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1:ささ:2013/02/06(水) 16:18 ID:7e.


えー前に立てたスレの、小説を書く用でございます。
新メンバーは募集しておりません。すみません。感想などはお待ちしてますが!もちろん。

もう一度順番を確認すると(さん省略)、白粉→ヒヨドリ→RIMU→ささ→りっこ
です。

では、白粉sよろしくですー始めちゃってくださ−い
ストーリーも名前もトップバッター決めちゃって!!!

2:白粉 ◆5g2E:2013/02/06(水) 17:49 ID:T6Y


 ――――例えるに、静謐が張り詰めていた。

 草木も眠る丑三つ時。
 具体的には午前二時三十分。
 昼間から夕方にかけては行き交う多くの人々で賑わうこの交差点も、
 さすがに終電から一時間も経過すれば人の気配すらしない。
 役目を終えた信号機はそれを主張するように点滅を繰り返す。
 今日は満月との予報だったが、
 曇り気味の夜空を見上げても姿は確認できなかった。
 ぽつぽつと雨が降ってくる。
 施錠されているはずのビルの屋上で、
 少年は街を見下ろし笑っていた。

「人の命は平等だ。って言葉を否定する奴は、たいてい馬鹿ばっかりだよな」

 そこには少年一人しかいない。
 鳥も、虫も、彼の他に生き物なんて見当たらない。
 それでも少年は、
 まるで隣に誰かがいるかのように語り続ける。

「人の命の価値は間違いなく平等だ。
ただ勘違いしちゃいけないのは、あくまでそれは命単品での価値ってことさ。
努力してきた命には努力の価値がプラスされるし、成功した命には成功の価値がプラスされる。
そのくせ何の努力もせずに何も成功させずに『命の価値は平等じゃない』なんて悲劇ぶって嘆く奴は……なんていうか、死ねばいいのにって思うよ」

 妖艶につり上がった唇からこぼれる鈴を転がすような美しい声。
 その十代中頃の少年の美貌は刺すように冷たい。
 綺麗に微笑んでいてもどこか寒々しく、
 眼など涼しげを通り越して凍てついている。
 闇に住まうコウモリのような漆黒のゴシックファッションに、
 そのまま宝石店に売り出せそうな純銀の髪。
 深海の色をした瞳。
 肌の白さは神秘的ですらある。
 堕天使が描き出したような、
 怖気が走るほどに美しく恐ろしい光景。

 少年は笑う。
 嗤う。
 哂う。

「だからこそだ。本当にお前は不幸だな、マリア。この広い世界で俺に会っちまうなんて」

 少年の白い指先で浮かび上がる炎の玉。
 その炎の中に、ありふれた制服をまとう少女の姿がある。

「ひょっとしたら、お前の命の価値だけは他と平等じゃないのかもしれねえな」

 憐れむように、楽しむように呟いて。
 次の瞬間、黒衣の少年はそこから姿を消した。

3:ヒヨドリ:2013/02/06(水) 22:23 ID:QdU


「どこだ?ここは・・・・・。」

マリアという名の少女は、ビルの屋上で目を覚ます。
少女は起き上がった。辺りは少しずつ明るくなりつつあった。

「私は、誰ー・・・・?」

少女の長くてさらりとした頭髪は、風によって不気味に動く。
少女はだまってビルの屋上のフェンスから、下を見下ろした。

突然、どこからともなく、少年の声がする。
「マリア、やっと目覚めたか。お前は今日から、その普通ではない力を使い、
俺の想像する世の中を作ってみせるんだ。いいな?」

美しい声だがとても聞きづらい声だった。

「私は・・・・誰なんですか・・・・?」

返答は無い。

少女は目を細める。
遠くにある工場をじっと見つめた。
その途端、工場が爆発する。そこからは、煙が上がっていた。

「そういう事。」
少女は怪しげな笑みを浮かべ、屋上の扉を開け、階段を下りていく。
扉はギィィという不快音を響かせた。

まるで、何かの始まりを告げる様に。

4:& ◆stjM:2013/02/07(木) 09:40 ID:9bE

白粉ー!
俺だ、結婚してくれー!(違)

とまあ冗談半分なんでスルーしてくれ。
リレー小説か・・・お前が行き当たりばったりで書くのも珍しいな。
でもお前なら凄い作品が書けるって思うからがんばれ!

他の人たちもがんばってくださいねー!

5:ささ:2013/02/07(木) 15:27 ID:7e.

>>4コメントありがとです!
はい、白粉様はいつでも素晴らしいですよ。ええ。
私は尊敬しています。
続くといいなー

6:RIMU:2013/02/07(木) 16:33 ID:cdk

少年の企みは・・・
革命かな。
私に、どんな力が使えるって言うのか
な・・・
私の名前はマリア。
・・・らしい。

私は記憶が無い。
ほんの数分前の事しか。
冷たい風が頬にあたり、心地よい涼し
さだ。

「これを見てみろ」


少年が指差す所に目を向けると。
そこには、猫と鼠。
本来なら猫から逃げる筈の鼠が・・・

猫を攻撃している。
正直、初めて見た。
ような気がした。

「立場なんて関係ない。力が全て。ま
 ぁ・・・」

どうしたんだろ?
トントン
少年は私の頭をつついて言う。

「頭も必要・・・だがな。」

さっきから言ってる意味がわからない。
それに、第一それがなんなんだ?
そもそも、私達は仲間なのか?
ただの他人か?

何も理解ができない。
わからないのが、悔しいと言うか・・・

「来いよ」

何処に?
何処に行くって言うの?

7:ささ:2013/02/07(木) 17:19 ID:7e.


