白爪草

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1:とかげ:2013/05/30(木) 17:36 ID:ffE

こんにちは!そして初めましての方は初めましてだ!
とかげと申すw

前にも小説書いてたけどやめちゃったよお(´д`;)
てなわけでこちらは本気で書きたいと思います

よろしくです☆



プロローグ


__この世に、こんなちっぽけなものが存在している。
そんな中考えたら、僕はもっとちっぽけだと思う。

ただ、それだけ。



それだけなんだ___。

2:林檎:2013/05/30(木) 17:44 ID:Uiw

とかげsって…
喧嘩上等を書いてたあのとかげs…?!

3:とかげ:2013/05/30(木) 17:47 ID:ffE

「起立、礼!」
前の方で声が聞こえる。ああ、憂鬱だ。僕は窓の方を見ながら、ぼーっとしていた。
「・・・原田」近くで、やけに低い声が耳に入ってきた。・・・・・ん?
「し、宿題忘れました!」
どっ
辺りから、笑い声が流れ出した。僕は恥ずかしさで、顔を赤くした。

__僕の名前は原田 光(みつる)。中学1年生だ。周りからは、少し変わっていてマイペースだとよく言われる。
・・・それには訳がある。小さい頃に、ある女の子に出会った。可愛いげがあって、好かれた子だった。今思えば、初恋だったのかもしれない。
___あの子は今、どこで何をしているだろう。気になって仕方がない。今日もまた、そんな時間を繰り返していく。

4:とかげ:2013/05/30(木) 17:47 ID:ffE

>>2
林檎さん!そうですよ。
あのときは、ごめんなさい!

5:とかげ:2013/05/30(木) 17:57 ID:ffE

___「ただいま」
そうは言ったものの、家には誰もいない。母はいつも通り遅くまで仕事だし、・・・父は、どこかへ逃げていってしまった。そんな時、周りはいつもこう言う。


『可哀想だねー』


そんなことを言われるのに僕はいつもへっちゃらで、だからマイペースだなんて言われるのだと思う。まあ、慣れだと思う。昔から、友達は多いより少ない方であったから。

部活は、入っていない。いわゆる、帰宅部なのだ。・・・僕の身体は、腐っているかもしれない。あの子に逢ったからかもしれない。僕は、冷蔵庫から水を取りだしながら、そんなことをひとりふけっていた。

__あの子は髪が短く、いつもあどけない笑顔を撒き散らしていた。そんなところに、僕は惹かれたのかもしれない。ただ、僕がそんなことになるなんて、まだ幼すぎたのであろう。高値の花でしかなかったのであろう。

6:とかげ:2013/05/31(金) 15:34 ID:ffE

その日、夜はカップラーメンを食べる。母が、買ってきてくれたのだ。僕はそんなものより、母の手料理が食べたかった。でも、母は仕事で忙しい。僕は、こんな女々しい自分が情けないと思った。
そんなことを考えながら、箸で麺をつかんでは、ズルズルと音を発てながら吸い込んだ。時々、スープが顔にかかり、イラついた。そんな自分に腹が立った。ふと、時計を見ると、短い針は10の位置を向いていた。そろそろ寝よう、僕はラーメンのカップと箸を片付けると、洗面台へ向かった。

7:とかげ:2013/05/31(金) 15:45 ID:ffE

カチャ・・・

僕は歯ブラシとコップの置いてあるところから、自分の歯ブラシを取ると、歯磨き粉を少し出して、小さな音を発てながら自身の歯を磨いた。


___洗面台には、ピンクの歯ブラシと、白いコップ、そして僕の緑のコップが置いてあった。無論、その歯ブラシと白いコップは、母のものであった。母が帰って来る頃には、僕はもう寝ている。__会えないのだ。






あの子のように_____。



目頭が、じわっと熱く、焦がれるようになった。僕は片方の手で、目を擦ると、水道のノブを上に上げ、歯磨きをやめた。軽くうがいをすると、今日はもうそれ以上のことはやりたくなくなった。早く寝たい・・・。疲れているのであろう。

自分の部屋に入り、ベッドに横になると、しばらくそのままじっとしていた。瞬きなど、していなかった。あるいは、無意識であったのだろう。・・・というのも、僕たちはいつも、無意識に瞬きをしているが。
はっとして、慌てて布団をかけると、ランプを消した。一度、大きなあくびをすると、今日はもうそれっきりだった。

8:とかげ:2013/05/31(金) 15:56 ID:ffE

__・・・・・僕は、目を開けた。目覚ましが鳴っている。寝ぼけ半分で目覚ましのスイッチを切ると、ベッドからゆっくり足を降ろし、のろのろと洗面所へ向かった。

キュッ 水道のノブを上に上げると、手を器のようにし、水を受け止め、顔を洗った。
ポタ、ポタと、顔から水が垂れた。心地よい水の感触。まだもう少し、感じていたかったが、朝ご飯を食べなければ・・・。濡れた顔をタオルで拭くと、リビングへ向かった。

そこにはラップのしてある目玉焼きとご飯の皿と、ペットボトルのお茶、箸、小さな紙片が置いてあった。

__『光、作って置いたから、食べなさい。』__

紙片には、そう残されていた。紙をペラッと裏に捲ると、そこには『母より』と、書かれていた。
僕は、嬉しい気持ちでいっぱいだった。ラップを剥がすと、箸を持って器を持ち、ガツガツとご飯を掻き込んだ。それは少し冷たかったが、とてもとても美味しかった。

9:とかげ:2013/05/31(金) 16:11 ID:ffE

「行ってきます!」
僕は準備を終えると、鞄を持って、元気に飛び出してきた。誰かいるわけでもあるまいのに、『行ってきます』だなんて言って・・・。
いつも通り、ドアに鍵をかけると、学校へ向かった。



__教室に着くと、自分の机に鞄を置いた。
「おい、光」
後ろから声がしたので、振り返ると、友達の悠都(ゆうと)がいた。
「・・・なんだよ」僕は愛想なくそういうと、悠都はつまらなそうな顔をした。
「なあ、今日転校生が来るんだって。確か、女子だって___」
「・・・ふうん」
転校生・・・、こんな時期に?テストだって近い。どうせ、親の転勤とかであろう。特別興味はなかったが、どんな人なんだろう、そう思った。


『キーンコーン、カーンコーン』 チャイムが鳴ると、みなが一斉に席に座った。ドアがガラッと開くと、担任の先生が入ってきた。
「な、光。山野さ、最近太ったよなー」
後ろから小声で、悠都が余計な話をしてくるのでしっしっと手をやった。
「えぇー、今日は転校生を紹介する」悠都の言った通りだ。そう思っていると、ドアがゆっくりと開いた。

10:とかげ:2013/05/31(金) 16:54 ID:ffE

___!


僕は、驚いた。少し短い髪、少々幼いが、美しい顔立ち。その姿は、まさにか弱い白爪草の花のよう・・・。繊細で、特に大きなものではないが、見るものを惹き付ける。彼女は、“あの子”だったのだ。

・・・彼女は、覚えているであろうか。僕のことを。顔を上げると、彼女は僕の方を見ては、目を大きく見開いていた。
「・・・嘘、光くん・・・!?」
僕は首を縦に振った。
「ええ、春日さん、ちょっと前に・・・」先生が、低い声でぼそぼそと言った。「あっ、すみませーん」
彼女は教卓の前に立つなり、ぺこりとお辞儀をした。
「初めまして。春日 伊都季(いつき)といいます。よろしくお願いします」
そう言うと、またぺこりとお辞儀をした。

11:とかげ:2013/05/31(金) 17:06 ID:ffE

__今日は一日中、ぽけーっとしていた。まさか、今日彼女と再開できたなんて。彼女が、僕のことを覚えていてくれただなんて・・・。
嬉しくてたまらなかった。




__放課後、僕は家に帰らずに、道端にある小さな公園にいた。
ブランコに座って、キィーコ、キィーコと、乾いた音を発てた。
「光くん?」
はっとすると、隣には伊都季がいた。
「・・・久しぶり」僕は小さな声で言った。それでも彼女はその声を聞き取っていたみたいで、「うん」と、優しく微笑んだ。

「ねえ」僕は口を開いた。
「僕、ずっと伊都季のこと考えてた」
「・・・・・・ふぅん?」
伊都季は、ちょっといたずらっぽい顔で、答えた。
僕は鞄から、ガムを取り出した。一枚、・・・二枚手に取ると、一枚、紙を広げて口に入れた。
「・・・食べる?」僕はすっ と、彼女にガムを差し出した。
「うん、いる」伊都季の横顔が、夕日に紛れて輝いていた。

__ふと、目の前に、綺麗な白爪草が現れた。僕は迷わずに、その花のつけねの部分___がくを摘まみ、抜き取った。
「・・・あげるよ」
伊都季は少し戸惑った表情で、「ありがとう」と言った。

12:林檎:2013/05/31(金) 22:44 ID:Uiw

>>3

え…?!
急にどうしたのですか?とかげs

(↑コイツ記憶力0人間ですから…)

