイケるでしょ」
「アイツはね〜。他はどうよ?」
「どうだろうね」

自分もまだまだ子供のくせに二人して
「子供の成長はわからないからね」などと言っている。
全然若い彼らだがやはり試験生徒というのは可愛く見えてしまうのだろう。

216:大和:2012/09/30(日) 19:48 ID:Xdo

コツコツと鳴る足音はやがて一つの扉の前で止まる。
「その他(大)」とかかれた部屋に昴はためらいもなくノックする。

「大丈夫です」

と、短く返事をされて昴達はその部屋に入る。
部屋に入ると試験生徒達は一斉に昴へと注目した。
如黒からプリントの束を渡されると昴はそのプリントをさっと見て言った。

「今からこのプリントと幹部達の意見をもとに合格者を発表する」

その昴の言葉に試験生徒達は
嬉しさを隠しきれずについつい盛り上がってしまう。
そんな試験生徒達に昴はピシャリと冷たく言い放った。

「あまり甘い考えをしないことを……オススメするよ?」

ニッコリと背筋を凍らせる物言いに一気に盛り上がりは失せる。



幹部会議にてーー…

「心拍数の乱れを5段階に分けて
S.A.B.C.Dにする。S.Aは合格。それ以下不合格。」
「了解」
「精神的、または肉体的苦痛を顔に出した者、即刻不合格」
「OK、OK〜」
「一次試験にて50番以下に隊員を捕らえた者、不合格」
「御意」

こうして昴中心となる合格者、また合格者の役決めが始まった。

秋の風が吹く夜。
星は綺麗に輝く。
とある誰かの寂しさは夜に消えることはない。

217:大和:2012/10/03(水) 21:13 ID:Xdo

「では、只今より合格者を発表する。
合格者は番号札で言うため、各自きちんと自分の番号を把握しておくように」

筋の通ったその声にその場は静けさに包まれる。
緊迫した空気の中、昴は幹部達を一度見やると息を整えた上で言った。

「番号札1、2、6、7、8、11、14…ーー」

次々と発表されていく番号札に嬉しい歓声あれば、
悔しいも、悲しみも。
そんな中で幹部達も懐かしいなぁと思いながら試験生徒達を優しく見守った。
ざわざわと騒ぐこのホールにまた昴は声をはる。

「いいか。ここはなにを隠そう秘密警察だ。
{人を陰から守る}これが俺達の仕事。
だから勘違いされては困る。
成績が全てだ、と」

そう昴が言うやいなや寿が付け足して言った。

「今ここにいる幹部連中は、前代未聞の……。
秘密警察史上最高の幹部と呼ばれる人々の集まり。
その世代に身近として君達がいること、とても嬉しいよ。
まぁ……俺が話たいのは、幹部になるには確かに「できる」ことが必要。
しかし、なにを取っても、誰がなにを言おうと。

人を守らなければ全ては意味がない」

これこそが彼等が進む道。

218:りり:2012/10/03(水) 21:20 ID:Bn2

面白いです!全部読みました!
頑張ってください!

219:大和:2012/10/06(土) 19:04 ID:Xdo

お返事遅れました。
ありがとうございます。
このような小説の中から…読んで下さり。
ありがとうございますね!
頑張りたいと思います。

220:大和:2012/10/06(土) 19:19 ID:Xdo

「人を守る。
誰かの未来を繋げられる。
太陽じゃなくていい、黒い影法師があるべき姿」

試験生徒達が並ぶ中から声が聞こえる。
その声に皆が驚きその声の方向を振り向くと、
そこにはその言葉を発した主がいた。
その人物を見て昴は一瞬その言葉と人物に意外性を感じて驚くが、
また普通の表情に戻るとその主の名前を言う。

「光也。まさかその言葉を知ってるとは…」
「知ってるに決まってますよ。総長」

わざとらしく言う光也に昴は苦笑いし、返事をする。
他の幹部達も「光也ったら…」「アイツは……」
少々呆れの声を出しながらも皆笑っていた。

221:大和:2012/10/10(水) 20:58 ID:0iU

上げ。
小説書いてないのに上げてしまった……

222:大和:2012/10/14(日) 18:08 ID:TcY

そんなふうにホールがざわつく中、
今回の試験の終わりはやはり総長の手によるのだった。

「さてーー……いいかな。
…今回の秘密警察試験は只今を以て終了と為す。
みんな、今回だけで諦めるのはまだ早いからね?」

そう言って秘密警察養成所にいる彼等の試験は終わりを告げた。

世界の秘密警察の組織から注目を浴びているのは、
総長の昴だけではない。
世界各国からの留学生のもと、構成されたこの秘密警察。
その幹部は最長能力者と言われた者が集まった。
その中で今回行われた試験では、
秘密警察養成所にいた「元」生徒会長、
白羽光也も参戦に。
さらにはこの女が少ない中で、
一度秘密警察には入ったものの、卒業試験としても合格したスミレ。

流れ行く時代の中で、彼等の世代がやってきた。

いくつもの困難が押しかけたあの過去を拭うために。

彼等は戦う。

未来を守るために。




終。

223:大和 ◆U7Pg:2012/10/14(日) 18:26 ID:TcY

…………終わり。

ここにくるまでスランプがいくつかありました。
いくつかっていうよりは何回か。

さぁ!!

こっから過去編だよ!!!!!
たいして人気……たいしてどころか見てくれる人がいないのに過去編書くよ!

しかし。

長編だから読めないというそこのアナタ。

過去編から読め。

過去編から読め。

大事なので二回ね。
ていうか、、このお話実はすべて過去編からかかれてんだよねー。
それをさぁ、俺がなんか現代編からにしちゃった☆(*w*)\{テヘペロ}

すみません、てへぺろなんて言って許される年じゃないね。

そう。最初は誰の過去からいくかはまぁ秘密だけど…………。

過去編からよめば大体もう話は掴めるんで。

ぜひ。

ぜひ!!!!

(^×^)/




又、交流掲示板にて支えてくださった、
かわいい子娘達も本当にありがとうございます。
愚痴りなども付き合っていただきました…。

224:大和:2012/10/15(月) 20:14 ID:TcY

っと、、その前に軽い小説を。

225:大和:2012/10/15(月) 20:29 ID:TcY

孤独感を持った人は言った。
「そんなに正直に生きると堕ちるぞ?」
なにごとにも正直になる人は言った。
「そんなにひねくれるなんて…愚かな」
興味も関心もない人は思った。
「すべてになんの意味があるのだろう。
関心をもつならば自分はいくらだろう」
椅子に座った翁は言った。
「君に興味がある」

この中で笑う者はいなかった。
しかし、この中で真実を述べているのは誰か。
アンサー、それは翁です。

クエスチョン、一番馬鹿なのは誰か。
アンサー、孤独感を持つ人間。

クエスチョン、勝つのは誰か。
アンサー、全てです。

アンサーは震えながら声帯を震わせて音を出した。
しかしアンサーは喉までにでかかった言葉は出さない。

勝つのは僕です。


そう思った瞬間、孤独感をもった人は殺された。

さあ?
この意味がわかるだろうか正直者。
アンサー、正直者は正直なあまりに頭を狂わせました。
アンサー、翁は心臓の病です。
アンサー、関心のない者は自分の「命」がわかりません。

ではあなたは?

アンサー、全ての陰です。

彼の声帯を潰せ。
でないと彼の声により全てが終わるだろう。

音は震える。

226:大和:2012/10/18(木) 19:21 ID:TcY

リアルっていろいろありますよね。
つかれました。
体力的に。

さて………過去編です……これから。
下書きは仕上がりました。
あとはここに…!!!

227:大和:2012/10/20(土) 06:56 ID:TcY

〜過去編〜

ここからは過去編の話となります。

228:姫♪ ◆NLsI:2012/10/20(土) 06:59 ID:LMk

大和お兄様…!
文才分けてください←図々しいなw

229:大和:2012/10/20(土) 07:11 ID:TcY

〜過去編 • 彼等の夢は始まった〜


生暖かい風が木々と少年の頬を撫でるようにして吹く。
今日はめずらしくこの冬という季節にしては暖かい日で、
太陽も元気に顔を出していた。
学校と思われるような、大きな作りをしたこの建物の敷地内で、
子供達は無邪気にサッカーや野球。
ルールもよく知らないながらもスポーツをして遊んでいた。
そんな中一つの木の下に子供が一人座っている。
歳は10、2、3歳ぐらいの子だった。

「……上野タケル、市川豪。」

そう呟くと少年はノトになにかを書き込んだ。
暖かい日差しの中、少年だけが陰のようになって。

「…あぁ、、そういえばアイツは家が金持ちで……それでか」

なにやらわからぬことをブツブツと呟く。

「それであのセンセー達にご贔屓なわけね。
ふーん、学習能力ゼロのアイツが?ウケる」

少年の見る先にはサッカーをしている子が一人。
しかしその子は何度ゴールを決めようとしても
相手にすぐ同じ手で阻止されてしまいなかなか入れることができない。

「……普通だったらご贔屓の対象にもなんねぇよ」

230:大和:2012/10/20(土) 07:14 ID:TcY

貴方に分ける文才など持ちあわせてなぁあい!!!!
つか文才ねぇえ!!!!!
かなしすぎるぅうう

231:姫♪ ◆NLsI:2012/10/20(土) 07:29 ID:LMk

>>大和お兄様
お兄様に文才がなかったらあたしはどうなると…!!
つか文才ありまくりの大和お兄様が言うとイヤミにしか聞こえねぇぇ!!

232:大和:2012/10/20(土) 18:26 ID:TcY

いや、、、まったくっス。
俺なにも持ってません。
駄作という力しか……!!!

233:大和:2012/11/02(金) 19:52 ID:TcY

あげ。

234:大和:2012/11/08(木) 20:17 ID:TcY

そう少年は言うとノートを静かに閉じた。
誰も気づくことのない木陰の下で
少年は笑うこともなくそこから立ち上がる。
すると、それと同時に大きな音を立てて鐘が鳴った。
この変わらない生活こそが少年の日課だった。

ーーそう、君が来るまでは。

朝も夜の昼も。
全てが規則的に変わっていくことを少年は理解していた。
だから少年自身も変わらぬもの。
すなわち、規則的に変わってゆくものになろうと思った。
だから少年は自分の生活をその変わらぬものと変えた。
ただの少年の脳は並みを始めから超えていたのだった。

235:大和久しぶりの更新です。:2012/11/18(日) 13:33 ID:P96

だからこそ、あんな日がくるまでは全てを「規則正しいもの」とずっと考えていた。
つまりは変わらぬ世代。
変わらぬ世の中。
太陽は夏とか違い暑く、ではなく暖かく陽を照らす。
生暖かく風も頬を撫でる。
少年がノートを閉じた瞬間、同じように学校のチャイムが昼休みの終わりを告げる。
しかし、少年はあることに即座に気づいた。
後ろに誰かがいる。
勢いよく振り向くとそこには自分がよく見知った人物が。
そう、全ての先生から誰がどのように見ても贔屓されているーー
家の金持ちのこともあり、その子自身もできた子だった。

「白夜すばる………」

少年はそう呟くと「白夜昴」と名札をつけた子供を思い切り睨みつけた。
だが相手はそんなことを気にすることもなくただ突き刺すように言う。

「君、なんで名札ないの?
 確か名前つて……」
「黙れ!!!!」

「白夜昴」と書かれた子がそう言ったとき、
少年は心臓をえぐられるかのような嘔吐感に走った。
少年は自分の名前が嫌いだった。
言われるのが嫌だった。
けれど、「相手」はえぐることを止めはしない。

「向日葵紅葉。ねぇ……君それさぁ、
 偽名なんでしょ?」
「っ…ぁ……」

言われてしまった。
向日葵紅葉。旧姓、椿紫陽花(ツバキ アジサイ)。
旧姓、花園葉真(ハナゾノ ヨウマ)

「…なんで、それを…!?」

色が変わった気がした。

236:大和:2012/11/19(月) 18:36 ID:P96

そしてこれが本当の「旧姓」つまりは本名。

「三鷹春樹。これが君、向日葵紅葉の本名なんでしょ?」
「………椛赤羽に散りゆくときこそ潮時かな。」
「誰の咏?」
「…我成父之咏物」
「…君のお父さん?」
「義理の」

三鷹春樹。
それは一見どこにでもあるような名前であった。
少年と少年は落ち着きを残して話す。
しかしその名前を、家の者は許さなかった。

「今の、、「もみじあかばねにちりゆくときこそしおどきかな」っていうの…
失礼だけど……とても下手くそな咏だね」
「……素人はこんなものでしょ」
「可哀想だね紅葉「せんぱい」も。
本当の家族から与えられた名前でさえも残してもらえなかった。
ーーーねぇ、なんでなの?」

ただの興味本意と言いたげに少年、白夜昴は微笑する。
何故かなどと言われても。
いきなり会ったばかりのものに自分の極秘の過去を話たいなど少年は思わなかった。

「………義理がないだろう?」
「…そうだね。だって僕は聞いておわりだから」
「……馬の耳に念仏なら尚更」
「………わかった。なら今日は諦めるよ。
…っていうほど聞き分けはよくないんだ」
「…………はぁ…いいよ、話す」

もういいと思った。
もう誰にでも話てしまえと。
それならこの名前の重さも。
思いも。
軽くなるかもしれないと、
何故かこの白夜昴の瞳を見て思ったのは他でもなかった。

237:大和:2012/11/22(木) 22:42 ID:P96

〜向日葵紅葉編〜
 〜花堕ちるり刻、黄葉は満開に〜

今思えば、なかなかあの頃など可愛らしかったと思う。
ーーそう、あの時もこんな枯れた木々の黄葉が綺麗な時だった。

「只今戻りました」
「あら、お帰り、春樹くん」
「只今!お母さん。ねぇ、今日のごはんはなに?」

そんな屈託もないが幸せな会話が続く毎日。
今から約15年前の紅葉がまだ5才くらいの頃。
とても穏やかな家庭に彼は恵まれていた。

 「今日はね、春樹くんの大好きな食べ物よ」
「ほんとに?やったぁ!!」

無邪気に笑う少年。
この年までが彼が本当に幸せでいられた時。
この時までが彼が本当の名前でいられた時だった。
別に他の子よりなにかとてつもなく優れたものがあったわけじゃない。
なのにーー。

ある日のこと、紅葉とその母親が父が帰ってくる帰り道に、
今の季節とても綺麗な黄葉が立ち並んでいるから迎えついでに見に行こうということになった。
北風はその時幸いにもあまり冷たくはなく、
木々を揺らす丁度いいぐらいの風。
しかしなんと言ってもその風を気にするよりも先に、
あまりに綺麗な黄葉が紅葉ーー、春樹の目に映った。
二人は黄葉に見とれながらもぽつぽつと歩いていく。

「申し訳ありませんねぇ」

急に捕まれた首にはとてつもない力が。
隣の母親を盗み見ると頭の後ろに銃が突きつけてある。

「……!!?な、なんですか……!!」

母親は震え声ながらも必死に平然を装う。

「そこのお子さん、渡してもらえませんかねえ?」

あの笑った口調の男の顔も声も目も全て。
いつになっても忘れない恨みの標的。

238:大和:2012/11/29(木) 21:38 ID:P96

「やめてください!!」

泣き叫ぶ愛しき母親の声。
怒鳴り散らしては母親を殴りつける男達。
どこにいようとも忘れることはないあの光景。
生々しさはいつまでも残ったまま。
いくら歳が小さいとは言えど、その人にとっての「革命」とも言えることは、
いつまで経とうと革命のまま頭に印象として残っている。

「っ…クソッ、このアマ……!!!」
「やめて!!!やめてぇぇえ!!!」
「ふざけんな!!離せ!」

三鷹春樹。
少年は後に向日葵紅葉と、この革命を通して名を上げる人物だった。

239:大和:2012/11/30(金) 21:17 ID:P96

そこで母親はどこを怪我したかわからないが血に濡れた全身で少年を守った。
けれど、女が男に勝てるはずがないのもわかっていた。

「はぁ……ぁ…や、め…や、…て……」
「うるせぇ!!少しは黙ってろ!」

捕まれる手首。
最後に見た本当の母親の顔は血まみれだった。
そこからは後頭部を強くうたれ、あまり覚えていない。
気がつくと暖かい部屋で寝ていた。
別に元々が貧乏だったわけではない。
しかしその家はとてつもなく豪華だった。
赤をモチーフに飾られたその部屋。
少年が寝ているベッドはとてもやわらかく暖かかった。

「………………?」

どこだかもわからないまま目が覚める。
向こうの方には火がパチパチと焼ける音がした。
その炎の赤さに母親の顔を思い出す。

「………どこ…」

自分の体にはどこにも異常がなく、傷一つついていなかった。
するとふいにドアノブが音をたてる。
それと同時に扉が開き、長身の翁が入ってきた。

「……who…?」

その男性が英国人に見えたからなのか、
まだ覚えたての英語を初めて話したのはこの時だろう。
すると男性は穏やかに微笑み小さく笑った。

「ハハハ、私は英国人ではあるが英語は話さないよ。
よしてくれたまえ、故郷の言葉でいい」
「……だっ……誰だ」
「そうだね…強いて言うならなんだろう。
 あー、、君は、どうやってここに来たかわかるかね?」
「知らない。母親が殴られたところまでしか記憶がない」
「…!?………すまない…私の部下が…」
「……部下…」

240:大和:2012/12/09(日) 08:35 ID:P96

「……オマエの…部下のせいで…俺の母親が死んだって言うのか!!」

顔は真っ赤に血が昇り、体中はすでに幸福感しきっていた。
しかしそのことに翁は驚きもせずに静がに答える。

「落ち着け。
私の部下と言えどそれは過去の話だ。
今となってはアイツたちがなにをしているかさえ分からない…」
「……どうでもいい、そんなこと…それよりなんで俺はここにいる」
「…君がヤツらのアジトに運ばれるとこをね…丁度私の仲間とみかけてね…それでだよ」
「口が悪いとは思うが、オマエのようなおいぼれにアイツらが倒せるとでも?」
「いやいや、もちろん私は倒せん。
一緒にいたのがあの秘密警察部隊の幹部であったからだよ」
「秘密警察………??」

その時、はじめてあの世に名を残す向日葵紅葉が
秘密警察に入ることの発端となったのはすべてここからだった。

241:大和:2012/12/12(水) 22:15 ID:P96

春樹は「秘密警察」という聞いたこともない話にものすごく食いついた。
なぜなら母親を殺した奴らに復讐するため。
ただそれには力が必要だから。
翁は春樹があまり興奮しないようなだめながら説明を始める。

「ああ。君の故郷、日本で作られた組織だよ。
とても優秀な者が集まっててね……へたしたら表側の警察よりも成果をだしているよ」

自慢げに言う翁を見て春樹は早く、一刻も……
復讐して殺してやるたいと思った。
しかし翁はそんな春樹の心を見透かしたかのように言う。

「絶対に人を殺してはならない」

その言葉がどれほどひどく胸に刺さったことか。
一瞬春樹は「なぜだ」と怒鳴りそうになった。
その小さな体で。
けれどかなうはずもない相手にそんな無謀なことをするほど馬鹿でもなかった。

「なぁ。ならなんで俺を助けた?」
「………アイツらがやろうとしていることは…
裏社会でも少々問題になっててな………」
「話せ」

自分に関係のあることは一語一句残さず隠させない。
そう昔父は尊敬する人から言われたらしい。
決して残すな、全て漏らさせろ。

「今アイツらは……新種のドラッグの開発を行っていてな…」
「ドラッグ?」

春樹にはよく聞いた言葉であった。

「最近、子供向けにつくなれているんだ。効果としては子供からの感染」

子供からの……感染。

242:大和:2012/12/13(木) 21:51 ID:P96

「……子供からの感染……って、どういう意味だ」
「まぁ例えばの話だが、もしもその新種のドラッグが医薬品に含まれていたらどうする?」

もしも医薬品に入っていたら。
そんなことは火を見るより明らかであろう。
一角だけで販売されればまだ可愛いく収まるが、
それが全国ともなれば医者は下手な薬品も出せず人はただ死んでゆくだけだろう。
それだけ被害が多い。

「とんでもないな」

そう一言口にする。
実際とんでもないことは目に見えているのだ。

「だろう?そしてその飲んだ子供からドラッグの効果か発揮され感染する…」
「…どういうふうに感染する?」
「そこまでよくはまだ分からないが、おそらくは接触による感染だろう」
「へぇ……………」

243:大和:2012/12/14(金) 22:31 ID:P96

「それで、アイツらがいるという情報が届きやって来たら
君がなにやら連れていかれている状況だったわけだ」

一通りの話を終えた翁はそこから一言も話すことなく椅子に座ったままだった。
春樹はただ頭の中で思考を巡らせる。
本当に翁は自分目当てなどではなく、「人助け」のために自分を助けたのか。
疑う予知はまだある。
完全に信じられないものは疑うことこそが大事。
少し離れた所で暖炉の火はだんだんと弱くなっていく。
翁は腕組みをしたまま下を向いてるばかり。

「おい」

声をかけても翁は顔を上げることはなかった。
最初狸寝入りをしているのかと思い少し待っていたが、
しだいに吐息が聞こえてくるのがわかる。
春樹はポケットに手を入れブツがあることを確認してからそれを握った。
するりと静かにベットを降りると翁の前へと移動する。

「悪いな、翁」

まるでまったく悪いなどと思ってないように言う。
そしてポケットから「それ」を取り出した。


そして翁に突きつけた銃。

244:大和:2012/12/15(土) 17:08 ID:P96

「最初(ハナ)から決めてるんだ。
オマエを殺すことは。信用できない奴は殺す主義だからな」

何の躊躇もなかった。
ただその引き金を引く事に対して。
ーー…けれど。
この翁を殺すことに何故かなにかが留めた。

「………」
「………………」

もう迷わない。
翁のしわのあるその閉じられた瞳を見ながら思う。
手も震えない。
喉も潤っている。

一瞬。

殺すことなど一瞬。


「…っあぁあ!!!ぁあ!!!」

春樹のうめく声と重く軽い銃声はきっと同時に響いた。

「……………」

突如。
翁の手が伸び危機一髪で銃を逸らした。
関節が折れる音も鈍くする。
だが翁の耳は赤く染まっていた。

「…っ…!!!…っは…は」
「………」
「、どういうことだ」

低く探るように手を抱えながら訪ねる。
しかし翁は答えない。
静かにそこに座ったままうなだれてるだけ。
なにをするまでもない。
春樹はそれに無償に苛立った。
何故なにも言わないのか。
何故自分を止めたのか。
なにもわからないから余計に苛立ちは増すばかり。
けれど苛立ちは増すがまた翁を殺そうとは思わなかった。
いや、思えなかった。
手首を触れられた時の感覚。
ひねられたか折られたかの時の痛さ。
尋常じゃない恐怖感だった。
ゆっくりと、翁はまぶたを開く。

245:大和:2012/12/15(土) 17:43 ID:P96

そして言った。

「オマエはよほどの馬鹿なんだろうな」

その濁る青い瞳を向けて言った。
瞬間、春樹の心臓が大きく脈打つ。
まるで射抜かれたかのように。
たいした言葉でもないのに。

「……青年。…私を殺せると思ったのが間違いだったな」

あの優しい微笑みを浮かべていた翁からは考えられない顔だった。
気味悪く、ニヤリと笑い春樹を見つめる。
そのある意味な微笑みにぞくりと背筋は凍る。

ーー…そう。翁は自分を見てはいないことに。

「ククッ」

自分の後ろで喉を鳴らすような声が聞こえた。
まばたきをする。
翁はいなかった。
目の前にうなだれるように座っていたのに。
もうそこに翁の姿はない。

「っぅ…ぐぁ…!!!!」

体の悲鳴の音がそこに鈍く響く。
驚きだった。
なにもできなそうなあの翁が。
若い男に戒めをしていく姿が。

「…………」

無言のまま。
春樹はそこに立ちすくんでいた。
とてもじゃないが動けるわけがなかった。

246:大和:2012/12/15(土) 19:14 ID:P96

そして言った。

「オマエはよほどの馬鹿なんだろうな」

その濁る青い瞳を向けて言った。
瞬間、春樹の心臓が大きく脈打つ。
まるで射抜かれたかのように。
たいした言葉でもないのに。

「……青年。…私を殺せると思ったのが間違いだったな」

あの優しい微笑みを浮かべていた翁からは考えられない顔だった。
気味悪く、ニヤリと笑い春樹を見つめる。
そのある意味な微笑みにぞくりと背筋は凍る。

ーー…そう。翁は自分を見てはいないことに。

「ククッ」

自分の後ろで喉を鳴らすような声が聞こえた。
まばたきをする。
翁はいなかった。
目の前にうなだれるように座っていたのに。
もうそこに翁の姿はない。

「っぅ…ぐぁ…!!!!」

体の悲鳴の音がそこに鈍く響く。
驚きだった。
なにもできなそうなあの翁が。
若い男に戒めをしていく姿が。

「…………」

無言のまま。
春樹はそこに立ちすくんでいた。
とてもじゃないが動けるわけがなかった。

247:大和:2012/12/15(土) 23:52 ID:P96

しかし。
翁は男にただ一発蹴りをくらわせただけだった。
それだけで面食らったのだが、
そこからその男に対して翁がなにかするということもない。
そして男は翁に蹴られた頬を抑えながら渇いた声で笑った。

「ははは、相変わらずな蹴りだね。」
「煩い」

まるで二人は知り合いかのように会話しだした。
翁はまた先程座っていた椅子に座り面倒くさがりながらも男と会話を続けている。
男は長身で翁よりきっと少し若いぐらい。
髪は長く白髪であった。瞳は翁と同じ青だがとても透き通っていた。
だがこの状況からして二人は深い知り合いであることを春樹は悟る。
なぜならば翁が見せないような顔ばかりをくるくると出しているからだ。
人の表情とは時に相手との絆を深さを表すものでもある。
あんな二人の打ち解けたように表情はまず旧友とでもいうところであろう。

248:大和:2012/12/16(日) 00:05 ID:P96

じっと二人を見つめる春樹を見て翁は口を開く。

「悪い。コイツは腐れ縁のロゼスだ」
「やぁ。初めまして。ロゼスです」
「……初めまして。」

少しぶっきらぼうに言う春樹だったが、
懸命に相手を探っていた。
そして相手も自分も探っているようだった。
だが相手が悪かったことを春樹は知らない。

「コイツは今日本の陸軍大佐をしている」
「…!?…陸軍大佐…!!」

しまったと思った。
ヘンな探りの目を入れず子供のように無邪気に笑っていればよかったと、
春樹は密かに思った。

「だが…いくら陸軍大佐といえど、裏の…。
秘密警察のほうの陸軍大佐だがな」
「馬鹿言え。表の警察に入るよりも、裏の秘密警察に入る方が難しいんだぞ?」

秘密警察………。
翁に聞いた話によるとスゴイ集団ということは分かった。
しかしなぜそんなすごい人がここに?

