この世界の攻略法

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1:空き缶 ◆KnlY:2013/01/14(月) 22:55 ID:T2o

アニメ板住人の私が小説を書いていきます。
こんなスレに付き合ってくれる人なんてそうそういないと思うけれど居たら是非レスをください。
べ、別に強要してるわけじゃないんだからねっ!!
◇注意◇
小説板に二次創作スレはないはずですよ?→二次創作しません(意思表明)
やはり荒らしを行う人は間違っている。→荒らしNG
なりきりは友達が少ない。→なりきりNG
私のスレが誰かに乗っ取られるわけがない。→私以外の小説書き込みNG(感想などはくださ(ry)

>>2から一回目書き込みます。小説板の皆様よろしくお願いします。

2:空き缶 ◆KnlY:2013/01/15(火) 18:58 ID:T2o

もしかもしかするとパロネタぶち込むかもしれません。
主人公は織川真翔(おりかわまなと)と言う普通の高校生。舞台は市立南堂(なんどう)高校です。
ラブコメ意識して書いていきたいなあ。

攻略ナンバー001:あのクラスの攻略法

使い古しの目覚まし時計の針が七時半過ぎを指し、俺――織川真翔に決して爽やかではない朝を告げる。
五月十四日、月曜日。今日からまた学校が始まるのだと思うと気分が悪くなる。
「……はぁ……」
ベッドから起き上がり、自室の床に足をつく。ひんやりとした感触が足の隅々まで伝わる。
ほんの数歩歩きカーテンをしゃっと開け、段々と明るくなりつつある外の景色をぼんやりと眺めた。
雲の隙間から明るい太陽がちらりと顔を見せている。気持ちの良い晴天の予感。だが――
「俺にとっては迷惑極まりないことだよ……」

俺の家から歩いて十五分のところにある市立南堂高校(略称南堂高)に入学したのが先月のこと。
あれからもう一ヶ月近く経つというのに、なぜか『高校』という場が未だ楽しく感じられないというのはどういうことなのだろうか。……先に言っておくが友達がいないというわけではない。

中学の頃はこんなじゃなかったなあ、もう少し楽しかったなあ、などと思いながら俺は自室を出、階段に向かって早歩き。
そして一階へと続く階段についたその数秒後、二段飛ばしで勢いよく降り始めた。中学二年生の時にやっとできるようになった技(?)だ。
無理矢理飛ばそうとすると足が攣りそうになってしまうので、さりげなく注意を払っている……。

最後の一段を軽くジャンプしながら降りた俺は、リビングへと極めて明るい口調で「おはよう」と言いながら入る。
両親はもう起きていた。「おはよう」とタイミングは違うものの答えてくれる。これでシカトとかされたら流石に泣く自信がある。
それと同時に、俺の姉である真花が「……おはよう」と、和室から出てきた。そのまだ眠そうな口調からして、たった今起きたばかりなのだろう。
若干起床が遅い気もしなくはないが、今日は俺もほぼ同時刻に起きたので人のことは言えない立場……。
「おー、おはよ、姉ちゃん。今日起きるの遅くねえか?」
「はっはっは……昨日徹夜でネトゲやってたんだよ」
後半は俺の耳元で小声で言う。親に知られたらそれほど大変なのか?と思いながら、
「健康に悪いと思うんだが……」
「まあたまにはいいじゃないか弟よ。勉強なんかそんな長時間してらんねーっつの」

「あっそ」と受け流し、顔を洗うために洗面所へ。ひんやりとした廊下を素足で歩く。五月になったとはいえそれでも朝が暖かい、というわけではない。
三月と比べれば幾分かは寒さが和らいだものの、それでも冷たい水で手を洗うとしばらくは字を書けなくなるレベルだと、顔を洗いながら思った。一つ目クリア。
最近は本当にどうでもいいことばかり考えてしまっている。あれか、これも高校進学したせいか、高二病か。
そんなことを考えている自分に気づき、自然と笑みがこぼれる。大体まだ高二じゃねえし。
一つ溜め息、二つ目の作業に取り掛かる。地味に大変な寝癖直し。この作業は毎回面倒臭くて仕方がないのだが今回は違った。
いつもならば修正不可能じゃないのかと思われる寝癖があまり――というか全くついていないではないか! 実に楽だ。毎日こんな感じだったらいいのに……。

少し嬉しい気持ちでリビングへ向かうと、いつの間にか朝食がほぼ出来ていた。テーブルには大小色々な皿が並んでいる……つーか、さっきまで料理の準備も全くと言っていいほどしていなかったのに……。
俺が作業を行ってる間に何があった…………母さん、それなんて裏技?

3:空き缶 ◆KnlY:2013/01/15(火) 19:01 ID:T2o

oh...なんだこの見づらさは…。もう少し工夫してみます。


「頂きます」
家族全員で唱和。
「っん。そうだ、ねえ聞いてよ真翔! 昨日私のクラスで――」
話を軽く聞き流しながら――ちなみに俺の姉ちゃんは南堂高の三年生だ――今日の朝食風景について考えてみた。
普段ならばこんなふうに家族全員で朝食、なんてことはいつも週に二回あるかないかぐらいなのだが、珍しいことに
先週からはこの状態が続いている。家族で食べることは別に悪いことではないので変な気分にはならない。
むしろこれからもずっとがいい。

数十分後。
「超クールに言って――ってやべえ! もうすぐ登校時間じゃんよ! ……ご馳走様ーっ!」
姉ちゃんの威勢のいいご馳走様で反射的に目を(目?)瞑ってしまう。声が大きいのだ、物凄く。
まあ俺はのんびり食ってればいいか……と思ったその○点五秒後。
「って真翔なにやってんのよあんたもよ!」
怒鳴られた。わけがわからない。「はあ?」
「っく……あんたも! 私と同じ! 学・校!! つまり?」
そう言われ、恐る恐る時計を見る。
只今午前七時五十五分。
「…………………………うわあやべえマジだなんで教えてくれなかったんだよ!!」
「通い始めて一ヶ月経つのに言われないと気がつかないってのが異常だと思うけど……?」
真っ当すぎる正論を背で受けながら、階段を猛ダッシュで駆け上がり二階の自室へ。
学校の制服へと一分で着替え鞄の中身をぱぱっとチェックし、今度は階段を駆け下り一階へ。
用意してあった弁当箱と水筒を乱暴な手つきで入れ準備完了!弁当の中身崩れたかも知んねーけと気にしない!
玄関にて姉ちゃんはローファー、俺はスニーカーを、それぞれ靴篦を使いながら履く。

4:空き缶 ◆KnlY:2013/01/15(火) 19:05 ID:T2o

最初っから失敗だらけとか…ねえ?壁|ω・`)


そして。
「「いってきまーす!!」」
見事に俺と姉ちゃんの声が重なり、一際大きい「いってきます」を伝える。
そこから先は二人で仲良く走りながら(※仲良くは表現を和らげるためです)南堂高昇降口へ勢いよくスライディング。
だがここで安心してはいけない。上履きに靴を履き替えたら、南堂高の学年フロア及びクラスへと続く階段、通称『遅刻支援階段』が待ち受けている!
どのへんが遅刻支援なのだと思うだろう?簡潔に言うと、学校の階段にあるまじき急な角度と、無駄に多い段数。
この二つが重なっているのでこの名前が付けられた。俺のクラスのある一年フロアは四階なのだが、そこへ行くまでに
のぼる階段数およそ百五十段。もう設計したやつ頭おかしいとしか考えられない……。普段余裕できている奴は全然なのだろうけれど、
今の俺達のように遅刻するかもしれない危険な時に来ているとなれば話は別段別だ。なので……。
俺は秘技、四段飛ばしを実行する!!
「ちょ、真翔待てよ! 置いてけぼりは酷い!」
そんな姉ちゃんの声を気に止めず、俺は百五十段の階段を一心不乱に駆け上がる!

        * * *

そうすること約五分後(我ながらすげえ)ついに一年フロアへと着いたのだ。がしかし本例のチャイムはすでに三分の一を鳴り終えてしまっている!
今までとは比にならない程の全速力ダッシュで廊下を駆ける!!チャイムはすでに半分を鳴り終えた!
そして俺のクラス――六組の戸に手を掛け、物凄い勢いで開ける。そして――――

5:空き缶 ◆KnlY:2013/01/16(水) 17:57 ID:T2o

更新早いんだよ皆……(´・ω・`)


朝のホームルームが終わり、担任がクラスから出て行くとクラスメート達が目的の場所へとばらばら動き出す。
だが、俺は席から立たずに、真後ろの席に座る男子――羽森結城の方へと体を向けた。
中学生の時からの友達だ。
「今日はギリギリアウトだったね」
ギリギリアウトという軽い違和感を感じる言葉を口にしながら、羽森は、
時間にギリギリ間に合わなかった俺のことを面白そうに笑う。
そういえば姉ちゃんはちゃんと着いたのかなーと遅すぎる疑問を浮かべた俺は、羽森に良い事言うような口調で、
「いやいや、そんな他人事みたいなこと言うなよ。明日は我が身だぜ?」と知ったようなことを述べた。
「それはないから安心していいよ」
蔓延の笑みと共にキッパリサッパリバッサリ言葉を切られてしまった。
『守りたい、この笑顔』?こんな笑顔守りたくねえよ。
「それにしてもさ」
と話を切り替えるようにSな男子高校生は言う。
「真翔はまだこのクラスに馴染めてない感じだよね」
「…………」
ストレートだった。ドがつくほどストレートだった。
「なあ、そういうことはもっとオブラートに包もうぜ……?」
「? ああ、オブラート。あれうまいよね。いつもおやつ代わりに食ってる……って、今話を逸らそうとしたね?」
「オブラートは普通単品じゃ食わねーよ! そして話を逸らそうともしていない!」
「おや」
「そうだったのか」とたった今理解したような様子の羽森。
多分ボケてやってるんだろうけど本当に心配になるときがあるからそういうのはやめてくれ。
あと名前で呼ぶのもやめてくれ。嫌じゃないんだけど変な感じがするんだ、家族以外に言われると。
……この感覚共有できる人居たりする?
「でもさ、真面目な話、馴染めてないよね?」
真面目な話には真面目な口調で。
「……まあ、そうなるのかな。別に俺的には馴染めなくてもいいんだけどさ」
「そんなこと言ってると後々になって大変になってくるよ? 今のうちに馴れておけって」
まるで俺のことを諭すように言う。
やはりそういう物なのだろうか。学級というのは。学校というのは。
今の羽森の言葉で自分の仲の考えが変わったということはないのだけれど、少しは行動する気になったきがしなくもない。
それも考えが変わったことに含まれるって?……でも確かにそうかもしれない。

6:空き缶 ◆KnlY:2013/01/16(水) 17:59 ID:T2o

「難航するようなら僕も手伝うよ。一応人気者だしね!」
堂々と胸を張り「人気者」という部分を強く発言する羽森。
そう。この羽森結城という男、わずか一ヶ月でクラス全員のメアドをゲットし、今までにクラスほとんどの奴と出かけに行ったのだという。
中学生のときはそんなでもなかったのだが、高校デビューというやつだろうか。そのせいで羽森が少し遠くへと行ってしまったような気になってしまい、軽く焦ったものだ。
でも実際には今この時も俺の前で俺と会話をちゃんとしている。そのことに安堵する自分がいるのも真実なわけで。
俺はそんなことを思いながら、
「おう、頼むよ友人」
「え? はは。親友、だろ?」
「……羽森」
「なんて言うと思ったのかい? 相変わらず君は騙されやすいねえ。まあそんなところが気に入ったんだけど」
「やっぱお前真正のSだよ!!」
などと傍から見てもくだらない会話をする。こいつと話してるときだけは楽しいんだけどなあ……。
――――と。
「…………」
そこで俺はやっと、一人の女子生徒がこちらをじっと見つめている――いや、睨んでいることに気がついた。
うん、なんだ。顔をあちら側に向けなければ良かったと思った……。
にらみ返すという手段もあったのかもしれないが、それでこちら側の印象を悪くすることはなんの得にもならないので、俺は瞬時にそっぽを向くという、負け犬すぎる行動をとった。
羽森に首をかしげられる。お前はまだその視線に気づいていないのかよ……。その人を殺せそうな視線をよ。
「おい、どうしたんだい真翔。心なしかびくびくしてるように見えるんだけど」
「いや、あの、お前さ。一番左斜め後ろの女――」
女子も言い終わらないうちに、一時間目の始まりを示すチャイムが鳴った。なんてタイミングだ。できればこの休み時間に聞いておきたかったのだが――
「あ、ほら。先生来るよ。前向いて!」
そう羽森に促されてしまっては仕方がない。この続きは昼休みにでも聞くとしよう。
胸の中に突っかかるものを感じたまま、俺は一時間目の授業を受けることとなった。

7:空き缶 ◆KnlY:2013/01/16(水) 18:01 ID:T2o

見てくれてる人多分いないと思うけど一応言っておく。
これ「全部読む」ページで見たほうがいい…orz
私がそういうのですから間違いありません()

8:カイ ◆4ymA:2013/01/16(水) 18:16 ID:wqU

初めまして!!
小説読ませてもらったんですけど、面白いです!!
真翔君にどストライクされてしまいましt((黙
そして羽森君のオブラートの話題でちょっと笑ったりしt((蹴蹴
あの、ファンになってもいいですかね?

9:空き缶 ◆KnlY:2013/01/16(水) 22:24 ID:T2o

>>8
感想有難うございます!カイさんが一人目です!www
主人公気に入ってもらえるか心配だったのですが、良かったです。
オブラート単品食べはやったことありません。というかやりませんww
ファン……ですと……?勿論ですよ!こんなグダグダでよけれb(ry
これから新キャラ登場させたりしますので、付き合って頂ければ嬉しいです。

10:空き缶 ◆KnlY:2013/01/16(水) 22:29 ID:T2o

目が冴えてきた。

                * * *

結局あれからも胸のつっかえは取れず、終始モヤモヤした気持ちで四時間目まで受け続けた。
自分の中では朝の女子生徒のことだとわかっているので、別に無駄に心配になる必要はなかったのだが……。
一時間目授業をしているにもかかわらず、どうしたことか羽森が小声で後ろから「本当に大丈夫?」やら「頑張れる?」やら(何を頑張るのだ)問いかけて来たり。
しかも心配そうな目でこちらを休み時間中ずっと見きたりでむしろそっちの方が気になってしまい、いろんなことに集中できなかった。
やめろよ。俺を心配そうに見るのも名前で呼ぶのも冗談がすぎるボケをかますのももう全てやめろよ……やめてくれよ……。

「昼食今日はどっち?」
俺が今羽森に対して失礼極まりないことを思っていたのを知らずして、昼食開始時恒例ともいえるようになってきた質問を投げかける。
俺は弁当時々購買、それに対して羽森はエブリディ購買だ。この間『第七百五十九回南堂高購買戦争』を見事勝利。
購買一の人気を誇るカレーコロッケを手に入れたという噂が流れたが、本人は否定している。
それもそうだ。俺のなかでしか噂になっていないのだから(ニヤリ)
「今日は弁当だから購買に用はないんだけど、どうしてもって言うなら」
「ふふ、大丈夫だよ。僕は真翔とは違ってちゃんと交友関係を作り上げているから」
物凄くさらっと酷いことをいいやがった。
「うわ、結構くるな、その言葉……」
「というわけで、僕はほかの子と購買に行くとするよ。ちゃんと手作りは味わって食べなくちゃ駄目だよ!」
そんなものでもないんだけどなあ。
まあ羽森が他の奴と行くってんなら俺には関係のない話だ。

11:空き缶 ◆KnlY:2013/01/16(水) 22:32 ID:T2o

「はいはい」と適当に対話を終わらせ、羽森が他の奴と購買に行くのを確認してから、弁当の中に入っている大好物のプチトマトを口の中に放り込む。
一番好きなものは最初に食べる派だ。
処によると、「好きなものは後!」という輩もいるらしいのだが、俺的に言えばそれはありえないことである。アニメキャラが現実に出てくること並に。
「…………」
ふと気になって、俺は朝のような視線がないにも関わらず、右斜め後ろに座る例の女子生徒の方へ目をやった――いや、正しくは耳と言うべきだろうか。
流石に用もなにもないのにあちら側を向くことには無理があると思ったので、俺は耳を傾けた。
まあ、なんだ、ほら……チラチラ見るのも、気味の悪い変態と思われそうだし……。
運のいいことにクラスの中はそれほど五月蝿くなかったので、その女子生徒の声もはっきりと聞くことができた――という予定だったのだが。
(……? 声が聞こえないな……)
自分の耳が少し変になってしまったのかとも思ったが、どうやらそういうことではなかったらしい。
確か四月初の昼食時間からずっと、あの女子生徒――今更だが名前を覚えていない(知らない)――は四、五人で昼食を食べていたはずだが……。
好奇心からか、知らず知らずのうちに視線が女子生徒の方へと動く。話声が聞こえなかったのはやはり周りに人が居なかったかららしい。
感情の読めない顔でスマホを淡々とタッチしている。メール中なのだろうか――と思った、そのとき。
「……………………!」
俺が思っていたことを見透かされてしまったのか、女子生徒が急に睨みをきかせてきた。
今度こそ俺は正面から睨まれることになり、戸惑い、焦ってしまう。逆に挙動不審になってしまったようにも思える。もうやだいっそのこと逃げ出したい。
殺し屋のようなその視線は未だ背中に突き刺さっている。それに怯えた俺はそれからの昼休み残り約十五分間猫背すぎる猫背になり、
弁当箱を隠すようにしながら中身を食べ、微妙に震えている手で無理矢理箸を持って落としそうしたりして、長い長い昼休みを終えることに成功したのだった。

12:空き缶 ◆KnlY:2013/01/16(水) 23:38 ID:T2o


                * * *

 五時間目になっても、女子生徒の刺のような――いや、ここはもっと凶暴にナイフと言うべきかもしれない視線は、
こちらへずっと向けられたままだった。
 一体俺がどんなことをしたというのだ。どんな悪いことをしたというのだ。
…………自問自答すると余計に悲しくなることに気付いた俺は、馬鹿馬鹿しいとも言える行為を止め、帰りのホームルームの
開始を告げるチャイムが鳴り出すのと同時に羽森の方へと体を向けた。朝となんら変わらぬ体勢である。
唯一違ったといえば――――羽森のその表情だろうか。
「……真翔さ、なんか悩んでることがあるんなら素直に言ってよな」
「は?」
 唐突に予想の斜め上をいくその発言に虚を突かれる。
「いや別に悩んでなんかはねーけど、……ちょっと気になることがあるんだよ」
 悩みという言葉を否定し、気になると述べた俺を一瞬きょとんとした顔で見た羽森だったが、溜め息をつき、
「それ悩んでるのとほぼ同意だと思うけどね」
 と反論するようなことを口にした。
「違うだろそれは。つーか今はそんな言葉の些細な違いみたいなことはどうでもいいんだよ。さっきの話、」
「はいはい。わかってるしちゃんと聞こえてたって。で、なに?」
「お前さ、あそこに座ってる女子生徒の名前知ってるはずだろ? 教えてくれねえかな」
「まだクラスメートの名前覚えてなかったのかよ……」と落胆するように言ってから羽森は軽く笑いながら「秘密」と答えた。
 『秘密』と答えた。
 ……は?
 秘密?
 なぜ?
「おいおい秘密ってなんだよ、お前ってそんなに意地悪な性格だったか?」
「意地悪だし腹黒だよ。真翔が一番知ってるだろ。まあそれはおいといて。うん。
 素直に教えちゃうのはなんだかつまらないかなあと思って」
 どうやらその言い分からして、俺とあの女子生徒のドキドキ青春ラブコメ的な展開があるのだろうと思っているらしい。
何考えてやがるんだこの男子高校生は。どっかのラノベじゃあるまいし…………あるまいし。
「そんなのねえからさっさと教えてくれよ。これ一生のお願い!」
「……あのさ、その言葉、高校に入ってからもう十五回ぐらい聞いたから。そもそもしりたけりゃ直接聞けばいいじゃんよ。
なんでわざわざ僕に聞くのさ」
「いやあちょっと、ね……」
「へえ。ちょっと、ねえ」
 ニヤニヤといたずらっぽい笑みを浮かべながら、そんなことを言う。しばいてやろうかこいつ。

 結局今日も俺は、クラスに自然に馴染む方法も考えつかず、これといった行動もせず、羽森とくだらない会話をし、女子生徒に睨まれた。
ある意味最後がなければいつもどおりともいえる高校での一日の学校生活を終えたのだった。


  ☆ 今 日 の 成 果 ⇒特になし。
  ★クラスの攻略法⇒難易度高。後回し。

13:空き缶 ◆KnlY:2013/01/17(木) 20:20 ID:T2o


                * * *

 「終えた」なんて言ってしまったけれど、細かく言うと俺の今日の学校生活はまだ終わってはいなかったらしい。
「らしい」なんて不確実なことを言ってしまったが本当に「らしい」としか言えないような状況なのだ。なぜかって?
 クラスの例の女子生徒が俺の目の前に立ち、
「織川、こんな変態がするようなことを、お前にしてしまったことは謝る。だから、私の話を聞いてはくれないか? 
――え? その流れで聞いてくれってのはおかしいって? 今はそんなことどうでもいいだろう――なに、とって食いはしない。
殺す。ずたずたのずた袋になるまで殺すだけだ。殺し尽くして殺し尽くせないならなんとかして生き返らせてまた殺し尽くす。
つまりどういう意味か……頭の良いお前ならばわかるな?」
 なんてふざけているとしか思えないような長ったらしい台詞を吐いているからだ。
 え? ごめんちょっと何言ってるかわからない、なんて言う暇もなくマシンガンのように言葉を紡ぎ続けられたら何も言えなくなる。
そもそも女の子が殺すなんて軽々しく言わないほうがいいよと思いますということはありません?(思考回路混線中)
 とにかく。
 なぜこんなことになったか。
 時は数十分前に遡る。

 帰りのホームルームを終え、帰路へと向かう大勢の南堂高帰宅部の先輩と同級生達の中に、俺も混じっていた。
 羽森は、帰宅部の俺とは違い、運動部に――陸上部に所属している。四月に聞いたときには正直驚いた。お前本当にできんの?みたいな。
中学生の時は俺と一緒で帰宅部だったので、あの頃に比べると共にいる時間が少なくなってしまったという事実に対してかなり悲しくなる。
 おいおい、お前には姉ちゃんがいるじゃんかと思ったそこの君。はずれ。姉ちゃんも放課後は部活。
 そんなわけで、俺と親しい二人(姉ちゃんは身内だが)が二人ともいないので、俺は高校生になってからいつも一人で、
誰とも会話をすることもなく寂しく帰っている。実質友達一人しかいねえじゃんとか突っ込むのはNGだゾ☆
 ……うん。なんでもない。
 まあ今日もいつもどおり一人で帰っていた。
 南堂高の生徒で大半が埋め尽くされている、かなり大規模な大通りを数百メートル行ったあたりで右に曲がる。
と同時に、人の気配が急に薄くなる。いつもどおりであっていつもどおりではない道。
あまり人気が感じられないこの通りは、できれば通って帰りたくないのだが、ここを通るのが家への一番の近道なのだから我慢するしかない。

14:空き缶 ◆KnlY:2013/01/17(木) 20:28 ID:T2o

 人気のなさをあまり意識しないように、軽く、考え事をしながら歩く。
学校のこと、携帯のこと、姉ちゃんのこと、夕食のこと、ネット小説のこと。
本当どうでもいいと思うことでも一度考えることを始めたら、その間は周りのことが見えなくなってしまう。
 だから俺は。
 自分の後ろをつける、ひとりの人間に気づくのが遅れた。
「…………っ!?」
 実際、こっちの道に来てから、目の前に立つ人間が後ろをつけてきていたとすれば、俺は大体三分ぐらい気づかなかった。
 どうやらその人間――例の女子生徒は、別にストーカー常習犯というわけではない……っぽい。
なぜそう思ったかと言えば、ストーカーのプロ(笑)だったらもっと長い時間気づかれないようなストーキングが可能だと思ったし、
まず俺は、ストーカーって基本男のすることじゃね?なんてあまりにも偏見に満ちた単純すぎる思いを持っていたからだ。
 つーか、同じクラスの女子生徒がストーカー常習犯とか嫌すぎるだろ。
 どんなシチュエーションだよ。
 で、その女子はといえば、
「ちっ。私としたことが……ちっ」
 下品にも舌打ちを繰り返していた。俺が今どんな気持ちでいるかも知らないで!
「まあいいや。今回のミスなんて消しゴムのカスくらい些細なことなのだから」
「公園に建設されている砂場の砂全て合わせたぐらいの大きなミスだと思うが」
「う、うるさいな……。私がそれくらいだからと言ったのだからそれくらいなんだよ!」
 女子生徒の言葉に突っ込みを入れられたことをラッキーに思いながら、俺はその女子生徒のことを真正面から
――今度は椅子に座ったりはしていないので、全体までを見ることになった。
 一瞬で目を奪われる。
すっきりとした身体。同性が見たら羨ましがられるであろう細い足と細い手。
美しく、風に靡いてさらさらとした動きを見せる、黒と茶色が混じった長い髪。
ぱっちりとした目は、つり上がっても垂れてもいない。そして極めつけが、その健康的な色をした唇。
整いすぎているにも程があるその女子生徒を、俺は疑いどころもなくじろじろと見る。
「っ……ど、同級生の女子生徒をそんなじろじろと見るな! くたばっちまえこの変態が!」
 変態男子高校生への攻撃手段として、その女子生徒がとった行動は、美麗な足を使っての豪快なキック――のはずだった。
……いや、力が入らなさすぎていて、あんまし痛くない……。
かわすことも不可能ではなかったが、ここは強くても弱くても、どちらにしろ蹴られる場面だと思ったのであえてかわさなかった。
 いやしかしすごいことをするなこの女子は。
「まさかスカートでその蹴りをしようと思うとは……」
「う……わっ! わわわわわっ!! ――お、お前見たな?! 私のスカートの中見たなぁ?!」
「見てねえよ!!」
 妙な疑いをふっかけられそうになったので、俺は全力でそう言った。
 しかし、いかんな、今のは……駄目だったかもしれない……。
顔を真っ赤にしながら、恥ずかしそうに俺のことを、獲物を狙うハイエナのように睨む彼女を見てそう思った。
「ううっ……くそ、私のキャラが早くも崩れてしまった……許さん、許さんぞ織川……っ!」
 キャラだとか無性に気になる言葉を口にしながら、冷静さを取り戻しつつある彼女は俺の方を若干気にしながら向き直る。
「んんっ……。まあ、なんだ――今のは無かったことにしてくれ……」
「お、おう」
「くそ、なんか調子が出ないな……おい織川」
「は、はい」
「五分ほどそこで待っていろ。絶対に待っていろ。絶対だぞ」
「うん……わかったから。わかったから早く行けよ……」
 そう彼女に言い、俺は律儀にも五分ほどそこで待った。我ながらよく逃げ出さなかったものだと思う。褒めて欲しい。

15:空き缶 ◆KnlY:2013/01/17(木) 20:38 ID:T2o

主要登場キャラ2:光鳥秋寐(みとり あきね)
南堂高に通っている、一年六組の女子生徒。真翔と羽森と同じクラス。
昼食時間なぜ一人で食べるようになったかは不明。


 そして五分後。
 彼女が帰ってきたところで、話はリアルへと――冒頭部分のあのながったらしい台詞へと戻る。
「ちょ、ちょっと早口で何言ってるか聞き取れなかったなあー。もう一回言って欲しいなあー」
 棒読みすぎる台詞を口にする。演技力ゼロすぎる。なんだこれ。
「嘘を付け。お前はちゃんと聞き取れていたはずだ……聞き取れなかったなどと、私が許すと思――」
「嘘です嘘嘘! ちゃんと聞き取れていましたし聞き逃してもいません! 
だからスクールバッグの中から裁縫針を取り出すのをやめてくださいお願いします!!」
 彼女の動作にふと身の危険を感じた俺は、全力で謝り返した。裁縫針でなにをしでかすつもりだったこいつ……。
「……ん、あ」
「は? なんだどうした」
「そういや俺、お前の名前知らないなーって」
「はあ?」
 いっそ、「クラスメートの名前覚えていないとかあー、何それマジ論外〜きゃはは♪」とでも可愛らしく言ってくれれば良かった。
 だってさあ、こいつ、物凄い目力で俺のこと見るし口から出る低い声がマジで怖いしでまともに話を聞く気がなくなるんだもん……。
「ったく、これだから下等生物であるところの男というものは嫌いなんだよ。エロいし馬鹿だしキモイし汚いし」
「俺のことを軽蔑するような目で見ながら言うなよ!」
「ふん、まあいいだろう。この偉大なる私が、我が名を教えてやろうではないか」
 一息おいて。
「私の名前は秋寐。光鳥秋寐だ。友達はたいてい秋寐と呼び捨てで呼んでいる」
「光鳥秋寐……ああ、いたなそんなやつ。思い出した思い出した。名前見たときDQNネームかよ! って突っ込んだこと覚え――」
「ど、DQNネームとか! ……言わないでもらいたい。この『秋寐』という名前は、私の親愛なる両親からもらった大切な名だ」
「だから、そんなことを言うのは許さない」と、慎重な口調で真面目に言い返される。

16:空き缶 ◆KnlY:2013/01/18(金) 19:19 ID:T2o

 ……今のは完璧失言だった――言ってから後悔することが多すぎる。
 何気ない一言でも、傷つく人は沢山いるというのに――目の前の光鳥のように、沢山いるというのに。
「……ごめん」
「うん、いきなりそんな悲しげに謝られても逆に困ってしまうな……」
「いや、マジで謝る。俺が後先考えずそんなことを口にしたのが間違いだった。本当にごめん」
 光鳥に頭を下げ続けたまま、俺は謝る。
 謝り続ける。
 誠心誠意。
 というか、ついさっきまでふざけ合ってた癖にこんなシリアス展開になってしまって申し訳がない。急展開にも程がある。
もう全部全部俺のせいだ……。
「……もうわかったから頭を上げろ。私が変に見られる」
 どうやら許してもらえたようだ――というより、変人に見られるのに耐え切れず自分から折れたという感じだが。
 つーかなぜお前が折れる?
「いや、心配することはないと思うけど……。ここの道、二十四時間三百六十五日ほとんど人が通らないし。気にしないでいい、続けよう」
「なにを続けるつもりだ…? ……はっ! まさか、織川、お前、私に頭を下げることに快感を見出してしまったのか?!」
「俺はMじゃねえよ!! つーかそんな変態的な嗜好はもともと持ち合わせていない!」
 いきなりなにを言い出すんだこいつ!
 光鳥秋寐……侮れないぜ!

