怪しげに光る瞳の中で。

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1:陽実 ◆NLsI:2013/02/12(火) 21:09 ID:q6M

バトルファンタジー書きます。
書けないけど書きます。←

書き込みは禁止
http://ha10.net/test/read.cgi/yy/1359026102/l50
こちらにて、書き込みして頂ければ泣いて喜びます。

では始めます。

2:陽実 ◆NLsI:2013/02/12(火) 21:23 ID:q6M


prologue


――あれは、なんだろうか。
闇の中、直線上に映る、赤色の光。
左右ひとつずつ、赤くらんらんと輝く光だ。
遠目では何かわからない。
わからない――が、溢れんばかりの殺気がこもった光であることは明白である。
その光が、一瞬途切れた。
瞬間。
閃光の如きスピードで赤き光は彼に猛突した。
その瞬間に、彼――パールは真っ二つにたたっ斬られた。

パールを真っ二つに斬った赤い光は、瞬間落ち着いた色を取り戻す。
夜の闇に浮かび上がる少女の影。
なぜ今まで見えなかったのか、と疑問を抱くほど。
その少女の影は濃く浮かび上がっていく。

「――…………」

少女の手に光る、銀色の太刀。
太刀を赤く染めたパールの返り血。
そんな返り血を舌でなぞり、太刀を綺麗にする少女。
その少女の容姿は見て取れないが、無造作に伸ばされている髪の毛だけが認識できた。


少女はパールの死体に背を向けると、ジャリジャリと言う音を立てながらその場を後にした。
闇にまぎれ、少女の姿はもう誰にも認識できなかった。

その少女は後に「紅の悪魔(くれないのあくま)」と呼ばれた。

3:陽実 ◆NLsI:2013/02/12(火) 21:34 ID:q6M



第一話


「――ねぇ、知ってる?今この街に『紅の悪魔』が来てるんだって」
「嘘、怖いなぁ」
「本当だって、王室が今すごく慌ただしく動いてるよ――」

『紅の悪魔』の話を流したのは誰なのだろうか。
『紅の悪魔』の話で持ちきりなこの街は「スカイラインド」。
この世界でも屈指の大都市だ。

その街を悠々と歩く、長い脚。
黒いコートを軽く羽織り、そのコートのポケットに手を突っ込む。
白いTシャツにデニムのショートパンツ。黒いオーバーニーソックス。
膝まで無造作に伸ばされた赤色の髪は、誰でも振り返る。
その髪を隠すように頭の上に乗せられたキャスケット。
それのおかげで顔もほとんど見えない。
だが、相当の美少女であることは察して取れた。
そんな少女の名は、クロウ。
クロウは自身の赤い髪の招く異様な注目も気にしない様子でただ悠々と街を闊歩していた。

4:陽実 ◆NLsI:2013/02/13(水) 16:49 ID:u8g



クロウの赤い髪は太陽の光を浴び、キラキラと光っている。
そんな少女を見て、ため息をこぼさぬ男はいない。
――しかし、彼女の夜の姿を見れば誰だって違う意味のため息をこぼすだろう。

裏と表。
昼と夜。
クロウには、その二つが紙一重なのだ。


――夜。
闇の中に、淡い街灯が輝き始める。
そんな中に、クロウはいた。
しかし昼とは風貌が違う。
頭の上に乗せられていたキャスケットはどこかに置いてきたのだろうか。
彼女の頭の上には何もなかった。
それ故に、クロウの赤髪が闇の中にさらに無造作に舞っている。
黒いコートは風にはためき、なのに茶色のヒールの高いブーツは大地にしっかりとつけられている。
周りには誰もいないのに、クロウは静かに口を開いた。
「――……出てきなよ、カルシア」
そんな少女の呟きに等しき言葉を受け、空気は含まれる殺気にふくれあがる。
それと同時に、もうひとり少女の姿がゆっくりと闇の中に刻まれた。

