絶望色の狂気のゲーム。

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1:陽実 ◆NLsI:2013/04/09(火) 21:38 ID:SJk


「純粋に、君が好き。」とかけもち、です。
どっちも下書きはしてるので、続かないことは多分ないです。

私は多分恋愛小説、携帯小説風小説のイメージしかないと思います。
でも今回はバトルホラー?を書いていきます。

書き込みは相も変わらず禁止します。
http://ha10.net/test/read.cgi/yy/1364552764/l50
雑談スレにてお願いします。

ついでに更新は亀さんです。
学級組織の動きもありまして。


では始めます。

2:陽実 ◆NLsI:2013/04/09(火) 21:41 ID:SJk





絶望色の狂気のゲーム。


今からあなたは我々の支配下、いわば駒。


兵士です。


逃げることはできません。



さぁ、血ぬれたゲームをお楽しみください。

3:ゆい:2013/04/09(火) 22:11 ID:swM

うちのこと覚えてる?

頑張ってねん

うちのも良かったら見てね

4:陽実 ◆NLsI:2013/04/13(土) 22:26 ID:raM



 正方形とはとても呼べないような四角形の部屋。
 広いとも狭いとも言えないような部屋の中に絶妙なバランスで配置される家具の上にたまる埃。
 壁際にベッド、ベッドの枕元の横に木製の大きめの机。
 ベッドの位置と対象な位置に置かれた本棚、タンス。
 タンスの横には、濃紺のブレザーがかけられている。
 ブレザーの胸もとには、可愛らしい校章の刺繍が施されている。
「……暇」
 突然部屋の中に響く女の子の可愛らしい声。
 しかしその声の中には怠惰の意が込められていた。
 声を発した少女の名前は神無月 結依(かんなづき ゆい)。
 ある私立高等学校に籍を置く一年生だ。
 彼女は暇を持て余す。
 やることはない、ゲームは飽きた、親は夜勤でいない。
 することのない、午前一時。
 夜中と呼ぶべき時間に、少女は自分のベッドに腰掛けて座っていた。
 その手には光を漏らすスマートホン。
 いろいろなニュース、ゴシップをインターネットで検索を繰り返すだけの時間。
 睡魔は襲ってこない。
 左手でスマートホン本体を支え、右手の人差し指を動かしてタップをする。
 明るく綺麗な色の光が電気を消した暗闇に近い部屋の中にへ反射する光景が何とも言えない。
 暇を持て余す彼女。
 そろそろ寝ようかとスマートホンを左手からおろし、ベッドの枕元に置く。
 しかし電源は付けたまま。
 ぽすんっという音を立ててベッドに横になる。
 ベッドのマットレスに深く沈み込む彼女の耳に、突然メールの受信音が届いた。

5:陽実 ◆NLsI:2013/04/13(土) 22:42 ID:raM



「……こんな時間に、メール?」
 暇を持て余していた彼女は数秒前に置いたスマートホンに飛びつく。
 メールなんてこれば、時間をつぶせるかもしれないのだから。
 しかし、画面を見た彼女の顔は怪訝そうな顔に変わる。
『新着メール 一件
 差出人 未登録』
 未登録のメールアドレスに不安な気持ちが募る。
 おそるおそる『メールを開く』と書かれたボタンをタップ。
 瞬間、センタリングされた文字が瞳に飛び込む。
『絶望色の狂気のゲーム。
 今からあなたは、我々の支配下。いわば駒。
 兵士です。』
 という短い文章。
 知り合いからのメールでもなく、興味を失った結依はチェーンメールだと思いメールを削除する。
 
 ――それが、狂気の始まりとも知らずに。

6:陽実 ◆NLsI:2013/04/15(月) 00:43 ID:XiE



 すっかりメールに興味を失えば、もう寝ることしか選択肢に残されない真夜中。
 大きなあくびを噛み殺し、軋む音に横になるとすぐに寝息を立て始める。
 この彼女を見て、疲れているのならばさっさと寝ろ、と思う人間は一人や二人ではないはずだ。

 結依が安息の眠りについた数分後。
 結依の枕元に置かれたスマートホンが音と振動を撒き散らす。
 ヴヴヴッという耳障りなバイブ音が部屋中に響くも、
 当の持ち主である結依が睫毛を上げることはなかった。
 

 しかし、翌朝やっと持ち上がった結依の睫毛は、次の瞬間しばたかれた。
 夜中になった、スマートホンの液晶画面を見つめて。
「……受信メール、八十……二?」
 あっけにとられそうつぶやく結依。
 その手にはスマートホン。
 鋭い眼光を放つ瞳は、液晶画面に釘付け。
 その画面には『受信メール 八十二件』の文字。
 とりあえず嫌な予感を押さえ込んで一番古いメールを開く。
『差出人 未登録』
 昨夜、正確には今朝、開いたメールが脳裏に蘇る。
 ゾクリとした何かが背中を這い回り、食道を伝って何かが上がってくる感覚。
 画面に映し出された文字は、センタリングされた数時間前と同じ内容。
 嫌な予感は的中。
 さらに増幅する嫌な予感を振り払うように、次々と未読メールを開いていった。