17:空き缶 ◆KnlY:2013/01/18(金) 19:38 ID:T2o


 閑話休題。
 本題をすっかり忘れていた。
 光鳥がなぜストーカーをしてきたかについて。
「いくら考えてもわからないんだよ。なんでお前は俺のことをストーカーした?」
 まさかとは思うが、その、俺に気があるわけではないだろうな……。自惚れにも程があるが、仮定だ、仮定。
「その質問に答える前に! その「お前」っていうのやめろ。なんだか見下されてる感じで気に障る。苛々する」
 思わぬところから矢が飛んできた。
「……じゃあなんて呼べばいいんだよ。無難に光鳥か? それとも秋――」
「馬っ鹿じゃねえの織川。いいか? 私のことを下の名前で呼んでいいのは純潔な同性の女達だけと決まっているんだ。
下劣な男などに下の名を呼ばせることなど誰が許すと思うか。どうしてもそう呼びたいというのなら一度死ね。そして
純潔で貞淑な女として再度生まれてこい」
 みとり あきね の くりだした ぼうげん が ひかり の はやさ で おれに ちょくげき する ! ▼
おりかわ まなと は 428 の ダメージ を うけた ! ▼
おりかわ まなと は たおれた ! ▼
 ……どっかの大人気企業制作のゲームハード専用ソフト(ジャンル:RPG)的な話し方になってしまった。
 照れ隠しと思えば可愛いって? じゃあお前眼前でさっきのこと俺と同じように言われてみろよ、
まじで立ち直れなくなるんじゃないかっていうくらい傷つくから! これ豆ね!
 そこらへんを歩いている一般人と違い、このような暴言に全くの耐性がついていないわけではない異人織川は数秒後、立ち直って確認を取る。
「……じゃあ「光鳥」って呼ぶ。文句は勿論ないよな?」
「うん」
「はあ…………んで? 光鳥。もう一回聞くが――なんでお前は俺のことをストーカーした?」
「それを一から話すと長くなるんだが、それでもいいと言うならば話す」
 光鳥にそういわれ今の時間が気になり、俺は制服のポケットから携帯――未だにガラケー――を取り出す。
 ぱちんっ!と勢いよく開き、画面に映る時間を確認する。
 五月十四日月曜日、午後四時四十七分。
 驚いた。ここの道にきてからもう三十分近く経っていたのか。
 家の門限はこれといってはないのだが、あまり遅すぎると閉め出されてしまう可能性大なので、六時に帰ると想定し、
そこから逆算して、平気だとわかった俺は光鳥の問い(?)に応答する。
「いいよ、話してくれ。まだ時間には余裕があるから……っと、その前にひとつだけ」
「ん? なんだ?」
「どうしても嫌だったらいいんだけど、俺とメアド交換し」
「神でもレイニーデビルでもなんでもいいから地球上に存在する汚らしい男どもを全員消すという私の純粋な願いを叶えてくれはしないかな」
「…………」
 泣いた。俺の心が泣いた。光鳥の暴言に耐え切れず泣いた。
 せっかくクラスメート女子のメアドを初ゲットするチャンスだったのに……。
 デレたりはしないのかよ。
 ツン度百パーセントか。
 ツンツンのこいつが発する全ての暴言をスルーできて、かつ心が傷ついたりしない、ある意味尊敬できるやつなんか存在するの……?
「率直に思ったことを言わせてもらうよ。お前さ、絶対友達とかいないよな」
「この流れでそのような愚かしい考えを持つ糞馬鹿な奴を私はお前以外には知らないよ。くだらないにも程がある質問などするな――
質問と言っていいのかな? まあそれはいい。私は、下劣でなく純潔で可愛らしい女にはこんな酷く残酷な暴言を吐いたりなどしない。
つーか散々言っただろ、私は男が大嫌いなんだよ」
 「死ぬかと思うくらいにな」と、これまた長い台詞を一度も噛まずに、吐き捨てるように言う。
 だったらなぜ今ここで俺と話をしているんだ――と口から零れそうになったが、慌てて抑える。もう失言は懲り懲りだ。
光鳥は俺に大事な用があって、ストーカーしてまでついて来て今ここでこうして話をしているんだよ!――と、自分に対して荒く答える。

18:空き缶 ◆KnlY:2013/01/18(金) 23:30 ID:T2o

「全く。いちいち話を逸らすな、お前は。話しにくいことこの他ない」
「あーあーどうもすみませんね全て俺が悪いんですよ! で、話」
「ああ。わかっている。だがどこから話そうか……織川、お前朝の話っからノーカットで聞きたいか?」
「できれば。なんで光鳥が俺のこときつく睨んでたのかも気になるし。
 ……そういや羽森に相談するつもりだったんだけどすっかり忘れてたな……」
「それはどうでもいい。じゃあまず、朝のことから解いていくか」
 解いていく(笑)
 そういう中二チックな言葉が好きなのだろうか。
 殴られそうなので決して口にはしないけど。
 
「お前は盛大に誤解をしているようだが、あれは別にお前を――織川を睨んでいたわけではない」
「…………………………………………え?」
「私は、お前の後ろの窓……の外を見ていただけだ」
「…………………………………………え?」
「全く、睨んでいるなどと人聞きの悪いことをいいやがって……」
「…………いや、ちょっと待ってよ光鳥さん」
 外を見ていただって?
 外を?
 俺じゃなくて?
「どうして外を見るのに俺の方を見る必要があったんだ? 見るだけなら、真横を見たって問題はなかったはずだろ?」
「お前は後ろの羽森と話をしていたからわからんだろうが、あのとき鳥が数十羽飛んでいたのが、お前の席から斜めの
 ところにある窓から見えたのだよ」
 鳥。
 鳥だって?
「私は鳥が好きなものでな。よく画像を見たり映像を見たり――
 ああ、あと、興味を惹かれた鳥は実際に見に行ったりすることもあるんだ」
「へえ! 意外だな」
 野鳥が好きとは想像もしていなかった。同い年女子の好きなものなど全く知らない俺は、きっと可愛くてふわふわもっこりしたものが
好きなのだろうなあと勝手に決め込んでしまっていたから、光鳥の野鳥好きには驚かされた。
 いや、光鳥もきっとそういうのは好きなんだろうけど。
「だから、窓の外を見ていたんだ。せっかく見つけられたのだから、見ていたいなと思って」
「なる程。それで……」
「そういうことだ、この自意識過剰めが」
 ニヤリと不敵な笑みを浮かべながら、光鳥はそう言った。
 自然と睨んでいる風になってしまうのかな、と思いつつ、俺は、
「ふうん……。そのとき飛んでいた鳥はなんていう鳥だったんだ?」
 と、不意に浮かんだ疑問を口にする。てっきり答えないと思っていたが、光鳥は、
「! 『シラコバト』という、ハト目ハト科に分類される鳥類だ。白い羽と少しの黒が印象に残っている」
 と、あっさりすんなりと答えてくれた。野鳥に興味を持ってもらえたと思ったのか、声音も少し明るいように感じる。
「へえ……意外と詳しいのな」
「覚えるのに時間がかかったぞ。ウィキで調べまくった」
「それはそれは……」
 夢中になったものには本気を出すタイプなのだろう。

19:空き缶 ◆KnlY:2013/01/18(金) 23:37 ID:T2o

「じゃあ、次に行っていいか?」
 問う声も明るくなったきがする。どうやらご機嫌取りに成功したらしい。
「ああ」
「昼休みのことだったかな。……言っておくが、あれは一方的にお前が悪いのは自覚してるか?」
「してるしてる超してる。しつくしたぐらい……」
「そこまでとは思わなかったぞ……じゃあ、あの時なぜ私が一人で昼食を食べていたのかも、もしかして察しているのかな?」
「いや、そこまでは流石にしてない。さっぱりだ」
 なぜ友達と一緒に食べていなかったのか?
「そうか。簡潔に言うと、一週間前ぐらいに軽いいざこざって言うのがあったんだよ。私と、もう一人の間で」
「そうだったのか」
「ちなみに。未だに解決はしていない」
 へえ、と思う。女子同士でならよくあることだと言われているが、単純な生き物である男の俺には理解し難かった。
男の場合なら、たとえ軽いいざこざとやらがあったとしても、その翌日――遅くても三日後にはそんなこと忘れて、
楽しくふざけあっているからだ。ソースは俺と羽森。
「その前までは四人で行動していたんだが、私を除いた三人で相手側が行動するようになった。言い忘れていたが、
 私と敵対した一人は、かなり我が儘な奴でな。しかしながら結構仲が良かった。四月から共に行動をしていたんだが、
 私が耐え切れなくなって反抗したらこれだ。他二人はあたふたしていて、どうしていいかわからないような感じだった。
 その二人をどうしようか考えていたのだが、私が判断するのを待たずに、そいつはその二人を強引にも連れってって
 しまったんだよ、無理矢理。つまり取られてしまったんだよ」
「それは――怖いな」
「だろう? まあ、あいつがいない時にこっそり二人から聞いた話だと」
 あいつとはいたくないって感じで、私に心底申し訳なさそうにしてたがな――と、光鳥は言った。
 俺だったら耐え切れそうにないことだった。たとえその取られた二人が、不本意で相手側にいるとしても。
「昼食時に私一人だったのはそれが理由だ。そのところを偶然お前に見られて動揺してしまった。その時、なぜか――
 不安になったんだ。きっと、そいつ――我が儘なそいつに、一人で食べていることを知られてしまって、
 何かされるのが怖かったのだろうな」
「その我が儘っ子は、光鳥が一人で食べていることを知らないのか?」
「恐らくは。クラス内の他の女子と食べてるとでも思っているのだろう。そんな訳があるかってんだ。入学から一ヶ月経って、
 もう五月だぞ? 行動を共にするようなグループが、できてしまっている時期だぞ? 入れるわけがないだろ、その輪の中に……。
 仮に入れたとしても、鬱陶しがられて終わるだけだ。「それならまだ一人でいる方がいい、あの二人が帰ってくるのを待とう」
 ――私はそう思ったんだ。だから」
「一人で食べてるってことか」
 こくり、と光鳥は頷く。
 そういうわけがあって、昼休みが終わったあとも、目撃した俺のことを睨み続け、そして帰り道、俺のことをストーカーし、
 さらには脅しで「殺し尽くす」なんて言ったのだろう。高一女子にしてはすごいことをする。
 いやあ。
 それにしても――聞いてしまった身としては失礼すぎる物言いだと思うが、すごいことを聞いてしまった感が半端じゃない。
やっぱ話なんて聞く耳持たずに、五分間待たされたあの時に逃げればよかったかなあなどと、残念もいいところの思いを持ってしまう。
 これからどうすればいいのだろうか……。
 …………よし。
「……で?」
「?」
「俺にその話をして、そんで俺にどうして欲しいって言うんだ? 黙ってて欲しいのか、解決のために手伝って欲しいのか――」
 それとも。
 昼食を食べる上辺だけの友達になって欲しいのか――と。
 俺は問う。
 真剣な目をして――光鳥に問う。

20:空き缶 ◆KnlY:2013/01/18(金) 23:41 ID:T2o

ちょっと変えてみました。まだ変える必要はありそうですけど。

「どうして――欲しい」
「出来る限りなら力になりたいのだけれど――光鳥、男嫌いなんだろ? だから、そこらへんどうしたものかなって……」

 この時、俺は光鳥に殴られる覚悟でいた――男嫌いなのを知っていながら、そんなわかりきっている質問をする俺に怒りを感じ、殴られる覚悟でいた。
 けれど光鳥は。

「……確かに、私は男が嫌いだ。この世で一番嫌いだ……信頼できないし、信用もできないと思っている」
「そっか……じゃあ――」
「だけど! ――今回は違う。私と友達間の、本来ならば聞きたくもないであろう重苦しい話を、途中で投げずに、最後まで真剣に聞いてくれた。
 私は――私は、そんなお前を、織川を、信用してもいい。と。少しだけだが、思った。思ってしまったのだ。だから……」

 私の、力になって欲しい――。

 それは、出会ってから初めての、光鳥からの頼みごと。
 脅されたときには、俺が同級生女子の助けをすることになろうとは思ってもいなかった。
 頼りにしてくれている。
 光鳥が俺を頼りにしてくれている。
 「同級生女子」が、「俺」を、「頼りにしてくれて」いる!
助けになれることの嬉しさと、受け入れてしまったという若干の後悔を持ちながら、改めて光鳥に言う。

「わかった。俺は、お前のことを出来る限り助けることにする!」
「っ……だから、お前って言うな、馬鹿……」

 俺に頼ってしまったことを後になって気恥ずかしく感じたのか、光鳥が小さな声でそんなことを言いながら俺を足で軽く蹴る。いや、蹴るなよ……。
 というか、野鳥の話をしてたときもそうだったが――

「光鳥って結構可愛いところあるよな……」
「?! き、気持ち悪い! 死ねっ!」
「痛え!!」

 俺のぽろっと出た言葉に驚いた直後、酷すぎる発言と共に俺を今度は軽くではなく、全力で蹴ってきた。
 しかも脛をだ。
 なんてことしてくれる……。

「やっぱり男なんて嫌いだ……エロいだけの生き物だ……私が……か、可愛いなんて、そんなこと絶対に有り得ないのに……」

 顔を少し赤らめ、俯きながら、ぶつぶつと呟く。
 機嫌損ねちまったかなあ……。

「と、とりあえず、織川! 今日のところは解散だ。もうすぐ五時だしな」

 前言までの感情を払うかのように、光鳥がはきはきとそう言う。

「そうか。わかった。……ところで、光鳥って帰り道どっち方向だ?」
「西だから……うん。あっちだな」

 光鳥の帰り道は、俺の帰り道とは正反対の方向だった。

「そっか――俺はこっちだから。じゃあ、また明日」
「ああ、明日、な。……よ、よろしく頼むぞ織川っ」

と、二人とも挨拶をし終わったところで、家へと帰る方向の道を歩く。
 今日のの最後に、いいことをした。
そんなことを思いながら、俺は帰路へと着く。
夕焼けがとても綺麗な、その道を通って。

21:空き缶 ◆KnlY:2013/01/19(土) 14:53 ID:T2o


               * * *

午後五時十分過ぎ、何事もなく家へと帰還。

 「ただいま」

台所で洗い物をしている母さんに声をかける。
 
 「あーおかえりー。弁当箱出しちゃってねー」
 「はいはい」

言われ、俺は鞄の中から、中身がなくなって朝よりも軽くなった弁当箱を、弁当袋の中からの取り出し、母さんに渡す。
中身があまり減っていない水筒は、テーブルの上へ。

 「今日は遅かったわねえ。何かあったの?」
 「うん、まあ、色々とね」

俺は曖昧に答える。
「実は同クラの女の子にストーカーされた挙句、俺その子に頼みごとされちゃってさー、いやはや参った参った」
なんて言えるわけがないだろうが、どう考えても。第三者には、俺が相手から聞いた話を漏らすことはなんとなく出来ない。
いや当たり前だと思うけれど。

 「へえ、色々と、ねえ」
 「母さんまで羽森と同じようなリアクションすんなよ!」

ニヤニヤと笑いながらそういった母さんに、鋭く突っ込む。

 「――あ、そうだ羽森君で思い出した。私がいない間に、真翔向けに羽森君から電話が入ってたわよ。留守電」
 「あいつよく頻繁に家電掛けてくるなあ……」

俺何か電話されるようなこと言ったっけなーと、今日一日での羽森との会話を思い出しながら、
もしかして光鳥の名前のことかなーという考えにすぐ至る。自分から『秘密』と言っといて電話で教えようとするとは。
一体何がしたいんだあいつ……。
頭の中で該当データを検索し洗い出した結果、その件しか思い浮かばなかったので、別に普通の人からだったら留守電を聞かなくてもいいのだけれど、
羽森となれば話は別だ。俺にはあいつの留守電をどんな用件であっても必ず最後まで聞かなければならないという、とある私情があるので、
テーブルに置かれている電話の留守電ボタンを軽く一回押し、待つ。
数秒後、羽森からの電話を通して、聞きなれた声が流れる。

 『もしもし真翔ー? 家にいないようだから、また掛けなくても済むように留守電話。メールにしようかなとも思ったんだけど、充電中でね。
  充電中は携帯を使わないのが僕の主義だから――ああ、話逸らしちゃったね。ごめん。やっぱり電話は話しにくいなあ、
  直話しのほうが楽だとは思わない? ――んで、今日真翔が僕に聞いてきた、あの斜め後ろの女の子の名前のことなんだけどね。
  あんまり意地悪して真翔が僕のこと避けるようになられても、関係修復すんのが面倒くさいから、素直に教えることにしたよ……
  ちゃんと聞けよ? 光に白鳥の鳥、春夏秋冬の秋に夢寐の寐で、光鳥秋寐。それがその女の子の名前だよ――
  もしかして帰り際に直で聞いてたりするのかな? そうだったら別にいいんだけど――おっと来客だ。それじゃあこれで切ることにするよ。
  じゃあね真翔、また明日ー』

そこで留守電は切れる――と同時に、俺はすかさず電話の液晶ディスプレイを見る。
そこに映し出される文字は――二分三十八秒。
近くに置いてあったチラシの裏側に、その時間を速やかに記入し、その上に《羽森留守電総時間ランキング》とペンを走らせる。
羽森留守電総時間ランキング――ネーミングセンスゼロとか言わないで欲しい――は、用件以外のどうでもいい話を必ず一つは盛り込む羽森の留守電が、
いつも長いことに対して、俺がぱっとそのとき思い浮かんだひとつのランキングだ。
今日のタイムは、三日前の二分二十秒を抜き見事三位へランクイン。ちなみに一位は一ヶ月前の十八分九秒。
用件については……うん、聞かないでくれ……年齢制限かかるような話が含まれているから……(イージーエロとハ−ドグロ的な意味で)

22:空き缶 ◆KnlY:2013/01/19(土) 20:46 ID:T2o


 「今日も長かったなあ。まあ、そうじゃないと意味がないんだけど」

そう言いながら、俺は二階へと続く階段を昇り始める。

 「――うおっ……なんだ真翔、今帰ってきたのか?」

二階へと着くなり、姉ちゃんが自室からタイミングよく出てきて、俺にそんな質問を投げかける。
なんだか言葉が男っぽい。

 「そうだよ。まさか姉ちゃんより遅く帰ってくることになるとはな」
 「ね〜。びっくりしたもん。家に帰ってきたとき、まだ真翔帰ってきてなかったから」
 「珍しいだろ」とだけいい、返答を待たず、俺は自室の明かりを付け、入る。

学校の制服から、上下動きやすいスウェットへ。
制服から自分の携帯を取り出したところで、思い出す。

 「……光鳥のメアド貰うの忘れた」

がっくりと肩を落とす。
最初に聞いたときは物凄い罵詈雑言をあびせられて、「これは無理だ」とすっかりさっぱり諦めてしまった俺だけど、
これから光鳥の抱える問題に手を貸していくとなると、学校外でも連絡の取り合いが出来なければならないと思い、
帰り際に聞こうと思っていたのだが――

「なんで忘れたよ自分……」

でもそのあとに蹴られたりしたから、まあ忘れちゃったのもしょうがないと無理矢理自分に言い聞かせ、携帯を開く。
中学の四月に入手したクラスメートのメアドは、クラスの約半分の人数十八人分だったが、高校になってから、
今現在入手したのは一つもない。強いて言うなら、メアド変した羽森のみだ。メアドの件にだけ関して言えば、
やはりあいつは、俺とは比べ物にならないくらいの人気者なんだな、と再確認させられる……。

「そんなすごいやつと中学の時から一緒にいられるなんてことは、やっぱ幸せなことなんだよな……」

知らぬ間に、口から思いのままの言葉が漏れた。
やはり俺も、クラスの皆にに馴染まないと――仲良くしないと駄目なのだ。
羽森がいなくなってしまって、独りになってしまうのも十分にありえるんだぞ?ということを、もう一人の自分が言う。
わかっている。何年後、あるいは数日後。そんな日が来てしまうときが来ることを、わかってはいるのだ――頭の中では。
でも、体が動こうとしない。まるで俺の意思に反するかのように。

23:ねこ:2013/01/19(土) 21:36 ID:QdU

空き缶さん!全部読みました!! 楽しかったです!
また続き書いてください!  楽しみにしています!!!

24:空き缶 ◆KnlY:2013/01/19(土) 23:21 ID:T2o

>>23
うおおおおお私は嬉しさで今叫びだしそうですよおお!!www
有難うございます、その言葉が私のパワーの源ですww
これからも是非、お付き合いください(`・ω・´)

25:空き缶 ◆KnlY:2013/01/20(日) 12:19 ID:T2o


 「どうしよう、俺、このままじゃ、独りに――」
刹那。

 「私の大切な弟よおぉぉぉぉお!!」
 「うぇあぁぁぁあ?! あ?!」

俺の扉に耳をつけ、帰ってきてからの全てを聞いていたのではないかと思われる(←?!)姉ちゃんが、
部屋の扉を開けるなりなんなり猛烈なスピードで俺へと一直線にダッシュし、抱きついてきた。
 
 「ちょ、っと! ね、姉ちゃん?」
 「私の可愛い弟よおぉぉぉぉお!!」
 「……姉ちゃん?」
 「私の大好きな弟よおぉぉぉぉお!!」
 「いや姉ちゃんちょっと一回落ち着いて俺の話を静かに聞け!」

軽く怒鳴るようにそう言うと、姉ちゃんは取り乱しすぎということに気がついたのか、
さっきまでのことが嘘のように静かになった。
……ちょっと静かになりすぎてないか?
まあ、別にいいか……。

 「んで? なんで姉ちゃんは俺の部屋の扉に耳をつけて、話――っていうか、独り言を、盗み聞きしてたんだ?」
 「いやあ。えっとねー、簡潔に言うと、弟のことが最近ちょっと気になってしまってですね」

あはは、と笑いながら言う。
いや、笑えねえよ……。

 「……それは、どういう「気になる」だよ……?」
 「うんと、……真翔の、学校のことー、とか」
 「どうして気になるんだ?」
 「いや、だって、高校入ってからもう一ヶ月も経つのに、まだ新しい友達とか家に呼んだりしてないんだもん。
  そりゃ心配になるって」
 「…………」

どうしよう。
実姉に友達の心配をされてしまった。
なんてタイムリーな……。
しかしこれには返答に困る。
友達いないのを真面目に知られて、余計な心配かけたくねーしなあ。
そう思い、俺は、

 「……あー、最近羽森も呼んでねーからな……そう思われんのも仕方ねーか」

と、「俺クラスにちゃんと友達いますけど、皆塾とか習い事とかで忙しくって俺ん家来れないんですよ。いやあ困りましたね」
的な感じになるべくなるよう努力して言ってみた。主に「仕方ねーか」のところをちょっと強調してみたり。
気になる姉の反応は、

 「ふんふん。どうやらその言い分だと、クラスにちゃんと友達はいるっぽいねー。よかった、安心安心!」

よし、姉ちゃんにはうまく隠すことができたみたいだ。ほっと安堵する。
 
 「そっかー、私の杞憂だったかー。まあそうだよね! こんな素晴らしい弟に友達がいないわけがないよね!」
 「あは、ははは。姉ちゃんはやっぱわかってるなあー……」

いや、俺、姉ちゃんにどんだけ信用されてんの?
弟を微塵も疑ったりしないのかよ。
ある意味怖いよ。
利用したりしちゃいそうでさ。

 「じゃあ毎日楽しく高校生活をエンジョイできているんだね?」
 「だよ」
 「そうかあ。良かった良かった。よし、そんなご褒美として私が抱きしめてあげようではないかー!」

?!

26:空き缶 ◆KnlY:2013/01/20(日) 15:31 ID:T2o

 「喜べ、こんな可愛い姉に抱かれてもらえるのだから! いざ!」
 「自分で可愛いとか言うな……っ?! ちょ、待て……姉、ちか……いやいやいやいやいや」

待てよ! 俺の返答を待てよ!
つーか今更だけど、姉ちゃん、朝とキャラ大分違うな!
なんでだよ!
……あれか?
デレ期か?
今夜限りのデレ期か?!

