紅蓮の雷(いかずち)

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1:エルガ ◆hueM:2013/06/29(土) 06:56 ID:.mA

「逃がすな!」

何度も後ろから聞こえるその声は徐々に迫る。
ビルの物陰に隠れた俺を「捕える」為だ。

俺はこの時、ある事を思い返した。

『あの雷・・・あのせいで俺は。』

近年、見られるようになった謎の現象『赤い雷』
それは金属の有無に関わらず高い確率で人に落ちる。
今月だけですでに5人がそうなった。しかし、誰一人として死んではいない。
むしろ、ある一部を除いては何一つ変わらないのだ。

施設で知り合った「イズハルト・ローガン」は『赤い雷』の影響で
高い演算能力を手に入れた。その演算能力はコンピューターさえ寄せ付けないもので
怪しげな研究員たちの格好の好物となった。
彼は最早、人ではないだろう。数多くの人体実験の末行き着く果ては・・・。

「ジャン・クラフト」は彼の死を悼んだ。

俺が連中に追われる理由。それはイズハルトが最後に残した「赤い雷」の研究データ
連中はそれが欲しいわけだ。

俺が「赤い雷」によって得たもの。それは秀でた戦闘能力だ。
といっても肉体が強いわけではなく、単純に「触った事もない武器」の扱いが分かるのだ。
施設から強奪した「サブマシンガン」を片手に俺は息を整えていた。

「奴らがくる・・・。その前に仕留めなきゃ。」

俺が怖れていたもの。それは『自律起動兵器』だ。
要するに『殺人ロボ』だ。

連中はデータさえ手に入ればそれでいいのだ。
世の為にならない能力を手に入れた俺はすぐさま排除されそうになった。
それをイズハルトは最後の力で俺を逃がしたのだ。このデータと共に。

彼といた期間は5週間と2日だ。
見る見る内に彼は「人」ではなくなっていった。

最初に行われたのは「脳」の摘出だ。
「脳」とは優秀だが「忘れていく」ものだ。連中はその「忘れる」という概念を取り除いた。
脳の代わりに莫大な量のデータを保存できるメモリーが埋め込まれた。
それのせいか彼は感情を無くしたのだ。

だが彼は最後の最後で「人」として生きたのだろう。

だから捕まる訳にはいかないのだ。どんな手を使っても・・・。

2:エルガ ◆hueM:2013/06/29(土) 10:28 ID:.mA

逃亡から2日経ってやっとこの「捨てられた街」まで逃げて来た。
ここには人なんて居ない。理由は近くに怪しげな薬品やら機材やらを用いた工場が出来たからだ。
しかし、ただそれだけでは人は動かないだろう。そう、その工場こそが人体実験の場だったのだ。

2日間走り通した足は既に悲鳴を上げている。だがここで捕まればすべてが終わる。
俺はこのビルの中へと逃げた。運が良いのか悪いのか、そこには1台のパソコンがあった。

興味本位で起動すると電源が生きていたのか画面が光り出した。
すると、更なる興味が俺を突き動かした。

「このメモリーを挿せば『赤い雷』の事が分かる・・・。」

言うまでもなく俺はそれを行動に移した。

『T,赤い雷・・・人を直撃。害はないようだ。』
『U,赤い雷を以後、紅蓮の雷と呼ぶ。』
『V,紅蓮の雷を受けた人間、特殊能力の開眼。』
『W,我々が囚われたこの施設は恐らく政府機関との関係が疑われる。』
『X,連中はとある能力を探しているようだ。』
          ・
          ・
          ・

恐らく記事に関するタイトルだろう。
そのタイトルを眺めていくだけでも状況は掴める。

俺が着目したのは「政府機関の関与」と「探している能力」についてだ。
だがその前に「V」を読まなければ話の辻褄が合わないようだ。

俺が画面に見入ると画面を挟んだ奥にある机から物音がした。
今の俺はその音にも過敏に反応した。サブマシンガンを胸の高さまで上げ一歩ずつ近づく。
幸い、机は小さなタイプで蹴ればすぐにでも退かす事が出来る。

「直ぐに蜂の巣にしてやる・・・。」

言葉とは裏腹に足は重くなる。そして手が震えだした。
勢いに任せて机を横に蹴り倒すと布1枚で身を包んだ同い年くらいの少女が震えながら座っていた。
その視線は俺ではなくサブマシンガンへと注がれている。