「今のところすごいのはドイツ、フランス、そしてこの英国が秘密警察界の中ではトップをしめている。
オマエのいる日本は英国には及ばないが
コイツのおかげでそれに続く形にはなっているな」
「ははは、まぁな」

249:GWF:2012/12/16(日) 00:07 ID:fjs

つまらな

250:大和:2012/12/16(日) 10:50 ID:P96

申し訳ありません。
お気に召さなかったようで……。
確かに内容も構成もぐだぐだですしね…
大変申し訳ありませんでした。
しかしながらこれは一応なる自己満足ですので小説掲示板に置いて頂けること、
ご了承願います。

251:大和:2012/12/16(日) 21:53 ID:P96

「……どうしたんだい君。こんなところに」
「私が拾ってきたんだ」
「めずらしいな、君が拾ってくるなんて」
「煩い」

この二人の終わりのないような会話に春樹はみかねて声をかける。

「おい、結局俺はどうしろっていうんだ?」

すると二人は一旦会話を止め目を見合わせる。
翁は椅子から立ち上がると端に置いてあったもう一つの椅子を出し、
ロゼスに座るよう指示する。
二人共椅子に座り翁はチラリと春樹に目をやった。
そしてロゼスはこう口を開く。

「…君、名前は?」
「三鷹春樹」
「そう。…なら、、これから君は花園葉真だ」
「……は…?…」

意味がわからなかった。
やっと落ち着いたかと思えばいきなる名前を聞かれ、
そして別の名前を与えられる。
状況を把握できていない葉真に対してロゼスはただ真実をこれからを述べる。

「君はこれから、「花園葉真」という名前で生きろ、いいね?」
「なんで……?」

そう言った時また先程のようにうなだれる形で椅子に座っていた翁が、
その格好のまま春樹に伝える。

「アイツらにはオマエの名前がバレてる。
言いたいことはわかるな……?」

低く唸るような声が春樹の耳に響く。

252:ゆゆ:2012/12/16(日) 22:04 ID:oag

ΣΣ小説うま

一気読みしちゃった!
頑張ってください!

253:大和:2012/12/17(月) 06:30 ID:P96

ありがとうございます……!!
そう言っていただけると光栄ですし励みになります!
どうぞこれらもよろしくお願いしますm(_ _)m

254:大和:2012/12/17(月) 21:37 ID:P96

「………」

言われなくてもわかった。
つまりはあの母親を殺した奴らに春樹の名前はバレている。
奴らの目的は元々春樹であった。
しかし名前が既にバレてしまっていては見つかるのも時間の問題ということだろう。
だからこそロゼスは春樹に新しい名前をつけた。

「……ロゼス、ダブルカバーじゃなくていいのか?」
「…ダブルカバー?そんなことまでするのかい?」
「アイツらだってなにもしないでここ数年生きてたわけじゃなかろうよ」
「…そうだな………」

唐突に翁がロゼスに対して話はじめる。
ずっとうなだれた格好のままで。
決して顔をあげることはなかった。
背中を丸め重く椅子にのしかかっている。
いまにも椅子が悲鳴をあげそうだった。

「…ダブルは面倒くさいんだがなぁ……」
「……こっちだって御免だ。しかし、な…」

なにやら翁が言い出したことで少し事がややこしくなったらしい。
Wカバー。
一体ダブルカバーとはなんなのか。

「……ダブルカバー?」

春樹は翁とロゼスに呟くように問いた。
するとむくっと翁が顔を上げる。
そして一息つくとあの青い瞳を開きこちらをぎろりと見た。

「…そのままだ。
 つまりな…花園葉真という名前に再びカバーをつけるだけだ」

それだけ言うと翁は立ち上がり端にある棚机へと向かった。
棚机の上には規則正しく綺麗に物が置いてあり、
その棚机に置いてある万年筆を取っては紙になにやら書きだした。

「……ダブルカバーというのは大変面倒くさい仕事なんだがね…」

ロゼスは半苦笑気味に言い翁からそのメモを受け取る。
そしてメモを春樹に渡した。
そこにはー…。





「椿紫陽花」

255:大和:2012/12/19(水) 21:37 ID:P96

「……オイオイ、これどう見たって花の名前だろ?」
「…つばき、あじさい。どうだ?」
「なんでこの2つの花なんだよ」

春樹は椿紫陽花という名前に呆れていた。
どちらかが花や植物の名前ならまだしも、
どちらも花の名前ではどっちがどっちだか分からない上に、
こんな名前では誰かに怪しまれることなど目に見えている。

「……やめろよ。他の名前にしろ」
「…椿…紫陽花……」

ロゼスがダブルカバーとなる
「椿紫陽花」と書かれたその紙を見つめながら呟く。
春樹はそんなロゼスを盗み見、ロゼスに問いかけた。

「この名前に…なんかあるのか?」
「…いや、、なぁ、これってーー…」

ロゼスはそう言いかけて翁のほうを振り返る。
すると翁はきましたと言わんばかりに答えた。

「あぁ。オイ、オマエ自分の母親がなんの花が好きだったか覚えてるか?」
「え?母親………!!!!ぁ、紫陽花だ!
…父親は…うん、椿が好きだった。それで、か……」
「そうだ、そういうことだ」
「………ありがとう」

春樹は新しい名前が自分の親が好きな花の名前だったとわかり、
貰った名前をとても気にいっていた。
春樹にお礼を言われた翁とロゼスも満足そうにしていた。


それから、春樹のダブルカバーを使った生活が始まった。
しかしいくらダブルカバーといえども名前が変わるだけだった。
最初はあまり慣れなかったものの、今ではもう慣れたものだった。
そう。
この子には才能があった。

256:林檎:2012/12/24(月) 22:38 ID:CGY

半分読みました。
長いので続きは明日見ます。
でも、半分見ただけでも
面白いです!
文章力があって羨ましいです♪

257:大和:2012/12/26(水) 21:38 ID:P96

翁やロゼスが驚くほどの才能を持っていた。
ダブルカバーの使い分けが出来ている。
名前を使い分けるということは上辺だけに聞くと簡単に聞こえるが、
実は物凄く難しいものだ。
ダブルカバーとわかっていても反応が戸惑ってしまったり、焦ったり。
しかし春樹は平然と、その貰った名前を自分のものに使い分ける。

「……驚いたな。ここまでできるとは…」

とある日の夜遅く、ロゼスと翁は二人であの暖炉の前に
腰掛けながら春樹のことについて話した。

「……あぁ。あそこまでとは思わなかった」
「…予想外だ」
「そろそろ、手放す時かもしれない」
「……?なんだって?」

翁の一言にロゼスは驚きその場から立ち上がる。

「もしかしたら……もう紫陽花は…春樹はここにいれないかもしれない」

天と地は入れ替わる。

258:大和:2012/12/27(木) 08:59 ID:P96

「待て…どういうことだ…?」
「あまり大きい声を出すな…」

驚きのあまり声を荒げてしまうロゼスに、
翁は落ち着くようなだめる。
そうするとロゼスは自分が興奮仕切っていて我を忘れていたことに気づくと、
静かにまた暖炉の前に腰掛けた。

「おそらく…だがな。
 アイツ等に春樹がここにいることがバレたかもしれない、ということだ」
「…何故?ここは万全だったはずだぞ?」
「私達がさらわれた春樹を助けた時、アイツらに分かった情報はただ一つ。
二人の男、すなわち私とオマエと一緒に春樹がいる、ということだけだ」

母親が殺されがけでもさらわれたあの日。
それを見かけて助けた翁とロゼス。
相手に漏らした情報といえばごく一部であり、
そう簡単に見つかるはずがなかった。
相手もこれだけもらった情報が少なければ、
春樹を探すのに手間暇がかかった。
しかし。
一人の男が気づいた。
翁は春樹をさらったヤツらの元ボスである。
相手は翁が住んでいるであろう地区を探し、
更にその中から高齢の男性ということをキーワードに探し出した。
その結果。
複数件に絞られた。
そうともなればあとは全ての家を回れば全てが分かる。
だがそれを翁は悟った。
やけに捜索している気配がないこと、
最近よく
「高齢の家をヘンな尋ね屋が訪ねてくる」
という噂を聞いたこと。
条件は揃った。
翁はとうとうロゼスに時がきたことを伝える。
するとロゼスは重い顔をしながらも頷いた。

「分かった。明日早朝に春樹を日本へ送ろう」
「それが最期の務めと思え」

259:ささかま:2012/12/27(木) 17:14 ID:hn6

どうも!

うますぎだっ

260:りっさん (*´∀`):2012/12/27(木) 17:21 ID:SEc

長かったですけど
上手ですね!引き続き頑張って下さい

261:大和:2012/12/28(金) 22:17 ID:P96

また起きた時には、違う目覚めが待っていた。
木造の天井。
広い部屋には草の匂い、鮮やかな畳の匂いか漂う。
どこか足腰が少し痛む。
重い布団。寒い部屋。
完全に世界は180度変わっていた。

「…ッツた…なんなんだ…?」

腰を抑えながら上体を上げると今までとは全く異なる景色。
不安が一瞬にして春樹の心に落ちてきた。
まるで水に絵の具が溶けるかのように広がる。

「……え……?」

どうすればいいかもわからない。
そんな状態のままふと枕元を見ると、
{起きたらお呼び下さい}
と、日本語でそう書いてあるのがわかった。
いくら英国で生活してたと言っても、
翁とロゼスが春樹に気を使い、普段は日本語での生活をしてたため、
もちろん英語もわかるがまだ幼い春樹には日本語のほうがしっくりくる。
とにかく人を呼ぼうと声を上げようとした時ーー…

「起きなはりましたか?」
「…ぁ、あぁ」
「失礼してもよろしぃですか?」
「ん、うん…いい」

いきなり声をかけられ春樹は驚きながら返事をする。


ーーそして襖を開ける直前、女は笑う。

262:大和:2012/12/29(土) 09:19 ID:P96

「では……」

そう言って入ってきたのはとても美しい女性だった。
一瞬その女性に見惚れたが、春樹は警戒心を丸出しにした態度をわざととる。
すると女性はニコリと微笑みながら言った。

「なんや……そういう顔するとあの女にそっくりやねぇ…」
「……あの女…?」
「アンタの馬鹿母親んことよ」

いきなり部屋に入ってくるやいなや、
母親の話をされしかも侮辱され。
意味がわからなかった。
しかし、同時に母親のことを侮辱され致が頭に昇っていたのも確かだった。
女はそんなこと気にもせずに持ってきたおぼんの上のきゅうすに手をとる。
薄気味悪く笑う女にますます怒り気がして春樹はついに怒鳴った。

「オイ、今オマエ母親のことをなんてー…」

そう言いかけた時、
その春樹の怒鳴った声よりも大きい声がその部屋に響いた。

「今はお茶をやっとるんよ!!
静かにしてられへんの!?」
「…っあ………」

春樹は今自分のいるところがどこだかもわからずに、
ついつい血が昇ってしまった拍子に声を荒げてしまった。
もしかしたら地域的に作法というものがあり、自分はまずいことをしてしまったかもしれないと春樹は思い、
春樹はそこで静かにすることにした。

「なんて行儀が成ってない子なんや!!
 しかも紫陽花なんて…女でもないのにそないな名前…気味悪いわ!」

しかし春樹は思う。
きっとさっきのは作法ということもあるかもしれない。
けれど………明らかにこれは侮辱の意味が入っている、と。
もう我慢できるわけでもなかった。
せっかく貰った名前を気味悪いなどと。

「ふざけるの大概にしろよアマぁあ!!!」
「……っ、き、きゃあぁああ!!!」

女がついでいたお茶は全て春樹によってひっくり返され、畳は濡れ。
女はその場で悲鳴を上げた。

263:大和 ◆U7Pg:2012/12/31(月) 14:11 ID:P96

一瞬、全てが音を無くしたかのように静まった。
しかしすぐに襖の奥から多くの板を駆ける足音が聞こえてくる。
そして襖を大胆に開けられると誰だかも知らない人達。

「……!!!なにしてはるんですか!!!
  …!!菊さん、大丈夫でっか…!?」
「なんなんだこの少年は!!」
「だから英国からの子なんて預かりとうなかとよ!!!」
「…鬼!!!悪魔ァ!!」
「早出てってほしいわぁ!!!」
「なんでウチにこんな不幸がこなならんの!!」
「出ていけぇえ!!!!!」

天気がいい日だった。
椿が咲いていた。
けれどその椿は雪の重さに耐えきれず、
首のように重い音を残して落ちた。
跡形は雪のおかげで見えなかった。
ちらほらと雪はふっていた。
綺麗だった。
服に少し重い違和感を感じた。
なにかが入っていた。
ロゼスと翁が使っていたやつだった。
異常はなさそうだった。
使い方は見よう見まねで知っていた。
「菊」と呼ばれてた人はなにもしてない少年に、
「あの子があの子が」と言っている。
周りの分からない輩達は「菊」を取り囲みながらも少年へと暴言を言っていた。
皆、少年を見てなかった。
少年は雪を見た。
少年ははじめて使った。

はじめてやってみた。


すると菊という人の前にいたうちの一人が立ってたはずなのに、
へなへなと座りこんだ。

赤かった。

殺した。

はじめてだった。

264:大和:2013/01/02(水) 00:28 ID:P96

そこからの春樹の生活など火を見るより明らかだった。
結局、あの銃に弾は一つしか入ってなく大人達に恐れられたが
弾が入ってないとわかると一斉に春樹を取り押さえる始末。
しかし取り押さえられながらも春樹は無言無表情でされるがまま。
まるで魂が入っていないかのように。
寝る場所も畳ではなく馬小屋に入れられ、
馬と同じにされてはいつ蹴られて死ぬかもわからないため、
この雪が積もる中ただ一人外で寝るのだった。
朝は早く起きてこの広い家中全てを
井戸からくんだ冷たい水で雑巾を絞り拭く。
なのに朝のご飯は質素な上、周りからの扱いは人を見る目ではない。
まるで汚いものを扱う様。
それでもこの生活から抜け出そうとしない春樹には一つの留めがあった。
それはロゼスと翁からの手紙。
唯一自分をわかってくれている二人から届く手紙は、
月に1回ぐらいの割合であったが、
春樹にとってはそれこそが自分の生死をわける大きな糧となっていた。
だからどれだけ周りからイジメを受け、人として見られなく、
見下され、生活がままならなくとも。
二人からの手紙だけで十分だった。

ーー春樹が日本に来てから2年程、
  もうなにをされることにもそれが普通となってしまった頃……
いつものように春樹は月1回の手紙を食い入るように見ていた。
最初は挨拶文がきて二人のたあいもない話が書いてあったが、
最後の所に少しだけ。
しかしとしても重大なことがかかれていた。

265:大和:2013/01/04(金) 21:50 ID:P96

その内容は春樹への秘密警察入門の誘い。

春樹に…もしその気があるのなら、
俺達の仕事している秘密警察に入ることをすすめるよ。

手紙にはその文章の前にインクが落ちたと思われる跡が残っている。
きっとこの文章を書くかどうか迷ったのであろう。
春樹は天の助けがきたと錯覚までした。
この人として扱われない生活から出ることができると。
春樹はすぐに和書を貰うと習った英語で秘密警察入門をすることを伝えた。
しかし、あまりに浮かれた春樹は
かつての名前を変えた頃の春樹とはなにもかもが違っていた。
例えば。
いつもは無表情で指示に従うはずが聞こえのいい挨拶を返したり。
掃除を決められた時間以上やったり。
馬が見ても変わりがわかるくらい。

そうして掃除を終え、少し小走りに部屋に戻ろうとした時、
廊下の向かい側からあの時の菊という女が歩いてくるのが分かった。
ここでは特別に春樹が絶対に守らないればならない掟というものがあった。
家の者とすれ違うときはどのような時であっても深い礼をしなければならない。
一度それを破ったときのお仕置きはひどいもので。
そこからは春樹は礼をするようになった。

266:大和:2013/01/05(土) 18:49 ID:P96

静かにそっとお辞儀をして相手が通り過ぎるのを待つ。
そしてすれ違い際、菊という女はその赤い唇を春樹の耳元にもってくる。

「随分な浮かれようですねぇ……
 なにええことあったか知らへんけど、あまり調子にのらんことや。
 自分の立場いうもんを考え」

そう囁くとまるで自分を高嶺の花というかのように廊下を過ぎていく。
けれど……もし今までの春樹でいたなら、
ここで強く拳を握り手に血が滲んでいたことだろう。
だが春樹は手を拳にして握ることもない。
口元は微かに緩むばかり。
そして春樹も菊とは違う方向に真っ直ぐ、
まるで自分が鷹になったかのように廊下を歩いていった。

「へぇ……身の程知らずなお嬢様じゃないか」

それから数日後、
春樹はあの英国にいた頃からに比べてとても大人になった。
現8才。
自分の仕事を一仕事終え、部屋に戻ってきた春樹。
最初のころはそれこそ自分の部屋と呼べるのは馬小屋だったが、
最近は汚いが空き部屋をもらえることになった。
そうして一息入れようとした時、
襖の奥から一人の声が春樹に声かける。

「客が見合えやで、はよ出てきぃな」

ここの家のお婆様だ。
この家は代々からお婆様の言うことは絶対らしく、
誰もこのお婆様に逆らったことはない。

「はい、わかりました」

数年間ずっと外には出ず、家の仕事をしていた春樹には客など覚えがなかった。

「あの……すみません、俺、客など覚えがないのですが」
「声を出さんといて。あんたの声は騒音やわ」

自分の質問一つにさえまともに答えてくれやしない。
一体お婆様は自分をどのような目で見ているのだろう。
そう感じたが「騒音」とも言われればそんな気は一気に失せるだけだった。

267:大和:2013/01/06(日) 18:31 ID:P96

春樹の前にはお婆様が歩いている。
襖の前までくると小さくお婆様が言った。

「今までのことは決して無駄にはならへんよ。
 あんたにとっては無駄知恵でしかならんやろけど……
 あんたは強おなっとる。それは私かわかっとる。
 その事実だけでええのや、もう生きれる」

最後に発された言葉だった。
春樹は目を見開く。

「え、お婆様……」
「声を出したらアカンといったやろ?」

お婆様と呼ぶ声は遮られ、襖を開ける音にその全ては消えた。
襖を開けるとそこには見慣れた二人が、
慣れないはずの正座をしながらおちらを向く。

「……!!」
「やあ、紫陽花、元気だったかい?」

嬉しさを抑えきれなくなった春樹は変えられた名前の「紫陽花」と呼ばれ、
そのロゼスと翁の胸の中に飛び込んでいった。
そこからお婆様と翁達が話をすることなく春樹はここを出ていくということになっていた。
何故か既に春樹の荷物はまとめてあり春樹はこの家を出る。

今日も雪が降っていた。

そして出際、春樹は振り返り深くお辞儀をする。
それが、これが、ここで最後の礼儀だとどうしてか思ったからだ。
しかし、この家を出ても春樹の心は重くも軽くもならない。
普段通りな春樹を見て翁は白い空を見上げながら言った。

「家には愛着というのがわきやすいんだ」

雪は止む様子もなく降り続ける。
今までをかみしめるように春樹はこの雪道に足跡を残して歩いて行った。

268:大和:2013/01/08(火) 18:13 ID:P96

それから春樹はすぐに秘密警察の養成所へと入れられた。
しかし養成所はそう甘くなかった。
毎朝起きる時間は不規則で朝からやることは大量。
おまけに訓練もしなくてはならないという過酷なもの。
それでも春樹は平然としていることができた。
そう、あの頃に比べたらどんなに可愛いことだろう、と。
だが春樹に友達はできなかった。
なぜか人が寄ることはなかった。
こうして今まで友達がいないままーー

「俺はここまできたんだよ」

春樹は生きてきた。
翁の好きな紅葉。ロゼスの好きな向日葵。
それは言わないけれど。
でも本当に綺麗だった。
あの二人が好きと言った花を見た。
どちらも季節は違うけれど、
とれも魅了された。
自分自身でも好きだと思った。

「確かに向日葵紅葉は偽名ではある。
 ……けど、けど俺は、この名前が好きなんだ」

観察型隊長。
「可愛い」の仮面を被るみんなのお友達。
一番接しやすい隊長。
誰よりも笑うことを望む。
向日葵紅葉は誕生した。

「……名前は嫌いじゃないよ、名前は」

妖しく微笑む少年、白夜昴は歩いて行った。
春樹は、紅葉は。
その背中を見て面影を視る。
自分がその後ろで笑っているところを。



〜向日葵紅葉過去編〜
終劇。

269:大和 ◆U7Pg:2013/01/10(木) 21:05 ID:P96

向日葵紅葉過去編、終わりました〜!!!
なんか予想以上に長くなってしまいましたが……
無事に………終わった…。。

現在である、紅葉と昴の出会いと
過去である紅葉のここに至るまでの過去。
そしてまた現在に戻った。
という感じの高度な文章力が必要とされる構成の中で書いていきました。
残念ながら高度な文章力は僕は持ち合わせてないので
皆さん場面転換が読んでて大変だったと思います。
すみません………。


さて、この過去編は全員やることになってるので…
まだまだ一人ですね!幹部は10人…+総長……
計11人を予定しております。
あんまり出てきていないキャラや見ていないキャラを知っていただけたらと思います。

現在の時間も進みながらの過去編も入るので、
どうぞ世界観を楽しんでいただけたら幸いです!!

270:大和:2013/01/11(金) 23:03 ID:P96

向日葵紅葉が昴を見送ったと同時に、
紅葉のよく知る人物が来た。

「おい紅葉。次は移動教室だ。急げ」

相変わらずの顔色一つ変えずに来るのは紅葉の幼なじみである響如黒であった。
資料やノートを片手に持ちながらやってきた彼は、
紅葉が見つめていた方向を同じように見つめ言った。

「……白夜昴のことか」
「まぁね。……如黒、」
「なんだ」
「俺達の出会いって、どんなだったっけ?」

唐突にそんな質問を投げかける紅葉にまたも如黒は平然と答える。

「……わりと苦い思い出だがな」
「そうだっけ?」
「あの時期(とき)のことはあまり覚えてもいないしな」
「……俺は覚えてるよ。
 忘れもしないよ、如黒との出逢いは」
「なにを恥ずかしいことを言うか」
「ははは、俺はそういうヤツだからね」

今だけでいい、少し過去を見るだけだ。
思い出話に花を咲かせることはできないけれど、
思い出話をしながら彼等が校内へと戻っていった。
とまりかけの時計が動いた、
向日葵紅葉と響如黒の出逢いを。
過去を。

271:大和:2013/01/12(土) 17:45 ID:P96

〜響如黒過去編〜
〜漆黒に染まる影絵は、光失う〜

それは向日葵紅葉がまだ日本に来て間もなく、
家のものにも酷い扱いをされていた頃ーー
天は白一色に染まり、色在るものを更に際立たせて雪は積もる。
日本の冬は終わりを隠すように白で目を眩ませる。
いつものように外と雪かきをやっていた紅葉の手はかじかみ、
既に手の感覚はなくなっていた。
やっと玄関の雪をはらい終わり、紅葉は一息つこうとした時だった。

「すみません、ここは薄羽様のお宅であっておりますかな?」

白い息を吐きながら、そう老人が紅葉へと問いかける。
紅葉はかじかむ指先をさすりながら、笑顔で答えた。

「ええ、そうですよ」

紅葉が居た家は「薄羽」といい、代々受け継がれてきた薬屋だった。
それも大きな薬屋だったこともあって、
お客が来ることはよくあり、こうして玄関掃除をしている時に来るのは
そうめずらしいことでもなかった。

「そうですか、奥方様はいらっしゃいますかね?」
「はい、奥様ですね、いらっしゃいますよ」

奥方様というのは「薄羽家」でやっている「薄羽薬剤」の
今の代である旦那様の奥様に当たる人である。
それが故に、旦那様は家に居ることは少なく、
家の中でも一番偉い人と言ったらこの奥方様と呼ばれる「お婆様」だけだった。

「すみません、申し遅れました。
 私は紫陽花と申します」
「いえいえ……こちらもですよ。
 私は響(ヒビキ)と申します。……紫陽花様ですか、お綺麗な名前ですね」
「いいえ、ありがとうございます」
「ほら、如黒(ゴトク)、挨拶を」

白くて見えなかった人物像は近づいてやっと見えるほどだった。
よくよく見ると相手はお爺さんと呼んでもおかしくない歳であった。
更には隣に紅葉と同じくらいの少年が響と名乗った人の隣にいた。

「響如黒。
 ……よろしく」

お爺さんに急かされながらも言ったその時、
互いになにかが動くのを感じた。

272:大和:2013/01/12(土) 21:37 ID:P96

「……よろしく。
 では、こちらですよ」

如黒という人物と軽く挨拶を交わすと、
紅葉は家の中へと二人を案内した。
葉の上に重く乗った雪は滑り落ちる。
中に入って家の人に
「こちらの二人を奥様に案内して下さい」
と喉まで言いかけた時だった。
紅葉の後ろにいる二人の姿を目にした家の人は、
自分の持っていた洗濯物が落ちても目にもくれずにこちらに走ってきたのだ。

「ひ、響様 !!いつこちらに参られたのですか !?
 迎えを申しつけてもらえば、お迎えに上がりましたのに……」

今までに見たことのない驚きを見せられ、
逆に紅葉は焦りを感じる。
こちらに向かってきた家の者は、
二人の肩にかかったおそらく傘から漏れたであろう雪を払っていた。

「申し訳ございません……。
 このような外道な者に案内させてしまい !!
 奥様はこちらですよ……」

そう紅葉のことを侮辱しながら家の人はお婆様のもとへ案内した。
しかし案内し際に家の人は静かに紅葉に命を下す。

「……そこの洗濯物を片付けて、仕事に戻りなさい」
「はい」

単調に返事をし、家の人が落とした洗濯物を取りにいく。
家の人に案内されて行く響如黒の姿をただ見つめていた。

273:大和:2013/01/12(土) 22:03 ID:P96

響如黒は案内人の人を睨みつけながら歩いていた。
普段から目つきが悪く、普通にしていても睨まれていると勘違いされることが多々ある如黒。
周りから見ればものすごい形相であった。
冬の寒さで床は凍るような冷たさは足袋を履いていても感じられた。
そんな如黒の形相を見て、お爺さんは案内人に聞こえないよう問いかける。

「どうした、感情が顔にでているぞ…… ?」
「え ?そうですか……」
「どうしたんだ ?」

自分の顔がこわばっていたことを言われた如黒は、
自分の顔がこわばっていたことに気づく。
急いで顔を緩め、元に戻す。

「……何故。何故あの少年をあの人はあんな扱いをするのかと」
「身分の違いにあるんだろう」
「今の世代にですか ?あまりにも酷いものだったので……」
「確かにな」

そこで会話は途絶えた。
それと同時に二人はおそらく大きい部屋であろう襖の前に立つ。
案内人はその襖をゆっくりと開ける。

274:梅子 ◆xgV2:2013/01/14(月) 10:16 ID:gTo

本編から全て一気読みしました!!

