キャット&キャット

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1:伊緒:2013/05/08(水) 23:34 ID:txc

ねえ、知ってる?


常に女の子も、

常に冷静な男の子も、


裏じゃあにやって笑ってたりしてさ。



「面白いじゃん。やろうよ」って

「面白ぇな。やろうか」って



夕暮れを眺めて、呟いてた。

2:伊緒:2013/05/09(木) 23:19 ID:eoY

えっと、作者の伊緒です。
続けられるか判りませんが、宜しくお願いします。

3:伊緒:2013/05/09(木) 23:33 ID:eoY

プロローグ


時計の長針が、午前2時丁度を差す。
そして届く、1通のメール。


「おめでとう御座います。
 試験に合格されました」

単純明快な文頭。
其れを見て、私は思わずにやけて終う。
傍に居る君も、口の端を歪めて笑っている。


「bS28 アカネ
 bS29 アオイ」

片言の文字が躍る。

「今此の時刻から、貴方方は当組織の一員です。
 自覚とルールをお忘れず」


私はもう、衝動を抑え切れない。
ソファのクッションをばふばふと叩き、うーうーと呻く。
其れを君は不機嫌そうに、でも少し嬉しそうに見ている。

顔を上げ、眼を合わせる。


「わくわくしてる?」

「そっちもな」


なあんだ。
やっぱり、考えることは同じみたい。


此れから絶対面白くなる。
贅沢な程に、ね。




「第1の課題は、決まり次第メールでお知らせします。
 其れまで、心のご準備を――――――」


メールはそう、静かに告げていた。

4:時乃 ◆dOO2:2013/05/10(金) 18:22 ID:5zI

面白いです!
頑張ってください。

5:伊緒:2013/05/10(金) 23:23 ID:UTg

あ、有難う御座います!
頑張りますので!!

6:伊緒:2013/05/11(土) 00:26 ID:UTg

FILE1 ワンクリック

心臓がさっきから鳴っている。
どくん、どくんと、規則正しく。

「緊張してるの?」

君の声だ。

「当たり前だよ。
 だって初めてだし………」



私と君は、今日、此処に引っ越して来た。
正確に言うと一週間前だけど、学校に通い始めたのは今日が最初。
転校なんて訳分かんないし、1人だし。

違う。1人じゃない。


「まだ時間は有るから。
 落ち着け。茜」


君が、私の名前を呼んだ。



瑞月茜。14歳。
特に面白味も無い、何処にでもいる女子中学生。


「………うん。
 ところで、蒼は大丈夫?」
私は君の名前を呼ぶ。



池月蒼。14歳。
特に面白味も無い、何処にでもいる男子中学生。


「何が?」

ほら、こう返すんだ。
きょとんとした顔で、無邪気に。
思わずくすっと笑ってしまい、一瞬で不機嫌になる。

「ごめん。ごめん。
 ちょっと想像しちゃった」


がららと、事務室のドアが開いた。

「瑞月さんと池月君、此方へどうぞ」


担任の先生かな。
若い女性だ。

「元川と言います。
 之から宜しくね」
「よっ 宜しくお願いします」「宜しくお願いします」

そして流れの通り、教室へ案内される。


愈々だ。
やっぱ緊張は解れない。


でも蒼が横に居るから、いいかもしれない。

7:麗愛:2013/05/11(土) 00:44 ID:RNw

面白いです!!
なんか、茜と蒼って名前に反応しちゃいました(笑)

8:伊緒:2013/05/11(土) 00:51 ID:UTg

麗愛さん、有難う御座います。
何か実体験が御有り何ですか?

