咲かせた花は・・・

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1:うにゃ:2012/05/28(月) 22:11 ID:sQ.

「・・・私たちも手を尽くしましたが・・・貴方の容態はかなり悪化していて、もういつ・・・その、死んでしまっても・・・おかしくはないのです・・・。」

『・・・そうですか・・・。私のためなんかに手を尽くしてくれて、ありがとうございます。』

「・・・花蓮ちゃん。確かにもう希望はないかもしれないが・・・諦めちゃダメだ。君はまだ、生きるんだろう?」

私は先生のその言葉に、静かに微笑んだ。

『・・・そう、ですね・・・』



もう、希望はないのに。

どうやって諦めずにいろというのだろう、この人は?

・・・嗚呼、今日も澄んだ空が、




私の心を黒く濁らせていく。

2:うにゃ:2012/05/28(月) 22:58 ID:sQ.

病名、家族性突然死症候群・・・別名、QT延長症候群。
名前から既に不気味だな、なんて知らされてすぐの時は現実逃避をしていた。

私は生まれつきこの病気が遺伝されていたせいで(お婆ちゃんが軽度のQT延長症候群だったらしく、お母さんには遺伝されなかった)、気づいたときにはこの病気はかなり深刻なものになっていた。

QT延長症候群には、特定の治療は・・・ない。
あるとすれば、QT延長症候群の発作や突然死を予防するものくらい。

私の家は別段お金に困ってはいなかったから、できることは全てやった・・・はず。

先生に渡された薬は欠かさず飲んだけど、結局発作は起きた。
心臓に命令を送る左側の交感神経を切断するという手術もしたけど、結局発作は起きた。
ベースメーカーを付ける、という治療法もあったそうだが、別に私の脈は遅いわけでも無かったので、やらなかった。
「植え込み式除細動器」とやらもつけて見たが、どうやら私には作用が大きすぎて脈を元に戻すどころか逆に乱れてしまったこともあった後、取り外すことになった。

この病気の原因は、よくわからないらしく・・・でも、先生が言うにはチャンネルに以上があるのかもしれない、でも見つからなかったとか言ってた。
私には何を言ってるのか理解できなくて、首を傾げるばかりだった。
ただ一つ、分かりたくなくても分かってしまったのは・・・

「助かる見込みはない」ということ。

このまま発作が続けば、私はいとも簡単に死んでしまうだろう。
・・・そしてその時、私の死を嘆いてくれる人は一人もいないのだろう。


お母さんは私を産んですぐに、マタニティブルーというもので、抑えきれなくて自殺してしまった。
それを見てお父さんは、一人で私を支えられるようにと仕事に精を入れた。

けれども、ただでさえ忙しい仕事に、子育ても加えて、日に日に疲れてしまった。
そして、最終的に私をお婆ちゃんに預け、仕事に集中する日々となってしまった。

物心が着いた頃からお婆ちゃんと一緒にいた私は、別段お父さんとお母さんがいないから寂しいなんて感情はなかった。
寧ろ、その感情を・・・私は知らなかったんだ。

そして、最後の頼みの綱であったお婆ちゃんは、私が中学に上ると同時に老衰で死んでしまった。


・・・一人ぼっちになった。
父は未だに仕事から顔を出さない。手紙と仕送りがある程度だ。

父は仕事でかなり頑張ってくれているのか、ここにいても父の名を時折ニュースで聞くことさえある。
毎月莫大な金が私の講座に振り込まれる。
だから私は何の不自由もなく生活していた。
・・・誰かから愛してもらえれば、もう誰よりも幸せな人生だったんだろう。

気が付けば真っ白い部屋の中で一人、私は外で咲いている黄色い花を眺めながら、泣いていた。

3:大工 ◆AUoo:2012/05/28(月) 23:08 ID:09I

´‘'*,:''(Ω^Ω)''*;,'*,';:',;*

夜見たら泣けた

4:うにゃ:2012/05/28(月) 23:56 ID:sQ.

>>3
そう言ってくれると嬉しいです、ありがとうw


「うっわ、まーた来てるよあのクズ。」
「何なの、いい加減にしてくれない?」

鞄を机におけば、あちらこちらから聞こえてくる罵詈雑言。
それももう、慣れてしまったから今更何も感じないけど。

・・・石葉高校。・・・一般より少し上のレベルの高校で、特に特徴的なものはない。至って普通の学校。
ただ、ちょっとレベルが高いだけで学費も、そこに通ってる人たちも一般的。

・・・だからこそ、イジメも同じこと。

机の上には油性で書かれ、掘られた悪口もある。
私はそれを冷めた目で見ながら、小さくため息をついた。

ここにいる誰もが、私の病気のことを知らない。

私をいじめている理由はただ一つ。

「私が誰ともつるまないから」だ。

一番最初に近づいてきたのは、いじめっ子A。・・・名前を覚える気すら起きない。
「あんた、いつも澄ました顔してうざいんだけど。アタシ達のグループに入れてあげるって言っても無視してくるし・・・何様のつもり!?」
・・・だ、そうだ。

それに対して
『この表情は生まれつき。・・・それと、誰かのご機嫌を取らなきゃいけない“グループ”等に入るのはお断り。』
そこから始まったイジメ。

・・・呆れてしまって、何も言うつもりはない。
先生だって、面倒くさいことは嫌だというふうに見てみぬフリするし。

・・・まぁ、もし私がいじめを目撃しても、見てみぬフリをするのかもしれないなぁ・・・。
人間ってわかんないし。

「おい、安城!安城 花蓮!!」
・・・ここに来て、ようやく私の名前が明かされるとは・・・。
「・・・何?」
「何?じゃねーよ。なんでまた学校に来てんだよ、てめーは!!」

すごい力で私の髪を引っ張られ、私は思わず床に叩きつけられる。
・・・危ない・・・あとちょっとで発作が起きるかもしれない・・・。

『・・・義務教育だから・・・?・・・あ、高校って義務教育じゃないんだっけ・・・。まぁいいや。』
「ッ・・・テメェのそのスカした性格が気に入らねぇっつってんだよ!!」

乾いた音が響いて、遅れてジンジンとした痛みが頬から伝わる。
おー、平手・・・とか考えているうちに、痛みでうっすら涙が出てくる。・・・不可抗力。

「うわ、泣いちゃってるよ・・・ダッサ。」
「キモー。マジうざいんだけどこいつ!」

女子が一軍となって黄色い笑いをあげる。・・・あれ、黄色いの使い方間違えてるかな。

私はとりあえず叩かれた頬を、汚れを叩くように軽く叩いてから立ち上がった。
『私がウザイならシカトすればいいのに・・・そっちのほうが無駄な力使わずに済むのに。・・・馬鹿なやつら。』

唖然となっている女子たちを置いて、私はそのまま鞄を引っ掴んで教室を出た。

5:ぱむゅ:2012/05/29(火) 16:18 ID:fkc

カッコいい!!!wwww

6:うにゃ:2012/05/31(木) 19:08 ID:sQ.

>>5
ありがとうございます^p^←
主人公はちょっとクールな感じですね。とりあえず人生投げ出しちゃってるので、今更いじめられても何も感じないそうです←


『ふぁ・・・』

屋上のフェンスに体を預け、空を眺めていると不意に眠気が襲ってくる。
昨日あんま寝てなかったしなぁ・・・。

ちょっと寝ようか、そんなことを考えていると唐突に屋上のドアが開いた。

・・・私が言うのもなんだけど、屋上は立ち入り禁止。普通の生徒ならまずここに入ることはない。
・・・なので誰かが入ってくるのは私にとってとても珍しいこと。

入ってきたのは・・・

『・・・不良?』

・・・いやいや、ダメだ花蓮。外見だけで不良って決めつけちゃダメ。実は心の中は純粋な青少年で―・・・とか、よくあるはな―

―ドガァッ!!!

「・・・クソッ、あのヤロォ・・・!俺じゃねぇっつってんのに一向に信じねぇし、能無しが・・・!!」

壁をへこむまで殴りつけながら、悪態をつくその少年はどうやっても不良だった。
・・・うーん、どうしたもんか・・・。

その人は私に気づく様子を見せず、ポケットから煙草を取り出しそれに火をつけた。
私はそれを、ただ何をするでもなくボーッと見つめる。

「・・・あぁ?誰だテメェ。」
『・・・あ、気づいた。』

ガン付けられても平然としている私を見て、不良くんは怪訝そうな顔をした。
・・・にしても、至近距離でみると綺麗な金髪だなー・・・染めてるんだよね、これ?
私も今度染めてみようかな・・・どうせなら、こういう綺麗な色がいいな。

「・・・誰だって聞いてんだよ。」『その髪って染めてるんだよね?』

ほぼ同時に言葉を発した私たちは、ほぼ同時に目を見開いた。

「・・・これは、地毛だ。」
『・・・地毛!?』
「・・・母さんがイギリス人で、父さんが日本人。俺はハーフ。」
『そうなんだ・・・いいなぁ。綺麗な色。』

私のその言葉を聞いて、不良くんは更に首をかしげた。

「・・・俺のことが怖くねぇのかよ?」
『なんで?』
「・・・いや、テメェくらいの女子だったら俺と目が合うとすぐに走り去ってくし・・・」
『あー、不良くん目つき悪いもんね。』
「・・・オブラートに包めよせめて。」

なんだ、なんとなく話しやすい感じじゃん。
でも、不良くん・・・アクセのつけすぎはよくないよ?

『でも私多分、不良くんのこと嫌いじゃないよ?・・・っていうか怖くないし。』
「・・・そう、か・・・。」

不良くんは小さく呟くと、恥ずかしそうに顔を逸らした
だけどすぐにまた私を睨んできて、口を開く。

「・・・不良くんはやめろ。・・・杉崎 大虎だ。」
『・・・すぎざき・・・たいが・・・。』

私はまるで機械のように、不良くんの名前を復唱した。
そして、微笑む。

『うん、覚えた。私は安城 花蓮。よろしくね。』
「あんじょぉ、かれんん?なんだ、その可愛らしいような名前は。」
『褒めてるの?貶してるの?』

ケッ、と吐き捨てた不良くんに私は思わず笑った。

・・・あ、そういえば・・・

笑ったのって久しぶりかも。

・・・そう思った自分に、もう一度微笑んでみせた。

7:ぱむゅ:2012/05/31(木) 19:19 ID:fkc

うにゃs>>なるほど(´ω`)
なんかちょっと可哀想な感じですね(´;ω;`)

8:うにゃ:2012/06/02(土) 00:54 ID:sQ.

私の小説なんかを読んでくださってありがとうございますー゚(゚´Д`゚)゚
まぁ、ふと頭に思い浮かんだ設定ですがね←
>ぱむゅ様

「・・・は!?あんた、いじめられてんの!?」
『そうみたいだよ?世間的には。』
「・・・その割には全然堪えてねーなおい・・・」
『これも一つの経験。これでまたやり残すかもしれないことがひとつ減った。』

うんうん、と一人で頷いていると、大虎君は呆気になりながら呟いた。

「・・・あんた、変人だな・・・」
『失礼な。変人っていう方が変人なんですぅー。』
「小学生かっつの!・・・イジメって普通、ものすごく苦しいもんだろ。何人もがそのせいで自殺してる。・・・なのにそれをお前はよく飄々と・・・」
『だってそうじゃない?』

私は空を仰ぐと、小さく笑った。

『確かに虐められてるって、いい気分じゃない。腸煮えくり返る思いって言ったほうがいいかな?でも、考えてみればそんなの、人生に一度しかない。そしてその人生は限られている。・・・それだったら、楽しんだほうがいいじゃん。わざわざ相手に言われたことをまに受けるなんて、冗談じゃない。』
「・・・ぶはっ・・・!そー考えるか!潔いなお前!やっべ、気に入ったかも!・・・そうやって開き直ることができねーで、何人も苦しんでるんだけどな。」
『当たり前。そうやって開き直るのはほぼ不可能なこと。・・・それ以上の苦しみを味わったものにしか不可能なんだよ?』

にん、と口端を上げると、大虎君は気まずそうに顔をそらした。
その瞳が、微かに悲しみを帯びていたのは・・・気のせい?

「・・・そーかい。その悲しみって例えば、どんなのだ?」
『・・・そうだな・・・親からの虐待・・・捨てられた子供たち・・・終わらない孤独・・・不治の病、とか・・・?』

人差し指を口元に当てて、考えるような仕草をする。
・・・これで気づくわけもないけど・・・。

「・・・お前は、その中のどれかとでも?」
『・・・わ。』

そこまで気づいたのは大虎君が初めて・・・だな。
でも・・・教える気はないんだ。

私はシー、と小さく呟くと、また笑った。

『まだ教えてあげない。・・・いつか、嫌でも知ることになるだろうけど。』
「・・・ふぅん。面白ェ。」

9:うにゃ:2012/06/04(月) 20:52 ID:sQ.