本編、桜さんと、総長の恋に泣けました
正直、スミレが……邪魔してたと感じましたが……
上から発言すいません!!

番外編、スミレと光也くんの恋の結末はどうだったのかなぁとも
思っています
過去のとても面白かったです!!

続き楽しみにしています!!

275:梅子 ◆xgV2:2013/01/14(月) 10:41 ID:gTo

すみません!
感じましたが……ではなく、感じました です!!

なぁともじゃなく、なぁと です!

本当にごめんなさい!

276:大和:2013/01/14(月) 10:52 ID:P96

いえいえ、読んで頂けてとても光栄です。
ありがとうございました!!
本編からだと長いのでなかなか読んでくださる人がいないのですが、
ここまで読んでもらって嬉しいです!
本当にありがとうございます!

277:梅子 ◆xgV2:2013/01/14(月) 11:14 ID:gTo

お礼を言われる程の者じゃありませんよ!!
いやいや、マジで面白かったので長いとか思いませんでした
嬉しいのですか!そう思って頂き嬉しいです♪
続き頑張って下さい!!応援してます(陰ながら……)

突然なのですが……呼びタメOKですか?
嫌ならいいのですが…

278:大和:2013/01/14(月) 11:18 ID:P96

ははは、僕のとこは読者が少ないので応援してくれると励みになります〜!!
続きもがんばっていきたいと思いますね!

ええ、全然大丈夫ですよ〜

279:梅子 ◆xgV2:2013/01/14(月) 11:22 ID:gTo

読者が少ないのですか!?こんなに面白いのに……
頑張ってくださ〜い♪

マジですか!良かったです〜
あの……ではOKでしょうか?

280:大和:2013/01/14(月) 11:24 ID:P96

はい、頑張りますね〜!

OKですよ!

281:梅子 ◆xgV2:2013/01/14(月) 11:27 ID:gTo

\(`・д・´)フレフレ大和さん!!

恐れ多いながらもこれからはタメで……

282:大和:2013/01/14(月) 11:39 ID:P96

了解です〜〜!!

283:~q ◆xgV2:2013/01/14(月) 11:58 ID:gTo

桜さんと総長のラブラブして欲しいなぁ〜なんて思って((お黙り!

紅葉さんと如黒さんの出会いが意外だった!
続き頑張ってね♪

284:大和:2013/01/14(月) 12:14 ID:P96

過去編は一段落したらまた始めるよ〜

頑張ります!

よし……そろそろ続きを……

285:梅子 ◆xgV2:2013/01/14(月) 12:18 ID:gTo

マジですか!?楽しみ〜♪

頑張って頑張って!!

286:大和:2013/01/14(月) 13:25 ID:P96

「失礼致しまする、薄羽の奥方様」
「まぁ……お久しゅなっております」

お爺さんが深く礼をすると、
襖の奥にいたお婆様は驚いたように挨拶を交わした。
如黒(ゴトク)も会釈を交わし、二人で部屋へと入る。

「今日は響の若様もお出になられたんですか……
 大きくなられましたねぇ」
「はは、そうでもないですよ」
「こう見えても蘭学は得意な孫でね、助かっているんだ」

無口無表情な如黒にはめずらしい微笑みにお爺さんは、
「挨拶の顔」はわかっていることを知り、
安心しながらも自分の孫の蘭学の成績を誉める。
蘭学とは今で言う医学のようなものである。
そのことながら覚えることがやまほどありその世代で蘭学を得意とする生徒はあまりいなかった。
特に折り入った話をするまでもなく久しぶりに会ったことで話を花を咲かせていた。
先程の案内人がお茶を淹れてもってくる。
熱いお茶は、まだ外から来たばかりの二人の体を暖かくしてくれた。
お茶も飲み、ひと息ついたところでお爺さんは如黒へと視線を送る。

「……すみません、ここの境内に興味があるので
 少し廻らせてもらってもよろしいですか」
「若様がここの境内にですか?
 構いませんよ、すぐに案内人を用意させますわ」
「それは構いません。案内人は不要ですよ」
「そうですか……。ならご用はお近くの使いにでも申しつけ下さい」

そう言われて如黒は静かに立ち上がる。
ここに来るまえから既に言われていたのだ。
合図をしたらなんらかの理由をつけてその場から呼ぶまで去ってくれ、と。
言われた通り如黒は合図をされ、境内を周りたいと言ってその場を立ち去ることにした。
如黒の家、響家は代々薄羽家と契約を結ぶ医者の家であった。
しかしながら最近は訪ねてくる患者だけでなく、
秘密警察の呼ばれる警察という仕事の
裏の仕事をしている人達の専用医療にも力をいれるようになった。
それで今日の話は特殊な薬を作るための研究相談などというものだろうと如黒は見込んだ。

襖を開け、部屋の外に出ると先程のような冷たい空気が如黒を包む。
とにかく家の中を廻ろうとした時、玄関から何故か怒鳴り声が響いた。

287:梅子 ◆xgV2:2013/01/14(月) 14:47 ID:gTo

秘密警察キターーー!!!(´д`;)カッコイイ
く、薬……なにか怖い……(°д°|||)

怒鳴る声?誰の声なのかなぁー…

288:大和:2013/01/14(月) 17:21 ID:P96

如黒はそっと足を忍ばせながら玄関へと近づいた。

「もう一度やってきなんし !!」
「……洗濯物はもう済みました」
「なにを口応えしはるの !!」
「本当のことですから」

玄関に立っていたのは、先程と案内人と玄関で会った少年だった。
女性であった案内人は「紫陽花」と名乗った少年に、
ひどく怒りをぶつけている。
この頃、まだ紅葉の名前は「紫陽花」のままであった。
少年は泣くどころか、案内人を見つめたまま。
むしろ揺るがぬ決心をした目で挑んでいた。

「先程落としたのは貴方でしょう ?
 それを何故僕がもう一度洗わねばならないのですか」
「あの洗濯物はお婆様のや、一つの汚れも許されへんからよ !」
「だから、何故それを僕がーー」

理不尽で意味がわからないといった様子で少年は反論を続ける。
その少年に案内人はついに頭に血が昇ったのか手をあげた。
渇いた音が冷たさをまとう廊下に消える。
少年は叩かれた拍子にこちらを向く。
一瞬如黒を見て驚き目を見開いたものの、
またすぐ元の表情に戻るだけだった。

「わかりました、洗濯物は私がやりはります !
 アンタは許可が出るまで外の雪よけときぃや !!」

そう言い残して案内人は紅葉の足元にあった洗濯物を取り、どこかへ行った。
その場に佇んでいる紅葉はやがてまたこちらを向く。

「……恥ずかしいところを見られましたね、
 申し訳ありません」
「特に構わない。これはもう日常茶飯事か」
「そうですね、もう慣れましたが。
 物事など所詮は慣れだと知りました」
「面白いことだな」

何故だか少年の言うことに如黒は笑えた。
所詮物事は慣れだと平坦に言う少年に。
平手で打たれは頬は赤くなり、痛みを味わわせる。

「では、雪仕事がありますので」
「……境内の案内をしろ」
「僕が、ですか ?」
「……嗚呼」
「御意」

頬と同じ色に染まる手は冬の冷たさの厳しさを表していた。
それを見て如黒は、どんな難しい蘭学を解くことよりも
あんな雪仕事をするほうが厳しいと感じた。

「まずどこからがいいですか ?」

造り笑いの少年の問いかけに自然と笑みがこぼれた。

289:梅子 ◆xgV2:2013/01/14(月) 18:55 ID:gTo

おぉ!紅葉さん、強い!!
案内人……参りましたって感じに…w

如黒さん、心が穏やかですね〜♪
というか、紅葉さんのあのショタの仮面んは何処へ……(違うっけ?)

290:大和:2013/01/14(月) 19:26 ID:P96

そうですね……;;
この頃はまだ紅葉のショタ…というか「可愛らしさ」の仮面が作られてないですね……

291:大和:2013/01/14(月) 19:49 ID:P96

「ここは庭園になります。 
 この庭園は代々に仕える庭師がやっており非常に綺麗な造りになってますよ」
「見事だな」

如黒は口数が少ないながらも、
紅葉の魅せる家の景色に少なからず見惚れていた。
しかし本当に薄羽家は綺麗であった。
庭園は庭師が丁寧に手入れしており、
まず顔である玄関も綺麗に掃除がしてあった。
それてこの2つの箇所だけではなく他のとこでも言えること。
廊下を歩いていても埃一つとしてない綺麗さ。

「ここの家は毎日こんな念入りに掃除してるのか。
 使用人を何人使う ?」
「……使用人など使いません。僕一人です」
「使用人がオマエ一人 ?」
「違います、使用人はもちろん沢山いますよ。
 けれど庭園以外の仕事での掃除はほぼ僕一人ということです」
「一人…… ?」

如黒はこの隅々までに手入れが行き届いた掃除を
紅葉が一人でやったと言うことに驚きを隠せなかった。
普通の家となど比べものにならないくらい大きい薄羽家。
この薄羽家の掃除をほぼ一人でやっているなど到底信じ難い事実。

「……なんだ、オマエは犬なのか」
「周りから見ればそうなるでしょう」
「音を上げそうなタイプでもなさそうだしな」
「基本負けるのは嫌いなもので」

二人にとってお互いとはとても新鮮なものであった。
紅葉は如黒を、如黒は紅葉を。
だが互いに一緒にいることを不思議にも異常にも違和感なく感じられる。
庭園を前にした二人は降る雪を見つめる。
風に乗った雪はこちらまで飛んでくる様だった。

「椿に乗る雪は絶景だ」
「……首を落として死にますけどね」
「それがいいんだ」
「そうですか」

目の前に咲く紅色の花。
椿の上にしなやかな雪は乗る。
花弁に乗りすぎたその雪の重みに耐えられず、
やがて椿は自らの首を切る。
そしてよく咲いた顔を残しながら消えてゆく。
その時の紅葉と如黒にどれほど綺麗と思わせたことか。

292:大和:2013/01/14(月) 19:49 ID:P96

「ここは庭園になります。 
 この庭園は代々に仕える庭師がやっており非常に綺麗な造りになってますよ」
「見事だな」

如黒は口数が少ないながらも、
紅葉の魅せる家の景色に少なからず見惚れていた。
しかし本当に薄羽家は綺麗であった。
庭園は庭師が丁寧に手入れしており、
まず顔である玄関も綺麗に掃除がしてあった。
それてこの2つの箇所だけではなく他のとこでも言えること。
廊下を歩いていても埃一つとしてない綺麗さ。

「ここの家は毎日こんな念入りに掃除してるのか。
 使用人を何人使う ?」
「……使用人など使いません。僕一人です」
「使用人がオマエ一人 ?」
「違います、使用人はもちろん沢山いますよ。
 けれど庭園以外の仕事での掃除はほぼ僕一人ということです」
「一人…… ?」

如黒はこの隅々までに手入れが行き届いた掃除を
紅葉が一人でやったと言うことに驚きを隠せなかった。
普通の家となど比べものにならないくらい大きい薄羽家。
この薄羽家の掃除をほぼ一人でやっているなど到底信じ難い事実。

「……なんだ、オマエは犬なのか」
「周りから見ればそうなるでしょう」
「音を上げそうなタイプでもなさそうだしな」
「基本負けるのは嫌いなもので」

二人にとってお互いとはとても新鮮なものであった。
紅葉は如黒を、如黒は紅葉を。
だが互いに一緒にいることを不思議にも異常にも違和感なく感じられる。
庭園を前にした二人は降る雪を見つめる。
風に乗った雪はこちらまで飛んでくる様だった。

「椿に乗る雪は絶景だ」
「……首を落として死にますけどね」
「それがいいんだ」
「そうですか」

目の前に咲く紅色の花。
椿の上にしなやかな雪は乗る。
花弁に乗りすぎたその雪の重みに耐えられず、
やがて椿は自らの首を切る。
そしてよく咲いた顔を残しながら消えてゆく。
その時の紅葉と如黒にどれほど綺麗と思わせたことか。

293:大和:2013/01/15(火) 21:18 ID:P96

「……俺はあの椿のように簡単に折れたりなどしません」

ふいに出た言葉はもう今更に消えない。
何故だかあの椿を見て自分を見ているようでならなかった紅葉はそう決意を発した。
どれだけに雪が重かろうとも募ろうとも、
絶対に折れたりなどしない。

「逃げない根性だけ誉めよう」
「強くなるんです」
「口だけなら簡単だ」
「……俺は秘密警察という組織に入ります」

その言葉を聞いて如黒(ゴトク)は耳を疑った。
最近家でよく聞いた名前だった。
秘密警察。
警察の裏の組織であるが故に、表には漏らせないような
機密仕事……つまりは汚れ仕事などを中心とした活動を行っている組織のこと。
その組織に入れる確率は極僅か。
普通の警察官でさえも入れない、
言わばエリート中のエリートだけが入れる所。

「無謀だとは?」
「全く以て。俺は入るんですから」
「……なかなかの自信だな」
「先の事実を述べたまでのことですよ」

不適な笑みをこぼす紅葉に如黒はその時確信する。
確実にこの少年は秘密警察という組織に入る、
ということを。
どれだけ今の生活が苦しくとも紅葉が決した判断は絶対たがえない。

「もしオマエが入れるのなら俺は確実だな」
「……どうでしょうね」

外見に合わない少年達。
大人を目の前にしても揺るぬ信義。
子供らしさを失った子供。
それは大人にすらなったことを忘れ、
もはや自分がどの段階にいるのかもわからなくなった。

降り積もる雪は彼等の未来への糧。

294:大和:2013/01/16(水) 21:52 ID:P96

「……では、体が冷えますから行きましょう」
「そうだな」

白い世界を目の前にして二人は廊下を歩いていく。
寒さは体を刺激し、震える。
今がいつなのかもわからないほどに外は外見を変えずにいる。
しかし寒さが増してきたことを感じると、そろそろ陽が傾いてきたことを告げているようだった。
如黒は案内する紅葉の背中を見ながら歩いていた。
すると二人の後ろから、老人の声が二人を立ち止まらせる。

「如黒、如黒。帰るぞ」
「え?あ、あぁ。わかった」

お爺さんが如黒に声をかえると二人は振り返り、
如黒は返事をしてそのままお爺さんのほうに向かっていった。

295:大和:2013/01/17(木) 19:42 ID:P96

上げ

296:大和:2013/01/17(木) 21:10 ID:P96

「……では、お邪魔しました」

そうお爺さんが挨拶をすると如黒も静かに礼をした。
玄関には紅葉とお婆様が二人を見送る。
そして去り際、如黒は紅葉へこう言った。

「またあそこでな」

無表情の如黒には珍しい穏やかな微笑みを向けられた。
静かに閉められた戸の後の空気は最悪だった。
お婆様は紅葉の横にいながらも、二人が帰った方向を見つめるばかり。

「……アンタはんが案内しはったんやね」
「ええ」
「若様が汚れるわ。もうやめときい」
「はい」

今の紅葉にとってはお婆様の言葉にただ承知を挙げるだけで、
それ以外許されないことを知っていた。
反感を買うことは許されない。
紅葉とお婆様の関係を表すかのように、
その場は玄関であることもあってかよく冷えていた。

「では失礼します」
「…………」

またあそこでな。
と言った如黒の言葉は強い印象として紅葉の頭に衝撃を与える。
どこで会うかなど火を見るより明らかだった。

297:大和:2013/01/18(金) 06:38 ID:P96

一方の如黒たちのほうでも同じ話をしていた。
一面の銀世界の中を足跡を残しながら帰る二人。
雪よけ用の傘には既に多くの雪が積もってしまっていた。

「なぁ、如黒?」
「はい?」
「さっきの、またあそこでな、とはどういうことなんだ?」

特に如黒のほうを見るわけでもなく。
目の前の銀世界をただ見つめているだけだった。
お爺さんの質問に如黒は一息つけてから応える。

「……そう遠くはない未来の話です。
 案内をお願いしてる間にちょっと話したもので」

決して答えは言わず、けれど全てを隠さず。
そうお爺さんに如黒もまた銀世界を眺めながら言った。
なにか言いたそうにしているお爺さんの横顔を如黒は盗み見る。
しかしそれを悟っていながらも、如黒が口を開くことはない。
逆、お爺さんが口を開きかけた時、
その口をまた塞ぐかのように迎えの車が止まった。

298:大和:2013/01/19(土) 07:58 ID:P96

それから紅葉と如黒が出会うことは一切としてなかった。
そもそもあのお爺さんが紅葉の住んでいる、
薄羽家に来ることもないまま時間だけが紅葉の横を通っていくだけ。
そんな中、紅葉に届いたロゼスと翁からの手紙。
そこには秘密警察に入らないか、という誘いの手紙だった。
入る決意を前々からしていた紅葉は2つ返事で返し、
迎えが来ると同時に、秘密警察の養成所に入ることになったのだ。
養成所の入学式で紅葉は食い入るようにクラス表を見ていた。
既に自分の名前は見つけたが、そういうことではない。
「如黒」この名前を探していたのだ。
その当時の紅葉にとってはもうあやふやな記憶になりかけている如黒のこと。
あの一度きりの出会いから何年経ったことか。
それでも諦めずに「響如黒」の名を探す。
養成所はあくまでも養成所なので新入生は毎年多くいた。
しかしながら秘密警察にはいれる人など極僅か。
その中に自分も入ることを願って。

「……ぁつ…… !」

思わず大きな声を出してしまいそうになりあわてて口を抑える。
あったのだ。
「響如黒」の名前が。
するとふいに肩に重みがあることに気づいた。
そうして振り向くと一度きりであった人がいつもの無表情ながらにいた。

「……同じクラス、か。競い合いがいがあるな」

そう一言言い残して響如黒は自分の教室へと行った。

299:大和:2013/01/19(土) 08:14 ID:P96

そしてあれからというもの、
今の今までクラスが違ってしまうことはなかった。
この莫大な面積を使ったこの建物。
ほぼ最新技術のものを使い、常に学校自体を「更新」し続けてる。
それが今の秘密警察養成所。
学校に合わせた人数が入学し秘密警察には一部しか入れない。
そんな学校にはもちろん「モンスター」と陰で言われている、
並みを越した人物達もいた。
それが今の如黒と紅葉の現実でもあった。

「……ぁ、おい、あれ……」
「響如黒と向日葵紅葉じゃねぇか…… !」

入学してかなり経った今でも二人が違うフロアの階を通ると噂されることはあった。


「紅葉、鐘が鳴った。ほら、急ぐぞ」
「OK〜」

校内の庭にいた二人は白夜昴が既に行ってしまったほうへと走る。
そこにあった木々は優しく揺れた。





〜響如黒過去編〜


終劇。

300:大和:2013/01/19(土) 19:26 ID:P96

300っだぁああ!!!

如黒編も終わり300!!!!
俺にとっての300は大きい〜〜

ここまで感想やら雑談やらして下さった方々、
ありがとうございました!!

本当に感謝ぁああ!!!

残りは9人になった各々の過去編………。

是非読んでくださると嬉しいです!!


最近昴とか桜とか………出てきてないけど……
でもまぁ絶対出てくるんで。
応援してくださると嬉しいです!!


交流掲示板の友達、そしてpixivの絵師様、ツイッターの友達!!
いつも支援ありがとう!

301:大和:2013/01/20(日) 15:16 ID:P96

さぁ300いったわけですんで……
次の人物の過去編いきますか…………。

次の人はおそらく…ですが、本編を見ていた人でもうるおぼえであろう人です。

302:大和:2013/01/20(日) 15:32 ID:P96

〜仇緋我愁(キュウヒガ ウレイ)過去編〜

〜憂う日の誠俄かに戒めて〜


「あ、いた。愁ちゃん」

昼休みの教室は空になっており音のない空間が続いていた午後。
この9割が男と言われる秘密警察養成所にも、少なからず女の子がいた。
その内の一人、恋琴波は教室に一人で机に伏している仇緋我愁(キュウヒガウレイ)へと声をかける。
すると窓側の席である愁は伏したまま顔だけをこちらに向ける。
そこには愁以外の人はいなかった。

「どうしたの」
「ううん。大したことじゃないんだけどね。
 今年の秘密警察試験……結構手ごわいかもって……」
「……手ごわい?」
「うん。ほら、あの子だよ」

ショートカットに眼鏡をした琴波はとても真面目な子に思えた。
それに対して愁はとても長い髪をポニーテールと呼ばれる縛り方にし、
いかにも強さをイメージさせた。
そんな琴波は黒板へと寄っていくと、ある名前を綺麗な字で書きはじめる。

303:大和:2013/01/20(日) 20:27 ID:P96

「……なーに、その名前」
「わりと有名な人」
「白夜昴。……覚えがないわ」
「ふふっ、そうね」

伏していた愁は白夜昴と書かれた黒板に向かって歩いていく。
もう一度その名前を見つめ直すとすぐに黒板消しを持ってその名前を消す。
汚く消された黒板にもう名前は見えていなかった。
そして黒板の前に立っていた琴波に愁は言った。

「覚えはないけど記憶はあるわ」
「めずらしい、昔の男?」
「そんなんじゃないわよ、そうね_____ 」

窓からの風は愁の髪を撫でた。

「けっこう前の話かしら」

話出はこんな感じであった。

304:大和:2013/01/21(月) 18:53 ID:P96

愁の家はどちらかというとあまり裕福な家ではなかった。
両親は既に他界し、金を稼ぐ人といえば愁ただ一人。
愁には年の離れた一人の妹がいてその妹と生きるためにも愁は働かざるおえなかった。
まだ14か15ぐらいの歳であった愁は
その歳に見合わぬ容姿と性格から、
自ら枕仕事に挑んだ。
周りの人達から好かれていた愁は枕仕事などやめろと幾度となく言われたが、
今の生活の苦しさを考えては枕仕事を辞めるわけにはいかなかった。
更に愁自身、枕仕事への思いは、
「体を売る」という認識以外なかったため重く感じていなかったのだ。

しかしそれが天罰であったと後に知る。

「……ぁ……あぁ…… !!」
「ハッ、いい体してんじゃねぇの……」

肌を重ねる度に心の重さが増すだけ。
最初の頃の枕仕事の印象と後でとは大分印象は違っていた。
だが今更枕仕事を辞めるわけにもいかなく、
毎日働き続けた愁には背負いきれないほどのわからない重みが募る。
もう自分は汚れたんだと愁は確信していた。
同年代の子逹からも「汚い女」などと呼ばれてイジメられることもしばしばあった。
もちろん、イジメない子もいたが大抵そのような子は、
愁の体目当てが大半でもあった。
朝は学校へ行き、夜は仕事をし。
もう今がいつなのかさえわからぬ状況へと愁はなった。


そんないつもの仕事のことだった。

305:大和:2013/01/22(火) 20:28 ID:P96

夕方仕事へと行くとなぜかみんながバタバタと騒いでいて、
廊下を端から端まで往復したりと忙しくしていた。
その光景にわけがわからぬまま立ち尽くしていると、
ここの仕事の最高峰にあたる、女将さんが愁へと忙しそうに声かけた。

