あなたに贈るラブソング

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1:ゆず:2013/05/05(日) 13:41 ID:h1o

…余命半年。
「嘘でしょう先生?先生?ねぇ先生!」
私は椅子からバッと立ち上がり、暗い顔をしてうつむく医者の肩を鷲掴みにして揺らした。
「…奇跡を信じましょう。」
そんな。
嘘よ…。
「それでは。」
医者は看護師と行ってしまった。
そんな…。私の愛する人は、あと半年、十月に、死んでしまう…の?

2:匿名さん:2013/05/13(月) 16:19 ID:h1o

「先生、なんて?」
言えるわけがない。できるだけ不安にさせないように明るい顔でニコリと笑った。
「しっかり薬飲んでたら、大丈夫って。」
彼はほっとしたような顔になり、すぐに私を睨んだ。
「うそ、じゃねぇよな?」
「…あたり、まえじゃない…。」
演技、下手くそだと思う。でも、彼はまた笑った。
「そうだよな。」
ベットの上で、じっと前見てニコニコわらっている彼見るのが辛くて、私は横向いた。

3:ゆず:2013/05/13(月) 16:25 ID:h1o

彼の名前は、上田 恭平さんという。中一のころから好きだった。
高校が同じだったから、勇気を振り絞って告白した。
好き。
すると、恭平さんはにっこりわらってお願いします、と言ってくれた。
付き合い始めてもう二年。
あと一年で高校も卒業だけど…。

私がもっと早くに、気づいてればよかったんだ。
今考えたら、恭平さんはよく胸を抑えていた。
「いたい。」
とつぶやいて。でも、気にしてなかった。

4:ゆず:2013/05/13(月) 16:33 ID:h1o

そして、高二の二月の休日。
晴れ渡った空の下、恭平さんは私を公園に呼び出し、まだ裸の桜の木の下でキスした。
始めての、キス。
「好きだよ、美月。」
照れて言う姿を、しっかりと覚えている。
その時、とつぜん視界から恭平さんが消えた。どさっと音がして、地面にうつ伏せに恭平さんが倒れた。
「大丈夫だから、心配しないで…。」
と言う顔は青白くて、手は痙攣していた。
「救急車呼ぶから待ってて!」
急いで公衆電話に向かって走った。救急車を呼び、野次馬をふりのけて救急車に乗り込んだ。
病院で、始めて知った。
恭平さんは、親がいない。保護者がいない。
両親が行方不明、だという。親戚もいない。何も知らなかったんだと悲しくなった。
「がんばって。」
私はそう言って励ますしかない。

5:ゆず:2013/05/15(水) 18:23 ID:h1o

高校三年生になった今でも、恭平さんの病は治らない。
「死なないから。」
と言って入院した恭平さんだけど、あと、半年で…。
辛くなる。
「岸本さん。」
看護師さんにまた、呼ばれた。
「は、はい。」
「お母様から、お電話です。」
お母さん。恭平さんの前でお母様なんて言わないでほいしいよ。恭平さんはお母さんがいないのに…。
「は、はい。…じゃ、ちょっと待っててね。」
「うん、ゆっくりしてきていいよ。」
「ありがとう。」
恭平さんは、相変わらず笑顔。
嘘をついて、よかったのかな?

6:ゆず:2013/05/15(水) 18:28 ID:h1o

うつむいて看護師さんのあとをついて行った。
もしかして、この看護師さんも実はテレビ番組のスタッフで、恭平さんも実はタレントとかで、私をドッキリ仕掛けてるんじゃないの?
と、思う。
本当ならどれだけ早くネタバラシしてほしいか。
「こちらです。」
ご丁寧に、受話器を渡してくれた。
カウンターの中には、ピンクの服を着た女の人がたくさんいる。
この人たちは、何十人もの死を見てきたんだろうか。
「…もしもし?」

7:ゆず:2013/05/15(水) 20:29 ID:h1o

『美月?美月ね?』
「そうだけど。」
『もう、あなた何時だと思ってるの!もう七時よ。』
お母さんには、彼氏が病気だということは伝えている。なのに、七時だからといって電話してくるなんて…。
「恭平さん、大変なの。どうしてそんなこというの?」
『門限は七時よ?きちんと守りなさい!』
もう、知らない。
大切な人の命の炎が消えかけているのに、それを放っておいて自分だけ帰るなんて最低なこと、できない。
『ねぇ、美月?美月、答えなさい!』
どうしてお母さんは分かってくれないんだろう?
『お父さんも怒ってるわよ!美月!』
受話器を耳から離し、ガチャンと切った。
「ありがとう、ございました。」
看護師さんに言って、病室へ向かった。

8:ゆず:2013/05/15(水) 20:36 ID:h1o

「おふくろさん、どうしたの?」
「…ううん、心配性なのよ。」
すると恭平さんは少し黙って、ゆっくり首を振った。
「心配してるのは、美月のことが好きだからだよ。俺みたいに病室暮らしになってしまわないように、変な人に誘拐されないようにってことなんだよ。帰りなよ。」
「…でも。」
「ごめんね、俺がちゃんとしてればよかったんだけど。じゃあ頼むよ。俺だって心配なんだから。美月が好きだから。」
好き、なんて、あと何回聞かせてくれるんだろう。
「ありがと。」

9:ゆず:2013/05/16(木) 21:51 ID:h1o

こんなにも言ってくれて、帰らないとは言えない。
「じゃあ…、また明日学校帰ったらすぐくるね。」
「忙しいんでしょう?無理しなくていいからね。」
優しさに、涙が出そうだった。
「大丈夫だよ。恭平さんも、早く治ってよ!」
もしかして、治るんじゃない?
だって、こんなに元気だもん。絶対治るよ…。
「もちろん!」
「私も頑張るからね。おやすみ。」
「おやすみ。」


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