「こ、こんなところで・・・何してんだ?」
「・・・」
「とにかく、今は俺の邪魔はするなよ?」

小さく頷く彼女を後目に俺はパソコンへと戻る。
正直な所、俺の心臓は喉から出てくるのではないか?というほど早い鼓動だ。
怖かったのだ。そして気が動転していたのだ。理由も利かずに俺は彼女を放置してしまった。

3:エルガ ◆hueM:2013/06/29(土) 22:33 ID:.mA

パソコンに移った画面に書かれた日付。それは2カ月も前の物だ。
無理もない。普通の科学では未知数の減少を紐解けと言われてそんな短期間で出来る方がおかしい。

まず、『V』の記事で分かった事は「紅蓮の雷」による特殊能力は「選べない」
つまり、ランダムに・・・そうまるで「神」に与えられるかのような感覚だ。
次に『W』の記事。
これはやたらに難しい文章が連なっている。
要するに「政府の陰謀説」を提唱しているのだろう。
これによって新たな進化を遂げた人間を用いて更なる技術発展へと持ち込む算段だろう。
という見解をイズハルトは残した。
最後に『X』の記事だ。
この文章は今までの「仮説」とは異なり「系統」に基いた意見だった。

「紅蓮の雷によって『発症』した人間は総数246名。内、8名が生体実験中に死亡。
全ての『キャリアー』は一部だけであるが吐出した能力を見せた。
しかし、系統から考えると本来人間の持っている能力に基いた一部が飛躍的に向上するだけで
新しく生れ出た能力の確認はされていない。」

つまり、本来人間が持っていない能力は目覚めない。という事だ。
例を挙げるのであれば「空を富裕する能力」やら「超能力」やら。
あくまでもこれらの異常な現象は「人間の能力の向上」でありまったく新しいものというわけでもない。

更に文章は続いた。

「連中が欲しがっているものはその『人に在らざる能力』である。とりわけ実用性の高い・・・」

そこで文章が終わった。

文章を読み終えた俺は背筋に冷汗が流れた。
先ほどまでそこに居たであろう少女が居ないのだ。部屋を見渡したが気配すらない。
サブマシンガンを構え直し廊下に出ると数歩離れた扉から水を流す音が聞こえた。
そしてゆっくりと戸が開く・・・。
戸の入り口に照準を合わせるとそこから先ほどの少女が出て来た。
少女は俺を見るなり頭を抱えてしゃがんだ。
照準の先に見えた物を迷いなく撃つ。

鈍い連射音の後に響いた男の悲鳴。
オフィスの廊下は瞬く間に赤く染まった。

「っち!連中、建物の中まで探してるのか!」

男の悲鳴と銃声は嫌に大きく、仲間を呼び寄せてしまったかも知れない。
逃げ道を探し焦る俺の腕を少女が掴んだ。

「非常口・・・こっち。」

彼女の力はさほど強くない。払おうとすれば簡単だ。だがその時俺の腕はその行動を拒んだ。
恐怖からだろう、少女の手も小刻みに震えていたのだ。

導かれるままに俺は彼女の後を追う。だが、一つだけ俺には忘れていた事がある。
イズハルトから託されたデータだ。
あの部屋に残したまま、俺たちはビルから脱出してしまったのだ。

4:エルガ ◆hueM:2013/06/30(日) 20:34 ID:.mA

ジャンは腕を引っ張る彼女を止めた。戻る為だ。
しかし、彼女は怯まなかった。

しばらく走った後に彼女は立ち止まり声を発した。

「・・・ダメ。・・・挟まれた。」

前方にも後方にも人影なんかない。その上、ここは廃街とはいえ建物も多い。
一度見失えば探すことは難しい。それでも彼女はそこで足を止めた。

呆然と立ち尽くす彼女を強引に引っ張り先に進もうとするが
彼女はそれを全身で拒んだ。

「ダメなの!それ以上はダメ!」
「戻るのもダメ!進むのもダメってか!やってられるか!」

振り返った俺の顔に彼女は明らかに怯えた。
彼女は足元にあった石を即座に拾い俺の脚の数メートル先へと放った。
石が着地すると同時に爆音が鳴り響く。

「!、な・・・な、に・・・!」

爆風でなびく髪と生暖かい風そして顔から刺すように吹き出る冷汗。
全て現実だ。

「ここ。地雷原」

ぼそぼそと言う彼女の言葉は耳に入っては来なかった。
数秒後に頭上から降ってきた石の破片たちがその事実を俺に教えた。
再び彼女は俺の手を引く。しかし、今度は俺が怯えていたのか動けないのだ。