混乱していたんだ、私は。
確かに自分が誰なのかも分からず、私を呼ぶこの少年が誰かも分からない。

少年は、必要以上に綺麗だった。
少年がいる辺りの空気だけ、明るく見えるような気さえする。
人間離れしていると言っても過言ではない。
神々しいとでも、いうのだろうか。
そして私を呼ぶその声も、必要以上に綺麗だった。

だからといって、私がこの少年に惚れたとか、そういう訳じゃない。ただ、息をのむような美しさだった。それだけだ。
私は、その辺の理性を欠かなかった。

でも、私は混乱していたのだ。
そうじゃなかったら、この正体不明の少年に、何処へ連れて行かれるかも分からないまま、ついて行ったりはしなかったのだから。

そこから、また私の記憶は消えていった。



軽い振動で、私は目覚めた。
辺りを見渡し、たった今地面におろされたことを理解する。
「マリア」
名を呼ばれて振り向くと、私の瞳に映る美少年。この人が私を運んだのだということも理解した。
しかし。
どうやって運んだのか。
それが分からない。
なぜかって?
叫びそうになって、慌てて止めた。
そして目の前にいる少年とこの風景が、妙に、似合っていることが分かる。

ここは、登ることは人間には、いや、どんなに優れた機械でも不可能であろう、恐ろしく高い崖の頂上だった。

8:りっこ ◆5SxA:2013/02/07(木) 18:41 ID:27Y

「貴方は……一体何者なの?」
今にも消えそうな声で尋ねた私を、ただ美しく透き通った瞳で見つめる少年。
その少年の瞳は、言い表せないほどに美しく透き通り、それを見つめると思わず吸い込まれそうになる。
この少年、やっぱり只者じゃないんだ……

改めて悟った私は再び尋ねる。
「貴方は何者?」
しかし少年は、ただ私を見つめるだけで何もしようともしない。
そう。ただただ私を見つめているだけ――
そして、時は刻々と過ぎていった。

「……お前は俺が怖いか?」
日が沈みかけた頃、少年は私に尋ねた。
「え?」
いきなりの質問に戸惑う私。

「だから、お前は俺が……」
「ううん」

戸惑う私に呆れたかのように質問を繰り返す少年の言葉を遮り、返答した。
少年は、その答えに驚いた様にその大きな瞳をさらに広げ、私を見つめた。

「怖くないのか……?」
そして少年は再び尋ねる。
まるで今起こってる事が信じられないというように。
私は天を仰ぎながら再び返答した。

「うん。怖くない」
と。

少年は俯き、溜息をついた。
そして呟いた。

「やっぱりお前は特別なんだな」

その言葉は、何処か寂しそうだったのは気のせいだろうか。

そして、それから二人は言葉を交わすことはなかった。
ただ、二人で高い崖の上で過す。
それだけだった。

9:みん:2013/02/07(木) 18:49 ID:KXo

ウワワワ(((

皆さんすごい小説上手ですね!←

10:白粉 ◆5g2E:2013/02/07(木) 19:56 ID:T6Y


 丸一日を見知らぬ絶壁の上で過ごし、
 制服一枚の体が体温の低下で不調を訴え始める。
 ガタガタと体を震わせるマリアに少年は仕方なさそうに左手を上げた。

「《緋宮――ヒノミヤ》、燃やせ」

 パチンッ。
 軽快な調子で指先を鳴らせば、
 マリアの周囲を炎の垣が囲う。
 頬を撫でる熱風に身の危険を感じかけたが、
 しかし少年から殺気を感じることはない。
 ただ自分を温めてくれたのだと理解した。
 ありがとう、と小さく礼を言えば、
 数多の宝石がくすんで見えるほど圧倒的な輝きを放つ瞳が満足げに細められる。

「火炎の精霊《緋宮》。東洋の島国で弱みにつけ込まれて契約しちまった。お前のはなんて名前だ?」
「精霊……?」

 首をかしげるマリアに、
 少年は心底めんどうだとでも言いたげな風に顔を歪める。
 歪めても美しいことに変わりはなかった。

「マジかよ。うっわ、よりにもよって代償が“記憶”とか……俺の“醜さ”だって相当に厄介な代償だったけどよお」

 イライラした様子で頭を抱えてうずくまる少年。
 そんなことを言われても、
 マリアにはなんの話だかさっぱりわからなかった。
 ただ、さっきの爆発。
 それが自分の能力によって引き起こされたもので、
 その能力は精霊とやらとの契約によって得たもの、
 そして代償として捧げたのが自分の記憶だということだけは理解できた。

 記憶と引換にしてでも力を手に入れて叶えたい夢。
 そんなものが記憶を失う前の自分にあったというのだろうか。
 目の前にいるこの麗しき少年は、
 自らの代償を“醜さ”だとこぼした。
 なるほど。
 どうりでこんなにも素晴らしく整っているのだろう。
 歩くたびに天使の羽音が聞こえてきそうなほどの規格外の美貌。
 これが無理やり体中から醜さを奪われた結果というなら納得だ。

「……記憶喪失になるか物凄く綺麗になるかの二択なら、私だって後半を選びたかったものね」
「知るか。記憶を失う前の自分に理由を聞け。……ああもう、記憶喪失ってことは契約した精霊の名前も覚えてねーんだよな? いきなり計画がぶち壊しじゃねーか」

11:ヒヨドリ:2013/02/08(金) 16:54 ID:QdU


出来る事なら、記憶を失う前の自分に聞いてみたい。

「ひょっとしたら、お前の命の価値だけは他と平等じゃないのかもしれねえな」という、
少年の声を思い出す。
あの言葉はどんな意味なのか。
記憶を失った以前の私。以前からそんなに凄い“何か”を持っていたのか。
以前の私は、自分であって、自分ではない。

この、特別な力を手に入れた私。
この特別な力で、何をしろと言うの?

「マリア?」
透き通った声がいつまでも私の頭の中で繰り返されている。
私は唇を強く噛んだ。口の中に血の味が広がる。
「何?」

少年は、そのガラス玉のような綺麗な瞳で不思議そうに私を見つめていた。
また、色々と聞いたら、めんどくさそうな顔をされる。けど、1つだけ、

「あなたの言う、計画という物は何なの?」
「・・・・・・簡単に言うと、この世を俺の思い通りにする事。」
一瞬、信じられない言葉を発したかと思ったが、よくよく考えてみれば、
この少年は決して悪い人では無い。

何故だろう。
本能的に感じてしまった。背中に寒気を感じた。本能的にー・・・・?
本能が私に何かを伝えたいんだ。気づかせたいんだ。

この、制服がヒントか。
制服って事は、学校に行く時か、帰るとき。
何処の中学か、高校かも分からない。

なら、この不思議な力を使って見つけられないか。
私は、心の中で呟く。
「私は誰?どこに住んでいて、通っている学校はどこー・・・?」

12:RIMU:2013/02/08(金) 21:37 ID:cdk

「知らね。」

心が見えたのか、彼はこう言った。
えー・・・
じゃあ手掛かりがないよ・・・
一体、どうすれば・・・

「同じ学校じゃないよね?」

私は尋ねる。
勿論、違うと思うけど。

「・・・」

返答なし。
違うみたい。

「ここら辺に住んでるの?」

これも無言か・・・?