9:伊緒:2013/05/11(土) 01:01 ID:UTg


「瑞月茜です」

「池月蒼です」


クラス中がざわめく。
何となく、居心地が悪い。


「皆さん、仲良くしてあげて下さいね。
 席はあそこです」



運が良いことに、窓際の一番後ろだった。
通路側が私で、窓側が蒼。
つまり、隣の席。

「初めまして」

前の席の子が、声を掛けて来た。
「あたし、真野杏莉。2−Bの学級委員長よ。
 後で校舎案内するから、宜しくね。
 他にも困ったことがあれば、何でも訊いて」
口調からして、頼りになりそうな子だ。
にかっと笑みを浮かべ、再び前を向く。
だけど、すぐにまた振り向いた。

「あの子たちもつい一週間前に引っ越して来たんだよ」

指差していたのは、廊下側の2人席に座った子たちだった。
何やら楽しそうに談笑しているが、聴き取れない。



「其れでは、今日も一日頑張りましょう」
元川先生の挨拶で、HRは終わった。
生徒たちが1時間目の準備に取り掛かる。
私は気付いた。

「蒼、私たちの教科書って………」
「もうあるよ」

蒼が鞄から引っ張り出す。
1時間目は数学。
転校早々、授業中寝てしまいそうだ。

10:麗愛:2013/05/11(土) 11:02 ID:RNw

実体験といいますか……ロマンチカクロックという漫画の主人公二人と同じ名前だ!って(笑)

11:時乃 ◆dOO2:2013/05/11(土) 11:44 ID:5zI

10 それは私も思いました。
   ロマンチカクロック大好きw

12:伊緒:2013/05/11(土) 22:58 ID:sRg

ロマンチカクロック………知らないです。
今度本屋で探してみますね。

13:伊緒:2013/05/11(土) 23:49 ID:sRg






私と蒼は、一緒に住んでいる。
引っ越す前は違ったけど、今は同じマンションの一室。

私はベッドに鞄を放り投げ、蒼は自分のPCを起動させる。
序に自分の身体も放り投げた私は、天井を見ながら物思いに耽る。




あれは―――――そう、引っ越し初日のことだったかな。
電車で此のマンションに着いたら、もう家具とかは全部配置されていた。
蒼がPCを弄り始めて、私は暇潰しに漫画を漁る。
そのとき、蒼が私を呼んだ。


『メールが来てる。
 茜と僕宛』
『私も?』
珍しいこともあるものだ。
『何々?』
蒼がメールアイコンをクリックし、文面が現れる。


【貴方方は、我が組織の入団試験を受けることになりました。
 規定の時間にPCを起動させ、当組織からのメールを御受け取り下さい。
 そして課題を熟し、再びPCを起動させて下さい。
 合格 or 不合格―――――dead or alive】


最初は悪戯だと思った。
性質の悪い悪戯――――――。
合格しなかったら死ぬなんて、そんなの理不尽過ぎる。
でも蒼は課題を読んだ途端、言ったんだ。


「こんなの簡単だよ」



「へっ? 何、蒼」
「次の課題。もう来てる」
「何々?」

新たに受信したメール画面には、次の課題。


【盗まれたのか判らない。けれど本物は其処に在る――――――。
 上記の条件を満たし、1つ物を盗み出せ】


「うわあ、難しい」
「簡単だろ。
 もうシミュレート完了だ」
「相変わらず蒼の思考回路は分かんないや。
 でも、期待しとくよ」
「し過ぎない程度にな」


蒼は全てを単純に解いてしまう。
入団試験も、簡単に解いてしまった。

【次の動画を再生させ、全てを脳裏に焼き付けろ。
 そして推理し、探偵より先に謎を解き明かせ】

よくある様な問題だとは思ったけど、難易度は半端じゃなかった。
証拠が一切無い。
つまり、視覚情報だけで解答に辿り着かないといけない。
でもそんなこと、蒼にとっては何の問題にもならないんだ。
一通り見終わると、真相を口にする。
蒼が如何ですかとPCに尋ねると、メールが―――――――。

【おめでとう御座います。
 貴方方は当組織の試験に合格されました】



そして私と蒼は、何の目的で運営しているのかも判らない組織の一員になった。
危険かもしれないけど、其れでも良い。

日常は、余りにもつまらない。
だから良い機会じゃん?