「早く。さっきので人が来ちゃう。」

それでも足が動かない。腰が抜けたという奴だろう。

俺を現実に引き戻したのは銃声だった。

「居たぞ!」
「っち!あんな所に居やがったか!おい。殺っちまえ!」
「一人増えてるぞ!?」
「構うことはない。見られた以上はそいつも殺せ!」

次に聞こえたものは俺の耳を掠める弾丸の音だ。
再び冷汗がにじむ・・・。条件反射で俺は彼女を押し倒し伏せさせた。

「嫌ぁ!・・・い、痛い!離してよ!」
「顔上げるんじゃねぇ!死にたいのか!」

応戦するも距離が遠い。連射型の銃は反動で弾道がブレやすいのだ。
距離を取られると分が悪い。

「っち!」
「ねぇ!離してよ!」
「うるさい女だなぁ!・・・あそこ見てみろ。コンビニが見えるな?」
「えぇ・・・。」
「あそこまで走れ!」
「貴方はどーするのよ!」
「走り終えたのを確認したら俺も行く!振り向くんじゃねぇぞ!走れ!」

強引に立たせた少女の背中を軽く押しその陰になる様に銃を据える。
生きた心地などしない。銃撃戦は20分にも及んだ。
その代償は大きく右腕を撃ち抜かれた。幸いな事は俺が左利きであった事だ。

不思議な事に彼女の応急処置はスムーズだった。
無理もない。彼女は俺が指示したコンビニではなくその2軒隣に位置していた
ドラッグストアに逃げ込んでいたのだ。まるで俺が負傷することを知っていたかのように。

5:エルガ ◆hueM:2013/07/01(月) 22:19 ID:.mA

「名前・・・聞いてなかったな。」
「・・・」
「名前だよ。それくらい教えてくれ。」
「・・・ないの。」

彼女は真顔で俺に告げる。その瞳には悲しみなどない。
彼女にとって名前など『なくて当たり前』なのだ。

「どこから来た?」
「貴方と同じ所から。」
「!?」

俺はあそこで約1年実験に付き合わされたがこんな少女は見たことがない。
それ以前に俺の会った中で女性など居なかった。

「じゃあ・・・君も発症者なんだね?」
「そう・・・なるのかな。」

ここまで来て彼女の能力など聞く方が愚かである。
恐らく彼女の能力は「予知」。そして、それを知ったからこそ彼女は逃げた。
だが、いくら18〜9の女性とはいえ女の脚で逃げるには距離がありすぎる。

「そう。だから待ってたの。私を救ってくれる人を。」
「!」

『心を読まれた・・・?、2種の能力の混合か?』

「それは違う。読心術は私の生まれ付きのもの。」
「じゃぁ・・・。」
「貴方とは別途で人に追われて居たの。だけど、もうここまでね。」
「何言ってんだ!逃げるんだよ!このままじゃ人じゃなくなる!」
「何言ってるの?貴方、格好悪いよ?そういうの。」

その問いは鋭利に俺の本音へと突き刺さった。

恐らく、彼女の能力は施設の連中は何が何でも欲しがるものだ。
それは恐らくイズハルトのデータと同等だろう。それ以上か?
俺の考えた本音は彼女にデータを託しそのまま逃亡してもらう事だった。
その俺のシナリオには俺の存在は出ては来ない。

『ここで足止めして死ぬのがオチ。だからな』

それを見抜かれたような鋭利な言葉は心苦しい。

そこに、再び複数の足音が鳴り響いた・・・。

6:エルガ ◆hueM:2013/07/02(火) 23:13 ID:.mA

「ぼさっとすんな。・・・俺の考え。分かってるならさっさと行けよ。」

釣られた右腕を見ながら俺は俯く。
ここで死ぬのだ。『悔いはない』とは到底言えたものではない。

「その必要はないわ。」
「馬鹿野郎・・・ここで逃げなきゃ何のために逃げた・・・」

彼女は俺の唇に指を押し当て黙らせた。
一つの足音がこちらに近づいているのだ。まるで別の足跡を避けるように。
足音は直ぐそこで止まり男の声が聞こえた。

「ジャン!助けに来たぞ!ジャン!何処だ?」
「この声・・・。」
「俺だ!『ベルトー』だ!『ベルトー・アムニス』だ!」
「べ、ベルトー!!・・・なんで?なんで此処に?」