「今は・・・ここだ」

少年は頭をぐしゃぐしゃして言った。
今の言い方だと・・・
どうやら渡り歩いてるみたい。
悪魔で推測、だけどね。

会話が中々続かない・・・
微妙にシーンとした。

「何にも覚えてねえか・・・」

沈黙を破ったのは彼だった。
覚えていないのは仕方ない。
自然と頭から抜けていっているのに。
能力を使わなければいい話なんだけど。
そんな訳にはいかない。
体が、拒否してる気がするから・・・

13:ささ:2013/02/09(土) 11:04 ID:7e.



記憶を失う前の私は馬鹿だった。

精霊に渡した記憶の中には、“能力を手に入れる目的”も含まれていたのだろう。

しかし、それもなくしてしまった。

その代わり、能力を手に入れた。

目的が分からなければ意味はない。
ただ、その能力を使う度に戸惑い、記憶を取り戻そうと苦しむだけだ。

「何も覚えてねえか・・・」
あなたはそう言ったよね。
何かを知っているの?
そもそも私の能力って何?
ただ物を燃やすだけ?

いくつもの疑問が沸き上がり、少年の表情を見て消えていく。というより、押し殺す。

本当に、私は愚かだった。
何をしたかったのだろうか。

自分の生きてきた証を捨ててまで、私は何をしたかったのだろうか?
分からない。

悔しい。悔しくて仕方がない。今まで動揺で余裕がなかったが、今、激しい怒りがこみ上げてきた。

記憶に比べたら……記憶に比べたら能力なんて……!

少年の視線を感じる。
しかし私は少年を見ない。見れなかった。

崖の端にある大木を睨んだ。

木は爆音と共に吹き飛んだ。
ここまで熱風がくる。

少年に目をやる。
少年は、今は灰と化した木の残骸と、怒りで顔を歪ませる私を交互に、あの深海の瞳で見つめていた。


「……マリア?」
そして名を呼ばれても、あの透き通った声で呼ばれても、振り向くことは出来なかった。


皮肉なまでに綺麗で透明な液体が一粒だけ、マリアの頬を伝い、煙の中に落ちていった。

14:りっこ ◆5SxA:2013/02/09(土) 18:28 ID:Ahw

「マリア……?」
異変に気付いた少年が再び私に声をかける。
その透き通った声が、何だか余計に悲しくさせる。

ダメ。こんな事で泣いてたら……

頭ではそう思っているものの、涙が次々と頬を伝い煙の中へ落ちていく。
ただひたすら流れて、煙の中へ落ちて―――
その様子は皮肉にも、何処か美しく感じた。

日はすっかり沈み、代わりに月が出てきた頃。
「やっと泣き止んだか……」
少年の透き通る様な声が何もない崖の上で響いた。
しかし、今の私にはその透き通るような声もただの雑音にしか聞こえない。
私は、ふっと溜息を付くと高い崖の上で寝転んだ。
そこから見る景色はまさに絶景で此処が高い崖の上という事も、私が記憶喪失になったという事も全て忘れさせてくれるようだった。
私は何だか安心し、泣き疲れたのか一瞬にして眠りについた。

15:白粉 ◆5g2E:2013/02/09(土) 20:13 ID:T6Y


 同時刻。
 しだれ桜が乱れ咲き月に照らされ妖艶な桃色を帯びる中、
 一人の女が口を開いた。

「のう、在原や。わらわの子は本当にこの町におるのかえ?」

 男を骨抜きにする遊女のような笑み。
 庶民ならば結婚式でしか着られぬよう絢爛な色打掛を纏い、
 使い捨てる予定なのか裾は地面に引きずって汚れを気にする様子はない。
 平安貴族を思わせる伸びきった黒髪からは高い香の匂いが漂う。
 紅を引いた口元を扇で隠して、
 箸より重いものなど持ったことがなさそうな指先で隣に跪く男の顎を撫でる。

「はい、雛(ひな)様。《露鶴――ツユヅル》が確かにこの町だと申しております」

 在原(ありわら)と呼ばれたスーツ姿の男が答える。
 その頭上に羽ばたいているのは清水のように透き通った巨大な鶴だ。
 この世ならざる荘厳な姿。
 鶴は宝のありかでも教えるように同じ場所だけを見つめながら、
 しきりに鳴き声を上げている。
 ふむ、と雛が扇を閉じた。

「そうか。何を思ったか《緋宮》と契約して家を飛び出すなど――まったく困ったやや子ぞえ」
「……申し訳ございません。まさかあの人間嫌いの《緋宮》が、坊ちゃんと契約するとは思わず……」
「言い訳は聞かぬ」

 男の頬に鋭い爪を食い込ませて、
 雛は吐き捨てた。
 虫けらでも見るような眼差しで。

「一刻も早く愛しきあの子をわらわの元に連れ戻せ。よいな」
「御意に」

 静かに頷き、
 在原は露鶴に飛び乗った。
 水で構成されたその生き物に乗れるのは契約者である在原だけだ。
 遠ざかっていく黒い背中を見つめながら、
 雛と呼ばれたその女はうっそりと笑う。

「逃しはせぬぞ、わらわの子よ。どこへ行こうとお雛の元へと連れ戻そうぞ」

 桜吹雪舞う宵闇の中、
 女の声だけが不気味に響いた。


      ◇      ◆      ◇      ◆


「お、起きたか」

 目が覚めると、見たら腰を抜かすような麗人が目の前にいた。
 純銀の髪、深い影を宿す碧眼、
 全てが完璧なパーツによって造りあげられた造形の美しすぎる見た目。
 そして高級ブランドの匂いがするシャツ。
 そんな少年が自分を覗き込んでいるなんて、
 ああ、これはきっと夢なんだと勝手に納得し、
 マリアは再び布団をかぶり直した。

「ちょ、おい! 二度寝しようとしてんじゃねーぞ!
お前が寝言で寒い寒いって言うから近くの旅館まで連れてきてやったのに!」
「んー……あなたみたいな美人は知り合いにいません」
「ほお、いい度胸だなマリア。その長い髪を《緋宮》のエサにしてやろうか」
「嘘です冗談です起きます!」