謎に塗れた組織だけど、目的やらメンバー数、そんなのは如何でもいい。
此の組織に居続けることで、私たちの日常は面白く変化する。
其れが、一番のメリットだ。




「今夜決行するぞ。
 準備は良いな?」
「了解。
 何時でもOKだよ」


さあ、面白いゲームの始まりだ。

14:伊緒:2013/05/12(日) 01:33 ID:Opk

次の日。
いつも通り学校があるから、早く起きる。
でも朝は苦手………ふああ〜。

「……お早う」
蒼が寝呆け眼で起きて来る。
右目を擦りながらキッチンに行き、パンを焼き始めた。
私はテレビを点ける。


『今朝未明、渦尾町渦尾美術館から宝石が盗まれました』

画面にテロップが躍っている。
そしてアナウンサーは続ける。

『国内最大級のクリスタルが展示ケースから出され、大量のダミーに紛れて床に転がっているという
 異例の犯行現場です。
 ダミーは展示会場の床を埋め尽くす程の量で、現在本物はどれなのか発見されておりません』

蒼が視線をテレビに向ける。
見つめる目が鋭くなっていて、まるで夜目を利かせた猫の様。

『警察は宝石発見と犯人逮捕を急ぐと言うことです』

「そりゃそうよね。
 斯ういうことする犯人を逮捕するのが、警察の仕事だし」
「でも逮捕されないんだろ。
 ……僕等は」



そう――――――私たちは。



「でも蒼、何でこんなことしたの?
 ダミーいっぱい作ってさ……組織も大変だよ」
「課題だから其れも承知だと思うけどね。
 でも宅配も使わずにドアの前に置くのは、いくら何でも無防備だろ」
「其処突っ込んだって仕方ないでしょ。
 で? 何であんな惑ろっこしい方法選んだの?」
テレビを消し、サンドイッチを口にしながら尋ねる。
蒼は食べ掛けのトーストを置いた。

「組織の条件はこうだ。
 [盗まれたのか判らない けれど本物は其処に在る]
 つまり、如何いう形を残して盗みをしろと言っているのかが判る」
「私は分かんない」
「考えようによっては違う方法もあるが、僕は一番簡単な方法を選んだ。
 まずケースから宝石を取り出し、大量のダミーに紛れ込ませて床に置く。
 此の時点で、[盗まれたのか判らない]の条件がクリア出来る」
「そうか。
 ケースからは出されてるけど、床に沢山置いてあるんじゃダミーか本物かぱっと分からないもんね」
蒼が頷く。
「同時に、[けれど本物は其処に在る]の条件もクリア出来る」
「ちょっと待ってよ。まだ残ってるじゃない。
 [上記の条件を見たし、1つ物を盗み出せ]
 忘れてた訳じゃ無いよね!?」
「落ち着けって。大丈夫だから。
 いいか? 組織は1つ物を盗めと言って来た。
 何も、標的の宝石を盗めとは言われてない」
「え? じゃあ………」
「物なら何でも良いんだ。
 茜はすっかり忘れてたから、僕が盗って来た」
何時の間に!?
本当に気付かなかった。
「ほら、此れだ」

そう言って蒼が机の上に出したのは、1枚のチケット。
表には、「石と色のアート 特別ペアチケット 渦尾美術館」と印刷されている。

「此れって………!」
「受付カウンターを覗いたらあった。
 2000枚セットで置いてあったから、多分バレないと思う。
 バレても美術館側が紛失したか製造ミスで済むだろ。
 こっちの面でも、[盗まれたのか判らない けれど本物は其処にある]の条件はクリアだ」
口の端を歪めて言う蒼。
心の底から、楽しんでいる。

「有難う……でも何で、チケット?」
「侵入したとき、茜騒いでただろ?
 宝石が綺麗って。
 だから………ゆっくり見れたらいいなと思って」

そっぽを向いて言う蒼。
私は嬉しさで、チケットを握り締めてしまう。

「事件のほとぼりが冷めたら、行こう。
 2人で」

少し頬を染める蒼。
数秒後、こくんと頷いた。

15:麗愛:2013/05/12(日) 09:03 ID:RNw

本当に面白い!
てか、よく考えられるねそんな課題に方法!!
すごい思考能力だよ〜(><)

16:藍:2013/05/12(日) 15:48 ID:bAY

初めまして、伊緒さん。
面白いですね、これからも見ます!