13:とかげ:2013/06/01(土) 09:08 ID:ffE

>>12
覚えてないなら、知らないほうがいいかと^^;
とりあえずまた応援してくださるのなら嬉しいです!応援しなくてもですけど←

14:とかげ:2013/06/01(土) 09:24 ID:ffE

「・・・私ね?親が離婚して、親戚のお姉ちゃんの方に来たんだ・・・」
伊都季は、哀しげな瞳で答えた。
「そうなんだ・・・」
__僕は、伊都季の親の顔を知らない。なんてったって、幼稚園児だったから、覚えていないだけかもしれない・・・、でも、伊都季と過ごした日々だけは、はっきりと、鮮明に記憶に残っているんだ。






__あれは、遠い昔の4月のこと。道端にある小さな公園。
『光くん、あーそーぼ!』幼い少女の声。短い髪を風になびかせながら、僕の方へ近づいてきた。
『・・・伊都季ちゃん?ねぇ、見て・・・』僕はそう言い、足元を指差した。
伊都季は、僕の指差す方向を覗きこんだ。
『わぁ、素敵。これ、伊都季名前知ってる。白爪草っていうんでしょ』
__・・・初めて聞いた。白くて、まるで伊都季の綺麗な小さい爪のような・・・。美しかった。本当に、その姿は伊都季のようで・・・。


___でも。
伊都季は、なにも言わずに引っ越していった。理由さえ分からない。その頃には、公園の白爪草も全て無くなっていた。
あんなに美しいのに。雑草扱いされて、公園の管理人に抜かれてしまった。
もう、それっきりだと思った。










__「私、もう帰らなきゃ。お姉ちゃんに、片付けろって言われてんの」
僕は我に返った。
「うん、また明日」
・・・・・・伊都季の乗っていたブランコは、キィー、キィーと音を発てて、揺れていた。

15:とかげ:2013/06/01(土) 09:45 ID:ffE

その後、僕は口にガムを含んだまま、家へ帰ってきた。
「ただいま」
・・・いつもと同じ。誰もいない。僕はポケットに突っ込んだガムの紙くずを手に取ると、そこにガムを捨て、ゴミ箱に入れた。
僕は手を洗い終えると、自分の部屋に向かった。鞄を置くと、中からケータイを取り出した。・・・伊都季と、メールアドレスを交換したい。僕は気づいた。伊都季が、恋愛の対象になっていたことを・・・。
僕はふるふると首を横に振った。伊都季とは、まだ友達でいたい。また、笑い合いたい。・・・いや、まてよ?
あの頃から、僕は伊都季に恋心を抱いていた・・・?そう考えると、胸が熱くなった。

ずっと一緒にいたからこそ、辛く、切なくなる。

16:汐:2013/06/01(土) 12:36 ID:kb.

感情がたくさん含まれて分かりやすいです!
応援してます!頑張って下さい!

17:とかげ:2013/06/01(土) 14:03 ID:ffE

>>16
ありがとうございます!
できるだけ、主人公の感情を入れようと意識しています。
これからも頑張りますね!

18:とかげ:2013/06/01(土) 14:27 ID:ffE

そんな、どこかの漫画やドラマみたいなクサイセリフ___・・・。僕は本気でそう思った。
・・・ただ。伊都季には好きな人がいるのだろうか?そうなると、もう失恋決定となってしまう。それでも・・・ただの知り合いでも良い。伊都季のとなりにいたい。






___次の日
僕はいつもより早く学校に来て、本を読んでいた。昔から本は、大好物といっても過言ではないほどだった。そのたびに、周りからは『変なヤツ』と言われるのであった。そう言われるのも仕方がないわけで、そんな性格は母親ゆずりだと、僕は思う__。
「みーつっるくん♪」
僕ははっとして、顔を上げた。伊都季だった。重たそうに鞄を持っていた。
「・・・持つよ」僕がそう言うと、伊都季は首を横に振った。
「大丈夫。私、もう光くんに頼られる年じゃないもん」
伊都季は、にっこりと幼く笑った。__確かに、僕はよく伊都季にかまってあげていたっけ・・・。









__『光くん、できなぁーい』
伊都季は、わんわん泣いていた。ポロポロ涙を溢しながら、小さな白爪草を持っていた。
「・・・こっちをこうして・・・。伊都季ちゃん、ほらできたよ」
僕は、その白爪草を伊都季の手から取ると、上手く他の花と繋いでわっかにし、小さなブレスレットを作ってやった。
『ありがとう光くん』・・・・・










__「そうだね・・・・・」
僕は小さく呟いた。

19:とかげ:2013/06/02(日) 10:32 ID:ffE

伊都季は机に鞄を下ろすと、中から教科書なんかを取りだし、机の中にしまっていた。すると、突然立ち上がって、僕の方に歩いてきた。
「ねぇ、光くんって、ケータイ持って・・・る?」
伊都季は、メタリックピンクのケータイを胸の前で両手で持ちながら、聞いてきた。
「うん」まさか・・・・・・そう思いながら、僕は答えた。
「良かった。良ければ私と、メアド交換しない?」
その時だった。
___ガラッ 「っはよ〜・・・・・・、ん?春日、光?」
「ゆ、悠都っ・・・」
突然ドアが開き、悠都が入ってきたのだ。悠都は、口元をにいっと歪ませ、悪巧みでもしているような表情だった。
「ははーん。光、お前春日の・・・・」「別に、そんなんじゃないから」



____・・・・・・・え?






その声は、確かに伊都季のものだった。
伊都季は・・・僕のことを友達扱いしているのか・・・。胸がきゅうっと締め付けられる。
「・・・そうだよ、悠都。僕、普通に伊都季とメールしたいだけだよ・・・」メール・・・したいだけ。ただ、それだけ。
その間、まるでずっと時が止まっていたみたいで_____。

20:とかげ:2013/06/02(日) 10:48 ID:ffE

「・・・あっ、そう言えば悠都くんの「と」って私と同じ字だよね」
急に、伊都季が話題をそらした。
「ぇ、あ、そうなんだ。奇遇だなーっ」
悠都も、慌てて反応する。僕も話そうとしたが・・・
「伊都季ちゃーん」ドアがガラガラと開き、数名の女子が教室に入ってきた。
「あっ、美羅衣(みらい)ちゃんたち・・・」
伊都季は、小走りにドアの方へ駆けていった。みんなは、楽しそうに話していた。別に、その話を聞いていたわけではなかったのだ。ただ___。
「伊都季ちゃんって、原田と仲良いのー?」突然、その言葉が耳に入ってきた。原田とは、僕の名字のことだった。
__ドクン ドクン
急に、心臓の音が早くなる。隣にいる悠都に聞こえてしまうのではないか、というほどに。

__「・・・・・ょー」
僕がそんなことを考えている間、話は終わってしまった。なんて言ったのか分からない。そうしたら、こんな盗み聞きと同じことをしている自分が恥ずかしくなった。

21:とかげ:2013/06/03(月) 16:35 ID:ffE

授業中、僕はずっと上の空だった。先生の言葉なんて耳に入らない。教科書の内容は意味が分からなかった。僕から斜め上の、伊都季のことが気になって__。







__放課後 僕は一人で、帰り道を歩いていた。
「光くん!」僕はドキッとした。その声は・・・・・、後ろを振り返ることができない。なんだか、怖くて。伊都季は、僕が盗み聞きをしているのに気づいて、それを怒りに来たのかもしれない・・・。それ以上に、僕に“あの事”を話してくるのかもしれないことが、怖かった。

「__・・・光くん、帰ろ」
「・・・うん」
僕にとって、それは予想外だった。今朝はあんな話をしていたクセに・・・、僕は聞いていないと思って、いつもどおり接する・・・。それは、伊都季の長所でもあり、短所でもある。


___今まで、伊都季に何人もの人が憧れてきただろう。それは、僕も含めて。僕は、横目でちらっと伊都季を一目見た。
__細長い手足。薄く茶色がかったミディアムヘア。ぱっちりとした目・・・。パーフェクトと言っても過言ではない。こんな・・・、こんな人のすぐ側・・・隣にいるなんて。今も・・・・、昔も____。

22:とかげ:2013/06/03(月) 16:49 ID:ffE

その後、僕たちは橋のある所で別れて、それぞれ帰っていった。
そういえば、この橋・・・。よく前に、伊都季と二人で桜の花びらを落として、遊んでいた。とっても、綺麗だった。そう__、この橋のすぐ近くには大きな桜の木がある。










___『わぁー、大きいねー』
伊都季は、無邪気に笑いながら桜の木を指差す。
『本当だ。綺麗』
僕も、伊都季に負けじと、精一杯、思い付いた言葉を述べていた。
その頃は、よくお花見なんかもしていた。二人っきりで。僕は、お母さんが作ってくれたクッキーなんかを持って、この橋で伊都季と待ち合わせをしていた。伊都季はおにぎりを持っていた。レジャーシートなんてない。立ったまま、橋の上で桜を見ながら、それぞれ持ってきた物を食べるのだ。僕たちにとって、それはとても幸せだった。