7:陽実 ◆NLsI:2013/04/20(土) 11:25 ID:ny6



『絶望色の狂気のゲーム。
 今からあなたは我々の支配下。いわば駒。
 兵士です。』
 ほとんどのメールがその内容。
 気持ち悪いほどに、一寸の狂いもなく、同じ内容が繰り返綴られている。
 気づけば八十二件の新着メール中、八十件を読み終わっていた。
 どうせ残りの二通も同じ内容だろう、と思い次のメールを開く。
 しかしそのメールの差出人は、見慣れた名前だった。
「……陽菜?」
 陽菜――水無月 陽菜(みなづき ひな)――は、結依の親友と呼べる友人。
 幼稚園の頃からの付き合いで、高校生になった今は別々の道を歩んでいるものの、
 メールのやり取りや電話での会話は今でも続いているし
 休日もたまに会ったりする仲だ。
 やっと他のメールが読める、という変な安堵感を持って陽菜からのメールを見る。
そこには、
『新着メール 二件
 差出人 水無月 陽菜
 件名 なにこれ』
 件名に自分の思ったことだけを書くのは陽菜のメールの癖。
 画面をタップし、メールの画面を開く。
『変なメール送られてきたよ。
 添付するから見てみて。
 返信待ってる』
 割と一方的なのも癖。
 その癖を理解し、その上で陽菜と親友なわけだから
 この程度でいちいち腹を立てるわけではない。
 とりあえず添付されてきたメールを見ようと、画面をスクロールする。
 そして添付画像を見た瞬間、結依の体は凍りついたのだった。

8:陽実 ◆NLsI:2013/04/22(月) 00:12 ID:tC2



『絶望色の狂気のゲーム。
 今からあなたは我々の支配下。いわば駒。
 兵士です。』
 昨日から今日の朝にかけて何度も見たその文字。
 もう見るだけで吐き気のするその文字。
 そんなメールが、結依だけでなく陽菜にも届いたのだ。
 そのメールに対してすぐに返信を打つ。
『私もそのメール届いた。何なんだろう。
 何かわかったらまた連絡するね。』
 そのメールを送信すると、瞬間メールの受信音がけたたましく鳴り響く。
 顔をしかめながらも心のどこかでどうせあのメールだろうと思い、
 差出人を確認せずにさっさと開く。
 しかしそのメールは、今までと似ているだけで違うメールだった。
『絶望色の狂気のゲーム。
 逃げることはできません。
 参加者はこちらをクリック。』
 “こちら”の部分だけが不気味に水色に光る。
 クリックすればどこかのサイトに飛ぶことは明白だ。
 結依の体は異常なほどに震える。
 体中が振動する中、無意識に指が“こちら”の文字をタッチしていた。 

9:陽実 ◆NLsI:2013/04/24(水) 21:15 ID:dSY



 すると突然、スマートホンの画面が真っ黒な光を放つ。
 突然のことに驚いた結依がスマートホンを思わずベッドに落としてしまったが、
 しかしそんなことはもちろんなかったも同然に、
 ただただ機械的にスマートホンの画面には赤い文字が浮かんでいく。
 それはまさに血文字のようで、鮮血で描いたかのような色だった。
 内容など二の次で、気持ち悪さが勝ってしまうような画面だが、
 とりあえず内容に目を通す結依はあまりに続く恐怖になれ始めているのかもしれない。
『絶望色の狂気のゲームへようこそ。
 あなたのNOはNO.10。
 武器はコルトドラグーン、すなわち拳銃と、選択武器の計二つです。
 さあ、血ぬれたゲームをお楽しみください。』
 先程から震えていた体なのに、さらに震えをます。
 ブルブルと効果音を付けてもいいくらいに。
 それに伴うように、涙腺が熱くなっていく。
 それを感じたのも束の間、すぐに涙がこぼれだした。
 “怖い”という気持ちだけが、結依の中に渦を巻くようにしていた。

10:陽実 ◆NLsI:2013/05/03(金) 22:06 ID:.lA

 