5:陽実 ◆NLsI:2013/02/13(水) 17:03 ID:u8g



「……うーん、今日こそは見つからないと思ったんだけどなぁ」
声がする。姿が浮かぶ。
クロウ以外には、誰もいなかったはずの闇の中に。
ゆっくりと少女の姿が、浮かび上がった。
「馬鹿を言わないでカルシア。用があるのに隠れていてどうするのよ」
鈴が転がるような、綺麗な声。
そんな声の中には微量の殺気が含まれている。
“それ”に怯えるような仕草を見せながら、カルシアと呼ばれた少女は完全に姿を見せた。
まず目に飛び込むのは、青い長髪。
例えるのであれば、そう、濃いコバルトブルー。
そんな色の髪を腰辺りまで伸ばしているのであろう。
伸ばし放題のクロウの赤い長髪とは違い、きちんと手入れはされているらしい。
美しい長く青い髪が、強い風に嬲られている。
次に目視できたのが、白いコート。
クロウと対をなすように、真っ白だ。
真っ白なコートの前は無防備に開け放たれ、風になびいている。
黒いTシャツ、赤いミニスカート。黒いオーバーニーソックス、茶色のヒールの低いブーツ。
クロウと限りなく類似している。しかし、対をなしている。
そんな少女は、カルシアと呼ばれた。

6:陽実 ◆NLsI:2013/02/14(木) 16:49 ID:izI



ざぁっ、と風が吹き荒れた。
瞬間、限りなく光に近いスピード、つまり光速で移動する物体。
“それ”は赤い何かを振り乱し、先ほどカルシアと呼ばれた少女に向かい突進していく。
その突進をまともに受けては、きっと命はない。
それほどに速く、それほどに強靭に見えた。

――しかし。
カルシアは自分に突進してきた“それ”を目の前で止めたのだ。
そしてあろうことか、そこから反撃に出る。
少なくとも三秒は動けないであろう風圧に、耐えるどころか一秒足らずで反撃に出る。
もしも傍観者がいれば「人間じゃない」と口にしただろう。
カルシアは、自分の長い足を曲げ、目の前で止めた相手の体に膝を打ち込む。
しかし、かわされてしまう。
そんな二人の争いは、人間レベルをはるかに超越していた。

クロウとカルシアの体は、微動だにしない。
強い風に嬲られ、煽られ、動いてしまいそうなものなのに
彼女たちは動こうともしない。
動く気配もなかった。
時間が止まったように、その場は動かない。
彼女たちもオブジェと化してしまうかと思われた、その時。
赤い長髪が動いた。
もちろん、動いたと認識できるわけではない。
赤い長髪が、一瞬にして消えた。それだけだ。
消えるはずはない。ちゃんと存在しているはずだ。
なのに、目視できないのは当然のこと、気配さえも消えている。
空気の気配だけはしっかりと残して、だ。
そんなことをされては手も足も出ない。
それは普通の人間にはもちろんのこと、カルシアもまた同様だった。
「――降参、だわ。出てきてよ、クロウ」
先ほどの何かがリプレイされたかと思うほどの情景。
ただ違うのは、
消えているのはカルシアでなくクロウで
相手の名前を呼んだのがクロウでなくカルシアだということ。
その言葉を受けて、じわじわと空気の気配が消えていく。
それだけならなんら問題はない。
問題は――
カルシアの体温は下がった。一気に、マイナスまで下がったかのように。
――まさか、そんなことはあるはずがない。
消えた空気の気配が、今度はじわじわと濃くなっていく。
ずっと消えていた、人間の気配も一緒に連れて。
カルシアは下がった体温の原因を確かめるように、後ろを振り返った。
「今気づいた? カルシア」
“そこ”、カルシアの後ろ。
真後ろには、にぃ、と口角を怪しげにあげたクロウが立っていた。

