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1:ブラックキャット:2012/12/21(金) 15:28 ID:bAY

プロローグ

『月が紅く光る時
 彼の心の扉が閉じるだろう
 
 空が紅く染まる時
 彼女の心に癒えない傷が残るだろう』


「誰、誰っ……!?」
少女は頭に手を当て、しゃがみ込んだ。
「誰、誰なの?響夜?響夜なの?」


見えない声の正体は分からないまま
少女の頭上で、哂う様に紅い月が光っていた。

2:ブラックキャット:2012/12/21(金) 15:30 ID:bAY

【あいさつ】

どうも、ブラックキャットです。
面白くないと思うのですが、できればコメントお願い致します…
それから、これは私のオリジナルですので。一応念のため。

3:ユズ:2012/12/21(金) 15:42 ID:kwE



ブラックキャットさん!
ほかにも小説やってますよね!?

ブラックキャットさんの小説みたいです!!

4:ユズ:2012/12/21(金) 15:47 ID:kwE



http://ha10.net/novel/1338018223.html

ちがいますか?

もしかし、名前が一緒なだけ・・・・?


IDがちがうんですけど・・・

ケータイから・・?

5:ブラックキャット:2012/12/21(金) 16:01 ID:bAY

#1

『ピーンポーン』
玄関のチャイムが聞こえた。
机に向かって本を読んでいた【夜神 夢羽】は、顔を上げた。
インターホンで相手を確認しようと1階に降りると、母が「大丈夫よ、夢羽は部屋にいらっしゃい」と言った。
今日は親戚同士での食事会になっている。
年に3回ある、夢羽にとって最も無意味に思える時間。
椅子に座り直し、ページに挟んだ栞を抜くと


ガタン!



1階から物音がした。それに続いて、声が聞こえる。
普段物静かな母にしては珍しい。
母の言葉を守ろうか、様子を見に行くか―…
少し迷って、夢羽は少しだけ様子を見に行く事にした。
13段ある階段をすっ飛ばし、床に音も無く着地する。
黒く長い髪が一瞬だけ重力に逆らった。
「お母さん…?」
廊下を曲がろうとした夢羽の足が止まった。
「貴方……誰…?」
自分でもやっと聞き取れるような声。
そこで母の声が耳に入り、我に返った。
「将夜さん……!どうして、此処に来たの?」
夢羽は凍りついた。
(将夜さん………?)
多分、相手は、男。
夢羽には父が居ない。母に何度聞いてもまともな答えは帰ってきたことは無かった。
けれど、夢羽が「もしかして、死んじゃってるの…?」と聞いたときは、「そんな訳無いでしょう!馬鹿な事言わないで!!」と怒鳴られたことは、はっきりと記憶に残っている。
「もう離れないと約束するよ……綾音」
知らない男の声。
あの言葉の様子だと、たぶん母の知り合い以上の関係だろう。
パニックになりそうになった夢羽は、今更気付いた。
自分の目の前に


鏡を見ているような
夢羽にそっくりな


男の子が居ることに。

6:ブラックキャット:2012/12/21(金) 16:05 ID:bAY

toユズさん

あ、はい。怪盗ジョーカーの作者です…
あ、えっと…たまに別のパソコンからすることがあって、たまにID違いますけど、気にしないでください。

7:林檎:2012/12/21(金) 16:06 ID:CGY

多分同じ人だと思います。
IDは、変わる事もあるので

8:ブラックキャット:2012/12/21(金) 17:21 ID:bAY

夢羽が固まっていると、母が廊下に顔を出した。
「夢羽……」
「…お、」
(お母さん、どういう事なの?)
そう言おうと思ったのに、声が出なかった。
「夢羽か……?夢羽なのか?」
見知らぬ男が近づいてきた。思わず一歩後ずさる。
夢羽の顔の恐怖を読み取ったのか、母が夢羽の頭に手を置いた。


「夢羽のお父さんと、弟よ」


ふと見ると、男の横にさっきの男の子が居た。
「すまないね、自己紹介しなければ逃げられるのもしょうがないな…神川将夜。夢羽の実の父親で、【神川 将夜】だ」
父が、男の子を肘でこづく。
男の子は、ムッとした眼で父を睨んで口を開いた。
「…【神川 響夜】。夢羽の弟」
(お父さん……弟…)
何も知らないのは、どうやら夢羽だけらしい。
母が夢羽の顔を覗き込んだ。
「夢羽……?」


パンッ


夢羽は母の手を払いのけた。心に罪悪感が広がったが、気付かないフリをして自分の部屋に入った。
「夢羽!!」
知らせてくれなかった、でもそれより。
ドアを閉めて、ズルズルとしゃがみ込んだ。
「馬鹿だ、私…」
怒りよりも哀しみの方が大きい。母の顔は見なかったフリなんてできない。
「…あんな顔、見なかったフリできるほど、私は、強くないよ……」
放っておくと涙が零れてきそうだったから、夢羽はパソコンを出した。
椅子に座ると、部屋のドアが開いた。
そこに居たのは、響夜だった。
「………えっと、「…時間、いい?」

9:ユズ:2012/12/21(金) 17:24 ID:kwE



おもしろぃ!