 どのくらい、そうしていたのかわからない。
 とにかく怖くて、恐怖に身を潰されそうで、結構な時間うずくまっていたのは確かだ。

 結依が我に返ったのは、突然聞こえてきたインターホンの音のせいだった。
 ビクンと体が跳ね上がる。
 メールのみでここまで人間を追い詰める話術もたいしたものだ。
 どうせ自分には関係のない宅配便の荷物、大方母のネット通販で手に入れたダイエット器具かなにかだろう。
 そう当たりをつけた結衣は、インターホンのおかげで少し楽になった体で軽く伸びをする。
 ついでにあくびも空中へ吐き出された。
 昨日は……いや、実際は今日になってから寝たものだから、普通に寝不足。
 あくびに誘われて、眠気も襲ってきたその時玄関の閉まる音がした。
 同時に「ありがとうございましたー」という威勢のいい若い男の声も聞こえてきたから、
 とりあえずさっき思考した宅配便でおそらく間違いない。
 自分には関係ないと思いもう一度ベッドに横になると、ベッドが軽く振動する。
 体重で沈むマットレスに、結衣は一瞬変な感覚を覚えた。
 ふぅとため息をつく。
 付いた瞬間廊下から、階段から、床を踏むスリッパの擦れる音が聞こえてきた。
 はじめは小さく、少しずつ大きくなっていく。
 誰かが、といっても今家には結依と母親しかいないはずだから事実上母が、
 ゆっくりと階段を上ってくる音が。

11:陽実 ◆NLsI:2013/05/05(日) 13:58 ID:8XY

 

 足音を不審に思って一瞬身構える。
 でもしかし、寝室にでも置きに来たのだろうと思いスマートホンに視線を移す。
 今は母親よりもこっちだ。
 気持ち悪い内容に吐き気を覚えたのは数分前。
 その時よりは流石に少し症状は軽くなっていた。
 はぁ、とため息を着くと、大きくなってきた足音が部屋の前で止まりノックの音が響いた。
「結衣ー? 開けるわよ?」
 ノックと言葉が届くと同時に扉が開く。
 返事くらい聞いてから扉を開けて欲しいものだ。
「なに?」
 視線はスマートホン、手もスマートホン、母親の方に関心を示さずに声を出す。
 そんな娘の姿にため息をひとつつくと扉を開くときにおいたであろう、
 片手でギリギリ持てないサイズのダンボール箱を差し出した。
「結衣宛の荷物。中身は知らないし、差出人も不明なのよ」
 そう言ってダンボール箱を置くと「じゃあね」と言って部屋を出ていく。
 今日は土曜日。
 学校について言うこともないからだろう。
 結衣はスマートホンから目を離さずにダンボール箱を足で引き寄せる。
 瞬間、ダンボール箱に結構な重量があることに気がつく。
 足で簡単に引き寄せることができず、かと言って手を使うほどでもない微妙な重さ。
 中身を連想することができない恐怖が少しだけ生まれた。
 しかし面倒になって手を使って引き寄せる。
 そしてガムテープを大きな音を立てながら剥がす。
 箱の蓋を開けると、白い紙に包まれた変な形の物体が目に入った。
「なに……これ」
 変な形の物体を手に取ると、結構重量があることが確認できた。
 そして金属のようなずっしりとしたものであることがわかる。
 一瞬、嫌な予感が頭をよぎった。
 ゆっくりと白い紙を物体から剥がしていく。

12:アリス:2013/05/19(日) 16:47 ID:Sb.

こ・・・怖い・・・
なんて恐ろしい・・・・

13:陽実 ◆NLsI:2013/05/20(月) 10:46 ID:gI6



 白い紙をはがし、紙が床に落ちた瞬間、結依は言葉を失った。
 紙が手からなくなり、手の上に残った物体。
 それは――
「……拳、銃」
 そう。拳銃だったのだ。
 ずっしりと手にかかる重量。
 “それ”の重さは実際片手で扱えるほどのものだが、
 結依が感じた体感重量は両手でも支えきれないほどのものだった。
 とりあえず拳銃をベッドの上に放り出し、先ほど届いたダンボール箱を漁る。
 すると折りたたまれた黒い紙が、ほかの荷物もまだ入っているダンボール箱の底に置いてあった。
 紙に手を伸ばし、二重折りの折り目に沿って開く。
 内容は簡単に、短く、簡潔に、しかしそれでも気持ち悪いものだった。
『お送りしたのはコルトドラグーンです。こちらはあなたの武器です。
 もう一つ選択武器をもう一枚の紙に記載されているリストから選んでいただきます。
 なお、この文章を読んだ時点であなたのゲーム参加は決定事項です。
 取りやめを希望される場合はあなたの大切なものをいただきます。』
 もうこらえきれない涙が頬を伝い、隠しきれない嗚咽が漏れる。
 もちろん涙を流したからとってこの状況が好転するわけでもないが
 それでも泣かずにはいられないほどの恐怖だった。
 自然と手が顔を覆い、その手の隙間からも涙という名の液体がこぼれ落ちる。
 二十一滴目の涙が床に落ちた瞬間、スマートホンが鋭い振動と音を部屋中に撒き散らした。
 自然と警戒する結依の体。
 差出人を見た結依は、迷わずにメールを開く。
『新着メール 一件
 差出人 水無月 陽菜
 件名 無題』
『ねぇ、助けて!!
 変なメールがいっぱい送られてきて、文字タッチしたら変なサイトに飛んじゃった。
 そしたらなんか荷物届いて、あけたら日本刀が入ってたんだけど……。
 結依、どうしよう。』

14:アリス:2013/05/21(火) 19:30 ID:Sb.