 慌てて意識を覚醒させるマリアに、
 少年はふん、とそっぽを向いた。

「次にふざけたこと言ったら、この旅館の代金お前が払えよな」

16:ヒヨドリ:2013/02/10(日) 17:20 ID:QdU


「はぃ!分かりましたぁ。」
って、え?私今旅館に居るの?
部屋を見回してみる。

足元には障子、すぐ横には押し入れ、壁、ドア、と 小さくはない部屋だ。
書院造風・・・・・って言うんだっけ、こういう部屋。

私は立ち上がり、布団を畳む。
なんとなくモサモサしている自分の髪が恥ずかしい。
布団を畳み、押し入れに押し込んだ私は洗面所に行き、顔を洗う。

冷たい。だけど気持ちいい。
水を手に付け、髪を撫でる。
モサモサした私の髪の毛は全然まとまってくれない。

私は髪の毛を両手で挟み、毛先まで下ろす。
髪の毛の手入れはきちんとしていたのか、水で濡らした髪の毛はとてもしっとりしている。
「やっと、整ってくれた。」
少し笑みを浮かべた私を、少年は鏡を反射し、見ていたようだ。

「なぁ、マリア。なんで髪の整え方知ってんのか?」
「・・・・・えっ?」
美しい声で鋭い事を聞かれた気がした。

・・・・・・あ。そういえば・・・。

私は記憶を持って行かれた。なのに、どうして言葉が喋れる?どうして、笑うという動作を知っていて、
髪の整え方を知っているの?

そういえば、なんで少年の着ているシャツを高級ブランドの匂いがするって思ったんだろう。
思い出すと不思議に思うことが多い。

記憶というものはそもそも何だろう。
言葉を知っているのも、どんなものが美しくて、どんなものが美しくないかの判断が出来るのは
 私が以前の記憶を少しだけ覚えているからなんじゃー・・・。

「確かに。どうして私、髪の毛の整え方知ってたのかな。」

笑うという感情や、悔しい感情。そして、激しい怒りー・・・・。
少年は私のほうを少し見て、考えるような顔をした。

「マリアが持って行かれたのは、“記憶”じゃなくで、“思い出”なんじゃないのかー・・・・・?」

17:RIMU:2013/02/11(月) 08:47 ID:cdk

思い出・・・か。

確かに、誰かと過ごした。
とか、いつ友達と海に行ったとかは覚
えてないかもしれない。

「そう・・・かも」

私は髪を結びながら呟いた。
少し動揺したせいか、上手く結べない。
しかし、少年は何故私について真剣に
考えてくれているのだろうか。
私を、ただの手段ではなく仲間と思っ
てくれているのかな。

「ふふっ」

そう思うと、つい笑っていた。
少年は気づいたみたい。

「何笑ってんだよ、人が真剣に考えて
 んのに」

だって。
そこまで真剣に考えてくれるのが、嬉
しいって言うか、ほっこりすると言う
か・・・

悪い気がしない。
私が、不安にならなくなったのは少年
のおかげだもん。

「ありがとう・・・」

なんだよって言いながら少年は笑った。
あれ?

少年って、そもそも何て言う名前?

18:ささ:2013/02/11(月) 21:32 ID:7e.



笑顔を見て、名前を聞いていないことを思い出したのだった。


名前を、聞きたかった。
別に名指しで呼ぶ機会があって困ったわけじゃない。

そうじゃなくて――
私の“思い出”に、少年を上書き保存したかった。

少年が「少年」としてじゃなくて、名前で保存できるように。

――もう、“思い出”を渡しはしない。絶対に。

心に決めて、決めてできることではないかもしれないが心に決めて、私は少し、頬を緩めた。



「ねえ、あなたの名前は何……?」

障子の隙間から入ってきた風が、結べずほどいた私の髪を揺らす。

少年は、旅館の畳を睨んでいた。
恋人が他の男と戯れるのを見たときのような表情で。


こんなときでも思ってしまう。
――綺麗だ……

息をするのも許されないような沈黙。


咄嗟に聞いてはいけないと思い至る。

慌てて口を開きかけた私を制すように、少年も口を開いた。

「それはお前に、マリアに必要な情報か?」
私は視線を畳に落とす。


「いずれ、分かるさ」
そう、呟いた。

19:りっこ ◆5SxA:2013/02/13(水) 17:29 ID:fO2

いずれ、分かる……か。
それが少年の今の答え。要するに教えたくないと。
その時、胸がきゅっと苦しくなった。

「一泊で8000円ですね。ご宿泊ありがとうございました。」
朝から騒がしいロビーに、機械の様にすらすらと話す女性の声が響いた。
私は軽く「どうも」と挨拶をすると、女性もすかさず挨拶をする。
一方、少年はその声が聞こえなかったかのようにくるりと方向を変えて歩み出していた。
「ちょっ。待ってよ」
私は、さっさと進んでいってしまう少年を走って追いかけた。
少年は「遅いんだよ」と無表情で言うだけだった。
無愛想だが、やはり美しい少年だった。
私が少年のあまりの美しさに見惚れていると、後ろから女性の甲高い声が聞こえた。

「あの男の子。めっちゃカッコイイ子だったね」
「ああ。なんか全部がキレイって言うか……」

私は立ち止まり振り返ると、ロビーの女性陣が固まって話していた。
そしてちらりと私を見ると「素敵な彼氏さんね」と、皮肉交じりに言った。
私は「彼氏」と言う言葉で頬を赤らめると、軽く会釈してまた少年を追いかけた。

そして、走っている最中も「彼氏」と言う言葉が頬をもっと赤くさせた。

20:白粉 ◆5g2E:2013/02/13(水) 18:17 ID:T6Y


 この言葉で顔を赤らめるということは、
 思い出を失う前の自分はきっと恋に恋する普通の少女だったに違いない。
 だというのに何でこうなってしまったのか。
 記憶喪失になって見知らぬ場所にいたかと思えば突如として現れた謎の美少年。
 さらに精霊なんて登場したからには、
 流れでいけば次は敵キャラの出番かもしれない。

「……そういえば、まだあの子が敵か味方かもわからないんだよなあ」

 はあ、と小さく溜息。
 こちらに気遣う様子もなく早足な少年の隣にやっと並べば、
 いつの間にか両手一杯に荷物を抱えていた。
 紙袋にはさっきまでいた旅館のマーク。

「何それ」
「タダで貰った。気まぐれで入った売店の高い品物ほとんど」
「…………」
「こんな年のガキ一人だったからサービスしてくれたんだろうな」

 真顔で呟く少年の横顔を見て、
 二度目の溜息。

 突然ビルから降ってくるなんて登場の仕方。
 氷壁のように揺るぎなく冷たい華麗さ。
 目的の分からぬ発言の数々。
 炎の契約と精霊しているという謎のプロフィール。
 そして何より名前も国籍も不明。

