桃太郎が強すぎる件について

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1:匿名さん:2013/01/20(日) 02:16 ID:t7g

とある友人から許可を得たので書き始めます

2:匿名さん:2013/01/20(日) 03:22 ID:t7g


 どこまでも続くような野原の上を、旅人と一匹の犬が歩いてた。小柄な体躯をした旅人の容姿
は至ってシンプルそのものだが、馬鹿みたいに長い癖毛とその身に合わぬ長刀を腰に刺していた。
黒い瞳に黒い髪、典型的な東洋人の顔である。しかしそのあまりにも華奢な細身からして、女性
だと言われれば信じて疑わない程のものだった。そして一匹の犬。背中に旅人の物らしき荷物を
背負っており、せっせと運んでいる以外は普通のどこにでも居る雑種犬である。
「おいミコト〜次の町まで後どのくらいだ〜?」
 ただし喋る。項垂れて苦しげに息を整える犬に対して、なんて事の無い口調でミコトと呼ばれ
た旅人は答えを返す。
「あと2里と言ったところですから、頑張って下さい。ほら、もうあの丘越えたらすぐです」
「へ〜い」
 力無い返事と供に犬はまたミコトの後ろを歩き始めた。よく見ると、犬の背に乗っているのは
そのほとんどが肉である。野菜等は無く、栄養バランスなど微塵も考えていない食生活を醸し出
していた。
「どうでもいいが宿を取ろうぜ。もちろんペット兼用の」
「あれば、ですけどね。無かったらまた外で待っていて下さい。御飯持って来ますので」
 それにペット兼用の宿は大体高いのでと釘を刺される。そう言って何度一匹で野宿する羽目に
なったか知れない犬ではあったが、正直犬畜生にそんな権限は本来存在しないのだからしょうが
ない。それが本来あるべき姿だと悟っていた。
「まぁ、次飯忘れたら頭をかじり取るけどな」
「牙が砕けるから止めた方が良いですよ」


 大体いつもこんな会話である。そうこうしている内に丘の頂上に着くと、ミコトは顔色を変え
丘の向こうに気配を研ぎ澄ませ始めた。先程から見せていたあどけない様子で笑っていた少年と
はまったく違う。戦場で敵の存在に気づいた時の兵隊のそれだ。感づくように犬が言う。
「まさか……『また』居るのか?」
「ええ、どうやら今回は真っ最中のようですね。数は50程でしょうか。全員下っ端ですが」
 少年は荷物を降ろし、鉢巻を一枚取り出す。腰にある刀を据え直し、鉢巻を額に付けた。
「やるのか、それ?」
「まぁ、しきたりみたいなものですよ。この名前を継いでますから」
 靴紐を締め直し、軽く体操を終えると、ミコトは町の方に目を向けた。もうすでに町は破壊の
限りを尽くされており、家屋や協会、店等はガラクタの塊を化していた。人々の残響が耳に木霊
するように聞こえてくる。だが、それをまるで戦い前の恒例であるかのにように、ミコトは笑顔
を崩す事なく見据えていた。

3:匿名さん:2013/01/20(日) 19:21 ID:t7g


「10分程で終わりますかね。貴方はのんびり来て下さい。その間に宿を借りておきますので」
「店主が生きてたらな」
「ふふ、違いない」

 ミコトは刀を振るい、風を切り裂くようにして走り出した。2里はあった道筋を、まるで短
距離走のように疾走していく。瞬く間に町の中に入り、町で起こっている惨状を再確認した。

 焦げるような肉の臭気、数多の肉片が飛び散っている広場、真紅に染められた池、人々の
断末魔が一瞬の内に認識した出来事である。だがこれでミコトは確信した。
「間違いない……」
 刀を持つ手に力が入る。気分が高揚し、武者震いが始まる。もう幾度対峙したであろうその
存在に、どれだけ会おうとも飽きたらない。自分の存在を意味する為に、決して欠かせてはな
らない存在達はそこに居た。

「鬼だ」

 


「終わったみたいだな」
「ええ、まぁ」
 犬が町に到着している頃には、惨劇はすでに終了していた。ミコトは生き残っていた町人達
を集め宿屋の人間が居ないか探していたが、すでに殺されていたと犬に話していた。
「町自体の被害は軽症なようです。まだ来たばかりの連中だったようで、町全体までには行っ
っていなかったようですね」
 そう言っていたミコトの近くに、一人の少女が駆け寄ってくる。背丈はミコトと変わらない
程だった。しかし身形は泥や切り傷等でボロボロ、どこか怯えた様子だと犬には見えていた。
(こいつの戦い方を見たら当然か…)
「なにか?」
「あ…あの、宿をお探しのようでしたら、今日私の所の宿屋で泊まっていきませんか?」
「はぁ、店主がそれで良いのでしたら構いませんが」
「お父さんは…化物に」
 そこでミコトは少女の頭に手を置き、しばし見定めるように顔を見ると、
「貴方は家事が出来ますか?」