楽しみ〜〜♪

10:ブラックキャット:2012/12/21(金) 17:58 ID:bAY

「言い訳と思うかもしれないけど」と前置きして、響夜はベッドの端に腰掛けた。
「僕も、知らなかったんだ。……今日、初めて知らされた」
夢羽の中に、響夜の声にすがりたいと思った自分が居た。
「お母さんに…悪い事しちゃった、よね……」
響夜は夢羽を見た。


「……相手が家族だからこそ、打ち明けにくいこともある。……そう思わない人の方が多いだろうけどな」


そう言った響夜は哀しそうに笑った。
夢羽は、響夜を見た。
心の中にはひとつだけ。


「…私と……同じ、だね…」

油断した瞬間、涙が零れた。

11:ブラックキャット:2012/12/23(日) 22:38 ID:bAY

「行って、きます…」
小さく呟いて、家を出る。まだ少し暗い空を眺めて、1歩踏み出した。
冷たい風が吹いて、セーラー服のリボンを揺らした。
もう全て葉が散ってしまった街路樹を眺めながら歩いていると、後ろでドアが開いた。
見ると、響夜が走って来た。
「夢羽、待てよっ!」
「……どうしたの?」
今日は学校がある。
夢羽は現在中学1年生。電車通学で、普通の人よりも早い時刻に家を出る。
「僕も、一緒に行く」
夢羽は、今気付いた。
夢羽の通っている、私立花園学園の制服を響夜が着ている。
「あ、そっか…転入生か」
今更かよ、と突っ込まれた。




     ☆




教室に入ると、一瞬だけざわめきが止んだ。そして、また戻る。
夢羽は俯いて、響夜を見た。
「…ここが、教室」
響夜は、「…ふーん」と興味無さそうな顔をしている。
「……ちゃんと皆と仲良くできるの?」
口の中で呟いただけだったけど、
「友達なんか要らないよ。……夢羽だってそうじゃないのか?」
意外と耳がいいらしい。
「…まぁ、……そうね。」
そこで、担任が入ってきた。
「はい、皆座ってー。転入生を紹介しまーす。」


「……よろしくお願いします」
響夜が頭を下げる。
クラスの夢羽以外の女子が、「「「「かっこいい……」」」と呟いた。

休み時間には、響夜の周りにはあっという間に人だかりができた。
当の本人は青い顔をしている。
(人ごみは嫌いなんだよ)
と聞こえた気がした。
やがて我慢の限界なのか、響夜は「ちょっと……失礼します」と逃げ出した。





『キーンコーンカーンコーン…』
チャイムが鳴ると、響夜はバッと机に伏せた。
「…初日、お疲れ様」
「……疲れた」
その答えに夢羽は微笑んだ。
家に帰ると、母とも父とも眼を合わせられなかった。
なんとなく、……気まずい。


この日が、最後となるのを知らなかったから

12:ブラックキャット:2012/12/23(日) 22:51 ID:bAY

(今日は…なんだか、胸騒ぎがする……)
電気を消した部屋の布団の中。まだベッドが無いからと、響夜と同じ空間に居る。

真っ暗なのに、なぜか感じる安心感。

背中に感じる微かな温もり。

それに引き込まれるように、夢羽は眠りの世界へと旅立った。




     ☆




真夜中、夢羽は眼を覚ました。
なんだか、焦げ臭い。
隣で眠っている響夜を起こす。
「ねぇ、響夜…」

んん、と響夜が体を起こした。
「……何だ……?このにおい…」


階段を見に行くと、紅い、炎が見えた。

13:ブラックキャット:2012/12/24(月) 13:43 ID:bAY

夢羽は体が固まって、そこから動けなくなった。
「あ、…あぁ……」
小さく、悲鳴のような声を漏らすだけで精一杯だ。
ふと見ると、煙はもう目の前にある。響夜がハンカチを夢羽の口元に当てた。
「火事かっ…!父さんと母さんは!?何処に居るんっ…」
肩を叩かれて振り返ると、父が立っていた。すすだらけの顔で、母を抱えてる。
「煙を吸うな、姿勢を低くして進むんだ。…1階からは出られないな。」
夢羽は頷くが、足が動かない。しまいには、煙を吸って気を失ってしまった。
響夜が夢羽を抱え、父の後について歩き出した。