 少年のそんな面しか知らなかったから今まで勘違いしていたが。
 こいつ、鈍感野郎だ。

 そういえばここまで自分勝手な言動は数多くあったが、
 自分の魅力を自覚しているような発言は一つも無かった。
 嫌な予感がしてマリアは冷や汗を流す。

「ねえ。きみ、醜さが代償だったんだよね?」
「ああ。《緋宮》にそう言われたからな」
「じゃあ自分の容姿ってどのくらいのレベルだと思う?」
「醜くないイコール普通だろ」

 高貴なアンティークドールを思わせる貴族的な美貌は今は不機嫌そうに歪んでいて。
 その表情は語っている。
 「なに言ってんだコイツ」、と。
 謎の絶望感に襲われてマリアは思わず天を仰いだ。
 これから先、
 こんな鈍感で何を考えているか分からない上にやたらと綺麗な男と一緒に世界をどうこうする運命に自分はあるのか、と。

 これは自分がしっかりしなければならない。
 妙な決意と共に静かに拳を握れば、
 そんなマリアに少年は未確認生物でも発見してしまったような眼差しを浴びせる。
 口ぶりから察するに思い出を失う前の少年と自分は知り合いだったようだが、
 あそこまで引いているということは性格はだいぶ違ったようだ。

「ふざけるなら後にしろマリア。とっととここを離れるぞ、同じ場所に長くいすぎるとあの人に見つかる」

21:ヒヨドリ:2013/02/15(金) 21:35 ID:QdU

前から不思議に思っていたのだが、この美しい少年は人の心が読めるのだろうか。
私が1つのガラス玉だと言わんばかりに全てを見抜いている気がする。

・・・・・って言ってる声も聞こえてるのかも。
私は少年をチラリと見たが別に変わった様子はない。
そんなわけ・・・・・ないよね・・・・・?
ストップ、落ち着け私。

「あの人っていうのは・・・・・・・誰なの?」
少し慎重に聞きすぎたかな?

「俺の親と、在原だ。」
少年はこちらに顔を向けずに答えた。表情を変える様子は無い。
「えっと、在原と言うと・・・・・?」
あぁ、聞きたいことがいっぱい出てきた。でもここで聞くとまたー・・・

私は決して少年の面倒くさそうな顔が見たくないという理由だけで聞きたいことを聞いていない訳ではない。
なんか・・・・その、怖いのかもしれない。
「何も覚えてねえか・・・」って言われて、現実を突きつけられるのが。

少年は私の顔を覗き込むように見た。
そして、少し小さな溜息をつく。

「在原は俺の家の召使。」
もしかして今、私の心の中読んだ?

ううん、もしかしたら幼馴染とかで、相手の思ってること当てられるぐらい仲が良かった・・・・・とか?
でも、私は少年が今何を思っていて、何を考えているのか勿論分からない。
もしかしたら、記憶を失う前の私だったら、分かっていたかもしれない。

あの苛立ちがよみがえる。私は無意識に木を睨んでしまった。
それにワンテンポ遅れて気づく私は、両手で目をおおう。
・・・・・危なかった。

私は一生この危険な力を持って生きて行くなんて考えると自分が本当に情けなくなる。
けど、待って私。こんなこといつまでも考えてしまっては駄目だ。
もう少し先を見よう。
こんな事でグダグダ思っていたら、私のせいで世界中が火の海になってしまう。

もう少し冷静になって現実を受け入れよう。

22:RIMU:2013/02/16(土) 11:07 ID:cdk

「これ、2つください」

え?
ちょっと、何頼んでんの?

「ほれ」

え?

「ジュース・・・?」

買ってくれたんだ・・・
優しいところもあるんだね。

まだ、眠たいな・・・
私ちゃんと寝たはずなのに・・・

「ふわぁ・・・」

思わず欠伸してしまった。
我慢、できなかっただけなんだけどね。

「眠いのか?」

彼は、私の顔をのぞきこむ。
いやいやいや!
こんな間抜けなところを、じっと見ら
れても困るよ!

「・・・っ!」

私は赤くした顔を隠してこう言った。

「すっ少しだけね!」

あ〜・・・
今ので、キレた・・・か?

23:& ◆stjM:2013/02/16(土) 14:01 ID:Kyg

これはバトルシーンと少年の名前発覚の予感。
皆さん違った書き方で見ていて面白いですね。
がんばって下さい!

24:ささ:2013/02/17(日) 10:44 ID:7e.

>>23
そうなんです!うますぎて私は困っています…
順番、次なんで。

見てくれてありがとうございます!

25:ささ:2013/02/17(日) 11:47 ID:7e.



少年は、私から視線を逸らした。
これは意外。

「寝てれば? やっぱりそれは恥ずかしいの?」
からかうようなセリフだが、その眼は私を見ていない。
コンクリートで綺麗に固められた歩道に視線を落とす。

「その辺にベンチがある」

さっきは恥ずかしさで「少しだけ」と口にしたが、眠気は極限まで迫っていた。
マズい。

「俺は、やることがあるから。マリアの寝顔に興味はないしね」
最低だ。コイツ――失礼、この少年は、乙女の心ってもんを全然わかってない。
でも、遠慮なく寝かせてもらう。
このままじゃ、倒れそうだしね。
私はベンチに向かって歩いて行った。

……ん?
なんか、いる?

ベンチの奥の茂みに、なにか、または誰か、いる。またはある。
とにかく私は見たことがないものがそこに存在した。

液体のようで、しかし形は保っている。
凝視すれば、人ではないことは確定した。
鳥のような形。

水のように日光を乱反射させるそれは、美しかった。
こんなものが存在することが不思議なほど。
「目が覚めるような……」という表現が一番しっくりくる。

そして私は、言葉通り目が覚めた。
眠気なんて吹っ飛ぶ。

吸い付けられるように私はそれに向かった。
それでもそれとの距離は縮まらない。

私はそれに向かって歩き続けた。
男の声が聞こえる。
「《露鶴》、ここなんだな? この女がマリアなんだな? コイツを捕まえればいいんだよな? コイツを捕まえればあの子は――」