7:陽実 ◆NLsI:2013/02/15(金) 19:38 ID:R/2



カルシアは悔しさに思わず唇を噛む。
自分の後ろにいた人間の気配に気づかない。
それはとてつもない屈辱だ。
うつむき、唇を噛むカルシアの細く美しい首に、クロウは腕を回す。
白く、触れたら壊れてしまいそうなそんな腕。
美しさにあふれるそれは、かなりの殺傷能力を誇るものと推測される。
事実、腕を回されたカルシアは抵抗することもできずにただ苦痛に顔を歪ませていた。
「――別に、殺すつもりはないから、勘違いはしないで」
そう言って、苦労は突然カルシアの首から自身の腕を抜き取った。
途端、崩れ落ちるカルシアの細く美しい体。
カルシアの体は膝を付き、荒い息をしている。
どうやら死んではいないらしい。
「……用っていうか、お願いがあるだけ、よ」
カルシアは負けを認めたかのようにしおらしく
膝と膝のあいだに白い腕を忍ばせながら小さく口を開いた。
「……お願い?」
一応まだ戦闘シーンは続いているであろう。
しかし、それを感じさせないような素っ頓狂な声を上げるクロウ。
どうせカルシアは自分に攻撃をし開けるためだけに来たと思い込んでいたからだ。
クロウは素っ頓狂な声を上げた自分をまず恥じてからカルシアの目を見つめて次の言葉を待った。
「……パーティー、よ」
「は?」
先ほどよりも、さらに素っ頓狂な声を上げるクロウ。
カルシアの口から出るには、何よりも予想だにしなかった言葉だったからだ。

8:陽実 ◆NLsI:2013/02/19(火) 14:51 ID:jWM



「パーティー……?」
赤い髪の毛を揺らし、首をかしげるクロウ。
そんなクロウを眺めながら、カルシアは息を整え、口を開いた。
「そう。クロウ、アンタに私とパーティーを組んで欲しいのよ」
その言葉を受け、クロウに変化が現れるのはほんの一瞬の間しか必要なかった。

クロウの赤い髪がざわざわと蠢き膨れ上がる。
風は微風程度しか吹いていない。
しかし、そんなもの変化と見て取れないような変化が訪れるのもまたすぐだった。
クロウの瞳は、落ち着きを通り越して冷静さまでうかがわせる漆黒。
“それ”が。漆黒の瞳が、じわじわと色を変えていく。
落ち着きのある漆黒から、色素が抜け、命を感じない無彩色へ。
そこから更に変わっていく。
まるでキャンバスに着色していくかのように。
水彩絵具がじわじわと浸透していくかのように。

――紅に、染まっていく。

髪の毛の色とほぼ同色となったクロウの瞳。
そんな瞳を見つめ、カルシアは怯えたような表情を見せる。
きっと、演技でもなんでもない。
純粋に怯えているのだろう。
クロウの瞳は赤くらんらんと輝き、赤い長髪は風を必要とせずにざわめいている。
そして当のクロウの表情は、何も感じさせない、無表情。
赤の瞳だけが、白い画用紙に落とされた斑点のように輝いている。

9:みなみ ◆NLsI:2013/02/20(水) 15:43 ID:TOg



紅の瞳を光らせ、クロウはカルシアに顔を向ける。
そんなクロウをちらりと見るカルシア。
途端にカルシアの表情に先程とは比べ物にならないような色が浮かんだ。
怯えたような、恐怖を感じているような。そんな色が。
カルシアの瞳に映ったのは、赤い髪を蠢かせ、驚くほど白い肌に紅の瞳を輝かせる。
そんなクロウの姿。
「――何を企んでいるのかしら」
普段よりも一オクターブ低い声を喉から発する。
クロウは自分の髪の毛に手を当てながら、カルシアを睨んだ。
紅の光がカルシアを貫くかのように向けられている。
すぅっと息を吸い込む仕草を見せるとクロウはそっと口を開き
威圧感を含む低めの声を出した。
「私の力が目的かしら。それとも何か利益があるのかしら。
 まぁ、わからないけれど――」
わからないけれど、と、そこで言葉を一旦止めたことには意味があるのかもしれない。
あるいは意味なんてなくて、しかし必然で。
もしかしたら無意識のうちに意味をつけていたのかもしれない。
一旦止めた言葉をもう一度クロウは吐き出した。
「――わからないけど。もしも何かを企んでいるのだとしたら。
 私はあなたを殺すしかないわ」
今度は先ほどよりも、威圧感のある声で。
既にあった威圧感に新しく威圧感が重なる。
すっかりひるんだカルシアは、しかししっかりと顔を上げて。
もう一度口開いた。
「パーティーを、組んで欲しいの。何も企んじゃいない。
 ただ、アンタの力と私の力があれば、なんだって出来る気がするから」
クロウの声の独壇場となっていた夜の闇に、カルシアの声も響きを添える。
加わった響きを聞きながら、クロウは困っていた。
見る限り、パーティーを組んで欲しいというカルシアに、裏はない。
――でも。
でもあんな思いをするのはもう嫌なのだ。