…まいが死んじゃうパターン?

15:陽実 ◆NLsI:2013/05/26(日) 12:05 ID:dAE



 陽菜が自分と全く同じ状況に巻き込まれているものだと推測した結依は、迷わずに陽菜に電話をかける。
 アドレス帳から電話画面に飛ぶまでのスピードはさすが女子高生と奨励したくなるほどだ。
 プルルルル、という冷たい機械音がワンコールだけ鳴り響くと、通話口の向こうから陽菜の声が聞こえてきた。
『はい!?』
 相当思いつめていたのだろうか、陽菜の声はかなり疲れているようだった。
 対して結依は冷静で、疲れのにじむ陽菜にもしもし、と返すと本題をさっさと切り出した。
「メール読んだよ。私も同じようなメール来てる。ま、私は拳銃なんだけど」
 言葉を失った陽菜は一時放置。
 自分の伝えるべきことを結依は早口に口走る。
「もうこれ参加するしかないよ。警察行っても意味ないだろうし、むしろ銃刀法違反じゃない?」
 銃刀法。銃砲刀剣類所持等取締法。
 この場合結依は一年以上十年以下の懲役だ。
 電話口の向こうで『そうだけど……』とこぼす陽菜を確認すれば、結依はベッドから飛び降りた。
 ドスンという重苦しい音が響く。
 床に降り立つと通話しながらとは思えないスピードでダンボールの中を漁る。
「それとさ、ダンボールの中に選択武器リストとか言うの入ってなかった?」
 自分に届いたダンボールを漁りながら、電話の向こうの陽菜に問いかける。
 それを聞いた陽菜は自分のダンボールを漁っているらしく、ガサガサという音が通話口から聞こえてきた。
『あ……入って、る』
「そっか。やっぱり同じだ。多分そこから武器を選ばないと同じようなメールが続けてくるんじゃないかな。
 選択武器を選択してください、的な」
 淡々と話す結依は何かに洗脳されたかのようだった。
 陽菜はゲーム自体だけでなく、きっと結依にも恐怖を感じただろう。

16:陽実 ◆NLsI:2013/06/10(月) 18:20 ID:pIQ



 そんなことは気にもとめず、結依は自分のダンボール内をくまなく捜索。
 ガサガサ、という音がしん、と静まった部屋中に響いた。
 突如手に当たる紙の感触。持ち上げることのできる軽さ。
 “それ”を持ち上げると、通話中ということを忘れたかのように、携帯を放り出していた。
 そこに入っていたのは、黒い封筒。
 黒い画用紙を機械で加工したようなもので、いたるところに金色の線が入っている。
 そんな気持ち悪い外見の封筒が、もちろん今現在起こっていることに無関係とは思えない。
 放り出した携帯もそのままに、陽菜が通話口の向こうから語りかけるのも放置して、
 結依は静かに封筒の封を切った。
 中に入っていたのは、小さな機械のようなものと数枚の紙。
 機械のようなものはピコピコと小さな音を立てて既に起動中。
 数枚の紙は封筒と同じく真っ黒で例によって赤い字で文字が描かれている。
 そこまでしたところで急に冷静さを取り戻して、
 封筒の裏をそっと見てみるも時すでに遅し。
 そこには先ほどメールで見た文章と似たようなものが綴られていた。
『この招待状を開封した時点であなたは我々のモルモットです。
 良い実験結果を期待しています。』
 なんなのだこれは。
 鳥肌が体中を襲い、抑えようと懸命に試みるもブツブツとした突起はおさまることを知らない。
 体は震え、歯はカタカタと鳴り響き。
 気持ち悪いほどの恐怖感が結依を取り巻いた。

『結依!?』
 突然聞こえてきた自分の名前に体はびくりと反応を示す。
 その時点でやっと我に返り、通話口の向こうで叫んでいる陽菜に言葉を返した。
「あぁ、ごめん」
 短くそっけない言葉だが、その時の結依にはこれが限界。
 震える体のせいで、震えた声しか出ない結依には。

