-短編小説-キミをずっと。

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1:梓:2013/06/30(日) 16:50 ID:JxA

*すぐ完結します。
*恋愛小説です。

それでも良ければよろしくお願いします。

2:梓:2013/06/30(日) 16:51 ID:JxA


どうして


そんなに簡単にも

失くなってしまうんだろう


わたしは



壊れることが



すごくこわい

3:梓:2013/06/30(日) 17:01 ID:JxA


「さほ!はしっこちゃんと押さえてよ!!」

「あ、ごめんね春那ちゃん。この飾り、端っこまで届かなくて…」

「しょーがないなぁ、じゃあちょっとだけ貸してみ?」

「ありがと、春那ちゃん…」

メガネに地味なお下げ髪の、英田さほ、中学2年。

生徒会役員で、今は体育祭の準備中。必死にプログラムを飾ったりしています。

その作業を手伝ってくれている黒髪ロングの美少女。

トロくて運動が苦手で、机の上での勉強を必死にやるしかなかったわたしを、生徒会役員に推薦してくれたのは、
2年生になって初めてできた友達の、木崎春那ちゃん。

『さほ、書類をまとめたりするの、得意でしょ?あたし、3年生の先輩に是非あたしともう一人見つけてほしいって言うから、』
さほやってみない?』

推薦で決まるうちの学校の生徒会役員。

みんな、めんどくさいなーなんていって。

やりたがる人が誰も居なかった。


だけどそれもまた、去年までのお話で。

「きゃあっ、悠斗くんっ」


女子の黄色い声。

4:梓:2013/06/30(日) 17:10 ID:JxA

その渦の中心にいるのは、去年転校してきた3年生の生徒会長。

吉本悠斗くん。

年上なのに、朗らかで明るくて可愛くて優しくて。

「悠斗くん」と呼ばれている。

悠斗くんが入ったから、女子の生徒会希望は殺到。

それでも、春那ちゃんはわたしにやってほしいって言ってくれた。

うれしかったんだ。そんなたわいないこと。ちょっとしたこと。

初めての友達だった。


「ほら、さ「みんな、頑張ってる?遅れてごめんね」」

春那ちゃんが私のことを呼ぼうとした瞬間、体育館に入ってきた人。

悠斗くんだ。


生徒会の人たちは、悠斗くんと一緒にいたくて生徒会に入ったわけじゃないから、

みんな、「大丈夫です」「会長も早く」とか言いながら、作業を進めている。

「じゃあ、わたしたちもやろうよー、春那ちゃん」

気を取り直して飾り用のリボンを持ち直した。
でも、もう片側の春那ちゃんのリボンが上がる気配がない。

「はるなちゃ、」


わたしの言葉が止まった。

リボンが落ちる。


_______春那ちゃん、


耳まで真っ赤です。

5:梓:2013/06/30(日) 19:31 ID:JxA

「知らなかったなぁ、春那ちゃんが悠斗くんのコト好きだったなんて・・」

「ちょっと、さほ!!声大きいよ、なに言ってるの、あたし、そんな」

「好きなんでしょ?」

「う・・」

言葉に詰まる春那ちゃん。可愛い。真っ赤になってる。

本当に好きなんだ、悠斗くんのこと。

「っ〜、さほ、言わないでよ??」

「わかってる、わかってるから」

でもなんとなく寂しい。

この頃みんな、

恋人ができて。

好きな人ができて。

輝き始めて。


私は別に、春那ちゃんが居ればいっかって思ってたけど。

春那ちゃんも・・・か。

6:梓:2013/06/30(日) 19:44 ID:JxA

「さほもさ、女友達作って、彼氏作って、立派な高校生になるんだよ?」

「立派な高校生って・・春那ちゃんは言い過ぎ。わたしは中学生活が充実してるのでいいです!!」

そんなガールズトークをしつつ、体育館を出て教室に向かう。今日はもう下校時刻間際だから、帰ろう。

「さほ・・・さほはさ、これからどうしたいの」

急に変なことを言ってくる春那ちゃん。

なんだか、面接をされるみたい。


「このまま、」

わたしは、もう何も望まないから。


「このまま春那ちゃんと笑ってたい」


ざあああああああああああああああああああああ


なんでだろう。
夏・・っぽくない。



つよく、


つよく、



風が吹き荒れた。


「ありがとう、さほ。」