 「おお、おおお? 随分と良い体つきになったもんだなー!」
 「う……っちょ、変なとこ触るなって……! っ……!」

いや、これ、誰 得 展 開 だ よ !
やべえこれ下手すると姉ちゃんに殺される性的な意味でも精神的な意味でも身体的な意味でもどんな意味でも!
近親相なんとかは嫌だ!
そんな超展開は本当一部の野郎共にしか得じゃないから!
一般で受けるような話じゃないから!
官能小説になっちゃうから!
一番致命的な読者離れ起こしちゃうから!!
そしてアク禁になっちゃうから!

 「ふふふ……そんなことで私を離れさせられると思うなよ?」
 「きゃー! きゃー! きゃー!」
 「ちょっと、静かにしてってば。堪能できないでしょうが!」
 「きゃー! きゃー! ぎゃー!」
 「某大人気小説の小学五年生迷子女子みたいな悲鳴出しちゃって! さあ私に食べられろおぉぉぉぉ!!」
 「ぎゃあああああ!!」

全力の悲鳴と共に、全力で姉ちゃんを蹴る!
もう手加減なんて無用だ!
後ろへ姉ちゃんが倒れる!
……手加減してないから結構痛いだろうな……。

 「いつつつつ……まったく」

起きながら、

 「酷いなあ真翔は。なにも蹴らなくたっていいじゃないの」
 「姉ちゃんもう黙ってろよ! 俺に非はねえよ!」
 「何だってえ?!」

どえー!と、一昔前のアニメによくありがちな声とポーズをしながら、姉ちゃんは床にごろんと寝転ぶ。
一時はどうなることかと思った。
いやマジで。
結構洒落にならなかったぞ……?

27:空き缶 ◆KnlY:2013/01/20(日) 16:15 ID:T2o

 「はっはっは」

一笑い。そして俺を一瞥してから姉ちゃんは、

 「でも……こうやって姉弟でさ、ふざけ合ったりするの、
  中学とか入ってから全くしなくなっちゃったからさ……
  つい暴走しちゃったよ」

でも、ちょっとやりすぎちゃったかな、と。
笑いながら、しかし今度はどこか懐かしむような声で、そう言った。
しんみりしてしまうからやめてほしい……。
まあ、でも――

 「………さっきみたいな際どいもんじゃなければ、
  付き合ってやらないこともないけどな」
 「あらん、マジで?」
 「暇だし」
 「優しいねえ、優しすぎて――殺りたくなってきちゃうよ」
 「なんだよ今度はヤンデレかよ怖いからやめろよ目がマジなんだよ」

一体俺の姉はどんな方向へ向かおうとしているのだろう。
一部マニアも掴みにかかっているつもりなのだろうか。
床から元気よくガバっと起き上がる。

 「ようし! そう言われたらなんだか元気出てきた!」
 「そっか」
 「今ならご飯五杯は休憩なくいけるよ!」
 「よかったな」
 「そうと決まれば!」
 「お?」
 「明日からは真翔と毎日欠かさずふざけ合おう!」
 「迷惑すぎる!!」

そこまでの体力は持ち合わせていない!

28:空き缶 ◆KnlY:2013/01/20(日) 17:32 ID:T2o


                * * *

姉ちゃんとの会話を終わらせたところで、丁度よく母さんが「夕飯だよー」と俺達に呼びかけてきた。
共に一階へ降り、夕食を食べる。父さんはいつも帰ってくるのが遅いので、三人で。
ちなみに今日の夕飯は、レトルトカレーとサラダという至って手抜……質素なものだった。が、それがいい!
ジャンクフードは大好きだぜ!
体に悪くともな!

「ご馳走様」とだけいい、二階に駆け足で上がる。駆け足なのは気分だ。
そして俺の部屋へ入ると、扉を勢いよくばたんっ!としめる……閉めなくてもいいのだけれど、
ひょっとしたら姉ちゃんや母さんが入ってくるかもしれないので。
これから如何わしい行為に及ぶわけでは決してないので、どうか安心して欲しい。
やることがあるのだ。
日々の日課、というやつだろうか。

高校生になって新しくした学習机。その上に置いてある、姉ちゃんからのお下がりノートパソコンを開き、電源を入れる。
デスクトップが表示されるまでの少々長いとも思える時間、特にすることもなく、ただじっと待つ。
数十秒後、何百回とも聞きなれた効果音と共に、デスクトップが画面に映し出される。
飾り気のない、青一色の背景。左側に並べられた数個のショートカットアイコン。
その中のゴミ箱にゴミが入っているのを確認した俺は、ゴミ箱のアイコンをダブルクリック。いらないことを今一度確認。削除。
次、インターネットエクスプローラーをダブクリ。その次、グーグル先生への質問タイム。今日の中で気になったことを調べる。
そうしないとなんだか気がすまないんだよ俺。

そして、最後。


羽森のブログチェック。



「あいつがブログやってるなんて、未だ信じられないぜ」

どうやら高校入ってからすぐにやり始めたらしい。
中学の時の友達数名からメールで噂話程度で聞いてはいたのだが「嘘嘘見え透いた嘘」と嘯いていたので、
本人には聞いたりしていなかったのだけど、一昨日だったか、ふと気になって、羽森にメールで「ブログやってるんだって?」
なんて面白半分で聞いてみた。すると思いのほか早い返信が、「やってるよ☆(゚∀゚)☆」とふざけた顔文字付きで送られてきたのだ。
どうにも信じられなかった俺は、そのあとも「いやいや、本当のこと言えよ」とか、「この嘘つきがあああ」とか、
うざったいにも程があるメールを送ったりしていた。律儀に一つ一つ返してくる羽森に呆れて俺の方からやめたのだけど、
実際ブログのタイトル検索してみたら本当にあってびっくりした。椅子ごと後ろに倒れた。

『羽付きの森住み人』。それが羽森のブログタイトルだ。よく見ると羽森という苗字が入っているのが、いかにもあいつらしい。
特定されたりしないのかな。

29:空き缶 ◆KnlY:2013/01/20(日) 23:20 ID:T2o

ブックマークに登録してある項目をクリック、画面にブログのトップページが表示される。
今日は更新されてるかなーと思いながら、下へと画面をわずかにスクロールさせる――おお、更新されているみたいだ。
ちょっとばかりわくわくしながら、俺はその記事に目を通す。

201×年5月14日:オブラート単品食いって異端?
 やあやあ皆こんちわー。羽付きの森住み人ことユーキだよー。
 今日から学校がまた始まったんだけど、ちょっと聞いて欲しい話があるんだ。
 いや、重大な話ってわけじゃないんだけどさ、オブラート単品食いの僕って異端?
 前の席の友人と話しててそのことを言ってみたんだけど、あれってさ、もしかして
 本当に皆しないの?!
 マジで?
 嘘だと言ってくれ!
 その友人にもそうはしないってするどーく突っ込まれたんだけどさ。
 もし僕とおんなじことをする人がいたらコメント欄に書いて欲しい。この感覚を一
 緒に分かち合おうではないか!(笑)
 以下、コメント返信でーす。
   ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++


 「おま、それを今日のネタにするのかよ!」

もっと他にあったろ!
色々と!
多分、ほかの出来事を全て忘れてしまうほど衝撃的だったんだろう、……そこはかとなく悪い気をした感じになってくる。
明日小言でも言われたらどうしようかな……。

記事に対してコメントしてやろうと思い、俺は画面を下スクロールさせる。
どうやらクラスメートも結構見ているらしく、コメントの中には「同クラの誰かさんでーすwww」やら
「同高一年六組三十八番のあいつだぜ((キリッ」など名前欄に書いている者もいた。
俺の気持ちも考えろよ!(意味不明な発言)
――と。
その時、一瞬見えた長いコメントが気になり、思わず目を止める。
「……?」

30:空き缶 ◆KnlY:2013/01/20(日) 23:24 ID:T2o


   ――――――――――――――――――――――――――――――
【ユーキ!】お久しぶり【ユーキ!】簸素羅木だよーん。
いや、まさか新しいブログ始めてるとは思わなかったwww探すのに苦労したよ!
私のこと知ってるかなー?覚えてるかなー?…いや、知らないし覚えてないよね。
もう忘れちゃったんだものね(´・ω・`)ユーキは私のこと思い出してはくれない
だろうけど、私はいつでもユーキのこと思い出せる。思い出し死ねそうなくらい。
つまりどういう意味かわかちゃったりするのかな(にんまり)
そう!私は!ユーキを!心の底から!愛しているっ!!wwwwどういう経緯でそ
うなるんだって感じだよね(;_;)私もよくわかんないよ。うん。
とりあえず明日学校でね!疾風の如く現れる謎のミステリアス転校生、みたいな?
演出は全て私。とにかくユーキを私は愛してい(ry
            201×年5月14日/簸素羅木@ユーキは私の嫁
   ――――――――――――――――――――――――――――――

ここで読み終えた俺が一言。

 「なんだこれ」

あまりに不思議すぎてそんな言葉しか言うことができない。
コメントするのも忘れ、その文に思考を巡らせてみる。
簸素羅木(どういう読みだよ)と名乗る人物からの、羽森へ向けた愛のコメントと読み取ることもできるが、
「忘れちゃった」「思い出してくれない」という、プラスの意味ではどうも読み取れない単語が含まれていることから、
純粋な愛のコメントでないことは確かだと思う。
それ以上に気になるのが、最後から二行目の「とりあえず明日学校でね!」という文である。まさとは思うが――

 「明日、本当に転校生として来る訳じゃないよな……」

どういうわけか背筋が冷たくなる。俺には関係のないはずなのに。
どうして。

 「まあ……あれもこれも、とりあえず明日羽森に聞けば分かることだよな、うん」

そんな気休めの言葉を自分に向けるように発してから、ウインドウをそっと閉じる。そっ閉じ。
スタートボタンをクリックし、シャットダウンを選択。おっけ。

壁に掛けてある時計を見ると、時刻はまもなく十一時といったところだった。
これ以上夜ふかしして、明日起きられなくなるという最悪の事態にならないよう、俺はここら辺で今日の作業を切り上げることにした。
切り上げるといっても、ブログチェックが最後だったので、他にやることは特にない。今日の授業の復習、と思ったが、
それは隙間時間にでもできるので、今やらなくてもいいかという結論に至る。

 「歯磨きして寝よ……」

風呂も、明日朝一で入ることにしよう。大丈夫、そのくらいの時間はあるはず。

一階の洗面所に歯ブラシなどが置いてあるので、とりあえず一階に。
リビングの様子は見ずにそのまま目的の場所へ。
俺専用の歯磨き粉を使い、歯を一本一本丁寧に且つ優しく磨く。
五分もかからずに終了。二階へと戻る。

スウェットなので着替えなくても問題はないだろと思い、そのままベッドにごろんと寝転がる。おっと、目覚ましのセットも忘れずに。
掛け布団を首のところまで上げ、目を瞑る。


――明日も、きっと今日となんら変わらない日なのだろう。


俺は深い眠りへと落ちる。

31:空き缶 ◆KnlY:2013/01/20(日) 23:32 ID:T2o

次回、新章!www
自分よくここまでやれたわ。マジ褒めてあげt(ry

32:空き缶 ◆KnlY:2013/01/21(月) 18:02 ID:T2o

攻略ナンバー002:我が儘なあいつの攻略法

夜がまだ明けきらない、冷え冷えとした空気と薄闇の中。
少女は一人の少年との念願の再開を果たすため、息を切らしながらもなお走り続けていた。
五月十五日、時刻はちょうど午前四時を過ぎた頃。
無理矢理動かす足は、少しでもバランスを崩すと今にも折れてしまいそうなほど疲労しきっている。

 「――っは、……はぁっ……!」

にもかかわらず、少女は疾走を繰り広げる。
何がそこまで彼女を駆り立てるのか?
それは誰にもわからない。
だがひとつだけ、確実なのは。
一刻も早く、愛しいあの人に会いたいと思う、この揺るがない強い気持ち――

 「待っ……てて……」

水分を長らく通していない乾ききった喉から、あるいは、腹から。
少女は懸命に――自分を奮い立たせるように、声を出す。


「……待ってて――待っていて! 私の結城!」


もうすぐ。
もうすぐ、あなたに会いに――。

33:空き缶 ◆KnlY:2013/01/21(月) 18:48 ID:T2o

ここで視点は真翔へと戻ります。
君はこの展開についてくることができるか(暗黒微笑)


                * * *

五月十五日、火曜日。
憂鬱な、朝。
寒い、朝。
全く変わる気配のない、朝――。

 「おらあぁぁぁあああ!!」

……前言撤回。いつもと変わらない朝などではなかった。
俺の耳元で、姉ちゃんのいつもの大音量声がしたからだ。

 「真翔おぉぉぉお!! あんた、いつまで、いつまで寝てんのよ!」
 「ぁ? ……なんだよ姉ちゃん……まだ行ってなかったのかよ、今日は久々にいい夢が――ちょっと。おい。何さ」

自分の左手に巻いている腕時計を、近すぎるとも思える距離まで近づけて見せてくる。

 「はい、今何時?」

質問された。
寝ぼけ眼で、時計盤を頑張って見ようとする。

 「えーっと、……今だいたい七時五十八ふ………………………………………………え?」

時刻を口にした途端、しばし硬直。

Q.これはつまり……どういうことだ?
A.つまり、こういうことです(笑) 返答者:神

以下、これが神の答えだ!
 
 「はい大正解ー。つーまーりー? 朝ごはんをまだ食べていない真翔はー?」
 「ヒャッハー! 大遅刻ですねわかります! うあああああなんで起こしてくれねーんだよ!!」
 「高校入ったら自分から起きるって入学式の前の夜にドヤ顔で私に宣言したのは真翔の方だけどね! あはははは!」
 「うわうぜえ超うぜえこの姉! ちょ、先に行こうとするなよ!」
 「私は無遅刻無欠席目指してますからあー! 三年間頑張ってやってきたのにここで水の泡にしたくありませんからあー!
  じゃあね真翔学校で! 無様に遅刻するがいいわ! あっはははは!」
 「遅刻支援階段からこけてあと少しのところでチャイムが鳴ってしまえばいいのに!!」

くっそ、昨晩少しでも可愛いなあと思ってしまった俺が馬鹿だった!
いやいやそんなことより、これ昨日の倍やべえぞ!
高校入ってからきちんと食べていた朝ご飯記録も無遅刻記録も、一ヶ月で途切れてしまうのか?!
それだけは避けたい!なんだか避けたい!でもそんなこと言ってられない!
そうとなったら――今日は見逃せ、母さん!
明日からはちゃんと食べるぜ!

そう心の中で叫びつつ、鞄の中身をチェック。制服に三十秒で着替える。
顔を洗うのも、寝癖を直すのも忘れて、俺は玄関の扉を、壊してしまいそうなほどの勢いで開ける。

 「いってきまああああああす!!」

そしてそこから先は昨日と同じく猛ダッシュ!
驚くことに、南堂高の校門へは短い時間――九分程だろうか――で着くことができた。
これなら、いける!
そう確信した俺は、昇降口で上履きに素早く履き替え、あの階段へと挑む――!!

34:空き缶 ◆KnlY:2013/01/22(火) 18:13 ID:T2o



――結果はもう皆わかっているだろう?
遅刻したさ。
無様にな。
「真翔は本当に馬鹿だなあ」なんて軽く言う羽森が、今回ばかりはなぜか恨めしい。
あと馬鹿って言うな。
馬鹿っていう方が馬鹿なんだぞ。

 「だれも俺が階段からすっ転ぶなんて予想しねえよ」

姉ちゃんが階段から転んで遅刻というシナリオのはずだったのに、なんで俺が転んだ。どうしてこうなった。
俺の姉ちゃんは運命をも揺るがす強大な力を持っているというのだろうか――ふっ、まさかな(悪役風)

 「真翔はいっそ清々しいくらいの馬鹿だよね。尊敬しちゃうよ」
 「清々しいくらいの馬鹿なことを尊敬されても全然嬉しくねーよ」

そしてまた馬鹿と言ったな。
馬鹿っていう方が(略)

 「…………あ、そういや話してて思い出した。あのさ、昨日の羽森のブログ記事のことなんだけど」
 「あれ、見てくれたの? オブラートの記事」
 「ん? ……ああ、うん、見た。勿論見た」

ついでなので、昨日抱いたそれの疑問を解消しようと思う。

 「お前なぜあれを書こうと思った? もっと他にあっただろうよ」
 「衝撃的すぎてそれ以外思い出すことが出来なかった。今も反省していない」
 「予想通りかよ!」

全面的に俺が悪いことが本人の証言によって決定づけられてしまった。反省していないって、お前が反省することでもないだろう。
……むしろ俺が反省するべきではないのか、これ……。

 「仕方ないじゃないか。最近面白いこと書けなくなってきちゃってるんだよ――どうしたらいいと思う?」
 「いや、聞かれても全然わからねーし」

「まあ、取り敢えず出来事メモでもしとけば?」と投げやりにも程があるであろう返答に「おお。なる程」と納得したような羽森。
どうやらナイス回答だったらしい。イエイ俺、冴えまくり。
関する疑問を解消することが出来たので、ここらでその話を打ち切ることとしよう。次だ次。
一番気になったことだ。

 「そんでさ、その記事のコメント欄の話。俺さ、ざーっと見てて、一つだけ気になるのがあったんだよな」
 「え? コメントの話?」
 「え? ……もしかして、お前見てないのか?」
 「うん。昨日は夜遅くの更新だったし、そんなすぐ来ないだろうなーと思って。あと眠かったし」

知らないとは予想外だった。なんだよ、俺が話さないと進まないってわけかよ。

――ああ、そういえばだが言うのが遅れてしまって申し訳ない。今のこの時間は、朝のHRも、
一番眠いと思われる一時間目も終わった、二時間目前の休み時間である。俺が盛大な遅刻をかました事以外は、
そのあと何も起こっていない。昨日のコメントにあった「転校生」というワードだが、学校での転校生紹介は、
朝とだいたい相場が決まっている(と思う)ので、これは外れたと言っていいことになる。

35:空き缶 ◆KnlY:2013/01/22(火) 18:31 ID:T2o

まあ、ただ単に朝のその時間に間に合わなかった可愛いドジっ子というオチか、
これ自体がまっぴらな嘘というオチか――まだどっちということが決まったわけではないので、
安心するにもしきれないのだが。

前者のドジっ子ならば、明日改めての紹介ということになることになるので、今日来る可能性は極めて低いと言えよう。
後者の方ならば――いや、これには「ならば」も何もないな。からかっただけの悪戯コメントだったねで終わるだけだ。

羽森にどう簡潔に伝えて話を進めようかと考えていると、何か相手が動作をし始めた。

 「…………何やってんの」

言うと。

 「真翔が言ってた記事のコメントを見ようと思ってさ」

大方予想どうりとも言える答えが返ってきた。

 「ああ、お前もスマホだものな。いいねえ便利で」

そこではっとする。光鳥がスマホだったなー、と思ったせいか、同じ人が他にもいるみたいになってしまい――
いや、実際クラスにスマホ使ってるやつらはごまんといるのだけれど、そこのところの勘が無駄にいい羽森は「僕も?」と、
「も」の部分を強調するような感じで俺に尋ねてきた。若干やばい。かもしれない。

 「い、いや、六組だけでも使ってる奴結構いるよなって、うん、思ってさ。はは……」

慌ててごまかした俺を見て、どこか探るような顔をしながらも、羽森は「……そう」と言うのだった。
セーフ。

そういえば、今日は遅刻したせいでまだ光鳥に話しかけてなかったな。
次の休み時間にでも接触を図るとしよう。

 「だったら買い換えればいいだろ。ガラケーの時代はとっくに過ぎたよ」
 「言ってやるなよ……」

数十秒の沈黙。その後羽森の発した「あったあった」という喜びの声で、それは打ち破られる。

 「これでしょ? 簸素羅木って人からの」
 「そ。つーか簸素羅木って書いて「ひすらぎ」って読むのか。なぜ読めたよ。……でもなんと中二臭い名前……」

当て字すぎんだろ。
本名だったら驚きだが。

 「これがどうかしたの?」
 「それについては内容読めばわかるからさ」
 「ふうん」

そう言い、羽森がコメントに深く目を通し始める。無意識だからか、目と画面との距離が近いような気がする。
どんなときにも、対象物からは離れて見ような。

 「転校生……」

俺が一番気になるワードを口にした羽森に気づき、そして即座に対応。

 「それ、それなんだよ。お前ん所にさ、明日南堂高に転校することになった〜とか、報告してきたやつって」
 「いいや、いないよ。誰も。この名前も知らないし……」

うーん、と唸る。

 「……そっか。知らないんなら別にいいんだ。ありがとな」

わざわざ表示してくれた羽森に礼を言う。

 「真翔、なんっかやけに素直だな。気持ち悪いからやめてくれる?」
 「最後の最後にその毒舌かよ!!」

せっかく人がお礼してやったのに……。

今日の羽森も、どうやらいつもどおりで異常は特にないようだった。

36:空き缶 ◆KnlY:2013/01/22(火) 18:39 ID:T2o

主要キャラとなり得る可能性が極めて高い人物:簸素羅木(ひすらぎ)
羽森のブログおとある記事にて、怪しげなコメントを送ってきた人物。
性別不明、年齢不明、住居不明。何もかもがとにかく「今の時点では」不明。
不明のゲシュタルト崩壊。

果たしてこれは>>1000までに終わるのであろうか……多分終わると思うけどさ。
感想コメ待っています!読みにくいおwwwwうぇwwwみたいな感じでもいいのです。イインデス。
でも荒らしはノー。アク禁送りにしてやるんだからっ。
さて次はみんなお待ちかね(でもない)の光鳥ちゃん登場です。
口調不安定とか言わないであげて!まーたツンデレキャラかよとか言わないであげて!

37:空き缶 ◆KnlY:2013/01/24(木) 17:18 ID:T2o

前レスで次とか言ったけど次じゃなかったよ。


                * * *

どれくらい走っただろうか。

最後に言葉を発してから約六時間半――貧弱な人間であれば身体が限界を超え、至る箇所から痛みという悲鳴が上がっているはずであろうが、
少女にその気配は全くと言っていいほどなかった。
常人離れしているのだ。
とっくの昔に。
しかしそれでも精神は相当疲れているらしく、長時間走りっぱなしでいた足を止めると、その場に止まるとともにへたりこんでしまった。
肩にかけていたショルダーバッグもずるりと落ちてしまう。よりによって道路の真ん中で。

そして同時に顔には出さないが驚愕。こんな危険な場所を、私は走っていたというのか。まあ、でも――よかった。事故に遭わなくて。
思う。心から思う。

結城に会い、言葉を交わすまでは死ねないから。
何があっても。

そこで不意に気づく。そういえば水分はあれからも一度たりとも含んでいない。干ばつした土地のように乾ききった喉は引き攣り、
まさかおかしくなっているのではないのかと思うほど。
そう錯覚するのも無理はなかったと言えよう――口から、一時的なものではあるのだろうが、声が出なくなっていたからだ。

――水。
自分の中の本能がそう言葉をかける。
意識的にあたりをきょろきょろと見回す。が、視界に入るのは二階建てのアパート、一戸建てが数件と電柱三本。それと――学校。
公園でもあれば良かったのに、と口だけを動かし言う。なんと不便な土地だ。

 「――ょ、ぅが…………ぃな」

駄目元で声を出そうとしてみると、わずかだが本当に出た。少々の感動。

水がある場所といったら人が居るところだが、アパートの中や一戸建ての中への侵入は流石に無理だと諦める――
まだ暗い時間帯ならば実行することも可能であろうが、今現在は、太陽の上がり具合や自分の感覚的に、午後十時半といったところではないか?
難易度が高すぎる。
となれば、消去法で学校に行くしかないのか。単純な思考を巡らせた末辿り着く。
幸いというべきか、今日は珍しいことに制服を着ている。

南堂高校とやらの制服だ。

そこに今日転入する予定だったのだが、盛大に集合時間を破ってしまった。明日へ繰り越しになるのだろうなあ、と思うとだるんとしてしまう。
転居先の家に今すぐ帰って水を貪ってもいいのだけれど、学校というところがどのようなものか、久々に見てみたいという気持ちもあった。

その足で既に視界に入っている学校へと向かうためによろよろと立ち上がる。
突っ返されたらそれはそれでいいのだ。というかむしろそっちの方がいい気がする。
少し重いショルダーバッグを持ち上げ肩にかけ直し、ふらつく足で歩き始める。
今度はちゃんと歩道を通って、ね?

38:空き缶 ◆KnlY:2013/01/24(木) 18:33 ID:T2o


                * * *

二時間目は、教科に関わらずだるい授業だと思う。
三時間目の気分で授業を受けていたり、時の流れるのが異様に遅かったり――
あの時間帯だけ、通常空間から切り離されているのではないかと錯覚するほどだ。
言い過ぎ? ……だよな、そう思う。
なんだよ通常空間から切り離されている(笑)って……自分で思ってて何とも言えない気持ちになるよ。
中二男子が聞いたら嬉々として様々に語り始めそうな単語だよ。

そういうわけで結局なにが言いたかったのかといえば、二時間目のチャイムが鳴ると、「やっと終わった」と
感じる人が多いのではないかということ。
俺がまさにその一人。

次の授業にわくわくしてたりすると遅く感じるのかなーと思いつつ、体全体から疲れを取り払うように伸びをすると同時に欠伸がでた。
眠い……。
後ろの羽森がくすっと笑ったのが聞こえた。お願い笑わないで。そこはかとなく恥ずかしくなるから!
可笑しそうな顔でこちらを見る羽森に特に声をかけることなく、ゆっくりと立ち上がり、光鳥のもとへと行こうとする。

と。

 「……あ」

顔を上げた光鳥と目が合う。なんということだろう。あちら側から気づいてくれたではないか。
早歩きになりながら、空いている椅子にスライディング着席。そして謝罪。

 「悪い、話にくるのが遅れて……」
 「……全くだ。入学一ヶ月後で遅刻をしでかすとは、やれやれだな。夜ふかしはしすぎない方がいいぞ」
 「だな。気をつけるとするよ」
 「ああ…………っと、織川」

応答しながら何かに気づいたのか、最後俺の名前を小さく呼ぶ。

 「ん?」
 「ここじゃあ何だから、廊下で話さないか?」

謎の誘いだった。

 「なんでわざわざ廊下って痛ぇ!!」
 「くっ……馬鹿が。察しろ。空気の読めない馬鹿が」

足を思いっきり踏まれた。容赦ねえな、こいつ。力ありすぎ。そして馬鹿と二度繰り返したな、馬鹿って(略)
光鳥の言葉の意味がよくわからず、周りをちらっと見やる。
特に変わったところはないと――いや、あった。

 「……ああ、そういうこと」

先程からこちらを見てけらけらと笑ったりだのしている、窓際最後尾の机に集まった三人の小さな女子グループ。
それを光鳥は指していたのだろう。
更に椅子に座ってドヤ顔でふんぞり返っているのが件の我が儘っ子かな? 決定的ではないのだけれど、直感的に。オーラで。

 「うん。だから、ほら、外……」

外へ促す光鳥と促される俺。これだけならば、甘酸っぱい展開になること間違いなしなのだろうが……残念、
そのような展開ではないのだった。

39:空き缶 ◆KnlY:2013/01/24(木) 19:07 ID:T2o

言われたとおりに廊下へと出る。窓から差し込む太陽の光がとても暖かそうだ。

 「うお、結構人いるのな」
 「同じ中学校出身の奴らと話してるんだと思う」
 「はあん」

そんなことするくらいだったら、同じクラスメートでまだ話したことない人との交友を深めろよ、
と、内心で自分のことを棚に上げてそう思った。

 「そんなことするくらいだったら、同じクラスメートでまだ話したことない人との交友を深めたらどうなのかと、
  意見を言いたいところだ」
 「お、おう……」

びっくりするくらい同じこと考えてやがった。
一字たりとも違わねえ。

 「そんで、光鳥。なにか解決策は見つかったりしたか?」
 「ん? ああ……いや、何も……。できる限り考えはしたのだけど、いざ実行しようとなると難しいものばかりで……」
 「ど、どんな方法を考えついたんだ?」

おそるおそる聞いてみると、

 「脅迫に暴力、略奪や、話し合い言葉責めその他エトセトラ」

とんでもない答えが返ってきた――――――っ!?