「時間が無い、2階から飛び降りろ!」


響夜は後ろを振り向いて、後ろに両親が居ることを確認した。
父が「そうだ」と呟き、紙袋を渡した。
「…何だよ、これ?」
聞いてみても、「早く行け、時間が無い」と言うばかりだ。
深呼吸したかったが、煙を吸うわけにもいかないので、小さく息を吐いた。


「じゃあな、2人で生きていくんだ」


父の言葉が聞こえた時には、既に空中に居た。
腕の中には夢羽が居る。
庭に着地すると足に衝撃が来て、しばらく動けなかった。

「父さんっ、どういう事だよ!?」
呼びかけても、父の言葉の代わりに聞こえたのは


家が崩れた音だけだった。

14:ブラックキャット:2012/12/25(火) 13:26 ID:bAY

「父さんっ……母さっ…!」
ふと下を見ると、地面には水の後が無数も付いていた。
どうやら、泣いているらしい。
自覚すると、頬が冷たい。

腕の中の夢羽は、眠っているように見える。


“2人で生きていくんだ”


父の言葉は、涙を含んでいるように聞こえた。
もし、そうなら……
「どうしろって言うんだよ、父さんっ…!」

その言葉は、本当に頼りなくて。
自分でも情けなくて。
居なくなってしまった2人は、大きな存在だったことを
嫌でも思い知らされた。

「何で、」
言ったって仕方ないことは分かっているのに
止められなかった。


「何で死んじゃったんだよっ…!」


響夜の言葉は、消防車のサイレンにかき消されることなく
夜の空に響いた。


頭の上に三日月が浮かんでいた夜だった。

15:ブラックキャット:2012/12/25(火) 13:30 ID:bAY

人影が、コートのポケットに灯油缶とマッチを入れた。


「…いい気味だ。」


ニヤリと笑った口で言った。
フードを被り直し、人影は足早に去って行った。

それを見ていたのは、月だけ―………

16:ブラックキャット:2012/12/25(火) 18:19 ID:bAY

白い病室。
窓にはカーテンが閉められている。窓の外は、もう明るく染まり始めていた。
ベッドには、夢羽が横たわっている。
夢羽は、軽い一酸化炭素中毒で病院へと搬送された。
「気を失っているけど、すぐに目覚めますよ。安心してください」
「…ありがとうございました」
頭を下げて、下を向いた。


「……ッ……ホッ、ゴホッ」
「夢羽っ!!」
咳を聞いてこんなに喜んだことってあったかな、と本気で思った。
夢羽は体を起こした。
「響夜っ……!」

響夜は目を伏せた。
分かる。
次に出てくる言葉が。
僕が言った答えに、夢羽がどんな風に反応するのか。

「お母さんはっ……お父さんはっ!?」
響夜は夢羽から顔を背けた。言えない。泣かれるのは分かってる。
「母さんと、父さんはっ……」
そこからは、痞えて言えなかった。
でも、夢羽は待った。次の答えは分かってるはずなのに。


「死んだっ……死んじゃったよっ……」


あの夜の風景が脳内を駆け巡る。
胸が苦しくなって、涙が零れた。
頭の上に手が乗った。
「ごめんね、思い出したくなかったよね、ごめんね…」
夢羽は優しく撫でた。
「本当、ごめんっ……」
涙が零れたのが見えた。上から。



「そこまで子供じゃないよ、馬鹿」
響夜の言葉に、夢羽は微笑んだ。

17:ブラックキャット:2012/12/27(木) 10:55 ID:bAY

足取りは決して軽くは無かった。
両親の葬式なんて、足取りが軽いはずが無い。
「ありがとうございました、芽衣姉さん」
【神川 芽衣】将夜の妹。
「良いのよ、これくらい。…これくらいしか、私に出来る事なんて無いから…」




     ☆




どん、と誰かが夢羽に当たり、夢羽がよろけた。
「そこ、邪魔なのよ!さっさと入りなさい!!」
「……綾乃…さん…」
【夜神 綾乃】母、綾音の姉。かなりケチで、厳しい。


2人の後家人。

18:ブラックキャット:2012/12/27(木) 10:56 ID:bAY

誰も泣いていない。
それより、笑っていた。

『いい気味』
―と。

19:ブラックキャット:2012/12/27(木) 17:30 ID:bAY

「ねぇ……本当に行くの?」
「もちろん。…決めたからな」
その日の夜に、2人は家を出た。




     ☆




近くの公園の、桜の木。
夢羽は、花が散り始めた木を見上げていた。
「…懐かしいなぁ……」よく此処で、お母さんと遊んだのよね。
思い出が溢れて、我慢が限界に達した。
「…ッ……お母さんッ……」
雫が落ちて、地面に痕を作っていく。
「夢ー羽」
響夜の声がして、上を向くと何かが落ちてきた。
「何、これ……」
手を伸ばして気付いた。これは


