「怪しい月の晩にはご用心を…」
月に照らされた影法師が呟く。
星の煌めきさえも失せるようなほどの輝きをもつものが影法師の後ろで怪しく輝く。
どうしても続かないそよかぜです。
いや、最後まで浮かんでるけど中々書く時間がね、うん←
今回こそは続けたい様な。一番書きたかった話かもしれない…
ファンタジーイエイ!!
小、中、高となんの楽しみもなく過ごしてきた。
対して目立つこともしないで、ただ椅子に座って授業を聞き流すだけの時間。
それも案外つまらなくもなかった。”人間観察”としてクラスメイトで遊ぶ。
学校はただ彼女の遊び場でしかなかった。
黒いミドルロングの髪をなびかせてとある大学へ足を運ぶ彼女。上野翡翠。
その隣には初めて友と呼べる人、暮井莱がいた。
「でね、昨日弟の明がね、面白いことしたのよ〜」
「へぇ…どんなの?」
思いだし、時間差で吹き出すほどの莱の話に少し興味を示した様で乗り気ではないが聞き返す。
「それがね、夕飯食べててさ〜明がいきなり『明日、明後日、明明後日。いつかのあの日に飛んでいけ〜』とか歌い出してね。お父さんが『煩い!!』って言おうとしたんだけど間違えて『うるはい!!』って言っちゃって…」
そこまで言い終えると今まで我慢していたのか一気にブハッと吹き出した。
そもそもこの話の中にそんなに笑える要素があるのか!!無駄な時間を使わせて…
と怒りが込み上げてくる。
でもその飾り気のない笑顔に悪気はなく、何故かみていると怒りさえもが失せてしまう。
だから一緒にいても疲れないのだろうか。
初めての友達。
翡翠にはその存在がいるだけで生きる気力が溢れるのだった。
大学が見えてきたところで、「もう兄弟でコンビ作ってお笑いやったらいいんじゃないか」ということで話はまとまった。
翡翠には何故だかこの話を前にも聞いたような気がして仕方がなかった。
目の前に広がる大学の象徴とも言えるたくさんの木々。
これも何処かで見たような気がした。
大学に入ってからは毎日見ているが、それよりもずっと前。
幼い頃に一度、見たような…
この大学だって、前から入りたかった訳ではない。何かに導かれるようにしてここに決めてしまったのだった。
ここに決めて不自由はない。初めての友達も出来た。それに、気になる人も。
鈴山心。特に関わりはないが、何故だか気になってしまう。声も聞いたことがなく、こうといってときめいたりすることもない。
本当に好きなのだろうか、と考えたこともあった。
「翡翠〜、ボーッとしてんの?」
立ち止まり、目の前の木々を見つめていたところで莱の能天気な声が耳に入った。
「ごめん、ごめん。ちょっと考え事しててさぁ…」
「翡翠、最近考え事多いよねぇ」
雲に隠れていた太陽が顔を出し、辺りが少し明るくなった時だった。
門の近くからだろうか。その辺りから足音が響き始めた。
「あ、翡翠!!後ろ、後ろ!!」