4:匿名さん:2013/01/21(月) 20:55 ID:t7g

 
少女はその言葉に力強く首を振り答える。
「は、はい!炊事洗濯お掃除会計まで全て出来ます!!」
「ペットは泊まれますか?」
「恩人様の為ならペットも可です!!」
 オーっと周りの町人達が少女を見つめる。ミコトは満足した笑顔を犬に見せ、OKの
サインを示した。今日は久々のベットだと犬は心の中で歓喜する。何年振りの布団だろ
うかと涙ぐんでいた。

 それからミコト達は少女の宿に招かれ、町人達からの差し入れにより豪勢な食事を取
る事になる。熱い風呂で汗を流し、フカフカのベットで休んでいた。
「ふぃ〜お湯に浸かるのも久方振りだ。スッキリしたぜ。」
「貴方は犬の癖にお風呂大好きでしたもんね」
 犬はこの部屋に付くまでミコト以外の人間の前では基本的に喋らない。それは犬自身
のコンプレックスではないが、今までの環境下で考えれば『化物』の一種に見られるか
らだろう。なればこそ日常的な旅で相棒とこうして話を交わせるだけでも幸せに思えて
いる。
「そういや、他の鬼の気配は感じないのか?」
「ええ、今のところは魔物も鬼も町の付近には居ないようです。ただ、塀が破壊されて
いるので、また明日奴等は来るでしょうね。その前に殺しに行きますが」
「なんにせよ、今日はぐっすり寝れる訳だ」
 犬はベットに転がり、意気揚々と布団の感触を味わっていた。すると、ミコトの達の
部屋のドアにノックが掛かる。
「すいません、少しよろしいでしょうか?」
「ええ、どうぞ」
 犬は隠れるようにしてベット下に潜り込み息を潜めた。ドアが開くと、宿屋の少女が
立っている。困り果てている顔をしているのだが、後ろの方を見ると、他にも男が数人、
年長らしき老人が一人居る。
「町長様が恩人様にお話があると言うのですが、よろしいでしょうか?」
「……まぁ」
 ここらへんですでにミコトは勘付いていたが、あえて話は聞く事にする。謝礼金が貰
えれば旅が楽になるとも考えていたし、一期一会の出会いは基本的に大事するのは旅人
の常だ。もちろんそこに例外は幾度と無くあるが。

「で、お話とは?」
 

5:匿名さん:2013/01/22(火) 21:57 ID:t7g


「まずは今日の事について。旅人殿のお陰で町が救われた事感謝致します。それについて
の謝礼という訳ではありませぬが、お気持ちを用意したので、次の旅に役立てて下さい」
「それはありがたい」
「もう一つの用件ですが……」
 そこで老人が少しだけ口篭る。頼んで良いかどうかと思案しているような顔だったが、
周りの男達と目配せをしてまた口を開いた。
「今日来た化物共が言っていたのですが、どうにもこの地域を縄張りにしているらしく、
今後何時この町にまた化物共が来るが分かりません。そこで―」
「―私に退治屋をやれと?」
 ミコトの言葉に老人は頷く。それもそうだろう、化物50匹を俊殺するような人間なのだ。
戦力としては十分過ぎる。謝礼は弾むと町長は念押しをするが、しかしミコトの答えは、
「嫌です。私とて旅人、無闇に命を投げ込むような事はしたくはありません」
「そう…ですか」


「なら仕方が無い」
 周りに居た男達が一斉にミコトを囲む。少女がとっさの事に困惑し町長に尋ねるが、
男達に遮られてしまう。
「町長様!一体何を!?」「下がっていなさい」老人が言葉を続ける。

「化物共はこうも言っていました。『我等同胞を殺す愚か者が居るなら差し出せ。それで
この町は救ってやる』と。貴方はこの街を救ってくれた。しかし奴等は復讐しにやって来
というのに貴方は行ってしまう。これでは焼け石に水です。ならばと私は考えた」

 最初からこうした癖にとミコトは微笑するが、老人が所謂悪顔を曝け出して言う。
「悪いが、貴方を化物共に渡す。それでこの町が助かるというなら、私は余所者を居なか
った事実に置き換える。残念ですが諦めて下さい」
 男達はジリジリとミコトに近付く。隣のベットに置いてあった刀はとっさの犬の機転で
ベットの中に隠してある。ミコトはやれやれとした手振りをすると、
「抵抗はしません。ただし、今日が此処で泊まらせて下さい」
「旅人様……」
 少女が泣きそうな目でミコトを見るが、ミコトはなんてことなく頭を撫で諭すように言
う。
「間違った判断とは言えませんからね。理に叶っている。ただ、貴方の作った御飯が美味
しかった。最後まで客としてよろしくお願いしますよ」
「・・・・はい」