17:ひなの@ ◆NLsI:2013/07/13(土) 12:30 ID:bdU



「とりあえずさ、まず招待状開封した?」
 結依は自分が開封してしまった招待状を人差し指と親指でつまみ、
 ひらひらと動かしながら陽菜に問いかける。
 言葉を発した数秒後、陽菜はダンボールの中を漁った。
 そして黒い封筒を見つけると、何も言わずに封を切った。
 ビリビリという破れる音が通話口を伝って結依の耳に届いた時、
 結依は思わず叫んでいた。
「封切ったの!? ねぇ、陽菜!?」
 その声に陽菜は驚き、
 携帯を取り落としその上開封したばかりの招待状も取り落とした。
 黒い封筒の中から溢れ落ちる小さな機械と数枚の紙。
 結依のものと同じくピコピコと起動中の機械を見た瞬間、
 陽菜の声は震える声から涙声に変わる。
『なにこれ!! なんなのもう!! わけわかんないよ、結依どうしよう……!!』
「私だってどうにかしたいけど、招待状開封した以上もう参加するしかないでしょ。
 とりあえずあれだよ。どっかで会おう。話はそれからだよ。そっちのほうが早い」
 冷静な判断を下す結依。
 それでも声はどこか恐怖を表していて。
 それでもどこか動揺していて。
 彼女たちの置かれている状況を率直に表していた。

18:ひなの@ ◆NLsI:2013/07/18(木) 19:12 ID:bdU





 昼十二時、中央公園噴水前。
 そこで落ち合うことにした二人。
 結依はきっかり時間の十分前につき、
 普段から必ず五分は遅れてくる陽菜を待つつもりだった。

 しかし
 陽菜は結依が来る前に既についていて、
 それがまた激しい緊張をあらわにしていた。



「ごめん、待った?」
 陽菜と会うときに必ず言われる側のセリフを結依が吐くのは初めて。
 なかなか言いにくいセリフだということを学習した。
「待ってないよ。早く来すぎただけ」
 ニコリと笑う陽菜。
 しかしその笑顔にはやつれと疲れが色濃く浮かんでいた。
 そんな陽菜を痛々しい思い出見つめる結依もまた、
 顔には疲れ等、いろいろな色が浮かんでいた。
「……とりあえず、喫茶店でも入る?
 外で話すのもなんだし」
 そう提案したのはもちろん結依。
 陽菜がなにかを結依に提案することは滅多にない。

19:ちあ@ ◆NLsI:2013/07/25(木) 10:12 ID:bdU



「そう、だね。喫茶店ならコーヒーとか飲んで落ち着けるし。
 いつものところでいいよね」
 結依の狙いも「とりあえず落ち着く」ということだったので、
 早々に同意していつものところ、喫茶店「black cat」に向かった。
 「black cat」は結依や陽菜がよく勉強に使っている喫茶店で、すっかり常連客な店だ。
 そのためほかの、初めて入る店に比べ落ち着けるのもある。
 「black cat」に向かう道中、二人はずっと無言だった。



 「black cat」につき扉を開けると、
 体が覚えている、特製ブレンドコーヒーの香りがふわりと広がった。
 それだけで少し体が落ち着く。
「いらっしゃいませ――あ、結依ちゃん、陽菜ちゃん」
 店に入るとすぐにいらっしゃいませ、という明るい声が聞こえる。
 そのすぐあとに、自分たちの名前も。
 声をかけてくれた店員は生田 睦月(いくた むつき)。
 店に通ううちに仲良くなった店員さんだ。
 いつも優しく挨拶してくれる上に格好いいため、女性客の一番のお目当てにもなっている。
 もちろん結依は興味がない。
 しかし陽菜は面食いであるがゆえに、ここに通う理由の一つに“睦月と会うため”というものが含まれている。
「こんにちは、睦月さん。席空いてる? なるべく周りに人がいない席」
 会釈しながら結依が問いかけると、
 睦月は少し考える仕草を示し、やがて顔を上げると「ついてきて」といい、歩き出した。