23:とかげ:2013/06/05(水) 16:39 ID:ffE

僕がそんなことを考えている間、とっくに家に着いていた。
自分の部屋に鞄をドサッと置くと、リビングへ行って窓を開けた。さわさわと部屋へ風が入ってきて、とても気持ちよかった。
ちなみに、僕の家は普通のマンション。伊都季は・・・・・、__分からない。僕は、伊都季と仲が良かったクセに、全然伊都季のことを知らない。家も。親も。・・・誕生日でさえも。
もどかしい。もっと彼女のことを知りたい。自分のことを、好きになるならないは関係なく。近づきたい。
___果たして、僕のことが好きな人はいるのだろうか__。

24:とかげ:2013/06/06(木) 16:57 ID:ffE

__次の日 僕は今日も、いつも通り家を出た。途中で、あの橋を渡ることになった。__そんなとき。
「光くん、おはよ」
僕はくるっと、後ろに振り返った。そこにはいたのは、予想通り、伊都季だった。半袖のYシャツの襟には、赤い校章が付けられていた。
「おはよう」僕は小さな声でそう言った。
「・・・何よ、今の間は〜」
伊都季は、口を尖らせてそう言った。ちょっと考え事をしていたんだ、僕はそう答えた。

「・・・暑いね」
僕は、太陽の方に目を向けた。とても眩しかった。
「当たり前でしょ・・・、それに光くん、長袖だし」
僕ははっとして、袖の方を見た。冬のときの感覚がまだ残っていて、つい長袖のシャツを無意識に着ていたのだ。
「・・・・・本当に、暑いね」僕はそう呟いた。
伊都季と出会ったのは、ある夏の日だった___。

25:とかげ:2013/06/07(金) 16:01 ID:ffE

___僕はとある町に引っ越してきた。それが今、僕の家があるところ。
新しい幼稚園では、なかなか馴染むことができなかった。そんなとき。
「ねえ、友達になろ」
髪の短い、可愛いらしい女の子の声。まだ幼稚園児だった僕だが、確かに胸の鼓動は大きく高鳴っていた。
「・・・うん、いいよ」僕は確か、そう答えたのだ。
__恥ずかしくて、目も合わせられなかった。それが僕の初恋。生意気なことに、そのとき僕はまだ5つという歳だった。
















___「私ね、この季節が一番好きなんだ」
伊都季は、あどけない笑顔を溢した。
__君は、何も分かってない。僕が一番好きな季節は、春。とても綺麗な白爪草が、顔を覗かせる。・・・伊都季、本当の白爪草は君なんだ。





とても、言えやしないけど___。

26:とかげ:2013/06/08(土) 09:21 ID:ffE

そういえば、もうすぐ梅雨の季節。植物や生き物が喜ぶ時期だ。人間にとっては、あまり良い季節とは言いがたいけれど・・・。
「ところで光くんは、部活入ってるの?」突然、伊都季が問いかけてきた。
「ううん」僕は首を横に振った。
「帰宅部なんだ」
そう答えた。家で勉強、なんてことはしていないけど__。僕は、馬鹿にされるかと思った。けど。
「すごいね、勉強してるんだ」
ズキン・・・ 胸の奥に、何かが突き刺さるような、鈍い痛みが走った。伊都季の暖かい笑顔が、余計にそうだった。
「そんなの、・・・してないよ」
あんな風に勘違いされるのなら・・・みんなのように、『ガリ勉』と言われる方がマシかもしれない。
__実際は、家の手伝いをしている。母さんが仕事で、忙しいからだ。できるのなら、僕も部活に入りたかったかもしれない・・・。

27:とかげ:2013/06/08(土) 16:35 ID:ffE

伊都季は、少し間をおいてから口を開いた。
「じゃあ、私も部活入るのやめよ」
「駄目だよ!!」
僕は、伊都季が話している途中で、口を割った。だって・・・、僕が帰宅部だからって、そんなのあんまりだ。
伊都季は、驚いた表情のまま僕を見つめていた。








__教室で、僕はうたた寝していた。少し・・・ムシャクシャした。伊都季はどんなつもりなんだ?僕と同じような人間になるなんて・・・、それだけは避けたかった。伊都季には、もっと清々しい人生を送ってほしいから。僕みたいな人生は歩んでほしくないから・・・。
そんな中、伊都季は僕のことをちらちらと見ていた。僕は、その伊都季の姿をぼーっとしながら眺めていた。

28:とかげ:2013/06/09(日) 10:35 ID:ffE

カチカチカチ・・・ 僕はシャーペンをノックしては戻し・・・またノックして戻し・・・、を繰り返していた。
「なーなー」
突然、悠都が話しかけてきた。
「何」僕は愛想なくそう言うと、悠都は急に困った顔をした。
「あのさ、ここ教えてくんない」
悠都は、数学の教科書の一部分を指差していた。僕ははぁ と溜め息をついた。
「良いよ」そう言うと、僕は悠都からノートを取り上げた。
__僕はみんなに何かと頼りにされる。ついでに言うと、『頭が良い』と言われている。勉強なんて、キライだけれど。

「__良い?まずはここを先に・・・・・・・・、」
僕は我に返ると、ノートに教科書通り文字を書くと、説明を始めた。
「・・・あぁ、なるほど」悠都も理解したらしく、『もういいよ』、とウインクした。僕も前を向いて、悠都に背を向けた。

29:とかげ:2013/06/10(月) 17:03 ID:ffE

 ___昼休み 僕は椅子に座ってぼーっとしていた。休み時間、僕は大抵こんな風に過ごしている。友達は少ないし、一人で外で遊ぶのもなんだか変だ。だからこうして、いつも外の景色を眺めているのだ。
「ねー、原田ぁ」
僕はびっくりして後ろを向いた。クラスの女子だった。
「あのさぁ、あんたって頭良いよね?これやっといて」
バサッ 机に、プリントがぶちまけられた。それは、今日の宿題だった。
「よろしくね」そのまま彼女は、立ち去ってしまった。
「・・・・・」
僕にはどうすることも、できなかった。頭なんて・・・良くないのに。勝手なエゴをつけられてしまった・・・。
「ちょっと、光くん」
僕ははっ とした。伊都季だった。
「さっきの。良くないよ。私が言ってくる」
僕は初め意味が分からなかったが、ちょっとして理解をした。でも、待てよ。そんなの、伊都季が他の女子に嫌われる可能性がある。
「・・・・・、駄目だよ」僕は否定した。けれど__
「でも、そんなの不正よ。言ってくるから」
「駄目なんだって!」




__その間、1分もの時間が立っていただろう。たかがあんなことで。
「・・・分かった。やめとく」
僕はほっ として、胸を撫で下ろした。

30:°とかげ:2013/06/11(火) 18:27 ID:ffE

「私ね」
僕は伊都季の方を向いた。
「前の学校で不登校だったんだ」
__え?伊都季が?あんなに明るい伊都季が・・・?僕はびっくりした。
「でも、お父さんの転勤が決まって、こっちに引っ越して来れた。それがキッカケで、またこうして・・・」
伊都季はくすっ と笑った。
まさか彼女が不登校だったなんて、想像もつかない。
「だから私__また光くんに会えて嬉しかった」
・・・やっぱり伊都季は、伊都季だ。どんなことが起こっても、いつも前を向いていて・・・。
「まだここに光くんがいるっていう保証はなかった。でも、実際いたから、すごく安心したんだ」
・・・僕がいたから・・・・・安心した・・・・?











___その後、僕は伊都季に何回も何回も『本当に?』と聞き返した。でも、伊都季は『本当に決まってるでしょ?』と言ってくれた。
そのことを、僕は誇りに思った。

31:とかげ:2013/06/12(水) 16:39 ID:ffE

そして、そんな伊都季に、もっともっと惹かれていくのだった。







 __次の日 梅雨も近づいてきたため、今日は雨が降っていた。土砂降り、という訳でもなく、小雨ほどだった。 パラパラという、雨の音が心地いい。僕は黒い傘を片手に、学校の塀の外側に沿って、歩いていた。
でも、雨の日はちょっと憂鬱だった。

「みーつっるくん」
僕は振り返った。そこにいたのは無論伊都季で、透明のビニール傘の下から、顔を覗かせていた。こんな雨の日でも、いつもどおりの笑顔だった。

「ねえ、そういえば」 「何?」
僕は聞き返した。
「・・・・なんでもない」伊都季はそう答えた。
__その後はもう、何も話しかけることも、話しかけられることもなかった。

32:紅茶 ◆Xdmg:2013/06/12(水) 17:01 ID:jQE

ヤ ヤベェ Σ(° д° )

おもしろすぎ★
応援するぞー…!