そう、二年前のような思いをするのは――

10:みなみ ◆NLsI:2013/02/20(水) 16:26 ID:TOg



十六年前、スカイラインドの隣の隣。
小さな村はずれ。
そこに、クロウは産まれた。

赤ん坊の時から赤い髪の毛。漆黒の瞳。
しかし美しい色と反面に、彼女は呪われた子として忌み嫌われた。
周りの大人と違う髪の色。周りの大人と違う瞳の色。
並外れた身体能力。特殊な、おかしな能力。
成長するにつれて、浮き彫りになっていく周りと違う部分。
友達はいない。親にすら大切にされない。
そんな自分を責め、自分の赤い髪を切り落とした。
しかし、髪の色は変わることはない。切っても生えてくる。
そんな自分を嫌い、周りも自分を嫌っている。
クロウは孤立していた。

――そんなクロウを変えたのは、今からほんの二年前。
リナとの出会いだった。
リナ。彼女も異常なまでに孤立する少女だった。
太陽の光を浴びれば、輝きを増す金髪。
クロウと同じ、漆黒の瞳。
二人の少女は同じ環境に生まれ、同じ環境に暮らし、同じ環境に身を置いてきた。
お互いの気持ちを理解するのに、時間はかからなかった。

11:陽実 ◆NLsI:2013/02/22(金) 19:25 ID:v0k



赤髪の美少女と金髪の美少女。
同じように漆黒の瞳を輝かせながら遊ぶ二人の少女。
二人とも同じような現実を抱え、同じような過去を抱えているのだ。
だからこそお互いの気持ちを理解し、二人で楽しく過ごせていた。
孤独だったクロウの中に現れた一つの光。
それがリナの存在だった。

太陽の光を遮るように厚ぼったい雲が青い空にかかり灰色の光を落とす。
今にも雨が降りだしそうな天気を上に、クロウとリナは広い草原に腰を下ろしていた。
「――ねー、クロウ」
楽しげな会話を続けていたさなか、突然リナが真剣な口調を取り戻しながら口を開いた。
そんなリナを不思議そうに見やるクロウ。
「なぁに?」
クロウのセリフが吐き出し終わると、リナは真剣な顔をしてクロウを見据えた。
漆黒の光が、灰色と混ざりながらクロウに届く。
ドクン。
クロウの心臓が大きく波打った。
ドキドキと音を立て始める心臓。
そんなクロウを見ながらリナはそっと口を開いた。

「ね、私とパーティーを組まない?」

12:みなみ ◆NLsI:2013/02/23(土) 16:27 ID:yL6



「パーティー……?」
まるでとぼけるかのような表情を見せるクロウ。
ただし、本人にそのような自覚はない。
心の底から分からずに聞き返したのだ。
そんなクロウを見て、クスリと笑いながら言葉の続きを紡ぐリナ。
「パーティーを組むっていうのは、そのパーティーとペアとして一緒に行動したり戦ったりするってこと。
 ほら、私とクロウって身体能力が並外れてるし、“あの能力”があるでしょ?
 だから二人でパーティー組んだら結構強いんじゃないかなって」
長々としたリナの説明を聞きながらクロウは頭をフル回転させてみる。
確かにリナの言うことは一理ある。
多分二人でいればそこそこの強さは手に入る。
成長していけば魔王だって倒せるレベルになれるかもしれない。
それに――
そこまで考えたところで、クロウはにこやかに口を開いた。
「うん、組もう!!」
――なにより、クロウはリナが大好きだ。
一緒に入れるのであればそれも悪くない。

こうして二人はパーティーを組んだ。
確かに二人は強かった。
とりあえず森の魔物と称されていたモンスターと呼べるかわからないような雑魚は倒せたし
なんとか大会とかいうチーム、ダッグ戦の大会では見事優勝を果たしていた。