マリアには、どうでもよい情報だった。
あの鳥に近づければ。


「……マリア!?」
異変に気付いた少年が、遠く離れた場所から叫ぶ。
マリアには、聞こえるはずがなかった。

26:りっこ ◆5SxA:2013/02/17(日) 12:39 ID:bII

すみません。
運悪くインフルエンザにかかってしまい、なかなか更新できそうにありませんので私の番は飛ばしていただきたいです。

27:白粉 ◆5g2E:2013/02/17(日) 16:55 ID:T6Y


「捕えろ、《露鶴》」

 低い男の声が空気を震わせた瞬間、
 マリアの体は膝から崩れ落ちた。
 何が起こったのかわからず咄嗟に手をつこうとする。
 が、その手も目に見えない何かに掴まれ、
 地に這うような姿勢でマリアは身動きがとれなくなった。
 手首と足首が水に濡れたようにうっすらと冷たい。

「何、これ……」

 愕然と呟けば、
 それすらも煩わしいとばかりに見えぬ縄がマリアの首を締め上げる。
 突然の酸欠に、それでも無理やり呼吸を続けようと喉が開ききる。
 気絶まではいかなくとも、
 この状態が数十分も続けば精神に異常をきたしそうだ。
 ひゅーひゅーと苦しげな音が響き渡る。
 かろうじて霞まぬ視界の中、
 現れたのはブラックスーツを着た長身の男だった。
 東洋人特有の黒髪黒目。
 顔立ちは整ってはいるものの美しくはなく、
 かといって醜くもなく普通でもなく――例えるならばマネキンのような男だ。
 美人不美人の前にそもそも人ですらないような表情の無さ。
 目に光がなく、
 しかしそれは虚ろというわけではなく生まれてきた時からそうであったのだろうと感じさせる自然さ。
 よくできた石像の顔に死んだ魚の目をはめ込んだようにさえ見える。

 男は這い蹲るマリアのほうに視線をやることもなく、
 その向こうにいる少年に向かって片膝をついて頭を垂れた。

「お久しぶりでございます、坊ちゃん。雛様に瓜二つだった美しい髪と目がそのような色に……相変わらず《緋宮》の美的感覚はどこかずれている」
「ずれてるのはお前の方だろう、在原。お前にとっての美しさは“あの人”そのものだもんな」
「またご自身の母君を“あの人”などと。血の繋がった実の母子でございましょう」

 会話から察するにどうやら知り合いらしい。
 さっき言っていた召使の在原という男はつまりこいつか。
 くそ、酸欠で上手く頭が回らない、
 と内心に舌打ちをしながらマリアは身じろぎもできぬまま眼前の光景を見つめる。
 さっきから何度も動こうとしているのに、
 それこそ骨折してもいいとばかりに力をかけているのに、
 指一本も動かせない。
 濡れたような感覚は首から下の全てに広がっていた。

 少年もまたマリアのほうを見ようとはしない。
 マリアが拘束されていることに気づいてはいるが、
 そちらに気を向けていては目の前の男、
 在原に何かされるということか。
 しかしうかつに動けば今度はマリアが絞め殺される。
 この場にいる三人とも誰も動きはしないが、
 あきらかに有利なのは在原のほうだった。

28:ヒヨドリ:2013/02/18(月) 22:37 ID:QdU


「さて、坊ちゃん。一緒に帰りましょう。」
「嫌だね。」

マリアの気がだんだん遠くなっていく。
在原と少年の会話も、途切れ途切れでしか聞こえなくなっている。 やばい。
息を思いっきり吸う。この身動きが出来ない状況で、どう行動していいかさっぱり分からない。

「ぼっちゃ・・・・・・ん・・・・・・の・・・・」

あぁ、本当にどうしよう。
意識も、目を開けている感覚も失われつつある。
その時、信じられない言葉が私の口から飛び出していた。

「助けろ、《雪越》(ゆきえつ)・・・・。」
何かが光る。私の目の前に立ちはだかる、大きいとも小さいとも言えない丸い物体・・・・・。
その瞬間、私の体か軽くなり、寒気も苦しさも消えていた。
「え・・・?私ー・・・・・・・。」


マリア自身何が起きたのか、はっきりしなかった。
ただ、自分が《雪越》という言葉を発したこと、何かに向かって助けを呼んだこと、
自分の意思にはない言葉を言ったこと。

これだけしか、マリアには理解することが出来なかった。

「どういう事でございますか?坊ちゃん。この女も精霊との契約をしているのですか・・・・・?」

少年は何を言っていいのか分からなくなっていたかもしれない。
思い出や、自分の記憶を忘れた女がなぜ精霊の名を思い出せるのか。
少年はあの美しい目を見開き、マリアを見つめた。

・・・・・・マリアはやはり只者ではない。何か、能力以外にも持っているー・・・。
「やっぱり、お前は他と平等じゃないのかもしれねえな」
そう心で呟く。少年の思った通りだ。

マリアはよく分からないという顔をして少年のほうを見上げる。

《雪越》、マリアの契約した精霊の名前ー・・・・・。

29:RIMU ◆EFDU:2013/02/23(土) 19:47 ID:cdk

すみません!
ここ、抜けます!
本当に、迷惑かけて&無責任ですみません!

30:ささ:2013/02/24(日) 09:55 ID:7e.

>>29

すごくさみしいけど了解です…

てことは、私のばんですね!

31:ささ:2013/02/24(日) 10:51 ID:7e.



「私、助かった……?」
マリアは信じられないという顔つきで訊く。
「あなたが助けてくれたんだね?」
少年を振り返って言った。
少年がその言葉の意味を解釈する間に、マリアは表情を変えた。
「ありがとう!」
マリアは、花が開いたように笑顔になった。

少年はといえば、思考を巡らていた。

マリアは、精霊の名前を口にした。《雪越》、助けろ、と。
契約したことを覚えていなければその言葉を言うことはない。
マリアは“記憶”を無くしたはずだ。いや、“思い出”なのか?
思い出せるじゃないか、マリア。
君はなにも忘れていないんじゃないか。
君となら。
君となら、「あのこと」をできるかもしれない。

でも。

『あなたが助けてくれたんだね?』
『ありがとう!』

あの笑顔。
本人は、さっき口にした言葉を覚えていない。
それどころか、俺が助けたと思ってる。
どういうことだ――――?


マリアが言った。
「あなたは誰? こんなところで何しているの?」



そういうことか。
マリアは、また記憶を失ったのだ。
でも、何故?
今の俺に答えは出せなかった。

マリア。君は不幸な人間だよ。俺くらい、ね。

32:ささ:2013/03/02(土) 11:56 ID:7e.