『・・・で?』
「・・・あ?」
『さっき、壁殴ってたでしょ。どうかしたの?』
「・・・あー・・・」

私が首をかしげると、大虎君は気まずそうに髪の毛を掻きながら言葉を濁す。
どうしたんだろう、と更に首を傾げると、渋々口を開いた。

「・・・俺、一応そう・・・不良とかとつるんでんだけどよ・・・」
『あー・・・だろうね。それっぽい感じ。』
「・・・外見だけで決めんなって・・・」
『ふふ、うんごめん。』

面白そうに笑いながら謝ると、けっと小さく吐き捨てながら大虎君は続けた。

「・・・んで、その中で今麻薬売買っつーのが流行ってるらしいんだ。・・・それにセンコーがいち早く気づきやがって、一番最初に俺を疑いやがったの。」
『うわー・・・何それ。で、結局どうなったの?』
「・・・俺の家までに乗り込んできやがって、隅から隅まで荒らしたあと、「どこに隠した」だとか問い詰めてきやがって・・・んで、「麻薬なんて興味ねーっつってんだろ。健康診断でもするかこのクソ野郎」って啖呵切ってやったらざまァ見ろ。何も言い返せやしねぇ。」
『あははっ、馬鹿じゃん?結局見つかったの?犯人・・・』
「見つかるわけねーだろ?・・・だって麻薬やってんの、俺らの頭だし。」

その時の私の表情を見て、大虎君は軽く笑った。

「・・・やんねーよ、麻薬なんざ。ドロドロになる肺だとか脳だとか、見たくもねぇし俺は長生きしてぇんだ。」
『・・・そう・・・。』

私がふふっ、と小さく笑い声を漏らすと、大虎君は怪訝そうに私を見た。

『・・・そうだね。長生きしたいよね。』

そうやって静かに笑った私を、大虎君は彼此10秒くらい見つめていた。

「・・・お前・・・」
『ねぇ、大虎君・・・不良って言うんだから、たまり場とかあるの?』
「え?・・・あ、あぁ・・・んと、ここからすぐ近くにある廃ビルだ。」
『・・・私をそこに連れてって!』


「・・・はぁ!?」

10:うにゃ ◆4AUw:2012/06/19(火) 18:23 ID:sQ.

寂れた廃ビル。
何これ王道、とツッコみたくなるほど、壁には落書きが殴りかかれていた。
どうでもいいけど、夜露死苦は死語。絶対死語。

大虎君の後ろを追うように歩いていれば、案の定私を珍しげに見てくる人たち。
あん?だとか、なんだあのアマ、だとかガンつけてくる声が絶えない。
女だと馬鹿にしてっと承知しねーぞクソガキ、とかガンつけ返したいけど、残念ながら私は喧嘩はまったくもって出来ないので。

「・・・お前、本気かよ。」

何が、と聞き返す前に頭の中で返事が構成されていた。
本気じゃなかったら言わないよ、と返した私に、大虎君は眉を潜める。

「いいか。俺らの頭はただもんじゃねぇ。死にたくなかったら下手に口を開くんじゃねぇぞ。」

何度目かの言葉に、私は黙って頷いた。
死への恐怖の一線なら、もうすでに飛び越えたけども。

まぁ、とりあえず簡単に説明するけど、私たちは今、大虎君の所属してる不良チームのたまり場にいて、今から頭に会いにいくーみたいな感じ。
大虎君の話からすると、ここに足を踏み入れるにはどうやら頭の許可が必要みたい。
・・・頭、かぁ・・・なんかかっこいいよね。ドンは流石に無理だけど。

「おいおい、大虎ァ・・・彼女かぁ?」

いきなりかけられたその声を筆頭に、次々と野次が飛ぶ。
口笛を吹くものと、マジかよあの大虎が・・・とか騒ぎ立てるものと・・・
とりあえず、大虎君が硬派だったってことは初耳。

そして、顔を真っ赤にしながら否定する大虎君は可愛いと思います。
・・・これ、言ったら怒られるだろうな。

ふと、奥のほうをみると、たくさんの人を従えながら歩み寄ってくる人影が目に入った。

『・・・大虎君。』

くい、と大虎君の服を引っ張ってみれば、大虎君は乱暴に振り向いた。
そして、固まる。

「よう、大虎ぁ・・・相変わらずそうだな。」

大虎君の雰囲気ですぐに分かった。
・・・あの人、頭だ。

11:うにゃ ◆4AUw:2012/06/20(水) 15:47 ID:sQ.

たくさんの人を引き連れながら歩いてくるその人の容姿に、私は少し驚いた。
黒髪を首あたりまで伸ばし、少しハネさせ、それに真っ黒な瞳。
目つきが悪くなければ、あとそんなに人を引き連れてなければ、不良だとは到底思えない。

「久しぶりに面出したな・・・謹慎解けたのか?」

謹慎?
大虎君って謹慎食らってたの?
首を傾けながら、私は大虎君を見た。
本人はなんとなく気まずそう。
ひょっとして、例の薬騒動の件で食らっちゃったのかな・・・?ご愁傷様南無南無チーン。

「で?そいつはお前のコレか?」

小指を出しながらケラケラと豪快に笑う頭さんを私は静かに見据える。
・・・小指って結構これ古いんじゃないかなぁ・・・だとか、大虎君が慌てて否定しているのを耳にしながら考えた。
っていうか大虎君・・・確かに私は君の彼女じゃないけど、そんなに必死に否定しなくてもいいんじゃない?
私傷ついたよ。

大虎君が何故私がここにいるかを説明している間、私は辺りを観察してみる。
壁とかはもうノーコメントだとして・・・今更リーゼントが流行るって思ってたら大間違いだよお兄さんたち。
ところでこの人たち一体いくつなんだろう。
これで私と同年齢って言われたら詐欺だよ絶対。もう三十路超えてそうだもん。
老けすぎだよこの人たち。

「・・・おい・・・おい、安城!」

いきなり呼ばれて我に返る。
っていうか安城って・・・花蓮でいいのに。・・・あ、男の子が呼ぶにはちょっと恥ずかしい名前?
きょとん、としながら大虎君をみると、前を見るように目配せされた。
ついでに、確かに俺は俺は下手に口を開くんじゃねぇっつったけど返事くらいしやがれみたいな感じで睨まれる。
それを解読できる私はかなりすごいと思うよえっへん。

『なんでしょうか?』

頭さんは私をジロジロと舐め回すように見てから、口を開いた。

「ふーん・・・まぁそこそこ可愛いんじゃねぇの。んで、お前なんでここに来たんだ?」

そこそこって言ったなこんにゃろう。
確かに自分は可愛い部類には入らないだろうけどさ・・・他人に言われると腹立たない?

『・・・何故でしょう?』

まったく考えずに答えたら、目の前で笑われた。しかも盛大に。

お前、俺が怖くねぇの?みたいなこと聞かれたから、別に全然って答えたらさらに笑われた。
うーん、よく笑うなこの人。

「気に入ったお前!俺に気に入られる奴って珍しいんだぜ?そこにいる大虎もそうだけどな・・・いや、それはおいといて・・・」

うわぉっ、マシンガントーク?
いや、それほどでもないね。

「お前に、ここの立ち入り許可をくれてやる。」

何かもらっちゃった。

12:桜:2012/06/20(水) 19:30 ID:Y7o

初めまして桜です
続き待ってます

13:うにゃ ◆4AUw:2012/06/21(木) 14:30 ID:sQ.

有難うございます〜!
読んでくださってる方がいたとは・・・頑張ります!><
>>12


あれから数日経った。
未だに私は・・・・・・例の廃ビルに入り浸っている。
皆は頭さん怖いとか言ってるけど、話してみれば結構気さくな人で、何が怖いのかさっぱり理解できない。
そしていつの間にか、喧嘩がまっさらできない私は、何故かチームの一員になっていた。
皆いい人で、私にいろいろ話しかけてくれる。
・・・でもこの人たち、薬やってるんだっけ・・・?そうには見えないのになぁ。

まるで私のその考えを汲み取ったかのように、それは突然と訪れた。

「花蓮ちゃんも、やる?」

目の前に出された小さな袋。中にはもうすでに砕かれたのであろう、細かい粉が入っていた。
袋は典型的な、麻薬が入ったようなものだ。
すげーキくぜこれ、と言いながら、うちの一人はすぐにスニッフィングを始めた。
始めてものの数分、その男は目で見てわかるほどにハイになっていく。

・・・コカイン。

コカという植物の葉から作られたドラッグで、作用が強烈だが、短時間しか作用しない。
その上、依存症を誇っているので、一日で何回も摂取する人もいるそうだ。
ただし、幻覚等の精神障害が現れたり、虫が皮膚内を動き回っているような不快な感覚に襲われて、実在しないその虫を殺そうと自らの皮膚を針で刺したりすることもあるらしい。
作用の方では、覚醒剤の様に神経を興奮させる作用があるため、気分が高揚し、眠気や疲労感がなくなったり、体が軽く感じられ、腕力、知力がついたという錯覚が起こるという。

昔、入院ばっかりを繰り返していた頃、医学書で得た知識だ。
脳内出血、脳卒中、動脈狭窄、動脈破裂、呼吸困難、肺の充血、心不全、胸痛、心臓発作、狭心症、その他色んな症状が起こると書かれていた。

それをまさかこんなところで見るとは・・・

『・・・皆は、死にたいの?』

静かに言葉を紡ぎ出すと、ハイになっていた男は皆一斉にこちらを振り向く。
中には、何言ってんだこいつ?みたいな顔をしている人もいる。

『ドラッグがどれだけ人体に有害か、わかってるよね?わからないとは言わせないけど。そんなに死にたいなら、頭さんにでも殺してもらえばいいじゃん。』
「あぁ!?テメェ、ナメてんのか!?」

普段はいつも笑ってる彼は、三谷 遊助(みた ゆうすけ)。
あんなに笑っていた彼が、今は私の襟首を掴んでいる。

『今すぐやめないと、私はこれを警察に告訴する。』

今の今まで私が何か面白い事を言ってる、みたいに笑っていたやつらも、ようやく私が本気だと気づいたらしい。

『・・・お願い。自分を苦しめることは、やめてほしい。』

14:桜:2012/06/21(木) 19:06 ID:Y7o

おもしろいです!
あと、返事書いてなくてもちゃんと小説見てますから
続き書いててください。

15:うにゃ ◆4AUw:2012/06/23(土) 19:11 ID:BvY

おおおぉ、面白いだなんて・・・!!!お世辞が神級ですね、泣きそうです゚(゚´Д`゚)゚
有難うございます!頑張らせていただきます。
>>14


あたりが水を打ったように静かになる。
しん・・・という静まり返ったその空間で、一番最初に沈黙を破ったのは遊助君だった。
顔を歪めながら私の元へ大股で近づき、そして乱暴に私の襟首を掴む。

「・・・ナメてんじゃねーぞ・・・!女だからって容赦しねぇからな!!」

普段だったら絶対、彼はこんなことはしない。・・・十中八九これも薬のせいだろう。
遊助君が自らの顔のすぐ横で拳を握ったのを見て、ようやく自分は窮地に陥ってるのだと気づく。

あれで殴られたら絶対痛い。それもかなり。
血が出ることも免れないだろう。
・・・困ったな・・・痛いの苦手なんだよ・・・。
て、いうか・・・首・・・しまってる・・・

いきなり、勢い良くその部屋の扉が開け放たれた。
私を探していたであろう大虎君は、私の名前を大声で呼んでから固まった。
そしてすぐに我に返り、私の方へ駆け寄った。

「何考えてやがる!!」

不意に感じた浮遊感に、気づけば私はそのまま地面に落とされていた。
いきなりなだれ込んできた酸素に、1、2回咳き込んでから私は喉を抑え、見上げた。

アニメや漫画だったらギリ・・・なんて効果音がよく似合いそうなほど、大虎君は遊助君の手首を掴んでいた。
だけどその数秒後、きっと遊助君が振り払ったのであろう、大虎君のその右手は私の肩にあった。

大虎君が口を開く前に、私は既に何を聞かれるか分かっていたので、彼らが持っている白い袋を指さした。
それを見た大虎君の顔に、納得が浮かぶのを私は静かに見つめた。
そのまま、ゆっくりと立ち上がれば―・・・

『ッ・・・!』

目の前が真っ白になって、危うく意識を飛ばすところだった。
私はすぐに地面に膝を付き、目を閉じてじっとする。
ぶつけた膝がものすごく痛かったけど、そんなことを気にしてる暇じゃない。

・・・発作だ。

きっとさっきのせいで脈が乱れてしまったんだ。

大虎君が私の名前を心配そうに呼ぶけど、私は目を閉じたままじっとする。
下手に動くと、悪化する可能性が高い。

・・・動機がひどい。
少しずつ、吐き気がこみ上げてくる気さえした。

『・・・大虎君・・・私の鞄の中から、黒いポーチを取り出して。』

私の声に従う大虎君を聴覚だけで感じ取りながら、私は必死で発作を抑えようとした。
手渡された黒いポーチの手馴れた感触に、私は少しだけ安心を取り戻す。
ポーチを開けて中から錠剤を取り出し、水も必要とせず飲み下した。

「・・・お前・・・」

唖然となる彼の声に、私は安心させるような笑みを浮かべた。

『ごめん、実はちょっと熱気味でさー・・・今くらっと来ただけ。気にしないで?』

そう言って、私は笑ッタ。

16:桜:2012/06/23(土) 19:26 ID:Y7o

お世辞じゃないですよ!
ほんとにおもしろいですよ。
続き待ってます。

17:うにゃ ◆4AUw:2012/06/27(水) 18:19 ID:BvY

あらヤダ泣きそう(殴
有難うございます〜!
>>16


「おいおい、何の騒ぎだ?」

その声が部屋に響いた途端、ざわついていたのが一気に静まり返る。
それのおかげで、注意して聞かなくても誰だかわかってしまった。

私が彼を呼ぶと、彼は苦笑した。

「ヘッドさんって呼ぶんじゃねーっつったろ?名前でいーって。」

そういえば今更だけど、この人の名前ってまだ紹介してなかったよね。
今までずっと頭さんって呼んでたし。
この人は、三条 凌駕。りょうがって読むからりょうちゃんって呼んでいい?って聞いたらものすごく嫌そうな顔をされた。

とりあえず凌駕、と呼ぶと嬉しそうに顔を綻ばせる。
それと同時に、あたりが再びざわついた。
なんか、三条さんをただでさえ名前呼びのくせして、まさかの呼び捨て…!?とか聞こえる。
だってそう呼べって言われたんだもん、しょうがないよ。

とにかく…このことは言わない方がいいな。
凌駕って確かドラッグやってるって、大虎君が言ってたもん。あ、ほら、大虎君の額に汗が。

…とか言ってたら、遊助君が既に告げ口してんじゃないの!
あいつ後で覚悟しろヨ。

「へぇ…?花蓮、お前は反ドラッグか?…っく、どこまでも大虎に似やがって…!」

くっく、と肩を震わせて笑う凌駕を見ながら、私はふと大虎君のことについて考えた。
こんな世界で生きて、よく大虎君はドラッグから逃げてきたなー…。
そんなことを考えながら大虎君の方を見ると、目があった。

…あ、心配そうな目。

うーん、ひょっとして私、死亡フラグ立ってたり…する?