しかし所詮は少女の浅知恵。
これから何が起こるかもわからずに、ただただ今を楽しんでいた。

13:みなみ ◆NLsI:2013/03/01(金) 19:13 ID:goY



ある日突然それは起こった。
クロウとリナが出場した大会。
確か全国大会、ダッグ戦の部だったとクロウは記憶している。
そこで事件は起こった。

いつものようにリナとダッグを組みその大会に出場した。
大会のルールは、ダッグを組んだ二人組対ダッグを組んだ二人組。
二組が戦い、勝敗をきそうのだ。
その大会でクロウ、リナペアの成績は予選二位通過、準々決勝通過、準決勝通過。
残すは決勝戦のみ、という時だった。
それが起こったのは。

『さぁ、決勝戦がまもなく始まります!!
 泣いても笑ってもこれが最終決戦。
 二組とも全力を出し切って欲しいですね!」
けたたましく鳴り響くサイレンのように耳をつんざくアナウンス。
マイクを使っているのだからそこまで声を張り上げなくてもちゃんと聞こえる。
にもかかわらず大声を出す実況者。
公害ではないのだろうか。付近住民だったら絶対訴えるぞ――
そこまでクロウの脳内が思考したとき、

ドォォォンッ

先ほどのアナウンスなど比べ物にならないような爆発音が会場内を駆け巡った。
爆発音の正体は、決勝戦のリング上。
クロウとリナ、そして相手ダッグの真ん中。
ちょうどリングのど真ん中に落ちてきた何かだった。
「…………なによ、これ」
最初に声を上げたのはリナだった。
落ちてきた“何か”を見て顔をこわばらせ
瞳を潤ませながら震える声で言葉を発したのだ。
その理由を、クロウはその十秒後に脳内に刻んだ。
成程、これは声も震えるはずだ。
爆発音の正体、つまり落ちてきたものの正体は――


血まみれの、人間。

14:みなみ ◆NLsI:2013/03/01(金) 19:15 ID:goY

訂正
×
『さぁ、決勝戦がまもなく始まります!!
 泣いても笑ってもこれが最終決戦。
 二組とも全力を出し切って欲しいですね!」


『さぁ、決勝戦がまもなく始まります!!
 泣いても笑ってもこれが最終決戦。
 二組とも全力を出し切って欲しいですね!』

15:陽実 ◆NLsI:2013/03/26(火) 23:51 ID:e82



一瞬の静寂。
しかしその静寂も一秒のみ、すぐに会場内は悲鳴で埋め尽くされた。
観客席では耳が痛くなるような悲鳴が上がり、アナウンス席では実況者も言葉を失う。
そして、リング上では目の前に落下した“異物”にただただ驚愕するだけだ。
「……にんげ、ん?」
ほんの数分前まで、戦うことしか頭になかった両ペアも、今はもう戦いなど頭にないだろう。
素っ頓狂な声を上げる相手ペアをそっと見やると、クロウは静かに動いた。
「……死んでる、よね。多分失血のショックかな。あと――」
「――内蔵が全てえぐりだされてる」
そこにいた誰もが息を飲む。
ただ二人、クロウとリナを除いて。
クロウが言葉を紡ぐべきか迷い、躊躇っているあいだにリナがあまりにも残酷な考察結果を口にした。
“内蔵が全てえぐりだされている”。
言われてみれば確かに落ちてきた人間の体は少しへこんでいる。
しかしそんなもの、パッと見ただけで普通の人間に分かるはずがない。
それにもかかわらずクロウとリナは揃って同じ結論を出した。

――それが、クロウとリナが持つある能力。

超人じみた“視覚”。

本来はこれ、視覚以外にも得意なる能力は持っている。
しかしこの時点では本人たちには自覚はない。



「……内蔵がえぐりだされてるって……」
「体の中身が骨と肉意外全て抜かれてる。この大量の出血もそのせい……」
見るのも辛いというふうにクロウは目をそらす。
しかしその刹那、またしても爆音が会場内を揺らした。


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