 「最悪すぎる! 話し合い以外でまともな方法がねえ! むしろ尊敬するよ!」
 「最悪なのを尊敬されても嬉しくない」

ごもっともな発言だった。

 「というかそういうお前はどうなんだ、お前は。私にそのようなことを言えるということは、私よりまともな解決法を、
  思い浮かべたりできたということだよな? うん?」
 「目が怖いッス光鳥さん……。……えっとぉ……ぶっちゃけると俺、話し合いくらいしか思い浮かばなかった……」

素直に言う。

 「よし、私に謝れ」
 「サーセンでした」

そして素直に応じる(少しの反抗有り)
さて、ここまでの話から一時的な結論を出してみそ。

 「でもさ、真面目な話、話し合いが一番じゃないか?」
 「どうして」
 「どうしてって……今出た案の中から選ぶとしたらそれしかないだろうが」

言葉責めで相手側を屈服させるのもありかな、と思ってしまったのだが(愚かしいにも程がある)、それは絶対と言っていいほど違うだろう。
もしかしたら今よりも関係がぎこちなくなる可能性大。極めて危険。
つーかもしそれで決定して、俺が光鳥の代わりに言うとかなったらできる自信ない。無理。

 「それは確かにそうなんだけども……も少し他も考えてみないか?」
 「話し合いが嫌なのか?」

率直な疑問を口にする。

 「……できれば避けたい」

俺とは反対の方向に目をやりながら、光鳥はジトッとそう答える。
自分から話で決着をつけるのが嫌なんだろうな、きっと……。プライドの高い女子だあ。

40:ねこ:2013/01/24(木) 22:27 ID:QdU

う〜〜〜ん 読んでてあきないねぇ・・・ 
 続きが気になるなぁ。  空き缶さん、小説すごくおもしろいです☆☆

41:空き缶 ◆KnlY:2013/01/24(木) 23:10 ID:T2o

久々のコメントにニヤニヤしてる私きm(ry
>>40
舞い上がりすぎてこけないようにしたいと思います(笑)
レス有難うございます。

42:空き缶 ◆KnlY:2013/01/25(金) 17:11 ID:T2o

 「でも、いつまでもそう言ってたらなんにも解決しねーだろ。俺たちが折れなくちゃ何も動かないさ」

諭すように、ザ・俺的優しげな口調で言ってみたが――むしろ逆効果じゃないか? 刺激しちゃったりしてないか? 大丈夫か?
躊躇うような仕草を見せながら、

 「ん……、そう……なのかな?」

どうやら完全に杞憂だったらしい。

 「少なくとも俺はそう思うんだけど」

ここで駄目だったらまた解決法練り直さなくちゃなーと心で思いながら口にする。

光鳥の問題に、一人全く無関係の人間が関与するとなっても、一番尊重すべきは本人の意思に変わりない。 
無関係なら無関係なりに案だけ出して引っ込んでいればいいのだ――うん、偉そうなこと言ったけどパーペキ今の行動と矛盾してるなこれ。
光鳥諭そうとしてますし。

 「そうか……そうだな、うん……私が話を始めなければ何も変わらないものな……!」

決心した光鳥を見て、俺は少しだけ安心する。深く考えすぎて勝手に精神崩壊されてもな。

 「そんじゃあ、あの我が儘っ子グループと話し合いをするでいいのか?」
 「うん。そうすることにする」

本格的に決定。

 「おっけ。……問題はいつ話し合いするかだよなあ。光鳥、あのグループとの会話は可能か?」
 「略奪された二人に話をすれば問題ない」
 「略奪って言い方やめろよな……」
 「ふん、本当にそうされたのだからそうとしか言い様がないだろう…………ああああ、思い出したら腹が立ってきた。
  くっそあのアマめが。今に見てろよ……次にぼっち化するのはお前の方だからな……」
 「怖いわー光鳥さんマジ怖いわ――――!!」

復讐心に燃え悪と化する、人間凶器光鳥秋寐。
これほどこの世で恐ろしいものはないだろうと密かに確信した俺であった。

最後に一つ。

 「あとさ、お前は口にもしたくないことだろうけど、あの我が儘っ子の名前、教えてくんねえ?」
 「なぜ」

どうしてそこで理由を聞き出す?

 「いや、我が儘っ子って無駄に言いにくいから嫌なんだよね。だから教えてくんなまし」
 「……まあ、ここは仕方ないな。教えてやるからちゃんと覚えろよ?」


穂志碧月。


それがあの我が儘っ子の名前であった。

43:空き缶 ◆KnlY:2013/01/25(金) 17:18 ID:T2o

モブキャラ紹介1:穂志碧月(ほし みつき)
我が儘っ子。我が儘すぎて秋寐がキレるレベル。秋寐は秋寐で若干短気な部分があるからね。
ついでに容姿も加えておく。
髪型→真正面から見て右サイドテール。先っぽ巻いてます、ハイ。
顔立ち→整った顔。あと小顔。もう一度繰り返す。小顔。
背丈→結城(163)>真翔(161)=秋寐(161)>碧月(158)
なにげに結城が一番高かったりするんだよね、設定では。

44:空き缶 ◆KnlY:2013/01/26(土) 10:39 ID:T2o


                * * *

歩き出しから約二十五分。なんとか目的の学校前まで来ることができた。
あとは中へと入るだけなのだが、どういうことだか正門の鍵がかかっていた――
と思っていたらそうではなく、ただ閉めていただけらしい。

周りを気にしながら侵入。そしてあっさりと成功。
職員室に一度出向き、事情を伝えようと考えたが、それよりも水水水水、まずは水。

綺麗で使えそうな水道を探すために、昇降口を覗き、体育倉庫近くを見て回り、学校を簡単に一周する。
それにしても広い学校だな、と微かに思う。
授業に必要なバスケットゴールなどは、毎日きちんと整備されているのを思わせるし、校舎壁も古めかしい様子は全くない。
新校舎なのかと疑問を抱きながらも、探索を続ける。

が、飲み水として使用できそうな水道は見つからない。やはり校舎内に入らないと駄目なのだろうか?
けれど、もし教師に出くわした場合に、その場で適切な理由を述べられるとは考えにくい。
私の駄目な特性、緊張で、まともに喋ることすらできないのではないかと思う。

 「ゃっぱり……」

声を出し呟く。前よりは出るようになってきたが、それでも完全には回復していない。水分摂取しなければ。
そうとなれば、校舎内へ――職員室へ行くしかないのかな。
心を決め、昇降口へ向かう、その前に。
ここの高校名を確認してなかったなと気づき、正門へと行き、目をやる。

 「…………っ!」

驚き。そして、感動とともに学校名をゆっくりと呟く。
ここが――

 「市立……南堂……高校……」

それこそまさに、私が探し求めていた場所。
愛しい人との再会をするために――

 「ここに、いるんだ」

私の――私の、結城。
初めて出会った時から、ずっと想い続けている人。
思いが抑えられなくなった。
職員室に赴くのも忘れ、走って昇降口へと行き、土足のままで階段を駆け上がる。
一秒でも早く、言葉を、視線を、暖かい手を、交えたい。

45:空き缶 ◆KnlY:2013/01/26(土) 10:47 ID:T2o


                * * *

午前中授業終了を、お伝えします(営業スマイル)。
何事もなく四時間目までの授業が終わった。
光鳥は四時間目前の休み時間に、略奪者穂志碧月がいない短い時間を狙い、事前に書いていた手紙を二人のうちの一人に渡した。
授業中に、その子が手紙をこっそり読んでいるのを確認したので――びっくりすることに隣の席だった――あとは返答を待つだけだ。

その前に昼食タイム。
光鳥と約束したりしてなかったから、今日は羽森と一緒に購買に行くとするかと思い、話しかけようとした矢先、
光鳥が「購買で話をしないか?」と誘ってきたので、早々問題解決する必要があるそちらに乗ることにした。

羽森は未だに訝しげな顔でこちらを見ていたので、そのうち話さなくちゃなあと思いながら教室をあとにする。

 「光鳥ってさ、本当になんの前フリもなく話しかけてくるよな」先ほど思ったことを口にする。
 「休み時間に中話すのを忘れていただけ」

素っ気ない回答が返ってくる。「案外と抜けているところがあるんだな」と半笑いに言ったら無言で蹴られた。足が! 足が!

 「完璧超人などこの世にはいな――!」
 「それは知――っ?!」

やり取りの途中で、俺と光鳥の間を通るようにして走り去るひとつの人影が。
速すぎて確認すらままならない。

 「お、おい光鳥! な、なんだ今の?!」
 「…………」

あれ? 返答がない……?
立ったまま気絶? ははっ、笑えない冗談はよせよ(震え声)。

 「お、おい? 光鳥?」

46:空き缶 ◆KnlY:2013/01/26(土) 10:51 ID:T2o

もう一度声をかけると。

 「びっくりした……」
 「してたんですか……」

呆然とした声が発せられた。
と同時に、俺のクラスから驚嘆の悲鳴と喜びの悲鳴が。

 「一体何が起こっているんだ……」
 「わ、わからない……一旦教室へと戻るか?」
 「俺そうするわ……」
 「わ、私も」

二つ聞こえた悲鳴のうち一つは羽森の声だったように思う。馴染み深い声だ。きっとあってる。
光鳥と共に、早足で俺たちの教室――六組へと戻る。
そこで目にしたのは――


 「結城ぃぃっ! 結城結城結城ぃぃ!! 探したよぉ、もう街中練り歩いて探したよぉ結城いい!」
 「な、何!? 何この状――っ! う、わっ! ちょ、押し倒すなって……っ!」


見たことのない美少女と羽森が戯れている、なんとも画になりそうな光景。
いとをかし。
教室の様子? 想像すればわかるであろうが、誰も手を出せないような、そんな空気。
見ているこっちが混乱してきそうな図である。

いや待て。それより、どうしてこうなった?

 「お、おい、羽森……?」
 「真翔ぉぉぉぉっ! ちょっと、助けてっ――て、わ、何さ! ちょ、待っ――!」
 「結城、結城……ふふ、ふふふ……」

悲痛なSOSを最後まで俺に聞かせることなく、例の美少女がはぁはぁ言いながら羽森に馬乗りになり、顔を至近距離まで近づける。
隣にいた光鳥が顔を赤くし、背を向ける。ああ、なんとなく想像が出来る感じか……俺もだよ。
だから怒り狂いたくなった。
非リアに見せつけんなよ!
声を最大限まで張り上げて、思いっきり叫ぶ。

 「教室でラブラブちゅっちゅすんなぁぁぁぁ!!」
 「!?」

「五月蝿い静かにしろっ!」と光鳥。足ぃぃぃぃ!
何にしても俺の声は、周りのことが見えなくなっていた美少女にもしっかりと届いたらしく、
驚愕の表情を浮かべながらゆっくりと俺の方を振り向く。

 「……あは、はは……?」

取り乱しすぎていたことに気づいたのか(遅すぎる)、頬を少々赤らめながらすっと立ち上がり、着衣の乱れと自分の髪を整え、
そしてクラス全体を見るようにしてこちらを向く。
クラスメート達は、驚きと戸惑いの表情をしたまま固まっている。一番に文句を言いそうな我が儘の穂志までもが、だ。
そんなクラスの様子を気にもせず、困ったような笑顔と透き通るような美声で自己紹介を始めた。

 「あの、えっと……いきなり乱入してきて、いきなり取り乱してしまったりして、申し訳ありませんでした……。
  あ、えと……私、今日からここ――市立南堂高校に通うことになった、転入生の簸素羅木栞菜、と、いいます……。
  よろしくお願いしま、す? あは」

47:空き缶 ◆KnlY:2013/01/26(土) 10:55 ID:T2o

修羅場(笑)
キャラ名考えるのに十分は必要。

主要キャラ3:簸素羅木栞菜(ひすらぎ かんな)
性別はモチのロン女。ホモォ……なんて書けねえよ。無理無理(ヾノ・∀・`)
セミロングの位置高めポニーテイル。身長159cm。
結城厨。

48:空き缶 ◆KnlY:2013/01/26(土) 13:51 ID:T2o


                * * *

廊下で見回りをしていた五組の担任が騒ぎを聞きつけやってきたのは、自己紹介から三十秒も立たないときのことだった。
簸素羅木栞菜と名乗った美少女は、職員室へと連行された。正式な転入確認を行ってからクラスへと返すらしい。
それよりも――転校生。
本当に、これこそ何の前フリもなく現れた。
あのコメントに書いてあったことは、嘘ではなかったということを――証明されてしまった。

 「びっくりしたよ本当に。教室に知らない女の子が息切らしながら入ってきてさ、いきなり僕に飛びついて来たんだよ」

被害者、羽森結城は語る。
話に合わない真面目な顔をしながら語る。

 「そこに真翔と光鳥さんが入ってきてさ、助けを求めようとしたら押し倒されてキスされそうになっちゃうし」
 「俺の叫びでお前は救われたんだよ」
 「本当にね」

よくわからない子だったなあ、と、少し残念そうな顔をする。
おいおい、まんざらでもねえじゃん。
なんだよそれ。

 「これは恋人フラグが立ったな」

羽森の後ろに立った光鳥が言う。

 「うわっ!」

驚きの声を上げる俺たち。

 「な、なんだ、光鳥さんか……はぁ」
 「残念そうな溜息をつくな…」

木の刺並みの言葉が光鳥に刺さる。これくらいの言葉だったら傷つかない感じがしたが、そうでもないらしい。
一人の女子だしな。

 「なんだよ恋人フラグって。あれだけで立つか?」
 「立つだろう十分に。されそうになった方だって、まんざらでもなさそうだしな」

薄く笑い、羽森の方を向く光鳥。
苦笑い。明らか反応に困っている。

耐え切れなくなったのか、強引に話を打ち切る羽森。

 「そうだ……光鳥さん最近さ、真翔とよく一緒にいるけど、何かあったの?」

不意打ちな質問。きっと俺は動揺していたと思う。

 「えっと、あのな、羽森。これは――」
 「ちょっとした事情があってな。手を貸してもらっているところなんだ」

思いもしなかった助け舟を出される。ありがたい。

 「そうなんだよ。心配かけてたらごめん」
 「……へえ。真翔が光鳥さんにねえ」

変わったね――と、俺を見たまま呟く。
……そんなことはない。
中学生の時から何も変わってはいない。むしろ悪くなったとも言っていい。
なのになぜ――
俺が変わったと言える?

49:空き缶 ◆KnlY:2013/01/26(土) 13:53 ID:T2o


 「………ああ、そうだ。織川」

話しづらい雰囲気になったのを察したかどうか、光鳥が俺を呼びかける。

 「昼食はどうする? もうすぐ終わりのチャイムが鳴る頃だが……」

転校生騒動ですっかり忘れていたことを思い出させる。
っつーことは食堂も今日の昼食受付を締め切ってるところかなあ。

 「うーん、どうしよう。バッグのなかに非常食として飴入ってるんだけど、それで凌ぐか?」

そう提案するが、

 「飴か……。悪くはないが、それで放課後まで持つかどうか……」

迷うような発言。

 「放課後?」

羽森が口を挟む。そんなに気になるワードか? それ。

 「ちょっとね。事情ってやつ」
 「ふうん、ふうん」

内容まで言ってくれなかったことに不満を感じたのか、つまらなさそうに俺から目を逸らす。
そりゃあ言うわけにはいかねえよ。
俺が一番信用しているお前でも。
光鳥の方に向き直り、俺的な意見を述べる。

 「多分大丈夫じゃないか? 要は声だけ出せればいいんだし」
 「……そうだな。今日はそうするか。そんじゃあまあ、一つくれ」

バッグの中から小さな袋を取り出す。中には色々な味の飴が三十個程。そのなかから適当に一つを選び、光鳥に手渡ししようとする。
――が。

 「っ、ごめん、……あの、机に置いてくれないか……?」

何かに気づいたように、光鳥がそう言う。

 「え、なんで?」
 「な、なんでもいいから、机に置いてくれれば……それでいいんだ……うん……」

気まずそうな口調で途切れ途切れになりながらも、伝えたいことを伝えに来る。
これって、もしかして――嫌われた?
いやでも――いつ、どこで、何をした時に?
様々な疑問が頭の中を駆け巡るが、とりあえずは言われた通りに、机の上に飴を置く。

 「……ありがとう…………ごめんなさい」

飴を手に取るとそれだけ言い、光鳥が俺の机から離れ、自分の席に戻る。
――ごめんなさい。

 「どうしたの? 光鳥さん」

黙りながらも話を聞いていた羽森に、答えられもしない質問をされる。
それはこちらが一番聞きたいことだった。

50:空き缶 ◆KnlY:2013/01/27(日) 13:33 ID:T2o

相手グループから返答が来たのは、帰りのHRが始まる数分前だった。
略奪された一人が、光鳥ではなく俺に返事をしてきたのには驚きを隠せなかったが、隣の席ということもあったのだろう。
相手側は放課後の話し合いを了解してくれた。

秋寐ちゃんには合わせる顔がない。
彼女はそう言っていた。

穂志の言われるがままにしてしまったことを、心から後悔している。自分から断れなかったことを、心から後悔している。
それは数少ない言葉からでも安易に察知することができた。
女子との会話をしたことが人生で十数回しかなく、そして友人からの悩み相談などに乗ったことが一度もない俺は、
その場で「あまり深く気に病まないほうがいいよ」と、まあこれまた薄っぺらい中身すっからかんの言葉をかけたのだが、
親身に考えてもらうよりもそちらのほうが効果的だったのか、彼女は何も言わず――しかし幾分か表情を和らげて、こくりと頷いた。

 「やっぱり変わったよ、真翔は」

僕の知らないところで、勝手に。
悲しげに呟く羽森の声が後ろから聞こえる。
先程から――正確にはあの昼休みあとからずっと元気がない。

 「どうしたんだよ、お前……」

らしくないと思いつつ、話しかける。

 「べっつに。どうもしないけど」

返ってきたのは、如何にも不機嫌そうな声。
俺に変わられるのがそれほど嫌なのか、それとも、意識せずして変えてしまっている者が嫌なのか。
この様子では、どちらか定めることすらできない。

 「……真翔」
 「何?」
 「今日一緒に帰らない?」

……無理な願いだった。放課後には、光鳥と穂志との仲を今まで通りにさせるという、高校生最大ともいえる重大な任務が待っている。
というか、昼休みに、話を聞いていたはずじゃなかったのか?

 「……ごめん、無理。光鳥との約束があるから……」
 「……そっか」

明らかにおかしい。このような場面、いつもだったら粘り強く願ってくるのに。

直後、教室の戸を、音を立てながら開け担任が入ってくる。それと同時に、自分の席へと戻り始めるクラスメート。
静かになるまで三十秒もかからなかっただろう。見計らって、話を始める。

 「えーっと、皆知ってると思うが、今日の昼休みに、朝紹介するはずだった転校生が遅れながらもやってきた」

 「マジ?」「俺購買行ってたから知らねー」「綺麗な子だったよね」「いやあの登場の仕方にはびっくりした」
 「他クラスのやつも見に来るほどだったもんな」「あんなの漫画とかでしか見ないと思ってたわ」「脈アリかな?」「何言ってんだよ」

クラスメート達が思い思いの言葉を口にする。中にはその時間中クラスに居なくて知らないというやつも。

51:空き缶 ◆KnlY:2013/01/27(日) 13:37 ID:T2o


 「はい、静かに。さっき転入確認が取れたから、いま紹介してもいいか?」

さんせーい、と誰かが嬉々とした口調で言う。それに釣られて、周りも同調する。
後ろの羽森が伏せていた顔を上げた。
興味ありすぎんだろ。
やっぱまんざらでもねえじゃん。

 「ははは。よし、わかった。改めて紹介しようと思う。簸素羅木さん、入って」

歴史に出てきそうな人物名だよな、と思う。テストの時なんかは大変だろう。
全員の視線が、教室前方の戸へと集まる。
控えめに開け、中へと入る転入生。

全員が息を呑んだのがわかった。
黒に限りなく近い青髪の位置高めポニーテイル。瞳は大きく、色は吸い込まれそうなほどの赤。小さい鼻。見事というまでの肌の白さ。
血色が感じられないほどのそれは、生きている人間ではない――緻密に作られた一種の西洋人形のよう。
完璧と言っても良いほどの容姿に、思わず目が奪われる。

やがて彼女の口から、声が発せられる。外見の素晴らしさに負けないほどの美しい声。

 「昼休み、お騒がしました」

そういい、一礼。誠意のこもった動作。

 「改めまして――簸素羅木栞菜と言います。今日から南堂高校一年六組で、生活を共にすることになります。よろしくお願いします」

礼儀正しい態度に、担任が感心するのがわかった。
クラスからの、遅れながらの拍手。

 「ということだ。皆、仲良くしてやってくれ。えーと、席は……」

全体を見回す。空いている席は、今のところない。

 「ちょっと待っててな」

それだけ言い残し、予備の机を持ってくるため廊下へと出る担任。
――沈黙。
どうしたらいいのかわからないといった様子だ。転入生の相手をしたことがあるのなんて、精々一人か二人ほどだろう。

 「真翔、なあ真翔」

すると、後ろから羽森が声のトーンを少し上げ話しかけてくる。

 「なんだよ」
 「これってさ、あのコメントの」
 「今気づいたのかよ……いくらなんでも遅すぎるだろ」
 「仕方ないだろ。あの時は僕も混乱しててさ」

言葉を交わしていると、機嫌を取り戻したかのようになっていた。こういう奴が相手してて疲れるんだよな。言わないけどさ。
流石情緒不安定の羽森。言わないけどさ。

52:空き缶 ◆KnlY:2013/01/27(日) 13:44 ID:T2o

転校生じゃなくて転入生じゃね?とか思って変えてみて、
それでもなんだか変な感じがするから仕方なく辞書でそれぞれひいてみたら、転入生があってた件。
皆も気を付けようね(ハイパー営業スマイル)

53:空き缶 ◆KnlY:2013/01/27(日) 13:45 ID:T2o


 「…………」

そして、先程から笑顔でこちらをチラチラと興味深そうに見ている、今一番注目を浴びているホットな転入生。
俺たちは比較的前の席なので、今にも飛びついてきそうな予感がしてそわそわしてしまう。安心できない。

クラスの誰ひとりが話しかけてこないこの居づらい状況を、むしろ楽しんでいるかのような彼女に、俺は堪らず声をかけた。

 「簸素羅木さん」
 「……あ、あの時の」

無視されちゃうかなーと思ったが、視線をしっかりと合わせて応じてくれて、不意にもどきっとする。
いや、世界一美しいと言われても信じられるような人に、目を合わせて話を聞いてくれる感じになったら誰でもそうなるってば。

 「名前……まだ、聞いてなかったよね」
 「……そうだったっけか」
 「うん。私、自分のことばっかりで」

あはは、と笑う簸素羅木。その笑顔を見、直感でこれはすぐにクラス女子のトップになるなと予想。

 「出席番号12番の織川真翔。よろしく」
 「織川くんね……うん。覚えた。織川くん」

美少女に名字を二回も呼んでもらえるとはとんだご褒美だ。羽森の近くの席でよかった。
でなかったら、今後も話すことなんてなかっただろうから。女子との縁はないのだ。

これくらいで会話を終わらせるべきか。周りからの視線が痛い。誰もが話しかけたいであろう転入生と接するのは勇気がいるのである。
俺以外の人との会話もしてみたら? と言う前に、転入生簸素羅木は新しい話題を振ってくる。逃げたい。無性に。

 「…………ねえ、結城の調子ってどう?」

結城呼び。

 「気になってたんだけど、簸素羅木さんてどうして羽森のこと名前呼びしてるの?」

このクラスでも、羽森のことを結城呼びしているのは二人くらいだ。めったに呼ばれることのない羽森の下の名前を聞くと、
どうしても違和感が仕事をする。なので聞いておきたかった――それ以外にも、話題から遠ざけようという無理な理由もあったのだが。

 「うーん、最初会ったときからそう呼んでたからねー。なんとなくだよ、なんとなく」
 「いや、その理屈はおかしい」

後ろで話を聞いていた羽森が口を挟む。そういえば会ったことは一度もなかったと言っていたっけ。

 「ううん、結城。私達会ってるよ、すっごく小さい時だったけど。そうだね……これぐらいの時かな」

足を伸ばして、膝の少し上あたりをつつく。
そんな小さな時のことを、今の今まで忘れずにいられるものなのか?

54:空き缶 ◆KnlY:2013/01/27(日) 22:25 ID:T2o

「誰にも負けてないから」
俺の心を読んだかのように、その赤い瞳で軽く見つめながら。
「これだけは、誰にも」
簸素羅木は強い意思を持った声で言う。
最後にくすっと笑い、俺たちの近くから離れる。
担任が予備の机を運んで教室に入ってきたのは、それからすぐの事だった。


半端なところで切ったら短くなってしまった……。
次回ついに碧月と秋寐の頂上決戦。あれ、決戦……?