「おい花蓮。」
『はい?』

クセで平然と答えると、凌駕は静かに私を見た。
…その瞳が

冷たくて。

18:桜:2012/06/27(水) 19:10 ID:Y7o

本当にお世辞じゃないですから!
ほんとのホントにおもしろいですから!
続き待ってます

19:ここな:2012/06/27(水) 20:46 ID:dD.

うぉー、小説板ウロチョロしてたらうにゃさんハケーン。
く…ッ…なぜ私が会話したことある人は皆こんな神小説を書くんだ…ッ
文才うらやましいお(´・ω・)

20:うにゃ ◆4AUw:2012/06/28(木) 00:04 ID:BvY

>>18
有難うございます〜!
やばい嬉しすぎて涙でそうだ・・・><

>>19
バリハケーン(違
何・・・ここなサンの小説のタイトルを教えよ。全力で見に行k((

21:うにゃ ◆4AUw:2012/06/28(木) 16:40 ID:BvY

「俺ぁ三条財閥の一人息子だ。何もしなくても将来は保証されている。俺が何を言いたいかわかるか?」

三条財閥…よくニュースに出ていた、あの財閥だ。
もしかして…と思っていたけど、やっぱりそれの息子だったんだ。

私は静かに目の前に立っているその男を見つめた。

黒髪に黒い瞳。
その漆黒さに思わず息をのんでしまうほど。油断をすれば引き込まれそうなほど。
そんな黒を携える彼は、今私の目の前に立っている。
口端を吊り上げ、凍るような冷たい笑みを浮かべながら。

言いたいこと…絶対とは言えないけど、おそらくなら予想がつく。

「…つまんねぇんだよ、こんな世界はよぉ…わかるか?刺激が欲しいんだ。」

それで行き着いた先が、ドラッグ?…有り得ない。
その刺激が自分を死に至らせるものでも構わないっていうの、この男は…?

「文句ありげな顔だなぁ…?」
『ドラッグがあなたに何を仕出かすか、わかってるんでしょ!?死んでまで刺激が欲しいの!?』

私の叫びに、ただその男は笑う。

「刺激なんて、それくれぇのリスクが伴ってねーとつまんねぇだろ?」

22:桜:2012/06/28(木) 19:25 ID:Y7o

本当にこういう人がいたら
自分の未来は自分で決めろ!
って言ってやりたいですね・・・

23:ここな:2012/06/28(木) 19:39 ID:dD.

うはははは、残念ながら教えられないな。教えて恥を書くのは一方的に私だからだ!!(((

それとネーミングセンスありすぎっしょw タイトル見ただけでもグッときますよw
>うにゃさん

24:うにゃ ◆4AUw:2012/06/29(金) 00:01 ID:BvY

>>22
ですねー・・・こないだちょうど保険の授業でドラッグについてのビデオを見たんで・・・
情報源はそこからですw

>>23
教えろォオオオオ!!!!!(怖

ねぇよwwテキトーに考えてるだけだっつのww タイトル?あぁ、あれ、大して深い意味のない・・・(タヒ

25:ここな:2012/06/29(金) 20:53 ID:dD.

君はまd(言うんじゃねええぇ
あ、危ない…←←

あるあるwウォシュレット初めて使って服ビショ濡れになる事くらいあるww
い、意味がないだとぉおッ! 意味深ダナァ…って思った私の時間かえせええええ
>うにゃさん

26:アメ ◆kvG6:2012/06/29(金) 21:12 ID:twA

本当に文才あって羨ましいわぁ…
私なんてタイトル主人公の名前だy((ry

27:うにゃ ◆4AUw:2012/06/30(土) 01:09 ID:BvY

>>25
あぁ、分かった。あれか。よし、読んでくるわ(キラッ(

それって全然ねぇよwww
ごwwめwwんwww不覚にも大爆笑してしまった俺の時間は?www

>>26
ねwぇwよw
タイトルが主人公の名前って・・・シンプルでいいじゃない。シンプル・イス・ザ・ベスト!!(黙

28:アメ ◆kvG6:2012/06/30(土) 15:42 ID:twA

あるでしょう!!w
あなたの文才を奪いたいくらいですよ((真顔←
私の小説人気がなくて…orz
ちなみに英語表記だから書いてる本人がタイトル書けなi((ry
そして30分くらい考えた末のタイトル名←何も浮かばなかったwww
>>27

29:うにゃ ◆4AUw:2012/06/30(土) 18:40 ID:BvY

奪ってけwwそして後悔しろwwwふははは(黙
マジかよタイトル言えよ毎時間書き込んでやらぁ(←暇人
って、おま・・・何故英語表記にしたしww
いいじゃねーかw別にwww
>>28


―…狂ってる。

私は静かにそう呟いた。
握りしめた拳が痛い。
さすがにアニメみたいに血が流れたりはしないけど、きっと爪痕がくっきり残ってるんだと思う。

大虎君が私の肩を優しく叩いて、やめろと呟いた。

…悔しい。

悔しいよ。

私は死にたくない。
でも死ななきゃいけない。

それなのにこの人は?
人生がつまらないからって自らを死へ脅かし、そしてその死をリスクだと言っている。

…悔しいよ…!

どうして?
どうしてこの人は私の代わりに死んでくれないの?
どうしてこの人じゃなくて私が死ななきゃいかないの?

どうして…!!

視界が歪んだ。
俯きながら、私は唇を噛む。
溢れてきた雫は止まることを知らず、頬を伝って流れ落ちていく。

泣くな。
…泣くなってば。
どうせ私の苦しみを理解してくれる人なんて、いない…。
泣いたって、意味がない。

…わかってる、それくらい。
…なのに何で、止まらないんだろう…?

いきなり力強く腕を引っ張られたかと思えば、感じた少しの圧迫感と温もり。
引っ張られた腕が、少し遅れてじんじん、とした痛みを伴い始める。

「…泣くな。」

私は大虎君に抱きしめられていた。

『…へ…?』
「…何で泣いてんのかしらねェけど…お前が泣くとなんか嫌なんだよ。…いーから泣くな!」

言い方は乱暴だけど…これは慰めようとしてる、よね…?

いきなり周りが野次を飛ばし始めた。
口笛を吹くものや、囃し立てるもの…他にもあるけど、なぜか全然気にならなくて。

顔が火照っていくのだけが、鮮明に感じられて。

30:アメ ◆kvG6:2012/06/30(土) 19:27 ID:twA

後悔なんて誰がするものですかっ!!((ド-ン
+Lly…アーソウダッタワタシスペルカケナi((ry←ここなさんのマネするなし
毎時間ってwww小説書けなくなるwww
何故英語表記にしたかって…?そんなの決まっている。カッコイイからだ!!((ド---ン←
だってみんなひねってるのに私は名前がタイトルって…!!orz
>>29

31:うにゃ ◆4AUw:2012/06/30(土) 23:09 ID:BvY

あなたが(ぁ
おぉ、よしサーチしてみよっとry
そして3週間くらいもすればすでに1000達成じゃゴルァ(ym
くそっ…わかるから何も言えない…!(ぇ
別によくねー?つか俺捻ってないってばwww
>>30

32:アメ@あかん雑談モードに…; ◆kvG6:2012/07/01(日) 00:08 ID:twA

いいえ奪われたあなたが後悔するのよっ!((オイ
そう簡単にサーチできるほど甘くはない!←
やめてぇえええwwww
英語苦手だけどカッコイイから使う。それが私だっ!←
あー…うー…そういえばそうだったね…
>>31

33:うにゃ ◆4AUw:2012/07/01(日) 18:46 ID:BvY

うむ、モード傾向が非常に良くないのでとりあえず小説を書くとしよう(tm

いいえ、寧ろ私は喜ぶのよ!!(ぇぁ
いや、見つけたwwwwっうぇwwっうぇ(殴
やってやらぁああああ(ry
英語得意だけど使わない、それが俺ry
前の唸りは何www
>>32


『あ、の…た、大虎…君…?』

抱きしめられて窮屈を感じながら、私は必死に喋る。
なんか呂律がうまく回らなくて、顔が熱くて、ひょっとしてアルコールを飲んでしまったのではという錯覚にまで陥ってしまった。
両手は行き場を失ったがために、大虎君の制服の袖を握りしめていた。

わからないけど周りの野次が遠くに感じられて、とりあえず鮮明に感じられるのは顔の熱さと大虎君の温もりだけ。
恥ずかしいけどなぜか嬉しくて、何かわかんなくてこんがらがって。
また発作が起きそうな気さえしてきて、でも起きなくて…

「ッ―…わ、悪ぃ!!」

いち早く現実に戻ったのか、大虎君は慌てて私を離す。
その顔はきっと私と比べ物にならないほど真っ赤で。
それにつられて私の顔もさらに赤くなった気がして。

『ふぇ、えと、あぇ、えっとぉ、い、今何も起こらなかったよね!?うん、絶対何も起こらなかった!!』
「あ、あぁ何も起こってねェな!!何にも起こってねぇ!!」

二人してあははは、と盛大に笑い出す。
うーん、どうやら二人して頭のネジが外れたっぽい。
とりあえず、この場を一言で表すなら、混乱。または、カオス。

頭の中ではそんな冷静に分担できてるのに、なぜか表面上は慌てすぎてもうどうにもならない。
お願いだから落ち着いてくれ自分。




短いけど出かけにゃならんのでここでカットしまふ。ごめぬ。

34:アメ:2012/07/01(日) 19:25 ID:twA

交流板に小説板の住民のためのスレあるんでもしよかったらそこで雑談しましょu((ry
Σ何故!?
み、見つかってしまったか…あまりの駄文さに驚いくがいいwww
やめぇえええwww
ちょww得意なら使おうよww
なんでもないのさd(・ω・)
>>33

35:うにゃ ◆4AUw:2012/07/02(月) 19:24 ID:BvY

うん、見つけたよ(☆∀☆)(殴
何故かwwやったね、さすが俺ry
よーし、許可がおりたので早速読ませてもらうとするk(ぁ
ふはははははは、俺の暇人さに驚くがよい!!!(タヒれ
だぁーってぇー・・・(´・ω・`)←
何でもねーのかy
>>34


「へぇ、ついに俺らのチームからカップル誕生かぁ…?」

その人の声のおかげで、私は自分の思考を中断せざるを得なくなった。
感謝と言いたいような、黙っててくれればよかったのにと言いたいような、そんな複雑な心境の中、私はただその人を見つめた。
今ほど誰かの心の中が読めたらいいのに、と思ったことはない。

昔っからよく病院のお世話になっていた。
その時、必ずといっていいほど話せない障害を持つ小さな子供たちを見かけた。
年齢も近かったし、他に私と一緒にいてくれる人もいなかったから、私はいつもその子供たちと一緒に遊んでくれた。
言葉は話せずとも、その子達の動作、表情一つ一つが暖かくて。
そういう時って必ず「目は口ほどにものを言う」という諺を思い出した。
そしてその度に、その通りだなぁ…って実感した。

「ありがとう」だったり「ゴメンね」だったり「お願い」だったり「遊んで」だったり「寂しい」だったり「痛い」だったり。
様々な感情を喋れる人たちよりも豊かに表現できる彼女たちがすごいなぁと思っていた。
次第にその子達の表情を読み取ることも上手くなった。

何よりもすごいと思ったのが、そんな障害を持っていながらも彼女たちは強くて。
いつも笑っていたり、はしゃいでいたり…
彼女らの瞳が悲しみを帯びたことは一度たりとも、なかった。
彼女らは自分が障害に犯されながらも、いつも私の心配をしてくれた。

そんな彼女らの瞳と、凌駕の瞳は笑えるほど違った。

読み取れない。感情が。
そんなことは私にとっては有り得ないものだった。
別に超能力でもないし、絶対に確実に読み取れるわけでもないけど…
それでも、自慢の一つだった。
私はその人の目を見れば、大体その人が今どう思っているのか、何を感じているのかが分かった。
それは喜びだったり悲しみだったり怒りだったり…様々な感情で。

でも読み取れない。

凌駕の感情が。

凌駕の瞳は、吸い込まれそうなほど黒くて、透き通っている色。
…透き通っている、濁った黒…。

濁りはすべてを飲み込んでしまう。
だから読み取れない。

なら、その濁りの根源はなんだろう?
…凌駕は

何を、隠している?