毛虫。


見る見る涙が引いて、青くなる。
「いやあぁぁぁぁーーーっっ!!!」
木の上から笑い声が聞こえた。響夜だ。
顔に血が上る。
「響夜の馬鹿っ!!」
「ははっ…ははっっ……くぁっ…」
当の本人は
「あっはははっ………はははっ……あぁっ…くくくっ」

相変わらず笑い転げている。

20:ブラックキャット:2012/12/30(日) 11:54 ID:bAY

翌日の朝、まだ朝日が昇る前。
夢羽は目を覚ました。慣れない所で寝たためか、眠りが浅く頭が重い。
隣を見ると、響夜はまだ寝ている。
夢を見ているのか、何やらブツブツ呟いている。
思わず微笑むと、視界の端に手帳が映った。
黒くて、ペンが付いている。
誰のだろう、と思いながら手帳を開くと、顔が引きつったのが分かった。
ページをめくっていくと、どんどん顔が曇っていく。



  “愛人の息子、響夜が生まれた。”
  
  “響夜の母が亡くなり、しょうがないから綾音との娘の夢羽と一緒に育てることにした。”

  “2人は血が繋がっていないが、我慢してもらおう。”

  “「いつかは、言わなきゃいけないのよね…」と綾音が言った。”
  
  “馬鹿馬鹿しい。言う必要は無いだろう。”



―――どういう事?

21:ブラックキャット:2012/12/30(日) 18:48 ID:bAY

夢羽は其処に立ち尽くした。
「嘘……嘘………」
そんな、と響夜を見る。
「お父さん……」


―――赤の他人だったの?私達は。


何分そうしていただろう。
夢羽はやっと思考を落ち着け、ひとつの結論にたどり着いた。

真実か、嘘か―――
そんなの、関係無い。
私は、響夜の姉。誰がなんと言おうと。

22:ブラックキャット:2012/12/30(日) 19:10 ID:bAY

#2

後ろから、声をかけられた。
「ちょっと、君達」
振り返ると、制服姿の警官。パトロール中だろうか。
響夜は、警官に向き合った。
「…なんですか」
「こんな時間に何をしているんだ?ご両親は?」
来ると思った。

「亡くなったわ、一昨日」




     ☆




「一体どういうつもり!?」
綾乃のキンキン声が部屋に響いて、夢羽は顔をしかめた。
「いいこと?これから家出なんて馬鹿な真似をしたら施設行きよ!!貴方達のお金は私の者になるから、それでも良いんだけどね!!」
オホホホホホ……と高笑いが遠ざかる。
響夜は耳栓を抜いた。
頭がキンキンしてきた夢羽は、ベッドに倒れこんだ。

その拍子に、手帳が床に落ちた。
それを拾ったのは、響夜だった。
「なんだ、これ……」
ページをめくり、問題のページを見つけた。


「―――んだよ、…それ……」


夢羽が体を起こすと、響夜は苛立ちを隠そうとしないで、手帳を睨んでいた。
「あっ……それ………」
“響夜に聞こうとしてたのよ”と言おうとしたら、響夜は夢羽を睨んだ。

「夢羽は知ってたのか?」
そこで正直に答えてしまう自分が嫌だ。
頷くと、響夜の怒りの矛先は夢羽に向いた。
「何で、教えてくれなかったんだよ!?隠そうとしてたのか!?」
「ち、違っ…!」
頭を横に振ると、響夜は「じゃぁ、何なんだよ?」と言った。
「か、隠そうとは考えてなかったわ。ただ………タイミングを見て、聞こうと思ってたの」
「そんな訳無いだろ。夢羽は、そんな事言ったって、絶対言わないだろ!」


―――今考えると、そこで頭に血が上ってしまった私が馬鹿だったんだと思う。

23:ブラックキャット:2013/01/15(火) 20:13 ID:bAY

「何よ、それ!私の事どう見てたのよ!?」
「弱虫の意地っ張りだ!」
ぐぅ、と声が喉の奥に沈む。
当たってる。


―――当たってるからこそ、悔しい。



「だからって、私は秘密は持たないようにしてるの!つらいから!!」
「つらいからって言ったって、そんなの逃げてるだけじゃないか!人間、誰だって秘密を持ってるものなんだよ!」


“逃げてる”


その言葉が刺さった。分かってる。分かってるけど


胸が痛い。


気が付くと、私の頬を冷たいものが伝っていた。
響夜は、部屋を出て行った。

24:ブラックキャット:2013/01/19(土) 19:31 ID:bAY

『逃げてるだけじゃないか!』


響夜の言葉は、鋭利な刃物のようで。
感じ方は人それぞれだけど、夢羽には深く刺さった。
でも、


―――どうして響夜が泣いてたの?