33:とかげ:2013/06/12(水) 17:08 ID:ffE

>>紅茶
ありがとおぉ(¶д¶)

そうですかね?w
ありがとう!私も紅茶の応援するね♪

34:& ◆g4OA:2013/06/12(水) 19:09 ID:V6o

 題名が気になって読んだら・・・・引き込まれました(*^_^*)
頑張って下さいね

35:若葉:2013/06/12(水) 19:10 ID:V6o

すみません・・・・>>34のドジマヌケは若葉というやつです

36:とかげ:2013/06/13(木) 19:03 ID:ffE

>>若葉さん

ありがとうございます!
実は私もとても気に入ってる題名なんです←
了解ですっ♪

37:とかげ:2013/06/13(木) 19:13 ID:ffE

教室に入ったら、とてもムシムシして居心地が悪かった。やっぱりそういう季節なんだなぁ・・・、と思った。
ドサッ 斜め上で、机に鞄が置かれる音がして、そっちの方を見てみると伊都季だった。「はぁ」彼女は小さく溜め息をつき、椅子に座った。
どうしたんだろう・・・、心配だった。疲れているのだろうか。最近、少し忙しかったし・・・。

「ねえ、光くん」
僕ははっ として顔を上げると、伊都季が眉を八の字にして、机に手を乗せていた。
「私ね、部活に入ることにしたんだけど・・・、親が、駄目だって」
「ええっ」
そんな親、初めて聞いた。普通は、部活に入らせる方が大体なのに・・・。
「・・・塾に通え、だって。それ意外の日は、家のお店の手伝い」
家の・・・お店?
いや、今はそれより、部活についてだ。
「そんなの、ひどい。僕もなんかしてあげたいよ!」
でも__、伊都季は首を横に振った。
__僕はそれが、とても悔しくてたまらなかった。

38:とかげ:2013/06/14(金) 16:40 ID:ffE

「私ね、本当はバスケ部に入りたかったんだ」
バスケ部・・・。伊都季がバスケ部なら、きっと僕は、サッカー部だっただろう。
そして僕は、ある決心をついた。
「僕が、伊都季のお母さんに言ってあげるよ」
僕はそう言った。僕には少し、勇気が必要かもしれないけれど。
伊都季は、一瞬少し驚いた顔をしたが、すぐに冷静な顔になり、口を開いた。
「・・・ごめん、お父さんはいるけど、お母さんはいないんだ」
__その言葉に、少々衝撃を受けた。まるで僕みたいだった。まさか、伊都季がそんな家庭の中で過ごしているだなんて・・・。
「お母さんはね・・・、私を産むときに、・・・・・・」
そのときの伊都季の表情といったら、なんて悲しそうだったんだろう。僕は、伊都季の母親の運命を悟った。
僕と伊都季は同じだと思った。だけど僕の父さんは、まだどこかにいるかもしれない。けれど__伊都季の母親は、もうここにはいないんだ。僕はそんな伊都季が、たまらなく可哀想だと思った。
それでも伊都季は、こんなに明るい。それに対して僕は、いつも後ろ向きに考えている。やっぱり僕と伊都季は、全く違う人間だった。

39:とかげ:2013/06/14(金) 17:04 ID:ffE

「ところでさ」
伊都季が急に話しかけてきたので、びっくりした。
「今日、家に来ても良いよ」
「えっ」
初めて誘われた。伊都季の家・・・、どんなところなんだろう。それに、お店っていうのが気になるし。
「放課後、学校帰りでも良いかな?」
__家には誰もいない。母さんが帰ってくるのは夜中。



「___うん」
即、決定だった。

40:紅茶 ◆Xdmg:2013/06/14(金) 20:59 ID:jQE

光輝く作品に、思わず私は、見とれてしまった___

「凄い…これが、とかげさんの作品…」

私は、その作品を何度も読み直した。

…とにかく凄かった。
とても、同じ人間が書いたなんて、思えなかった____




 ↑私の気持ちww

41:とかげ:2013/06/15(土) 10:20 ID:ffE

>>紅茶
一瞬書くとこ間違えたか荒しかと思ったw

なんでそんなにセンチメンタルなんだーw

42:紅茶 ◆Xdmg:2013/06/15(土) 16:13 ID:3eA

>とかげ

エェ!?w 荒しじゃないよ!?w
まぁ、それほど上手いという事だww

43:とかげ:2013/06/15(土) 18:03 ID:ffE

>>紅茶
なんかね、自分のスレに勝手に小説書かれちゃったのかなーってw一瞬思っちゃったのだ

・・・上手くない!上手くない!上手くn((ry

44:みみち:2013/06/15(土) 18:35 ID:VtU

こんにちはー
だいぶ前の依頼だったのに、すみませんでした。
すっごく面白いです。文章も読みやすいですし!
これからもがんばって下さいね。応援してます^^

45:林檎:2013/06/15(土) 19:52 ID:oeU

とかげs、やっぱり天才ですね☆
叶いませんよっ!貴方には…!

駄作の私に比べると
月とすっぽんですね
(例えが古いな…)

とにかく応援します!
更新を期待しています☆

46:紅茶 ◆Xdmg:2013/06/16(日) 09:16 ID:jQE

>とかげ

マジか…w
まぁ、気にしなーいの!!ww

・・・上手いよ!上手いよ!上手いよ!上手いy((

47:とかげ:2013/06/16(日) 10:28 ID:ffE

>>みみちさん
いえいえー気にしてませんよ!
ありがとうございます!

頑張りますw


>>林檎
林檎方が充分素質あるし、天才だし・・・((ぶちぶち
いえいえ、すっぽんくんは、私なのです・・・

では!これからも更新頑張りやす!


>>紅茶
コメントの仕様がない・・・w

いや、上手いのは、紅茶という天才なのだっ!!←

48:とかげ:2013/06/16(日) 10:53 ID:ffE

__帰りのHRなど、全く聞いていなかった。
今まで、見たこともなかった伊都季の家だったが、今日、それが明らかになることが、とても楽しみだった。それとは半面、少し恐い、という気持ちが僕の胸をさ迷ってきた。
「さようならー」
__僕ははっ とした。ついさっき、HRが終わったのだ。僕は鞄を肩に背負い、伊都季の元へ小走りに近づいた。
「一緒に、行こ」
伊都季はそう言い、スキップしながら、廊下を渡っていた。途中、階段の近くまで来た。しかし、伊都季はそのことに気づいていなかった。
「~~~♪」
「__危ない!!」
ガタッ 伊都季は半分、階段に足を掛けかけていて、僕は彼女の手を、しっかりと握っていた。

__ドクンドクン 伊都季が階段に落ちそうになったから?それとも、僕が伊都季の手を握っているから?
どちらにせよ、僕の胸は、鼓動が大きく、激しくなっていた。
「・・・あ、ありがと」
しかし伊都季は、特に戸惑っている部分もなく、いつもどおりだった。
「・・・全然、・・・」
なんだか少し、ショックだった。

49:とかげ:2013/06/16(日) 14:26 ID:ffE

タンタンタン・・・ そのまま僕達は、階段をかけ降りていった。昇降口の所へ来ると、僕は上履きを脱いで、ロッカーにある靴と取り替えた。
一方、伊都季の方はというと、右手に、白地に黄色のラインが入った靴を持っていた。__なんだか、伊都季らしいな、と 口を手で押さえ、くすっと笑った。
「私ん家はね」突然、伊都季が話しかけてきたので、慌てて手を戻した。
「ちっちゃなカフェなんだ」
「ふぅん・・・」
カフェ・・・、か。一体、どんなカフェなんだろうか。僕は靴を履きながら、そう思っていた。

50:林檎:2013/06/16(日) 15:10 ID:oeU

やっぱり、とかげの方が天才だねっ!
見習いたい位だよー☆

その文才を分けてくれー!

51:とかげ:2013/06/16(日) 15:14 ID:ffE

天才じゃないよーw
天才は、私以外の、林檎とか、誰かさんw

分けてくれと言われたら分けてくれー!