55:空き缶 ◆KnlY:2013/01/28(月) 14:31 ID:T2o

( ^ω^)略奪って本来の意味なんだっけな。(辞書引く)

【暴力で無理に奪い取ること】

:(;゙゚'ω゚'): …………。

モブキャラ2:榎本(えもと あだ名→えーちゃん)
碧月に取られた、秋寐と仲の良い女子。
いわゆる守ってあげたくなっちゃう系女子。自分で書いてて寒気s(ry

モブキャラ3:井藤(いとう あだ名→下の名前が玲衣なので玲衣ちゃんとか色々)
碧月に取られた(ry
榎本とは逆の守られたくなっちゃう系女子。元気っ娘ですので。
バレンタインには女子から必ずチョコ貰っちゃうような子。
テンプレ設定でごめんね(笑)

56:空き缶 ◆KnlY:2013/01/28(月) 14:52 ID:T2o



簸素羅木の席が設置されたのは、最後尾の真ん中列だった。
転入生の席としては妥当なところだが、「結城の隣がいいです!」と本人は猛烈に反対。
が、羽森の隣の席に座る男子に許可が得られず、そして何と言っても昼休みの前科。
羽森の身を案じてその要請は取り消された。
見るからにがっくりとしている姿を見て同情してしまう自分はちょろいものだなと鼻で笑ったものだ。

そしてHR後。部活が偶然休みだと知った羽森は、簸素羅木の提案で一緒に帰ることに。
席が隣になれなかったんだからこれくらいはいいだろと、俺は特に反対意見がなかったのだが、
クラス全体はどうだろうと思っていると、二人帰り推奨、みたいな空気に自然となっていた。
危険に思う反面、あの二人はお似合いだと誰だって思ってしまう。俺もそう思う。
念のため簸素羅木に、あまり興奮しないようにしろとは言ったのだが、本当に大丈夫であろうか。
口だけなんてことにはなっていないだろうか。
友人の身がとても心配である。

取り敢えず羽森と簸素羅木関連の話はここまでとしよう。

現在時刻十五時四十五分。
放課後。
今日ほどこの言葉を重く感じたことはないだろう。
仲直りの話し合い。題をつけるなら『光鳥vs穂志』といった感じか……ネーミングについては触れないでほしい。
閑散とした教室に、人影が五つ。

57:空き缶 ◆KnlY:2013/01/28(月) 14:55 ID:T2o

一つ。気が強く我が儘なことに(俺の中で)定評がある穂志碧月。

 「秋寐、まだ私とやり直す気があったんだ。この私と。ふふっ」

一つ。外見にそぐわない暴言毒舌を吐くことに(俺の中で)定評のある光鳥秋寐。

 「私のことを下の名前で呼ぶなこの下衆が」
 「おい……」
 「ふ、ふふ……今、何て?」

開始早々から暴言を浴びせる光鳥に、やべえやべえと内心焦りまくりな俺。そして頬を引きつらせる穂志。
さっそく雲行きが怪しくなってきやがった……。穏便に解決できると少しでも思っていた数分前の自分を殴りにかかりたい。
この二人がそんなことできるわけねーだろうがよ。
青狸、タイムマシンプリーズ。

 「聞こえなかったのか? ではもう一度大きな声で言ってやる。私のことを下の名前で呼ぶな、この下衆が!」
 「下衆、ですって……? そぉれぇはぁっ、こっちの台詞よ! ばあか!」
 「なんだとこの自己中我が儘存在価値埃程以下の屑人間が!」

五人以外に誰もいない今の教室では、この二人の怒声は物凄くよく響く。
お前らよく一ヶ月も仲良く出来たな……。

 「あわわわ……ふ、二人とも落ち着いてっ。落ち着いてぇ……」

と、ここでまた一つ。涙目になりながら説得するように声を出す、穂志に略奪された、おっとり和風系女子榎本。
話し合いの要求に返答をくれたのは驚くことにこの女子である。
――略奪。
……略奪以外の言葉で、不快感をあまり与えずソフトに言い表せる言葉ってないのかな。

 「あーっもう! 秋寐も碧月も短気すぎるってば! えーちゃんの言う通り、落ち着こ。ね?」

さらにここで一つ。活気のある印象を与える元気系女子井藤が、榎本に加勢する。
この二人の正論すぎる正論に、渋々と二人が罵り合いを止めると、足元を見る。無意識に近づいていたことに気付くと、互いに二歩ずつ離れる。

 「…………」
 「…………」

罵り合いの次は睨み合いと来た……。

58:空き缶 ◆KnlY:2013/01/28(月) 17:53 ID:T2o


 「お、織川くん……」

あまりの中の悪さに半ば呆れた俺に、おずおずと榎本が横から声をかけてくる。

 「ん?」
 「秋寐ちゃん、私達のこと、怒ってたりしてた……んですか……?」

胸を突かれたような気分。
伝えておくべきだったなそれは。光鳥怒るとすげえ怖そうだし……きっと一番不安なことだっただろう。

 「あー……いや、榎本さん達のことは怒ってなかったよ。むしろ……」

穂志の方を横目で見ながら言葉を続ける。まだ睨み続けているらしい。

 「光鳥は穂志の方にその怒りを持っている、って感じかな……取った本人のこと、すげえ恨んでたし」
 「……そう……ですか……」

それだけ言い、心配そうな目で二人の方を見る。
すると、今度は榎本の隣で話を静かに聞いていた井藤が、

 「あの二人、本当に仲直りできるのかなー……」

と、こちらも同じく心配そうに言う。

 「よく一ヶ月も仲良く出来たよな……」

先ほど思ったことをつい口に出してしまう。すると、

 「ね! 本当に」
 「絶対、相性が合わないと思ってたんだけどね。秋寐ちゃんの我慢強さはさすがっていうべきかな」

何と二人の同意を得られてしまった。内では思ってるんだよな、やっぱり。

59:空き缶 ◆KnlY:2013/01/28(月) 18:01 ID:T2o


 「…………っ、ちょっと!」
 「!?」

穂志のいきなりの怒声にびくっとする。相手がこちらへと足音を立てながら近づいてくる。え、何? 何が起こった?
横に首を向けると、榎本と井藤も呆然としたまま。脳の理解が追いつかない。
こちらのことを気にも留めず、至近距離まで近づいた穂志は続ける。

 「織川とか言う奴! 私の友達に馴れ馴れしくしないでくれる!?」

オゥ……誰が予想できたことでしょうか……(絶望的に)。

 「……っは、はぁ?!」

我に返った俺は、意味が分からず素っ頓狂な声を出す――いや、意味は多分感覚的に分かっていたけれど、確信が持てなかったんだ。

 「いやいや! 何言ってんだよお前! 榎本達が誰に話しかけたって自由だろうがよ!」

感情的になりすぎて「さん」付けも忘れてしまう。が、そんなことは気にしてられない。

 「五月蝿いわね! 静かにしてなさいよ!」
 「んなっ……!」

なんだとう!
人生で十八番目ぐらいの酷い物言いをされた!
光鳥の気持ちがやっとわかった気がする!
相手が最強の我が儘ともなれば苛立ちもMAXだ!
……耐えられるわけがねえ……。
利己的すぎんだろおい……。

 「碧月、落ち着いてよ! 織川くんは関係ないって!」

井藤の必死の説得。しかし、

 「落ち着いてられないからこんなこと言ってんの!」

穂志の怒声を聞き、それも無駄に終わる。
休む暇も見せないまま、穂志は続ける。

 「織川が関係ない? 何言ってんの? 秋寐の仲間なんだよ? ――ってか、それ以前にえーちゃんも玲衣も、自分から話しかけないでってば!
  私の見方なんでしょ! 自分の好き勝手にしないでよ!」
 「っ……!」

今まで黙っていた光鳥が息を詰まらせる。苛立ちが臨界点を突破したのか、目が大きく見開かれる。

穂志碧月の我が儘の度合いを、俺はどうやら勘違いしていたらしい。

60:空き缶 ◆KnlY:2013/01/28(月) 18:04 ID:T2o

◆わーにん!◆
こっから上手くもなんともないシリアス展開となります。
拙い文章で読んでて苛々するわゴルァ!という方は戻るボタンをクリック!
可愛い天使たちがあなたを美しいお花畑へと連れて行ってくれることでしょう(震え声)

61:空き缶 ◆KnlY:2013/01/28(月) 18:25 ID:T2o

重症。
末期。
脳内に、ふと思い浮かんだ言葉。

――どんなものにも限度ってものがあるだろ?

 「み、碧月ちゃん……」
 「……何? どうかしたの?」

今にも泣き出してしまいそうな榎本に、穂志の痛いほどの睨みが突き刺さる。
その目に怯えてしまったのか、口を閉じたまま、首を横にふるふると振る。

――周りの怒りが、限界に達したらそれはどうなるのか?

 「碧月……」
 「用がないなら話しかけないでよ!」

ぴしゃりと言い放つ。
言葉を紡げず、井藤が後ろへ一歩後ずさりをする。

――周りが気持ちを抑えられなくなれば、それはどうなるのか?

 「……ふざけんのもいい加減にしろ。自己中心的な考えもいい加減にしろ」

全ての答えが、光鳥の今の態度にはある。
俺に今まで浴びせてきたどんな言葉よりも、倍以上の恐怖を感じさせる声。
今にも殴りかかってしまうのではないかと思うほどの強く握り締めた両手拳。
知ってか知らないでか、穂志が危機感のない声を発する。キーの高い、耳障りな声。
光鳥に影響されたかされてないか……俺自身段々と聞いてて不快になってきた。

 「っつーかさあ、秋寐も秋寐だよ! 自分の敵とも言える人間の仲間が、そいつに話しかけ――」
 「晴と玲衣は敵じゃない。私の大切な友達だ。お前ごときと一緒にするな」

凍てついた氷のような冷たい言葉を吐き捨てる。
我が儘さに呆れ、苛立ち、抑えきれなくなり、穂志とやり直す気も捨てた。
そのように感じることもできる言葉。

 「……はぁ? 何? どうしたの? 勝手にキレちゃって。私側に話し合いの要求をしてきたのはそっちでしょ?」
 「ああ確かにそうだ。今更なぜ確認をとっている? 馬鹿なのか? ……今さっきまでは、ちゃんと二人を取り戻して、
  ついでに……穂志ともしっかりやり直そうかなと考えていた。けどな、たった数分前にその考え私の方で取り消された――
  やっぱお前だけ捨てることにしたよ」
 「…………だってさ」
 「っ……」

62:空き缶 ◆KnlY:2013/01/29(火) 14:44 ID:T2o

予想外の言葉を受けて、顔を歪める穂志。
しかし次には、口角を上げにやりと笑うような形へとなっていた。

 「は、どうした? 自嘲か?」

左手を腰に当て、冷笑を浮かべる光鳥。すでに勝ち誇ったかのような態度。
俺たちが勝ったも同然なこの状況。すでに仲直りとは程遠いが、光鳥自身それを否定したのだから訂正することもないだろう。
なのになぜ、穂志は笑いを浮かべる?

 「秋寐……」
 「だから名前で呼ぶなと、」
 「男の子嫌いは直った?」
 「っ!!」

その一言に、先刻まで浮かべていた冷笑が顔から消え、そして何かに焦るような表情へと変わる。
様子がおかしい。
榎本達も、変化に気がついたのか、声はあげずに、しかし顔色を変える。

 「ねえ」

短い一言が俺にかけられた言葉だと気がつくのに、数秒を要した。はっとして相手を見る。全く変わらぬ笑いを浮かべていた。
気味が悪いなと思いながら、

 「なんだよ」

内心を悟られまいとして、声だけでもしっかりと出すようにする。

 「織川も、秋寐と――ちょっと違うか……女の子嫌い?」
 「……どういう……」
意味がわからない。
穂志は何を言おうとしている……?

 「つまりね、女の子に触ったり触られたりしても、目に見えるような拒否反応を起こしたりしない? って意味」

途端、「えい」と、俺の手を予告もなく握る。多少驚きはしたが、先ほど言われたような反応は勿論起きたりしない。
確認できたんだから手を離せという嫌悪の意味を込めて、振り払う。見るからにイラっとしたのがわかった。短気すぎ。

 「……まあいいわ……。次」
 「ぅ……あ」
 「秋寐の番ね?」

慄然とした表情で、怯えるような声をあげる光鳥の方を振り向き、面白がるように言う。
そこでようやく俺は、穂志の手によって何が行われようとしているのかを察した。
中断を求めるように、言葉を発する。

 「穂志……お前……!」
 「今気付いた感じぃ? あっはは。おっそ。……でも残念、タイムオーバー」

そう言うと、光鳥の後ろにさっと周り、手で背中を強く一押し。

63:空き缶 ◆KnlY:2013/01/29(火) 15:39 ID:T2o

人が倒れてきそうになったら、無意識に手とか腕が伸びるだろ?
その現象は、この場合にも、なんら変わりなく起きた――いや、起きてしまった。

背中を押され、バランスを崩した光鳥を、目の前にいた俺が抱きしめるという、完全に密着するような形で。

頭で分かっていても、

 「――っ、光鳥!!」
 「あ、ああ……」

体は勝手に動いてしまう。

 「……ぅ……触らないで……織川……ッ……触るなあっ!!」
 「だ、大丈夫か、みと――」
 「……離れ、てよっ!」

押し飛ばすようにして、俺を払いのける。
しかしそうした後も決して立ち上がらず、教室の床に膝を着いたまま、体を両腕で抱くような姿勢で荒い呼吸を繰り返すばかり。

 「秋寐!」
 「秋寐ちゃん!」

榎本と井藤が、光鳥のもとへと駆け寄る。その様子を楽しんでいる主犯者穂志は、構うことに今回は何も言わず、面白そうな顔で傍観。対して俺は何をしていいか分からず、茫然とするだけ。

 「大丈夫!?」
 「保健室……じゃ、じゃなくて近くの先生……」
 「全く……二人とも……大げさだな……ちょっと静かにしてれば……平気、だから……」
 「平気じゃないだろ……っ!」
無理をしている光鳥に向かって、声をぶつける。

 「やっぱり、直ってなかったんだね」

怒鳴り声でもない、可笑しがるような声でもない、冷静ととれる声で、穂志がそう呟く。

胸の内で思う。

どのような考えで、この行動を起こした?

64:空き缶 ◆KnlY:2013/01/29(火) 15:42 ID:T2o

改行するの忘れたったwwwwうぇwww
碧月は限りなくうざいビッチキャラになるように頑張りました(小並感)
いやー、キャラ作るのって大変ですね(笑)

65:空き缶 ◆KnlY:2013/01/29(火) 19:58 ID:T2o


 「見ての通りだけど……秋寐ってなんか、男の子触れないんだよねー」

タイミングを測ったかのように、穂志がそう話し始める。

 「……みたいだな。だけど、なんで――」
 「織川とかは鈍いからわからないだろうけどさ」
 「……?」
 「えーっとぉ、……まあ、もう躊躇う理由もないか……。はっきり言うと、同姓側の一人としてはさ」

気持ち悪いんだよね。
レズみたいでさ。

 「異性に触れないとか――マジそれ有り得ないって感じ」
 「っ…………違う……違う……」

暴言にとどまらない、もはや中傷と言うことのできる言葉を、立て続けに発する。
後ろの光鳥が、か細い声で否定の言葉を呟く。
光鳥がダウンして計画通りといったところか。
しかしいくらなんでもそれは許される行為じゃない――当たり前だ。

他人のコンプレックスをどうこう言うような資格がお前にはあるのか?
自分が言われて傷つくような言葉を、他人に軽々と言っていいなんてことがあるのか?
自分から嫌われにいくような言葉に、何の意味がある?

頭の中で、数々の疑問が渦を巻く。
だが、目の前に立つ本人に問おう問おうとしても口から声が出ない。
どうして。
どうして、こんなときに――。

 「誰だってそう思うよねー。えーちゃんも玲衣も実はそう思ってるでしょ?」

皆も野菜嫌いでしょ? レベルの軽い口調で、話を振る。否、同意を求める。

 「……思ってないよ。忘れたの? そのことについては秋寐からちゃんと言われたじゃんよ……訳あって触れないってさ……!」

怒りを交えたような声音で、井藤が低くそう言う。

66:空き缶 ◆KnlY:2013/01/30(水) 18:44 ID:T2o

それに対して、穂志はこう答えた。

 「信じるわけないじゃんあんなの! ガチレズなこと隠すために嘘言ってるんだって思ってたけどねー最初から」

 「違う…………本当に、違う……違うんだ…………」
 「さっきからそう言ってるけどさ、実際違わないでしょ?」
 「…………本当に、違う……っ」

普段の態度からは一ミリも想像もできなかった、光鳥の泣き声が聞こえる。
必死に否定を続ける、小さく細い声が聞こえる。

 「……おい。もういいだろ」

耐え切れずにそう切り出す。
耐え切れねえに決まってんだろ――こんなの。

 「あは、そうね。ちょーっとだけ弄りすぎちゃったかなあ?」
 「……ちょっとじゃ済まねえよ」
 「今日はこの辺で終わりにしようかな。もう遅いしね。四時だって四時」

俺の声が聞こえない風に言いながら、机に置いてあったスクールバッグを手に取る。
榎本達を一度見、教室の戸を向くと、そのままで後ろの二人に尋ねる。

 「えーちゃん達はどうするの? レズ娘の秋寐ちゃんと帰るの?」
 「……少なくとも碧月とは――」

抑止するように首を傾げながら振り返ると、

 「まさかとは思うけどね? 私と帰ってくれるよね、今まで通り」
 「っ……」

我が儘発揮というところか。
笑えねえよ。

 「……今日は、碧月ちゃんと一緒に帰ろ……?」

直後に驚く程衝撃的な言葉を発したのは、なんと榎本だった。

 「えー、ちゃん……?」

井藤が表情を強ばらせ、反射的にそう呼ぶ。

 「だ、大丈夫だよ……秋寐ちゃんには……男の子だけど、織川くんがついてるし……付き添うだけなら……うん」
 「榎本……」

信頼を、されているのだろうか。
信頼を、されたのだろうか。

67:空き缶 ◆KnlY:2013/02/01(金) 12:32 ID:T2o

約二日ぶりの更新だぜイエー。


 「そーんじゃ、それで決まり〜。帰る準備してー」

主に号令をかけられると、嫌々ながらも立つ井藤と、諦めたかのように用意を始める榎本。
その二人の様子を、何が面白いのだかニヤニヤと笑いながら観覧していた穂志だが、数秒もしないで俺のところへと近づき、最低限の声で話かける。

 「秋寐の怖がる姿が見れてなにより。一矢報いることが出来たかしらぁ」

べったりとした声。嬉しげな口調。
その二つが俺の苛立ちを加速させる。

 「……っ。さっさと帰れよ……!」
 「…………ふふ。そうね、そうする」

予想に反する言葉。とっついてくるかと思ったらそうでもないのか。扱いが面倒臭いやつだ。
準備をし終えた二人の元へと歩み寄り、

 「帰ろ」

指示。
申し訳のなさそうな顔でこちらに顔を向けながら、共に歩き始める榎本と井藤のペア。
――力になれなくて、ごめんなさい。
そんな本当には聞こえない声まで聞こえてくるようだ。
はっとした表情でようやく顔を上げた光鳥が、教室から出ていく穂志を呼び止める。

 「……! ま、待て……穂志……っ! まだ話は――」
 「話しかけないでくれる? 気持ち悪いレズの癖にさ!」
 「っ…………」
 「お前――っ!」
 「いい! ……いいんだ、織川……」
 「…………光鳥」

憎らしいほど上機嫌に教室から出ていく穂志を、俺たちはただ黙って見送るだけ。
光鳥の遠慮を押し切らず、何も出来ずにいる自分が恨めしい。

『頼りねえな、お前って』

いつか誰かに言われた言葉が、よりにもよって今、頭の中で再生される。
自己嫌悪。
あれからも、これからも。
俺は、ずっと変われないでいるのだろうな。

 「……、織川」

浸っていた俺を現実へと呼び戻す、光鳥の声。

 「お前は……私のことを、信じて……くれる……?」

考えてから、教室の床に座り、目線の高さを合わせる。

68:空き缶 ◆KnlY:2013/02/02(土) 12:43 ID:T2o

ひと呼吸おいて。

 「ああ、信じるさ。穂志の完璧な間違いだってことに俺の中ではなってるぜ。そう三年ぐらい前から」
 「ふ、三年前って……会ってないだろう……流石にそこまで超人じゃない」

鼻で笑うような笑い方だったが、三十パーセントほどは元気を取り戻したって感じかな。
よかったと心の中でそう思う。
あと超人て……俺もしかして褒められてる?
いや、ここは流れ的に光鳥自身のこと?


 「ま、いっか」
 「……」
 「いや、こっちの話――それよりさ」
 「……分かってる。私のことについてだろう?」
 「……ご名答」
 「言われることじゃない。これくらい流れでわかる」

床に足をしっかりと着き立ち上がり、近くの席の椅子を出すと、そこに光鳥は浅く座った。
「俺も」と、光鳥の今座っている隣の席の椅子を向かい合わせになるような形にして座る。

 「……異性に触れないのは、さっきのとおりだ」
 「今現代珍しいことだよな。だからといって昔もよくいたってわけじゃないだろうけど」

あくまでも予想だけどな。
さておき、触れなくなった原因ってのはなんだ?

 「原因は、わからない。病院に行ってもだ」

まるで心を読まれたかのような感覚になる。
それはそうと、発達途中での精神的なものか、あるいは生まれつきのものなのか――それがわからないんじゃ、克服のしようがない。
後者だとすると、保育園、または幼稚園時代、異性と触れ合ったりすることは多かったはずだ。
それをどうやって乗り越えたのだろう?

 「あのさ、光鳥。生まれつきからーとか、途中からーってのは分かったりするのか?」
 「生まれつきらしい」

やっぱり後者か。発達途中でってのは俺も聞いたことがないし(生まれつきもないけど)トラウマ云々が関係してくる可能性大だからな。
重っ苦しい話はごめんだ。この話題も十分重いけど。
……ん?「らしい?」

 「小さい頃の記憶はあまりないから……親がそう言っていたんだ」
 「ああ、なるほど」
 「小学生から中学二年までは、ずっと私立の女子校に通ってたな」
 「幼年期は?」
 「親から先生へと事情を予め伝えてあったからな。さほど苦労することもなかったようだ。
  幼稚園時代なら、同姓愛なんて言葉も知らないだろうし。いや、私は全然違うんだけど」

手をパタパタと振るようなゼスチャーをしながら否定する。確かに、女子校だったら心配しなくていいもんな――

 「あれ、でもなんで中二まで?」

疑問。

69:空き缶 ◆KnlY:2013/02/02(土) 12:46 ID:T2o


 「中三進級前に親の都合で引越しをしてな。そのまま通い続けても良かったんだが、通学時間が前の倍ぐらい長くて……」
 「ふうん。共学校にしたのは?」
 「この辺の地域に女子校がなかったからだよ。だから、中三の一年と高校の三年間は共学校に行くことにした」

私立なら遠くても受験可能のはずだが、それでもなぜ共学校を選んだかと言えば、きっと「通学時間が長くて怠い」からとかいう理由だろうな……。
自分の身を案じろよ。
優先すべきは通学時間かよ。

 「……それ以外にも」

もしも今、クラスが人で満たされていたらうっかり聞き逃してしまっていそうなほどの声量で続ける。

 「――克服しないといけないという、使命感があったからかもしれないけどな」
 「…………」
 「その考えは間違えだったんだけど」

自嘲するように力なく笑う。
考え方は悪くなかった――間違っていなかったように思う。
苦手なものを克服しようという気持ちになるのは全く変なことではない。むしろ当たり前だろ?

 「十中八九穂志が悪いんじゃないのか? お前は悪くないだろ」
 「そう言って割り切ることが一番楽ではあるのだろうな」
 「割り切っちゃえよ」
 「負けた気がして嫌だ」
 「何にだよ……」
 「よくわからない何かにだ」
 「よくわからないって……」
 「プラナリアみたいな」
 「わかってんじゃねえか!」

俺てっきりUMAとか出すと思ったよ。
モンゴリアンデスアームとかヒトガタとか。
しかし負けず嫌いもここまで来るとあれだな、面倒くさいな!

70:空き缶 ◆KnlY:2013/02/03(日) 11:21 ID:T2o

はぁ、と一息つき、

 「というわけで、今度また話をしてくるかもしれない危険を兼ねて、今からこのコンプレックスを克服したいと思う」
 「………………………………………………………………は?」
 「手伝ってくれるよな、織川」
 「………………………………………………………………は?」
 「手伝わないとは言わせないぞ。お前しか頼れな」
 「いやいやいやいやちょっと待てちょっと待て!!」

なんでいつの間にか克服しちゃうぞ的な展開になってんの?
数分前にはこんなことになるとは思っていなかったよ?
いつからこうなったの?!

 「いや、光鳥。お前、異性に触れるとすっげー大変なことになるんだよな」

自分の聞き間違いか? という可能性をまずは潰す。

 「うん」

はい潰し完了。
そして今まで聞いた一つ一つを再度確認していく。

 「だからいままで女子校に通ってたんだよな?」
 「うん」
 「中三からは女子校がなかったから仕方なく共学校にしたんだよな?」
 「うん…………さっきからなぜ確認をしている?」
 「お前が克服するっていう難儀なことを口にしたからだろ……」

いや、そりゃあさっき俺も思ったさ。苦手なものを克服しようとするのは間違いじゃないって。
でもだからって、今である必要があるか?
急いでしようとする必要があるか?
それに何より、光鳥のことをレズだと信じて疑わない穂志が、また俺たちに話し合いを持ちかけてくると思うか?
思わないだろ?

71:空き缶 ◆KnlY:2013/02/03(日) 11:24 ID:T2o

それなのに――

 「どうして」
 「……勝手だろう。織川に話をした時から、私はそのつもりだったんだが」
 「それは嘘だろ」
 「本当だよ。飴の時だってそうだ。あんな些細なことで心配されたくなかった」
 「……へえ」

まあその件に関しては、触れないって知った時から自決してたんだけどな。やっぱりそうだったのか。

 「でもその言いようからすると、大きなことなら心配されてもいいってことに……あれ?」
 「あぁぁぁお前のせいで自分で言ったこと訳がわからなくなった……なんということだ」
 「俺のせいにされても困るよ」

責任転嫁すんな。

 「ざっと纏めると……お前はコンプレックスを克服したいわけだな」
 「だからさっきからそう言っている」
 「…………」

これは非常に大変なことになるぞ。
それってつまり俺を相手にボディタッチして克服するっていう手段だよな?
危険じゃねえ? それ。
まず第一に、俺が理性を保っていられるかどうか――いや、これの心配に関してはこの場でしっかりと断言させてもらう。
同級生女子に欲情とかねーよ。
特殊な性癖を持つ奴らならともかく、俺はそういうの全然持ってないしね。
……でもこの時期にはありがちなのか?
皆言わないだけで思ってることなのか?
……深く入り込んでも混乱しそうなだけなので、ここらで次へ移るとしよう。
第二に――実はこれが一番見逃しがち。光鳥自身、実行者の問題。
本人は意地でも克服しようとすると考えられるから、無理をしてしまうのではないかと危惧。

 「お前がもしぶっ倒れても、俺は責任負えねえよ?」
 「ふん。無理なんかしない。即決即断。無理だと思ったらすぐやめる。だから安心しろ」

強気な発言。

72:空き缶 ◆KnlY:2013/02/03(日) 11:26 ID:T2o


 「……言ったな」
 「千円かけてもいいぞ」
 「その話乗った!」

金絡みの賭けを前にあっさりと流される俺。
薄っぺらいことこの上ない。
――と。そこで、最終下校時刻の五分前になったのか、校舎中にチャイム音が鳴り響く。
話すのも忘れて、俺たちはそのチャイム音をじっと聞いていた。
真正面に座る光鳥。
人助けをするのは、思えばこれが初めてのことだ。

『人の助けになることも出来ない人間に用はない』

不意に。
誰に言われたかもわからない、あの言葉がまた再生される。思い出すこともできない、記憶。
けれど、非難するような口調であることははっきりと覚えていた。
本当に――誰に、言われたんだ……?
チャイムが鳴り終わると同時に、光鳥が口を開く。

 「……もうこんな時間か」
 「ん……ああ。あれから三十分ぐらい話していたということになるのかな」
 「時の流れるのは速いな」
 「……全く」

嬉しかったことも、嫌だったことも、感動したことも、一生忘れないでいると誓ったあの記憶も。
流れの速い時間相手には――逆らうことなんてできない。

73:空き缶 ◆KnlY:2013/02/03(日) 11:28 ID:T2o

シリアス展開は書きづらいのよ(シリアル食いながら)。
でもこれやらないと話進まないしね。
はっちゃけてる方が好きなのよ(´・ω・`)

74:空き缶 ◆KnlY:2013/02/03(日) 21:14 ID:T2o



外に出てみると、太陽があと数時間で沈みそうなぐらいまで傾いていた。
光鳥と校門前で別れ、一人で家に帰宅。
家まであと数十メートルといったところで、前方に姉ちゃんを発見。

 「あれ、真翔」

帰宅部がこんな時間に帰ってくるのが珍しい、とでも言いたそうな顔で振り向き、俺を見る。

 「数時間ぶり。今日も部活あったんだ?」
 「あったりまえでしょー。毎日休みなしだよう。週に二日ぐらいは欲しいよねー」
 「土日に?」
 「週休二日……」

しょぼんとした顔で扉の鍵を開ける。中に母さんいるはずだから、インターホン鳴らせばいいんじゃ?