響夜が泣いたのを初めて見たのは、両親がなくなった次の日。
床に残っている水の痕は、夢羽の物じゃない。
心がもやもやして、気持ち悪い。


ティッシュで、床を念入りに拭う。
きっと、


響夜は、此処に残っているのを望んでいないから―――

25:ブラックキャット:2013/01/21(月) 21:26 ID:bAY

机の、鍵の掛かっている引き出し。
僕は其処を開けた。その一番奥。
指で摘まんで出したのは、茶色い封筒だ。



―――――まだ何も知らなかった、あの頃。

何処で、歯車が狂ってしまったんだろう?

「……運命って、気まぐれだよな」
そうかもしれないね、とあの人は笑った。


あの頃は信じていた、
貴女の笑顔は、


偽物だったんだな。

26:ブラックキャット:2013/01/25(金) 21:02 ID:bAY

知ってしまった、貴女の顔。
裏切られていると分かっていて、貴女を僕は愛し続けた。


あの日に戻れたら―――
あの時、貴女に出会わなければ――――


―――――僕は、泣く事も無かったのにな。


思い出しそうになった記憶を、頭を振って追い出す。
少し早いけど、僕はベッドに潜り込んだ。

27:ブラックキャット:2013/02/03(日) 17:38 ID:bAY

――――嫌な夢を見た。見た原因は分かっている。
ただの記憶も、夢となるとかなり……怖い。
汗で、背中が冷たいが、構わずにまたベッドに潜り込む。寝られるかどうかは分からないが。


     ☆


まだ重たい瞼を擦りながら、響夜は階段を下りる。
階下では、がやがやと会話が繰り広げられている。
まだご飯も食べてないのに…。と響夜は綾乃の顔を思い浮かべる。これから、あの会話の中に入るのだと思うと、回れ右して自室に駆け足で戻りたい衝動に駆られるが、精神力で抑える。そんな事をすれば、夢羽によって強制償還される事間違いなしだ。
「はぁ……」
重たすぎる溜息を吐く。気分は全然良くない。


響夜は観念して、出来るだけ変な事にはなりませんように―――と神に祈った。

28:ブラックキャット:2013/02/04(月) 17:03 ID:bAY

えーと、ちょっと此処で人間の整理をしたいと思います。(自分でも分け分かんなくなって来た所なので)

人物設定

〜夜神家〜
【夜神 夢羽】ヤガミ ムウ  私立花園学園中等部1年1組。
・響夜の双子の姉。
・涙もろく、感情的。鈍感な上に、その手の知識は皆無に等しい。
・運動神経が良く、成績は中の上。
・影が薄く、目立たないが、向き合ったら可愛い――――という具合。


【夜神 綾音】ヤガミ アヤネ
・夢羽と響夜の母親。
・物静かで、滅多に怒鳴らない。
・運動神経が良く、勉強は苦手。
・いつも笑顔を浮かべている。


【夜神 綾乃】ヤガミ アヤノ
・綾音の双子の姉。
・短気で、いつもイライラしている。
・運動も、勉強も苦手。
・きつい化粧をしたきつい顔立ちで、ブランド品が大好き。


〜神川家〜
【神川 響夜】カミカワ キョウヤ
・夢羽の双子の弟。
・表情を出すのが苦手。集中すると、周りの事が見えなくなる。
・運動は出来るほうで、勉強はトップクラス。考えるのが好き。
・転校する前の学校では、『神川 響夜ファンクラブ』という物があった。


【神川 将也】カミカワ ショウヤ
・響夜と夢羽の父親。長男。
・一見真面目そうだが、仕事が苦手。
・運動は出来る方だが、勉強は無理。
・顔立ちは……不細工ではない。


【神川 芽衣】カミカワ メイ
・神川家の次女。
・家事が得意で、真面目。
・運動はあまり得意ではないが、勉強も苦手。
・眼鏡は、本の読みすぎで掛けた物。


【神川 達也】カミカワ タツヤ
・神川家の末っ子。
・将也と芽衣との年齢の差が少しある。
・運動は得意で、勉強も出来る方。
・顔立ちも良い方で、将也に羨ましがられている。