6:匿名さん:2013/01/23(水) 23:55 ID:t7g


 結局ミコト達は部屋に閉じ込められる形となり、外には見張りが付いた。窓から外
を見ると、これまた大柄な男達が宿を囲っている。しかしどの男も鎧どころか武器さ
え持っていないところを確認すると、ミコトは「クスッ」と笑い犬に問いかける。
「彼等が滑稽だとは思いませんか?」
「また偉く見下した言い方だが、犬の俺にはよう分からん。体裁としては間違った選
択とは思わないが?端から見れば外道そのものだが」
「確かに町を守る為の最善策というなら私は格好の餌だと言えます。その理屈は通る
でしょうね。この町の大多数の人間が余所者の私を受け渡した所で心が痛む筈が無い
のですから。だからこそ、滑稽だとは思いませんか?」
 
 もう一度同じ台詞でミコトは犬に問いかけるが、犬はそれでも首を傾げる。
「言いたい事はなんとなく分かるが、つまりどういう事なんだ?人間が愚かだと言い
たいのか?」
「人だけではありませんよ。鬼も魔物も、結局行き着く終着点が同じです。最後には
自らの命、死への拒絶に行き止まるんです。そう思うと、生物の本能とは魂の形成と
は別だと私は思うんですよ。そういう意味で人だけは愚か者であると言えます」
「ややこしいな」
「ええ、そうでしょうね。まぁビックリ犬畜生の貴方には関係の無いお話ですが」
「噛み千切るぞ」
「前歯を全て持ってかれたいならどうぞ。そういえば私の刀はベットの下ですか?」
 犬は剥き出しの牙を仕舞い、ベットに首を振る。
「刀はベットの布団で下敷きにしてある。調べに来ない限りはまぁ大丈夫だろう。
明日それを持っては行けないだろうが、どうするんだ」
「最初から持っていく気はありませんよ。見つかった時点で町の人間に取られるで
しょうから。刀はこのまま此処に置いておきます」
 丸腰で鬼に差し出されるのは分かりきっていた事だったので、この判断は当然と
言えば当然だった。当日は両手両足を縛られ奴等に渡されるのは明らかだが、それ
にしてもミコトは引っ掛かっていた。
「私達がこの大陸に来てからもうどれくらいですかね?」
「ん?あ〜大体3ヶ月ぐらいだな」
(だとすると妙だ。鬼狩りの指名手配なんて奴等の情報網で可能なのか?伝達方法
が原始人並みだと言うのに。どこかの国が鬼と真っ向から戦争をしているのか。そ
れとも自分のように鬼を専門として殺している者が居るのか。もし後者なら……)

7:si ◆kGSk:2013/02/08(金) 02:09 ID:yMA


「何かあるのか?」
(しかしそうなると、それは人間ではないはずだ。亜人か?いや―
「おい!!」
(此処最近の動きでは強い鬼とは遭遇しいないが、どこかに借り出されているのか?
それとも―
「おいったら!!」「なんですか?考えを纏めているのです・・・が」
 いつのまにか犬の隣に少女が座っていた。先程の宿屋の娘とは違う少女だ。
「どなたですか?」
「・・・・・・」
 少女は何も答えず、ただミコトをじっと見つめている。一見すればただの少女だが、
身形を見る限り少女が町人で無い事がミコトには分かった。銀髪に金色の瞳。旅人な
のかマントを羽織り、カウボーイハットを付けていた。因みに此処は西部劇のある大
陸ではない。
「さっき俺達と同じように放り込まれたんだが。一言俺に『久しぶり』と声を掛けた
きりお前を見て固まっちまったんだよ」
「知り合いなんですか?」
「こんな変な奴は知らん」
 とにかく犬の事を知っているのなら、多少なりとも警戒をするべきだ。ミコトは置
いてあった刀を手にとり、一瞬で引き抜くと少女の首筋に当てる。
「何者なのか正直に10秒以内でどうぞ。私はミコトと申します」
「自己紹介にしては脅迫的過ぎだろお前・・・」

 身の危険を感じたのか、それとも質問に呼応しただけなのか、少女はゆっくりと口
を開け答えた。
「アリア……ガンマン」
 最低限それだけ言い残すと、ストッとベットに顔を埋め、寝息を立て始めてしまう。
ミコトは拍子抜けしたように刀を仕舞い、何事も無かったかのようにまた思案し始め
た。犬はすでにシュールが光景に嫌気が差し、ベットに潜り込んでしまう。


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