「愁、今日はお得意様の白夜の亭主様とその息子様がいらっしゃるの!
だから早く手伝ってちょうだい!」

それだけ言うと女将さんは廊下走っていってしまった。
いくら容姿が綺麗といえどもやはり年の大きさには勝てず、
愁はここの仕事場ではまだまだ下の身分の方であった。
下の身分であるからにして、こうして雑用を頼まれることも少なくない。
だからきっと今日は枕仕事のほうではなく、
雑用をするのであろうと予想しながらお出迎えの準備を手伝うのであった。

夜、夕方の明るさなど消え失せて
夜のきらびやかで艶やかな時がくる。
空には小さな星々が輝いていた。
そんな闇のなかで光る様々な店。
そこはまるで昔の吉原を思い出させるような風景でもあった。

「いらっしゃいませ、よくお越し頂きました」

そこの一角にある店、「徒然(ツレヅレ)」では今日も大きな客がみえていた。

306:大和:2013/01/24(木) 20:58 ID:P96

その大きな客というのが今日来る「白夜」家であった。
ここら辺だけでなく全国的に有名家な「白夜」家が訪れる店は、
貸し切りになり多大なおもてなしを持って迎える。
いまや大きな店で白夜の名を知らない店はなかった。
しかしここ「徒然」は白夜の亭主が昔から通っていたこともあり、
「大のお得意様」となっていた。

「久しぶりに訪れたが……ここは相変わらずだなぁ」
「恐れ入ります。さ、こちらへ」

「徒然」全員で白夜家の亭主とその息子を迎える。

307:大和:2013/01/25(金) 22:21 ID:P96

しかし今日は亭主とその息子だけではなかった。
なぜか小さな子供が亭主の後ろに立っていた。
女将さんがその子供の扱いに戸惑っていると、亭主は気づいたかのように言う。

「あぁ、悪かった。言ってなかったな、孫だ」

そう言って10ぐらいの子供の肩を抱く。
だがその子供は子供らしくない整った顔立ちをしていて気味が悪いくらい。
その整った顔立ちながらに無表情だがそれすらも綺麗と思わせた。
女の心を一瞬で奪う瞳と艶やかなその唇。
英国の血が混ざった青い瞳。
どこもかしこも人の目に入らざるおえない。

「あっ、お孫様でございましたか!
 申し訳ありません……!!」
「ほら、では行くぞ」

子供の肩を抱きながら息子と一緒に大部屋へと向かう。
そこの襖を開けるときらびやかな世界が広がっていた。
贅沢な食事が人数分以上に用意されていた。
そこに三人して座ると女達が寄りお酌をする。
徒然にはなかなかの美人がそろっていた。
けれどそんな大人な女達でも向かうのはみな子供のところ。
もちろん亭主と息子のところにも行ったが、
明らかに子供のところが多かった。
なぜならば先程まで無表情であった子供は微笑んでいたから。
その微笑みだけで心を奪うのは容易。

「若殿のお名前はなんと言うのですか?」

若い女は自分の欲望を抑えきれずに名前を聞く。
すると子供はまるで悪戯をするときのように薄く笑い、
その女の耳元で、かつ他のものにも聞こえるようにこう言う。

「すばる、ですよ」

それをちょうど新しい料理を持ってきた愁は聞いた。
その時、ふいに目があった。

308:大和:2013/01/26(土) 20:47 ID:P96

だが愁にとってはなにがそんなにいいのかわからない。
顔がいいのは分かった。
しかし感情の入っていないその子供を見て愁は綺麗と思うことはない。
そもそも、愁の身分でありながら
昴に媚び売ることなどできないと知っていた。
料理を置き、まぶしい部屋の外に出ようとしたその時_____

「おい、女。」

昴と愁の出会いは正確にはここから。
それも心底どうでもいいことのような言い方であった。
女達に囲まれる昴の視線には身分の違う愁。
ある意味愁と昴は似ていたのかもしれない。
柔らかい表情を魅せるくせに感情のない性格。

「気分がよくないんだ、別部屋を案内してくれないか?」
「あっ、それなら私がっ」
「俺は彼女に頼んでる、君は違うよ」

女の扱いなど手慣れのものであった。
他の女の戯れ言など気にしないかのように。
ずっと愁の方を見て。

「は、はい。かしこまりました……」
「いい子だね」

年下に見下されたようなことを言われるのに愁は少々気になったものの、
そんなこと考える内に世界か暗くなった。
廊下に出るとあのきらびやかなのは消え失せてこんどは暗さが愁と昴を包んだ。

309:大和:2013/01/29(火) 20:27 ID:P96

廊下は暗く、部屋の明かりだけが漏れていた。
すぐ近くの空き部屋へと昴を案内する。
そこまで二人が話すことなどない。

「ここで構いませんか」

そう言ってまだ暗い部屋の襖を開ける。
中に入って愁はロウソクに火をつけようとした。
その時、愁の耳元に違和感を感じた。

「ねぇ、こんな暗いところにきて、わざとなのかな?それとも天然?」
「……は、い?」

愁の手はそこで止まる。
昴がなにを言ったかわからずに戸惑っていると、
昴は愁を部屋の中にいれ、襖を静かに閉めた。
愁がまだロウソクをつけていないことをいいことに、
昴は愁へと攻めよる。

「……あたかも私が連れてきたような言い方をするのですね。
 気分が悪いと言ったのはあなたです」
「よく見れば年は同じくらい……なのかな?」
「同じくらい?まさか……アンタなんか私にとって男じゃないわ」

攻めよる昴に対抗する愁はすぐに惚れてしまう他の女よりも、
とても凛々しく見えた。
自分を失わないその精神。

「……その様子だと、俺に惚れこんでいるわけじゃないんだ」
「なんでそんな思考になるのよ」

もうこんな子供に敬語は不要だと愁は思い、いつも通りに話だす。
すると昴はなぜか嬉しそうにこう言った。

「だって、ずっと俺を見てたでしょ?」
「あぁ、悲しそうな子供だと思って」
「俺にあなたは寂しそうに見えるけどね?」

その言葉で再び愁はかたまるのであった。

310:大和:2013/01/31(木) 22:02 ID:P96

ぅわ〜〜い!!!((どーもり風な喜び

310だぁああ!!!!!!!

うん、、一歩一歩喜んでいこうと思いまして。
1日一回更新すれば、一年で300越すことに気づいたんですが……
意外と1日一回更新してなかった………!!!!
なんかショック!!
まぁ大変なときもあるので……
流石に1日一回はムリがありますが……
がんばりたいと思います。


今年の目標。

新作小説を書く。






嘘です。
幹部の過去編終わらせることですね。

まだ…何人だろ……紅葉、如黒、愁……えっ、3人?
…まだまだですね、、はい、がんばります。

311:大和:2013/01/31(木) 22:02 ID:P96

ぅわ〜〜い!!!((どーもり風な喜び

310だぁああ!!!!!!!

うん、、一歩一歩喜んでいこうと思いまして。
1日一回更新すれば、一年で300越すことに気づいたんですが……
意外と1日一回更新してなかった………!!!!
なんかショック!!
まぁ大変なときもあるので……
流石に1日一回はムリがありますが……
がんばりたいと思います。


今年の目標。

新作小説を書く。






嘘です。
幹部の過去編終わらせることですね。

まだ…何人だろ……紅葉、如黒、愁……えっ、3人?
…まだまだですね、、はい、がんばります。

312:大和:2013/01/31(木) 22:02 ID:P96

ぅわ〜〜い!!!((どーもり風な喜び

310だぁああ!!!!!!!

うん、、一歩一歩喜んでいこうと思いまして。
1日一回更新すれば、一年で300越すことに気づいたんですが……
意外と1日一回更新してなかった………!!!!
なんかショック!!
まぁ大変なときもあるので……
流石に1日一回はムリがありますが……
がんばりたいと思います。


今年の目標。

新作小説を書く。






嘘です。
幹部の過去編終わらせることですね。

まだ…何人だろ……紅葉、如黒、愁……えっ、3人?
…まだまだですね、、はい、がんばります。

313:大和:2013/01/31(木) 22:03 ID:P96

すみません、なぜか連続投稿に…

314:大和:2013/01/31(木) 22:18 ID:P96

「やっぱり図星?」

愁の前で不敵に笑ってみせる昴。
その微笑みは星と月の明かりで満たされた薄暗い部屋では、
とても美しく感じられた。
まさしくその昴の言う「図星」をさされた愁は、
頭の機能が停止してしまったかのようなものに陥る。
なにをどうしていいかわからない愁。
そんな愁に昴は更に近づき耳に自分の唇が触れるか触れないかのところで、
静かにこう言った。

「……怖くなることはないよ。
 力を抜いて、安心すればいい」

その単純なる言葉がどれだけ愁を溶かしたか。
昴の声はまるで月のようだと愁は思う。
静かで、かつ光輝く。
それと同時に艶やかさを持つ昴の声は愁を刺激する。

「なにも隠さなくていい。
 君は汚くない。……俺が可笑しいのかな、君が綺麗で仕方ない」

女に手慣れたものの言う台詞だと理解していながらも、
一度「それ」に捕まって逃れることはできない。

「大丈夫、俺は君を裏切らないよ、愁」

そう名前を呼ばれた瞬間、
愁の昴を拒絶する言葉は喉から出されず、
それどころか、昴がその口を塞いだ。
愁の溶かされた心が元に戻ることはなく、
昴もまた愁の色気ある声に飲み込まれていった。
溺れたのはどちらか。
そんなことを考えるよりも先に肌は重なっていた。
歳など身分など関係ないと躯(カラダ)は示す。

315:大和:2013/02/01(金) 19:56 ID:P96

「んっ……ふぅ、はぁあっ……!!!」
「大丈夫?でも、いつもこうやって男に弄ばれてるんでしょ?」
「……そう、そうね」

完全に溺れきった愁には、
汚れた自分を洗い流してくれているようで目には涙が浮かぶ。
こんな汚い自分を綺麗だと言ってくれる昴が愛しくて愁はたまらなくなった。
月明かりの下は互いにいつも以上に美しさが増す。
冷たい月だろうと二人の熱が冷めることはなく、
むしろ炎上なばかり。
激しさは隙間を埋めるたびに熱く、更に。

「……はっ、はぁ……ぁ」
「可愛い。いや、違うか……
 愁、綺麗だよ」

そう優しく言うと瞼にキスを落として二人は絶頂へと向かうだけだった。
なにが二人をこうさせたのか。
愁はこれ以上になく乱れ、自身をさらけ出し。
それでもその時彼女はいいと思ってしまった。
もうこれから会う相手ではないと、
どこかで知っていながら。

316:大和:2013/02/01(金) 20:20 ID:P96

ちょっぴりR18ですので気をつけを。

317:ささ:2013/02/01(金) 21:06 ID:7e.

面白いです 前からよんでました

318:梅子 ◆xgV2:2013/02/02(土) 09:58 ID:azQ

愁さんと昴さんがイチャついている......
愁さんは昔の言葉でいうと遊女?なのですか?

続き頑張ってください!

 300,310おめでとうございます!

319:大和:2013/02/02(土) 18:00 ID:P96

みなさんコメントありがとうございます……!!
これからもなんとかがんばっていきますね〜

320:梅子 ◆xgV2:2013/02/02(土) 20:51 ID:azQ

頑張ってください!

それにしても、いいですよね……
大和さんは文才があって、

少し分けてもらいたいですw。

321:大和:2013/02/02(土) 21:33 ID:P96

朝愁が目覚めると、そこに愁以外誰もいなかった。
さらに愁が昨夜いた場所は仕事場のはずが、
いつも見上げている家の天井に変わっていた。
気持ちのいいぐらいの鳥の声と朝日の光はまぶしいぐらい。
そしてなによりも愁は裸ではなくきちんと寝巻きに着替えていたのだ。
そうして暫くの間天井を見上げていると、
どこからか忙しい足音が近づいてくるのがわかる。

「お姉ちゃん、起きた?起きた!?」
「えっ……?」

元気な笑顔を振りまきながら愁の妹は愁えと寄り添う。
そして可愛らしく頬を染めながら愁へと語りかけた。

「あのね、昨日お姉ちゃんのこと運んできてくれた人ってお姉ちゃんの彼氏なの?
すっごくかっこよくてね〜、お姉ちゃん幸せものだね!!」

妹がなにを言っているかわからず、
愁は懸命に昨日のことを思い出す。
すると自分が昨夜誰となにをしたのかがゆっくりと愁の頭の中へと戻ってくる。
一通り思い出した後、愁は久しぶりに赤面した。
可愛い、綺麗、汚いとは思わない。
そして、

こんな綺麗な子を最初に抱けて俺は幸せ者だね。

あのなんとも甘美なる言葉と声が愁を赤面させた。
その言葉は愁を抱いた後に残した言葉だった。
愁は耳まで赤く染めながら昨日のことを振り返る。
しかし少なからず愁の心は軽くなっていた。
今まで愁は自分が誰かに抱かれるたびに汚いと思い重ねて、
それがとても軽くなり、気持ちは晴れた。

「……て、アンタも会ったの!?」
「うん!ねぇほら見て、あっちにいっぱいあるよ!」

妹が昴のことを知っていることに驚き思わず飛び起きて、
自分の狭い家の中を見るとまるで違っていた。

初めて愁は思ったのだ。

自分を救ってくれる人がこの世の中にいることを。

322:大和:2013/02/05(火) 06:39 ID:P96

……やむを得ず…というわけでもないですが、
上げ。

323:大和:2013/02/05(火) 19:32 ID:P96

今まで昔からの使い古くなっていたものばかりで、
外見はそれこそ「貧乏」が似合うようであった。
しかしそれが全てなくなり、
家の中はまるで英国の貴族の家へと丸変わりであった。
愁は驚きのあまり呆然とする。
周りで妹が煩く駆け回っているがそんなのを気にするまでもない。
そしてそんな英国風な机の上には紙とペンが置いてあることに気づく。
愁は机へと向かい、その紙に書いてある内容を読み上げた。

「……後先考えずに色々とごめん、
 俺とのことはカウントしなくていいから。
 ……ゆ、……友禅?」

愁は紙を読んでいて途中でとまる。
本文には英国式の部屋にしたのは一夜を過ごしてしまったお礼だったことと、
その一夜への深い詫びの言葉が並べられていた。
それと同時に昴は愁が枕仕事をすることに反対し、
既に仕事を変えたということも書かれてあった。
しかし、その仕事というのが「友禅」と呼ばれるもの。
「友禅」それは綿などの織物に模様や鮮やかな色を染める業のことだが、
その時代、「友禅」は高級職業の一つの上、
枕仕事とは比べものにならないぐらいの価値があった。

「私が……友禅……」

自分がそんなところで仕事をできると思っていなかった愁は、
知らぬ間に涙を流していたほどで。
こんなに幸せに満ちたことはあるか、と。
その場に崩れ落ちた愁は今まで我慢していた分の全てを涙に変えた。
だが最後の文章に書いてあることに愁は気づかない。

俺を愛してはいけないよ。
俺のことを忘れてくれれば、俺と君は絶対にまた会える。



 

324:大和:2013/02/07(木) 22:08 ID:P96

「最初はそれこそ泣いたわよ。
 どうしてこんなにも私を助けてくれる人を愛してはならないのかってね」

過去の話を終えた愁はもうふっきれたと言わんばかりの、
清々しい表情で窓辺を見る。
黒板の前に立つ二人の少女。
愁は昔の美しい輝きは失せるどころか、
若さの絶頂に近づくにつれ、美しさは増していた。
長い髪は波打つように揺れる。
お昼を過ぎた優しい光と風が二人を包む。
その様は冬である今の寒さを感じさせない、珍しい春の日のようであった。
お昼休みを過ぎても教室に誰かが来る気配はなく。
愁達の学年になるともう授業という授業は午前中だけであった。
あとは大学のように自分の選択教科の授業を受けるようになっている。
普通とはやはり違うシステム。
これが「最新」を取り入れる秘密警察の養成所。
すると琴波(コトナミ)が話を変えるようにして自分の席へと移動する。

「そういえば、次はなんの授業を受けるの?」
「口説き術。面白そうじゃない?」
「そう、いいわ。いきましょう」

二人は汚く消された黒板から離れ荷物を持ち教室をでる。
話ながら歩いていると授業をやる教室の前で立っている少年が一人。
少年は愁達に気づくと、ニコリと美しい顔を微笑ませた。
その一目で女を堕としてしまう顔。
そして_____

「こんにちは」

その甘美たる艶やかなる声。
見覚えも聞き覚えもあった。

「まったく、噂をすればなんとやら、ね」

そう愁は呟いて止まっていた足を動かした。
また違う再開を果たす二人。
しかし過去は箱にしまい込む。
その先の未来に期待をこぼして。



〜仇緋我愁過去編〜




終劇

325:大和:2013/02/09(土) 07:48 ID:P96

わーい!愁編終わった〜なにげに長かった〜♪

そして「再会」を「再開」と間違えた〜!!!
やってしまっt…………

やらかした。

まぁ、、いつか直すんで。
はい、すみませんした。

そして……愁、如黒、紅葉の以上三名が終わり……。
つぎは誰にしようかな〜……と。
残りは8人となりました。
これからも過去編お楽しみ下さい〜

326:大和:2013/02/09(土) 08:09 ID:P96

〜藍染寿過去編〜

〜幸福を寿を詠み不幸を何故とするか否〜


飛行機の耳を痛めるような音がその場に響く。
大きな音と風は彼の髪をなびかせた。
その栗色のような金髪のような髪はやわらかく揺れる。
よく晴れた日の今日はもう春が近づいていることを告げていた。

「ここが日本、へぇ。フランスもよかったけど、ここもなかなかだね」
「ありがとうございます、では早速空港の中へどうぞ。
 養成学校の先生がお待ちになっておりますよ」
「そう、わかった。
 Up to the day which can meet in it again!!!」

327:大和:2013/02/10(日) 07:55 ID:P96

そう英語でお付きの者に言うと彼は手を振りながら空港へと入っていった。
飛行機のエンジンはあったまったようで、先程よりも大きな音を出してる。
飛行機から降りたばかりの彼等にとっては、
その騒音はとても煩く聞こえた。

「……寿(コトブキ)様。
 どうぞご無事で」

深く礼をしながらお付きの者は呟いた。
彼のまだ小さな背中を見つめて。

大日本警察連盟は今やまさに窮地の状態に陥っていた。
日本の治安は安定するどころか悪くなる一方、
まさに世界からは「悪党の集う帝国」とまで呼ばれる様になった。
そんな中、大日本警察連盟の関係者等は「国際」という名だけを借りて、
収入を得て仕事はせず、ここ日本は「正義」という名の「悪党」しかいなかった。
更に、日本で廃止していたはずの拳銃は今や誰もがもっていてあたりまえのものと化していた。
そんな日本が造った組織で一つだけ世界から認められているものもあった。
それは大日本警察連盟が造った「秘密警察」と呼ばれるもの。
秘密警察は平和な日本であればなにもすることなどないのだが、
「拳銃」が普通となった今では秘密警察の役目は大きい。
秘密警察はスパイ訓練を受けた者のみが就ける仕事。
暗殺を女、子供問わずにするが、「悪党」だらけのこの国では
そのような組織がないとやっていけない状態であったのも確か。
しかし秘密警察が働く中で普通の警察組織は働くどころか遊んでばかりのクセに、
なにかと秘密警察を「愚か者」と言いたがった。

そんな秘密警察に今日初めてのヨーロッパからの留学生が来日。
名前は藍染寿。
警察界ではトップクラスを誇るフランスが育てた英雄であった。

328:大和:2013/02/11(月) 18:48 ID:P96

「ここがこれから寿様が過ごされる養成所となります」

空港から何時間か車で走った後、着いた所の美しさに寿は唖然とした。
陽はまだまだこれから昇りつめる様子で、南に近い。
つまり正午近く。
寿はこの養成所に着いた。
なぜ寿が唖然としたかと言われればそれはさながら当然のことでもあった。
ここ日本である日本人が荒らしに荒らし立てた土地。
この養成所までの道のりで見てきた様は酷いものであった。
あちらこちらで喧嘩、強盗、殺人。
ありとあらゆるものが寿の目に入る。
それを見て寿はこの国を変えなければ、と背筋にしっとりと汗をかきながら決心した。
そしてここ秘密警察組織の隊員をつくっていく養成学校。
そこはまるで世界が変わったかのようでもあった。
荒れた途中からコンクリートに変わり、
雑草一本生えることなく続いた芝生。
必要以上に大きい門。
反対側が見えないほどに続く敷地。
なによりその広い敷地内にあるとてつもなく大きい建物。
まるで英国の貴族の家、それもかなりの大きさのものをみているよう。
フランスの養成所も大きさはここまでではなかった。

「す、ごい……大きさだな……」
「はい。今やこの国の誇りです」

運転手は養成所の敷地内を走りながら笑顔で応答する。
進んでいくと見えるのは一輪として枯れていない花道。
透明で繊細を感じたたせる噴水。
まるで箱の中だった。
外を出れば地獄。
しかしこの箱の中にいれば楽園。

「けど、いくら建物が大きけれど人材の問題だろう」
「……そんなにお若いお年でそこまで考えていらっしゃるのですか。
 達者で御座いますね」
「周りのやつらの脳がイカれてるだけじゃないの?
 ここまで酷ければ考えざるをえないって」

年齢は12歳。
やや金髪気味なのと濁るスカイブルーの碧瞳が特徴であった。
フランスの養成所を飛び級首位で卒業。
その後の活躍は数知れず。
英国の「第2」の天才が降臨した。

そう白夜昴は窓辺にから黒い車が走るのを見て不敵に笑って思うのだった。

329:大和:2013/02/16(土) 08:17 ID:/qE

上げます。

330:大和:2013/02/17(日) 16:43 ID:/qE

「あなたを見ていると……」

運転手はバックミラーごしに寿を見ながら呟く。
まるで誰かと重ね合わせるように。
そんな運転手の様子に気づいた寿は何か、と話しかける。

「ん?俺が誰かと似ていますか?」
「あぁ。いえ、すみません。
 そう思ったのですが……やっぱり違いました。
 申し訳ありません」
「いいえ、大丈夫ですよ」

そう微笑みを返す寿に運転手は「やっぱり違った」とひそかに思うのであった。
校舎の目の前につくと寿はゆっくりと車から降りる。
明らかに普通の学校とは違う校舎。
すると中から黒の式服を着た人が出てくると、
寿に深く礼をして車のトランクから寿の荷物を取る。

「こちらでございます」

一言そう言っては中に入っていく。
寿は一度振り返り運転手にこう告げた。

「必ず国を変えてみせますよ」

なによりも頼もしいその言葉は、
彼自身をなによりも輝かせた。

331:大和:2013/02/18(月) 21:16 ID:/qE

中に入るとそれこそ英国の貴族の家であった。
レッドカーペットが行く道行く道に敷かれていて、
高い天井には、大きすぎるぐらいのシャンデリアが。
日光を満遍なく校舎内に入れる大きな窓。
敷地内もかなりの凄さではあったが、
中はそれを遥かに上回っていた。

「……本当にここは日本?」
「おっしゃっる通りで御座います」
「信じられないな。外とは天国と地獄のようだ」
「まさに」

口数の少ない黒い式服を着た男は寿の荷物を軽々と持ちながら言う。
校舎を一度見終わったところで男は歩き出す。
寿は唖然とながらもその男についていった。
廊下を歩いている時にすれ違うのは、見たことのあるような制服を着た子供。
緑色、青、紺色、赤……。
様々な色に別れた制服を着た子供達。
秘密警察という組織での養成所での服装は世界共通とされている。
そのため寿にもその制服はフランスにいたころを思い出させた。
その時、明らかに一人違う制服の子がいた。
黒の制服に他と同じ模様。

そして金に輝く六角形のバッチ。

養成所で最高階級を示すものだった。

「……ぁ」

そこに示されたフルネームは「S.B」。

332:大和:2013/02/19(火) 21:47 ID:/qE

秘密警察養成所では子供のHNは
名前、苗字の順で最初の頭文字のみの表示となっている。
更に金色の六角形のバッチは毎年行われる
養成所の実力テストにて首位の者がつけられるバッチ。
すなわち、金色の六角形のバッチをしている子供こそが、
そこの養成所のトップ。
「看板」となり「顔」となるのであった。
しかしながらその六角形のバッチは寿も手にしていたものでもあった。
つまり寿はフランスの秘密警察養成所で代表となる子供であったということ。
そしてここ日本の秘密警察養成所のトップに寿は少々興味はあったが、
トップならばなにかと騒がれて一度は目にすることぐらい容易であろうと思い、
探そうとも調べようとも思いはしなかった。
そしてこの微妙な対面。
寿は思わず出てしまった声に口を塞ぐ。

「……新入生、ですか」
「ええ」

HNがS.Bとかかれたその子供は寿ではなく、
寿の前を歩く男にそう聞いた。
男は静かに頷きながら言うとその場で立ち止まる。

「……よろしく」
「ぁ、あぁ。よろしく」
「日本は初めて?」
「うん。物凄い荒れ果てように驚いた」
「……そっか。わからないや、最近ここから一歩も外に出てないからね」
「そうなの?」
「うん。まぁ、でも。楽しいところだから、がんばって」

軽く会話を済ませると黒の制服を着た子供は手に教科書を抱えながら歩いていった。
その方向を見つめて寿はこう尋ねる。

「……あの子、名前はなんというんですか?」
「……白夜、昴様です」
「白夜昴……」

333:大和:2013/02/21(木) 21:40 ID:/qE

「聞いたことがある」
「え?」

寿の一言に意外といった様子で答える男。
白夜昴が歩いていった方向を見つめる寿に男は尋ねる。

「それはどういう意味で?」
「いや、俺もフランスでは首位を取っていたので、特待生だったんです……
 特待生というのは他の国の特待生を把握しているのが普通です。
 まぁ、別にどうでもいいことなので俺はうる覚えでしか覚えてませんが。
 でも『白夜昴』という人物は入学時から首位を譲らなかったと有名な名前なので……」
「随分詳しいようですね」
「入学時からともなればいやでも覚えますよ」
「あの方は本当にすごい方なのです」
「いくらすごくてもこの国を変えられなければ意味はありませんがね」
「申すとおりです」