えー…自分で言うのもなんですが、年齢がちょっとあやふやです…。
見てくれている方(いやしないけど)の想像で、ご勘弁を……

29:ブラックキャット:2013/02/05(火) 21:37 ID:bAY

「―――――……」
夢羽が顔を顰めたのが見えた。
響夜は黙って窓を開けた。眼に見えるくらい、タバコの煙が部屋に充満しているからだ。
窓から顔を出して、深呼吸する。
「夢羽!響夜!何ボケッと立ってんのよ!?」
綾乃の言葉に、2人は「「ならばどうしろと?」」と返した。
芽衣が、慌てたように間に入る。
「まぁまぁ…2人とも、そんなに怒らないで?あ、あそこ開いてるから。あそこに座ってくれる?」
2人はコンマ1秒狂わずにソッポを向いた。こういう事が出来るのは双子だけだ。
「…で、何の話なんですか、綾乃さん」


     ☆


「あんた達は、どちらかが芽衣さん、どちらかが達也さんと暮らすのよ」

夢羽はちらり、と響夜を見た。
響夜もちらり、と夢羽を見た。
眼で合図を取り、2人同時に席を立つ。
廊下に移動して、こそこそと作戦会議。

「…2人とも、胡散臭いな」
「そうね。……多分、同姓のほうが緊張しないだろうから…芽衣姉さん、かしら?」
「……どうだろうな」

席に戻り、夢羽が口を開いた。
「私は、芽衣姉さん」
「僕は、達也さん」

30:ブラックキャット:2013/02/17(日) 21:05 ID:bAY

「ふぁぁぅ……」
夢羽は体を起こした。


――――いつもより周りが広いのに気付くのには、そう時間は掛からなかった。


『いつまで寝てんだよ。遅刻するぞ』
『本っ当、寝相悪ぃよな。夢羽』
『早くしねーと置いてくぞ?』
響夜の声が、頭の中をぐるぐると渦巻く。


「そっか、響夜、居ない……んだった」


寂しさを紛らわそうと声に出したが、逆に寂しい。
ノックする音が聞こえて、芽衣が入ってきた。
「起きた?朝ご飯できたから、食べましょ」
「……うん」

夢羽は布団から出た。

31:ブラックキャット:2013/02/17(日) 21:12 ID:bAY

「…くぁっ……」
響夜はベッドの中で伸びをした。
夢羽を起こそうとした手が、空気を掴んだ。
「………あぁ……」

『待ってよ、響夜っ』
『ねぇ、今日はこれ、いるんじゃなかった?』
『少しくらい手伝ってくれても良いんじゃない?これが終わらないと学校行けないのよ』
夢羽の言葉が、心の中をぐるぐると渦巻く。


「……夢羽っ………」


布団を握り締める。
――――今更後悔してる?そんなの、もう遅いだろう。
響夜は、唇を噛み締めた。

32:ブラックキャット:2013/02/23(土) 16:45 ID:bAY

夢羽は、教室のドアの前に立った。
一気に開け放つ。
一瞬だけの、沈黙。
これ程、苦手な物は無い。響夜と一緒だった時は、こんなの全然気にならなかった――――
下がりかけた眼が捉えたのは、一番会いたくなくて、一番会いたかった人。


「―――響、夜」


誰にも聞こえなかった声。でも、響夜は振り返った。
「夢羽……」




     ☆




屋上のドアを開ける。ぬるい風が吹いてきた。
風が、強い。
長い髪が、風に吹かれて揺れる。
風が来ない場所に移動する。…心が騒がしいのは、きっと気のせいだ。


聞き慣れた呼吸の音。
懐かしい匂いがする。
心臓の動悸が激しくなる。


「あれ、夢羽………」
――――気のせいじゃ、無かった。

33:ブラックキャット:2013/02/23(土) 18:44 ID:bAY

恐る恐る響夜の隣に座る。
響夜は夢羽を見ない。
沈黙に耐え切れなくて、夢羽は口を開いた。
「あ、あの「ごめん」
響夜は俯いたまま言った。
「遅いかもしれない。けど、ごめん。…言い過ぎた。あんなムキになるんじゃなかった」
夢羽に向き直って、笑う。


「……僕と夢羽、双子じゃないって。達也さんに、聞いた」


2人の頭上に、影が落ちる。
見上げると、人影がひとつ。
口を開いた。


「―――血の繋がっていない、赤の他人さ」


そう言って、人影は地面に降りた。
響夜が夢羽の前に立つ。夢羽が息を呑んだ。


「……達也さん」


達也は、幼い印象の残る顔で笑った。
「ごめんね、驚かせようと思って…さ。――――長が呼んでいます、来てください」
有無を言わさない態度に、2人は頷いた。












―――――――――2人は知らなかった。
自分達の一族の事、
自分自身の事、
自分に隠された秘密を。

34:ブラックキャット:2013/02/23(土) 19:17 ID:bAY

2人は、大きな古い家の前に立った。表札は無い。
「取り合えず、此処で待ってて。長に報告してくるから、3分くらい経ったら、来てくれる?上、で待ってるから」
言うだけ言うと、達也は何処かへ行ってしまった。