 「あーそうそう。お母さん帰ってくるの遅くなるってさー。夕飯は適当にあるもの食べろって」

母さんが外出してるなんて、俺の帰宅が遅いこと以上に珍しい。スーパーへの買い出し以外で外に出ることはあまりないのに。
ママ友の集まりとかに行ってんのかな。だとしたら納得がいく。同じ立場の人との交流は大切だからな。

誰もいない家の中に向かって、二人で「ただいまー」と唱和。
玄関で靴を脱いだあと、弁当箱を取り出――そうとしたところで、今日は持っていってないということを思い出す。
昼休み購買行く時間がなくて、飴で凌いだのだっけ……。
そう思うと、急にお腹が空いてきた。寄り道したりしなかったしな……。

 「なあ姉ちゃん。今日の夕飯何にすんの?」

軽く空腹を満たす前に、服も着替えず、テレビの電源をつけてくつろいでいる姉ちゃん向かって尋ねる。

 「作るのめんどいからカップ麺にしようかなあと」

返ってきたのはそんな返答だった。
カップ麺か……。
それなら今食べてしまってもいいかもしれないな。
現在時刻を確認。
十七時三十八分。
…………。
前言撤回。今食べてもいいが夜まで持つという自信がない!

 「……姉ちゃんはいつ食べんの」
 「んー? あと二時間ぐらいしたらー」

凄く曖昧だな……気分でというやつか。
それならその時一緒に食べればいいかと思い、ドアを開けて階段へ。

75:空き缶 ◆KnlY:2013/02/04(月) 18:06 ID:T2o

自室には勿論誰もいない。
というかいて欲しくねえよ。
いたら一般のホラー小説並に怖い。
ベッドへと体を投げ出す。手のひらに伝わるこのひんやりとした布の感触が堪らない……。
ポケットから携帯を取り出して、未だガラケーという遅すぎる悲しい事実に直面。そろそろ機種変とやらをしてみたいものだ。
羽森の持ってるようなスマホがいいのかな。とにかくガラケーじゃ格好がつかねえ。
着信履歴はなし。
元々持っているメアドも少ないので、いっぺんに何十通もくるなんてこともない。中学の時の人からも、最近来ないし……。
よくくる人といえば、親と姉ちゃん、それと羽森くらいしか思いつかない。
なんて淋しいんだ。
これで光鳥のも入れば少しは華やかになるんだろうけど、本人は拒否してるしな…………。

てってってーてってっててー。
てってってーてってっててー。

 「!?」

突然の着信音。しかも大音量。予期せぬことに、声が出ないくらい驚いた。静寂な部屋に軽快な音楽が鳴り響く。
表示されているのは、

 「……メール…………羽森からか」

なんと……あいつから送ってくるなんて珍しいこともあったものだ。
普段は暇すぎてすることがない俺からふざけたメールを送るのに……。
内容を確認する。
約三十五行にも渡る長文。
こういうの長すぎて読むの失せるからやめてほしいよね!
わかりやすく三行にまとめてみると、

1 帰り道に可愛い女の子が隣にいるっていうのは優越感が半端ないね。
2 久々に寄り道しちゃってさ、色々と食べ歩きしちゃったよ。
3 おっと真翔、嫉妬すんなよ?(笑)

 「…………」

同じ立場の人ならわかってくれると思う。
確かに、三十五行という長い文章を打つというのは個人の自由だ。それはわかってる。
けど、こんな三行で簡潔にまとめられそうな物を長文の感想で書かれたらどうよ。自分が物凄くみじめになってくるだろ……?
今まで親しかったあいつに、「ああ、やっぱりお前はそっち側の人間だよな」なんて感傷を抱いたりしちゃうだろ?
今の俺がまさにそれ。
無言で、持っていた携帯をベッドに力強く叩きつける。
さすがに床でやる自信はなかった。

76:空き缶 ◆KnlY:2013/02/04(月) 18:10 ID:T2o


 「そうか、あいつ今日簸素羅木と帰ったんだっけか……」

声に出して更にがっくり。
『どうして俺にはそういう運が回ってこないの?』
本文にそれだけ打って返信。

てってってーてってっててー。

十秒で返ってきた。

 「早っ!」

早打ち上達したのか……? 
休む暇なんかありゃしないじゃん。
内容確認。

『回ってきてるじゃんよ。光鳥さんがいるじゃんよ(笑)』

そんな回答。煽っているようにしか聞こえないor見えないのだが。

『あいつが? ないない有り得ないってば』

 「送信……すぐ返ってくるから閉じる必要もないか」

開きっぱなしにして、ベッドの上で大の字になり返信を待つ。
そうしてるうちに一分が経った。

 「…………?」

遅いな。
もう寝た? ……いやいやそんなはずはない……はず……。
それか飽きられ――

てってってーてってっててー。

――てなかったみたいだ。良かった。

『真翔は運あるじゃんよ。それなのにないないとか言ってたら、恵まれてない人達に何されるかわかったものじゃないよ? 
 素直に認めておいて損はないってば(笑)』
『そうは言っても、美少女と巡り会える運があるんだぜみたいなことを自分から認められるわけがねえよ』
『じゃあ、他人から? それなら受け入れられる?』
『それもなんかな』

最後に俺が返信したあと、羽森から直に電話がかかってきた。若干面倒くさいなあと思ってしまったのは内緒。

 「なぜ電話」
 『メールだと伝えることが難しいだろ? だから』

それなら最初から電話で伝えろよな……。
思わず溜め息が出る。今日何回目だろうか。

 「今日簸素羅木と帰ったんだっけ。そうとう楽しかったってことが文面から伺えたよ」
 『それはよかった。クラスの女の子と一緒に帰ったりするなんて久しぶりだったしねー。高揚しちゃってさ。文章をまとめる気力も――』
 「おし、切るわ」

77:空き缶 ◆KnlY:2013/02/05(火) 18:11 ID:T2o


 『?! ちょっと待ってよ! 何がいけなかったの?!』
 「自慢にも聞こえるその話が原因だ!」

リアルが充実していない俺に対してそんなこと電話でもメールでも長々と喋るなよ!
丸くなって欝になりそうだよ!

 『はは、ごめんってば。ついつい自分語りしちゃうんだよね〜』

俺の気持ちがわかったかのようにそう言う羽森。
お前の悪い癖だよな。

 「で。帰り道、簸素羅木になにかされたりした?」

ここで切り出すのは不自然すぎるかな、とわずかばかり不安になったが、

 『ん? いや、別に何もされてないよ?』

全く気にする様子もなく言う。
ということは、注意がちゃんと効いたってことかな。
もししてなかったら今頃どうなっていたのだろうか……恐ろしくなってくる。

 『でもちょっと鼻息が荒かったかなー。心配して声かけても大丈夫って言ってたからさ、そのままにしてたんだけど』
 「…………」

自分を必死に制御してたんだな。
明日会ったらお疲れと一言声をかけてやろう。

 『また随分と話が逸れちゃったねぇ。そうそう、そういえば』
 「ん?」
 『真翔は光鳥さんとどういう関係なんだい?』

吹き出す。
飲み物を口に含んでいたら危なかった。

 「は、はぁっ?!」
 『女の子との縁みたいな話になってたからさ。友達の恋愛事情って気にならない?』
 「いやいや全然ならない全く!」
 『へー』

そんなことだから女の子のメアドもろくにゲットできないんだよー、と明るく、しかし毒も含ませ言う羽森。
黙ってろ。
俺が恋愛事情に興味ないのとメアドゲット出来ないのは関係がない。
……関係ないはずだ。

78:空き缶 ◆KnlY:2013/02/06(水) 18:33 ID:T2o

さりげなくギャルゲっぽい小説にしてみたりしたい。
栞菜√秋寐√的な。
可愛い(という設定の)女の子は全員攻略したいですオウフ。
男の子同士の会話はもちょい続くよスマソwww

79:空き缶 ◆KnlY:2013/02/06(水) 18:35 ID:T2o


 『真翔が光鳥さんと付き合うってことになったら僕も考えようかなー』
 「何を」
 『彼女作るの』
 「大事なことまで俺基準ですか」

悪い感じになっちゃうよ。

 『友人に恋人いるのに自分だけいないとか嫌じゃないか』

そういうものなのかな。
空気さえ読めれば、自分の好き勝手にしてもいいと思うんだけど。

 『いざそうとなったら誰が第一候補だろ?』
 「誰かって……」

そりゃあ、

 「簸素羅木じゃないのか?」

思ったままのこと。
真面目な話、あの二人は本当にお似合いだと思うし……虚言じゃないぞ。
まんざらでもない羽森がどのような反応を示すのかが気になったというのもあるけど。
素直に照れ照れしながらも認めてくるか、茶化されるのが嫌で否定をしてくるか、それとも――

 『あーやっぱくるか。そうきちゃうか。そこ攻めてくるか。うん、まあわからなくはないよ。そうだよね。一見さんはそう思っちゃうよね』

――そう答えることをわかっていて、一回聞いただけだと認めてる感じになるけど、最後にはちゃっかり否定をしてくるか。
どうやら最後の選択肢だったらしい。

 「違うんだ?」
 『あー、うん、えーっと』
 「なんで言葉に詰まってんだよ」

ペラペラと理由を述べたりする場面じゃないのか。

 『ははは、ああは言ったけれども、実際そうだと思ってたり』
 「…………フェイク」

つまり見せかけの言葉だったってわけだ。
なかなかどうしてやることがせこい。

80:空き缶 ◆KnlY:2013/02/08(金) 19:11 ID:T2o

やったあ八十レス突破!やったねY!これも皆のおかげだよ!
マジでここまで続けられるとは思わんかったわ。感謝感謝。ROMってる人もいると信じて……。

81:空き缶 ◆KnlY:2013/02/08(金) 19:14 ID:T2o


 『いやあ、本当可愛いよねー簸素羅木さん。下の名前もだし』
 「名字が阿修羅な感じがするよな、漢字的な意味で。大していいところない俺の言葉にも気さくに応じてくれたし」

あれこそが女子の本来ある姿ではないだろうか? どうやったらあんなに礼儀正しい(と勝手に自分で思っている)娘が育てられるのだろう。
もしかして家が超名家で超お金持ちで超厳しくて超煌びやかとか?
……有り得そうで怖い。
明日それも聞いてみよう。

 『秋寐とか呼び捨てにしたりしないの?』

返答予想できてる癖にそんなこと聞いてくんな。

 「しねえよ。どっかのラノベじゃあるまいし……、それに――」
 『それに?』
 「…………いや、何でもない」
 『えー、なんだよー教えろよー。隠し事多すぎてつまんねーよー』

ブーイング。まあ気持ちはわかるんだけどさ。

 「何でもないったら何でもないんだよ。忘れろ」
 『さあ、忘却の彼方へ……』
 「無駄に格好いいな」
 『話すことなくなったし切る?』

82:空き缶 ◆KnlY:2013/02/08(金) 19:15 ID:T2o

けろっと言う羽森。
遠慮っていうものが全くないよなこいつ。
こういうところでも流れってやつがあるだろうに……どうしてそういっつもぶつ切りにしようとするんだよ。
話すことないってのは事実だけど。

 「それじゃそうするか」
 『オッケー。かけてきた方から切るのが礼儀なんだよー』

「自分こんなこと知ってんだぜすげえだろオラオラ」みたいな雰囲気で言うな。
それくらい高校生なら誰でも知ってるからね?
常識的に考えて。

 「じゃあ切るわ。今度こそ本当に」
 『おー。じゃあな、また明日』
 「明日ー」

通話を切る。
と同時に、疲れがどっと出てきた。
どうしてだか、羽森と長話をすると疲れるんだよな。
知らぬ間に力を吸い取られているみたいで怖い。
現実的に考えると、そんなことは有り得ないのだろうけど。
夢みたいなことを考えてしまうのも、やはり疲れが溜まっているからなのだろうか……――

83:空き缶 ◆KnlY:2013/02/09(土) 11:09 ID:T2o


『いらないものはゴミ箱へ』
『幼稚園以下の時に教えてもらったよね――え? 言われた覚えがないって? そんな小さい時に?』
『全く、君は本当に記憶力がないね。そうすることでわざと虐げられようとしているのか?』
『……そんなつもりはないって言っても説得力がないんだよ。皆無と言っていい』
『ああ、でもそう演技することで責任逃れできたりするのかな……って、なんだよ、大声出して怒るなよ』
『君はよく僕に対して短気だ、とか言うけどさ、それはこっちの台詞だと思うんだよ』
『相手に短気と宣う人間ほど、自分が短気ということを知らない――んだ、案外とね』
『鏡で自分を写しているような気分にならないか?』
『もう一人の自分を見ているような気分にならないか?』
『分身を作っているような気分にならないか?』
『……混乱状態にある人間ほど、相手の意図で意思を動かすことが容易くなる』
『まあ、これは僕の自論だけどね。科学的あるいは医学的な根拠なんてないさ……知らないだけで、あるのかもしれないけれど』
『ん? 本当に混乱してきたって? そりゃ良かった』
『はは、身構えないでくれよ。つまり何が言いたいかっていうとね――』

『軽度の混乱状態にある今の君に、「いらないものはゴミ箱へ」って指示を出したら、どうなると思う?』

『ゴミを必死に探し回るか、自分をいらぬものだと判断して投身自殺か』
『僕には非常に興味があるんだよね』
『実演してくれないかな』
『織川くん』

――……まただ。
また、あの声が聞こえる。
どこかでしたような会話、どこかで聞いたような声、どこかで会ったことのある人物。
そのうちのどれも思い出せないとはなんということだ。

『人の心配よりも、自分の心配をしたほうがいいんじゃないかい?』

「……は」
そんなことは。
誰よりも俺が一番分かっていた。

84:クロ ◆Luss:2013/02/09(土) 17:43 ID:T/.

上手くて内容も面白いですねー。凄く憧れます。
文才素晴らしいです(`・ω・´)
更新、fightなのですよ!

そしてお互い、小説更新頑張りましょう。

85:空き缶 ◆KnlY:2013/02/10(日) 20:29 ID:T2o

>>84
よっしゃ久々のコメント……。有難うございます!
文才なんてないですよ?ハハッ。どっかのラノベの二番煎じみたいな感じで……もう……壁|ω・`)
勉強頑張りつつ更新も……ね。しますよ。
クロさんの小説も覗きにいきます、っていうか全部読みます(`・ω・´)

86:空き缶 ◆KnlY:2013/02/10(日) 20:37 ID:T2o


                * * *

結局あれからぐっすりと寝てしまっていたらしい俺は、翌朝も姉ちゃんにたたき起こされる羽目となった。
二日連続で悪いことしたなーとかはちっとも思わない。
むしろざまあみろって感じだ。自分でも何が言いたのかよくわからないが。

さておき、姉ちゃんが昨日よりは早く起こしてくれたらしく、登校時間にも余裕ができるほどだったので、
特に急ぐこともなく一連のことを済ませて家を出、今、馴染み深い通学路を歩いているのである。
呑気に飴を口でころころ転がしながら。
一緒に学校まで行く友達もいないのでやや退屈ではあるものの、これがデフォとなってしまった今では、
その退屈も一種の楽しみとなってきてしまっている。
ちょっと危ない人みたいな感じがして嫌だな……、いや、ここはむしろ勝ちと言ってもいいのか?
人間は退屈を嫌うというけれど、それを楽しみにしてしまった俺はもしかしたら羨ましがられる立場にいるのかもしれない。
何にしても大衆が嫌うものを好きになれるということは、数少ない少数派にいるみたいで格好いい感じがしてしまう。
少しおかしい考え方かな?
まあ元から変な俺なので、さほど心配することでもないのだが……。

欠伸が一つ。
ぐっすり寝たと言ったけれど、意外と眠りが浅かったのかもしれない。矛盾が生じてしまうような気がしてならないが、そこは置いといて。
そうなれば、原因はひとつしか思い浮かばない。

 「……あの声、なのかな……」

ぽつりと呟く。
理解が届かなかった話だったので内容はしっかりと覚えていないのだけれど、人を取り込むような話し方だったことは覚えている。
はっきり言って、俺は苦手なタイプ。自論うんたらを言っちゃうような人は好きじゃない。
「あっそ」で終わらせられるものを長々と話してもらってはこちらが困る。

87:空き缶 ◆KnlY:2013/02/10(日) 20:40 ID:T2o

口の中の飴を弄びながら、

 「知り合いにあんな奴いたっけな……」
 「どんな奴?」
 「どんな奴って言われ…………って、え?」

誰?
やけに可愛らしい声がした方を振り返る。

簸素羅木が俺の右腕を、両腕プラス上半身でがっちりホールドしていた。

 「うわあぁぁぁっ!」

驚きの声を上げる。声というか、悲鳴?

 「わっ」

びっくりしたのか、ぱっと両腕を離す。

 「いきなり大きい声出さないでよー……」

ショック死するかと思ったよ、と簸素羅木。
いや、それはねえよ。
あの程度でショック死ならば、俺は今頃何回死んでいることになってしまうのだろう……、考えるのも恐ろしい。
はあ、と一つ溜息をつき、すぐに表情を変えて、

 「さっきからぴったり張り付いてたのにさ、全然気が付かないから心配しちゃった」
 「え、嘘」

呟くまで俺の隣には誰もいなかったように思えたんだけど……。

 「嘘じゃないって。私ほら、気配とか消せちゃうから」
 「気配は消せても感じる体温とかは消せねえだろ」
 「じゃあ、そこも消せちゃう設定で」
 「すぐ忘れ去られそうだなあ……」

使い捨てになったりはしないだろうか。
あんまりごちゃごちゃと設定つけると後で回収やらが大変になるからな。
設定は計画的に!

88:空き缶 ◆KnlY:2013/02/11(月) 14:51 ID:T2o

……それにしても。
羽森の言っていたことはあながち嘘でもなかったようだ。「美少女が隣にいると優越感感じちゃうよね」って、アレ。
相手が着いてこれる様に今は歩行速度を遅めているので、一緒にいられるというこの状況を堪能できると言えばできるのだけれど……。
ちなみに俺の歩行速度は尋常じゃない。五十メートル全力疾走してる人を歩きだけで追い抜けるレベル。
いや、流石にそれは嘘だけど。
そう錯覚してしまうレベルの速度だと思ってくれ。
話の筋を戻すけれど、だからどうしてもじっくりと見られる形になってしまうのだ。
誰にって言えば、通行人に。
さっきから周りの視線がぐさぐさ刺さっているのが唯一の難点なんだけれど、この至福を堪能するためには我慢するしかないのだろう。
至福に生じる対価……、悪くないな。
一生に一度あるかないかなんだから!

 「それで、どんな奴?」

いかにも男子高校生チックなことを考えていると、いつの間にか簸素羅木の手によって話が戻されていた。
不自然にならぬよう、前の言葉を思い出しながら応対。

 「いや、わからないんだよ。絶対どこかで聞いてるはずなんだけど、うっかり……、
  というよりはなかったかのように覚えられていないっていうか……」
 「ふむふむ」

なるほど、と、ペンを走らせメモを取る簸素羅木。
メモ?

 「なんだか覚えていないとやばい感じなんだよな……。それで、今思い出そうとしているんだけど……」
 「やばい感じって?」

質問。

 「うーん……直感的に……だな。確信があるわけじゃないから、あまり間に受けないでくれよ」
 「へーえ。ふうーん。……あーなるほどなるほど」
 「…………?」

全て納得がいったよ! というような簸素羅木。どことなくやることが羽森と似ている。

89:空き缶 ◆KnlY:2013/02/11(月) 14:53 ID:T2o

結論が出されたのか、「織川くん!」とハキハキとした声で呼ばれる。

 「はいっ?!」

つられて俺もビシッとした口調で返事をしてしまう。
だけれど出された結論は、

 「全て夢だ!」

と言う残念すぎるものだった。

 「………………はい?」

さっきとは逆に、拍子抜けした声で対応する。
夢?
ゆめ?
ドリーム?

 「いや、簸素羅木……、夢じゃないってば。実際こうして意識があるときにもはっきりと聞こえて――」
 「それ自体が捏造された記憶だとしたら話は別だよ!」
 「………………」

……なんだろう。

 「例えば、その謎の声が聞こえる謎の薬を飲まされたとしたら?」

……物凄く痛い気配を感じる。中二的な。

 「織川くんはありもしない事実を――」
 「いや、もういいよ。わかったわかった。痛々しい妄想は自分の中だけでやってくれ」

我慢できねえ。
妄想垂れ流しは呆れ返っちゃうよ。
見切りをつけた俺は、簸素羅木にそれだけ言い、振り返ることなく学校へと向かう――はずだったのだが。

 「ちょ、織川くん、違うってば。違う違う違う」

必死に否定の言葉を並べる簸素羅木に前を塞がれる。
つーか、逆に否定することで信憑性が増しているような……。

90:空き缶 ◆KnlY:2013/02/11(月) 21:10 ID:T2o


 「何が違うんだ?」

今度は俺が質問。
言い訳ぐらいは聞いてもいいだろう。そんな気分だった。

 「えーっと、さっきのは、演技です」
 「お、おう……」

割とテンプレートな回答が返ってきた。
百二十パーセント認めてるようなものじゃないか? それ……。
まあ、でも続きがあるっぽいから一応聞くこととするか。

 「なぜ演技を?」
 「なぜかといえば、織川くんがそういうの好きそうだったからです」

乗ってくれるかなーと思ったんですよ。
…………。
そんな風に見られてんのか、俺。
軽くショックだ。
簸素羅木にそんなこといわれたらそれこそショック死しちゃうよ。
五秒で凹みから立ち直り、流れで注意を促す。

 「…………まあ、なんだ。あれだ。誤解を招くような行動を取らないほうがいいぞ」

学校の先生風な話し方になってしまった。
ぽかんとする簸素羅木。

 「……そーだね。一々誤解を解くのが面倒臭くなっちゃう」

どうやら納得してもらえたらしい。少しの間が気になるが、気持ちを整理していたということにしておこう。

91:空き缶 ◆KnlY:2013/02/12(火) 18:43 ID:T2o

話のネタがなくなったのか、俺と簸素羅木の間に静かな時間が生まれる。
……これは気まずい。
誰かヘルプってくんねーかな……。
叶わないんだろうけどさあ……。

 「……あ、そうだ」

そう思っていると、横からまたしても声がかけられる。と同時に、沈黙が破られる。

 「今何時かわかる?」
 「え? ……ああ、時間ね。っと、あと十五分で本鈴だな」
 「このペースで間に合うかな?」
 「間に合う間に合う。俺が言うんだから間違いない」
 「本当に? 本当に?」
 「本当だってば」

軽くやり取りを交わしながら、気づいたことが一つ。

 「そういえば簸素羅木さんってさ、俺の学校行く方向とは逆じゃなかったっけ? 昨日羽森と一緒に帰ってたじゃん。だからさ」
 「それかー。うん、実は私、織川くんのお家の近くなんだよね」
 「なるほど。そっか。それなら納得が――って、え?」

近く?
俺の家の?
近く?!

 「ちょ、マジで?!」
 「マジマジ大マジー」

そう言って、「ブイ」と頬の横にVサインを作る簸素羅木。美少女がやるとやっぱ違うな――って。
違うってば。
そうじゃなくって、

 「え……、ということは羽森とも逆じゃないか。なんで昨日一緒に帰ってたんだ?」
 「ふふふ、それはですね、少しでも結城と一緒に居たいからですよ」

「愛の力ですよ」と今度はVサインしていた指を一本だけ立ててくるくる回しながら言う。

92:空き缶 ◆KnlY:2013/02/12(火) 18:57 ID:T2o


 「な、なるほど」

愛の力って凄いな……、伊達じゃないぞ。
遠回りになっても一緒に帰りたいというのだ。
俺なら似た気力は絶対に沸かない――つまりそれは、簸素羅木の言う「愛」が偽りでなく本物だということにもなるのだけど。
……そうかあ……。
俺の持っていた「愛」は本物じゃなかったんだあ……。
悲しい気分になってくるな。
哀愁漂うというか。

 「さて、今日も今日とて結城分をたっぷりと補給しなければ」
 「補給という単語から発せられるオーラが危険すぎるんだけど」
 「いやいや、そう言ってますけど織川さん。あなたは光鳥ちゃん分を補給するんでしょう?」
 「しねえよ!」
 「全く、いけないですねえ、そのような変態行為に及んではいけませんよ?」
 「だからしないよ! つーかそれはこっちの台詞だよ!」
 「それはそうとしてさー光鳥ちゃん可愛いよねー。ツンツンしてるところとかさー」

話が百八十度ぐるりと変わった。俺の渾身の突っ込み総スルー。
流れは無視か……、いや、一応繋がってる?

 「羽森もそう言ってたな……でも、光鳥可愛いとかよく言うけどさ、中身見たらびっくりするよ」

持ち抱えてる問題に頭突っ込んでる俺からしてみたら、だけれど。
あいつに同性の新しい友達は必要だから――という思いからの忠告。
もしかしたら本当に友達になるかもしれないし。

 「そうかなー。……ねえ、私、光鳥ちゃんと仲良くなれると思う?!」

93:空き缶 ◆KnlY:2013/02/13(水) 16:47 ID:T2o


 「そうかなー。……ねえ、私、光鳥ちゃんと仲良くなれると思う?!」

目をキラキラさせながら聞いてくる簸素羅木。お、これは思ったとおり、友達候補誕生か?

 「うーん……手のひら返すことしないなら大丈夫じゃないかなあ」
 「手のひら返すって……しないよー。そんな下衆いこと誰にもしたことないよー」

一瞬だけ疑ったが、心の(大体が)綺麗な簸素羅木なら心配することもないかと結論づけ、「そっか」と一言。
人を安易に疑うのは良くないしな。
人間不信になってしまう。

 「よーうし、今日早速話しかけてみようかなー。ふふふ、わくわく、わくわく」

朝から気分が高まっている簸素羅木を見て、俺もなぜだかわくわくしてきてしまう。伝染しやがったぜこの野郎。
デメリットなんてないからいいんだけどね!