『…悲しみ…?』

私の声だけが、静まり返ったその部屋に響いた。

36:うにゃ ◆4AUw:2012/07/12(木) 21:05 ID:ZBk

その目が面白いほど見開かれて、私は少し戸惑う。
ちら、と大虎君の方を見てすぐにまた凌駕の方へ戻せば、あれいつも通りの表情だ。
だったらさっきのはなんだったんだろう…?

目を見開いた彼の表情は、言うまでもなく驚きに満ちていた。
…でも、なぜか…なぜだか、ほんの小さな安心感が読み取れて。

「…何意味わかんないこと言ってるんだよ?」

面白そうに、だけど苦笑交じりにそう言った凌駕。
そんな凌駕を私は静かに見据える。
何も言わない。口で言っても多分誤魔化されるだけだ。

ただ、静かに…

そんな私の視線に気づいたのか、戸惑うように視線を彷徨わせた。

凌駕は私の今言った一言が何についてなのかを理解している。
理解したうえで、気づかないふりをしようとしている。
そんなことがわからないほど、私だって馬鹿じゃない。

「…んでだよ…意味わかんねェッ!!」

乱暴に吐き捨てて、凌駕はそのまま部屋を出て行った。
バタンッ、と力任せに開けられ、閉じられた扉のすぐ近くの壁が小さく悲鳴を上げた。

それでも私はただ静かに、彼が去った場所を見つめた。
…私は今何を考えているんだろう。

…憐みじゃない。
…悲しみじゃない。
…怒りじゃない。
ましてや、喜びでもない。


…嗚呼、悔しいんだ。


凌駕の気持ちに、あんなに近くにいたのに気付いてやれなかったことが
自分が

…悔しいんだ。

『…大虎君。』

話しかければ、その人は遠慮がちに私の方を見る。
そして先を促してきた。
私は困ったように笑ってから、続ける。

『…凌駕に何があったか、知ってる…?』

37:うにゃ ◆4AUw:2012/07/20(金) 19:55 ID:If.

…産まれてきたその瞬間から、三条 凌駕は孤独だった。

父は仕事に没頭し金を得ることしか考えず
母は遊びぼうけており、男の数は二桁を超えた

自分が本当に二人の子供なのかさえ分からずに、
ただ使用人たちに囲まれ、山奥の屋敷に引きこもっていた。


テレビで見る家族は暖かいもので
話に聞く人生とは楽しそうなもので

…凌駕は首を傾げる。


―何で俺は一人なの?


問いかけた使用人は言葉を濁し、慌ててその場を去って行った。

二ヶ月ぶりに帰ってきた父に尋ねてみる。

『お父さん、俺の誕生日…』

言葉は途中で止まる。
見上げた、当時8歳の凌駕の目に映ったのは

…まるで汚らしいものを見るような、実の父の表情(かお)。


―…俺は生まれてきてはいけなかったの?


生まれたその疑問に、答えを与えてくれるものはやはりいなかった。



それからは、凌駕は頻繁に外の世界へ出るようになった。
家に帰らないのも、それは一日や二日じゃない。
ただ、一週間以内には必ず戻ってくるので、使用人もそこまでことを荒げずにいた。

…凌駕が外で罪もない子供を殴ったという話を聞くまでは。


凌駕はもとより屋敷の中で引きこもり、年齢以上に必要な知識を蓄えていた。
マナーも戦術も、また然り。
今の凌駕なれば、大人を一人、軽々と倒せるほどだった。


だがこれを聞いた彼の父は

「…仕事が溜まっている。」

そういって、踵を返した。

38:うにゃ ◆4AUw:2012/07/21(土) 13:46 ID:LRU

彼専属の執事が彼に下した罰とは
一週間の自宅謹慎。

その中で、当時10歳の凌駕は―…


―陶器が割れる音が屋敷中に響き渡る。
…それと同時に、悲鳴が聞こえた。

『何事だ!?』

数人が音が聞こえた部屋へ駆けつければ、見えたのは惨状。
皿という皿は全て床に叩きつけられ、その上に載っていた料理は床の上の芥と化していた。

『ぼ、坊ちゃん!』

ひきつった表情で悲痛の声を上げるメイドに、凌駕は己が父とよく似た瞳で言い放った。

『…んなもんいらねーっつってんだろ。俺の前からとっとと失せろ。』

それだけ言い放つと、凌駕はそのまま自室へ引きこもった。
そのままその部屋の扉から出ることはなかった。

窓から抜け出し、そのまま屋敷を飛び出したのだ。
最初にそれを発見したのは、夕飯を運んできたメイドだった。

勿論、屋敷中の使用人という使用人がそれに頭を悩ませたが
…悪夢はそこで終わりはしなかった。


…屋敷の電話が鳴り響く。

それは、

そこにいる人々誰もを

いとも容易く地獄へ

突き落したのだった―…



《もしもし、こちら警察ですが…三条宅でよろしかったですか?

…お宅の息子さんが、万引きで補導されました》

39:うにゃ ◆4AUw:2012/07/22(日) 19:29 ID:LRU

『お前のせいで、俺の評判が悪くなっただろうが!!』


それが、三条財閥現当主、三条 高雅が最初に万引きを犯した彼の息子に放った言葉だった。
殴られた頬の痛みよりも、何よりも彼が言ったことが信じられなくて。

何かが欲しかったわけじゃない。
ましてや金が足りなかったわけでもない。


…凌駕が犯罪を犯した理由はただ一つ…


愛してほしかったのだ。

高雅に
父親に
両親に

「俺はここにいるよ」と
「愛してほしいよ」と


万引きの理由を尋ねた警察官も
「あの三条財閥の息子さんだ」と言って深い理由はないと勝手に決めつけてしまい
半年間のカウンセラーと、その後複数の様子見のみで、凌駕は解放された。

解放されてすぐ、高雅は仕事が溜まっているからと仕事でどこかへ行ってしまい、
凌駕は迎えの連絡をすべて断って一人歩いた。

自分がどこにいるかもわからず一人彷徨っているうちに、明らかに危ないと一目でわかる場所へ辿りついてしまった。

周りは見るも無残で、それも老化だからじゃない。
棒か何かでどこそこ構わず殴られてそうなってしまったのだ。
それだけでは終わらず、あちらこちらに、口にすれば絶対に怒られるであろう暴言が書かれていた。

その中で、凌駕が人影を見つける。

『…おい坊主…来るとこ間違ってんぜぇ?』

そう、卑下た笑いで話しかけてくる男を凌駕は、

ものの数分で地に伏させた。



…それが、三条 凌駕の不良生活の
                  始まりだった。

40:うにゃ ◆4AUw:2012/07/23(月) 13:07 ID:LRU

愛してほしい、
気づいてほしい、

―…苦しい。


涙が溢れてくるのが自分でもわかった。
大虎君が凌駕の過去を話すうち、何故か彼の過去と自分の過去を重ね合わせてしまった。

違う。
彼の方が辛かった。
私にはお婆ちゃんがいて、いつも傍で笑ってくれた。
私には少なくとも甘えられる人が、頼れる人がいた。


…だけど、凌駕にはいなかったんだ。


誰も、いない…

『そんなの、……悲しすぎるよ…ッ…!』


私はきっと甘えてた。
私が一番不幸な人なんだと。
私が世界で一番不幸な人なんだと。

…だけど違ったね。

…私なんかより辛い人が、世界に何人いることだろう。



『…大虎君…』
「…ん…?」

優しい、優しすぎるその人に私は泣きながら微笑んだ。
そうすれば、その人も弱々しく微笑み返してくれる。
…知ってるから。この人の優しさを。


『…行ってくる。』


「…あぁ。」


私はそのまま、扉の方へ駆けだした。

41:うにゃ ◆4AUw:2012/08/02(木) 13:34 ID:pio

追いかけた。

だってきっと傷つけた。


追いかけた。

だってきっと怒らせた。


追いかけた。

だって謝らなきゃいけなかった。


追いかけた。

だって私が悪いんだ。



追いかけた。

だって君は泣いていた。




音を立てて扉をあけ放ち、そのまま一直線に廃ビルの長い廊下を走った。
運動は苦手なはずなのに不思議と息は上がらなくて、苦しくなくて…
何でだろう?って考える暇もなくて。

だけど無闇に走っても意味がないってことに今更気づいて、足に力を入れて急ブレーキ。
そのままいつも静かな私の様子に呆気になっている周りのグループの人に話しかけた。

『ねぇッ、今凌駕どこに向かったかわかる!?』

凌駕を見なかった?とは聞かない。
見てないとか聞いたらへこむから。

「…あ、えっと…屋上ッス…!でも、行かない方」

言葉は途中で途切れる。
寧ろ後半の言葉は耳からシャットアウトされていた。

そのまま屋上へ続く階段を上りきる。
上りきった頃にはさすがに息も切れていたけど。足も痺れのようなものを感じていたけど。
それでもあとちょっとだって思えば、私の足は止まることはなかった。

屋上の扉のドアノブを握る。
ひんやりとした感触を感じながら、ゆっくりとそれを回す…


『…凌駕。』


名前を呼べば振り返る。

馴染みだした君のその黒い瞳を見て、私は眉根を寄せた。




…ほら、やっぱり君は泣いていた。

42:うにゃ ◆4AUw:2012/08/07(火) 15:39 ID:BPg

「…んでテメェがここにいんだよ…!」

屋上のフェンスから地面を見下ろしていたんだろう凌駕は、私の方を振り向くとすぐにまたフェンスの方へ顔をそむけてしまった。
背中越しでも、凌駕の表情を見透かせるような気がして。

『…凌駕…泣かせちゃったなぁって思って。』

小さく笑みを浮かべて言えば、再び此方に顔を向ける凌駕。
その顔には嘲笑のようなものが見えた。

…確かに、泣いてない。
その双眼には、涙らしきものなんて見えない。

…それでも。

私はローファーの音をたてながら、ゆっくりと凌駕に近づく。
風に髪の毛が靡いて、私の頬を擽る。
右手でその髪をどけ、耳にかければそれはもう私の妨害をすることはなくなった。

「ッ…来んじゃねーよ!!」

ピタ、と効果音が付きそうなほど私の体の動きは急に止まる。
踏み出そうとしていた左足は、ゆっくりと右足の隣に並んだ。

『…どうして?』
「…意味わかんねェんだよ、テメェは…!どうせ俺の過去を聞いたんだろ、大虎からよぉ!!憐みなんていらねェ、とっとと俺の前から消えろ!二度と現れるな!!」

悲しみを帯びていると思ったその双眼は、今は怒りに満ちていた。
そしてそれは私を睨んでいる。
恐怖に体が竦むような感覚を覚える。

…だけど…

『…やっぱり、泣いてる。』

私の言葉に、彼は大きく目を見開いた。
その隙に、私はそのまま彼に近づいた。

人差し指を立て、その指で凌駕の胸を叩いた。

『胸(ここ)…さっきからずっと泣いてるの。』

ゆっくりと手を降ろす。
そして安心させるような笑みを浮かべて、私は首を傾げた。

『…わからない?』



…漆黒のその瞳から…  一筋の涙が零れ落ちた。

43:桜:2012/08/07(火) 19:08 ID:VqQ

久しぶりです 来ました
面白いことになってます
続き待ってます

44:うにゃ ◆4AUw:2012/08/15(水) 16:50 ID:Gzk

それからというものの、大変だった。
凌駕は何故か近くの壁を殴りながらボロボロ泣き出して、それがすごい男泣きだからかっこいいなと思う反面地味に怖かった。
男の人って泣くときこんなんなのかな。
女の子はあれだよね、なるべく嗚咽を漏らさないように小さく泣くもんね。

そんな凌駕が落ち着いたのが数分後。
私はきっと泣き顔を見られたくないんだろうと思ったので、そんな凌駕に背を向けて、でも一定の距離を保って座っていた。
背後に嗚咽を聞きながら空を見上げるのは何だか不思議な気分だった。

…今日もまた、澄み切った青が眼前に広がる。
あれほど憎んでいた青が、今じゃもう何とも思えないものになってしまっていた。
暫く眺めていれば光に目が痛みを伴い始め、慌てて視線を床に落とす。細めた目が少しチカチカする。
ゆっくりと目を閉じれば痛みは薄まるが、焼きついた青空が未だに残っている。