男は困ったとばかりに口を小さくする。
寿が『白夜昴』について話したとたん、男は人がかわったように話出した。
その様子を見て寿は内心呆れを感じながら聞いていたが、
それと同時にさっきすれ違った子供がそれほどの影響力をもっていることに実感した。

 

334:大和:2013/02/23(土) 08:07 ID:/qE

わぁ〜〜

333!!
ゾロ目ですね〜……

さて最近更新遅いのでがんばらねば。

335:大和:2013/02/24(日) 21:59 ID:/qE

「あぁ、話し込んでしまってすみません。
 では理事長の元へむかいましょうか」
「そうですね」

相変わらずの外いきの微笑みを魅せると、寿は男についていった。

そのときからすでにはじまっていた。
荒れ狂う日本の生き様を見透かす、英国、
つまりはイギリスの英雄、白夜昴。
日本とは比べものにならない、
あの綺麗で可憐なる地、フランスの英雄、藍染寿。
この二人の物語。

一方は言う。

「この国が変わらないのはこの組織が弱いからじゃない。
 俺達が変わらないからじゃない。
 すべてが、始まりが、そう、
 表面の警察達が変えようとしないからだ」

一方は言う。

「変えなければならない者がいる。
 誰かが変えるのを待つ時間など何処にも残されてなどいない。
 自らが動かねば、何も変わることはない。
 だから俺達が存在するんだ」

二人の出会いは全く以て絵にかいたように上辺で。
互いをさぐることでしか一生懸命ではなくて。
世界を理解しすぎたせいか、否、
己の過去が原因か。
すくなくともこの日本に藍染寿という人物がきたことで、
昴が大きく変わり、現在昴が秘密警察の総長をしているのも
寿の存在が大きかったからなのは事実。

寿が先程の男と理事長室から出てくると、
壁に背を預けた少年が隣に執事をもちながらこう言った。

「一緒にティータイムはいかがです?」

それはそれは、とても男に向けるものっではないような、
妖艶な笑みであった。

336:大和:2013/02/26(火) 19:35 ID:/qE

寿はその微笑みの勝負に受けて立とうとこう言った。

「……ええ、よろこんで」
「それはよかった、ではこちらへ」

存在だけでも女性を魅力させるこの二人の微笑みといったらなかった。
寿達はしばらく廊下を歩き扉を開く。
ーーそこには広い庭園が待ちわびていた。
綺麗に手入れのなった薔薇や花たちはその輝きを満喫しているようでもある。
寿は一瞬その綺麗さに驚きを隠せなかったが、
すぐに昴にむきなおりこう言った。

「なかなかですね」
「まぁ、俺がプレゼンした庭園ですから」

少々勝ち誇り気味に言う昴に寿は苦笑しながらも、
そこにあったイスに腰掛けた。
テーブルには既に並べられた菓子が。
それも、どれも寿の好みのものであった。

しかし、そこで寿はハッとなって勘ぐりをつける。
渡されたお茶はダージリン。
ダージリンは多くの国の人に親しまれ、
お茶の王道と言っても過言ではないが、
寿がとても好むお茶であった。
そんなとても好むお茶に合う、自分の好きな菓子。
更にテーブルクロスや食器の銘柄など……。
全てが寿の好んでいるものであったことにその時、寿は気づいた。
向かい側に座る昴はなにくわぬ表情で寿に尋ねた。

「あれ、ダージリンは嫌い?
 うーん……あんまり嫌われないお茶なんだけどな」
「あぁ、いいえ。好き、ですよ」
「……なにかが合いませんでしたか?」

その最後の一言が寿の予想を決定的なものにした。
不敵に笑う昴はまるで全てを見透かしているかのようであった。
楽しそうにしている昴の表情を見ながら、
寿はやられたといわんばかりにティーカップを握る。
すると昴は目を瞑り、なにかを想像するようにこう言った。

「まぁまぁ。
 ほら、お互いがどこまで知ってるか、ちょっと話そうよ」
「……はぁ。
 その必要があるみたいだね、白夜昴くん」

お互いに似た笑みを浮かべながら、
ティータイムははじまる。

337:大和:2013/02/26(火) 19:48 ID:/qE

「ねぇ、ダージリンおいしいよ?飲まないの?」
「御免ね、睡眠薬の入ったお茶は好きじゃないんだ」

楽しそうに言う昴に寿は余裕といった表情で、
昴の罠をくぐっていく。
寿はそんな昴の罠をかわしながらも、
昴のことを理解していった。
昴はほとんどの寿の情報をしっていること、
人の心情の動かし方が上手いこと。
その他にもいろいろ。
だが、ここはフランスの秘密警察を首位で卒業してきた身である寿も強かった。
ダージリンという自分の好きなお茶を目の前にし、
口をつける前に紅茶の香りのみで、
そのお茶の中に睡眠薬が入っていることを見抜いた。
昴はそれを見抜かれた瞬間、ニヤと表情をかえた。
そこからはお菓子の中に針が入っていたりなどの罠が仕掛けてあったが、
寿もうまくそれをよけた。

「……いい加減にしたら?入学早々にこんなことされても嬉しい人はいないさ」
「そうかな?これが俺の最高のおもてなしなんだけどなぁ」
「いい趣味してるね」
「まぁね」

そんな相手を探る会話を一つ済ませた後、
寿は席を立った。

「……ごめんね、今日はもう時間がないからまた明日にでも。
 それじゃ」

そう言って寿はこの庭園を後にした。

ーー薔薇の棘は枯れることがない。
そして枯れることなく紅を纏う。

338:ゆゆ:2013/02/26(火) 22:00 ID:KXo

え、ちょ、めっちゃ面白いでs←

頑張ってです!((

339:大和:2013/02/27(水) 19:40 ID:/qE

うわぁああ!!
ありがとうございます!m(_ _)m
長いお話ですが、どうぞお付き合いしてくださると嬉しいです。

340:大和:2013/02/27(水) 22:09 ID:/qE

それから寿があの庭園に行くことはなかった。
だがその代わりに「白夜昴」というとんでもないお荷物が、
寿についてしまったのだ。
寿は最初はそれこそお荷物としか見ていなかった昴のこと。
なぜなら出会いもおもてなしも最悪であった人が自分と一緒にいるなど、
「嫌」以外のなにでもないだろう。

しかし入学したてでさらにはフランスの首位卒業生ともなれば、
人がよりつくどころか怖がられ人にさけられるばかりの毎日だった。
だから昴が寿と話してくれることは、
寿にとって少なからずありがたいことでもあった。

341:ゆゆ:2013/02/27(水) 22:47 ID:KXo

文才分けてほしい〜((((

面白いですっ←

342:大和:2013/02/28(木) 21:45 ID:/qE

文才なんて……残念ながら僕にはありませんよ〜ww

343:大和:2013/02/28(木) 22:03 ID:/qE

けれど、寿が昴としていた付き合いは
「友達ごっこ」にすぎなかった。
それはお互いがお互いをすぐに捨てることの関係にあったからだ。
捨てることのできる関係、つまり。
いつでも見捨てられるということだ。
このいつ敵が養成所に襲いにやってくるかわからない状態で、
もしも互いのどちらかがやられようとも、
どこかの可愛い芝居のように、
「必ず助ける」
などという馬鹿な言葉を発する仲でもなく、
無言で相手を信頼しているわけでもない。
曖昧な関係。
でも二人にはそれが一番心地よかった。
自分を探るまでもなく、ただ認めるだけの。
難しいことのないうわべの関係というものが。
「他」では務まらない首位どうしのつながり。
だが彼らの共通点はひとつあった。

「秘密警察幹部になる」

それがお互いの唯一といっていい共通点であろう。
秘密警察の「隊員」ではなく、「幹部」。
相当の体力や技術、精神をもってしていないと入ることの難しい秘密警察。
しかしその幹部ともなればもはや人間と呼ばれる類ではなくなっていた。

「モンスター」

そう呼ばれることもいつしあったぐらいだ。
が、この白夜昴と藍染寿。
モンスターとうものを、とうに超えていたのだ。

344:大和:2013/03/02(土) 08:04 ID:/qE

あ………

「いつしあ」になってましたね、、。
すみません、「ka」=「か」書き込み忘れです。
なので「いつしあ」→「いつしか」で。

いつしかあったぐらいだ。

になります。

345:大和:2013/03/02(土) 18:46 ID:/qE

この年で秘密警察養成所の首位に上がった二人。
この歳、というのは昴が12、寿は13であった。
たいして変わらぬ年齢の二人だが、
秘密警察養成所の首位に上がったのは、
日本でもフランスでも前代未聞。
そんな二人が変えるべきもの、それはここ日本である。
そうするために、幹部になるために。

「殺人兵器」

彼らはそう呼ばれたのだ。
やることなすことが飛びぬけすぎた二人。
だから二人の隙を狙うものたちが現れる。
首位の座を欲しいというものはいくらでもいた。
どんな手を使ってでも、欲しいと。
首位の座がもらえれば秘密警察に行って、
幹部とまではいかないがそれなりの役職はもらえる。
狙うものは星の数。
それも昴なら入学当時から、寿ならフランスの首位と、
日本の首位をもっている。
テストの結果が同じであれば首位は二人であろうと与えられた。
だからこそ。
「その上」が欲しいと狙うものたちの欲望はつよくなった。

だから。
だから、

「なぁ、白夜昴。
 お前の母親って罪人なんだろ?」
「あぁ、寿くん、君の姉って確か娼婦だよねぇ?」

ニヤニヤと笑って此方を向く、
ただの馬鹿達。
彼らの怒りを買って生きて帰れるか、否。

346:大和:2013/03/03(日) 17:17 ID:/qE

そう、それはよく晴れた日。
春のにおいが風にのって頬をなでる時であった。
廊下を歩いていた二人に、
皮肉げにそういった何人かの男子生徒。
彼らの過去をえぐるように言ったその言葉は、
あの二人を一瞬といえども凍らせた。

「寿、違うよな?」
「此方こそ」
「んなわけないだろ」
「だよね」

二人がした会話は他でもなかった。
昴が一度寿が裏切って自分のことを調べ、
その情報をもらしたのか、と問いかけたが寿も同じくそう思い昴へと問いかける。
すると昴は全く以て違うとでも言うように否定した。
その言葉がうそでないとわかった寿は昴を信じた。
そして。
昴は薄く微笑むとズボンのポケットから、
銃を出して間合いをつめた。
そうして一人の男子生徒を捕まえると、床に押し倒し
口に中に無理やり銃口を突っ込ませた。

「あ……ぁがっ……」
「もう一度言って?」

完全に狂気に満ちた昴の顔を目の前にして、
男子生徒はただおびえをなすだけだった。
一方の寿はというと、
にっこりとやさしく微笑みながら昴の光景を楽しそうに見ている。
ゆっくりともう一人の男子高校生へ近づいてはこう言った。

「大丈夫、俺はあんなに強引じゃないよ」

そう言って寿はその男子高校生の首に自らの唇をつけ、舐めると、
舐めている反対側の首に優しく刃を向けた。


「君には生鮮な血がながれてるね」
「待ってなよ、今その喉に弾を入れてあげるからさ」


狂気に満ちた凶器は微笑む。

347:大和:2013/03/05(火) 19:51 ID:/qE

「なにをしているの!あなた逹!!」

ふいに甲高い声がその場の廊下に響いた。
二人が振り返るとそこには女性教師が仁王立ちで立っている。
それも、すごい形相で。
その女性教師は生徒指導にとても煩い人で有名であった。
しかし、昴はまた薄く微笑むと男子生徒から離れる。

「あれ、こんにちは。
 最近男子生徒のオモチャにされてる、佐藤センセ」

にっこりとそう言うと昴はその女性教師へと歩み寄った。
寿も男子生徒から離れて昴と同じく女性教師のもとへと行った。
仁王立ちで立っている人を目の前にし、
昴はポケットから携帯を取り出してそれを女性教師へと見せる。

「コレ、センセーですよね?
 とても素敵な……すみません、
 いやらしい事をされているのですね」
「……なっ……あ、あなた、それ……」

その昴の携帯に写っていた画像は、
女性教師が少人数の男子生徒と体を重ねているところの画像であった。
女性教師はみるみるうちに顔が赤くなっていき、
目を大きく見開いた。
寿もまたポケットから紙を取り出すと女性教師の胸にそれを押し当てた。

「退職届けですよ、親切でしょう?」

なによりも嫌みたらしなそのもの言いは、
彼女の怒りを沸騰させた。

348:大和:2013/03/06(水) 22:05 ID:/qE

「お、大人をからかっていいとでも思っているの!?
 成績がいくら優秀といえどもーー」

そう女性教師が言いかけた時だった。
昴は持っていた銃を綺麗に一度手元で廻すと、
女性教師の額に銃口を向けた。

「先生、煩いんですよ。非常に不愉快です」
「な……!」
「早く行け、この玩具女が」

そう昴が冷たく言い放つと女性教師は踵を返し走っていった。
隣にいた寿が振り返ると、そこにはさっきまでいたはずの、
男子高校生達もいつの間にかいなくなっていた。
寿は壁に寄りかかると昴に向けてこういった。

「どうなると思う?俺達」
「知らない。でもまぁ、首位なんで」
「あぁ、立場でどうにでもなりますよ、ってね」

ニヤリと笑ってみせる昴はまるでなにも恐れてはいないかのようだった。

349:大和:2013/03/09(土) 19:02 ID:/qE

『白夜昴が女性教師を殺そうとした』
『藍染寿が男子生徒を殺そうとした』

こんな噂は微塵たりとも広まりはしなかった。
ただその場面を目撃したものはその次の日、養成所には来なかったという。
つまり、
目撃したものがその後どんな拷問を受けてそのことを話すなと脅されようと。
女性教師がその日限りで退職が決まったことも。
殺されかけた男子生徒たちが退学になったことも。
誰も知らない。
勿論、昴や寿もそれは同様であった。
あえていうなれば、昴と寿は今までの生活になんら支障が…

なかった。

全くといってなかった。
なぜなら、そんなことは簡単であった。
彼らはこの養成所の、この国の。
『宝』であるからだった。
だからこそなにをしても許される。
だからこそ、

「ふざけるのも大概にするがいい」

ハイガ・スフォンクスはそういった。

350:大和:2013/03/09(土) 19:56 ID:/qE

350だ〜

いよいよ半分ですね!
まぁ内容は半分どころではないけどね!
そしてまさかの寿と昴という…

前年に比べると更新は遅くなってしまってますが…

過去編をさくさく終わらせるはずが…
寿が異様に長いという。

400まであと50!

よろしくお願いいたします。

351:大和:2013/03/10(日) 15:58 ID:/qE

この人物こそが彼らにとってのーー

「オマエ達にいい教育をしてやろう。
 これは首位に上がったものだけができる特別な訓練だ」

そういわれて二人があゆんだ先はまさに地獄。
『宝』と育てられた二人。
『凶器』と呼ばれ続けた二人。
しかし。
そんな二人の領域以上のものがハイガ・スフォンクスの背後にはあった。
どれだけの頭を使っても予期せぬことばかりを要請してくるハイガ。
戦乱と言っていいほどに朽ち果てた日本を、
人々を。
そして自分を。
助けるためにはどれほどの力が必要なのか。
二人はまだ知らなかった。

当時、27歳のハイガ・スフォンクスはイギリスの秘密警察の総長であった。
その容姿といったら完璧では済まされないほど。
数々の女に媚を売られ続けたハイガだが、一人の女性を愛しぬくというその精神は、
もっと女を引き寄せるためのスパイスともなった。
もちろん実績もすごいもので、イギリスの傾きかけていた治安をよくしなおしたのもハイガであった。
そんなハイガが近国であるフランスの秘密警察と友好の挨拶ということで、
フランスの秘密警察本部、また養成所を廻覧しているときである。
薄ら青と黒の濁ったその瞳の持ち主、
藍染寿を見たのは。

そしてそれ以降として見ることのなかった寿と、
噂では『革命』とも呼ばれた白夜昴を、
ここ日本で見つけた。

それと同時にハイガは彼らの残酷さに同情し、

「教育の為直しだ」

そう言って彼らを人生の創めに立たせた。




〜藍染寿過去編・前編〜


終劇。

352:大和:2013/03/12(火) 22:27 ID:/qE

小説コンテストというものに参加してみました。

皆様、ご自分のお気に入りの小説にご投票ください〜
http://ha10.net/test/read.cgi/frt/1363081676/l50

353:大和:2013/03/13(水) 22:27 ID:/qE

特別小説。
「一夜の想いを何処へ」


これは一夜のモノガタリ。
一夜に想いをかけ、彼らとの一度限りの出会い。

夜もふけ、カラスが暗闇へと化し泣いているこの夜。
鼻をつく匂いが漂う道を二人の人が走っていた。
焦りを感じさせる足音は止まらない。

「アメ、こっちだ!」
「くっ、クオンちゃん、ほんとに……」
「……忘れたわけじゃないだろ?」
「そ、そうだけど、でもこんな……」

ゆっくりと足音がとまると二人は向き合った。
月も出ていない夜。

「とにかく、ミサーナとフィアンも定位置についてる。
 リスティだってもう用意は完了してるはずだ」
「……」
「俺は今までやってきたことを無駄にしないよ?」
「……うん、ごめん。私、何で悩んでたんでろう、答えなんて決まってるもんね」

二人は向き合ってお互いの意見を一致させると、
また走り出そうとした。
しかし、かすかに聞こえた足音。
その足音はまるでこちらに向かってくるかのような駆け足だった。
二人はその足音に冷や汗を覚えると、
ソウルス・クオンは携帯をポケットから取り出し、
ミサーナと記してあるところを押し電話をする。

「はい?」
「あぁ、ミサーナ?やつが来た」
「そう……わかったよ」

誰も照らさないこの夜に、彼らはかけていた。

「見つけた」

その声とともに爆発音はなる。
そう、彼らの目的。

『秘密警察破滅』

あの日の憎しみを籠めて。

354:大和:2013/03/14(木) 22:18 ID:/qE

その爆発音は音だけでなく、火もおおらかに炎上した。
一気に暗闇は晴れ渡り、赤色の世界へと変化する。
しかし、その爆発音とともに数発の弾丸の音が鳴ると、
そこはもはや赤い戦場となった。
そこに聳え立つ、大きいビルの数々。
ソウルス・クオンと望月アメはひとつのビルを確認すると、
そのビルの階段を急いで上がっていく。
ビルの屋上までくると、そこには黒い銃を構える姿が二つあった。

「ミサーナ、どうもね。
 これで一応撒けたよ」
「それでも追ってこなければいいけどね」
「ここまで建物燃やして、銃撃ちまくれば大丈夫なんじゃないの?」
「まぁね」

クオンとミサーナが軽く会話を済ませると、
ミサーナはまた銃を構え、砲撃する。
その音とほぼ同時に向こう側に見えたビルはひとつ打ち砕かれた。
ミサーナの隣でいすに腰掛けているフィアンは腕組をしながらこう言った。

「あいつらの本拠地がどこ探してもわからない……
 やっと見つけた情報だってこのあたりってことだけだし……」
「まぁとにかく、ぽんぽん撃ってりゃいいじゃないの」
「そうね」

モノなどどうでもいいといった口調の二人はドイツ製のマシンガン、
ロシア製のシャトルガン、などといった大型系の銃を脇に置きながらも、
常に周りを観察していた。

「そういえばリスティは大丈夫……なのかな」
「あぁ、リスティには銃を数個持たせたから、生きて帰ってくるよ」

軽く答えるミサーナにアメは「それなら」と、安堵を残した。

355:大和:2013/03/14(木) 22:18 ID:/qE

その爆発音は音だけでなく、火もおおらかに炎上した。
一気に暗闇は晴れ渡り、赤色の世界へと変化する。
しかし、その爆発音とともに数発の弾丸の音が鳴ると、
そこはもはや赤い戦場となった。
そこに聳え立つ、大きいビルの数々。
ソウルス・クオンと望月アメはひとつのビルを確認すると、
そのビルの階段を急いで上がっていく。
ビルの屋上までくると、そこには黒い銃を構える姿が二つあった。

「ミサーナ、どうもね。
 これで一応撒けたよ」
「それでも追ってこなければいいけどね」
「ここまで建物燃やして、銃撃ちまくれば大丈夫なんじゃないの?」
「まぁね」

クオンとミサーナが軽く会話を済ませると、
ミサーナはまた銃を構え、砲撃する。
その音とほぼ同時に向こう側に見えたビルはひとつ打ち砕かれた。
ミサーナの隣でいすに腰掛けているフィアンは腕組をしながらこう言った。

「あいつらの本拠地がどこ探してもわからない……
 やっと見つけた情報だってこのあたりってことだけだし……」
「まぁとにかく、ぽんぽん撃ってりゃいいじゃないの」
「そうね」

モノなどどうでもいいといった口調の二人はドイツ製のマシンガン、
ロシア製のシャトルガン、などといった大型系の銃を脇に置きながらも、
常に周りを観察していた。

「そういえばリスティは大丈夫……なのかな」
「あぁ、リスティには銃を数個持たせたから、生きて帰ってくるよ」

軽く答えるミサーナにアメは「それなら」と、安堵を残した。

356:大和:2013/03/14(木) 22:22 ID:/qE

二回連続申し訳ありません。

357:大和:2013/03/15(金) 23:07 ID:/qE

「それより、あいつらは……」
「わからない。けどいつ来るかわからないからーー」

そうフィアンが言いかけた時だった。
戦場と化したこの炎の町を見る四人の背中を凍らせたのは。

「そうだね、いつ来るか……
 わからなかったかな?」

四人が振り返ると、そこにはにっこりと愛らしい仮面をかぶった青年が立っていた。
一瞬呆気にとられたミサーナはすぐに我に帰ると、
ドイツ製のマシンガンをその青年に向ける。
的を確認すると、青年を特定しようと定めた。
しかし。
もうそこに青年の姿はなかった。
ミサーナが特定しようと定めたまでわずか3秒。
たったそれだけの時間だった。
なのに。

「遅いんだよねぇ……」
「っざけんな!!」

よったりと、かつ愛らしさをこめて言うその青年は、
すでにミサーナの背後へと回っていた。
そうしてミサーナの首筋に懐からぬきとったナイフを向ける。
だが、ミサーナのその怒鳴り声とともに、
またもや弾丸の音が煩く響き渡る。
青年の右手にあったはずのナイフはミサーナの手によって宙へと舞い、
あの赤い町の中へと消えていくだけだった。

358:大和:2013/03/17(日) 18:57 ID:/qE

「へぇ。これ防げるくらいの能力はあるんだ。
 君、なかなかなんだね」

軽く笑うその青年にミサーナは警戒心をとくことはない。
それとは対照的に、青年はもう気を緩めきっている。
ミサーナは青年へと話しかけた。

「なにがしたいの」
「なにがしたいって?
 ……そうだな。 ねぇ、寿ー、俺達ってなにがしたいんだっけ?」
「……紅葉、ショタの仮面はどこやったのさ」

暗闇に青年が話しかけると、
暗闇の中にいた男もまた笑い口調で返した。
その時にクオンは気づいた。
周りがどうも人の気配がする。
それも少人数ではない。
そう、もう既に囲まれている、と。
それは「今」ではなく「最初」から。
追われていたあの最初から、もうクオン達は既に捕まっていた。
そうと分かった瞬間、背中にひんやりと冷や汗が流れるのが分かった。
鼓動が、心拍数が速くなる。

「食べられちゃうよ」

ふいにそう言う声が脳裏に聞こえると意識はそれと同時に消えるだけだった。
濃度95%、一酸化炭素70%という危険な睡眠ガスに、
なんの準備もしていない彼等が倒れないわけがなかった。

気づけばそこは何処。
彼等が向かい、探していた場所であった。

359:大和:2013/03/19(火) 20:38 ID:/qE

目を覚ますとぼやける視界のなか、広い部屋が入って見えた。
手に違和感を感じるとそこには金属ものの手錠がかけられていた。
「捕まった」と理解したクオンは周りを見渡すと同時に、
自分の仲間たちも自分とまた同じようになっている様を発見する。
しかしながらその仲間はうなだれているばかりで未だ起きる様子はない。
下を見ると自分が椅子に座っていたことに気づく。
仲間も椅子に座り、背もたれにかかることはなく、
後ろで手錠をかけられているだけだった。
すると遠くの方から小さくヒールの音がするのが分かった。
たが女性ものの高いヒールの男ではなく、
男性ものの靴の低いヒールだとクオンは察すると、
先程自分たちを捕まえたものたちだろうという仮説を立てた。
そうしてクオンは仲間がうなだれているのを見回し、
ヒールの音が近づいたことを確認して自分もまた他と同様にうなだれる「ふり」をするのであった。
じっと五感の一つ、聴覚に神経を集中させる。
そのヒールの主は一人ではなくおそらく二人と予測すると、
なにやらその二人の話声に耳をすませる。

「……それがいいだろう」
「それより、あの子たちの監視なんてさぁ、いらないと思わない?」
「ああ。 特に酷くする予定もないしな」
「用心深いよねぇ、昴はさ」
「紅葉、ここは本部だぞ、今は総長と呼べ」
「そーだった……ま、聞かなかったことにしてよ如黒」

そう会話が聞こえるとその声は更に大きくなり、
ついにこの広い部屋に入ってきたことを告げる。
紅葉と如黒という人物。
このふたりがしようとしてることはクオンたちの監視。
クオンは更に耳をすませようと薄らに開いていた瞳を閉じた。

「監視か……」

そう呟いたのは否、
望月アメの呟きははっきりとクオンの耳に届く。

360:ゆゆ:2013/03/19(火) 20:41 ID:KXo

わぁ、あいかわらず文才すごいですn(((殴←

頑張ってくださいっ( ´ ω ` *)←

361:大和:2013/03/20(水) 19:52 ID:/qE

ありがとうございます〜!
お久しぶりですね。
更新は遅いですが、なんとか頑張りますね…!