20:ちあ@ ◆NLsI:2013/07/27(土) 09:59 ID:bdU



 案内されたのは店の一番奥で、
 窓にはブラインド、窓の向かい側には仕切り、片方の横には壁という、
 周りとの接触がほぼ絶たれた絶好の場所だった。
 その席に腰を下ろし、
 とりあえず何も頼まないわけにもいかないのでブレンドコーヒーを頼んだ。
 ちなみに陽菜はオレンジジュースだ。
 店の中がすいている時間を狙ってきたので、
 あまり混んではおらず、注文したものはすぐに運ばれてきた。
 もちろん、運んできたのは睦月だ。
 運ばれてきた特性ブレンドコーヒーにコーヒーフレッシュとシロップを少したらし、
 マドラーで軽く混ぜてから啜ると、
 独特の苦味の中に甘さが溶け出しているような、
 何とも言えない旨みが口内に広がった。
 少し落ち着き、ふぅとため息をつくと、
 陽菜も同じようにオレンジジュースにストローをさし、啜った直後だった。
「……さて、
 とりあえず状況を整理しようか」
 陽菜が口内のオレンジジュースを飲み干したことを確認し、結依は口を開いた。
 結依は自分が持ってきた、
 ダンボール箱の中に入っていたコルトドラグーン――拳銃――以外のものを全て机上に並べた。
 その数はゆうに十を超えている。
 招待状、選択武器リスト数枚、開封してしまった招待状の中に入っていた小さな機械、
 同じく入っていた数枚の紙、その他もろもろ。
 それだけで十を超える数だった。
「これが私に送られてきたもの。陽菜に送られてないものとか、
 陽菜に送られてきたのに私に送られてないものある?」
 結依がそう問いかけると、
 陽菜は少し考えるように仕草を示し、
 やがて「ないよ」と答えた。
 「そっか」と結依は静かにこぼし、
 何かを考えるような格好を取る。
 二人ともなにも喋らないまま、数分が過ぎた時、
 結依は何かを思い出したように声を発した。
「……そういえば、このわけのわからないゲームの開始時間とかって、どっかに書いてあったっけ?」
 結依は独り言なのか問いかけているのかわからないようなトーンの声で話すと、
 机上に並べられている紙などを片っ端から見ていく。
 それを見て数秒思考停止していた陽菜も、
 同じような行動を始めた。

21:ちあ@ ◆NLsI:2013/08/05(月) 21:35 ID:bdU







 そしてしばらく二人は同じ行動をしていたが、
 その開始時刻がどこにも記載されていないことを確認すると
 すぐにその作業をやめた。
「どこにも書いて……ない、ね」
 陽菜が残念そうに言葉を口にする。
 結依も「そうだね」とつぶやく。
 結依がふぅ、とため息をつくと
 陽菜は静かにもう一度オレンジジュースを啜った。
「……陽菜、どうする?」
 結依はストローを加えたまま「はにふぁ?」という声を発した。
 おそらく「なにが?」と言いたかったのだろう、と結依が解釈した瞬間に
 陽菜がストローを口から出してもう一度「なにが?」と口にした。
「このゲームのこと。こうなった以上、もう参加するしかないと思うんだ。
 陽菜はどうする? 参加、する? それともリタイア?」
 結依は淡々と言葉を並べるが、
 その中には実に残酷な意味が含まれていた。
 「参加取りやめ」は、
 「大切なものを失う」ということであるからして
 そんなもの問う必要性もないのだろうが。
「参加、するよ。そうするしかないでしょ。
 大切なもの失いたくないし」
 いつもの陽菜だったらきっと、「結衣、どうしよう」と泣き出すところ。
 なのに実にキリッとした表情で言い放つ陽菜を見て
 結依は変なものを感じたが、それが何なのかはわからなかった。
 それに今大切なことは、
 参加するかしないかであり陽菜の変化ではない。
「そっか。わかった。一緒に頑張ろう。陽菜」
 結依がにっこり笑ってそう言うと、陽菜はぎこちない笑みを返す。

22:如月ちあ@ ◆NLsI:2013/08/06(火) 23:06 ID:WRs







 そしてその後二人は相談も兼ねて話し合いを勧めた。
 話し合いの結果、
 選択武器は二人で同じものを持つということで、
 既に殺傷能力の高い拳銃と日本刀を持っているふたりは
 バタフライナイフを選んだ。
 これ以上殺傷能力値だけを上げても仕方ないと考えたからだ。
 もうひとつ、携帯がしやすいというのも理由にある。
 結依の拳銃はともかく、陽菜の日本刀というのは非常に携帯がしにくい。
 帯刀するには腰にさやをぶら下げなくてはならない。
 動きやすさも考慮に入れてバタフライナイフを選んだのである。
 そしてもうひとつ。
 これから動きを必ず共にするということも決定した。
 二人で一緒にゲームに参加しようと考える二人にとって
 一緒にいない時にゲームが開始されるというのはかなり不利なことになる。
 万が一を考慮して必ず一緒に行動することになった。
 具体的には寝起きを共にする。
 そのため陽菜は結依の家に泊まることになった。
 そうと決まれば善は急げ、なのか、
 結依は早々に立ち上がる。
「じゃあ陽菜ん家行こっか」
 立ち上がった結依は自分のショルダーバッグを掴み取ると、
 陽菜に声をかける。
 陽菜は浅く頷いて立ち上がる。
 バッグの持ち手を肩にかけ、
 中から財布を取り出しながらレジまで歩く。
 二人は無言だ。
「お会計は五百二十円になります」
 会計をするのは睦月ではなかったためか陽菜は少し残念そうな顔を見せた。
 結依はそんな陽菜を横目に自分がとりあえず五百二十円を出す。
 レシートをもらい財布にしまうとさっさと店から出た。
 日差しがジリジリと照りつけ、セミが煩い。