52:とかげ:2013/06/17(月) 16:17 ID:ffE

狭い昇降口から抜け出すと、外は予想以上に湿気が多く、しかも雨が降っていた。
「・・・どうしよ、傘持ってない・・・」
僕は独り言のつもりだったが、伊都季はそれを聞き取っていたみたいで、鞄から、黄色の折り畳み傘を取り出した。
「ねっ、これ、使う?」
「えっ」
それっ・・・て、相合い傘になるんじゃ・・・?僕はドキドキしながらも、「ありがとう」と答えた。
すると伊都季は、また鞄の中を手で探っては、水色の折り畳み傘を取り出した。
「実は今日、間違えて二つ持って来ちゃって」伊都季はへらっと笑った。
「ふぅん、そ、そう・・・」
なんだかそんな伊都季に、ちょっぴり腹が立った僕だった。



__僕達は、しばらく住宅街を歩いていた。なんだかそれだけで、一杯一杯なような気がした。

53:とかげ:2013/06/18(火) 16:39 ID:ffE

「ほらっ、ここ」
伊都季が指差したのは、至って普通の一件家。その一階には、確かに『カフェ*your』という看板があった。

54:とかげ:2013/06/18(火) 16:43 ID:ffE

めちゃ短くてスミマセンm(_ _)m

55:°:2013/06/18(火) 17:43 ID:ffE

「ここが、伊都季の家だね」
「うん」
僕ははっ とすると、伊都季は家に向かって、すたこらと歩いていった。慌てて僕も、伊都季の後をついていく。
しかし、伊都季はすぐ目の前のドアではなく、家の裏の方へと歩いていった。庭に値するその場所には、綺麗に花が植えてあり、雑草は一本もなかった。__“あの花”は・・・、どこにも見当たらない。
ガチャ 伊都季は、茶色いドアを開けた。
「ただいま」
「おかえり・・・・・・」
僕は、薄くひげのはやした、おじさんと目が合った。その人は、僕のことをじっと見つめて、目を細めていた。
「おっ、おじゃまします。伊都季の__友達です」
そう言うと、その人は今までしかめていた顔を、元通り戻し、低い声で
「いらっしゃい」
と 言った。

56:とかげ:2013/06/19(水) 17:20 ID:ffE

「名前は?」
あっちの方から質問が来たので、少し戸惑った。が、僕は普通に__見えるように__口を開いた。
「原田 光です」
すると、その男の人は、はっ としたように、口を開けた。
「もしかして・・・小さい頃、伊都季と遊んでた子・・・、かな?」
「えっ」
なんで知っているんだろう・・・。
「いや、実は昔、伊都季によく聞かされててね。__君の話を」
伊都季が・・・僕のことを、他の人に話していただなんて。それだけ、大切に想っていてくれたのかな・・・?とても嬉しく思った。
「俺は、伊都季の父だ。ここでカフェを経営している」
なんだか、意外だった。伊都季の父親が、こんな風な人だったなんて。

57:とかげ:2013/06/20(木) 19:31 ID:ffE

「お父さん、あのさぁ・・・」
突然、伊都季の表情が変わった。まさか、“あのこと”を話すつもりなのか・・・?
「僕から話します」
僕は伊都季の前に立った。漫画みたいな、格好いい主人公の真似をして・・・。
「・・・・」おじさん__伊都季のお父さんは、ゆっくりと溜め息をついた。
 僕は、小さく息を吸った。
「伊都季の、部活のことなんですけど」
そう言った瞬間、おじさんの顔が急変した。
「・・・いや、なんでもない。続けてくれ」
 僕は急に、なんだか恐くなった。伊都季のお父さんを怒らせてしまうのではないか。現に、表情がそうだ。どこかの、厳格な父親みたいな__
 ゴクッ 僕は息を一飲みすると、口を開いた。
「伊都季を、部活に入れさせてください」
僕は、そう言うので精一杯だった。向かいに立っている人の、眼が恐くて__。
「・・・君には、関係ない」
「___!!」
 ショックだった。

58:とかげ:2013/06/21(金) 16:37 ID:ffE

すると、後ろから伊都季が歩いてきた。
「お父さん、もうやめて。光くんも、もう良いから」
伊都季はそう言い、僕の方に首を向けると、「ごめんね」 と、小さな声で呟いた。
「・・・っ・・」
彼女にすらそんなことを言われて、ますます悔しかった。僕は何も言えず、お店の裏側で、つったっていた。

「俺には、仕事がある。好きな時に帰って良い。2階にいなさい」
おじさんはそう言うと、お店のカウンターに出た。
「すみませーん、コーヒーおかわり!」
そんな客の声が聞こえた。
「かしこまりましたー」
おじさんは小走りに、客の方へ向かう。
僕はそんな光景を、遠目に見ていた。

「・・・行こ」
1分ほど経ったのだろうか。とても長く感じられたものを、伊都季にプツン と切られた。
「うん」
__僕の目の奥は、潤っていた。

59:紅茶 ◆Xdmg:2013/06/21(金) 16:54 ID:jQE

おっ…おもしろい!!

最高だネェ とかげの作品^^

60:とかげ:2013/06/21(金) 17:00 ID:ffE

えっ・・・
突然、何!?w

61:紅茶 ◆Xdmg:2013/06/21(金) 17:17 ID:jQE

いやぁ…
今回もおもしろいなーっと…

62:とかげ:2013/06/21(金) 17:40 ID:ffE

ありがとw←
まだまだ序の口ですからね!?w

63:瑞樹 ◆8FX2:2013/06/21(金) 18:07 ID:z6M

初めのほうで言っていた通りあの喧嘩上等を書いていたとかげさんですか!
コメントせずに影で応援させてもらってました。
とかげさんから私に小説を見てくださいと言われて光栄です。
この、お話しもとてもおもしろいですね!はいっ!
私は印象に残っているのは、ずばり!「人物の気持ち、表現」ですね。
例えば>>48のスキップしながら廊下を渡ったというところで想像して私もそういう時あるな〜
と思っていました。表現力豊かな作品でありますね。ほかにも僕は小さく息を吸ったなどいい表現ですね♪
相合い傘にならないってところもおもしろかったです!
でも、雨の中ドキドキしながら歩くっていうシチュエーションも素敵ですし、光が傘にいれてあげるっていう
のも素敵だと思います。細かいことなど書いていていいですね。
相合い傘ができなくて腹が立ったていう表現も確かにいいですが、私なら
僕はガッカリして少し腹が立ったという風にしますね。
あくまで個人意見なので自分がいいほうを選んでください。
長々すいませんでした。これで終わりです。
これからも、がんばって自分らしい作品を作ってくださいね。続き楽しみにしています。
応援してるので♪では、さようなら☆

64:とかげ:2013/06/21(金) 18:19 ID:ffE

>>63
えっそうなんですか!
嬉しいです〜!

こんなにたくさん、ありがとうございます!
読者の意見が、すごく伝わり、私もどんな小説にしていけば良いかなどが、よく分かりました。

これからも頑張ります!
ありがとうございます♪

65:とかげ:2013/06/23(日) 09:11 ID:ffE

 バタバタ・・・ 僕達は、階段をかけ上がっていった。その階段は、そう古くはない。新しいものといっても良いかもしれない。引っ越してきたばかりだ。新築なのかもしれない。
「ここが、リビングだよ」
伊都季の声が聞こえたので、顔を上げると、目の前に、広々としたリビングが広がっていた。
「わ・・・」思わず、声を上げてしまった。
しばらくその光景を、眺めていた。

「ケーキと紅茶、持ってくるから椅子に座ってて」
伊都季はそう言うと、階段を降りていった。
バタバタバタ・・・ 音が、どんどん小さくなっていく。

66:若宮鈴音 ◆RCWE:2013/06/23(日) 11:59 ID:ez-RbM

失礼します。
「☆葉っぱ限定何でも屋☆」の者です。
ご要望通り、評価させていただきますが、テストが近いので手短にいかさせていただきます。
ご了承ください。


キャラクター ★★★☆☆(五段階評価)
内容 ★★★☆☆(五段階評価)
総合 ★★★☆☆(五段階評価)

点数:85点

あまりゆっくりと読めなかったので、良いアドバイスが出来るか分かりませんが、三点リーダーを"・・・"ではなく、"…"を使用されたほうが読みやすいと思いました。
あと、気になったのは文の終末ですね。
とかげ様はいつも文の終末を「――――た。」で終わらせている気がします。
特に関係はないかと思いますが、「――――る。」も使用されたほうがいいと思いました。
良い点は表現の仕方ですね。
>>10の"か弱い白爪草の花のよう"ですが、凄く良い表現の仕方だと思いました。
まさに、この小説のタイトルと合っていますね。
話の内容も特に問題はありませんが、描写だけでなく、心情も用いられたほうがさらに良くなるかと。
それから最後に簡単府。
簡単府は奇数個でも偶数個でも問題ないのですが、私は偶数個使用されたほうがいいと思います。


以上、評価致しました。
これはあくまでも私のアドバイスや意見でもあるので、無視していただいても構いません。
続き、楽しみにしてますね。
密かに応援させていただきます。

ご依頼ありがとうございました。

67:とかげ:2013/06/24(月) 15:16 ID:ffE

>>66
色々、気を付けるべき点が良く分かりました!
まだまだ下手くそってわけですね・・・orz

分かりやすかったです!
いえいえ、無視と言うわけにはいきません!←
ありがとうございました!!