362:大和:2013/03/20(水) 19:59 ID:/qE

「っ……!?」

クオンは驚きの声を喉まで出しかけたが、
今近くに紅葉と如黒がいることを思い出してはその言葉を飲み込んだ。
目線をアメのほうに向けると、
アメは瞳を閉じたままクオンにだけわかるよう話した。

「クオンちゃん、この二人はおそらく幹部だよ」
「え……」
「上手く逃げ出すためには、今はおとなしくしてよう」
「ああ、わかった」

そう手短に会話を済ませると、
アメは変わらず瞳を閉じたままうなだれているのであった。
クオンもまた瞳を閉じ、耳をすませていると、
足音がしないことに気づく。

363:大和:2013/03/23(土) 08:26 ID:/qE

そして彼ら「幹部」がどこにいるのか、
クオンにはすぐわかった。
足音もなく、目で見渡せる範囲にもいない。
目の前には木製の長テーブルの上に白いレースのついたテーブルクロス。
そこに並べられた上下左右全部で8脚のイス。
まわりの壁は大理石になっており、おそらく床も大理石であろう上に、
刺繍の目立つじゅうたんがひいてある。
まるで英国のダンスパーティ会場のようであった。
特にその部屋にテーブル、イス意外のものはなく、
どちらかというと殺風景な部屋。
その一脚にすわっているのがクオン。
隣にアメが座っていた。
しかし、クオンとアメのちょうど後ろに、
たいして背は高くなく小柄な男と、
それとは反対に長身で黒髪の男だ立っていた。
クオンとアメはしっとりと冷や汗をかいた。
だが流石に二人もここまできて「まずい」などと思ったわけではない。

「どういうつもりだ?」
「うん、その対応が最善だよね」

クオンが意を決して問いかけると、
小柄な男は何食わぬニコニコとした表情で答えた。
隣にいる真面目そうな男は答えることもなくただじっとこちらを見ていた。

「僕も聞きたいな。君たちは僕らになにをしたかったの?」
「俺の質問に答えろ」
「僕のを先に答えてよ」
「ふざけるな」

これではらちがあかないように二人は会話を続ける。
どちらとも先程から同じ回答しか述べてないのならただのいたちごっこ。
話題を続けているだけ無駄になっていた。
するとそこにひとつの軽い声がその会話を途切れさせる。

「紅葉、女の子にそんな無理言わせちゃダメでしょ?」
「……寿。
 ちょっと待って、さっきなんていった?
 コイツが女の子……?」
「そうでしょ、どう見ても」

そうドアにいつの間にか寄りかかっていた寿が言うと、
紅葉は珍しいものでも見るかのようにクオンを見つめた。
その視線に嫌気を感じたアメは紅葉に対して憎まれ口をたたくのであった。

「クオンちゃんをヘンな目で見ないでください」

その場一斉に笑いの嵐がおきたのは幸福か、不幸か。

364:大和:2013/03/23(土) 21:24 ID:/qE

「へんな目でって……いやぁ、君面白いね」
「なんなんですか……」

おなかを抱えてわらう紅葉にアメは若干引き気味になりながらも、答える。
扉に背を預けていた寿も苦笑しながらこちらに歩いてくる。
クオンたちとは向かい側のイスに寿は座った。
寿が座り終わったのを合図に、紅葉の笑いもとまり、
如黒も寿の隣に腰を下ろしていた。
もう夜であったはずの外はいつのまにか陽だまりが窓から差し込んでいる。
窓を背にしたクオンたちにとっては気持ちのいい光であった。
カーテンをあけた窓は人の等身大の二倍ほどのものの窓であり、
透き通った窓から光がこぼれることはない。

「さてと、本題だ」

寿がわざとらしく軽く咳をすると、
両隣に座っていた紅葉と如黒はまたクオンたちの背後にまわり、
かけられていた手錠をはずした。

「まず聞く。
 なんで俺達をここに連れてきた?」
「……その質問に俺は答える権利を与えられていないから、
 答えることはできないよ」
「じゃあなににならこたえられる?」
「なんだろうなぁ……」

クオンのした質問に寿は優しく微笑んで答えるものの、
その出された答えは決していいものではなかった。
手錠をはずし終わった二人もなにかを答える様子はない。

「ふざけるのも大概にしろ」

そう言った後、クオンの姿はそのイスにはもうなかった。
大きく広いテーブルを一線にして敵対するもの同士。
おとなしくしているのが不利なときの「最善(ベスト)」である。
しかし、こうして手錠もなくなり元に戻った今、
おとなしくしているのはもう最善ではなくなった。

「かはっ……!」
「いいか、俺の質問に答えろ。
 どうしてここに連れてきた?」

目の前にいた寿のみぞを瞬時に打つと、寿はイスから転げ落ちる。
すると、みぞを打った張本人であるクオンは横たわる寿の元へと近づく。
そしてこういった。

「オマエに拒否する権利はない。
 もしも拒否するようであれば、即時に殺す」

その言葉を聞いて寿の口がにやりと笑い、
紅葉と如黒の手が腰に回った。
右手にナイフを掲げながら黒い瞳の持ち主は見下した。

365:大和:2013/03/24(日) 21:35 ID:/qE

「そ、んなこと……女の子はしちゃダメだと思うけど?」
「殺されたいか」

横たわる寿が弱っているにもかかわらずニヤニヤとした表情で言うと、
クオンは冷たく寿に言い放った。
寿は自分が今不利な状況だと把握しながらも会話を楽しむ。
紅葉と如黒もまた寿の安全のためにその場に寄ろうとした。
しかし、目の前の敵が敵だったためにそうすることはできない。
目の前の敵。
それは両手に短銃を掲げ、弾も狙いも万全といったようすの、
望月アメであった。
こちらはクオンとは違い無表情ではなく薄い微笑みを魅せていた。
まるで豹変したかのように。

「忘れないでいただきたいです。
 背を向ければ撃つだけなんですが」
「へぇ……?」

先程と変わらない物腰の柔らかい声に一瞬気が緩む紅葉だが、
気を張っているのもまた観察型の特徴であった。
如黒はというとそれこそ無口でなにを語るわけでもなかったが、
白いテーブルクロスの下ではアメに銃口をしっかりと向けていた。

「紅葉、寿。
 ここでの戦闘は引くのがベストだ」
「……如黒が言うなら、俺はいいよ」
「では降参ということで」

めずらしい如黒の意見に寿、紅葉ともに同意し、
銃をもとに戻す。
だが、アメとクオンはそうはしなかった。
なぜなら、それは目的である質問の回答がこないからだ。

そんな中の緊迫の空気をひとつの声が遮った。

366:あんず ◆kJjA:2013/03/24(日) 23:23 ID:mTs

コメントさせていただきますね〜。

いや、なんていうんですかね?
ストーリーが細かく作られていてすごいなぁ、というのは本当に思いました。
頭の中で様子が思い浮かべられますし。
今、本編の方も読み始めたのですが、最初は難しそうだな、って思ってたんですね。
秘密警察!?特殊部隊!?
でも、すごく分かりやすい話でした!!
あの、『淡々としてる』ということではなくて、『情景描写等が多くて』ということです。
何回も読むと、分からなかったところも分かってきましたし……。

いつもコメントしませんが続き楽しみにしています。
頑張ってください!!
……充分なほど頑張っていると思いますが←

(アメ、とか、紅葉って交流板の皆さんを出したんですよ…ね?良かったら私も出してほしいです((ザコキャラクターでいいので……)

367:大和:2013/03/25(月) 22:01 ID:/qE

うわぁぁぁぁ!
コメントありがとうございます!
久しぶりに長文もらいましたねw
本編は今のよりも読みずらいかと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。

368:大和:2013/03/25(月) 22:41 ID:/qE

「ちょっとアンタ達!
 なにやってくれてんのよ!」
「え……愁……」
「愁さんが来ちゃった……」
「だからやめろと……」

大きくドアが開かれたかと思えば、
それに負けないぐらいの大きな声を張り上げては愁(ウレイ)が入ってくる。
流石にその緊迫した空気も愁の声により閉ざされた。
だが幹部らはまずいとでもいうかのような苦い表情をして愁を見つめる。
そんな幹部三人の視線をまるで感じないかのように愁は言った。

「あのねぇ、勝手にどんちゃんやってんじゃないわよ。
 それに、誰がいつ手錠をはずしていいなんて言ったの?
 おかげでこんな騒ぎじゃない。
 紅葉、如黒、寿、説明しなさい」
「ちょ、待って!
 愁そんな起こんないで!」
「じゃあこれはどういうことよ?」

愁は茶色の髪を揺らしながら寿たちのもとへ向かうと、
腰に手をあてては言い訳など言わせない威圧感を漂わせた。
紅葉は起こっている愁を必死になだめようと試しみるが、
どうもうまくいくどころか火に油を注いだらしい。
愁が入ってきたまどからは風が入り、
カーテンとその場の人たちの髪をなびかせる。
ついでに愁のはいていた軍服のスカートもなびくが、
今はそれを見て喜んでいられるほどいい状況ではなかった。
いくつかの沈黙が終わったのちに愁のため息で沈黙は終わる。

「はぁ……もう怒る気も失せたわ。
 もう少しで昴も来るからそれまではおとなしくしてなさい」
「了解。
 愁隊長の仰せのままにいたします」
「……ちょっと、如黒がそんな言い方やめてちょうだい。
 紅葉や寿ならまだ説教くらわせるけど如黒じゃ私怒れないもの。
 それじゃ、きちんと見張っているのよ」
「悪いな、ああ、了解した」

愁は如黒へと微笑みながらその場をあとにした。
愁がいなくなた途端に寿はすばやく起き上がるとクオンの手をつかむ。
紅葉もまた同様に、アメの後ろに回ると手を押さえた。

「もし、二人ともなにもしないっていなら手錠はしない。
 けど、なにかするのであれば即座に手錠をかけるけど、どうする?」

紅葉がそう問いかけるとアメもクオンも、
手錠をかけられるのは得策ではないと思い武器をしまう。
それを察した紅葉と寿も手を離すのであった。
ふとカーテンを揺らしていた風が止まる。
如黒はイスから立ち上がって他の散らばったイスをもとに戻すと、
午後3時の鐘が鳴ると同時に言った。

「ティータイムには相応しくない第二の訪問者が来たようだな」

その薄笑いにこめられた意味とは。
開いていたはずのドアは閉まっており、そこから小さなノックする音が広い部屋に響く。
3時の陽の光が真っ赤になり、窓はその光を前面に受けた。
電気などつけることもない。
部屋じゅうをいつかのあの時のような赤い世界に染めたのだから。

369:あんず ◆kJjA:2013/03/26(火) 00:13 ID:mTs

いえいえ、こちらこそ素晴らしい小説を無料で読ませて頂きありがとうございます!!
簡潔に書こうと思ったのですが長くなってしまいましたねww
本編、読みにくくなんかないですよ〜。
私の作品よりは相当読みやすいですww

370:大和:2013/03/26(火) 08:11 ID:/qE

なんとか更新などもできるよう頑張っていきたいと思いますw
今回もありがとうございました!

371:大和:2013/03/27(水) 22:01 ID:/qE

「どうぞ、総長。
 開いてますんで」

そう寿がさっきとは打って変わったような、
かしこまった表情になると扉の向こうの相手へと言った。
すると閉まっていた扉は静かにその人物によってあけられた。
入ってきた人物は身長が寿とほぼ同じ。
しかしクオンたちがなによりも驚いたのはそこではなかった。
金髪に黒く青のかかった碧眼。
とてもじゃないが「日本人」とは思えないでいるクオンとアメ。
紅葉は色素の薄い茶色。
如黒は黒。
寿は髪は金髪で瞳はエメラルドだったが、
どこか日本人を感じさせるような顔立ちであった。
だが昴は違った。
一瞬見れば外人と勘違いをするが、
鼻もそれほど高いというわけでもなく、
顎もとがっているわけでもない。
よくよく見れば日本人と確実にわかる顔。
ひとつわかるとすればかなりのませた顔ということだ。
その顔だけなら、いつかの戦国時代のように、
生首をつるしても女がよってくるのではないかと思わせた。
昴はめずらしく軍服ではなく、
ワイシャツに黒のネクタイ、黒のスーツパンツ。
片腕にジャケットを持ちながらクオンとアメの反対側に座った。

「あれ、起きてるのこの二人だけなの」
「嗚呼」
「へぇ、意外と効いたんだねあの薬」
「裏を返せばすぐ死ぬような役立たずな薬だがな」

昴はイスに座ると今までイスに座っていたはずの、
立って昴の後ろにいる如黒に振り向きもせず問いかける。
如黒はそれに淡々と応答していた。
赤い夕日は昴を照らし続ける。
まるで舞台の主役かのように。
しかし、これはそんなにいいものではなかった。
昴は肘をつくと向かい側に座るアメとクオンに問いかける。

「まずは、先方の聞きたいことからどうぞ?」

372:紫うさぎ ◆v7jE:2013/03/28(木) 19:44 ID:4Ik


素晴らしい文才ですね。
読者側としては、人物の容姿も想像できて情景描写が詳しくてとても読みやすいです。
すっごく憧れます。
これからも頑張ってください。応援しています。

373:大和:2013/03/28(木) 21:58 ID:/qE

ありがとうございます!!
読者様にそう言っていただけると、安心して文章が書けます〜
毎回「読者さんたちは想像できてるかな?」
と、不安になるのですが……
これは本編のものとは関係なく、
特別編としてのものですが、
どうぞどちらともよろしくお願いいたしますm(- -)m
今回はきていただいてありがとうございました!

374:大和:2013/03/28(木) 22:40 ID:/qE

美しく微笑みかける昴の表情からは、
なにも読み取れなかった。
なにをしたいのかが全く以て現れない。
普通、人の表情だけでわかることは多くある。
現在のその人の気持ちや目的、または隠していることなど。
だが昴の表情は「微笑んだ」という当たり前なことしかわからなかった。
表情からなにかを読み取ることをやめたクオンは、
先程寿にした質問を同じように昴に突きつける。

「なぜ俺達をここに連れてきた?」
「……いまここにきてその質問なの?
 人はいっぱいなのに誰かには聞かなかったんだね」
「聞いたに決まってるだろ。
 だけど他のやつらが答えられないって言うからだよ」
「なんだ、これぐらいのことなら教えればよかったのに」
「で? さっと質問に答えろ」
「なぜかって君達が俺達を殺そうとしてるからだよ」

そう言われた瞬間、聞いていたクオンとアメは背中が凍りついた。
自分達のしようとしていたことはもうすでにバレていた、ということに。
しかしここで負けたわけではない。

「なんだ、そんなことでか」
「あぁ……そうだよ、どうかしたかな?」
「くだらないなと思っただけだ、気にするな」

クオンもまた薄く笑うと昴へと皮肉な言葉をむける。
昴はそれを苦とも思わないかのように先程同様微笑んでいる。
アメはというとただじっと昴の瞳を見つめては探りを入れていた。
昴意外の幹部員たちは昴の後ろに立ち、
クオンとアメ、その隣にいまだにうなだれている二人を見張っている。
緊迫な空気と沈黙がまたこの場に戻ってくると、
互いになにをいうまでもなく互いを探る。

しかしずっとクオンを見ていた紅葉はあることにふと気づく。
よくよくクオンを見ているとどこかで見たことのある顔つきであった。
黒い瞳に黒い髪。
随分特徴のある人間だと覚えていた記憶がある。
アメのほうを見ると短い黒の髪に優しさのある桃の色の瞳。
その隣にいるツインテールの娘とロングヘアの娘。
皆見たことのある顔であった。
そして薄れている記憶を探りながら紅葉はとある事件について思い当たる。
流石観察型とも言うべきか。
まさにクオンたちは「あの時」となんら変わっていなかったのだ。

「昴、わかった……
 この子達『インディル村事件』のときの子達だ」
「……やっとわかったか……
 久しぶりだ、向日葵紅葉」

そう紅葉が言うとクオンは怪しげに口の端を上がらせた。
その瞳に映るは『狂喜』か否か。
 

375:あんず ◆kJjA:2013/03/28(木) 23:24 ID:mTs

本編読み終わりました!!&続編?この小説ももう一度読み返しました!!

やっぱり才能を感じました〜。
ストーリーが細かく練ってあって地道に努力したんだな、と思います。
私も頑張らないと、と思いましたねww
クオンとアメはやっぱりよく出てきますね〜!!
他のみんな(集え小説板の〜)の登場も楽しみにしてます。

376:大和:2013/03/29(金) 21:30 ID:/qE

おお!まさか本編まで……本当にありがとうございますね。
そうですね、ストーリーは何度か書き直しをしたりと苦戦もしました〜
あんずさんもぜひがんばってください!

377:大和:2013/03/29(金) 22:02 ID:/qE

「インディル村……あぁ、あの時の……」

昴は一度紅葉を見やると急に表情を変えた。
あまりいい表情ではなく、
それは暗く気に病んだような表情。
クオンは表情を変えたことに少々驚くが、
今は昴の言葉に耳を傾けた。

「俺にとってはあんまりいい思い出じゃないな……」
「それは奇遇だ、俺もいい思いではない。
 なぁ、どんな気持ちだった?
 元カノであるプランツ皇女を殺した瞬間はさ」

クオンはそう皮肉げに言うとテーブルに肘をついては笑う。
その言葉は昴の勘に障るように届くが、
しかし昴はまっすぐとクオンを見る。

「……どうだったろうね。
 でも嬉しくはなかったよ。
 だって、一度といえども愛した人だから」
「随分なタラシの口調で」
「はは、手ごわい」
「まぁここまでくれば言いたいことはわかるだろ?」
「うん。
 つまり、『インディル村事件』の復讐をしに来たってことだよね?」
「そういうことだ」

互いに笑いあうと理外は一致した。
インディル村事件。
それはだいぶ前のことーー

昴たち秘密警察に大きな仕事がやってきた。
その仕事の内容とは「村全滅」と述べられていた。
特に昴自身も村全滅ということ自体はよくあることだったので驚きはしなかった。
しかしその村の名前を見て昴は目を見開く。
「インディル村」。
そう書かれていたのだ。
当時昴は町で会った娘、「プランツ」という娘と付き合っていたのだが、
そのプランツという娘はインディル村に住んでいたのだ。
彼女から村の話を前々から聞いていた昴は、
インディル村はとてもいい村という印象しかなくとてもじゃないが信じられないでいたのだ。
なにかの間違いと証明するためインディル村へと行ってみると、
そこはすごい有様だった。
村は荒れ果て大きな城がひとつ。
その城のなかに入った昴は今度こそ信じられなかった。
王の座るべくイスにプランツが堂々と座っていたのだ。

そう、そして実はプランツは孤児院にいた子供達の世話をしていた「優しいお姉さん」でもあったのだ。
つまり、当時その孤児院にいたのがクオンたちであった。

378:大和:2013/04/01(月) 22:29 ID:/qE

だが昴はプランツを殺すことを躊躇いもしなかった。
プランツの元で泣いている孤児院の子供達。
おびえる子供を抱きながらプランツは昴に今まで見せたことのない、
すさまじく憎しみをこめた表情をしていた。
だからこそ、昴はプランツを躊躇うこともなく殺すことができたのだ。
プランツの喉が弾丸によってつぶされる前、
最後に彼女が発した言葉はこうである。
それを昴はそのままクオン達の前で再現してみせた。

「『ふざけないで、私のすべてがばらばらになってしまう。
  もしそうなったら憎しみで貴方を殺しに行くわ』
 そう俺は泣く子を抱くプランツに言われたよ。
 尤も、彼女がしようとしていたことはとんでもないことだったから、
 俺からしてみれば殺さざるをえなかった、と言うべきかな」
「私達からしてみれば殺された、ですけどね。
 もし本当にプランツ姉さまが愛しかったなら絶対にころさなかったはずです」

アメは表情を暗くしては昴へと皮肉気に述べた。
先程まで燃えるような赤の色をした日の光も、
次第に弱くなっていき、あたりはだんだんと灰色の世界へと変わっていく。
窓からは少しの日差ししか入ってくることはない。
向かい合った彼らの心境を移すかのように天気は闇へと薄暗くも近づいていった。

そしてクオンは静かに昴の話を聞きながら、
忘れもしないプランツが殺された瞬間を痛くも思いだす。
親に捨てられ引き取ってもらえるあてもなく、
本当に死んでしまうのではないかと思ったときーー
救世主が現れたのだ。
肌の色は白く、綺麗な服を着た優しく微笑むプランツに。
そうしてもの心ついたときから彼らはプランツについていこうと決めていたのだ。
なのに、そんな夢も、救世主も。
すべてが「白夜昴」の手によって壊された。
それがどれだけの憎しみと恨みを覚えさせたことか。

「だからアタシらはアンタを殺しにきた。
 ただそれだけだ、理由はいらない」

眠っていてはずのミサーナはゆっくりと顔を上げてあざ笑うかのように昴へと言った。

「戦争だ」

そのクオンの一言で弾丸は飛び交う。

 

379:大和:2013/04/02(火) 22:27 ID:/qE

そういうとクオンとアメは手持ち用の短銃をすばやく抜く。
ミサーナとフィアンはどこから取り出したのか、
ショットガンを掲げた。
ミサーナの腰には大量の弾丸がぶら下がっている。
一方の昴たちは先程のように彼らを止めるわけでもなく、
ただ黙ってじっとクオンたちを見つめては昴はつまらなそうに言葉を零す。

「犬だって待てぐらいはできるのに、
 君らは待つこともできない」
「煩い。
 わずらわしいことはその口がある未来で話せ」
「……まぁ、いいんだけどね」

昴は一度ニコリとクオンに向かって微笑むと、
その場にゆっくりと立つ。
今にも雨がふりそうな雲に空は包まれる。
ついさっきもでの赤の世界は何処へ。
カーテンが開けられた窓からは人が見える。

「お友達がまだいるようだね」

アメは自分の背後にある窓を振り返って見やると、
そこにはヘリコプターからつるされたリスティの姿が。
リスティはロシア製の大きい銃を両脇に挟めて持ちながら、
銃口を昴へと向ける。
もうそのときにはすでに狂気の瞳であった。
その場に立った昴は一度ため息をつくと後ろを振り向くことなく寿に命令を下す。

「寿、幹部員に命令しろ。
 直ちにここへ来いってな」
「了解」
「それまでは俺達でやるか……」

軽い口調で部屋を出て行く寿をよそに、
両方とも銃を構える。
窓の外ではリスティが昴に銃を。
中ではクオンたちが。

「んじゃ、本気でいきますよっと」

リスティが一発目の銃声をあげるとそこはすでにネバーランド。
楽しい世界の始まりだった。

「久しぶりだね、プランツ。
 君の言っていた殺しに来るとはこのことだったのかな。
 でもね、俺は容赦はしないよ」

嗚呼その言葉は優しさか否や。

380:大和:2013/04/03(水) 22:11 ID:/qE

もうすでにその部屋は部屋としてあるべき姿を無くしていた。
壁には無数の弾丸の穴があけられている。
そこで彼らはやむことなく銃を撃ち続ける。

「銃の腕としてはなかなかだね」
「その減らず口を潰してやるよ」

クオンと昴は部屋の対角線に立ちながら会話をする。
しかし現実を述べてしまえば銃を撃ち合っているのは、
クオンと昴だけだった。
なぜかというと、リスティの銃が撃たれた後に昴意外の幹部員である、
寿、紅葉、如黒はすぐに相手との間合いをつめた。
それはアメたちも同様で、クオン意外のミサーナ、フィアンも一気に相手へと近づいた。
だが本戦であるはずのクオンと昴は動こうとはしなかった。
二人の合図はクオンが昴へ向けて撃った銃声。
その弾丸は昴の髪をかする。
そうして今に至るわけだ。

「いたちごっこはキライなんだ。
 早くカタをつけるぞ」
「もっと楽しもうと思ったのに……
 でもいいよ、俺も労働は嫌いだからね」

もう完全に曇天へと変わった空。
空と同様に部屋の中も薄暗さを増しては薄気味の悪い部屋になる。
まるで二人の決着をつけさせようとはしない曇り空。
それでも『決めなければならないこと』がある。
あの過去をこの一撃に込めて。
その心臓に向けて。

そうして二人が一気に間合いをつめては最後の一発を放とうとしたときだったーー

381:大和:2013/04/04(木) 22:24 ID:/qE

突如二人の顔の間に弾丸が飛んでくる。
その弾は小さな煙をあげながら壁に他と同じような穴をあける。
二人とも同時に何事かと弾丸が飛んできた方向を向いた。
だがそこに立っていた人物を見て驚いたのは昴だった。

「なにを、なさっているのかわかりかねますね、総長」

そのにっこりとした笑みを浮かべながら早足にこちらへと来たのは、
第一番隊隊長である素迷桜。
桜もみなと同じように両手に短銃を持っていた。

「あれ、桜どうしたの……」
「貴方こそなにやってるんですか、ここで」
「いや、戦ってるんだけど」
「頭撃ってほしいですか?」
「え……待って、なんでそんなに怒ってんの?」