17:伊緒:2013/05/13(月) 00:37 ID:VBM

ええと、訂正です!
蒼の実行計画を話す台詞で、漢字の変換ミスが有りました。
「下記の条件を満たし、1つ物を盗み出せ」→「下記の条件を見たし、1つ物を盗み出せ」
みたしが違いました。申し訳有りません。
斯ういうのは常に気を付けているんですが、見落としてしまったのが理由です。
済みませんでした。

to麗愛さん
簡単ですよ。
方法はこんな感じにやりたいなって言うのを考えて、(つまりは理想です)
課題は先に考えた方法に合う様に、難易度高めな単語を組み合わせて書けば完了です。
推理小説とかもそうやって考えれば良いんですけど、難しいですよね。
麗愛さんも小説をアップされてますよね?
役立てて頂ければ幸いです。

to藍さん
初めまして、藍さん。
有難う御座います。
御期待に応えられる様、誠心誠意頑張っていきますので、宜しくお願いします。
今のあたしの表情が読み取れていれば幸いですが、読み取れていない場合取り敢えず殴りますので、御覚悟を。

18:伊緒:2013/05/13(月) 00:57 ID:VBM

FILE2 ブラッドカラーミュージアム

私は昔から、此の行事だけが嫌いだった。

学校、又は生徒朝会。
中庭に全生徒、全教師が集合し、生徒会からの報告や先生のお話を長々と聞く、面倒な行事。
其れは此処、三加和学園でも有るらしい。

「無いかなと思って期待してたのに………」
「無い訳無いだろ。
 逆に無かったら驚くよ」
「蒼はそうでしょうね。
 私は此れ、大っ嫌いなのよ」
「知ってる。
 其れに、僕も嫌いだ」
思えば、朝会が好きな生徒なんて居ないかもしれない。



此処かなと背丈を判断され、適当に列に突っ込まれる。
後ろと前は、雑談状態で喧しい。
人混みも私、嫌いだなぁ………


「分かったぁ。
 じゃあ殴るね」

行き成り物騒な台詞が聴こえて来た。
空耳かと思えば、効果音を合成した様に響く衝突音。

「いや、待て。
 何で之ぐらいで殴るかな」
「当たり前よ。
 だって気に入らないから」
「自分が気に入らなかったら殴るのか!?
 本当滅茶苦茶だな」
「悪かったね。
 あたしはいつもこんなだよー」
「ああ。そうだな。
 っつか何時もよりかパワーアップしてないか?
 ……痛い」
「そうかな?
 あ、血が出てる。
 ほっぺ何処で擦ったの?」
「お前が殴ったんだ!!
 少しは力の加減を覚えろ!!」
「あたしは左手手加減出来ないって知ってるでしょ。
 絆創膏貼ってあげるから、我慢して」
「…………
 痛ぇっ! だから力加減しろって!」
「ちょっ 喋んないで!
 絆創膏くにゃってなる!」
「知るか!」

口喧嘩に発展する会話。
其れは私の後ろで繰り広げられていて、振り向かなきゃ声の主が見えない。
けど、聞き耳を立てていると知られたくない私は、振り向く訳にはいかない。




そうこうしている内に、教頭が持つメガホンが鳴る。
生徒は一斉に起立した。

19:伊緒:2013/05/13(月) 23:45 ID:NFM





私と蒼は教室に脚を踏み入れる。
やっぱりまだ人目を引く様で、前の席の人と一瞬目が合った。
其れでも私たちは我関せずで席に着く。


「あー ほら、やっぱ絆創膏くにゃってなってるじゃん」
「如何でもいい」
「あたしは良く無いよ。
 間違って粘着部分が傷口に貼られてたら、剥がすとき痛いんだよ?」
「あ、それは嫌だ」
「でしょ?」



朝会のときの2人だ。
丁度入口に居て、此処からだと良く見える。
前髪を横髪と同じ長さにし肩で切り揃えた女の子と、胸元まで伸ばした髪を横髪を残して乱雑に結んだ男の子だ。