「……行ってみよっか」
夢羽は立上がったが、響夜がなかなか立ち上がらない。
「響夜、どうしたの…?」
近づくと、「…足」と小さく聞こえた。
「足……?」
首を傾げた夢羽に向かって、響夜は言った。
「痺れた…」
慣れない正座をしたからか。
堪える間も無く、小さく吹き出した。響夜の顔がみるみる不機嫌になっていく。
響夜に手を伸ばし、立上がらせる。
「ほら、行こう」




     ☆




―――――ガコッ
「わっ!本当に外れた!」
夢羽は、一枚の板を持ち上げた。
響夜が、軽く息を吐く。
「…すごいな、カラクリだらけだ」
本当、と夢羽は言う。けど、


――――響夜もすごい。


1回来た事あるみたいに、すいすい進んで行く。不思議と、響夜に付いて行けば心配ない、という安心感も感じていた。
外した板から、部屋へと入る。


畳以外、何も無い。


――――いや、ひとつだけ掛け軸がある。


「…あそこ、だな」
響夜は、ゆっくりと掛け軸を下ろす。現れたのは――――


「いらっしゃい。貴方達が2回目ね、此処まで来れたのは。
 …さすが、将也さんの息子ね。綾音の娘も、ちゃんと血を受け継いでるじゃない。
 ……本当そっくりね、貴方達は」

35:ブラックキャット:2013/02/23(土) 21:36 ID:bAY

其処に居たのは、若い女だった。
黒いシャツに黒いズボン、という全身黒尽くめの格好で立っていた。横には、達也も居る。

2人は、その女性の前に跪いた。足が勝手に動くんだ、しょうがない。
まず、響夜が口を開いた。


「“―――お久しぶりでございます、忍様”」
「“……正直、また会えるとは思ってなかったわ、忍”」




紅 忍。
これが、彼女の名だ。

36:ブラックキャット:2013/03/02(土) 20:07 ID:bAY

忍が、面倒くさそうに言う。
「結論から先に言っちゃうとねぇ…」
夢羽の頭が痛み出した。気分が悪い。


「貴方達の“体”にはね―――――……神様が居るのよ」


忍は、夢羽を指差した。


「夢羽には風神」


次に、響夜を指差す。


「響夜には雷神」


響夜が何かを呟いた。「そんな」か、「まさか」だろうが、今はそれどころじゃない。
さっきから頭痛が酷いのだ。
「……それが、本当だと、して?それが、私達に、何かあるの…?」

切れ切れの夢羽の言葉を聞いて、忍は確信した顔つきになった。
「…頭が痛いんでしょう?夢羽。貴女の中に居る風神が、『喋らせろ』って言っている証拠よ」
―――喋らせろ、って言ったって、どうすると言うのだろうか。

忍が夢羽の前に立つ。
「いい?目を閉じて…。ゆっくりと力を抜いて、何も考えないで…寝てるような感覚でね」
忍が夢羽の眼前でゆっくりと手を開くと、



夢羽は意識を失った。

37:ブラックキャット:2013/03/03(日) 21:47 ID:bAY

「夢羽っ…!」
「止めといた方が良いわ」
夢羽に近づくの響夜の腕を、忍が掴んだ。
「何でだよ、夢羽に何をしたんだ、意味解らないよ!」
忍の腕を振り解こうとしても、動けない。
達也が響夜を引っ張って、部屋の隅へと移動した。

響夜の耳元で呟く。
「――――夢羽は、まだ目覚めない。こうなったら…僕達に出来るのは、見守る事だけだよ」
響夜の脳裏に、火事の夜が蘇る。まだ新しい、残酷な記憶。
“目覚めない”? 目覚めないって言ったか?
夢羽が、
――――僕にとってただ一人の夢羽が。

パニックに陥りかけて、膝が床に着く。

その瞬間。
真っ青だった空が、黒く染まった。


風が――――吹いた。


強い風が部屋を巡る。
吹き飛ばされそうになって、達也の服を掴む。
立って居るのがやっとな響夜は、夢羽が立ち上がったことに気付かなかった。


『我は風神なり…我を呼び出したのは、誰だ?』
夢羽の髪が風になびく。
姿形は夢羽だけど…なんだか、知らない人を見ているような気がする。
「夢羽っ…!」



その風の中心に居たのは、紅い眼をした夢羽。

38:ブラックキャット:2013/03/04(月) 22:06 ID:bAY

『夢羽…?』
夢羽は目を細めて忍を見た。
『忍よ、この女子の名は 夢羽 と申すのか?』
夢羽が自分の名前を確かめているなんて、響夜からしてかなり変な光景だ。
忍は肩をすくめて答えた。
「えぇ、そうよ。貴女の……2代目の主よ、貴女が主導権を握ってどうするのよ?」

