silent night

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1:DDB:2012/12/19(水) 01:43 ID:ez-Gjw

高い丘
静かな夜に角を生やした少女は立っていた

彼女は鬼。
永遠にも近い命と呪われたような運命をもって生まれた

「…町明かりが綺麗」

少女は安堵した表情で小さな村を見ていた。

「私の可愛い弟妹…今行きますから」

その言葉と共に少女は音もたてずに姿を消した

2:DDB:2012/12/19(水) 02:03 ID:ez-ArY

美代子―…

「…んっ、うわぁぁ。」

私はうなされながらに布団から起きた

最近美代子―…と夢で呼ばれては起きてしまう

私の名前は真結。決して美代子などという名前ではない

「もう…なんなの一体…」
愚痴を言いながら長い髪を結い寝具を上げた

「真結〜!!何時までねてるの!!」

朝から母さんの怒鳴り声とかついてないなぁ

ったく花のお江戸には似つかわしくないったらない

私は着物を選びとっとと居間へ走り出した

「近くには綺麗な遊女がちらほら居るのに私達の酒屋ったら男勝りな女ばっかり」

居間に降りるやいなや溜め息混じりに悪口をたたく

「遊女?あんたね無駄な口叩かずちゃっちゃと買い出しに行くんだよ!!」

寝起き早々母さんの足蹴をくらった私はしぶしぶと買い出しへ向かう

母さんが私に買い出しを頼むのはいつも決まっていてつまらない

私はすぐ近くの豆腐屋にいくと

「豆腐屋!!いつものおくんな!」

私が大声で言うと豆腐屋にしては威勢のいい声が帰ってきた

豆腐を待っていると後ろから打って変わって何やら優しい声が聞こえた

「おやおや威勢のいいお嬢ちゃんだこと」

3:DDB:2012/12/19(水) 19:40 ID:ez-Ico

「お菊さん!!」

お菊さんは吉原の下働き。でも動きの綺麗さとか本物の遊女、花魁のよう

私が惚けているとお菊さんはいきなり猫騙しを仕掛けてきた

また驚いてぼけっとしてると私に微笑んできて

「どうかなさりましたん?」

心配そうに覗き込んできたから私は大丈夫と小さな声で返した

お菊さんも買い出しに来たのか豆腐を一丁頼んで私を見る

「今朝方家の前通らせて頂いたけど吉原の話女将さんしてはりました
もしや真結さん吉原に憧れとんの?」

私はいえいえと大袈裟に振る舞い

「別に憧れていないさ」

と今度は大きな声で否定する

お菊さんは物悲しそうに微笑みながら静かに口ずさんだ

「身売りするぐらいなら死んでまったほうがマシや」

私は驚くばかりだった。
驚いてる間に二人が頼んだ豆腐は桶に入れられていて
お菊さんは足早とお店へ戻った

4:DDB:2012/12/19(水) 21:27 ID:ez-J1k

豆腐屋への買い出しで今日が始まるような私の1日

でもお菊さんの事もあったからちょっとご機嫌斜めな訳で

ふと昔を振り返っていた

母さんが孤児(みなしご)の私を引き取ったのは7年も前で私がまだ8つにも行かないとき

私は記憶をなくしていて本当の自分の名なんて知らない

きっとその名が美代子なんだろうけれど私にゃわからない

何で今更ってな感じもするものだ

「あ〜頭が痛くなってきた。仕事しよ仕事」

母さんの怒鳴り声を聞きたくない私は店の接客を手伝いに行くことにした

5:DDB:2012/12/20(木) 23:41 ID:ez-vvI

「最近物騒やわ」

常連さんが母さんと話していたのは最近の事件

どうやら最近夜な夜な歩いては通行人を斬るという

人斬りが頻繁にあってるらしい

大体人が居ない深夜に行われる犯行で

目撃者は居らず犯人は目星もつかないそうなんだ

人斬りか…世の中何があるかわからんな

私もたまに夜に買い出しやら何やらで通る

別に夜ね町吉原が近いので暗いという訳でもなくむしろ明るい

ぼけっとしていた私の頭に急に激痛が走る

母さんが拳で殴ったのだ。男勝りな婆だからそりゃ激痛だ

「母さん痛いじゃん!!何すん!!?」

母さんは何食わぬ顔でさっさと仕事しろとばかり睨んできた

はあ…今日は災難な日々だ

6:DDB:2012/12/21(金) 23:47 ID:ez-Ico

今日も物騒な世の中とは思えない平和な1日だった

「女将さん繁盛してはります?」

そう言ってお菊さんが店に出向いて来たのは夕方。

白粉をつけているからきっとこれから仕事なんだろう。

母さんはお菊さんが苦手だ、遊女自体は嫌いじゃないけど

なんだかお菊さんの雰囲気が苦手らしい、私にはよくわからないけど

「お菊さん、相変わらずやね」

母さんは強張った笑顔でもてなした。

「女将さん私、この町出て行こ思うんです」

え?その一言で一瞬ぽかんとなってしまう。

急に親しい人が出て行くなんて誰が想像するんだって話

私は感情が抑え切れず卓袱台を叩いて聞いた

「なんで!?なんでなん!?」

「身売りなんてしとうもない」

大声で聞いた私に驚きもせず思い詰めたようにも見える表情でお菊さんは続ける

「身売りなんてするぐらいなら身投げして死んだ方がマシや」

その一言が先日の事を思い出させた

私も母さんも何も言えなかった。

むしろこんな時でも作り笑いしてる母さんが腹立たしい

お菊さんは遂に静かに泣いてしもうた。


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