珍しいな。
男の子なのに、髪を伸ばして結んでるなんて。



「皆さん、お早う御座います」
先生が入って来る。

「今日は研修会なので2時間授業を受けたら下校です。
 部活も有りません。
 折角の休みを、皆楽しんでね」

チャイムが鳴った。
ふと蒼を見ると、日向でうとうとしている。


「蒼、HR終わったよ。
 起きなきゃ」
「………あぁ、うぅん…………」

駄目だ。起きてくれない。
仕方なく、一言呟く。




「午後のこと、忘れないでよね」


其れは効果抜群で、蒼は微笑みながら返事を返してくれた。

20:伊緒:2013/05/15(水) 23:47 ID:eho


「やっぱじっくり見ると綺麗だなぁ〜」

午後、私と蒼は美術館に居た。
此の前盗って来たチケットで、石と色のアート展に堂々と足を踏み入れる。


「あれから1ヶ月経ったんだ。
 もう展示されてる筈」
蒼のナビでメインホールに向かうと、在った。
前回の標的――――レイン・クリスタル。


「綺麗………蛍光灯の下だと、淵が光ってる」
「ダミーじゃ誤魔化せないな。
 今更だが」
其々感想を漏らす。
すると、宝石がぴかっと光った。

ドド―――ン!!

そして、空に響き渡る轟音。


「雨、酷くなって来たんだ。
 ってか、雷凄かったね」
「此れは落ちたな………」
背筋に悪寒が走る。
ケータイを見ると、時刻はPM5:28。

「そろそろ帰んないと」
「あぁ、そうだな」


私と蒼は親が居ない。
2人だけの家だけど、何となく早く帰りたい。



出口を通り抜け、自動販売機で飲み物を買う。
帰りの往復切符を取り出した。
私は買ったカフェオレを飲みながら、自動ドアを潜る。


それは、私と蒼が、完全の外に出たときだった。




ドオオオオオンっっ!!
辺りに轟音が響き渡る。
後方からは凄まじい旋風が吹き抜け、私の髪を巻き上げる。


「何―――!?」





振り向いた私が見たのは、爆発で崩れ落ちる美術館だった。

21:伊緒:2013/05/17(金) 18:31 ID:eXw


「嘘………!?」

呆然として立ち尽くす私たち。
すると、蒼のケータイが鳴った。


【此の騒ぎを片付けろ】


――――はい?


「マジですか……?」
「マジかよ………」

私たちの台詞が被る。
蒼が呟いた。

「此れが、次の課題……?」
「でも此のメアド、絶対組織よね」
「ああ。
 だけど、幾等何でも無茶だろ」

ケータイが再び鳴る。

【貴方方は我が組織の試験に合格されたのです。
 此の程度、簡単に始末出来る筈でしょう?】

「あの謎を解いたのは蒼よ!?」
思わず叫んでしまった。
途端にメールが届く。


【なら貴女も組織の一員だという証拠を見せて下さい。
 bS28 アカネ
 勿論貴男も頑張って下さいよ。
 bS29 アオイ
 期待しております】


何故か、にや付いてしまう。

そうよ。私も此の組織の一員。
やってやろうじゃないの――――――

「やっぱ茜はこうでなくちゃな」
何故か頭の上にぽんっと手を置かれる。
私……そんなに子供?
「ああ」
頷いて欲しくない。
「猫被り取るから、やろう」


「了解―――――アカネ」
「行くよ――――アオイ」



私たちは振り返った。
炎を纏い煙を上げる、美術館。
瓦礫の中から聴こえて来る泣き叫ぶ声や喚き声。悲鳴。奇声。

そして私たちは歩き出す。
ゆっくりと、だが、しっかりと。



作戦開始――――――!

22:伊緒:2013/05/20(月) 23:46 ID:HEQ




ザザ ザザザ……ザザザザ……………

「アオイ? 聴こえる?」
『……かね、アカネ……ザザザ………』

アオイは別れる、前通信機と真っ黒のジャージと靴を預けてくれた。
何でも、組織が前回ダミーを送り付けて来たときに一緒に来たらしい。
通信機は高性能らしいけど、ノイズが混じり、良く聞き取れない。
でも確かに、アオイの声が聴こえる。

『……アカネ……電源……入れ………?』
「え、何?
 アカネ、電源入れた? って?」

不思議と判ってしまう自分自身が恐い。
そういや、入れて無かったっけ。
耳元に手を伸ばす。


『――――アカネ、聴こえるか?』


「聴こえるよ………アオイ」
何故が酷く安心する。
じわりと、涙まで滲んで来そうだ。
『準備は良いな?』
「あ、ちょっと、待って」

ズボンのポケットに手を伸ばし、中から取り出した物。
髪留め用の黒いゴムだ。
横髪を残し、後ろで結ぶ。


「OK――――アオイは?」
『……よっと、出来た。
 準備万端だ』


何で2人共、髪を結ぶかって?