68:とかげ:2013/06/24(月) 15:46 ID:ffE

僕は部屋の中を、少し歩いてみた。物は綺麗に整理され、テーブルには、花が飾ってあった。
赤くて綺麗な、可愛い小さな花だった。でも僕は、やっぱりこの花は伊都季には似合わないな、と 思った。
伊都季には、真っ白な白爪草がお似合いだ。小さい頃から、そういったイメージが当てはめられていたのだろうか。
僕はふっ、 と微笑んだ__ような気がした。自分でさえも、笑ったのかどうか、分からなかった。

僕はさっき伊都季に言われた通り、部屋の右側にある、テーブルの近くの椅子に座った。
肩の力が一気に抜けた。伊都季の父親に、あんなことを言われたからであろうか…。
__そんなことを考えていると、タンタンタン… また、階段を上り下りする音が聞こえた。音は次第に、大きくなっていった。

「光くん、おやつ持ってきたよ」
その声が聞こえたと同時に、ふんわり、甘い香りが漂ってきた。
僕は立ち上がると、
「ごめん、伊都季。僕も持つ」
そう言い、伊都季が持っている、紅茶のカップとケーキのお皿の2つずつあるうち、1つずつ、持っていった。
「ううん、ありがと…」
伊都季は口をほんのわずか開き、そう言った。

69:とかげ:2013/06/25(火) 16:45 ID:ffE

僕は両手に持っている物を、テーブルの上に置いた。
コトン__ カップの中の紅茶が、テーブルに置いた時の衝撃で揺れた。それと同時に、紅茶の香りが、ふわっ と漂った。
伊都季は僕の横を通りすぎていき、同じように、テーブルに紅茶のカップと、ケーキのお皿を置いた。
「私、この時間が一番好きなの」
伊都季は、幸せそうな笑顔を、僕に見せた。__まだ、食べても飲んでもいないのに。
 僕達は、それぞれ椅子に座った。
改めて見ると、ケーキはとても丁寧に作られているのが、感じられた。すごく美味しそうだ。
「このケーキ、伊都季のお父さんが作ったの?」
僕は思わず、そう聞いた。
「うんっ」
__ドキッ

そのときの伊都季の笑顔に、なぜか顔を紅くしてしまった。
それだけ、自慢の父なのだろうか。
__僕の家にも父親がいたらなぁ、そう思ったのであった。

70:とかげ:2013/06/26(水) 16:16 ID:ffE

 僕達はしばらく、お茶をしながらたわいもないおしゃべりをしていた。伊都季は面白い。僕には、あんな風にしゃべることは、きっとできないだろう。

ふと、時計を見ると、短い針は“4”を示していた。
僕もさすがに、ここまでお邪魔しているのは悪いな、と思って、すっ と立ち上がった。
「伊都季、そろそろ僕、帰るね」
「あ、うん」
 僕は階段をかけ下りていった。
タンタンタン… __一階に着くと、おじさんがカウンターに立っていた。
なんだか気まずくて、ふいっ と顔を背けた。
僕は玄関の所で、くるっと後ろを向いた。
「じゃあね、光くん」伊都季が、こちらを向いて笑いながら、手を振っていた。
なんだか嬉しくなって、僕も口角を上げたつもりだったが、多分__伊都季には、僕の気持ちは伝わらないだろう。
僕も手を振って、「また明日」と言った。

71:林檎:2013/06/26(水) 16:34 ID:Lm2

フムフム……
さすが、とかげ…

小説の参考にして貰うぞ…

えーと…恋愛系も中々有りっと…


ノートに恋愛系書いてみよっかなー

72:とかげ:2013/06/26(水) 16:40 ID:ffE

>>林檎
来てくれたんだぁ(´∀`°。)

私の小説が林檎の参考になるとわっ←

頑張ってね♪\(`∀´)ノフレーフレー

73:とかげ:2013/06/27(木) 20:34 ID:ffE

僕は住宅街を、てくてくと歩いていった。
途中、色褪せた(アせた)あじさいの植木が目に入ってきた。紫、ピンク、青。色んな色があった。
綺麗だけど、やっぱり___…。
僕は、白爪草の花が一番好きだ。
はっ そういえば…、僕は何か、大切なことを忘れているような気がする。
__…そうだ!

74:とかげ:2013/06/28(金) 16:22 ID:ffE

今日は、伊都季のお父さんに、“あの事”を話すつもりだったんだった__。
「はぁ…」僕はため息をついた。
また今度でもいっかぁ…。
 僕はもうひとつ、ある事に気づいた。
外はからっと晴れている。しかし、手には黄色の折り畳み傘を持っていた。
またしても、失敗した。伊都季にこれ、借りたんだった…。
…でも、今なら自分の物にできるかもしれない。だけど。そうしたら、伊都季が困ってしまう。
僕は戸惑った。__どうしよう。

__僕はやっと、答えが出た。
伊都季に返そう。
僕は、伊都季の家の方向へと、濡れたアスファルトの上を走っていった。

75:とかげ:2013/06/29(土) 10:26 ID:ffE

僕は最初に来たときのことを思い出し、家の庭の方へと走っていった。
僕は何も考えずに、ドアを開けた。
「すみません!」
そう言うと、おじさんと目が合った。
「……」
「何か用か?」
おじさんはカウンターに立ったまま、真顔で質問してきた。
「…伊都季は、いますか?」
__おじさんは無言で、くるっと体の向きを変えると、急にシルバーのケータイを、カウンターの裏側の棚から取り出した。
カチャカチャ と、ケータイのボタンを押す音が聞こえる。
少しして、おじさんはケータイを耳に当てた。
「__もしもし、伊都季。…ああ、えっと…光くんが呼んでる。…良いから早く」
おじさんはそれだけ言うと、ケータイを棚に戻した。
「えっと…、ありがとうございます」
なんて言えば良いか分からなかったけど、とりあえずそう言った。
だけど…、何よりも、僕があんなことを言ったうえで、おじさんが僕の名前を言ってくれたことを、嬉しく思った。

76:とかげ:2013/06/30(日) 11:13 ID:ffE

バタバタバタ……
少しして、階段を下りる足音が聞こえてきた。
「ごめん、光くん。どうしたの?」
気づいたら、伊都季が目の前にいた。伊都季はキョトンとした表情で、僕を見ていた。
「…これだよ」
僕は右手に持っている、黄色い傘を伊都季の目の前に差し出した。
「あっ」
伊都季ははっ としたような表情で、目を見開いていた。
「わざわざありがとう。…でも、その傘あげる」
「えっ」
聞き間違いかと思った。嘘だろ。伊都季の、伊都季の__…。
「?」
伊都季はニコッと微笑んだ。僕の表情を読み取ったのだろうか…。きっと僕は、変な顔をしている。
僕は口を少し開いた。
「あり…がと」
普段なら、無意識に『ありがとう』と言えるはず。でも、『ありがとう と言おう』そう思ってから、口を開いたのだ。

「ううん」
そう聞こえた。
そうしたら、何故か涙がポロッと落ちてきた。
__嬉しかったからだろう。
伊都季に見られてはいないか。それだけが、心配だった。

77:とかげ:2013/07/01(月) 18:27 ID:ffE

「…それじゃ、また…明日__」
僕は涙ぐみながら、そう言うと、カフェを飛び出した。
ただただ一直線に走っていったので、二人の顔は見えなかった。











 __次の日、僕は学校を休んだ。
朝からだるくて、なんとなく…。
伊都季はきっと心配する。そう思いたい。
僕はベッドの上で、そんなことを考えていた。

78:°:2013/07/02(火) 20:19 ID:ffE

 しばらくベッドで、仰向けになっていた。
プ__ パパ___ッ
こうしていると、色々な音が聞こえてくる。今までは、全然気にもとめていなかったのに…。
 今ごろみんな、どうしているんだろう。
 僕は時計を見た。__9時14分。
まだそんな時間か…。

79:とかげ:2013/07/03(水) 15:26 ID:ffE

















「___………」
 僕はがばっ と起き上がった。
 時計を見た。
「じゅう…に…、12時!?」
あれからずっと寝てたのか…。僕は目をゴシゴシと擦った。

80:°:2013/07/03(水) 17:58 ID:ffE

「起きなきゃ…」
 僕はベッドからずるずると体を引きずり、のそのそとリビングまで歩いた。
 お昼はどうしよう…。僕は背伸びをし、キッチンにあったカップラーメンを見つけた。

81:林檎:2013/07/05(金) 21:35 ID:Ygw

とかげーっ!
相変わらず上手いねー♪
伊都季と光がどうなるかなー?
頑張ってねっ!

82:とかげ:2013/07/06(土) 08:18 ID:ffE

>>林檎
ありがとう♪
時間があれば更新するね!