「ベルトー・アムニス」
施設で唯一、俺たち「発症者」の相談役として働いていた医師の男だ。
彼は非道な人体実験に強い反発を繰り返し、結果として辺境の工場の一角に左遷された。

「昨日、女の声で不可解な電話があってな。」
「女?」
「あぁ、この場所で人が死ぬ。と」
「・・・。それで?」
「その『人』ってのがお前だ。」
「なんでだよ?」
「その女がお前の名前を・・・ってお前!撃たれたのか!見せてみろ。」
「ぐぅ!き、急に触ってくれるなよぉ!先生!」
「うるさい。見せろ!」

ベルトーによる簡単な治療が始まってから
俺の前には少女が薄く微笑みを浮かべこちらを眺めていた。
恐らく、ベルトーの事も彼女が呼んだのだろう

「お前。弾丸がまだ残ってたぞ!これじゃ傷口が化膿するだろ。」
「有り合わせの道具でここまで出来たことを褒めてもらいたいね。」
「笑いごとじゃない。これじゃ出血も収まらずにショック死もありうる!」

ベルトーの治療は2時間にも及んだ。
彼の腕が悪いのではない。むしろ、さすがは医者だ。

「ジャン。これからどうするんだ。」
「先生、この少女。恐らく連中の言っていた『ポジション]』かもしれません。」
「何!?」
「彼女の能力は『予知』です。」
「じゃあ・・・早急に連中に見つからん場所に『隔離』せねば。」

彼女はその言葉を聞いた瞬間に構えた。
まるで、寄ってくるなと言わんばかりに。

「君!名前は?予知でどこまで読める?この先の安全な場所まで同行願いたいのだが。」

矢継ぎ早に言う彼の腕を引き俺は首を横に振る。
ベルトーも彼女の姿勢を見て察したのだろう。それ以上の事はしなかった。
彼女はすぐさま俺の横に飛んできた。
それを見たベルトーが笑う。

「ははは。まるで虎の威を借る狐だな。」

その談笑はここで打ち切られた。先ほどの複数の足音がこちらに迫ってきたからだ。

7:エルガ ◆hueM:2013/07/03(水) 06:47 ID:.mA

足音の正体は「自律起動兵器」だ。

とはいえ、人間の科学力で作られた兵器など欠陥だらけのものである
熱感知センサー搭載だが「三原則」が邪魔をして
こちらが戦闘の意思を見せなければ攻撃などしてこない

だが、銃や狂気を持っているだけで彼らにとっては
「戦闘意思あり」と判断される。
つまり、この状況で最も危ないのは俺とベルトーだろう

俺は小声でベルトーと話した。

「先生、頼む。彼女を連れてもう少し奥まった所に。」
「怪我人を置いていく事なんて出来る訳ないだろう。私は医者だぞ?」
「大丈夫。連中はこっちには手出しはしない。」
「なんでそう言い切れるんだ?」

ベルトーからの問いはおよそ5分も時間を使った。
結局、府に落ちないベルトーだが彼女を連れて引き下がった。
それから間もなく俺は「自律起動兵器」に見つかってしまった。
「サブマシンガン」は背中に隠してある。これで十分だ。

「ニ、ニンゲン、確認。負傷ノ模様。」

こいつが持つボウガンは俺に向けられ抵抗の意思がないことを
テストされているようだ。だが、此処でやり合えば負けるのは俺だ。
うかつに手は出せない。・・・その時までは。