「アオイ、本気よね?」
『少なくとも、僕はそうだ。
 アカネは如何だ?』
「本気に決まってるじゃない。
 私もよ」




「じゃあ最初、何処から当たる?」
『救急車が計4台来てる。
 重軽傷者を調べて、グループ分けするぞ』
「了解」

アオイからの指示を受け、瓦礫の間から侵入する。
煙は特注のマフラーで防いでいるから大丈夫。


「皆さん、此処からは私の指示に従ってください」
当然、ぎょっとして見られる。
其れでも、私は怯まない。
「1人1人傷の具合などを診ますので、其の儘じっとして居て下さい」
私は、人々の中に降り立つ。





相変わらず辺りでは、サイレンが煩く鳴っている。
其れを振り払い、私は使命に没頭する。
ジャージは所々鍵裂きが出来、解れている。
でも、気にしてなんか居られない。


ふと、アオイの声が聴こえた様な気がした。

23:伊緒:2013/05/20(月) 23:50 ID:HEQ



『アカネ!』


違う。幻聴じゃない。

「如何したの!? アオイ!」
『大変だ。
 来い』

アオイが、助けを求めるなんて…………
私は一瞬息を止める。

其れだけ大変なことが起こってるって言うの――――――?



『僕が立ってるのが見えるか?』
「あ、うん。見える」
『なら、来い』

考えてたって仕方無い。
とにかく、行ってみよう。

24:伊緒:2013/05/21(火) 18:22 ID:PjU




「アオイ!」

私の声に、彼はぱっと振り返る。
足元には、幼い少女が居た。

「此の娘のこと?」
「大変なのは、母親の方だ」
「え? 何処に………」

呻き声が聴こえた。
発声元は―――――瓦礫の、下。


「まさか、此の下に!?」
「其のまさかだ。
 アカネを呼んだのは………」
「アオイだけじゃ、持ち上がらないからでしょっ」
私は瓦礫を持ち上げようととしゃがみ込んだ。
途端、ジャージの裾を掴まれる。

「お願い、お姉ちゃん!
 ママを助けて………!!」

涙でぐしゃぐしゃになった顔。
其れでも、自分の母親を救おうと必死に助けを斯う姿。

嫌でも思い出す、幼い頃の記憶。
でも今は、押し留める。

「大丈夫。
 絶対、死なせない」
女の子の頭を撫で、私はコンクリ片に手を掛けた。
「アオイも手伝ってよ」
「当然だろ」



1個、また1個と瓦礫を放り投げる。
額から汗が流れ、ジャージの袖で拭った。
「アオイ………そっちは?」
「もう少しで、下半身が見え始めるってところだ」
「まだまだね………私も、上半身が見えるか見えないかってとこよ」
アオイが顔をこっちに向けた。
「アカネ、腕取れるか?」
「え? 取れるけど………」
「急いで脈を計れ!」
「―――!」

右腕を取り、手首に指を当てる。


とく……ん とく……ん


「脈がしっかりしてない!」
「拙い………アカネ、早くしろ!!」

再び作業に没頭する。
女の子は救急隊員に避難させられて、居ない。
ということは、もうそろそろ助けが来ても可怪しく無いんだけど――――――……


「アカネ! ぼうっとするな!!」
「分かってる!! ―――――!!!」


気付いた。
此の方法なら、今の状況を一発で――――――!