83:とかげ:2013/07/12(金) 17:47 ID:ffE













 __久しぶりに食べるラーメンは、なんだか物足りない。
 いつも弁当は、母さんが作っておいてくれる。
だけど冷凍食品ばかりで…。

それでも、僕は母からの“愛”が感じられた。
でも、でもこのラーメンは…






 僕はラーメンを食べ終えると、再び横になった。

84:とかげ:2013/07/12(金) 17:54 ID:ffE

 __次の日。
 僕は、学校に行くことにした。
みんなが、心配しそうだし…

それに、体がだるいのももう治った。


 いつもの道。
たった1日休んだだけなのに、それはとても新鮮に見える。
「光くん!」
 僕は振り返った。
伊都季の笑顔は何時にもまして、笑顔に見える。
「…心配したんだから。どうしちゃったの?」
 伊都季は眉を下げて、尋ねる。
僕は首を横に振った。
「…なんでもないよ。ただ、__ちょっと具合が悪かっただけ」
「そっか。良かった」

……そんな表情(カオ)しないでくれ。

伊都季はニコッと笑った。



…僕は嘘をついているのに。

具合なんて悪くない。

学校に行きたくなかったから休んだ。







__「み…つるくん?どうしたの?すごい…汗…」
 はっ… 僕は正気に戻った。
確かにすごい汗をかいている。
「なっ…、なんでもない」

85:とかげ:2013/07/12(金) 18:03 ID:ffE

 僕はなんてひどいヤツだろう。
教室に着くと、悠都がいた。
「っはよ、光!大丈夫だったか?」
「…うん」

 …また嘘をついた。






「ごめん、悠都。伊都季、ちょっと」
気づいたら、こんなことを言っていた。
「う、うん__」

86:とかげ:2013/07/13(土) 09:00 ID:ffE

 僕は伊都季の手を引っ張り、屋上に続く階段へと走っていく。


「ちょ…、光くん!?」
僕は伊都季の言葉を無視する。

…ごめん。







 最上階まで着くと、僕はやっと口を開いた。
「…具合が悪いなんて嘘だ。ただ、ただ学校に行きたくなかったから…、それだけの理由で」









 時間が、とても早く流れていくような気がする。



 伊都季は口を半分開けたまま、悲しい顔をしていた。

「…光くん?なっ、何言ってるの?私だって毎日学校に行きたい訳じゃ__」
「でも!!」
僕は泣きそうになりながら、叫んだ。

「僕は…嘘をついた。二人にひどいことをした」
__自分でも訳が分からないまま、話していた。
暑い日射しのせい?
頭がくらくらする。

「……嘘ついて何が悪いの?」
 伊都季の突然の言葉に、今まで下げていた顔を思わず上げた。
その瞬間、涙がぽろっ とこぼれた。
「嘘なんてみんなついてる。私だって。嘘をつくことが、罪になるの?」
「……………!!!」

 伊都季は真の優しさを持っている。

僕には、ないけれど__。











「…光くん、ごめん」

87:とかげ:2013/07/13(土) 09:14 ID:ffE

「え?」
謝りたいのはこっちの方__…

「私、私は病気なの…っ」
伊都季は何の前触れもなく、泣き出した。
理解ができない。

「びょ、病気?なんの…」
そう尋ねると、伊都季は急にしゃがみこんだ。
「…重い病気。心臓の。死んじゃうかもしれない」

___………え


重い?心臓の?死んじゃうかもしれな…い?

 嘘だ。全部、全部。


 はっ… 僕はあることに気づいた。


伊都季がついていた嘘…

それはこのこと…?

「私…、毎日が恐かった。家で寝てる方がマシ__」
「伊都季の馬鹿っ!!!」


伊都季は、腫れた目を擦りながら、変な顔をしていた。

「僕が、僕が知っていたのは明るい伊都季だ。こんなの伊都季じゃ……」
僕はその場から走り去った。

88:とかげ:2013/07/13(土) 09:27 ID:ffE






『仕方ないじゃない』

 階段を下りているとき、そう聞こえた気がする。
 …あれは伊都季じゃない。
違う伊都季だ。

 急にどうしたんだろう。
何が…、何が病気だ。







 ……いつから知った?


幼稚園児の頃から?
それとも最近?


 あの頃は…、本当に明るい性格だった。
今も同じだけど、なんとなく違う。

 今まで僕が見てきた伊都季は何?
こっちまで、泣きたくなるじゃないか。

89:とかげ:2013/07/13(土) 09:57 ID:ffE

 教室に入ると、悠都が待っていた。
「おー、みつ…」
彼は一瞬僕を見たが、びっくりした表情を見せた。
「な…んでお前泣いてんの?」

 僕は目を擦った。
…確かに濡れていた。
頬には綺麗に道筋ができていて、僕はそれをハンカチで拭った。

「伊都季は、病気だって。ずっと、内緒にされてた…」
 本当は『僕に嘘をついていた』と言いたかったが、あえて言わないでおいた。
それじゃ、伊都季が可哀想だから。
「…は?春日が?」
 悠都も、僕と同じような反応をしていた。

 伊都季は、きっと悲しむだろうな…。

90:とかげ:2013/07/13(土) 10:16 ID:ffE

僕は何もしてあげられないのだから。
ただ、ただ目の前の“白爪草”を見ていることしかできないのだから。


 …でも。

『死んじゃうかもしれない』って、いつ?
__医師。医師は、なんて言ったんだ!!!

「…悠都。僕、早退するから」
「え?おい、光!」
 僕は教室を飛び出しては、全速力で廊下を駆け抜けた。
階段の途中。
先生にぶつかりそうになった。
「ちょっと!どこ行くの」
「部活です!」
本当は、部活なんて入ってないけれど。
今は、嘘をつかなくちゃ__!!








「はぁ…、…っ」
 もう、駄目だ。
 伊都季が、どこの病院に行っているのかは知らない。
いつ、病院に行ったのかすら知らない。

だけど、伊都季が心配で。
こうすることしかできないから___。

91:とかげ:2013/07/13(土) 13:33 ID:ffE

 


 …タッタッタッ………
遠くで、足音が聞こえた。
思わず後ろに振り返ると…
「い…、伊都季!!」
彼女は涙を点々とこぼしながら、こっちに向かってくる。

「あ…、あれは嘘なの!!嘘ついて…ごめん…っ」
泣きながらだ。
口を開けるのも辛いと思う。
だけど、一生懸命話している。
「な、なんで嘘なんて…」
「私…、光くんにかまっ…てほしくて…。ごめ…ん…」

 なんで?なんでそんなことのために?

本気で心配しちゃったじゃないか。


__…僕の無愛想のせい?


「…こっちこそごめん」
僕は伊都季の目を見て、そう言った。
伊都季はだまったまま、こくんと頷く。
「もう、嘘つかないから…」

92:とかげ ◆gMw2:2013/07/14(日) 09:08 ID:ffE

伊都季は目をうるうるとさせながら、そう言った。
「…教室に、戻ろう」
 僕はそう言い、伊都季に背を向けて歩く。

 …__『嘘をつくことの何が悪いの?』
『嘘をつくことが罪になるの?』


…そんなの、分からないよ。

でも、嘘くらいついたって、良い…よね__?


 廊下を歩いていると、濡れている所がいくつもあった。
伊都季の涙だ。
 後ろを振り返ると、伊都季は立ち止まっていた。
「…伊都季?」
 僕がそう言うと、彼女ははっ としたように足を踏み出した。

 ちょっとずつで良い。


いつのまにか、僕達の距離は縮まっていって。

そして、いつか僕の隣に…


__真っ白で美しい、白爪草のような彼女がいるんだ。






……そう信じている。

93:とかげ:2013/07/14(日) 16:14 ID:ffE

 









 その日も、いつものようにあっという間に過ぎていって。
退屈な毎日は、僕の目の前を通りすぎるばかり。


 __そんなある日。
 うちのクラスに、転校生が来るとのこと。
「誰だー?」
「男子かもよ!!」
 そんな言葉ばかりが教室を飛び交う。
 それにしても、このクラスは転校生が多いな…。

「えーみんな、静かにしろ。…泉くん、入りなさい」
 先生の言葉に、誰もがドアの方を見た。
ガラッ ドアが乱暴に開けられる。
 そこに居たのは、茶髪の、明らかに不良っぽい男子。
 辺りがまた、ざわざわ とし始めた。

94:まっつー:2013/07/14(日) 17:03 ID:qoc

ハイ!一気読みしたぞ!!
おもしろい♪
すごくひきこまれるよ☆☆☆
これからも頑張って!

95:とかげ:2013/07/14(日) 17:10 ID:ffE

一気読みw
本当?今日エイプリルフールじゃないよ?←
ありがとぉ(○^ー^○)

まっつーも頑張れぃ★

96:まっつー:2013/07/15(月) 12:05 ID:qoc

頑張る♪

97:とかげ:2013/07/15(月) 12:22 ID:ffE

 すると、彼は口をゆっくり開いた。
「てめーらザワザワうっせーよ!!」








 …しばらくの間、沈黙が続いた。
 先生は慌てた様子で、彼に話しかけた。
「ちょ、ちょっと。口が悪いですよ」
「…先公の言うことなんて聞いてられっかよ!」
…確かに、口があまりにもひどすぎる。
こんな人、今まで見たことがない。

「俺は泉 昴(スバル)だけど。なんか文句あっか」
 辺りはよりいっそう静かになった。
「ったく…、んだよ。…お」
 彼は一瞬、僕の顔を見た。
そしてニヤリと怪しく笑った。
「……大人しそうな面じゃねぇか。放課後_____に来い」

…!!