「作戦行動ニ、リターン。」
「っふん。馬鹿め。・・・逝っちまいな!」

銃の乾いた連射音が荒れた街に広がる。
「自律起動兵器」が後ろに向き直った時。これが勝負の時だ。
だが、俺としたことがこの一回で兵器を仕留める事が出来なかった。

「疑・・・疑問浮上、『サブマシンガン』確認。発砲確認。」
「っへ、プログラムが馬鹿にでもなったかよ。」
「殺害許可下ル。」
「・・・え。」

頭上2センチにも満たない場所にボウガンの矢が飛んできた。
幸い、奴がバランスを崩したおかげで当たりはしなかったものの
俺の恐怖を呼び起こすのには十分だ。

「ふ、ふざけろ!こいつ!」

俺は再び銃を乱射するが手が震え、銃の反動に勝てず
銃口は徐々に天井へと向く。

「くぅ!振動が、腕にっ!・・・。」

更に最悪なのは銃の弾切れが起きたことだ。

8:エルガ ◆hueM:2013/07/03(水) 23:35 ID:.mA

カチッ。

その音はまぎれもなく「弾切れ」のサインだ。

「っひ!・・・マジか!」

弾倉を引き抜き確認するも、絶望が増す結果となった。
そして顔を上げると自律起動兵器が体制を立て直そうと動いている。

「冗談!死んでたまるか!」

慌てて飛び上がり、隠れる場所を探すも頭が回らず良い場所が分からない。
とりあえず距離を取ろうと走り出したが足が縺れ倒れた。
その振動で腕の傷口が開いたのか刺すような痛みと脂汗が噴出してきた。

「っ〜!っくぅ・・・。う゛ぅ〜。」

痛みに耐えられずにうずくまるが、後ろが気になる。
これが「夢」ならどんなに良いか。「冗談だよ」と誰かに言ってもらえればどれ程救われるか。
無意識のうちに涙が出て来た。

「うっく。・・・くそぉ〜。死にたくない!死にたくない!」

願い空しく、自律起動兵器は起き上がり再びこちらを見据える。

「嫌だ・・・嫌だァ!もう嫌だぁ!」

俺の滲む視界に移ったもの。それはあの少女だった。

「・・・っえ・・・」
「ぅわぁぁーーーーー!」

彼女は近場にさきの銃撃戦で割れたガラス片を片手に兵器に突っ込んだ。
俺は呆然とその姿を見ていた。
彼女の奮闘の甲斐あって兵器は機能を停止し動きが止んだ。

俺も起き上がるものの足の力が抜け柱を背にへたり込んだ。
勢いよく振り返る彼女。その直後に溢れた大粒の涙。彼女は大声で泣きながらこちらに歩み寄ってきた。
俺の体に顔を押し付け泣きじゃくる彼女。その手は自分の血で汚れていた。

「ふぅう・・・ひっく。うぅ゛〜。」
「お、落ち着けよ。・・・おかげで助かった。ありがとう。ひと段落ついたよ。」
「うぅ、だから言ったのに゛!『格好悪い』って。だから言ったのに!」
「・・・。ごめんよ。」

顔を押し付けたままの彼女の肩を俺はゆっくり抱いた・・・。

9:許してにゃん♪:2013/07/04(木) 03:39 ID:ez-.ww

つまらん

10:エルガ ◆hueM:2013/07/04(木) 22:46 ID:.mA

数日して傷も癒えた頃、俺は単身あのビルへと舞い戻って来た。
勿論、目当てはデータだ。

彼女はベルトーに任せ、此処まで来たのだ。
と言っても、一人になって増すのは不安だけだ。手持ち武装のサブマシンガンは弾切れ。
それが尚の事、虚しさを呼んだ。

オフィスに入るなり俺はパソコンに食いついた。
データはそのままパソコンに繋がっていた。
気付けばまた、イズハルトの残したデータを読み返している。

「人に在らざる能力・・・。実在した・・・本当に。」

そう。だからこそ気になるのだ。彼の残せなかった文章の先が。
恐らく、彼女の予知だけでなく他の能力もあるのでは?と考え出すとキリがない。

ここで俺は矛盾に気付く。

「喉から手が出るほど欲しい能力が目の前に転がっているのになぜ総力を挙げて探さない?」
「それは、殺人鬼が近くをうろついてるからだよ。坊主」
「っ!」
「勿論、その殺人鬼ってのは坊主の事だ。」
「だ、誰だ!アンタ!俺に何の用だ!」
「何、すぐにわかるさ。これを見ればな。」

そう言って男が腰のベルトからハンドガンを取り出し銃口を俺に据える。
次から次絵と・・・忙しい人生だ。

「さのデータをよこせ。」
「アンタには関係のない代物だ。渡すわけにはいかない。」
「おいおい、坊主。あまり仕事の邪魔をするなよ?雇われでこんな仕事してるとは言え・・・」

彼は何かを言いかけたがそれよりも早く俺は「弾切れ」のサブマシンガンを構えた。
相手はまだこれを知らない。十分な脅しにはなる

「お〜いぃ。物騒なもん持ち出すんじゃねぇよぉ、坊主」
「ドアから離れろ・・・。」
「年上の話ってのは最後まで聞くもんだぜぇ?」
「道を開けろっつってんだよ!」
「・・・。分かった。あんまりうれしいもんじゃないねぇ。そんな物騒なもん向けられちゃ。」
「人の事が言えた道理か!」