 「………………あ」
 「?」

やべえ。
一人忘れてた。
光鳥に話しかけるのを邪魔しそうな厄介人を――転校生に一番に目をつけそうな厄介人を。

94:空き缶 ◆KnlY:2013/02/15(金) 20:05 ID:T2o




 「簸素羅木……栞菜さん?」

クラス前方の戸を開けた途端、穂志がドアの前に近寄り――榎本と井藤も一緒だ――俺そっちのけで簸素羅木相手に話をかけてきた。
見事に予想的中。できればあたって欲しくなどなかった。当たり前だ。
俺に一度だけきつい睨みを効かせてから、簸素羅木の方へと向き直る。おーおー怖い怖い(棒)。

 「私達と色々話さない? 友達になりたいの!」

みろ、これが昨日光鳥をいじめていたいじめっ子の猫かぶり姿だ。憎たらしいったらありゃしない。
いっそこの場で「こいつ昨日光鳥のコンプレックス利用して暴言吐きまくってたんだぜー! 皆離れろー! あらぬことを言われるぞー!」
とか言ってやろうと思ったが、それだと光鳥のコンプレックスをクラスメートに聞かせることになってしまうし、
穂志から後で精神的に鬱りそうなことをされる可能性があったのでやめておくことにした。
女って結構陰湿なんだよなあ。
穂志が案外と打たれ弱い性格だったらうまくやっていたかもしれないけれど。
俺って意外とやるんだぜ?
隣の様子が気になり、目だけを動かし、見る。

 「うん、勿論いいよ」

どうやら穂志の誘いに乗るらしい。光鳥は後回しかな――と思いきや。

 「けど」
 「けど?」
 「先に光鳥ちゃんとお話したい気分なんだよねー!」
 「!?」

95:空き缶 ◆KnlY:2013/02/15(金) 20:08 ID:T2o

それだけ言い、光鳥の席までの距離が十メートルもないところを疾走。物凄い追い風が周囲に起こる。
周りのクラスメート達は呆然とするだけで、まるで何が起こったかわからないという様子。
無理はないだろう。誰もあの短距離を走ろうなどとは思いもしないのだから。
簸素羅木の標的にされた光鳥は、驚愕の表情を浮かべている。自分に来るとは予想できないもんな……。

 「光鳥ちゃん!」

光鳥の両手をがしっと掴む。その際に、「へっ?!」という抜けた声が口から出たことは、あいつには内緒にしておくこととしよう。

 「私あなたと友達になりたいの!」
 「と、友達、って……」

クラス中に響く声でそう言う簸素羅木。戸惑いを隠せないといった感じの光鳥。
美少女二人って絵になるなあ。
自分の席に着き、その様子を観覧していた俺はただそう思った。
後ろの席、羽森はまだ来ていない。本鈴三分前だというのに何をやっているのやら。

 「いいえ、それ以上かしら、親友…………そう! 親友! わたし、光鳥ちゃんと親友になりたいの!」

無駄な思考をしている間にも、簸素羅木の押しは続く。
せめてもう少し声の量を抑えることはできないのだろうか……、昨日と同じく隣のクラスの奴らがなんだなんだと見に来ているぞ……。

96:空き缶 ◆KnlY:2013/02/16(土) 21:17 ID:T2o


 「だから、私と友達になってくれないかしら!」

最後の一押しといった風にそう言う。
今度は光鳥の方へと全員の視線が向けられる。見てるこっちが辛くなってきた。

 「…………わ、私に向かって、鼓膜が破れるほどの声で話す奴とは友達になりたくない……」

か細い声で答える。いつもの調子とはいかないまでも、口調だけは取り戻せたようだった。
けどさあ、言い方がさあ……。声は小さいけれど、その直接的な言い方に、簸素羅木がどう答えるのだろう。

 「あれれれ、逆効果だったかー。ごめんね、光鳥ちゃん」

なんと素直にあっさりと謝っていた。やはり人間として違う。良かったなー、穂志みたいな面倒くさいやつじゃなくて……。

 「私さー、自分で自分を制御できないっていうのかな、とにかく、できないんだよね!」
 「二回繰り返さなくてもいいと思うが」
 「おお、今の会話なんだか友達っぽかった」
 「む…………」

顔をしかめる光鳥。簸素羅木みたいなタイプの人間は苦手なのかもしれない。押しに弱いのは穂志じゃなくて光鳥だったか。
どっかで利用出来る場面とかないかなー(外道)と思っていると、本鈴のチャイムが鳴ると同時に、
羽森が勢いよく戸をスライドさせてクラスへと入ってきた。
羽森に気がつかなかった簸素羅木は、光鳥に一時的な別れの挨拶を告げ自分の席へと戻って行く。
今日の遅刻は俺じゃなくて羽森か。
珍しいこともあるものだ。

 「おー、おはよう」
 「おはよ…………」

ぐったり。様子を一言で言い表すなら、その言葉が一番しっくりくる。

 「どうしたんだよ、お前が遅刻って」

中学時代、こんなことは一度たりとも無かったことを知っている俺からしてみたら、それこそびっくりだ。
天変地異でも起こるんじゃねえの?
大雨洪水暴風波浪、そして北では大雪警報?

97:空き缶 ◆KnlY:2013/02/16(土) 21:18 ID:T2o

でもどうせくだらない理由なんだろうな……、羽森の返答を待つ。

 「……簸素羅木さんのこと探してたらこんな時間になってた……僕としたことが…………」
 「マジで馬鹿じゃねえのか?!」
 「いやいや……、昨日言われたんだよね……明日から朝も一緒に行こうってさ……」
 「正直者めが!」

先に行ったんだなーとか、そういう解釈をしろよ!
どこまで純粋なんだ、お前は!
だれか保護してやれ!
心の中でひとしきり突っ込んだあと、朝の旨を伝える。

 「つーか、簸素羅木なら今日俺と一緒に……」
 「!!」

一瞬物凄い目つきで俺を見ると、そのあとすぐ、ゆっくりとした動作で顔をうつ伏せる。
怖いなあ……。

 「くっ……真翔の仕業か……汚い真似をしやがって……」
 「キャラ崩れてんぞ」

思いっきり聞こえている小言を受け流しながら、俺は「どんまい☆」の意を込めてバッグの中からひとつの飴を取り出し、
羽森の机の上へと静かに置いた。
右手で飴を軽く取り、包み紙をはがしている羽森の姿を見て危うく吹き出しかけたのも、これまた内緒事である。

98:空き缶 ◆KnlY:2013/02/17(日) 13:44 ID:T2o

ヤンデレ→相手を超絶愛したい。
メンヘラ→相手に超絶愛されたい。

二次元女の子キャラのヤンデレ化SSとか見るとすごくぞくぞくします。
一番大好きなキャラだと特に!(;゚∀゚)=3
実はヤンデレとか最高じゃないですかー!もう死ぬほど愛し続けるー!ww

99:空き缶 ◆KnlY:2013/02/17(日) 13:45 ID:T2o



平和な一日。
俺はこういうのを待っていた。
「今までも充分平和じゃねえかふざけんな」と言う人もいるが、考えてみてくれ。
一昨日は光鳥にストーカーされ、昨日は簸素羅木の転入騒動。
ここ一週間の間だけでもこれほどの大きな事件が起きているのだ。これで平和だという方がおかしいと俺は思う。
非日常に憧れる人間なんてものはこの世に存在するはずがない。
代わり映えのないこの穏やかな日常が一番いいに決まっている――とは、俺の一意見だけれど。
でもそれって、非日常SF系の物語を否定してるってことにもなるんだよな。
どうにも難しい。
言語主張。
なんとかできないものかなあ。

上の話との関連性がないって言えば嘘になるけれど、

 「SF系物語の創始者って誰なんだろうな?」

隣に座る光鳥へと、瞬間に浮かんだ疑問をぶつけてみた。
昼休み。
一から三学年、ほぼ全ての生徒が集まり、賑わい、混雑する食堂に、俺と光鳥、それと簸素羅木は来ていた。

100:空き缶 ◆KnlY:2013/02/17(日) 13:49 ID:T2o

回想。
三人で行くことを羽森に伝えた際、こんなことを言われた。

 「その二人と行くの? 両手に花じゃん!」

クラスから出る前の、羽森からの言葉だ。確かに、男子独りに女子が二人ってのは……うん。
俺としては何かいけないことをしているような気分になってしまう。
こういうの、慣れてないからねー。ご褒美というよりは、罰ゲームっぽい雰囲気。

せめて同性があと一人でもいてくれたらなーと思い、羽森も誘ってみたのだけれど、

 「ああ、僕? いや、いいよ。真翔はそれを満喫してくればいい。僕はほかの子と食べるから」

あっさりと断られてしまった。
意外。
いつもならノリでこっち来んのになー。

少ししょんぼりとしていると、光鳥と話がしたいから、という理由で一緒に来ることにした簸素羅木が、羽森のそれを聞いた途端に
「なら私も結城と一緒がいい!」などと言い出し始めていた。これまた説得が大変だった。
光鳥と話すんじゃなかったのかよ、みたいな。

穂志の様子がふと気になって、横目で様子を伺っていたのだけれど、何ら変わらぬ睨み目でこちらを見ていた。
相変わらず怖いですねー穂志さん。
俺にとっては光鳥の睨みの方が数千倍怖いけど!
そう内心で煽る時に、榎本と井藤が離れたそうにしているのをばっちりと確認。今度またもう一度だけ話し合いを持ちかけてみるかと思い、
教室をあとにした――というわけだ。

回想が思いのほか長くなってしまったが、只今は見ての通りお昼休み中である。

101:ネコ:2013/02/17(日) 15:07 ID:QdU

100おめ!
私も(別のNAMEで)小説書いてるんだけど、私もいつかこんな風に小説書いてみたいな〜!
とにかく、100おめでとう(←何回言ってんだ?)

これからもずっと応援してますよー!

102:空き缶 ◆KnlY:2013/02/17(日) 20:10 ID:T2o

>>101
有難うございます!トンクス!ww
その際は私も見に行きますよ(`・ω・´)!
ではおめでとうの分だけ……有難うご(ry

よろしくお願いしますm(_ _)m

103:空き缶 ◆KnlY:2013/02/18(月) 22:53 ID:T2o

光鳥が不思議そうにもせず答えをくれる。

 「フランスのジュール・ベルヌだ。人類が宇宙に飛び立つという話を書いたことで知られるな」
 「へえー、光鳥ってそんなことも知ってんのな」
 「中学時代は雑学王とも言われた私だ。あまり舐めない方がいいぞ」
 「残念な称号だなあ」
 「なんでも知ってる女の子」
 「半吸血鬼の男子高校生が出てきそうだなあ」

焼きそばパンを口にしながら言う。いつでも変わらない美味しさ。
これがいいんだよね!
入学後初めて来た時に購入した品だ。一口食べただけで病み付きになってしまう。以来購買ではこれしか買っていない。
女子二人の食しているものはというと、光鳥がカレー定食と麦茶。簸素羅木は紙のように真っ白い食パン×八枚だ。
光鳥の方は、いかにも高校生らしいメニューというか……、凄く納得ができるのだけれど……。
簸素羅木のそのチョイスは何だ。
食パン八枚って。
何もつけずに八枚って。
いくらなんでも飽きるだろ、それ。
普通に八枚切り買ってきたほうが安上がりじゃないのか?

104:空き缶 ◆KnlY:2013/02/23(土) 15:13 ID:T2o

トゥットゥルー☆
久しぶりの更新だぜ。実に五日ぶり。
病葉と同じでこっちも書き溜めてた文が消えてますた(^p^)
皆保存はこまめにしようね!
それでは続きをどうぞ。

105:空き缶:2013/02/23(土) 15:16 ID:T2o


 「いえいえ、そういいますけどね織川くん。ここで食べるってのがいいんですよ」

例えるなら、海の家で食べる焼きそばの食堂で食べる食パンバージョンって感じ。
言って、パンを千切り口へと放り込む。数回咀嚼してから飲み込むと、すぐさま飲み物をごくりと一口飲んだ。
パンに合う飲み物ってなんだろうな。やはり牛乳とかか? それかジュースか。

まあ、別に解決できなくても問題がないよな、と疑問を頭の奥へとしまいこみ、残っていた焼きそばパンのひとかけらを食べ、
無事昼食を完食。
近くに置いてあった紙パックのオレンジジュースを持ち上げる。が、なんということだろう。中身がないではないか。
そこで記憶を遡り思い出す。ああ、食べ初めの前に一口飲もうと思って開けた数秒後に、地面に落として中身を大半失ってしまったのだっけ……、
無駄なことをしてしまったと凹んだことも思い出した。ほとんど同じ時間帯に起きた出来事なのに、どうして忘れていたのだろう……。
俺の記憶力が衰退し始めているのかもしれない。
高校時代これだったら、成人、老人になった時にはどうなっているだろうか……、想像するのも恐ろしい。

 「はあ……仕方ないか」

現在の所持金――というか残金は百五十円。食料費以外の現金は万が一取られた時のために持ち歩いていない。
比較的安いものを買うこととしよう。そうすれば明日の分へと繰越が出来ることだし。

106:空き缶 ◆KnlY:2013/02/23(土) 23:35 ID:T2o

決めて、席を立ち上がると。

 「あれ、織川くんどこ行くの?」

こちらに気付いた簸素羅木が声をかけてきた。
事情を軽く説明する。
 
 「あ、そうなの? んじゃいってら〜」

ひらひらと手を振り見送ってくれた。見送るといっても、直線距離二十メートル以下だからすぐに戻ってこれるのだけど。
未だに食堂は混んでいる。学食も然ることながら、ここは勉強スペースとしても使えるので、後者目的で来ている生徒も少なくはないだろう。
だからといって昼食時間に来るなとは言いたいが……。
俺のクラス内での成績は中の中。つまり平均的な位置ってことだが、俺としてはもう少し頭を良くしたい限りである。今度羽森にでも、
勉強を教えてもらうことにしようか――無知無能な人間は使えないだけだから。

 「…………考え方が、似てきちゃってるな」

落胆する。考えが乱されていくというのは決して気持ちの良いことではない。
知らぬ間に、知らぬ誰かに、自分を勝手に改変されているような。
そんな気がしてしまう。

107:空き缶 ◆KnlY:2013/02/24(日) 11:46 ID:T2o


『他人の倫理をも破壊するのが僕の役目だ』
『凶悪だとか、非人類的だとか。馬鹿みたいなことは言わないでもらいたいね』
『実際に浴びせられてきた罵倒だけど、あまりにも幼稚すぎて、稚拙すぎて相手にする気にもならなかったよ』
『いや、だって仕方がないだろ?』
『生まれてすぐ、親でも知人でもない赤の他人にそう教え込まれてしまったのだから』
『今更覆そうとしても無駄無駄無駄無駄全部無駄』
『時間とエネルギーを消費するだけだよ』
『……まあでも』
『こんな狂った考えを変えてくれる――改変してくれる人間なんてものが存在したとするならば、是非とも矯正をして欲しい限りだ』
『ん? ああそうか、そうだね。僅かだけど、矛盾、しているね』
『指摘されなければ気がつくこともできないなんて、僕も落ちぶれたものだな』
『じゃあこういうとしよう』
『最高にクールで格好良い言い訳さ』

『知的者は、矛盾を気にしないんだぜ』

108:空き缶 ◆KnlY:2013/02/24(日) 16:53 ID:T2o


何度目だろうか、あの声がまた再生される。俺の脳内で、誰にも気がつかれずに。
ずっと、思い出すことはできないのだろうか。
ずっと、もやもやしたままなのだろうか。
とりあえずは今、自販機で目当ての物を買うことに意識を戻す。

 「悩んでても仕方ないもんな……、お、あったあった………………って品切れかよ!!」
 「!?」

思わず大声で叫んでしまった俺。都合よく近くを通り過ぎようとしていた一人の男子生徒(先輩だろうか)がびくりとし、顔をこちらへと向ける。
……やべえ。

 「あ…………、いや、その、なんでもありません……」
 「…………」

釈明をされたけど、どこか信用性がない。
そういう風な表情をしていた。
年上の人と話すのは苦手なんだ……。どうか勝手に解釈をして立ち去ってくれますように……。

109:空き缶 ◆KnlY:2013/02/24(日) 18:32 ID:T2o

そう心の中で願っていると、

 「……………………ああっ!」
 「……?」

目の前の先輩が何かを思い出したかのように声を上げる。
え、何、援軍を呼ばれる? 俺フルボッコルート突入ですかわかりません。
なんとかしてこの状況から抜け出せないだろうか……、痛いのは嫌いなんだ(暴力的な意味で)。

 「あの、マ……いや、じゃなくて、本当なにか俺やらかしましたか……? もしそうだったら誠心誠意謝りたい限りなのですけど……」

恐る恐る尋ねる。なるたけ無礼な物言いにならないように注意もしながら。
いやはや、いつどの年代でも、年上の先輩というものはなぜか怖いイメージが強いよな……。
俺もその一部であるから、気楽に打ち解けてる同級生なんかをみると、すげえなぁ羨ましいなぁどんな会話テク使ったんだろうなぁと、
心の中でひたすらに思うだけである。
社交性というものが足りないのかもしれない。
大体、クラスでも打ち解けてない奴とか、先輩と会話するのも難しいだろうに。
うん、俺のことなんだけどね!

さておき、こんな考えができるほどの長い時間口を開かない、俺の前に立つ先輩。

110:空き缶 ◆KnlY:2013/02/24(日) 22:56 ID:T2o

すると、何かを言うように、やっと口をゆっくりと開く。

 「謝る必要はないよ。君が噂の織川くんかーって、気がついただけ」

極めて朗らかな口調で、俺の不安をぬぐい去る先輩。よかった……高校生活一年目にして目をつけられる、なんてことはなかったようだ。
でも、ひとつ気になるのは……。

 「えっと、……噂って?」
 「あれ、知らないの? 今日超を十つけても足らないぐらいの美少女と登校したって、ツイーターで話題になってるよ?」
 「……マジすか」
 「マジマジ大マジ」

先輩からの返事が信じられず、携帯を取り出してツイーターへと急いでアクセス。
羽森の「呟かなくてもいいからアカとっときなよ!」という押しが役に立つ時が遂に来たらしい。ここで回収されるのか。
ページの読み込みが終了し、ツイーターのトップページへ。
『今最も呟かれている出来事は?』。そう書かれたボタンを選択――。

その画面を見た俺は絶句した。

なんということだろう、紛うことなくその話題だらけ……とはいかないものの、一分間に更新される数の役半分が注目の話題関連だ。
なる程、ランキング五位に躍り出るのも理解できる……。
しかし、知らぬ間にここまで広まっていたとは……。名前教えてなんていう呟きもあるし……。
誰だよ、ツイーターの話題持ち切りにさせた奴は!
無性に腹が立ち(なぜだ)、更新履歴の古い方へと遡る。新しい呟きがどんどんと下へ。
すげえな、小一時間でもこれほどの量を呟かれてるんだ……。

111:空き缶 ◆KnlY:2013/02/25(月) 13:22 ID:T2o

そして全ての元凶である呟きへと到達。
驚くべき発信者は――

 「…………」

羽森だった。
…………なんというか、うん。
ここまで引っ張っていうのもなんだけど、話し始めから大体のことは予想してたさ……よくやりそうなことだよな。
そこらへんの行動は無駄に裏切ってくれないという……もっといいことをしろよ……。
ジェラシーって怖い。
いつか取り返しのつかないことされるんじゃねえのか、俺。

 「発言者が知人さんだったーって顔してるよ」
 「妙に納得がいく人なんですよ、それが」

だからコソコソとしてたのか……、俺にバレまいとするために……。
よっぽど悔しかったんだろうなあ……しかしここまで広められるというのも、ある意味すごい。
一高校での話題でしかないのに……それは流石顔の広い羽森といったところだろうか。
ともかく、個人の勝手な嫉妬に俺を巻き込んで欲しくない限りである。

112:空き缶 ◆KnlY:2013/02/27(水) 16:41 ID:T2o

ツイーターとか影も形も隠せてねえな。
凝った名前考えるのが面倒くさいってのもあったんですけどね(´・ω・`)

113:空き缶 ◆KnlY:2013/02/27(水) 16:43 ID:T2o


 「転校生の子、本当に可愛いよねえ。さっきそれらしい人影を見かけたんだけど……知ってる?」
 「……あー」

自然と口ごもってしまう。
できればここは穏便に済ませたいなあ。
転校生が来たってことは一年生の間だけで話題になっていることとはいえ、ツイーターで話題になってしまったのではそれも無理か……。
転校生で美少女だし。
穏便に済ませってほうが無理だろ、これ。
無理ゲー臭がしてきた。
無理ゲーを通り越して、クソゲー?

 「? あはは、知らなかったら別にいいんだよ? 俺もそこまで気になってるわけでもないよー……ってのは、嘘だけど」

と、軽く笑いながら言う先輩。そういやまだ名前も知らねえや。
さておき、いつまでも黙っているわけにはいかないので、平気かなあという不安を押しのけ居場所だけ伝えることに。

 「えーっと、そこの角を曲がったすぐそばの席に」
 「マジで?!」
 「な、速っ!!」

114:ヒヨドリ:2013/02/27(水) 17:31 ID:QdU

いつも見てたけどあんまり書き込んでなかったー

うん、やっぱ面白いねヾ(*´∀`*)

  真翔くん、ピンチ到来。。。
でも真翔ってなんかホノボノするキャラですよね〜!なんか反応がかわいいかも(笑)

こんなうまい小説書ける空き缶 ◆KnlYさんはすごいです゚.+:。ヾ(o・ω・)ノ゚.+:。

115:空き缶 ◆KnlY:2013/02/27(水) 18:56 ID:T2o

ニヤニヤしてる自分がいるのも事実だぜ。

>>114
レス有難うございます!ww
ラノベ特有といったら特有ですかね。反応が可愛い……だと……!?ww
ヒヨドリさんの小説もチラ見(←)させていただいたことあるんですが、うますぎて途中で読むのやめましたorz
これからもよろしくお願いします。

いやあそれにしてもROM多いですねえww恥ずかしがらなくてもいいのy(ry

116:空き缶 ◆KnlY:2013/02/27(水) 18:58 ID:T2o


不安の塊とも言える俺(うまくない)を押しのけて一直線に走り始める。距離が二十メートルもない通路を。
いやいや、だから何でもかんでも走ればいいってもんじゃねえよ?!
簸素羅木も先輩もさ、高ぶる感情を抑えようぜ!

 「ちょ、待ってくださいよおおおお!!」

そう叫ぶも俺の声は届かず――きっと届いてるんだろうけど、それを聞き取るのももどかしいといった状況か。
『話題のあの人に直撃!』
まさにそんなタイトルが似合いそうなこの走りっぷり。
どのくらいかというと、途中で足引っ掛けて顔面直撃からの階段から転げさせてみたいレベル。
……うん、自分でも何言ってんのかよくわからねえ。

 「おおおおっとっとっと!」
 「うわっ! ちょ、いきなり立ち止まらないでくださいよ! 危ないじゃないっすか!」
 「うん? あれ、織川くんどうしたの? その人は?」

どたばたに気がついた簸素羅木の声。後ろで嫌そうに目を細める光鳥。
『面倒なことになったなあどうしてくれるんだよ』というオーラが見え見えである。放たれっぱなしである。

117:空き缶 ◆KnlY:2013/02/27(水) 19:07 ID:T2o

主要キャラになるかもわからない人物、詳細もろもろ書いときます。
モブキャラその4(主要キャラ昇格あるかもね):先輩
本名は作中にて公開です。設定では南堂高の二年生ってことになってます。
性別は言わずもがな男ですがな。男装女子なんてオチはないから安心してください。
趣味はゲームという設(ry 

キャラ紹介終わり。
光鳥ちゃんのコンプレックス関係はもちょいしたら再開するよ!展開遅くてごめんなさい(´・ω・`)

118:ネコ:2013/02/28(木) 21:10 ID:QdU

あぁ、私がなんか自演(なりきり)してるみたいだぁ。・゚・(*ノД`*)・゚・。
>>114 ヒヨドリは私、ネコです。(ネコ=ヒヨドリ)名前を間違いました。。。でも、その変な小説を書いてるのは事実です。
勝手ながら、空き缶 ◆KnlYさんからのアドバイスが欲しいヒヨドリです。

 まぁ、そんなことは置いといて。雑談が多くならない程度に( ´・ω・)o
真翔かぁわいい!(照) なんかいじりたくなるキャラです(´∀`●)セリフの1つ1つがなんか、笑えるんだよーヾ(≧∇≦*)ノ

ROM(?)が多いと言うのなら、この小説見るたびに真翔にラブメッセージ送ってやるです。

119:空き缶 ◆KnlY:2013/02/28(木) 22:21 ID:T2o

>>118
( ゚д゚)!すみませんId見てませんでしたww
な、なんだってー!>ΩΩΩ お粗末な私のアドバイスで良ければ……(やる気満々)

ありのまま今起こったことを話すぜ!真翔がいつの間にか萌えキャラと化していた。何を言ってるのかわからねえと思うが、私も(ry
初めてですよそんなこと言われたのwwwいえしかし嬉しいですね。有難うございますww

送ってやってください。美少女と戯れてキャッキャウフフしてる主人公に送ってやってください(`・ω・´)←

120:空き缶 ◆KnlY:2013/02/28(木) 22:23 ID:T2o

どーせ悪く言われるのは俺なんだろうなあ……いや、先輩を悪く言うとか、本人居る前ではできないってば。
でも影で悪く言うってのも問題有りだとは思うけど。
まあどっちにしても人間ですし。
咎めろという方が無理だろう。

 「なんか、お前に会いたい、って先輩がいてさ」
 「へー、……もしや隣の人が先輩?」
 「うん」

経緯を聞かずとも分かるという風な簸素羅木。対応の仕方からして、何回も体験してることなのだろう、きっと。
根っからの人気者……なんで俺の周りにはこういう人達ばっか居るの? 俺ならもうとっくに絶望してるから大丈夫なのに。
あれか、誰かが仕組んだ罠なのか? 機関の仕組んだ罠なのか? 俺を更に底の見えない奈落へと引きずり落とそうとしているのか?
世界線移動しないと回避できないパターンなのか?
だとしたら俺の心眼に秘められている魔力を発揮しなければ!

121:ヒヨドリ:2013/03/01(金) 20:31 ID:QdU

来てくだってありがとうございます!
ネコからヒヨドリに変えました。 

 魔力って・・・・・真翔よwww うん、かわいい☆たまらないね☆たまらなくかわいい!←って私どんだけ上から目線?

次の更新待ってマス(* ゜∀`*)ノ☆。 

122:空き缶 ◆KnlY:2013/03/01(金) 23:14 ID:T2o

>>121
もう萌えキャラに昇格させようかなあwww

明日更新しますのでお待ちを(´・ω・`)

123:空き缶 ◆KnlY:2013/03/02(土) 11:42 ID:T2o

と、やや(というか凄く)中二病チックなことを考えていると、

 「…………」

…………光鳥からのキツい睨みをいただきました。
どうしよう、背筋が冷たくなるほど怖い。
あ、俺もしかして羽森じゃなくて光鳥に取り返しのつかないことされる? もとい殺められる?

 「…………」

…………。
もうひと睨み入りました。
仕方ない、戯言はここまでとしよう。
隣へと目をやる。
気になるのは先輩の気だ。先程から反応がないのでやや不安になる。つーか不安になってばっかりじゃねえか今日。
当の本人はぽかんとした表情のまま微動だにしない。本当に大丈夫だろうか。

 「おい……おい織川」

小声で呼ばれ横を振り向くと、先刻まで睨みを効かせていた光鳥が、いつの間にか隣へとこそこそ来ていた。
気配を消す能力を身につけたというのか……?!