…綺麗なのに…何故好けないんだろう。


『…落ち着いた?』

気づけば背後から嗚咽は聞こえず、静かになっていた。
声をかければ息を呑むような音が聞こえて、私はそっと振り向く。

「…何で…」

その問いにはすぐには答えず、静かに噛みしめられた唇を見つめる。
そしてゆっくりと視線を上げると、彼の漆黒の瞳と視線がかち合う。
…すぐに逸らされたけど。


…もう、いいかな。


私はゆっくりと息を吸った。
どうせいつかはばれる。
そのいつか、が今になるだけだし。

『…私…死ぬから。』

「…は?」

45:うにゃ ◆4AUw:2012/08/15(水) 16:51 ID:Gzk

>>43
いつもありがとうございます…!!
お、おも…!?ry
これからも頑張りますw

46:うにゃ ◆4AUw:2012/09/13(木) 23:46 ID:xN6

「…死ぬって…どういうことだよ…?」
『元からね、病気なんだよ私。家族性突然死症候群、またはQT延長症候群って聞いたことある?』

両方に、凌駕は遠慮がちに首を横に振った。
…まぁ、知ってる方がおかしいかな。

『突然脈が乱れて立ち眩みしたり、意識を失ったりする遺伝性の病気。私はお婆ちゃんから受け継いだんだけど、お婆ちゃんの方は軽度だったみたい。
発作が起きないと全然気づかないけど、発作が止まらない場合は死亡する可能性が高い。
発作って言うのは、さっき言ったような立ち眩みや意識を失ったり、あと動悸や気分不快とかの事。
こういう発作はきっかけから起こることが多いんだけど、私の場合は運動とか、驚いたりすると起こりやすいかな。

確か、発覚したのは中学上がったころかな。
体育で意識を失って、危うくそのまま死ぬところだったみたい。

…まぁ、一言で言うなら「突然死んでしまう病気」…かな。』

余りに淡々と言ったせいか、単語が難しかったせいか、それとも一気に言ってしまったせいか、あるいは全部か…
凌駕はただ茫然と、私の話を聞いていた。

「じゃ、ぁ…病気…だったの、か…?」
『………まぁそこさえ掴めれば上出来かも。』

くす、と笑ってから私は再び空を見上げた。


…あ、また少し、この青空が好きになれた。


『…私が生まれた意味を、知りたいんだ。此処にいた意味を。此処に来た意味を。
…そして、此処にいた証を…。

残したい。
私という存在を。
此処にいたんだって。
此処で生きたんだって。

…意味を見つけるために、

     ―私は一人でも多くの人を救いたい。』


…そこに意味を見つけられたのなら。

「…何で…そんなに強いんだよ…。」
『…強い?………あははッ!』

そんな馬鹿な。

『強いわけないじゃん。
この病気を知らされたときなんて、三日三晩泣いたよ。世界を恨んだ。
どうして私なの。
どうして他の人じゃないの。
どうして私がこんなことになってるのに、世界は止まってくれないの。
周りはこんな幸せそうに笑ってるのに、どうして私だけが―…。

でも、その矢先にお婆ちゃんが死んじゃって、理解した。
「あぁ、誰にでも終わりは公平に訪れるんだ」って。
それが早いか遅いかだけで、誰にでも訪れるんだって。

それから、私はもう泣くのをやめたよ。

世界が違って見えたんだ。

色褪せて見えたのか、さらに色彩に見えたのか分からないけど、
そんなことはどうでもいいんだ。

最近は毎日起きて、
「あぁ、私まだ生きてんだなー」って思うのが日課かな。』


大空に翳した手をゆっくりと降ろして、凌駕に向かって微笑んだ。

47:うにゃ ◆4AUw:2012/10/02(火) 14:19 ID:gUM

「凌駕!!」

屋上から下へと続く階段を降りながら、時折凌駕の方を振り向いているといきなり声が聞こえた。
…あ、大虎君だ。

心配そうに顔を歪ませて、息を切らせて私たちを見ている。

「…大丈夫かよ…」

その声は寧ろこっちが大丈夫かと聞きたくなるほど弱々しくて、微かに震えていた。

凌駕は少しだけ大虎君の方を横目で見てから、すぐに目を逸らす。
だけど私が彼の名前を呼ぶと、一度私の方を見てから、もう一度大虎君の方へ視線を移した。
それでも暫く視線を彷徨わせてから、凌駕は少しだけ照れくさそうに口を開いた。

「…あ、りがとな…大虎…」

その言葉に案の定、大虎君は驚きに目を見開く。
だがすぐに、何のことだかわかんねぇな、と笑みを浮かべた。

ちなみに後で聞いた話…実は凌駕と大虎君は幼馴染だったとか。
幼馴染って言うほど昔から知り合いだったわけではないけど、凌駕が不良生活を初めて一番最初に仲間になったのが大虎君だったとか。

余り深く入れない男の話です。

二人で詰まる話もあるだろうと、私は颯爽とその場から去った。
とりあえずしょうがないから、影がかなり薄くなっていた遊助君に私に掴みかかったことをとくと反省させてやろう。
不良のたまり場に学校すらサボって入り浸っていたお陰でメンタルが結構強くなっていたこの私よ。


ちなみに勿論、腰に手を当てながら笑顔でドラッグの抜けた遊助君に殺気(笑)を送っている間、

凌駕と大虎君が恋バナに花を咲かせていたとか、そんなの知る由もないけど。


「おいこら大虎、とっとと吐け。テメェ花蓮のことが好きなんだろ。」
「はぁあ!?何だ藪から棒に!?」
「どこが藪から棒だ。思いっきり見せつけてくれやがってよ、さっきの。」
「あ、あれはあいつが泣いてたからだな…!!」
「顔真っ赤だぞおい。」



「安城様本当に申し訳ありませんでした!!」
「あのさ遊助君、なんで私が今こうしてるか分かってる?」
「…え、そりゃ…俺が安城様に掴みかかったからで…」
「おk、遊助君空気椅子5時間で。」
「ぇええええ!!??」
「私が怒ってんのはあんたらがドラッグやってたからでしょーが!!いい?これから私がもう一度でもドラッグ見かけたら鉄パイプで殴るから。」
「安城様、それはただの人殺しです!!」
「安城様とか意味分かんない風に名前読んだから遊助君空気椅子さらに3時間追加。」
「(理不尽だ…!!)」





カオス。

48:うにゃ ◆4AUw:2012/10/28(日) 23:44 ID:jWQ

あれ以降、発作はめっきりなくなった。
薬は相変わらず飲まなきゃいけないし、毎週一回病院に寄って検査も受けなきゃいけない。
だけど、結果も良好だし、お医者さんも何か良いことでもあったのかい?とか聞かれたし、幸先よさげな感じだった。

と、言うわけで今日は学校へ行ってみました。

嗚呼!懐かしきゴミだらけの机や靴箱!!

とか馬鹿なことを叫んでみようかな、とか発狂したんじゃないかって言うほどわけわからないことを考えながら靴箱を凝視。




…何故トテモ綺麗ナノダロウ。

しかもすっごい新品の上履き入ってるし。これ明らかに私のじゃないよね。
え?新たないじめ?なんかこう…「おめーの席、ねぇから!!」みたいなあれですかね。
流石に心に響くわ。いやマイナスな意味で。

でも周りを見回してみても、前みたいにくすくす、と笑ってくる人はいない。
寧ろ誰もいない。
今日は学校創立記念日ですか?

不良の溜まり場に行き来するようになってからはタフさも鍛えられたと思ったのに、やはりメンタルが弱かったようです。落ち込んできた。
今日はそのまま屋上に行こうかな…とか思いながら、足はしょうがなく現実を見つめながら教室へ向かう。
…そう、

出席日数が足りない。

抗えない事実。これ以上サボり続けたら確実に終わる。死ぬ。
しかも特別な理由があってのことじゃなく、サボりなんだからさらに話は深刻だ。
せめて形だけでも出席しないと…。

見なれた扉が見えてきて、私は遠慮がちに扉に手を当てた。
少しだけ、怖い。
もうすでに慣れ切っていたはずのいじめに。
怖い。

なのに、何故だろう。
…その恐怖が、私を奮い立たせるんだ。

失っていた恐怖という名の感情を取り戻せたことに、狂喜を覚えた。

…いける。

ドアノブを握りしめ、力強く押した。
すごく懐かしい話し声や物音が一気に耳になだれ込んでくる。
だけれどそれも少しの間のことで、一番私に近いものの方から…少しずつ、少しずつ。
まるでゆっくりとした水の波紋のように、
音が消えていく。

どれもこれも、いつものこと。
少し懐かしいだけ。

…なのに、何かが違う。

私は首をかしげながら、ゆっくりと自分の席に近づいて行った。
……やっぱりおかしい。

最後に虫が入っていた時とはまるっきり違い、新品の机。
上には落書きも、引き出しの中には画秒も、椅子の上には飲み物も、
何もなかった。
ただ茶色い表面の光沢が、早く使ってくださいと期待しているだけだった。

「…なんで?」

思わず口に出して呟いた、その時。

周りから一斉に、言うなら机に足をひっかけながら椅子をぐらぐらさせていたらバランスを崩して椅子、机ともに床に崩れ落ちたとでもいうような轟音が鳴り響く。
そして聞こえた、声。

『今まで本当にすみませんでしたッ!!!』







…………はい?

49:桜:2012/10/30(火) 19:50 ID:px6

久しぶりです
何があったんですか?!
続き待ってますね^^

50:うにゃ ◆4AUw:2012/11/23(金) 23:09 ID:MO6

………うん。
おk、とりあえずちょっと整理してみよう。

私は今まで誰ともつるまなかった(っていうかクラスの女子の大半が私と合わない)ため、ずっといじめられてきた。
でも負け犬の遠吠えとして、大して気にすることもなかった。
何より、もうすぐ死ぬ体。いじめも人生の一環として楽しむほどだった。

で、大虎君たちに出会ってからは毎日溜まり場に行き浸り、学校へは一度も来なかった。

でもいい加減単位がやばくなって、いつ死ぬか分からないとはいえなんか留年とか恰好悪いからしょうがなく学校来ることに。
で、今日もまたいじめられんのかー、とか今日の晩御飯みたいなノリで考えていたら、

教室に着いた途端、クラス全員が私を確認するなり席を立って土下座し始めたと。



「…うん、整理しても全く理解できなかったから、何?」
「いや、本当に済みませんでした!!い、今まで馬鹿な理由でいじめたりして…本当、自分が情けないです!!」

情けないのは知ってるよ、ウン。
聞きたいのは全然そういうことじゃない。

「なんでいきなり?って聞いてるんだけど…」

私がその問いを口にした途端、クラスの全員の表情が固まる。勿論、それを見逃す私じゃないわけで。
全員がお互いに視線を交わしたのも、勿論見逃さない。

でもあえて何も言わない。
クラス中に沈黙が流れても、気にしない。ただ軽く仁王立ちしながら答えを待ち続けた。

…沈黙。
………沈黙。
…………沈黙。

流石私と言うべきか、結構短気なのに今初めて気づいたわけで、ようやく口を開こうと言うときに、よく聞きなれたローラーが擦れるような音がした。

「…うっわ、何これ!マジ壮観なんですけど。」

語尾に「w」がつきそうなほど軽い調子でそう言ったのは、どのクラスにもいるようなチャラ男。
大虎君に出会う前は、こういう人が不良って言うのかな、と思ってた。
大虎君たちと出会った後に改めて見ると、すごい普通だなぁ。

「え、何々、何してんの?皆で仲良く土下座なんてしちゃって―…」

クラスのきつい視線の中、けらけらと間違いなく空気をぶち壊すそのチャラ男、基、青山 筧(アオヤマ カケイ)はふと、私の方に気付いた。
そういえばクラス中の人がいじめられてる私を見てくすくす笑う中、この人だけが口端を歪ませて笑みを浮かべていたのを良く覚えている。
とても気味悪かったのが、印象的だった。

「あー…なるほどね。そっかそっか。花蓮チャンがあの有名な不良のチームの"Doubt"に入ったから皆復讐が怖いんだ。」

相変わらず調子の外れた声で言ったその言葉に、クラス中の人たちが声を漏らした。
あ、あれって不良のチームで、ダウトって言うんだとか考える暇なんてなくて、

ただ、今言われた言葉を理解するのに時間が欲しかった。



「―…は?」

出てきた声が思ったより怒気を含んでいて、複数の肩がびくりと震えたのが分かる。
そういえば、私このクラスで喜怒哀楽なんて見せたことなかったっけ、とか頭の中だけは冷静で。


「…何。自分でここまで創りあげてきたくせに、いざ復讐されるとなると怖い?」

沈黙。
青ざめた顔を、肯定と受け取る。



「…ふざけんなよ。自業自得のクセに、最後の最後まで自分のことしか考えないんだ?ふーん。済みませんでした?よく言えたね、その言葉。ナメてんの?そんな理由で謝られて「そーですか」って許せるほど私が優しい人だと思った?」


考えるよりも先に次々と出てくる言葉に、一番近くにいた女子生徒がかたかた、と小刻みに震えだす。

「いじめられてることは誰も知らなかったし、伝えるつもりもなかったけど、気が変わったかも。私、あんたらみたいな人が一番大嫌いなんだよね。」


こんなにキレたのは久しぶりだ。

私はそのままきゅ、と音を鳴らして踵を返し、音を立てて扉を閉めた。





…少しだけ、気持ち悪い。

51:うにゃ ◆4AUw:2012/12/17(月) 20:33 ID:MO6

いつもより格段に重い足取りで屋上に向かう。
早く大虎君たちのもとへ行って安心したい。
少なくともあんな、あんな場所には残りたくない…。

だけど残念ながら、その思惑は途中で中断されることになった。
彼…私の担任の教師、菅原先生。通称ハゲチャビン。そう呼んでるのは私の心だけだけど。…に呼びとめられたのだ。
頭上には素敵なバーコードが描かれていて、そこから見える素肌は光を反射している。
そして何処からどう見てもメタボ体型で、シャツのボタンは今にもはち切れんばかりの勢いだ。