じりじりとお互いは円を描くように移動し俺の背後にはとうとう出口が出来た。
あとは逃げ果せて男を撒くだけだ。

「銃をこちらに捨てろ。」
「おい!マジかよ。それ以上に凶器ぶら下げてどうするんだよ!?」
「後ろから撃たれても困る。保身の為だ、そこらへんで捨てて帰る算段だよ」
「まぁ・・・筋が通ってるわなぁ・・・。」

男は要求通りこちらに銃を捨てた。
俺がそれを拾う間、男は指一本も動かさずに待った。

「坊主、去る前に一つ。聞かせろ。」
「なんだよ。こっちは急いでんだ。」
「坊主の守ってるお嬢ちゃん。ありゃ、能力はなんだ?」
「!」

彼女の事は愚か、彼女が発症者であることもこの男は見抜いた。

「いや。驚くなよ。俺はちょっと観察してただけさ。」
「じゃあなんで俺を殺そうとした!」
「さっきも言ったろ!?俺はぁ雇われなんだって。」
「・・・。」
「あぁ、ほら!さっさと行っちまえ!今回は俺の負けにしといてやる。ほれ、早く行け!」

男は鬱陶しそうに手で払うようなしぐさの後にオフィスの椅子に座り込んだ。

その言葉に甘え、俺は後ろも見ずに走り出した。

11:エルガ ◆hueM:2013/07/06(土) 07:10 ID:.mA

俺はあの男を知っている。
「オル・ナガン」

施設の元護衛兵だ。
上司への反発と過度な命令違反から一度は護衛を首になった。
しかし、今はああして「雇われ」として施設の人間に使われているのだ。
それほど、彼の腕は確かだという事だ。

「ジャン。例の物はまだあったのか?」
「はい。先生、ですが途中『オル』に遭遇しました。」
「・・・施設の連中も少しずつ本気を出す気か。」
「ベルトー。俺はこれからどうすれば・・・」

その問いは3人の空気を沈黙させるだけだった。

「とにかく、いつまでもこの街に潜伏するわけにもいくまい。」
「・・・ダメ」
「?。どうした?お嬢ちゃん」
「ここにまだ探さなきゃいけないものがある」
「こんな廃街に?」
「正確にはあの『工場』に」
「じ、冗談だろ?お嬢ちゃん。寿命が縮むぞ?」

彼女は頑として意見を主張した。

俺たちはしぶしぶ「工場」への道に足を進めた。

12:エルガ ◆hueM:2013/07/06(土) 23:22 ID:.mA

工場に潜入したのは俺と彼女だけだ。
ベルトーは外の見張りについたのだ。

彼女がまず選んだ場所は倉庫だ。
此処には化学薬品や機材などの保管がされている。武器になるようなものはない。
だが、彼女はその部屋を選んだ。

「ここ」

彼女の指指したもの。それはパソコンだ。
おそらく薬品管理などに使われているのだろう。無駄なソフトなど入っていない。
そこに俺はあるリストファイルを発見する。
そのリストファイルはこれまでに『実験に使われた』発症者のリストだ。

そこには、イズハルトの名も入っていた。

「これが・・・どうした?」
「名前は関係ない。」
「?」

リストファイルにある名前はクリックでさらに細かい情報を見れるようになっていた。
そう。『実験内容」』だ。

「そのデータ。彼のデータと・・・。」

彼女の言わんとすることは分かる。
彼の残したデータと照合し矛盾点の洗い出しを行った。

15分の少ない時間で見つけた矛盾はおよそ4つ。
一つは『確認された発症者の数』
二つ目は『実験内容の矛盾』
三つ目は『紅蓮の雷の発生状況』
最後に『発症者の死亡例』

この4つだ。

「データの・・・改ざん・・・?」
「真実は彼のデータ。それを隠ぺいするための尾行」
「待ってくれ。なぜデータの改ざんを?そもそもそんなことをする意味がない。」

事実、こんなデータなど世に出回っているものではない。
改ざんしたところで痛手など・・・。

すると彼女は部屋を出た。俺も彼女の後を追う。
次に彼女の訪れた場所は武器庫だ。

そもそも、実験施設に武器庫などある事がおかしいのだが
今の俺には都合が良かった。
兵装を整える合間に俺は彼女を見失う。

そして、俺はある部屋へと・・・辿り着いた。


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