「アオイ……ちょっと来て」
「何だ!?」

そう言いながらも、走って来るアオイ。
目を真っ直ぐ見据えて、言った。


「強硬手段に出るよ」

言葉が出ないアオイ。
私は続ける。

「此れ見て。
 上半身が僅かに見えるのは、コンクリ片に隙間が有るから。
 でも、よく見て」

アオイがしゃがみ込む。
そして、息を呑んだ。


「此れ―――――1つの大きな瓦礫か!!」
「正解。
 だから、此れを払いのければ上に乗っているコンクリ片も纏めて退けられるの。
 手伝って」
「了解」

右腕傍から出ている、大きな瓦礫の一部を掴む。
タイミングを合わせ、握った手に力を込める。

「「せえのっ」」



ガラガラと、瓦礫が崩れた。
そして聴こえる、小さな掠れ声。



「有、難う…………」

25:伊緒:2013/05/22(水) 17:27 ID:rS2

FILE3 ブラックグラッシャーズ

ぽつぽつと、雨が降り出した。
天気予報………外れてるよ。

「如何したもんかな………」
隣の席で蒼が呟く。
だらしなく机に寝そべり、徐々に曇り出す窓ガラスを指で突いている。
「何書いてんの?」
「読んでみれば?」
か、だ、い、が、こ、な、い――――――。
「確かに。
 最近めっきり無くなったよね」
「だから退屈なんだよな………」
蒼は文字をYシャツの袖でくしくしと消し、うあーと唸って机に突っ伏した。

―――――?

振り返ると、女の子が私を見ていた。
瞬きもせず、私を目視している。
其の瞳は何処か挑戦的で――――――――

探られている。
そう思った。


「茜?」
「あ、うん………」

少しして、男の子が彼女に話し掛ける。
女の子は何事も無かったかの様に微笑み、鞄を手にし席を立った。

あのときの2人だ。
朝会のとき、場違いな言い争いをしていた、あの。
何だ。吃驚した。
余計な気を張り詰めて損したな。

「僕たちも帰るか」
蒼が鞄を掴み、椅子を引く。
「でも私……傘無いよ?」
「………僕のが有る」
ぶっきら棒に言う蒼。
あれ………
「蒼、頬赤いよ?
 熱でも有るの?」
「なっ……ねえよ!」
何故か不機嫌になる。

早足で教室を出て行く蒼を、私は追い駆ける。



背後で、メールの着信音がした。

26:伊緒:2013/05/28(火) 23:27 ID:avI




「蒼!」
私が叫ぶと、彼は振り返る。
其の無垢な不思議そうな顔に、私は興奮と苛立ちと感情全てをぶつけた。

「課題!
 課題来たよっ!!」

一瞬にして緊張感が張り詰める。
私がケータイを差し出すと、蒼は徐に受け取った。

【ブラックグラッシャーズを探せ】

「………此れだけ?」
2人してハモってしまう。
だって、こんな課題――――――
「可怪しいよな……こんなの」
「うん……」
怠けているのかなとか、一瞬考えてしまった。
でも取り敢えず――――……
「蒼、此れが次の課題何だよね?
 だったら、如何するの?」
「熟すしか無いだろ。
 まさか、茜はやらないとか………」
「そんな訳、無いでしょっ!!」
余りに酷い台詞だ。
思わず剥れてしまう。
すると蒼は何故か可笑しそうに笑う。

「何?」
「いや……何でもない。
 其れより、課題如何する?」
「ブラックグラッシャーズ―――――黒い眼鏡?」
「ああ………」
黒い眼鏡を掛けた人なら、結構居るなと考える。

そう言えば、あの子たちも眼鏡黒かったっけな。
探る目をしていた女の子――――全てを見つめる目をしていた男の子。
今のところ関わりは無いけれど―――――――


何処かで必ず、繋がっている。
私の勘は、そう告げている。



「でも組織のことだから、きっと裏が有る筈だよな」
蒼が言う。
賛同の合図に、私は首を振った。
「でも調べるにも、手掛かりが此れだけじゃあ………」


次の瞬間、ケータイは鈍い音を立てて振動した。
そして現れる、電子文字。

【メモを見つけ出せ。
 眠っている秘密を暴け】



其れは初めての、3個目の課題だった。

27:伊緒:2013/05/30(木) 00:02 ID:GEQ





次の日。
私と蒼はふらふらと歩道を歩いていた。
半分は眠気。半分は緊張。
私はケータイを取り出す。

【メモを見つけ出せ。
 眠っている秘密を暴け】

2つ課題が届いたのは、今回が初めてだ。
どちらを先に実行するか話し合い、決めた。
此の課題を先にクリアすると。
何しろ、ただ黒い眼鏡を探せと言うのも無茶過ぎる。
手掛かりが何も無いんじゃ探し様が無い。
蒼は2つ目のメールに、鍵が隠されていると推理した。
でなければ、一度に2つ届く意味が判らない。