…そんなに詳しく説明する必要?馬鹿にするために決まってんでしょ。

「…何でしょうか。」
「何でしょうか、じゃない!久しぶりに登校したと思ったら…もうすぐ授業だろうが、何処に行くつもりだ!!」

…はぁ。
次のクラスは科学でして、科学の教師の桑骨先生は出席取らないんでいてもいなくても出席日数には関わらないんです。
…とは言えないか。

どうしようかな、でも教室には絶対戻りたくないな、とか思いを巡らせていると、後ろから名前を呼ばれる。
…その声に聞きおぼえがあって、まさかと思いながら振り返る。

………………凌駕ってここの学校だったんだ。
寧ろ学校に通ってたんだ。

ぴっしりと制服を着て(崩れてるけど)だるそうに立っている様子からみて、向こうも出席日数が足りてないと言われたんだろう。
流石凌駕。でも金持ち学園でも通ってるんじゃないかなとか思ってた。

「…どうした?」
「かくかくしかじかで…」
「略さず話せ。まったくわかんねぇから。」

…っく、アニメや漫画の世界なら「かくかくしかじか」のこの一言ですべて片付くのに!!
しょうがないな、と思いながら私はたった今起きたことを掻い摘んで話しだす。

話し終えたころには、既にチャイムが鳴っていた。
なのに何故かハゲチャビンまで熱心に私の話を聞いていた。


「…花蓮のクラスって1-Bだっけ?」
「うん、そうだけど?」


「うしっ、燃やすぞ!!」
「待って。」


そんな「野球すっぞ」みたいな野球少年のノリでいかないで。

52:うにゃ ◆4AUw:2013/02/08(金) 22:16 ID:lIo

「…あんじゅぉ…お前…くっ、苦労してたッ、んだなぁ…!!きっ、気づいっ、てなくてっ、ごめんなぁ…!!きょっ、きょぉし、失格、だぁあ…!!!」

あんじゅぉって誰。
ハゲチャb…菅原先生なぜすごい勢いで泣いてるし。
何このカオス。

「…花蓮、今からチームの溜まり場行くぞ。」
「あー、そう言えばチームって"Doubt"って言うんだね。初めて知ったー。」
「任せろ!お前と花蓮とその他不良で出席日数ぎりぎりの奴らは皆俺が理事長の力を駆使して免除してもらうから!」

この人私の担任じゃなかったっけ?
…あっ、間違えたこの人菅原先生じゃなくて理事長の橋澤先生だ!!
やっべ、どっちもチャームポイントが髪と体型だったから間違えた。…あら、いけないわ口調が…ヲホホ。

「…あ、有難うございます?」

とりあえずせっかく言ってもらったんだし、有難く受け取っておこう…
え、本音?
勿論ラッキーと思ってるに決まってるじゃない。

「おら、花蓮早く歩け!」

…そして何で凌駕はこんなにキレてるのかな。

53:うにゃ:2013/04/30(火) 18:20 ID:voI

(名前の隣にあるあれの付け方を忘れたうにゃが戻りました長い間開けてしまいすみません本人です!!)


随分歩いたような気がする。
だけど実際はまだ4分ほどしか経ってなくて、いつも以上に長く感じるのはきっと目の前の人のせい。
眉間にしわを寄せ、口をきつく結び、私の手首を力強く引っ張り、無口でずんずんと歩き続けている。
正直言うとそろそろ指先の感覚がなくなりそうなほど力強いけど空気を読んで何も言わない。

もうそろそろ着くかな着かないかな、なんて上の空で私は引っ張られながらも横を見る。
教室の扉からちらりと見える教室の中では、生徒たちが真面目に授業に向かっているか、またはそのフリをして落書きをしているなど、各々好きに暇つぶしをしているかだ。
そう言えば今って授業中なんだっけ、と思考を巡らせ、考える。

今までに授業中の廊下に出たことはない。
いつも授業が始まる前には既にどこかに行ったり…と言うか学校にすら行かなかったのも多々。
それが原因で電話がかかってきたんだけど。出席日数ぎりぎりっていう。

カツ、カツ、カツという指定靴のヒールの音が静まりかえった廊下に響く。
耳を澄ませば、古文を朗読している教師の声が聞こえるほど静かだ。
…そう言えばこういう静かな時間、あまり過ごしてなかったなぁ…

「…なんでだよ。」

凌駕の声がして、一気に思考が戻ってくる。

「俺らはお前のこと仲間だと思ってたのに…お前にとっては違ったのかよ!!」

…嗚呼、成程。
子供の頃から読解力だけは半端なかったから、その言葉を聞いた瞬間に何で凌駕がそんなに怒っていたのかが理解できた。

つまりは、自分のいじめ事情をずっと隠していたことが嫌だったんだ。
普通そういうことは、仲間に打ち明けるべきようなことだし、特に凌駕はチームのトップだから、仲間に隠し事はなし、みたいな感じのルールがあったんだろうなぁ。

…うん、可愛い。

「…別にそういうんじゃないよ。」
「じゃあどういうことだよ!?」

靴箱のど真ん中で足を止めて、凌駕は勢いよく私を振り返った。
そんな凌駕に私は笑みを浮かべて伝える。

「…私、表の顔はかなり寡黙なんだ。親しい人にはこういう風に普通に喋れるけど、知らない人に対しては冷静沈着で寡黙。知らない人に親しく話しかけてもこっちには何のメリットもないからね。どうせその人たちは私の人生に深く関わらないし。」

あ、違った、と小さく呟いて、また続ける。

「関わらせないんだ。どうせ私は長くないし…あんまり関わらせちゃったら私が死んだ時悲しむでしょ?でも、向こうが関わらなかったら私が死んでも「へーそうなんだ」って程度。だから私は今まで誰ともつるまなかった。それが原因でいじめられたわけだけど…」
「ッ、」

何か言いたげな凌駕を人差し指で黙らせる。
最後まで言わせて?と首を傾げれば、素直に従ってくれた。

「でも、皆は違う。関わらせちゃった、私から。何でか分からないけど…関わらせるつもりもなかったけど、関わらせちゃった。おかしいなぁ…って感じ。だから接し方がよくわからないんだよね、仲間相手の。相手を傷つけてないかハラハラしちゃってさ…でもそれも忘れるくらい凌駕たちと一緒に過ごす日々は楽しくって嬉しくって…」
「だから、いじめのことなんて忘れちゃった!嘘じゃないよ、本当に忘れた。それくらい皆と過ごす日々は楽しかった。幸せだった。」

へへ、と歯を見せて笑う。
凌駕は暫く空いた口がふさがらないかのように呆気になってたけど、ちゃんと笑い返してくれた。



ねぇおばあちゃん。
私にも、笑って仲間だよ、って言える友達が出来たよ。

54:うにゃ:2013/07/03(水) 20:45 ID:jQM

「はぁ!?いじめられてたぁ!?」

んまぁ。
凌駕ったら、バラしやがった。
どうしてやろうかしらこの人。

しかも大虎でさえ、そうなのかよ、と私の両肩を掴み揺さぶってくる。
視界が滲んできて意識が遠くなりながら私は考えた。

大虎、知らなかったっけ。

「どういうことだよ!?仲間だと思ってたのに!!」

眉間にしわを寄せ、絶叫しながらも顔に信じられないという色を滲ませる大虎。
凌駕も同じことを言っていたと伝えると、その顔はみるみる赤く染まっていったけど。
本当可愛いなぁ、と当の私は上の空で。

凌駕に伝えたことを繰り返し皆に伝える。
そうでしかおいおいと泣きだす皆を鎮めることは出来ないと理解したからだ。

「…だから、ね。仲間と思ってないわけじゃないよ。皆は私の大切な仲間。」

思わず零れ出た笑みに、
皆も微笑み返してくれた気がした。

凌駕だけじゃない。
こんなたくさんの人に囲まれて過ごせた私は何よりも誰よりも幸せ者なんじゃないのだろうか。

ね、と近くにいた大虎に微笑みかける。
5秒後にその笑みは消え去った。

というか、オーラが淀んでいた。そこだけ。

「…た、大虎…?」

いじけてる。
明らかにいじけてる。

昔のアニメ漫画みたいに体育座りはしてないものの、明らかに空気が暗い。
何よりもこの世のすべてを諦めたみたいな顔をしている。
どうしよう。

「…俺、お前の支えになれてやれてると思ったのに…苦しんでることにすら…気付いてやれなかったなんて…」

…あぁ〜…

「た、大虎?大虎は随分私の支えになってくれたよ?ね?私、傍にいてくれてるだけですっごく助かるし嬉しいから!ずっと一人だったんだから、本当にすごく嬉しいんだよ!!」

でも…と涙目になる大虎に私は手のつけようがなくなった。



…ワンコみたい。

55:うにゃ ◆4AUw:2013/07/23(火) 17:37 ID:Mu.

いい加減泣きやんでくれないかなぁ…

そんな思いを胸に抱え、私はいまだに涙目の大虎を慰める。
一応さっきよりもオーラは澄んできたけど。

その最中、私へ助けの手があった。
震える携帯、流れるメロディ…。
自分で言ったことに鳥肌が立ったなう。

「あ、はい!え…っと、じゃあ今から行きますね、はい!」

あまりにも私が明るく答えたので、電話を切った時には呆気になった皆と、「誰だそいつ」と問いかけてくる二人の虎と龍がいた。
私はそんな皆の様子を気にもせず、携帯をポケットにしまい身だしなみを整えた。

「ごめん、皆!急用が出来たから行ってくるね。病院に呼ばれたんだ。」

そして予想通り、あちらこちらから病院…?だとか何で…?だとか疑問の声でざわつき始める。
私はその様子を見て、少し笑いを堪え切れなかった。

もう、隠すのはやめようと思って。

それに凌駕も知ってるし、そこまで大きな問題でもないと思う。

深く息を吸い込んで、私は覚悟を決めた。
あのね、と前置きをしてから笑顔を浮かべる。

「私、病気なんだ。」

絶対に治らない、生きられる時を定められた、最低最悪の病気が。



定められた運命が。

56:うにゃ ◆4AUw:2013/07/25(木) 15:50 ID:gOU

「ッ…何で、そんなこと今まで…!」

痛い沈黙が私を包んだ。
予想通りの反応とは言え、ちょっと悲しいし心も痛むなぁ…。

誰もが皆、ありえないという顔をして私を見ていた。
…嘘だったら良いんだけどね。

「最初に発覚したのは、中学生の時だったと思う。
いきなり学校で意識を失い、そのまま病院に搬送された。」

そこで告げられた病名は、家族性突然死症候群。
その病名を聞いて、お婆ちゃんは唖然とした。
そして自分を責めるように泣きだした。

私からの遺伝だと、私のせいだと。

それを聞いたお父さんは何の反応もなく、ただ、仕送りのお金の額が跳ねあがった。
そして一言、頑張れよ、と。

先生に言われて、出来ることは全部やったけど、無駄だった。
逆に病状が深刻になったりもして、もう手の施しようがなくなった。

それを聞いて、高校に上がった時決めた。

誰も苦しめないように。


周りにいる人たちを悲しませないように。


誰も私に近づけさせない。

その結果がいじめだったけど気にしない。
それで、私は人を救うことが出来たんだから。

でも、何でだろう。

「どうして、皆と離れたくないって思ってしまうんだろう。」

ここが温かい。
安心する。
心地いい。

ここが、いい。

「皆、有難う。そしてごめんなさい。きっと私は皆をいっぱいいっぱい、苦しめることになる。
でも覚えていて。

それが私が何よりも嫌っていたこと。誰にも苦しんで欲しくない。
ただ、私がいたことを感謝していて欲しい。
覚えていて欲しい。
私は皆の笑顔が好きだと。皆と過ごす時間が好きだと。
皆のことが大好きだと…

私は、幸せだと。」

ね、と笑ったとたんに嗚咽が聞こえた。

57:うにゃ ◆4AUw:2013/07/27(土) 13:39 ID:lT2

その後、時間が押していたので一人一人に簡易的なハグを交わして溜まり場を出た。
数人か泣き過ぎて離してくれなくて大変だったけど。
っていうか、液体服についてるんですけどっ。

歩きながら、少し小走りになりながら私はふと思った。

こんな風に誰かに泣いてもらえて、慰めてもらえて、応援してもらうのは久しぶりだ。
…本当に久しぶりだ。

また出そうになった涙を堪えて、私は代わりに笑みを浮かべた。
なんだか…嬉しいな。


「花蓮ちゃん!久しぶりだね。最近調子どう?」
「全然おっけーです。友達もいっぱいできて、生きるのすっごく楽しいです。」

真っ白に塗りたくられた部屋。
その中心に見慣れた先生の顔。

先生は、私みたいな病気を専門的に研究していて、今までずっとお世話になってきた人だ。
髪は真っ黒でふわふわしてそうで、ひげがちょっと生えていて、まるでテレビで見るお父さんみたいな人。
すっごく優しくて、いつもにこにこしていて、でも私がいじめられていて孤独だった時期はその表情を歪めて心配してくれた。