 「くだらないこと考える暇があったらさっさとこの状況をどうにかしろ。一緒に居る私まで気まずくなるだろうが」

心をまたしても読まれた上に無茶な命令をされた。

124:空き缶 ◆KnlY:2013/03/02(土) 21:19 ID:T2o

いや、だったらお前がどうにかしろよ? ……とは口に出さないでおくが。
三倍以上になって返ってくるよ。
主に暴言が。

 「別にお前に直接的な被害は及んでないだろ。我慢しろよ我慢」

宥めるように言って説得を試みる。
嫌そうな顔をするも、口元が僅かに緩くなっているのを俺は見逃すことなかった!

「そうだな」

今までに見たことのない神妙な面持ちで言葉にしてくれた。
……でも重要な場面じゃないからそういう顔をするのはやめようぜ。
価値が下がってしまう。
レア度的な意味で。
しかし、本当に許諾してくれるとはまさかまさかである。絶対暴言混じりに否定されると思――

 「我慢という名の逃走と題して早々に教室に戻るとするか。栞菜の寝取りとナンパってどっちが需要あると思う?
  羽森も巻き込んでプチ修羅場の出来上がり。総監督、私。ふふふ……」
 「ってたら案の定フラグ回収されたよ! ちょっとだけ感心した俺が馬鹿だったよ! やっぱ考えてることはいつもどおりなんだな!
  訂正しなくてもいいと思うけど寝取りとナンパって多分一緒のジャンルだよ?! あと羽森を巻き込むなよ!」

125:匿名さん:2013/03/03(日) 03:19 ID:8Cs

読みづらい。話が分かりづらい
何を伝えたいかわからない

そして…つまをない

126:空き缶 ◆KnlY:2013/03/03(日) 18:52 ID:T2o

>>125
なにしろ小説初心者なもので……。言い訳に聞こえたらすみません。
一種の感想として受け止めさせていただきます。

127:麗愛:2013/03/03(日) 18:56 ID:RNw

面白いねぇ(^^♪
でも、会話文が長い、かな?
私は好きだけどー♪

128:ヒヨドリ:2013/03/03(日) 19:21 ID:QdU

>>125 ソーリー、私は貴方の意見の意味がまったくわからんぜ。。。あなたがつまらなくても、私はぜんぜん面白いと
思うが。。まぁ、個人の感想としてだ。気にしないでくれ。

>>麗   あ!麗だ、ハロー☆ さっきはありがとね!! 

>>空き缶 ◆KnlY様  睨まれてるのによゆーだね、真翔(笑)いやいや、そこがかわいいんだけど☆
真翔がこれからどうやって学校生活おくって行くのか楽しみですq(´ω`*)p
わぁ、真翔の可愛さは増すばかりですな・・・・

129:空き缶 ◆KnlY:2013/03/04(月) 13:12 ID:T2o

>>127
『会話文から描写に切り替えようとするとなぜか会話が倍ほど長くなるの法則』です←
改善に努めます。

>>128
ヒヨドリ様の真翔好きがますばかりですね……!
更新が遅れるかもわからぬので気長にお待ちいただければと思います。

130:空き缶 ◆KnlY:2013/03/10(日) 18:01 ID:bGQ

失踪したと思いましたか? 残念! ただ更新が面倒だっただk(ry
前みたいに毎日てことにはできないかもしれませんが、週一ぐらいでだらりんとしていければ。

131:空き缶 ◆KnlY:2013/03/10(日) 18:03 ID:bGQ

ついつい声を大にして突っ込んでしまう。
周りへの注意を怠るとはなんたる失態。
織川真翔、ここに敗れたり。
何が言いたいかっていうと。

 「…………」
 「…………」

二人が一瞬にして黙る=(イコール)?
『間違いなく聞かれた。そして勘違いでなければ間違いなく引いている』、この一文のみだけである。
しかし、謎の公式が出来てしまった。重要な風にでてきたにもかかわらず、多分この先実用することはないだろう。
大方の設定というものはそういうものだ。『そういう風にできている』とでも言うべきか。
最近のファンタジーにはゴテゴテな設定がつきものだが、それ全てをきちんと回収できるのか心配になったりする。
「最終巻近くになったのにあの設定生かされてなくね?」と感じたり。
これは一度出版社に聞き出すべきか――というか。
それ以前になぜ今俺はこんなことを考えているのだろうか。
現実世界は今どうなっているのだろう。
現実に目を戻すのがとてつもなく怖いだなんて、そんなことあるわけない。
……ないはずだ。

132:空き缶 ◆KnlY:2013/03/11(月) 18:40 ID:bGQ

…………。
……嘘です。
とてつもなく怖いんです。
仲良く出来たと思っていた簸素羅木からの冷ややかな視線を浴びるのが怖いんです。
ああ、さよなら俺のクラスメート。さよなら俺の高校生活。さよなら俺の人生。
これにて織川真翔の物語、終結。

 「ちょいちょいそこの男子生徒くん。公の場で寝取りだとか言うのは良くないよ〜」

――なんて都合のいい終わり方も考えもあるわけがなく。
普段と何ら変わらぬ調子で、しかし大きさは小さく、けれど長いと思われていたその沈黙を破ったのは、我らが女神・簸素羅木栞菜であった。
しかも超絶可愛いスマイル付きで。
どうして今この状況でそんな顔ができるのだ。
並外れた度胸に感心と興味を覚えるばかりであり、そしてそれ以上に――。
これは……惚れるッ!
興奮状態の俺を知ってか知らずか、時計を見るなり、

 「あーあ、もう。お昼も終わりだよ。私まだ食べ終わってないのに」

と、がらっと話を変えてきた。

133:空き缶 ◆KnlY:2013/03/12(火) 11:15 ID:bGQ

時計の指し示す時刻は十三時三十二分。あと三分で昼休みがが終わるというところまで来ていた。やはり時の流れるのは速い。
ふと相手に目をやると、手元にはまだ三枚の食パンが残っていた。この調子から推測するに、食べ飽きたのではなかろうか?
しかもよく見ると、購入時よりもパン特有のふわふわ感がなくなっている感じがした。
一番食べたくない状態だよな、これ。
まあ、八枚切り食パンを袋から取り出したような状態で三十分置いておけばそうもなるだろう。妥当なところだ。
食べきれなかった時のために保存袋でも持ってくればいいものを。

 「私だって毎日これ食べてるわけじゃないからね〜。……一枚食べる?」

最終奥義・おすそ分けを発動させてきた。
だがしかし……。

 「そう言われてもねえ……、軽くパサパサの食パンは……」
 「なにをいうか織川くん、これはこれで味があっていいじゃないか!」
 「いきなり乱入してきてなにいってんすか先輩」

合わせようとしたのかなんなのか、いつの間にか先輩が話に加わってきていた……先輩かどうかの真偽もわかってない今、
そう呼ぶのが正解かどうなのかはわからないが……。

 「…………」

いい機会なので、聞いてみることにした。

134:空き缶 ◆KnlY:2013/03/12(火) 22:58 ID:bGQ


 「え? 俺が先輩かどうかって? 何を隠そう俺はちゃんとした先輩だぜ? というか、上履き見てみ。二年学年色の青だから」
 「……本当だ」

よく考えてみれば、直接答えを聞かなくても色で判断すれば自決することは可能……という先輩からのド正論が、
謎の後悔とともに俺の頭を遅く駆け巡った。
もう一人の自分に、「だから知恵がたりねーんだよ」とバッサリ言われそうな雰囲気である。
ちなみに(別にちなまないでもいいが)、一年生の学年色は赤、三年生の学年色は緑である。
いまいちぱっとしない色の選択ではあるが、創立以来ずっと続いているものらしいので、途切れさせるわけにもいかなかったのだろう。
いやまあ。
これには流石の俺も意見を……というより駄目出しをしたい限りである。
現代風に言ってしまえば、センスの欠片がない――という感じだろうか。
誰だよ、選んだやつ。
ここで愚痴っても、現世にはもういないのかもしれないが。
さて。
脳内でひたすら学年色についての話を延々とするわけにもいかない。
ので、ここらで、

 「確かめる意味もなかったようですね!」

と明るく先輩に振ってみた。
「この頃サドっ気が増したよな」と羽森に今朝――つまりは飴を置いたあとに言われてしまったのを、今ここで思い出す。
素直に認めるのも気が引けるし、断固として拒否するのもそれはそれで空気読めない感じがするし……で、俺は前者を選んだわけだが、
どうやらあいつの言っていたことは正しかったらしい。
自称Sってのも嫌悪されるが。

135:空き缶 ◆KnlY:2013/03/13(水) 18:48 ID:bGQ


 「どういう意味だよ……」
 「そのまんまの意味ですよ。元から先輩だろうな、とわかっていて振ったんです。ようは遊び心です。なので許してください」
 「言われなくても許すけどさ、妙に晴れやかだね織川くん……」

苦笑い。
内心笑えることではないだろう。
後輩にいじられるというのは、シチュエーション的に間抜けっぽいからな……いや、それ以前に、
後輩がにこにこしながらそういうことをしてくるのは、素直に怖いし。
身の危険を感じる、というのだろうか。
加害者の俺がいうのだから間違いないだろう。
その俺を見て、いつになく長い溜息を吐いた光鳥。

 「先輩いじりが楽しいからでしょうね」

遠まわしに言うでもなく本人に見解を示した。
うーむ。
光鳥としては惜しいな――半分あたりで半分はずれというところ。実際、俺の先ほどの行動による目的は二つあったのだから。
一つは、たった今光鳥のいったことである。人それぞれ解釈は違うだろうが、どんなものでも構わない。
たまたま先輩いじりという、今まで経験のしたことのない領域に踏み込んだということだけだ。
もう一つは、今俺の前に立っている先輩の素性やら性格やらなんやらを見てみたかった、というものである。
一部の人間からは非難されるかもわからないが、これが俺流の、人付き合い第一段階なのだから仕方がない。
ようは一番最初に色々な反応を見、そして付き合い方を練ったりする――という、まあ面倒な手順ではある。
だがそうでもしないと安心して付き合える気がしないのだ。
軽く人間不信の域に入り込んでいる感はあるが、今更になってやり方を変えようとはちっとも思わない。毛ほどにも思わない。

136:空き缶 ◆KnlY:2013/03/16(土) 21:17 ID:bGQ

……というか。

 「……なあ光鳥」
 「! ……なんだ? って、おい、手に触れないようにしろ!」
 「あ、ごめん。って、ちょっと。謝ったじゃんよ。ちょっと。怖いよ光鳥さん」

カレーを食す際に使っていたスプーンの柄の部分を使い、俺を突っついて――というかもう半ばど突く感じで注意を促す、
人間凶器・光鳥秋寐。
つーか柄の部分でど突くって。
無駄な技術ばっかりつけすぎだよ。
その力技によるダメージをあまり受けないように受けつつも、光鳥に対してしゃがむように指示する。
制服の端っこを掴んだり引っ張ったりして、だ。
いい加減俺のその動作に苛々してきたのか、今の今までの反抗が嘘のようになくなったかと思うと、素直にしゃがんでくれた。
うん、だから最初っからそうしようね?
小声で話を始める。

 「お前、男子苦手じゃなかったのか?」

本当に些細なことなのだけれども、先ほど先輩と光鳥が普通に会話をしているのを見てのことだ。

 「聞いた話じゃ、男子と話すのも無理なんじゃなかっ――」
 「一体どんな記憶違いをしているのだお前は……ッ」
 「あれ?」
 「ったく…………いいか、もう一回よく考えてみろ。
  お前のその仮説とも言えないことが本当だとするなら、なぜ今私はお前と普通に話をすることができている?」
 「…………あ」
 「とんだ鳥頭だな…………、本当に私を助けたいと思っているのか?」
 「そ、それは勿論思ってるよ!」
 「はん、どーだか」
 「…………」

光鳥の俺に対する信頼がガタ落ちしたのが、目に見えてわかった。

137:ヒヨドリ:2013/03/17(日) 11:45 ID:QdU

おひさー! 久しぶりに来てみた☆
ちょっ、靴ひもで学年分かるって、ヒヨのこれから行く中学と同じだ!
ヒヨの学年は赤になる予定♪

光鳥ちゃんに嫌われないようにねー?真翔!
つか、何回も言うんだけど可愛すぎるよ、真翔。  鳥頭ってwww  吹き出した(笑)

138:空き缶 ◆KnlY:2013/03/17(日) 15:46 ID:bGQ

マインスイーパにハマっちゃって全然続き書けない(´;ω;`)

>>ヒヨドリさん
なんという奇遇!私も中学の時はそうでした。
どちらかというと女の子萌えなので男の子萌えには疎いんですよね……orz
なるたけ努力します。

139:ヒヨドリ:2013/03/18(月) 13:38 ID:QdU

え・・・・・・って、空き缶様何歳ですか?
あと、女の子萌えなんだ〜!

っというか、小説頑張ってください!  fight!

140:空き缶 ◆KnlY:2013/03/19(火) 23:08 ID:bGQ

>>ヒヨドリさん
来月高校生になる女ですwww
二次元美少女キャラならなんでも。まこりんマジ可愛い。

はい!頑張ります!ww

141:空き缶 ◆KnlY:2013/03/19(火) 23:10 ID:bGQ

そりゃそうだ。
頼りにしている相手が鳥頭の馬鹿だったら、誰だってそう思う。俺だってそう思う。
逃れることのできない事実なのだ。
悟ったようなこと言っても説得力ないけどね!

 「まあお前が重要なことを忘れている、というのは想定内だったがな」
 「へ、へえ………」

自分でも笑顔が引きつっているのが分かる。
つまりは最初っからあまり信頼されていなかったということか……。
なんてこった……。
これじゃあ信頼度ガタ落ちしたとして、もう地に付いているレベルじゃないのか?
人間としてどうなんだろう、それ……。

 「だから」
 「ん?」
 「再度信頼をして欲しければ、その……、私のコンプレックス克服を、手伝え」
 「…………」

そうだ。
俺には、重要な任務があるではないか――と、この口ぶりからすると、
この件まで忘れていたような気になりかねないが、そこまで俺の記憶力は悪くない。
しっかりと覚えている。

142:空き缶 ◆KnlY:2013/04/03(水) 22:41 ID:bGQ

一体どれだけの期間放置していたというのだろう!気がつけばもう四月!リア充共がわいわいがやがや騒ぎだす季節!
こんな時は部屋にこもってネットが一番だね!…………どうも、空き缶です。
病葉の方書くのに夢中でこっち忘れてました。すみません。明日はこれの続き書くかなあ。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 「ちゃんと、しっかりと、な」
 「……ふ」
 「……? な、なんだ……」

思わず笑い声が漏れてしまう。
どうにも――光鳥らしくないではないか。
今まで見てきた光鳥らしくは。
普通の流れで考えたら、ここで光鳥に暴言をお腹いっぱいというまでに吐かれ、凹み、その挙句、蹴ったりだの叩いたりだのしてくるのに。
いや、逆に考えて、救済措置をしてくれるほどにまでは丸くなった……ということだろうか?
実質、口の悪さや暴力的な行動は変わっていないのだけど。
内面的なことで、だ。

 「一番最初に会ったときだったら、そんなこと絶対に言わなかっただろうなーって思ってさ」
 「……別にそこまで非道だったわけでもないだろうが」
 「そうか?」
 「そうだ。少しだけ落ち込んだぞ? もう少し女心を考えてみればどうだ」

光鳥にも、やっぱり女の子っぽい部分もあるのだな、としみじみ思う。

143:空き缶 ◆KnlY:2013/04/07(日) 22:40 ID:bGQ

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
アイマス映画楽しみだなあー、とまこりんのカバー曲を聴きながら思った私であった。かーねはなるのーねー♪
アニメもう一周してこようかな……。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
とともに、そこで俺は、あるひとつの可能性を導き出していた。
もしかして、光鳥が異性に触れない体質になってしまったのは、俺や羽森のような男からの言葉が原因ではなかろうか?
光鳥自信は、親から『生まれつき』と言われたと言っていたが、それは両親の嘘、という線もあるかもしれない。
なぜそのような嘘をつくのか? という理由に関しては、何もいえないのだけど。
少し前の話になる。
中学生の頃に、明るく活発だったはずの女子生徒が、いきなり不登校となってしまったことがあった。
今まで遅刻も欠席もしていなかったその女子生徒だが、徐々に欠席が増え、最終的に……という流れで。
あとから聞いた話だと(あくまで噂でしかないのだが)、どうやら同じ部活に入っている男子生徒から、
いくつかの『傷つく言葉』を吐かれたことが原因らしい。
『傷つく言葉』の詳細は定かではないが、その女子生徒の育った環境を「知った上」での言葉だったようだ。
これも噂でしかないのだが。
きっと計り知れないほど傷ついたことだろう……なんて。
知ったことを言っても相手に失礼か。
俺はしゃがみこんだ姿勢から立つ姿勢へとするために足を動かす。
終わりのチャイムが鳴ったのは、ちょうどその時だった。
すると先輩が突然ハッとした表情をし、

 「…………って、やっべ、次移動教室じゃねーか! じゃーな一年!」

そう言いながら慌てて走り去っていった。
……。
なんと表せばいいのかわからない、微妙な気持ち。
今日あったばっかりの人に対して何を思っているのだろう、俺は……。
…………。

 「……そういやあさ」
 「ん?」
 「先輩の名前聞くの忘れてたわ」
 「…………これから会う予定でもあるのか?」
 「予定があるかないかじゃあない。関係の幅を広げることこそが最重要だと思……」
 「…………」
 「…………」
 「ふう、さてと、教室に帰るか」
 「俺のこと放置ですかーっ?!」

144:ヒヨドリ:2013/04/08(月) 22:08 ID:QdU

まこりんかわいいよね。
へへへー。って言うとこが、かわいい。  一人称が僕ってところもねw
というか、自分的にかっこいいのだが・・・・・・

真翔だってかわいいよお!!

145:空き缶 ◆KnlY:2013/04/08(月) 23:26 ID:bGQ

>>ヒヨドリさん
同士よ(握手AA省略)。
「にひひ〜、やーりぃー!」響との対決で勝った時のまこりんの喜び方めっちゃ可愛い。
持ち歌とカバー曲どちらも格好いいwww

wwww

フリトかどっかに雑談用スレ建てようかなあ。
明日更新予定です。

146:ゆい:2013/04/09(火) 11:21 ID:swM

きたぜい

頑張れよ

応援してるぜい

147:空き缶 ◆KnlY:2013/04/10(水) 17:14 ID:bGQ

明日とか行ってたくせに更新してない私www……
フリト板に雑談・アドバイス・感想用のスレ立てました。以後下記のスレにて書き込みをよろしくお願いしまーす。
http://ha10.net/test/read.cgi/frt/1365510099/l50

148:空き缶 ◆KnlY:2013/05/30(木) 20:11 ID:bGQ

スレ一覧からなくなっていないことが奇跡のようだwww
書き込み規制解除されたので続きをちまちま更新していこうと思っています。引き続き感想等よろしくお願いします。

病葉の方もね(ボソッ

149:空き缶 ◆KnlY:2013/05/30(木) 21:44 ID:bGQ



午後から天気が悪くなるとのことだったが、教室から見る外の上には真っ赤な夕焼け空。
天気が悪くなる気配など、微塵も感じない。
この前帰り道で見た夕焼けも綺麗だったが、こちらも悪くないなと思いつつ、窓際列から適当な席を選び、座る。
――最近は、空を見上げる機会もなくなってきているとどこかで聞いたことがある。
俺から言わせてもらえれば、それは人生の役三割を損しているとも言えるほどの失態だと思う。
日に日に変化を遂げていく空は、まるで人の心のようで。
晴れの日雨の日、または曇りの日。人の感情を、直接的に変化させるかのような感覚に陥れる。
赤く染まる白亜の校舎。
B棟校舎付近の大木が、またいい味を出している。
椅子に座り、頬杖をつきながら景色に浸るのも、まあ悪くな――

 「おら何やってる織川。さっさと自分の荷物を机におけ。ニヒルに浸ってる場合じゃないぞ」
 「…………」

光鳥の声が聞こえた気がしたが、きっと空耳だな、うん。
今、この教室にいるのは俺だけなのだから。
声真似の技術なんてもの、身につけてないし……。
部活中の女子生徒の声と聞き間違えたのかもしれん。
南堂校だけでも女子生徒はたくさんいる。
もしかしたら光鳥似の声を持った生徒がいるかもしれないし。
そう結論付け、後ろを振り返ることなく、そのまま外に視線を向けよ――

 「ちっ。返事ぐらいしろ。それとも何か? 今更になって面倒になったーとか――」
 「あーあーあーあー!! たった今のお前の発言のせいでさっきまでの感情が台無しだよ!」
 「お前の感情など知るか! 私の言う通りにしろ!」

何回目か知れたものではない光鳥の暴言まがいの言葉が教室に響く。
人がいないので、今は軽いエコーつきだ。
空と言っても差し支えない今の教室で大声を出すと、こんなふうになるんだなあすげえなあとどうでもいい感動が湧き上がってきた。
俺の頭、今の所持金五十円でどうにかなりませんか?

 「……つーかさ」

150:汐:2013/06/01(土) 12:53 ID:kb.

すごおおおおい!!
何ともここまで続くとは…
神です!これからも頑張って下さい!

151:空き缶 ◆KnlY:2013/06/01(土) 13:53 ID:bGQ

>>150
宣伝スレの主さんですね!
完結までなんとか頑張りますね!ww
有難うございますー。

152:空き缶 ◆KnlY:2013/06/02(日) 21:05 ID:bGQ

>>149

 「お前相変わらず声張りすぎなんだよ、もう少し抑えろよ」

校舎内で部活のため残っている同級生たち、あるいは先輩にできるだけ気づかれたくはないので、
怒鳴られたにもかかわらず平静を保っている風に見せかけ注意を促す。

 「織川の分際で命令されるなど、私にとって……いや、光鳥家にとっての一生の恥だが……いいだろう。
  人間度の高い私が、その身の程知らずな命令を聞き入れてやろう」
 「俺を含めるクラスメートの大半を見下しているお前が言っていいことじゃあねえよ」

まあこれはあくまでも偏見だが。
それはさておき、俺がなぜ光鳥と二人でいるところを気づかれたくないかといえば、ただ単純に、何をしでかすかわからないからである。
誰が?
勿論――光鳥がだ。
「お二人、もしかしてそういう関係?」などと茶化されたりしたら、冗談だったとしても真面目だったとしても、
光鳥は流すことができずに、危害を加えてしまうことだってあるかもしれないじゃないか。
クラスメートにも容赦ない(はずの)光鳥だ。
万が一にでもそんなことになってしまったら、これからの高校生活に支障をきたしてしまうかもしれない。
こいつに対してはそのくらいの用心をしておかないといけないと、俺はこの数日感で学んだ。
学習能力のない織川真翔ではないのだ。

……にしても。

 「…………」

光鳥の方を気づかれないように見ながら俺は思う。

153:空き缶 ◆KnlY:2013/06/02(日) 21:06 ID:bGQ

>>153
誤字発見。
×数日感
○数日間

154:空き缶 ◆KnlY:2013/06/03(月) 21:33 ID:bGQ

光鳥と同じクラスになってから一ヶ月経ち、ようやく話したりするようになった俺には、小さくはあっても、
そろそろ光鳥の本当の姿や気持ちを知り始める権利があるように思えるのだが……。
なぜだろう、全くその兆候がないのは。
そもそも、本当の姿を見せる『隙』というものが、光鳥には存在しないように思える。
所詮は、同じクラスだったのに一ヶ月言葉も交わさなかった仲、また、数日間の濃くも薄くもない、中途半端な付き合いということか。
心の中で長くため息をついた俺は、そこで、

 「……なんだか」

と、光鳥が口を再度開いたのを認識した。

 「ん? どした?」
 「お前といると、不愉快なことを考えられている気持ちになるな」
 「…………」

俺の頭の中を覗いたりしたのだろうか。
あたっている気がしてならない。
人の考えていることを読むことのできる能力でもあるのかもしれなかった。
将来有望なのかどうなのか……。

 「まあ、それはこの際は置いておくとしよう。お前がそう言う奴だってことはもう十分承知しているからな」
 「分かってて言ってたのかよ?」
 「え? 違うのか?」
 「違うね、断じて違う。俺にはそんなことを考える余裕なんてないぜ。
  だって今この時も、光鳥のコンプレックスをどういうふうに克服しようか考えているんだからさ。
  全く、俺って本当クラスメート思いだよなあ」
 「やはり不愉快なことを考えていたのだな、本当最低な野郎だ」
 「あれ、今のもカウントされちゃうの……?」

155:空き缶 ◆KnlY:2013/08/11(日) 18:07 ID:bGQ

六月から書いてないワロタwwwwwもう見てくれてる人とかいないよなあ……
とりあえず完結させるはwww自己満足だけどwwww
新規さん来てねノシ

156:遊撃手(以前ヒヨドリ):2013/08/13(火) 23:32 ID:QdU

いやー・・・・
俺はずっと待ってたんですがね!!

 更新してくれ空き缶!!! 待ってるよー! 

(空き缶の小説は、面白すぎる)

157:空き缶 ◆KnlY:2013/08/18(日) 14:43 ID:bGQ

私の書き込みから一週間経過wwwwありえねえ、早すぎるぜ……
>>156
ヒヨドリちゃん!

158:空き缶 ◆KnlY:2013/08/18(日) 14:49 ID:bGQ

>>154

俺としては、自分の一生懸命さをアピールしたつもりだったんだけど……。
まんまと罠に嵌ってしまったというわけだ。
それに気づけない俺も俺だけど、まあ、そこらへんに関してはこれから見極めていくとしよう。

 「……さて」
 「お、やるか?」
 「そうだな。無駄話をしていても始まらないし……私に対する織川の突っ込みは寒いし」
 「もう何言われてもいいような気がしてきた」

椅子を引きずる乾いた音と共に光鳥が立ち上がったので、俺もそれに倣って立ち上がる。
夕焼けに照らされる教室に同級生の男女二人というのは、字面だけ見ればロマンチックはシーンであること間違いない。
でもなー。
ここにいる理由ってのが軽くドロいからなー。
やはり、俺に真っ当な理由でのこういうシチュエーションなんてものは一生こないのかもしれなかった。
友達も少ないし……。
横では、光鳥が気にかける風もなく(当然だ)、鞄から一枚のルーズリーフとボールペンを取り出していた。
何か書きものでもするのだろうか?

 「ではまず現状確認といこうか」
 「現状確認?」

思わず反復してしまう。

 「何を確認するんだ?」
 「私が、どのくらい男子に抵抗があるのかどうかということだ。今から右に書き出すものは自覚があること、左に書き出すものは自分でもわからないもの、というわけだ。」
 「あ、なんとなくわかってきた。つまり、あれだろ? いきなり危険度の高いものをやらなくて済むようにってことだろ?」
 「細かいことが抜けているが、まあ大雑把に言うとそんな感じだ」

159:空き缶 ◆KnlY:2013/08/24(土) 18:30 ID:bGQ

最終更新したの先週の日曜日かよ……。夏休み課題終わらせなくてはなので更新遅くなると思います(今も遅い)。
待っててね(´・ω・`)

160:空き缶 ◆KnlY:2013/09/05(木) 18:26 ID:bGQ

更に一週間たってるwwwwwファーwwwwwwww
ごめんなさいちゃんと更新します(´;ω;`)

161:ヒヨドリ:2013/09/08(日) 12:02 ID:QdU

頑張って!!

 常に更新のたびに見てるよ!!!


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