完全に桜のおかげで戦いの雰囲気は壊れていた。
昴はまるで珍しいものを見るかのように桜に話しかけると、
もう怒っているとわからざるを得ないほどに桜は怒っていた。
だがよくよく見ると桜の髪も服もびしょびしょに濡れている。
桜は額につく髪をかきあげる。
クオンも昴もそのことに気づき、窓をみやった。
すると先程まで曇天だった空もすでに激しく音を立てては雨が降り注ぐ。

「総長、この人たちが誰だかわかって……」
「わかってるけど?」
「じゃあなんでこんなこと!?」
「桜ごめん、その話はあとでーー」
「そういう問題じゃないんです!」

そう桜が声を張り上げて昴に異論を示した。
すると昴はこの空に見合うような表情をしめした。
困ったような疲れたような、
そしてため息をついては桜へとこう冷たくあしらった。

「桜、あとでいっぱい可愛がってあげるから、そういうの後にして。
 わからないかな、今取り込み中なの。
 あんまり邪魔すると怒るよ?」

まるで何も感じない瞳だった。
桜はその昴の言葉を聞くと振り返り、寿の元へ向かう。
寿に耳打ちをしてなにかを渡すと、
桜はその場から去っていった。

「ほんと、疲れるね昴たちは。
 よし、ここで偉大なるプランツ姫からの遺書を発表しようか」

面白そうに笑う寿に、
クオンと昴は目を見開いた。

382:大和:2013/04/06(土) 17:56 ID:/qE

「遺書……?」
「そんなもの俺達が殺したときにはなかったはずだ」

クオンと昴は状況を把握しかねている様子で寿を見る。
だがしかし当の本人である寿はまるで
「遺書の内容を知っているかのように」昴とクオンに説明する。
思い空気を雨は更にどんよりとした雰囲気へと変えた。
紅葉は静かに部屋の明かりをつける。
明かりをつけるとその部屋はお話を繰り広げる演劇の舞台となった。

「昴には教えてなかったけど、
 実は最近プランツの血縁者である人から手紙がきたんだ。
 その手紙には『プランツ・モーデンの遺書です』としか書かれていなくて、
 一緒にプランツの遺書が入っていたんだ」
「ならなんでそれを俺に言わなかった?」
「なんでって無茶な話だよ。
 なんせ今届いたばかりだからね」
「今……?」

昴の問いかけに答えることもなく、
寿は遺書を開けた。
寿が一度黙読すると紅葉と如黒は背後からその内容を見る。
明かりに照らされた主役の二人はわけのわからないといった表情をしている。
晴れることのない雨の降った空のように。
その空気を察してか如黒は寿へと言った。

「寿、ここは俺が読む」
「わかった、じゃ、よろしく」
「いいか、読み上げるぞ。
 親愛なる子供達と昴へ――」

まるでそれは悪夢。

383:大和:2013/04/06(土) 23:02 ID:/qE

「私がいなくなって寂しくなるのはきっと孤児院の子供だけでしょう。
 きっと昴はなにも想ってくれない。
 それでも私は寂しくないわ。
 あの子供達がいてくれたもの。
 きっと私は私のことを愛してくれない昴に酷いことを言ってしまうと思うわ。
 でも私はそんなことがしたいわけじゃないの。
 本当は昴のことも子供達のことも大好きよ。
 だから私の村のように悲惨になりはしないで。
 もし、私の大好きな子供達と昴が出会うことがあったのなら、仲良くして頂戴ね。
 ……プランツ・モーガンより。
 以上だ」

静かに如黒は遺書を読み上げた。
相変わらず窓の外は大粒の雨で景色は埋め尽くされていた。
そこでいきなり緊迫になった空気の中に、
銃が落ちる音が響き渡った。
銃を落としたのは昴。
手を小刻みに震わせながら昴は目を見開いていた。
すると紅葉は昴の元へと行き、銃を拾う。

「昴、動揺しすぎだ」
「……あぁ、わかってる。
 けど……あまりにも意外だった、プランツがこんな遺書を残すなんて」
「そうか?
 プランツはいつもあんな感じだ」

クオンは疑問を口にしては手元にあった銃をポケットへとしまう。
それを見ると、アメたちも自分達の持っていた銃をしまった。
全員、銃をしまったことの意味を理解した。
するとミサーナはイスに背を預けながらこういった。

「いつも優しい人だった。
 弱いところは見せなかった。
 ……あの人は私達の神様だった。
 それをアンタなんかに殺されたの。
 ものすごく憎かったわ」

誰に言うわけでもなくただ自分の意見を述べるミサーナにクオンは頷く。
もうそこで戦いは終わっていた。
しかしながら今までのを戦いと呼んでいいはずもないが、
クオン達の目の前からプランツが消えたときから抱いていた昴への憎しみを果たすときが、
終わった。
バッドエンドで終わりましょう。
それはプランツが昴にいつも言っていた言葉だった。
だがプランツは誰よりもバッドエンドを繰り返しながらも、
誰よりもハッピーエンドを望んでいた。

「きっと、俺が知ってるプランツと君達が知っているプランツは違うんじゃないかな」

384:大和:2013/04/07(日) 16:13 ID:/qE

昴はそう口を零す。
自分がみてきたプランツとクオン達が見てきたプランツは、
違うのではないかと昴は察した。
クオンたちもまたそれをわかったようで、アメは話し出す。

「私達が知ってるプランツは、ミサーナの言ったとおり、
 神様のような天使のような人でしたよ。
 私達を一度も怒ることなく、いつも笑っていました」
「それが本当の優しさかどうかはわからないけどね」

紅葉は冷めた口調でアメの言うプランツを否定する。
すると無言ながらもフィアンは紅葉へと銃を向けた。
だが紅葉ともあろうものが銃におびえるはずもなく、紅葉が知っているプランツを語る。

「天使だ神だなんて言うけれど、
 悪いけど俺にとってはただの悪魔でしかなかったな。
 自分の町はボロボロにするわ、男癖は悪いわ。
 どっちにしろ殺さなきゃならないやつだったんだよ」
「確かに、プランツは男癖が悪かった。
 俺と付き合ってる時だって他の男と寝て帰ってくることもあったしね。
 それに町のことも彼女は無関心だった……」

紅葉の言うプランツの言動に昴はなつかしそうに思いだしては同意する。
そしてクオン達に昴はプランツとの日々を教えた。
いつもプランツの城に行ってプランツの部屋に近づくと聞こえる、
いやらしい女の喘ぎ声。
それこそ昴もあくまでプランツと付き合っていたのは「仕事」という命があるからであって、
決してプライベートな関係ではなかった。
しかし昴のプライドはプランツが他の男と関係をもつことを許さなかった。
自分もいくら仕事といえど、他の女と関係を持っていたのは事実。
だが昴が「恋人」という仕事で作り上げる関係は「自分=相手」じゃない。
常に相手は自分がコントロールしやすいように、
「自分>相手」という関係をつくる。
つまりもうそれは恋人という関係ではなく、
「恋」や「愛」で結ばれたいわゆる「服従関係」を築くのだ。
プランツとはその服従関係がなかなか成立せず、
相手が自分のコントロールしやすい立場にいなかったことが、
なにより昴の勘に障った。

しかし昴は男と女の駆け引きを上手にすることで、
プランツとの服従関係を成立させたのだ。
だからこそ子供達の前では天使のようだったプランツも、
昴の前では欲望に飢えた女となった。

「君達が見てたプランツとは、違うでしょ?」

女を手玉にする昴は苦笑しながらそう言う。
昴の話を聞いてクオン達はそのプランツを想像することはできなかった。
なぜなら、プランツの豹変ぶりは昴も驚くほどのものだったから。
そしてそれが彼女の「武器」でもあったからだ。

385:大和:2013/04/08(月) 20:29 ID:/qE

「プランツはとても純情な人。
 そんな話信じられるわけがない」

フィアンは紅葉に銃を向けたまま昴にそう言う。
しかし昴が話したことはすべて嘘ではない。
ただ本当という名の現実。
自分達の見ていたものがどれだけ輝いていたのかをクオン達は知らない。
本当はとてつもなく汚れているものでも、
錯覚ながらに輝いて見えてしまう。
それがプランツであっただけの話。
昴のとってはただの女。
クオン達にとっては自分達を助けてくれた神様。
なぜ彼らの見ていた同じ者はこんなにも違う結果を残したのか。
それは彼らが見ていたものでも角度が違ったからだ。
よく絵を描くときにモデルを描く角度は重要とされているが、
それとまったく同じでそのモデルであるプランツをどの角度から見るかが彼らは違った。

「まぁ信じられないのも無理はないかもね。
 けれど信じてほしいな。
 君達が見ていたものは幻だって」
「ふざけるなよ!
 なんでオマエの話ごときで俺達のプランツまでも塗り替えなきゃならない!?」
「塗り替えてほしいなんて言った覚えないけど?
 ただ現実を受け入れなよって言ってるだけでさ」

クオンの抑えがきかなくなった怒りは昴へと向けられる。
誰も言ってはいないのだ。
戦闘するなどとは。
はじめから心理戦であると。

386:大和:2013/04/10(水) 21:19 ID:/qE

「ていうかさ、君達は知らないんだよ、プランツのことをなにも」
「なんだ、恋人のオマエにはプランツのことなら全部わかるとでも?」
「全部とは言わないよ。
 ただ君達よりは遥かに多くの知識を持ってると思うけどね」

昴は今度こそ自分の意見を曲げようとはしなかった。
クオンの反論にも自分が正しいとでもいうかのように。
それを見てフィアンは銃を下げた。
ここにいるすべての人の眼は一気に昴へと注目が集まる。
しかし昴はそんな視線を気にともせず、
ただ誰ともなくだが一人でに語りかける。

「君達が知っているプランツは本当のプランツではない。
 なんでかと問われれば、答えるのは簡単で。
 プランツは一度記憶を失ってるんだ」

とんでもない事実が昴の口を通して零れる。
またそれも事実として受け入れられなかった。
いきなり自分が思っていた人物を間逆に塗り替えるなど難しいもので。
そんな困難なことを昴はそこにいるクオン達に求めた。
それでも塗り替えることなどできない。
そんな今このときの土砂降りの雨をまばゆい光の晴天に変えるなど。
これは絵ではないのだ。
「修正」も「上塗り」も「塗り替え」も。
なにもききはしない。
ただまた新しく絵を描くだけだ。
書き直すのではない。
自分の記憶を塗り替えはしない。
自分の記憶を作っていくのだ。
昴の口から聞こえる声とともに。

プランツは一度記憶を失っているということを。

「受け入れるのは難しいことじゃない」

387:大和:2013/04/12(金) 22:09 ID:/qE

「受け入れるのはとても容易いことだよ。
 自分を信じなければいい、ただそれだけだ」

昴は淡々とだがしっかりとクオン達に述べた。
ただ冷淡に周りを見つめながら。
まるで使う目的を失った玩具を眺めるかのように。
昴の近くにいた紅葉は昴の元へと近づくと少しの耳打ちの後、
紅葉は如黒とともにその部屋を無言で出て行った。
雨の音が溢れる中でなぜかその部屋には昴の声が消されることなく、
むしろ昴の声は通って聞こえる。
如黒から遺書を託された寿はその遺書を静かに畳んでは胸ポケットにしまう。

「まぁそんなことはどうでもいいとしても、
 プランツは君達が物心つく前に一度記憶を失っていてね。
 ……前の記憶がなくて右も左もわからないプランツと一緒にいたのが俺なんだ。
 最初はそれこそ一都のお姫様なんていうから『守る』という命で近くにいたけど……
 でもそれも全部彼女が『利用』という目的の対象であることに気づいた。
 俺にとっての優先順位はいつでも仕事。
 だから彼女を利用することは容易かったよ」
「どれだけ最低なやつなんだ、オマエは」
「どれだけもなにもないよ。
 元からこんなだしな……直しようがないんだ」

クオンはプランツがどうとかなどということではなく、
昴という人物の酷さに本当に人間なのかということに疑問をもった。
しかしクオンも昴が嘘をついてはいないということを察しては自分の記憶を作った。

388:大和:2013/04/14(日) 13:03 ID:/qE

「昴、もうやめなよ」
「なにが?」
「親愛なる人物との記憶を書き換えるなんてそうそういいことじゃないのはよく知ってるくせに」
「……まぁ、そうなんだけどね」

寿がふいに口を開いてそういうと昴は自分の気持ちを落ち着かせた。
すると寿は先程如黒から預かったプランツの遺書を見つめる。

「たとえ私の大好きなみんなが敵対するとしても。
 決して傷つけあわないで。
 そうプランツは最後に残しているよ。
 昴、クオン、ここで身を引くのが俺はベストだと考えるけど?」
「身を引くことは嫌いだ。
 けれどそれをプランツが望むならそうするまでだ」
「……わかった、今回はそうするよ」

クオンも昴も寿の問いかけに仕方ないと言いたげに身を引いた。
クオンは振り返りアメたちに合図をすると、
静かにこの部屋から立ち去った。
そして立ち去り際、クオンはこういった。

「せいぜい今の女を大切にすることだな」
「……ははっ、そうすることにするよ」

昴は乾き笑いをしてはそう返す。
今でも雨は降り続く。
耳には煩い雨音が響いた。
薄暗い雲の広がった土砂降りにやむ様子は見受けられなかった。
晴れもしない心を持ちながら両者は雨の中をすれ違っていったのだ。
『あぁ、あの人がいなくなったのもこんな日だった』
そう想いをめぐらせながら。

389:大和:2013/04/14(日) 13:12 ID:/qE

はい、ということで、すごい微妙な終わり方にしました。
だがしかし今回の目的は自分としては果たせたのでよかったかなぁと。
物語の終わりはなにも「簡潔」にではないですからね。
こんな微妙な終わり方に挑戦してみました。
中編というわけでもなく短編というわけでもなく、な感じで終わったわけですが…
キャストをちょっと公開いたします。

キャスト。

クオン……クロスさん
アメ ……望月アメさん
ミサーナ……陽実さん
フィアン……双葉さん
リスティ……りっこさん
プランツ……「自主規制」くんw

出演許可をいただいたみなさんありがとうございまし!。

390:大和:2013/04/15(月) 22:30 ID:/qE

企画小説。
桜を擬人化ということを目指して描きたいと思います。
本編とは全く関係がありません。
春小説企画です。
注意、小説の書き方思い切り無視してます。

「あの春風」

こんな日だった。
君と出会ったのも。
僕が大きな決意をしたのも。

こんな柔らかな、そして暖かい春風が吹くときだった。

そう青年は相手の手を優しく握りながら空を見上げては思う。
しかしそれは空というよりも、
見上げればそこは薄ピンク色で埋められた桜の花々が咲いていた。
そよそよと揺れては花びらをひらひらと落とす。

「僕は……本当にもう――」

その青年は落ちてきた花びらを手のひらにのせて握った。
物思いにふけると手を開き、花びらを春風に乗せる。

自分もかつてはこの花びらと同じだったことを思い出す。
自分も本当はこんな桜のように大きくたくましかった桜だった。
そう、青年は本来人間ではなかった。
春に花を咲かせる桜の木であった。

391:大和:2013/04/19(金) 19:32 ID:/qE

その桜は大きく聳え立ち、
人々は桜の木の下に集まった。
学校の敷地内にたっているその桜は、
長年にわたって生き続けていることから学校のシンボルともなっていた。
ごく普通の学校に入学したごく普通の少女。
入学式が終わり周りでは友達が騒いでいる中で、
少女の目に留まったのはその大きな桜の木だった。

「……若菜?
 どしたのー?」
「いや、な、んでもない」

友達の問いかけに若菜と呼ばれたその少女は戸惑い気味に答える。
若菜の目に一瞬、桜の木に背を預ける青年が見えた。
しかし友達と話してからもう一度見るとそこに青年の姿はない。
若菜は少し不思議に思いながらも桜でいっぱいになる学校を後にした。

それからというもの若菜がその青年を見ることはなく、
学校でその青年を見かけるわけでもなかった。
しかし若菜は毎日のように桜の木の下に立っては桜に一言話しかける。
もはやそれが若菜の日常と化していた。
そうして若菜の高校生活の二年はすぎていった。
三年になりまたいつものように桜の木の下にいると、
初々しい新一年生が入学式も終わり友達と笑いあっている。
そんな姿を見て懐かしさを心に思う。

「懐かしいな。
 君もあんなだったよね」

そこには若菜一人しかいないはずが、どこからか声がとんできた。

392:大和:2013/04/23(火) 07:09 ID:/qE

あげます。

393:大和:2013/04/26(金) 19:38 ID:/qE

「え……」

不思議に思い後ろを振り返ると、
そこにはあの日、ここの桜の木で見た青年が立っていた。
若菜を驚きを隠せずにいる。
青年はそんなことを気にするわけでもなく若菜に近づく。

「久しぶり。
 あれ、俺のこと知らないかな?」
「知らない」
「……本当に?」

突然の問いかけに硬く答える若菜。
そう探られるようにいわれれば完璧に知らないというわけではないと気づくが、
あの入学式の日に見ていたともいえずにいた。
青年はそんなしどろもどろした様子を伺うと木に背を預けてはこう言う。

「入学式の日、俺を見てたよね。
 まさか、俺は隠れてたのに見つかるとは思わなかったけどさ」
「……だから、あの時すぐいなくなったの?」
「いなくなった?」
「うん、だって振り返ったらもう……」
「あぁ、まぁ……そうだね」

若菜の「いなくなった」という問いかけに、
なぜか少々戸惑いながら答える青年。
春風は優しく頬をなで、二人の間を邪魔せぬように通っていく。
木にもたれかかる青年の前髪は少し眺めでまるでその春風のようにやわらかい。
青年の横顔を若菜は見ながら、若菜は話しかける。

「でも、学校にはいなかったけど……」
「そりゃまぁ、不良だからさ」
「嘘だ」
「あはは、バレちゃったか。
 それでも毎日学校は来てたし、授業サボってたってことだよ」

まるで話を丸め込むようにして青年は答える。
学ランを着ていることからみても、
ここの学校の生徒ということもわかっていて、
何一つおかしいところはない。
そると青年はふと気がついたかのように問いかけた。

「そういえば、名前は?」
「若菜。
 そちらは?」

「俺?
 うーん、俺は千尋だよ」

394:大和 ◆D5w2:2013/04/27(土) 22:10 ID:/qE

すこし考えるようにして言うと千尋はニコリと微笑んだ。
それを見た若菜は少々不思議に思いながらも相手を見やる。

「千尋か。
 なんか、春っぽい名前だね」
「そっちのほうこそ春っぽいじゃんか」
「そんなことないよ」
「若菜なんて、可愛い名前でさ」
「……可愛い?どこが」
「え?全体的に」

千尋の可愛いという言葉に少し胸を高鳴らせながらも、
若菜は否定の言葉を口にした。
淡々と若菜の質問に当たり前かのように答える千尋は若菜を前から知っているようであった。
お互い今日が初めてのはずなのに懐かしさと親しさが話していて感じられる。
まるで昔からの友達でもあったかのように。

「あ……そろそろ時間じゃない?」
「本当だ、もう教室に帰らないと……」

千尋がそう学校の時計を見ながら言う。
その視線を追いかけるかのようにして若菜も時計を見ると、
千尋は体を木から離し、二人は校舎へ向かって走り出した。
いつかの風のように速くはないけれど、
今吹いている春風のように二人は走る。
そのときはまだ二人で走りながら笑いあうことしか頭になかった。
だからこそ、
惹かれあう二人の恋が報われることのないものだと、
信じたくはなかった。
千尋は信じたくはなかったのだ。
きっと今抱いている気持ちは無残にも終わってしまうものだと。
ずっと恋焦がれてきた若菜を前にして、
自分の気持ちは伝えられずに終わってしまう。
そう信じて疑わなく、
また真実も現実もその筋書き通りであったと誰もが思った。

そんな昼過ぎの春。
まだ桜の散る気配はなく。
太陽は二人を照らす。

395:大和:2013/04/28(日) 19:49 ID:/qE

教室につくと、千尋は「じゃあまた」と言って廊下を曲がっていった。
もちろん同じクラスでないことぐらいはわかっていたが、
普通に廊下を歩いてゆく千尋を見てなぜ今まで千尋がいることに気づかなかったのかと、
内心不思議に思いながら若菜は教室へと戻った。

「千尋ってどこのクラスなんだろ……」
「あ、若菜いたいたー、早く席つきなよ。
 もう少しでHR始まるとこだよ」
「え、そうなの?
 よかった今帰ってきて」
「たくもー、どこ行ってたの?」
「校内散歩してただけだよ。
 一年生は可愛いなぁってね」

教室に入るとすぐ後ろの席の友達が若菜に話しかける。
身を乗り出すようにして座っている友達は今日が自分の入学式でないにもかかわらず、
なぜかそわそわした様子でいた。
若菜はそんな友達の様子よりも千尋とのことで頭がいっぱいだった。
みな席についていながらも教室のざわめきはやまない。
それぞれにクラス変えしたばかりのときめきは心から消えなかった。
若菜もまた他と同じように後ろを向いて友達と楽しく話していたとき。
教室のドアを開ける音と同時に先生が入ってきた。
生徒達はあちこちに挨拶の言葉を先生に向かって発するが、
そんな声々もうしろにくっついてきた一人の青年によって消える。

「え…」

若菜の小さな感嘆も同じように消えた。
しかしその小さな感嘆を聞き逃さなかったかのように、
千尋は若菜の方をじっと見つめた。
後ろにいる友達がなにやら騒いでいるがそんな声も今や若菜の耳には届かない。
二人の瞳はお互いに吸い付く。
それを離すことなどできない。
すると千尋は確実に若菜に向かって優しくニコリと微笑む。
そうして前を向きなおしては透き通った声でこう言った。

「初めまして。
 櫻木千尋といいます」

そう、たとえるなら桜のように綺麗だった。

396:大和:2013/04/29(月) 11:47 ID:/qE

「この四月から一緒にみんなと暮らすことになる千尋くんだ。
 みんなとね、早く友達になれるようにね」
「はい」
「じゃあ、あそこの席かな」

先生が指定した席と若菜の席はそれほど近くもなかったが、
それほど遠いというわけでもなかった。
千尋が自分の席に座ると周りにいた生徒達は立ち上がり、
千尋の席へと向かう。
隣に座っている女の子はまるで自慢するかのような顔ぶれであった。
積極的に千尋に話しかける男女達。
さっそく千尋に触っている女子の姿もあった。
聞き心地のいい鐘の音もざわついた教室にはなんの意味ももたらさない。
そのまま自分の席に座っていた若菜は鐘が鳴ったことに気づき、
ゆっくりと席は立っては千尋の席に向かってこう言い放つ。

「ほら、鐘鳴ったからそろそろ座って」

すると明らかに反論の意を表した表情で、
そこに集まっていた人たちがこちらを振り返る。
一瞬焦りを感じたものの、このまま終わるわけにもいかまいと、
若菜は付け足す。

「気持ちはわかるけど、もう時間だしさ」
「あーあ、まだ委員長も決めてないのに委員長気取り?」
「いや、そんなことは――」
「最悪だよね、ごめんね千尋くん、転校初日からこんなんで」
「私もこんな転校だったら学校行く気なくすわー」

ただの注意がここまでの事態を呼ぶのだろうか。
若菜は自分のしたことのなにが悪いのか理解できずに、
飛んでくる野次馬ばかりを聞いていた。
横目で後ろの友達を見ると友達は心配そうな顔で若菜を見ていた。
その表情を見ると、若菜は目頭に溜まったものがあふれ出そうになった。
この数分間になにがあったと。
そして友達にだけわかるよう「もう無理」と口だけを動かすと、
一度顔を上げる。
こちらを見つめてくるクラスメイト達。
教室のドアへと急ごうとしたその瞬間、

「助けに行くから」

そう美しくもあでやかな千尋の唇は若菜に語りかけた。
誰も見ていない二人の会話。
若菜は気づいたときにはもう教室を出ていた。
後ろから先生の声がなにかと聞こえるが気にして振り返る暇もない。
ただ、先程とは全く違う、早いスピードで、
外にある桜の木へと走った。
涙が顔を濡らす。
しかし若菜は笑った。

こんなのもまた、悪くないな、と。

397:ゆゆ:2013/04/29(月) 11:54 ID:4kg


桜のように綺麗…うん。すごいね、((((((
見てみたいな(´∀`*)

はぁ〜…まったく。文才に溺れて死ぬところだったz(←

398:大和:2013/04/29(月) 17:41 ID:/qE

お久しぶりですね〜
今回の小説もありがとうございます!
え!?死なないでくださいよ!?
文才とかマジ無いので…
なんとか頑張っていきたいと思います。

399:大和:2013/05/04(土) 05:00 ID:/qE

桜の木の下で泣くというのは案外寂しいもので、
桜の綺麗さがよりいっそうその気持ちを際立たせた。
先程と同じ春風が若菜の頬をなでる。
若菜は桜の身を預けるようにしてはほろほろと泣きだす。
小さな泣き声を出しながらその場に崩れる。
なぜこんなことになったのかなんてわからなかった。
ふと顔を上げると自分が走ってきた方向から人が見えた。
その人物が誰だとわかったとき、また若菜は泣きながら走り出した。
追ってきた人物は千尋だった。
そして千尋もまた若菜の姿を認めるとスピードを速くしては、
逃げ出す若菜を追いかけた。

「若菜、待って!」
「……りっ」
「え?なに?聞こえないよ!」
「無理!」
「それで俺がほっとくと思ってるの!?
 ……ていうか意外と走るの早いけど、すぐ追いつくって」

その千尋の言葉が言い終わったときにはすでに、
若菜の腕は千尋によってつかまれていた。
若菜は内心しまったとも思ったが、
今自分がしている表情だけは見せまいと顔を背く。
そんな若菜を見て千尋は無理やりにでも若菜の顔を見ようと試しみる。

「……泣いてるのわかってるから、
 こっち、向いて?」
「ごめん、今は無理」
「駄目」

そう千尋が言うと嫌がる若菜をよそに、
ぐっと顔を近づけさせては唇を重ねた。
なにが起きたかわからぬまま若菜は目を見開く。
千尋はそっと若菜の髪についた花びらを髪をすきながら取った。
軽く触れるだけのキスを済ますと千尋はニコリと微笑む。

「どうしたの、そんなに驚いてさ。
 キスがびっくりしたかな?」

そのとき、若菜は気づいた。
きっとずっと前から、自分は千尋が好きだった、と。

あの日見つけた日から、君を。

400:大和 ◆D5w2:2013/05/04(土) 05:17 ID:/qE

400きたぁぁぁ!!