夢羽がニヤリと笑って、響夜の背中に悪寒が走った。


―――――夢羽じゃない。


『昔はフウ、フウ、と煩かったが。いつの間にか大人しくなったの、忍よ』
夢羽の言葉に、忍は意地悪く微笑んだ。
「…いい加減風を収めなさい、フウ。それに、夢羽にまだライを紹介しなくちゃいけないし、響夜にフウを紹介しなきゃいけないの。あまり時間が無いんだから」
『響夜、とな?』
夢羽が達也の陰に隠れるように立っている響夜の前に立った。

2つの紅い眼が、響夜を貫く。
心の裏側まで読み取られそうで、思わず目を逸らす。
『響夜…か、良い名じゃの。大切にするのだぞ』
「はい」
響夜は、拍子抜けしてしまった。なんだか、あんなに緊張してたのが嘘みたいだ。

『…それじゃ、我は戻るとするか。……忍よ、何か言う事は無いか?』
「無いわよ、馬鹿ね。それじゃぁね」
忍は、夢羽の眼前に開いた手を閉じた。
夢羽が、崩れ落ちる……
支えようと手を伸ばす


瞬間に、理不尽なほどの眠気が脳内を支配する。

39:ブラックキャット:2013/03/09(土) 17:01 ID:bAY

夢羽が目を覚ますのと、響夜が床に倒れ伏すのが同時だった。


刹那。


耳を貫いた、落雷。
忍は薄笑い、達也は苦笑。
頭の回転が追いつかない。

取り敢えず、達也に話しかけてみる。
「ねぇ、達也さん――――「いいかい夢羽、よく聞いて」
台詞を遮られてしまったが、なにやら大事な事らしい。


「響夜に――――絶対に、話し掛けないで。僕にも、忍さんにも、――――響夜にも、絶対」


――――どういう事。
響夜に話し掛けるな、ですか。
無理だよ……。
今も、床に倒れている響夜に近付きそうで、達也に腕を掴まれているというのに。

響夜、
ねぇ、
返事してよ。
聞こえてるくせに。
ねぇ――――


「響夜っ!!」


「夢羽っ!?」
達也が腕を掴んでいる力を強める。痛い。


『誰だ、騒々しい』


紅い眼が、夢羽を貫いた。

40:ブラックキャット:2013/03/16(土) 16:01 ID:bAY

響夜がゆっくりと起き上がる。
響夜の周りが真っ黒に染まり、たまにパチッ、と放電しているような音が聞こえる。


――――響夜じゃ、ない?


「きっ……響夜っ……!」
響夜は明らかに怒った顔をしている。……何で?

『ほう、今度の体は…前と違って、貧弱だな。食べ物が不足しておるのか?忍よ』
忍が笑う。
「そんな筈無いわよ、ただ…小食なんじゃないの?」
『成る程な……筋力もあまり無さそうだ。これで、仕事が勤まるのか?』
「大丈夫よ。サポートの為に貴方達を呼んだのよ」
『まさか……フウも居るのか?』
響夜が部屋を見回す。
反射的に、達也の後ろに隠れる。


『そこか』


掌をこちらに向ける。周りに小さく雷が見える。


――――来るっ!


其処からは反射だった。
掌を、同じように響夜に向け、強く念じる。
『やれやれ……』と聞こえたような気がした。


――――ドオオォォォォッッッ


勢いで後ろに吹っ飛ばされる。
壁に背中を打ちつけ、呻く。
そんな夢羽の様子を見て、達也は苦笑した。
「だから言ったのに……」

何が起こったのか分からない。

41:ブラックキャット:2013/03/17(日) 19:50 ID:bAY

 夢羽は、全く状況が飲み込めて居ない様子で周りを見回すが、誰も答えない。
その様子を見て、響夜――――否、ライが呆れた顔になる。
『フウよ、何間抜けな顔をしておる?貴様、兄に挨拶も無しに勝手な事をしてくれるな……』

 再び、ライの瞳が怪しく光る。
その瞳を見て、何か、沸々と沸いて出て来た物があった。
 それは脳裏で渦巻いて、人の形に変わった。


 青く、蒼い――――人。


『ライ……』
 ライが口を歪めて笑う。すると、何かに気付いたように床に膝を着いて屈む。
『何だ、これは?』


 その手には、錆びた短刀が握られていた。


『返せっ!』
 叫び終わる前に、その手から奪う。
ギュッ、と握る。
 それは何だ、と言いたい事が分かるライの視線に、フウは手に持った短刀を見る。
此れは……何と言えば良いのだろうか――――?

 しばらく言葉を探し、やっと答えを見つけたような気がする。
恐る恐る、口に出す。


『此れは、我の……封印の書だ』


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