そして、今に至る。


「アカネ、大丈夫か?」
「何が?」
「暗いから、躓いたりするかなって」
「私其処までドジじゃないわよ。
 アオイこそ大丈夫なの?」
「心配の仕返しか。やるな………」
くだらない会話だ。

ちなみに今、私のケータイのデジタル時計は。



深夜0時25分を指している。

28:伊緒:2013/05/30(木) 00:16 ID:GEQ

「本当に大丈夫なの………?」


私たちは、此れから学校に忍び込む。
何故学校か? ―――――其れは私も思う。
蒼によれば、組織からの課題が学校で届いたのは、同じく初めてのことらしい。
先生に見つかればたまったもんじゃないと思っているのは、どっちも同じみたいだ。
でもそんな危険を冒してまで、何故学校で届いたか?
蒼は斯う推理する。
ただでさえ珍しい、2つの課題が一気に届いたのが同じく初めてとなる学校なら、其処が舞台になる可能性が高い。
無駄骨になるかもしれないが、一応と言うことだと。
おまけに昼より夜の方が調べやすいからと、蒼は無茶を言う。


「私たち怪盗じゃないのよ………」
「前に泥棒やっただろ」

今は平成の怪盗とか言って騒がれてる、怪盗ジョーカーとか怪盗シャドウとかが主流なのに。
私は暗闇の中、かなり的外れなことを思う。


「よし、取り敢えず此処から侵入だ」
アオイは目の前の網柵に手を掛ける。
ゆさゆさと2、3度揺らすと、かたんと音を立て開いた。
網が枠から外れたらしい。
「帰るときにちょっと細工をしておいた」
「何時したの? 私も居たのに」
「忘れ物って言って一回中戻っただろ? 僕」
「嘘だったのね!」
………と喧嘩を始めても意味が無い。
私は深呼吸で怒りを鎮め、1人枠の中を潜った。

29:伊緒:2013/06/07(金) 20:54 ID:Kg2

アオイは、取り敢えず職員室に行こうと言う。
私は多分大欠伸をしていたかな。


カチッ
電気を点ける。
蛍光灯が瞬き、大量の机が照らされた。
「何処を見るの?」
「机の上のメモが、怪しいかなと思う」
そう言えば、先生たちは何か有ると何時も付箋に書いて貼ってたっけ。
「変な柄とか紛れてたりして…………」
そう言いつつ、一番近くの席に寄る。


有った。
今初めて見た、迷彩柄の付箋が。
アオイの方も見つけたみたいで、私の方に翳して見せた。

30:伊緒:2013/06/19(水) 00:04 ID:YyE





「これだけか………」

付箋だらけの床を見て、アオイが呟いた。
いや、訂正しよう。

5枚の付箋が貼り付けられた、床だ。


「まさか5枚とはね………
 手掛かりが少な過ぎるわ」
「でも迷彩柄っつーとやっぱりこんだけしか無かったしな。
 如何したもんかな………」
首を捻っても、答えは出て来ない。
よし、思考路を変えよう。
「これさ、書いてあるの数字よね?」

私はある付箋を指差した。
右から数えて、2番目。

「全部そうだけどな」
「一々突っ込まないで。
 でも、これ何の規則性も無いように見えるよ。
 少なくとも、私の目には」
「僕の目にもそう見える」
アオイは頷くと、真っ黒な手袋を嵌めた手で付箋を取った。



今私たちが居るのは、図書室。
組織が新しく送って来たポーチに入っていたのは、最新ピッキング道具。
一番先生たちに見つからない場所だからと、鍵の掛かった扉をピッキングで抉じ開け、私たちはあっさり侵入。
そして床に見つけた付箋を貼り付け、これからの作戦会議中―――――――――。




「―――ん?」
アオイが低く呻った。
「アオイ……?」
「判った。
 多分、こうだ」


アオイの手が、其々の付箋に伸びた。
そして位置を変え、また貼り付けていく。


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