そんな先生には、私はいつも言葉にできないほど感謝している。

それは良かった、と子供みたいに、自分のことみたいに喜んでくれる先生に、不思議と私の顔もほころんだ。

「最近調子も良いみたいだしね。立ちくらみとか、そんなのした?」

全然ないです、薬も飲んでるのでという意味を含めて首を横に振ると、先生は嬉しそうに笑った。
そしてその様子を手元にあった紙に書き込んでくる。
ところで医者の手書きって本当読めない。読解不能。

「やっぱ病は気からって言うのあってるよね。最近すっごく明るくなったし、いっぱい喋るようにもなった。」

…そう言えば私、孤独だった頃は笑いもしなかったし、ただ無表情で声も棒読みで。
あまり喋らなかった気がする。

…やっぱり、皆の御蔭だよね。

「じゃあ、今度はほんの少しだけ薬の量を減らしてみようか。それで問題がないようだったらそのまま減らしていくけど、もし何か様子がおかしかったらすぐに元の量に戻すこと、いいね?」

私の返答を確認してから、先生はいつもの量の薬を渡すことを紙に書き留める。
だが、先生曰く今まで一日3回服用で3粒だったのが、一日3回服用で2粒になるようだ。

そんなにいっぱい減らして大丈夫かな、と思ったけど一応いつもの量を渡してくれるのですぐに対処出来るだろう。


私は部屋を出るとき、いつも以上に感謝の意を示して笑みを浮かべ、頭を下げた。
頭を上げた時に目に入ったのは、とても嬉しそうに笑っていた先生の顔だった。

58:うにゃ ◆4AUw:2013/08/14(水) 18:55 ID:voI

扉をゆっくりと閉める。
本当なら、そのまま薬を貰いに行かなきゃいけないんだけど…。

私は先生から貰った紙を綺麗に四つ折りにしてポケットに突っ込んだ。

勝手に足がスキップ気味になる。
鼻歌でも歌いそうな調子で、私は廊下を一直線に歩いた。

道行く患者さんやナースさんが挨拶してくる。
私も小さく笑みを浮かべて挨拶をし返した。

久しぶりにここに来たこと思い出し、ちょっとだけ心配になった。
あの子、私のこと忘れたりしてないといいけど…。

部屋番号は308、そこに入院している患者は…。

「あったっ!」

私は臆することなく、その部屋のドアを開いた。
確か、私の記憶が間違っていなければ、二番目の右側のベッドに…

「お姉ちゃん!」

良かった、憶えててくれた。
ちぃちゃん、とにやついてしまった顔で名前を呼ぶと、その子は何とベッドから抜け出そうとする。

「こら、ベッドから出ちゃダメでしょ!」

慌てて駆けよりその子をベッドに押し戻す。
布団をしっかりかけてやれば、えへへ〜という声がベッドの中から漏れた。
傍に置いてある机を見てみれば、そこには山のような本やプレゼントの山。
相変わらずお母さんと仲良いんだなぁ、と思わず微笑んでしまった。

「お姉ちゃん最近遊びに来ないから僕のこと忘れたかと思ったよ」

ちなみに僕っ子です。
女の子ですちぃちゃんは。

それでも天使のような可愛さなんです、愛しいんです天使なんです。
僕っ子叩く人いるけど、可愛ければ何の問題もないでしょ!

「忘れるわけないじゃん。ちぃちゃん、久しぶりだね。最近調子どう?」
「あのね、お医者さんが今度手術するんだって。もしかしたら治るかもって!」
「そうなんだ!良かったね!」

ちぃちゃんは私と同じ病気を持っている。
病状悪化でここに一時期入院していた頃、一緒の病室に住んでいた。

この子は親の要望で、ずっとここに住んでいる。
本当ならば、今頃小学校5年生のはずだ。

「ちぃちゃん、約束まだおぼえてる?」

私が小指をすっと差し出す。
それを見て当たり前、とでもいうかのようにちぃちゃんは微笑んだ。

「病気治ったら遊園地に連れてってくれるんでしょ?僕、それずっと楽しみにしてるんだからね!」
「…そっか。じゃあ早く治そうね!」
「うん!」

そう言ったちぃちゃんは本当に、本当に嬉しそうに笑っていた。

59:(」・ω・)」うー!(/・ω・)/にゃー! ◆4AUw:2013/09/21(土) 16:46 ID:voI

…平和だ。

第一声がそれってなんだかおかしいけど、それ以外にことばが見当たらなかった。
あんなに荒れ果てていた溜まり場は、いつの間にか違う場所のように綺麗になっていた。
バカみたいな夜呂死苦の字はすでにこすり落とされていて、はがされた壁は一応まだ無残にも、見れるものとなっていた。

怪我だらけだった不良も、痣や痕しか見当たらず、
最近は「抗争」なんて物騒な言葉は聞かなくなった。
もちろんドラッグなんて口に出すことさえタブー。

まぁそれもこれも、私の血の滲むような努力のおかげですけどねッ。

それでもやっぱり昔暴れまわっていたせいか、よくよく攻撃されることがあった。
その時の応戦ばかりは許してしまっている。

…あぁ…平和だ。

「動いたらこの女の顔に傷つけるからな!!」

…どうしよ。

ことは数分前に起きたんだけど、
久方ぶりに登校して(相変わらずクラスはおどおどしてた)、放課後に溜まり場に寄ったら
戦闘真っ最中でした。

素知らぬ顔で溜まり場に入り、そして素知らぬ顔で脱兎しようかと思ったらつかまりました。

今はいわゆる羽交い締めまがいのことをされていて、首筋にナイフが当たっている。
こんなことなら、大虎君や凌駕に散々言われていた戦い方を学べ、に素直に従っておけばよかった。

だって、いつの間にかチームに入ってることにされて、でほかのチームに女がいるって噂が独り歩きしちゃって…
でも今までなにもされずのうのうとしてたから大丈夫かなって思って…

あぁでもこれで多分顔を知られちゃったし…
無事解放されたら二人に戦い方教えてもらっとこう。

「へっへっへ…それほどこの女が大切なようだなぁ…誰一人手出しすらしてこねぇ…」

わー、悪役な笑い方。

「ざまぁ見ろってんだ!てめぇらのチームにはいやなほどお世話になってたからなぁ…後悔しやがれ!」

え、あのちょっと
首が締まる。

それだけじゃない。
私の靴が地面を滑って行く。
というか靴が削られていく…床がでこぼこしてるから…。

平たく言えば、羽交い締めされたまま、どこかに連れてかれてる…。

「なっ…おいっ!?」

あ、この声大虎君だ。
薄れゆく意識の中ぼーっと思う。

どこ行くんだろ…ちょっと…待って、薬、持ってな―…


…なんで私こんなに冷静…なんだろ。
そこで私の意識は途絶えた。

60:(」・ω・)」うー!(/・ω・)/にゃー! ◆4AUw:2013/09/22(日) 14:36 ID:voI

気付いた時には体がすでに動いていた。

少しでも距離を縮めようとするかのように、俺の体は勝手に前かがみに走っていた。
俺を止めようとする向こうのチームのやつらを気にも留めず、ただ拳を振るいまくる。
やつらの鼻でも折ってしまったのか、一瞬だけ朱が見えた。

ふざけんな。
ふざけんな。
…そいつに

「―…そいつにっ、触んじゃねぇ!」

「大虎っ!!」

凌駕の厳しい怒声に、体が震えた。
その声に慣れてしまった身体は、自動的に動きを止めた。

それは正しかったのか、間違っていたのか。
…おそらく正しかったんだろう。

捕まってしまった花蓮は、おそらく首の圧迫で気絶したんだろう、ぐったりとしていた。
そして、首元からかすかに見える赤。

…花蓮を捕まえてるやつは、いつの間にか花蓮の首元にナイフを当てていた。

「動くじゃねぇって言っただろうが!」

そいつが吠える。
…けど、そいつなんて俺の眼中になかった。
血なんて腐るほど見てきたはずなのに、

すくむ足。

いつの間にか忘れてしまった、恐怖という言葉。
一歩も歩けず、俺は花蓮の首元にくぎ付けになっていた。
目を反らすこともできずに。

「ひくぞ!」
「っ、」

その言葉に、ようやく正気らしい正気に戻った俺は、凌駕に視線を移した。
…だが次の瞬間、見るんじゃなかったと思ってしまった。

それほど、凌駕の表情は歪んでいた。

少年漫画のような、殺気なんて感じることができるわけねぇけど、
それでも冷や汗を流すには十分な迫力だった。

先走った自分が恥ずかしく思えて、でも悔しくて
俺は拳を握りしめた。

やつらが扉の向こうへと消えていく様子を、じっと見ていることしかできないなんて。

「ッ、花蓮…!」

誰かが呟いた。


いきなり嵐のように現れた、不思議でどこか飄々としていて、
誰よりも強くて誰よりも弱かった
一人の少女が

弱虫でただの反抗期で強がりの集まりで、
誰も信用してなくて、ただバカ騒ぎするだけが目的の
誇れるものなんて何もないそんな集団の

何よりも大切な存在になっていたんだ。

61:匿名さん:2013/11/04(月) 11:17 ID:Fmw

目が覚めたとき、そこは元いた場所と大差なかった。
ただし、見慣れた場所よりもそれなりに、結構、かなり、薄汚れていた。

体がむず痒いような、変な感覚がして、あ、伸びしたい、と瞬間的に思った。
ぐいー、と体をのばしてみると、同時に金属音が鳴り響いた。
そして、冷たい何かが手首を触れている。

首を曲げて上を見ようとするも、寝起きのせいか、骨がなかなかうまく曲がらない。
なんとか痛みが和らいでから、もう一度上を見た。

「・・・うわ」

なんとなく予想はついていたけど、やっぱりそこにはドラマや映画でよく見るもの。
光が反射されて、微妙に光を放っている、銀色の円形上のもの。
世間ではそれを、手錠と呼ぶ。

しかも、玩具屋さんでうっているようなものではなく、刑事が持っていそうな、本格的なものだ。
こんなものをどこで手に入れたんだろう、という考えが頭をよぎったが、やっぱり考えないことにした方が良さそうだ。

「・・・手がすごい痺れてる。」

私の両手は、ちょうど頭上で括り上げられていた。
手錠でしっかりと固定させられていて、動かすたびに鎖と手錠がぶつかりあって金属音を生み出す。
足は何もかけられていなくて、でも気絶している間、それなりにひどい扱いを受けたのか、所々青あざがついていた。
しかも、中には内出血しているものまで・・・。

「もー・・・最悪。」

少しだけ泣きたくなってきた。
こんなんだったら、たまり場いかなきゃよかったなぁ。
でも、学校にはいくようになっても放課後はいつもたまり場直行だし。
家は一人ぼっちだから寂しいし。

思ったより小さい部屋に、ぼろぼろの壁。
唯一の出口が、閉じられた扉と格子戸。
よくある監禁部屋に閉じ込められているせいか、いつもより多く考えている。

とりあえずこれからどうしよう、と考えたとたん、頭は真っ白になったけど。

でもなぜか、不安は少しだけしかなかった。
助けてくれると思ってたのか。
それとも、諦めていたからか。

そのとき、扉が開く音がした。

「お目覚めか。」

よくある悪役台詞に、聞いたことない声。

明らかに敵意があるその顔が、扉の向こうから見えた。
熊のような髭面に、どうしても学生とは思えない容姿。

すんません、これはもしかして本職の方ですか。

62:(」・ω・)」うー!(/・ω・)/にゃー! ◆4AUw:2013/11/24(日) 15:55 ID:ef.