初の400な大和です!
ここまで読んでくださった皆様、また支えてくださった方々ありごとうございます!
毎回毎回更新は遅いわわけわかんないわ…
ほんと寂しい小説ですがなんとかやってきました。
ただいまは違う小説を書いていますが、
コレも短編なのでコレが終わったら、
また秘密警察特殊部隊の過去編(後半)をいきたいとおもいます。
実は後半というほど前半が進んでいなかったりするのですが…
11人はストーリーを考えるのも大変ですが、
自分で書いているぶんにはとても楽しいので、
読んでいる皆さんにもたのしんでいただけたらなぁと思います。
僕自身この作品が好きなので昴の代から光也の代まで…
そう考えると長かったですね〜

これからもこんな感じで進めていきたいと思うので、
よろしくお願いします!

では本当にありがとうございました!

401:大和:2013/05/04(土) 20:54 ID:/qE

大きく見開いた瞳は千尋の瞳をじっと見つめる。
驚いたその表情。
千尋はキスしたことがまずかったかと少し焦る。

「あぁ……そんな、ことだったの」

途切れ途切れにつぶやきを零す若菜。
千尋を見てそういい終わると若菜は足をはずす。
その場に崩れそうになる若菜をすぐさま千尋は抱きとめる。
胸に顔を預ける若菜を千尋は盗み見る。
その顔といったら熱が出てるのではないかと間違えるぐらい紅潮していた。
よく晴れた太陽は二人を暖かく照らし、
桜は二人の頬をなでる。
「春」がよく充満している日だった。

「どう?大丈夫?」
「ごめん、立てなくて……」
「俺はいいよ。
 慌てないで?」

少し焦り気味に若菜は千尋から離れようとするが、
まだきちんと立てない若菜のことを察し、千尋は優しく抱きしめた。
ついに観念したのか、若菜は体を千尋に預ける。
すると触れ合っている若菜の体からは煩いぐらいの鼓動が千尋に伝わった。

「……恥ずかしい?」
「ん、うん」
「すっごい、鼓動煩いよ?」
「ごめ……ごめんなさ――」

そう若菜があやまりかけたときだった。
千尋は強く若菜を抱きしめ、耳元に口をもっていくとこうささやく。

「ごめん、本当は嬉しいんだ。
 俺も若菜がす……大切だよ」

千尋は出かけた言葉を飲み込む。
その意味はなぜか。
千尋は儚げに笑った。

402:大和:2013/05/10(金) 21:44 ID:/qE

そしてこう、小さい子供に言い聞かせるようにして言う。

「すごく、すごく大切だよ。
 だから……若菜が泣くところなんて見たくないんだ。
 いい?今から魔法をかけるから、絶対に目を開けないでね」

そう若菜に言うと千尋はそっと手で若菜の目を覆う。
そのまま優しく抱きしめられていると、
風が大きく吹いた音が耳に響き、それ以外はなにも聞こえなかった。
不思議で仕方の無い感覚が若菜を襲うが、
そんな襲いさえも千尋に抱きしめられている今はなにも気にならない。


――「さぁ、もうもどろっか」

次に目を開けると千尋の微笑む顔が目の前に映った。
千尋は若菜をしっかりと立たせると手を引いて教室に戻ろうと、
元来た道を歩き出そうとした。
しかし若菜は今教室に戻っても先程まであんなであったことを思い出す。
急におびえる顔をする若菜に千尋はただ優しく穏やかに、儚げに、寂しげに。

「大丈夫だよ」

そういつかのように言うだけだった。

403:大和:2013/05/17(金) 19:17 ID:/qE

二人は教室へ戻るとき無言のまま教室へと向かう。
千尋は若菜の手をしっかりと握っていた。
緊張気味に開いた教室のドアから少し顔を覗かせると、
そこにはわいわいと楽しそうに騒いでいるクラスメイト達。
そのうちの一人が振り向き際に千尋と若菜を見留めると、
笑顔でこちらにむかって手を振った。
若菜は内心クラスメイトと目があったとき「どうしよう」と焦ったが、
握られた千尋の手が少し強く握られたことでその不安も和らげた。

「若菜〜、千尋くんも遅いよ〜」

まるでなにもなかったかのように言うクラスメイト達。
そのことに驚きを隠せず若菜は戸惑う。
千尋がドアの入り口で若菜の背中をそっと押した。
振り返った若菜にひとつうなずくと、
若菜もうんとうなずき二人で教室へと入った。

「これから三年生は写真撮影だって〜」
「ほら、早く並ぶよ?」
「あ、うん……」
「千尋くんも、ね?」
「うん、そうだね」

二人はクラスメイトに連れられて黒板の前に並ぶ。
先生がシャッターを切ったのとみんなが笑ったのはほぼ同時だった。
それから若菜が家に帰って焼きまわしされた今日の写真を見る。
すると若菜は思わず写真を落とした。
若菜の隣にいたはずの千尋がそこには写っていなかったのだ。

404:千尋:2013/05/17(金) 22:25 ID:s26


思わず、溜め息をついてしまいました。
表現の美しさ、ストーリー性、設定……何から何まで、完璧。

随分長く連載されていて、その精神力にも見習うものがあります。
本当に小説が好きなんだなぁ、と。


この小説は、「美しい」。
そう思いました。


私は、今日初めてここにきました。
以前は他の掲示板で執筆していました。
一応、挨拶までです。


(登場人物と名前がカブってたみたいで…すみません……汗)

405:大和:2013/05/18(土) 20:22 ID:/qE

ありがとうございます〜!
登場人物と名前が被っていたことは特にお気になさらずそうぞ。
何名かの方々ですでに被っていらっしゃる方はいるので……
しかしここまで褒めていただいてもらえるとは思いませんでした。
今書いているものは本編のものとは全く関係の無いものですが、
本編のほうも読んでいただけると嬉しいです!
……まぁなにしろ長いですがね…
確かに美しさを極めようとしているのはそうなのでそう言っていただけて光栄です。
今回は本当にありがとうございました。

406:大和:2013/05/18(土) 22:15 ID:/qE

若菜はなぜかふいに立ち上がると家を後にした。
家に帰ったばかりなので制服のまま今日の昼間のように走る。
走って向かう場所はいつでも同じだ。
あの桜の木の下他ない。
日はすでに西に傾いては明るささえもなくしかけた夕方。
若菜が全力で走る背中を春風は押した。
「もっとはやく」とでもいうかのように。
しかし若菜自身もなぜ学校の桜の木に向かって走っているのかはそれこそわかってはいなかったが、
はやくしないとまずいというのはわかった。
それも千尋のことで、だ。

「千尋……千尋……」

千尋の名前を必死に呼びながら若菜は足を動かす。
若菜の家からそれほど学校は遠くはなかったが、
いつもは遠くないと思う道のりも今はなぜかとてつも遠く感じれた。
やっとの思いで学校の校門にくると、
校門から桜の木の下に立つ人影が見えて若菜は一目で千尋だと気づく。
そして自分の精一杯の声を振り絞り千尋へと声をかける。

「千尋!」
「……わか、な?」

急いで木の下へと行くとそこには驚いた顔をした千尋が待っていた。
目を丸くした千尋は木と向かい合う形で立っていてまるで今から何かをするようでもある。

「なんで、なんでここにいるの?」
「なんでって……若菜こそ」
「誤魔化さないで!」

若菜は焦る気持ちが先走り千尋の解答を求めた。
彼を見たときから。
千尋を見たときから若菜はなんとなく感じていた。
懐かしい感じもする千尋、
悲しそうな感じがする千尋、
柔らかい感じな千尋、

今にも消えてしまいそうな千尋。

どこかでわかっていた。
千尋とは長くいれないこと。
それにしたって、一日で、なんて。
すると千尋は観念したかのような表情になってはつらそうに若菜を見た。
そしてそっと若菜の髪を撫でる。

「ごめん、若菜。
 俺ね本当は人間じゃないんだ。
 春の日に一度だけ人になれる桜なの。
 俺はこの木なんだ。
 信じられないかもしれない、けれど俺は今日また桜に戻らなくちゃならない」
「え……待って、もういなくなっちゃうの?」
「うん」

すがるような目つきで千尋を若菜は見る。
目頭には涙が浮かんでいた。
もう日は暮れ、だんだんとお互いの姿も見えなくなってくる。
また先程の春風が吹くと、千尋の髪が風に揺れるたび桜の花びらとなって散っていく。
体もだんだんと花びらで削られていく。
若菜の涙は溢れる。

「いや!やだよ……」
「若菜、泣かないで?」
「……千尋!」
「好きだよ、若菜。
 いつもいつも俺のところに来てくれてありがとう。
 好きだよ」
「千尋、千尋、私も、私も千尋が好きだよ」

消えていく体はピンク色だった。
風がやむことは無かった。
あんなにも優しい風なのに。
千尋を抱きしめた時、
すでに千尋はそこに居なかった。
残ったのは、持って来てないはずの写真が一枚。
ただ残されてなくことだけだった。

407:千尋 ◆ijAo:2013/05/19(日) 10:03 ID:s26

了解です!
本編の方にも行ってきますね。

408:大和:2013/05/19(日) 17:27 ID:/qE

ありがとうございます。
本編は長いし最初のほうなんかもわけがわからないですが、
ご容赦ください。

409:大和:2013/05/20(月) 08:47 ID:/qE

その日若菜は揺れるように家へと帰った。
ただ一人歩く道は寂しくて。
もういないぬくもりをどこかで探している。
二度と彷徨うことのできない想い。
頬を伝った涙はいつしか止まり、乾いていた。
春風が制服とスカートを揺らすけれど、
その風は若菜の涙を誘うだけで慰めてはくれない。

「……ち、ひろ……」

泣いてばかりの今日。
「寂しい」という想いだけが募りながら家へ帰っては眠りについた。

次の日も、なにかが変わることなく朝が始まって夜がくる。
そんな千尋のいない生活が続き、もうそれが当たり前となった五月のはじめ。
たった一日の千尋との生活は大きなものだった。
桜はすでに散り、体を緑色へと変えて夏を迎えようとしている。

今日もまた、若菜は桜の木の下に立つ。

「おはよう、千尋」

そう小さく誰にもきこえないようにそっと呟く。

「おはよう、若菜」

青年はもう春じゃない。

「ちゃんと若菜と恋をしにきたよ」

振り向くと太陽ほどにまぶしい君の微笑み。
けれ優しい。
あの懐かしい春の、君。




終劇

410:大和:2013/05/26(日) 17:24 ID:/qE

みなさんお久しぶりですね!

秘密警察を置いといて短編を二つ書いてた大和です!

ただいまから秘密警察特殊部隊過去編の後半を開始させたいと思います。

それで大分間が空いてしまったので前回のを少し今から載せたいと思いますので、

そちらを読んでいただければ話がわかるかな…と。

ではこれからもよろしくお願いします。

411:大和:2013/05/26(日) 17:31 ID:/qE

≫326から寿の過去編となっています。
http://ha10.net/test/read.cgi/novel/1334568947/301-400#Z
≫349
『白夜昴が女性教師を殺そうとした』
『藍染寿が男子生徒を殺そうとした』

こんな噂は微塵たりとも広まりはしなかった。
ただその場面を目撃したものはその次の日、養成所には来なかったという。
つまり、
目撃したものがその後どんな拷問を受けてそのことを話すなと脅されようと。
女性教師がその日限りで退職が決まったことも。
殺されかけた男子生徒たちが退学になったことも。
誰も知らない。
勿論、昴や寿もそれは同様であった。
あえていうなれば、昴と寿は今までの生活になんら支障が…

なかった。

全くといってなかった。
なぜなら、そんなことは簡単であった。
彼らはこの養成所の、この国の。
『宝』であるからだった。
だからこそなにをしても許される。
だからこそ、

「ふざけるのも大概にするがいい」

ハイガ・スフォンクスはそういった。

この人物こそが彼らにとってのーー

「オマエ達にいい教育をしてやろう。
 これは首位に上がったものだけができる特別な訓練だ」

そういわれて二人があゆんだ先はまさに地獄。
『宝』と育てられた二人。
『凶器』と呼ばれ続けた二人。
しかし。
そんな二人の領域以上のものがハイガ・スフォンクスの背後にはあった。
どれだけの頭を使っても予期せぬことばかりを要請してくるハイガ。
戦乱と言っていいほどに朽ち果てた日本を、
人々を。
そして自分を。
助けるためにはどれほどの力が必要なのか。
二人はまだ知らなかった。

当時、27歳のハイガ・スフォンクスはイギリスの秘密警察の総長であった。
その容姿といったら完璧では済まされないほど。
数々の女に媚を売られ続けたハイガだが、一人の女性を愛しぬくというその精神は、
もっと女を引き寄せるためのスパイスともなった。
もちろん実績もすごいもので、イギリスの傾きかけていた治安をよくしなおしたのもハイガであった。
そんなハイガが近国であるフランスの秘密警察と友好の挨拶ということで、
フランスの秘密警察本部、また養成所を廻覧しているときである。
薄ら青と黒の濁ったその瞳の持ち主、
藍染寿を見たのは。

そしてそれ以降として見ることのなかった寿と、
噂では『革命』とも呼ばれた白夜昴を、
ここ日本で見つけた。

それと同時にハイガは彼らの残酷さに同情し、

「教育の為直しだ」

そう言って彼らを人生の創めに立たせた。




〜藍染寿過去編・前編〜


終劇。

412:ゆゆ:2013/05/27(月) 21:38 ID:uhE

やっぱり面白い(´∀`*)

413:大和:2013/05/28(火) 22:25 ID:/qE

ゆゆさんお久しぶりです〜

またこうしてきていただいて本当にありがとうございます!
これからまた寿編を書いていきたいと思いますので、
どうぞよろしくお願いします〜

414:ゆゆ:2013/05/29(水) 16:04 ID:uhE

いえいえ、まだこれからも来ます!←←

はい、!いつも貴方の文才には驚かせられますw(

415:大和:2013/06/01(土) 22:51 ID:/qE

〜藍染寿過去編・後編〜

それはそれは、残酷だった。
少年の父は有能な秘密警察の幹部で忙しい日々が絶えなかった。
そのためか少年は幼かったこともあり、あまり家に帰ってこなかった父の顔を今は覚えていない。
母は優しい人であった。
いつも父の話をしてはどこか愛おしそうに空を見つめていた。
しかしそんな母も父が仕事で亡くなったことにより病に侵されては息絶えた。
少年に残された家族はただ一人の姉のみ。
父と母が残した大金を目の前にして姉はなぜか働いた。
そんなことをしなくとも金ならいくらでもあったものを。
だが姉は「大量にあるものこそ気がつけば無くなっているものよ」
そう言って決して働くことをやめはしなかった。
少年が姉にすがってでも働くことをやめようと言ったのはこんな理由ではなかった。
姉の働いてる仕事の問題であった。
その仕事とは娼婦。
少年は体を売ってまで働くことではないと濡れる頬で姉にやめてと懇願したが、
姉は一向に止めることは無く、
娼婦という「暗殺対象にされやすい仕事」柄、彼女はどこかで暗殺された。
まさに少年の人生は酷。
そして少年は唯一の父になろうと強く想ったのだ。
その決意は残酷に満ちた少年の人生をただ照らし続けた、光。
だからこそ、当時少年であった藍染寿(アイゾメコトブキ)は今ここに立っている。
白夜昴(ビャクヤスバル)を隣にして。

「お前らが持てるのは短刀と三弾入った銃のみ。
 それで今から10頭のライオンを殺せ。
 わかるな?単純に考えて最高でも銃で殺せるのは二人で6頭、
 まぁ残りはオマエらの頭を使って殺せ、それだけだ」

そうパイプイスに座るハイガが少し高いところで見下ろすように言っている。
ここは秘密警察の闘士場。
広く円状になっているその闘士場の上下左右斜めからは、
すでにライオンの鳴き声やらうなり声が二人の耳には届いていた。
ハイガが片腕を高く掲げて銃声が鳴り響くと同時に二人の目の前にライオンが飛び出してきた。

「俺だってへたに首位とってるわけじゃないからさ」

いつもの笑みで二人は歩き出す。

416:大和:2013/06/02(日) 22:00 ID:/qE

こうして二人はハイガに「教育の為直しをしてやる」といわれた日から、
このようなわけのわからぬ訓練ばかりをしていった。
こんなことをして果たして意味はあるのかと二人は考えたが、
今までのようなつまらぬ学校生活を送るよりはいくらかマシだろうと、
二人はハイガの訓練を受けることにしたのだ。

それからどれぐらい経ったことだったろう。

「今日は久しぶりに故郷に帰るよ」

そう少し儚げな顔で二人にいってくるよと告げた日。
よく晴れた初夏。
少し早めに食べていった朝ごはん。
確かテーブルに牛乳が飲み半端で置いてあった。
蝉はまだ鳴くことはなく、蒸し暑さが部屋に充満する。
ハイガと寿と昴は三人で一緒に暮らしていて、
まだパジャマ姿だった寿と昴は目をこすっては、

「気をつけてねー、いってらっしゃい」

いつものように手をひらひらと振っては別れを告げた。
その数時間後、久しぶりに学校へ来ていた二人がたまたま耳にした一人の生徒の声。
内容はまさに二人の心を凍らせる。
立ちくらみではないくらみに暑さではなく、寒気が二人を襲った。

「おい、どの便だかはわからないが、
 飛行機に悪組織が乗っていって、その飛行機が今のっとられているらしいぞ!」

その日は運が悪かったのかもしれない。
その飛行機はハイガ乗っている飛行機だということがその後家に帰って確認したところわかった。
無事に着陸したもののその飛行機は夜になっても警察との対抗戦で、のっとられたまま。
一か八かでハイガに電話をかけると、
あっさりとハイガは電話に出た。

『もしもし?
 悪いな、あんまり悠長に話してる時間も無いから簡潔に言う。
 俺の居場所はGPSがついてるから後でパソコンで確認しろ。
 これが本題だ、オマエらでこいつらどうにかしてくれ、それだけだ。
 それじゃあな、助けに来るのを待ってるぞ、王子様たち」

楽しげな声だった。
だが、これが二人が始めて人を殺すきっかけとなったものだった。

417:若宮鈴音 ◆RCWE:2013/06/03(月) 19:07 ID:ez-xMo

失礼します。
「☆葉っぱ限定何でも屋☆」の者です。
最初に一言。
意見や質問、文句などは受け付けておりません。
それだけ分かっていただけると有り難いです。
それでは評価させていただきます。

キャラクター ★★★☆☆(五段階評価)
内容 ★★★★☆(五段階評価)
総合 ★★★☆☆(五段階評価)

点数:90点


ほぼ文句のない小説です。
ですが、まず私が気になったところ。
三点リーダー(…)の個数です。
三点リーダーは偶数個使用しますが、偶数個使用されてあるところとされていないところが目に掛かりました。
そこを統一すればいい、と思います。
本編は事情により読めなかったのですが、>>1に「みなさんに本編を見なくてもわかってもらえるよう文章にはいろいろと解説をいれていきたいと思っていますのでご安心を♪」と書かれていますよね?
それについては私も有り難いと思いました。
ですが、本編の最終的な内容などを始めに書いて欲しかったことが一つ。
キャラクターについては、少ないので分かりやすいです。
改善点として、キャラクターの性格なども加えればいいんじゃないかと思いました。

具体的な評価は以上です。
欠点と改善点を両方書かせていただきました。
最初に言った通り、意見や質問、文句などは受け付けておりません。
皆様の意見も参考にするとさらに良い小説が書けると思います。
ご依頼、ありがとうございました。

418:大和:2013/06/04(火) 22:51 ID:/qE

評価ありがとうございました。
これからに生かしていけるよう努めます。

419:若宮鈴音 ◆RCWE:2013/06/04(火) 23:07 ID:ez-dcU

*大和sama..

いえいえ。
口下手なので「はぁ?」と思う部分も、もちろんあると思いますが私が思ったことをそのまま書きましたので伝わってるといいです。
これからも頑張ってくださいね^ ^
一人のファンとして応援しています。

420:大和:2013/06/05(水) 22:27 ID:/qE

きっとそのときの二人は誰が見ても人間ではなかった。
ハイガを助け出すことしか頭になく、
人を殺すという目的でしか体は動かなかった。
すぐにハイガの友人に連絡し、二人はその飛行機がある場所へと向かった。
そして相変わらずの進む気配のない悪組織と警察達の対抗戦。
そこにひとつ大きな爆発音が鳴り、煙が立ち込めると、
二人はすばやく飛行機へ乗り込むと目の前が煙で見えないことをいいことに
悪組織の者達をもろともせずに殺した。
一切の手加減も躊躇もなく。
ただハイガを助けるという目的を果たすために。
二人のおかげで無事飛行機事件は解決を遂げたが、
ハイガはその日帰ってからあることを二人に教えた。

421:大和:2013/08/19(月) 20:09 ID:/qE

「まず、助けてくれてありがとうな」

綺麗な白いイスに昴と寿は座っては、同じ方向を見る。
二人の目の前には片手に赤ワインをもったハイガ。
流石に空港会社もこんな大きな出来事があった後に飛行機を出すわけにも行かず、
乗客全員を近くのビジネスホテルに泊まらせ、
明日早急便として飛行機を出すことになった。
だがハイガはせっかくなら堅苦しいホテルよりも家に帰りたいと言い出し、
今、このリビングに居る状態となる。
日付はすでに変わっていたが三人にとってそのとき時間などはどうでもよかった。
ただ、達成したという思いしか、寿と昴にはなかった。

「あぁ、なかなかだったろ?」
「初めにしてはいい出来だったよな」

二人はハイガを助けられた嬉しさからなのか、否、
人を初めて殺したという興奮からなのか。
ほとんど満面の笑みに近い表情をするとすっかり意気投合していた。
こんな夜でも、なにも知らないかのように星は輝く。
夜は真っ暗ではなかった、なんというような、青々とした黒さ。
ハイガはそんな空を窓から横目で見ながら二人に促す。

「ほら、見てみろ。
 どれだけ残酷な夜でも、こんなに星は輝く」
「残酷……?
 結果オーライじゃないの?」
「……俺はお前達を褒めてやりたいところだ。
 けどな、俺は殺せ、とは言ってないんだよ」
「だって、なんとかしろって……!」

寿は自分のしたことが認められずに不満の持った声をだす。
自分達が、しかも初めてしたことだ。
完全に褒める言葉がくると思っていた寿はハイガの言葉に毒を刺す。
テーブルに置かれた寿のグラスは水を滴らせている。
少し身をのりだすようにしながら寿は問い詰めた。

「ハイガは何がダメだったと思うの?」
「そうだな、回りくどいのはよくないな。
 俺は殺したことがダメだと思った」
「あの状況でどうにかするにはそれしかなかったんだよ!?」
「それしか、なんて。
 どうして自分で選択肢を作る?
 オマエは馬鹿じゃないだろう、いろいろな問題を想定できたはずだ」
「問題……?」

ハイガの意見に寿はまったくわからないといった表情をする。
少し首をかしげては、昴と目を合わせてアイコンタントをしてみる。
しかし昴もしらないといった感じで首を横に振った。
それをハイガはグラスの赤ワインを揺らしながら見ると続けた。

「今回はお前達の作戦が上手くいったからよかった。
 しかし、もしも上手くいかなかったら?」
「そんなことを考えてたらなにもできない」
「けれど、全ては成功しない、それが事故だ」
「でも自分の考えを信じて進むしか道は――」

「まだ何かを失わないと分からないか、藍染寿」

その言葉は、
ひどく寿に突き刺さり。
きっと一生として抜けることの無い毒針だった。

422:大和:2013/08/22(木) 17:47 ID:/qE

さぁ、ここで名前の読み方をお忘れの方に!!

藍染寿「あいぞめ ことぶき」

白夜昴「びゃくや すばる」

そして一応ただいまの時点で更新優先は「微炭酸」のほうになっていますので、
ご理解お願いします。

423:大和:2014/02/22(土) 07:52 ID:R9U

「もうオマエは大きなものを失いすぎた……
それでもまだなお失うつもりか?」
「……ッ……だから、なんでそういう話を……」
「まさか、もう俺に失うものなんてない、なんてーー」

ハイガがグラスを机の上に置こうとした時だった。
昴は予感していたことが的中し、
怒りの限界に達していた寿を止めようとするがそれすらもう手遅れだった。

「なにも失っていないくせに、俺はなにも言われたくない……!
ふざけるな、人の人生を馬鹿にして!」

ハイガの持っていたグラスは机がひっくり返されたことにより、
床に赤い液体を残して形は消える。
その返にはキラキラと破片が散らばるばかり。
まるで、夜空の星をもってきたかのように。
じっと寿はハイガを見つめる。
そうハイガが初めて寿と出会ったあの日の、
誰にでも向ける憎らしさの瞳を。


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