23:如月ちあ@ ◆NLsI:2013/08/07(水) 10:21 ID:WRs







 アスファルトで舗装された道路をダンプカーがゆっくりと走る光景を横目に見ながら
 二人は陽菜の家に向かっていた。
 陽菜の家はカフェ「black cat」から比較的近くにあるためすぐに到着する。
 家の住人がいるのにインターホンを押す必要はないと思うのだが
 陽菜は割と裕福な家庭で育ったいわゆるお嬢様、ご令嬢というもので
 生まれつき不自由ない暮らしを敷かれてきているためか
 鍵を持ち歩かないらしい。
 そのためインターホンを押すことは必須なのである。
 インターホンを押すと、ピンポーンという乾いた電子音が
 家の中、インターホンのあたり一体に響いた。
 しばらくすると
 通話口から女性の声がする。
「陽菜? ちょっと待って、今開けるわ」
 落ち着いた声は大人の女性を思わせる。
 高すぎず、低すぎず、ちょうど良い感じの声。
 その声が途切れたわずか三秒後、
 しまっていた門の鍵と玄関の鍵が一度に開いた。
 突然のことに結依の腰は引いていたが、
 陽菜はいつものことだと言わんばかりに颯爽と門を開けて敷地に入っていく。
 開けっ放しの門は結依が後ろ手に閉めた。
 広大な敷地面積を誇る水無月家。
 庭面積だけで結依の家の土地面積と同じくらいだ。

24:如月ちあ@ ◆NLsI:2013/08/08(木) 11:34 ID:WRs






 
 家の中に入る。
 玄関面積も結依の部屋くらいはあるかもしれない。
 何度来てもあまりの大きさに結依はいつも驚きを隠せない。
 その上一ヶ月に一度は家の中を模様替えするため、
 来るたびに内装が変わってしまいわけがわからなくなってしまう。
 凡人の結依に金持ちのすることは理解できない。
 苦笑いしながら靴を脱ぎ、陽菜の部屋に通される。
 陽菜の部屋は二階の階段を上がってすぐだ。
 真っ白な扉に「HINA」と書かれた札がぶら下がっている。
「入ってて、飲み物とか持ってくるから。あ、クーラーつけちゃっていいよー」
 自分の部屋の扉を開け、
 結依を部屋の中に通すと自分は一階まで降りていく陽菜。
 残された結依はとりあえず部屋に入り、
 言われたとおり机の上に置かれたクーラーのリモコンの起動ボタンを押した。
 相変わらず広い部屋だ、と部屋を見渡して思う。
 結依の部屋二、三個分の広さはあるのではないだろうか。
 クーラーの設定温度が低いのか、性能がいいのかは知らないが
 広い部屋の割に早く部屋は涼しくなっていく。
 この部屋に来たときにいつも座る机の前に腰を下ろし、
 その横にショルダーバッグを置く。
 ふぅ、という結依のため息が部屋の中に消えた瞬間、
 一階から上がってくる慌ただしい足音が聞こえた。

25:如月ちあ@ ◆NLsI:2013/08/09(金) 22:37 ID:WRs







「……あっつ」
 足音を気にも止めずに発された声が空気中に伝う。
 結依が着ている白色のTシャツの胸元をパタパタと扇いでいると、
 部屋の前で足音は止まり、
 扉が大きな音を立てて開いた。
「持ってきたよー、お、もう涼しいじゃん」
 大きな音を立てたことに比例するように大きな声が突入してくる。
 普段そんなに大きな声を出さない結依にとっては、
 結構耳障りなものなのだが。
 それを露骨に表情にだす結依に陽菜は苦笑いを返す。
「はい、オレンジジュースでよかった? あと、チョコケーキ好きだったよね」
 陽菜が手に持ったお盆を白い机に置きながら問いかける。
 それに「うん」と一言だけ返すと、
 バッグから携帯を取り出して新着メールをチェックする。
 もちろんあの恐ろしいゲームのメールを確認するためだ。
 しかし新着メールはない。
 ホッとする反面、少し焦りが生まれた。
 ゲームについての情報が得られないということは、
 何もわからないままゲームに参加しなければならないということになる。
 それだけは避けたいのではないだろうか。
 ほかにも参加者がいるとしたら、
 きっと今頃同じ思考を巡らせている人はいるはずだ。
 はぁ、とため息をつきながら結依はオレンジジュースを飲む。
 ストローが刺さっているため飲むのは楽だ。
「ケーキ食べてて、泊まる準備するから」
 陽菜は一口オレンジジュースを啜ると机にグラスを置いて立ち上がる。
 クローゼットから大きめのバッグを取り出すと
 タンスから出した洋服を詰める。
 バタバタと走り回りながら簡単な生活用品をバッグに詰めていく陽菜を横目に
 オレンジジュースを啜りながら携帯をいじる結依。
 最後の一口を啜り終わり、
 グラスの中がズッという音を奏でた瞬間。
 携帯が震え、メールの着信音が流れだした。
 それと同時に机の上に置かれている陽菜の携帯もメールを受信する。
 二人は同時にお互いの顔を見て、
 結依はそのままメールを開き、陽菜は携帯に飛びついてメールを開いた。
『新着メール 一件
 差出人 未登録』