彼… 泉 昴は、
『放課後“体育館裏”に来い』
と 言ったのだ。

それも、周りに聞こえないよう、小声で__…。

98:とかげ:2013/07/16(火) 13:29 ID:ffE

 彼は一度僕に背を向けたが、はっ としたように、もう一度こちらを向いた。
そしてニヤッ と一瞬笑うと__
「その女も連れて来い」

彼は伊都季を指差して、そう言った。




 …何がしたい。

関係ない伊都季を巻き込んでまで、何がしたい。

…まあ、僕だっていきなり言われたんだ。
どうせ不良の考えること…__。

99:とかげ:2013/07/17(水) 16:12 ID:ffE











 ___昼休み。
僕はあいつの望み通り、体育館裏へ向かおうとする。
「…光くん…」
 伊都季は、僕の半袖シャツの裾を、ぎゅっ と握る。
「………!」
思わず、顔が赤くなる。
急に、…ど、どうしたんだろう。

「あっ、ご、ごめん…っ」
伊都季は手をぱっ と離し、ペコッと謝った。
「……別に」

「それよりも、“あの事”だけど…」
 彼女は目を僕からすっ とそらした。
「…伊都季は、行かなくて良いよ」
彼女を危険な目にさらすなんて…__無理だ。

100:とかげ:2013/07/18(木) 13:34 ID:ffE

「だけど…!」
「伊都季は!!」


 僕は思いっきり叫んでいた。
なんだか、とても申し訳ない…。




「……分かった」
そう言い、彼女は後ろを向いて、教室に戻った。

「…泉 昴」
 僕はそう呟いた。
彼への、怒りを込めて__。





 僕は、急いで体育館裏まで走っていく。
何の用かは知らないけれど、行かなかったら何をし出すか分からない。
これは、伊都季に苦しい思いをさせないための“方法”___。

101:°:2013/07/18(木) 19:46 ID:ffE









__「…はぁっ」
 僕は体育館裏近くに着いた。
少し恐い… が、恐る恐る裏側へと足を踏み出す。

「…おい!」
 __ビクッ
僕は思わず、体をふるわせた。
突然声が聞こえて、びっくりした。
…心臓が、ドクドクいっている。

「す、昴…」
 僕は声を震わせながら、目の前にいるやつの名前を言った。
「てめぇ、呼び捨てすんじゃねーよ」
彼は僕をキッ と睨み付ける。
「…何で僕を呼んだ」
「………」




 そいつはしばらくの間、黙っていた。

102:とかげ:2013/07/19(金) 16:24 ID:ffE

「…生意気な面してるからだ」
 …生意気なのは、どっちだよ。

「それより。あの女はどうした」
 __!
伊都季のことだ。
…ここは素直に、言うべきか…。
「伊都季は__」
そう言いかけたとき。
「私はここ!」

!?

僕は思わず振り返った。
そこには、はぁはぁ言っている伊都季と姿があった。

「い、伊都季!なんでここに…」
 僕は彼女に問いかけた。
本当、なんで来たんだよ…。
「だって、私が行かなかったら、光くんが大変な目に…」




…これじゃ、僕ってすごくカッコ悪いヤツじゃないか。
だけど、伊都季は僕を心配してくれて…。






「ありがとう」
そう言うと、彼女はにこっ と微笑んだ。
__「おい、お前ら…」
 はっ 僕は泉 昴のことを思い出した。
「イチャつくのもいい加減にしろ」
「……」
彼はジロッ と僕の方を鋭い目付きで睨む。
 一方、伊都季の方は、ぽかーん とした表情だった。

…やっぱり、なんだか悔しいような…。
伊都季は結構鈍感だ。



 さっきまで、僕達を見ていた昴が、やっと口を開いた。
「…やっぱり、お前らめんどくせぇ。この辺にしといてやる!」
そのまま、彼は走り去っていった。

「……」
「行っちゃったね…」
 僕は小さく頷いた。

103:とかげ:2013/07/20(土) 11:22 ID:ffE

 そのあと、僕達も教室に戻った。
…一体、何だったのだろうか。

 教室はいつも通り、ザワザワしている。
僕は椅子に座って、本を読んだ。

 ちらっ と、泉 昴の方を見てみると、彼は伊都季の方を見ていた、と思う。
ムスッ とした顔のまま、頬を赤らめている。


 …まさか。

いや、そんなはずない。





泉 昴が、伊都季のことを好きなはずない。



__僕はそう自分に、言い聞かせた。

104:とかげ:2013/07/21(日) 10:16 ID:ffE










 __放課後。
僕は掃除当番だったので、教室に残った。
 教卓の方を見ると、先生と泉 昴がいた。
「転入早々悪いけど、掃除当番だから。よろしく」
「…はあ」
そう言って、ほうきを受け取っていた。

 先生は教室から出ていった。
教室に残ったのは、僕と泉 昴と、その他のクラスメイト。

「…あーあ、掃除当番なんてめんどくせーな!!」


 大声で、泉 昴は叫んだ。
声が聞こえると、みんな彼の方を向いた。
彼はムッ とした表情。

 急に僕の方へ歩み寄ってくる。
「…俺、“あいつ”に気なんてないからな」
「………」

泉 昴は少し顔を染めながら言った。
…それは、好き__… って意味としか思えない。













「…僕だって、負けない」
 僕はそう残すと、掃除にかかった。

105:とかげ:2013/07/22(月) 07:56 ID:ffE

「…は?」
 後ろで泉 昴が呟いたが、僕は無視した。

 …伊都季は、あんな奴に渡さない。

僕なんて、テレビに出てるアイドルみたいな奴の、足元にも及ばないけれど。


泉 昴にだけは。


負けたくないんだ__。











 __しばらくして、掃除が終わった。
他のみんなは、鞄を持ってちゃっちゃ と教室から出ていった。
僕もそろそろ帰ろう、 と思って鞄を持ち上げた。
 後ろを見ると、泉 昴がいた。
「…泉…昴?」
彼は僕が言った言葉に反応して、体をピクッ と動かした。
「フルネームで呼ぶな」
彼はまた、こちらを睨んできた。

…白い眼球が、鋭くこちらを見てくるので、思わずたじ っとした。

「じゃあ、…泉で」
僕はそう残し、教室を出た。

106:とかげ:2013/07/23(火) 13:20 ID:ffE









 __ピピピピピピ…………
高い電子音が、頭の上で鳴り響く。
「ん…」

カチッ
僕は右手で、目覚まし時計を叩いた。

「__…」
 目はぱっちり冴えている。
久しぶりだ。
いつもは、あんなに眠いのに。
 僕は床に足を落とすと、ゴシゴシ と目を擦って、顔を洗いに行く。

 …さっきまで見ていた夢を思い出す。

“変”だった。
夢だから、みんな変ではあろうが__。

…伊都季が居たんだ。
病院に。
病人の服を着て。




 ___パシャ!!

顔に、思いっきり水がかかった。
僕はぼーっ としたまま、タオルで顔を拭いた。

 …あの夢は、なんだったのだろう。

107:とかげ:2013/07/24(水) 13:24 ID:ffE










 ___僕はいつも通り、学校に行った。
教室に着くと、悠都の姿があった。
「なあ、春日見なかったか」
 僕は、その一言で、いつもの橋の所で、伊都季がいなかったことを思い出した。

伊都季…。


どんどん不安な気持ちが、高まってくる。

「…知らないよ」
「そうか」

…きっと調子が悪いんだろう。

僕は自分に、そう言い聞かせた。

108:ニーちゃん:2013/07/26(金) 09:30 ID:qYg

とかげs!た楽しみにしています!

109:ニーちゃん:2013/07/26(金) 09:30 ID:qYg

とかげs!た楽しみにしています!

110:とかげ:2013/07/26(金) 13:59 ID:ffE

>>ニーちゃんさん
ありがとうございます!

111:とかげ:2013/07/26(金) 14:16 ID:ffE




 …ざわざわ
クラスのみんなの声が混じって、ひとつの擬音になる。

 キーンコーン…

ぼーっとしていたら、チャイムが鳴った。

「えーみんな、席に着いて」
 先生が教室に入ってきた。
周りでは、まだ喋っている人達がいる。
数秒後、先生は、急に険しい顔になった。
「えー、それと…春日は休みだ」



……な ん で わ ざ わ ざ、そ ん な 顔 を し て 言 う ん だ ろ う ?


普通に、休みなら休みって、堂々と言えば良いのに。
「……ッ」
僕は、後で先生に訳を聞こうと、決意した。


……。

112:とかげ:2013/07/27(土) 13:58 ID:ffE











『キーンコーン…』
 高い音の、チャイムが鳴る。

 __僕はホームルームの間、ずっと伊都季の事を考えていた。
「……それでは、ホームルームを終わります」
 急に、音がひとつの人の声になって、聞こえてきた。

『ガタガタガタ……』
辺りは、椅子を引きずって、授業の準備をする。
僕も立ち上がって、先生の元へ行く。
「あの……、伊都季はどうかしたんですか?」
そう言うと、先生は困った顔をして、
「ただの風邪だよ」
と 言った。

……教えるのもできないぐらいの事?

「……はい」
僕はくるっ と体の向きを変えると、自分の席に座った。


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