AGE

33:りっこ ◆5SxA:2013/03/02(土) 13:23 ID:Nvg

「マリア……お前」
俺が言いかけた時、遮るかのようにマリアが言った。
「あなたは誰?」
その目は不思議そうな、不安に満ち溢れたような目だった。
まるで、最初の頃と同じ。
また、出逢った頃に戻った。
そして、俺は悟った。

マリアは《雪越》を呼ぶと記憶が消えてしまう事を――

しかし何故だ。
何故マリアは精霊と契約した事を覚えていない。
何故精霊、《雪越》を呼ぶと記憶が消える。

俺には何も出来ない。
ただ、無力なだけ――

そんな自分に俺は絶望した。
そして、マリアの側を静かに去った。

34:白粉 ◆5g2E:2013/03/02(土) 14:13 ID:T6Y


「行こう、在原。俺の負けだ。……だからマリアのことは見逃せ」
「御意。いかに契約者といえど、記憶が無ければ雛様の敵にもなりえないでしょう。殺す価値もない」

 混乱するマリアに我が子を誑かす魔女でも罵るような視線をやって、
 それきり在原はこちらを見もしなかった。
 すれ違った少年は在原の隣で泣きも笑いもしない。
 ただ、これから先の人生に何も望みはないとばかりに諦めを瞳に宿し、
 それに耐える覚悟をするように唇を噛んでいる。
 果実のような桃色に真紅が筋を引いた。

 マリアは少年のことを何一つ知らない。
 いや、少年のこと以外だって何も分からない。
 さっき何かを呟いたような気がする、
 という曖昧な記憶以前のことは一切覚えていない。
 けれど。
 なぜだろう。
 少年をここで行かせてはいけないと思った。
 この、ガラス細工の天使のように美しく、だから脆くて儚くて弱くて、
 でも永遠に眺めていたくなる少年のことを。
 守りたいと、思った。

 気がつけばマリアは鋭く地面を蹴り上げ、
 そこらの石ころを片手に在原の後頭部を殴打していた。
 マリアを視界から外していた在原は当然それに気付かない。
 突然の衝撃に意識を酩酊させている。
 その隣の少年を抱きかかえて、マリアは走り出した。
 目指すは人気の多い土産物通り。
 背後で在原が立ち上がるのを見て、マリアは足を止めずに叫んだ。

「助けろ、《雪越》! 代償は何故か無駄に覚えてるあの男の名前と、マリアって自分の名前だ!」

 その言葉に腕の中の少年が目を見張った瞬間、
 マリアの頭の中から在原と自分の名前は消え失せた。
 自分と背後の男との狭間で轟音を伴って空気が爆ぜる。
 爆風を背に受けて自分はスピードアップし、男は粉塵で前が見えず進みあぐねている。

35:ヒヨドリ:2013/03/05(火) 06:16 ID:QdU



「わぁっ!」
ぶっ飛ばされた感覚だった。ジェットコースターに乗っているより早かったであろう。
「なっ・・・・マリア!?」
もう何処にいるのかも、どこまで飛ばされるのかも分からなかった。ただ、あの場を切り抜けたのは確かだ。
もうすでに自分の名を忘れてしまったし、あの男の名も忘れてしまったが、それはあとでこの少年に聞けばいい。


何故だろう。この少年を守るためなら、記憶を失ってもいいような気がした。


突然、高速で飛んでいた自分の体が、急にストップした。
マリアの体は、地上5メートル辺りから真っ逆さまに落ちて行った。
「きゃあ!?」

正直死ぬかと思った。だがうまく少年の足が地面に付き、マリアをキャッチした。
「あっぶねぇ! 何やってんだよマリア!?」

マリア・・・・・・?
「私はマリアって言うんだっけ?あ、そっか。」

そうだ、忘れていた。自分の名前・・・・・・マリアか。

 あれ、そういえば誰に助けてもらったんだっけ・・・・・・?

もう少しで思い出しそうだけど、思い出せない。本当にあと少し考えたら・・・・・・!
そんな自分に苛立った。だけど、その爆発しそうにたまったストレスを、唇を噛んで耐えた。

少年が大きく溜め息をついた。でも、がっかりしたような溜め息ではない。
そんな美しい少年が羨ましく思ったのはほんの一瞬だった。
「マリア。お前の命の価値だけはやはり他と平等ではないんだな。特別なんだ、お前は。」
こちらを見つめる瞳。宝石のような瞳は、今すぐにでも、私を引き込んでいってしまうような気さえした。

「どこかで聞いたことのある台詞ね。ずっと昔のような、最近のような気がするけれど。」

通りすがりの人が、珍しそうにこちらを見ていった。そりゃ、人通りの多いとこの真ん中で、美少年と長話してたら
目立つわな。

おそらく、これからも私は絶望的としか言えない未来を辿るのだろう。
だけど、不思議とマリアは嫌な気持ちにもならなかったし、恐怖感もなかった。
それは、この少年を守るつもりでいた私を、この少年が守ろうとしていたからなのかもしれない。

36:ささ:2013/03/11(月) 16:02 ID:7e.




 少年はマリアの気持ちなど知らず、さっきの出来事を回想していた。


 助けられた。
 《雪越》に。マリアに。
 その事実は信じがたく、しかし喜ばしいものだった。
 精霊の名を一度マリアが口に出せば、あとは俺が覚えておけばいい。
 《雪越》を、マリアを。
 というか、忘れるはずがない。
 マリアが再び記憶を失うことになっても、「あのこと」を実行するにあたって、何ら問題は無いわけだ。今のところは。


 そこで、ふと止まった。

 在原に見つかったとき、俺はこう言った。
 『行こう、在原。俺の負けだ。……だからマリアのことは見逃せ』

 ――なんか俺、マリアを助けようとしてないか?

 もしもあの時マリアが精霊の名を叫ばなかったら、俺は確実に在原に連れて行かれていた。
 そうなれば計画は無になり、マリアという存在も計画が消えるのなら俺にとって要らなくなる。
 マリアを助ける意味は、計画だけを頭におけば、なかった。
 「見逃せ」なんて言って。
 
 少年は、頬が火照るのを感じた。

 自分の身体の異変に気づき、少年は慌てた。
 そして他人の視線にまた慌てた。
 道のド真ん中で物思いに耽っているというのはかなり特殊なことだから、注目されるのは当然。

「い、行こう、マリア! ここじゃ迷惑だ」

 少年がうわずった声で言う。

「そう言われても、ここが何処か分からないのだけれど」

「いいから、来い!」


 マリアは急に頬を染めた少年を見て、首を傾げた。
 なんだか、いつもと違う。
 “いつも”は分からないのだけれど、何か違う。
 もっと冷徹で、情と無縁なイメージがあった。動揺なんてしないような。
 仕方なく急ぎ足でその場を去る少年について行った。



 一方、少年は。

――恥ずかしい。経験したことのない感情だった。
 何か違うことを考えよう。

 
――何故、マリアは《雪越》の名を口にすると記憶を失うのか。
 これもマリアに関することだが、許容範囲。
 簡単に言えば、代償だからだ。精霊との契約の、代償だから。

 しかし。
 何故毎回?
 俺は一度醜さを取られて終わり。それはそれで嫌だが、一度きりのものだ。あとは何もない。
 マリアは毎回記憶を失う。
――俺より、代償が大きくないか?