26:如月ちあ@ ◆NLsI:2013/08/17(土) 13:50 ID:WRs







 未登録アドレスに体は凍りつく。
 昨日から何度にも渡って見ていたそのアドレスは、
 二人の動きを止めてしまうのには十分すぎる刺激だった。
「……これ、ゲームの」
 陽菜がぼそっとつぶやく。
 どうやら結依よりも先にメールを開いていたらしい。
 やはりゲームのことかと納得したような表情を作った結依は
 なんの躊躇いもなくメールを開いた。
 相変わらずセンタリングされた文字が目に飛び込む。
『ゲームについてのご案内です。
 
 開始:八月十日 午前十二時
 集合場所:東京都K市中央公園噴水前
 持ち物:プリント類以外の宅配物として届いたもの

 では、お待ちしております。』
 いつもよりも短い文面だったが、
 たくさんの情報が詰め込まれていた。
 そしてその中の殆どの情報が結依たちが欲していたものである。
 開始時間。場所。持ち物。
 そして、参加者の人数。
 普段は気にしていなかったのだが、このメールは一斉送信で送られている。
 そのため送信相手を見れば人数がわかるのだ。
 そのことに気づくのが遅れてしまったが、
 気づいたからには確認しない手はない。
 結依は送信されている人数を確認するため、
 すべてのメールアドレスを表示した。
 その数、自分を含め十二人。
 十二人もの人間がこのわけのわからないゲームに巻き込まれているというのだ。

27:如月ちあ@ ◆NLsI:2013/08/23(金) 17:07 ID:WRs







 内容も、主催者も、意味も、目的も。
 何もかもわからないゲームに参加することを余儀なくされている人間が、
 この広い世界の中に、おそらく日本の中に。
 それもこの県の近くに。
 自分たちを含めて十二人もいる。
 その事実は、ゲームに対する恐怖心を煽る。
 結依の背筋には一筋の冷や汗が流れた。
「ゆ、結依……、これ、本物……だったんだね……」
 陽菜は苦笑いしながら。
 しかし引きつった苦笑いを浮かべながら、
 携帯を持ったまま硬直している結依に話しかける。
「どうしよう……、なんなのこれ、もうわけわかんない……!!」
 さっきまでなんともなかったはずなのに突然陽菜が大声を出す。
 それは今まで我慢してきたものが
 どれほどに大きく、陽菜の心を占領してきたのかがわかるほどだった。
 結依はそんな陽菜とは対照的に落ち着いた声を発する。
「とりあえず、準備して。私ん家行ってから考えよ」
 落ち着いた結依の声に、陽菜も少し落ち着きを取り戻した。
 静かに浅く頷くとまた準備を再開する。

 
 今日は八月九日。
 開始日は明日だ。

28:ちあ@ ◆NLsI:2013/09/25(水) 23:02 ID:WRs







 結依の家に着くとあらかじめ連絡してあったためか母親が出迎える。
 陽菜を自分の部屋に上げると、
 結依は母親に「今日は部屋に来ないで欲しい」と告げた。
 もちろん、理由は明日のゲームのための準備だ。
 一人でも関係のない人間を巻き込むわけには行かないという結依の結論だった。
 不思議がりながらも母親は結依の申し出を了承してくれて、
 用があれば呼ぶように、と告げるとリビングに引っ込んだ。
 二階の突き当たりにある自分の部屋に向かう最中、
 結依は震える体をいなすように両腕で二の腕をさすりながら歩く。
 陽菜といるときは頼もしく、
 落ち着いた雰囲気を常にまとっている結依。
 しかし、今回のことはそれができなくなるほどの恐怖だ。
 陽菜が自分の姿を認識できる範囲にいなくなればすぐに体は振動を始め、
 目が回り危うく倒れそうになる。
 そんな姿を絶対に見られてはならないと、心に誓いながら
 しかしそんな意識とはうらはらに体は震えを止めることを知らない。
 そんな自分を心の底から情けないと思い、
 同時に結依は陽菜との出会いを思い出していた。
 しかし回想できるほどの道はなく、すぐにたどり着く自分の部屋。
 いつも見慣れているはずの扉が、ひどく大きく重く見えた。
 震える手でノブに手をかけ、力を込めずに下に引く。
 いつもの要領で簡単に開く扉が、今日はとても恐ろしく思えた。


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