「巻き込んじまってわりぃなぁ…でもしょうがねぇよなぁ?お前がDoubtに関わりを持つからこんなことになったんだ…」

恨むなら自分と、俺らに喧嘩売ったあいつらを恨め、という言葉を耳にしながら、少し自嘲気味の表情をする。
彼らを恨むなんて、できるわけないじゃん。
後悔だってしてないんだし。

「これから、どうするの?」

そう尋ねれば、にやにやと意地汚い笑みを浮かべながら、そいつは問いに答えた。

こいつらの計画は、案外単純なものだった。
私は完全なる人質。
私を助けるために現れる彼らを、まずは脅す。
私のせいで身動きできない彼らをまずは憂さ晴らしにボコ殴り。
そこからどうするか、まだ考えている最中らしい。

いっそ殺してください、と懇願するようなプランを考えてやるよ、と捨て台詞を吐いて、そいつは再び出て行った。
それと入れ違いに、一人の男性が入ってくる。
茶髪の前髪をオールバック並に上に立たせ、服はとてもラフだ。

「よう。調子はどうだ。腹が減ってるなら、飯を持ってくるが。」
「あら、随分人がいいのね。金はホイホイ無駄にするものじゃないわよ。」

私が少しも動じていないのを見ると、その人は少し興味深そうに、面白そうに笑った。

「人質だからな。とりあえず生かしていかねーと意味がねーだろ?」

確かに、と思うような理由を述べられ、私は小さく声を漏らした。
そして再び唯一の出口である、今や月明かりが差し込んでいる格子戸を見つめる。
そんな私の横顔を、興味深そうに彼は見つめた。

「お前、本当に動じないのな。もうちょっと、助けてーとか命乞いしてもいいとこじゃね?」

予想通りのその問いに、私は「さぁ?」という言葉と、意味深な笑みを浮かべた。
確かに、拉致監禁なんて初めてそのもので、どうすればいいか戸惑いはあるけど
今戸惑ったって何も変わらない。
なら大人しく動きがあるのを待てばいい。
無力な私にはそれしかないんだから。

…あぁ、でも…彼らの足手纏いになるのは、いやかな…。

「…懐かしい夢を、見たの。」

独り言のようにつぶやいた。
目を閉じれば、まるで今目の前で見た光景のように、繊細に思い出す。

写真でしか見たことのないママが私を抱きしめていて、最近はテレビでしか見ないパパが笑ってて
ババがそばでにこにこしながら座ってて
私は中心にいるの。
嬉しくて、楽しくって。飽きずにこにこ笑ってて。
馬鹿みたいで、つまらない、そんな夢。

でも、確かに願っていたことなんだ。

それっきり喋らなくなった私に業を煮やしたのか、彼は立ち上がった。

「何もいわねーなら勝手に持ってくるぞ」

夕飯、と付け加えて、彼は振り返らずに扉の向こうへ消えていった。
ばたん、と感情のない音が引いて、真っ暗闇があたりを包む。
ただ一つ、月明かりが何とか私の視線を引く。

耳が痛むほどの静寂の中、今何時だろう、とかあれからどれくらい眠ってたんだろう、とか答えのわからない質問を繰り返した。


最近の病気の診断は良好。
でもいつまた悪化するかわからない。

私は手元にない薬に気づいて、小さくため息をついた。

「…あとどれくらい、もつのかな…」


死にたくない、という感情が少しずつ、日ごとに強くなっていたのを私はずっと感じていた。
やり場のない思いに、私はまた小さく笑った。

63:(」・ω・)」うー!(/・ω・)/にゃー! ◆4AUw:2013/12/25(水) 16:01 ID:65U

「おらよ」

乱暴に開け放たれたドアは、振動とともに轟音を持ってきた。
先ほどまで完全なる静寂だったその部屋に持たされた突然の音は、私の耳を傷めた。

返答のない私に、彼は少しの間立ち止まった。
そして小さく声をあげる。

「…寝たのか?」
「寝てないわ」

暫くずっと黙っていたせいか、急に自分の声が自分のものじゃないような気がする。
喉の奥を通る違和感が、不思議な感覚だ。

不思議と眠気はなかった。
暗闇で独りぼっちの間、ずっとぼんやりと考え事をしていた。
…否、考え事というよりかは、ただぼーっとしていただけに近い。

頭の中は真っ白で、指一本動かす意識もないまま、私はずっと一点を集中して見つめていた。
幸い月明かりがあったせいか、自分の手元がよく見えた。
自分のこれから、とか薬は、とか今何時か、とかいう考えはまったく頭をよぎらなかった。
ただ純粋に真っ白な頭の中、何かを考えていた気がする。

「…腹、減ってねぇのか?」
「…別に。でもくれるなら食べるわ。」

その言葉に、彼は手に持っていたものをこちらに投げて寄越した。
ぱさっと乾いた音がして、見なくてもそれが袋に入ったパンだということに気付く。

贅沢を言うわけじゃないが、夕飯にパンなどとは結構ケチだ。
正直パンはあまり好かない。
それでも、と私はそれを口にする覚悟を決めた。

「…いらねぇのかよ。」

一向に動かない私を見て、ドア元に寄りかかっている彼は私に尋ねる。
そんな彼を、私は心から馬鹿なんだろうな、と思った。
それを口にするのにも躊躇はなかった。

「…馬鹿じゃないの。」
「…あぁっ?」
「両手が塞がれている状態でどう食べろって言うの?まさか足で食べろって言うわけじゃないわよね。確かに女の子の方が男の子より骨が柔らかいという話は聞いたことがあるけれど、手のサポートなしで足を口元に持っていくなんて訓練なしの私に出来るわけがないでしょうが」

皮肉のように、淡々と事実を吐き出す。
それが無力で無力な私の唯一の抵抗にも思えて、思わず自嘲気味な笑みを浮かべた。

「…しょうがねぇな。」

そういって彼は私のもとへ歩み寄る。
あーんしてくれるの、と聞いたら馬鹿かと一蹴された。

64:(」・ω・)」うー!(/・ω・)/にゃー! ◆4AUw:2013/12/30(月) 20:18 ID:mm.

彼は私の目の前に立つと、屈みこんだ。
一瞬まさか唇を奪われ…なんて馬鹿な考えが頭をよぎったが、ここは少女漫画の世界じゃない。
少女漫画の世界でさえ、こんなロマンやムードの欠片もないキスなんて嫌だ。

金属と金属が擦れあうような音と、手首に伝わる振動に、私は彼が何をしているのか把握した。

「ほらよ。」

言葉と同時に手首が軽くなったような感触がして、私はゆっくりと腕をおろす。

「っ、」

長い間ずっとその格好でいたせいで、少しでも動かせばまるで真っ直ぐな骨を無理矢理曲げているような痛みが来る。
その痛みに耐えつつ、少しずつ少しずつ私は腕をおろしていった。
じぃんとした痺れも感じる。まるで誰かに腕を針でちくちく刺されているような不快感に、思わず眉を寄せた。

「大丈夫か?」
「次手首を拘束してくれる時は、せめて上じゃなく後ろあたりでしてくれると有難いわ。」

そりゃ悪かったな、と苦笑する彼は、手錠の鍵を自らのズボンの後ろポケットに入れた。
勿論、それを見逃すほど私の目は馬鹿じゃないけど。

もしかしたら後々チャンスを見つけて脱出できるかもしれない。
その時、情報が多すぎて困ることはないのだから。
これが彼の癖で、いつも鍵が後ろポケットにあるのかもしれないし…。

「まだ痺れてるのか?」
「少し、ね。そりゃああんなに何時間と腕を強制的にあげてたら、痛まないものも痛むわよ。」

何とか手を交互に摩り、痛みを和らげながら私は再び見上げた。
格子窓の向こうに見える綺麗な月。
ここにはあれくらいしか見るものがないから、もう見飽きてしまった。

「…今はもう何時?」

いまだに痺れと痛みをもたらす両腕を、我慢しながら私は食べ物に手を伸ばした。
今ようやく気付いたけど、パンのほかにお茶が入ったペットボトルも投げ捨てられていた。
「おーい」とかいう、今この状態で読むと少し、無性に、何故か腹が立つ名前の緑茶と、
「甘いパン」…

「…甘いパンって、もうちょっと気が利くようなパンとかなかったの?ただでさえパンは好きではないのに。っていうか夜にパン自体おかしいわよねチョイスとして。」
「うるせぇ取り上げんぞ」

流石に腹が立ったのか、不機嫌そうな声を出す彼に私はしぶしぶと息をつく。
今まで拘束されていたせいでまともな座り方が出来なかったから、ようやくちゃんと座り直すと体中の疲れがおちていく感覚がした。

「今は、丁度真夜中1時半だな。」
「寝ないと身長伸びないわよ。」
「…てめぇもな。」

失礼ね、もう165pあるんだからあらかた十分よ。
…にしてももうそんな時間か。

私はおもむろにパンの袋を引っ張って開け、押し出して出てきたパンにかじりつく。
微妙な甘さが口全体に広がり、私は口を止めた。

やっぱりパンは苦手だ。

65:(」・ω・)」うー!(/・ω・)/にゃー! ◆4AUw:2014/01/13(月) 22:26 ID:mLE

がちゃん、と無機質な音を響かせて、扉はしまった。
食事中くらいはそっとしておいてやろうという配慮だろうか。

扉が開いたときに見えた、光の向こう。
すぐ目の前にあったテーブルには幾多の酒瓶の数々。
そしてまるで戦争に勝った後のような騒ぎようと、酒に酔って顔を真っ赤にさせているあの本職の人。

その光はすぐに閉ざされて暗闇が包み込んだけど、その一瞬の間で少し理解した。
この扉は防音、鍵はかかっていない。
扉の外にはいつも誰かがいる。
その三つのこと。

私は食べかけのパンを袋に戻し床に置く。
すぐに立ち上がるが、痺れが足を包んでうまく立ち上がれない。

「っ、」

その結果として転ぶこととなったが、今はそんなことを気にしている余裕はない。
いつさっきの男が戻ってくるかわからないのだから、早めに行動しないと。
でこぼこが激しい冷たい床に触れ、瞬時に膝に血が出ているなと理解しながら私は再び立ち上がった。
いつの間にか裸足にされたのか、ひんやりと伝わる床の冷たさに身じろぎした。
それだけじゃなく、痺れのおかげで足全体を針で刺されているような気持ちの悪い感触に、思わず飛び上がる。

「ちっ、ここから脱出は無理かな。」

痺れをこらえながら壁に沿って歩いていく。
その間も耳を過敏に済ませ、いつでも先ほどの男が帰ってきてもいいように備える。
言葉通り、この部屋には扉以外に出口がないようだ。
例の格子戸は、私の身長のはるか上だし、ジャンプしても掠るだけだ。
もともと運動神経のない私に、格子を握りしめてぶら下がるなんて芸当は到底できやしない。

「…そしたら、残るは、」

私はもともと繋がれていた手錠を見てみた。
シングルロック形式の手錠で、これならやりやすい。
私はちょうど髪につけていたヘアピンを外し、大きく開いた。
そして短い方でロックのいじくりまわす。

「…やりぃ」

普段言いそうにない言葉も、かちっという音がしてしまった手錠を見れば許される気がした。
すぐに私は鍵を解除し、ヘアピンを隠す。
それとほぼ同時に、再び人工的な光が差し込んだ。

「…なんだ、食欲ねぇのか。」

直前にしっかり座り直していた私は、右手に一口しか食べてないパンを握りしめていた。
お茶もあけられてもおらず、私はパンを床に戻して代わりにペットボトルを拾い上げた。

「…パンは嫌いなの。ぱさぱさするから。」
「…そうかよ。」

お茶は美味しいけど。

66:(」・ω・)」うー!(/・ω・)/にゃー! ◆4AUw:2014/02/21(金) 16:04 ID:FDg

もそもそ、と無理矢理お茶を使って飲み込みながらパンを咀嚼する。
液体のせいでボロボロに柔らかくなったパンの味は、なかなかどうして不快だ。
でも与えられるものは食べないと、腹が減っては戦は出来ぬという事実に打ち負けてしまう。

「御馳走様。」
「お粗末様。」
「まずかったわ。」
「失礼だなてめぇ。」

いちいち私の言動一つ一つに反応してくれるこの人も、根は悪い人じゃないはずなんだけど。
それでも敵は敵だと無理矢理割り切り、私はふんと鼻を鳴らす。
足を組んで座れば、いよいよ男は眉根を寄せて聞いてきた。

「…お前、怖いーとか、助けてーとか、そんなものねぇの?」
「言って助けてくれるなら言うけど?「たすけてー」?」
「…いや、もういいわ。」

呆れてものも言えないのか、唖然としてものも言えないのか、
どちらにせよ男は手で顔を覆う。

生憎、アニメや漫画のように恐怖は湧いてこなかった。
こんな恐怖は、今まで私の経験してきた恐怖に優ることはないと思っているからなのか。
でも不思議だ。
焦りや心配はあるけど、こんなに冷静で心穏やかなのは、驚きなんだ。

「お前を人質にして、あいつら助けに来ると思うか?」

向こうもよっこら、と足を組んで座り直す。
なかなか容姿が整っているせいで、そんな格好もなんとなく様になる。
真剣そのものの表情に、私は思わず目をそらしてしまった。

「…来るんじゃないかしら。」
「なんでそんな自信満々に言えるんだ?確証があるのか?自分は愛されてるって?」
「違う。」

けらけら、とからかうように言ってくるその男に、私は嫌悪感を隠さずに言い放った。
刺々しい私の声に、怒るなよと申し訳なさそうにする。
ころころと表情が変わる男だ。なんとなく頬を叩きたくなる。

「あの人たちは、優しいから。」
「――…優しい?」

冗談だろ?と続けられる言葉。
まるで仲間を侮辱されたような感じがして、思わず私は彼を睨む。
すかさず謝ってくるが、心をこめているのか分からなくて私は嘆息した。

「あいつらが優しいって、そりゃねぇだろ。冗談じゃなく。」

すぅっと目が細められて、本気で言っていることに気付いた。
じっと意志の強い瞳に睨まれて、悲しいかな蛇に睨まれた蛙のように動けなくなった。
そうか、この人もこれでもヤクザの一端なのだろうか。

「あいつらは俺らんとこの奴らに手を出しやがった。容赦なく。そのうちの一人は、今でも精神病院通ってる。」
「…あなたたちが何か仕掛けたんじゃないの?」
「してねぇよ!!!」

いきなり声を荒げられて、びくりと私の肩が震える。
息荒く、だがねっとりとした視線で睨まれて、ようやく恐怖を感じた。

「…ざけてんじゃねェよ。」


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