 もしかして。
 嫌な予感がした。
 知らないうちに、他にも代償、取られてたりして――
 目に見えるものじゃなくて。
 不吉な予感に眩暈を覚えた。
 
「結構歩いたよね? ここはどこ? どこに行くつもり?」

 たらり、と冷や汗が背中を伝う。
 考えていたら、何処に行こうとしていたかも忘れていた。 
 
――迷った?


 

 

 

37:りっこ ◆5SxA:2013/03/13(水) 21:26 ID:75M

「どうしたの?」
マリアが不安そうに言う。
俺は目を閉じ、ごちゃごちゃになった頭の中を整理する。

ここは何処だ。
人気も無いし、荒れている。
その上、所々には壁に落書きがされていて、完全に過疎化してしまっている。

「ねえ……ここ何処?」
マリアは困り果てた俺の様子を察し、声を震わせながら不安そうに俺に話しかける。
その震えた声が、俺を余計に焦らせる。
マリアは黙ったままの俺の反応を目を潤ませながら待っている。

しかし、一方に此処が何処かは分からない。
時間が経つにつれ、俺の焦りは増幅していく。
不安そうなマリアの潤んだ瞳。
俺の服の裾をきゅっと握り締める白く華奢な手。
震えた声。
俺はそれに耐えられなくなり、マリアの手首を掴み走り出した。

此処が何処かも分からない。
何処に行くかも分からない。
でも、俺はひたすら走った。
何処かに辿り着ける事を信じて――

38:ヒヨドリ:2013/03/29(金) 13:29 ID:QdU


「どうせずっと此処にいても見つかるんだ。」
「でも……何処に行くの? 質問に答えてってば。」

いきなり、自分の行動にハッとする。
行く当ても無く、どこまで走るつもりだったんだ、俺は。
速度を緩め、立ち止まりマリアの方を向く。 マリアは大きく瞬きして、きょとんと俺を見つめる。

こんなことをしていても…………

自分の頭の中が、ぐしゃぐしゃになったようだ。 何がしたい。何が目的で走っている。

何処に向かっているんだ――――


マリアの方に、視線を移す。  遠くで鶯が囀っていた。
よく分からないが、とにかく…………
「《緋宮――ヒノミヤ》………あの人たちに見つからないところに、連れて行け。できれば安全なところ。
 代償は…………このモヤモヤした俺の気持ちだっ。」

目の前に、亀裂が開いた。 キラキラしていてとても綺麗だ。
「ここに、入るの?」
「ああ。 入って落ち着いたら、色々と面倒なこと解決しないとな。」

俺はその亀裂の仲に、足を踏み入れた。 一瞬視界が霞むが、なんとか前へ進めた。
一度静かに目を閉じてみる。 数秒後、目を開けると……

「学校!?」

おそらく、ここはマリアが記憶を失う前に居た学校か………?
制服が、前マリアが着ていたものと同じだったからだ。

確実に、廊下に転がるようにして、入り込んだと思われているだろう。

下手すると、先生とか呼ばれてしまう…………

さて、どうするか。

39:ささ:2013/04/01(月) 00:00 ID:7e.

 
 まぁ、自分が通っていた学校を見たい気持ちもあったのだし。
 私は今その学校のものらしき制服を持っているのだし。

 それに、記憶を失う前の友達なんかもいたりなんかするかもしれないじゃないか。
 

 とりあえず、以前着た制服に着替えた。

 
「……おい、俺はどうするってんだ?」
 普段の様子とは似合わない情けない声が聞こえた。
 少年だ。っていうか、この『少年』呼び面倒くさいな、って思う。いい加減、名を明かしてはくれないのか。


「俺は制服なんて持ってないぞ」
 本気で困った顔だ。
 マリアは思わず吹き出した。


 学校なんて行ったら、少年、どれだけモテるんだろうな。
 バレンタインはチョコが詰まってたり、毎日放課後呼び出されたり。

 そんな時の、少年が驚き、困惑して、半ば呆れた顔が想像出来て余計おかしくなった。



「…………マリア?」

40:あお:2013/04/07(日) 18:19 ID:BRw


「ううん、何でも無い。  クスッ。」

 何でも無い って言ったけど……、やっぱり笑ってしまう。
 少年は、むすっとした顔をしている。相当今の私が気に入らない様だ。


 「制服? うーーーん、どうしよ。」
 
 私は、困った。

買う?いや、そんなにお金を持っていない。
 どれだけ考えても答えは見つからない。
 しかし、良い案を思い付きたい。少年が困ることなど滅多に無い。
 いつも助けられている、この少年を助けたい。
 心からそう、強く思った。

41:ヒヨドリ:2013/04/22(月) 06:31 ID:QdU



「そうだっ。いいこと思いついた」
 私は、わざとらしく平手をこぶしで叩いた。

「なんだなんだ!?」
「何処の生徒なんだ!? こっちの方はなんとなく、見た事あるけれど」

 これは、ヤバイ状況になった。 私を見た事あるのは、やっぱり私の居た学校なんだ。
やっぱり、思いついた方法を使うしかない。

 私は、息を大きく吸い込んだ。

「《雪越》私達が別人として、この学校に居るということにして。代償は、みんなが覚えている私の無駄な記憶!!」

 あたりが一瞬にして明るくなった。 何かの亀裂が入ったかのように、目の前にキラキラ光る、
ダイヤモンドの輪のようなものが、大きく口を開けている。 

「いこう!!」

 もう、目もまともに開けていないが、何となくそこまでの道は分かる。

「ったく、精霊の力借りすぎだろ。」

 そう言う少年は、笑っていた。

 私は、亀裂の中に入る。 亀裂の中は、私の予想と同じだった。


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