顔は向こうを向いていて、

確認することができないけれど。

きっと春那ちゃんは笑っているんだろう。

うれしい。


幸せだ、私。

「あ、いけない、体育館に忘れ物した」

春那ちゃんがふと言った。

「じゃあ、昇降口で待ってる」

7:梓:2013/07/02(火) 15:26 ID:JxA

『わかった』

なんて返事をした春那ちゃんが駆け足で消えていったのを確認して、自分も昇降口に向かう。

「あれ、英田さん?」

黒いツヤツヤした髪。きれいな唇。すらっとした足。

何もかもが完璧で、咲きそろったバラのような彼。

「あ、悠斗くん!まだお仕事中?先に帰っちゃってごめんね」

「いえいえ、ぼくの方が先輩なので。」

きりっとした見た目とは違って、かわいいなあ。

「じゃあね、悠斗くん」

春那が待つことになってしまう。急いで足を進めようとすると、しっかりとした筋肉つきの腕に阻まれる。

「あ、英田さん…」

いつもと違った、艶っぽくて色めいた悠斗くんの声。

「なぁに?はる、と・・くん?」

後半の声が掠れる。


嘘だ。

何で。


悠斗くんが、わたしを抱きしめているの?

8:梓:2013/07/02(火) 15:33 ID:JxA

Haruna side.

「っ・・・はぁっ、はぁっ、」


ぼた、

ぼた、

ぼたり。


赤い液体が、口からこぼれ落ちる。


「どうかっ・・・カミサマ、お願いだから。」


わたしを、助けて。

9:梓:2013/07/04(木) 15:32 ID:JxA

いや、




助けてくれなくていい




だから


あと


あと少しだけ














私に時間をください。

10:梓:2013/07/04(木) 15:38 ID:JxA

Saho side.

「ごめんね、さほ、待った?」


「ううん、別に」



揺れてない?

掠れてない?


私の声、大丈夫かな。

不安そうに聞こえてないかな。


気分のせいか、少しだけ肌寒い。



「春那ちゃん、かえろ」



揺れる。




ねぇ、




悠人くん。



お願いだから。




『ぼく、先輩のことが、』


『だめっ!!だめだよ!そんなこと言ったら、だって、私、はるな、ちゃ、』


『先輩、それでもっ…』












永遠にその先を言わないで。

11:梓:2013/07/04(木) 15:42 ID:JxA

崩れてしまう。


私の大切も。


春那ちゃんの恋心も。



全部全部、




崩れてしまうじゃないか。


「さほ、どした?昇降口寒かったから…ごめんね、待たせちゃって。」


こんなときでも、私の体調を気にしてくれる春那ちゃん。

ごめんね、

春那ちゃん。


「ううん、大丈夫」

それに、



春那ちゃんがもっと早く来ていたら。

大変なことになってた。

12:梓:2013/07/04(木) 15:53 ID:JxA

「じゃあねー」

「うん、バイバイ春那ちゃん!」

そういって、


出来るだけ元気に春那ちゃんと別れる。


カチャリ…


家の鍵を開けて、家の中に入る。


「ただいまぁ」


両親は仕事に行ってるから、返事はもちろん無い。でもそれを、寂しいとは感じない。


カワイイセーラーになっている制服を脱いで畳む。レモン色のワンピースを着て、勉強を始めるけれど。




「ああ、もうっ…」





消えない。



悠斗くんのいい匂い。



柔らかさ。優しさ。





そして、こびりついて消えない、







罪悪感。

13:梓:2013/07/04(木) 15:56 ID:JxA





なんで?


よりによって、春那ちゃんが悠斗くんを好きだって分かった日に。


これから、


これからずっと、




春那ちゃんの恋を応援して、


春那ちゃんが輝くのを見て、


私もああなりたいなぁって憧れて。



それで私にもステキな彼氏が出来て。



2人で仲良く恋バナして。



そんな夢を、


そんな幻想を描いてた。


…無理なの?



そうなることは、あり得ないの?

14:梓:2013/07/06(土) 07:06 ID:JxA

「っ…ああああぁああああああああっ、」

苦しい、

声が掠れて、涙が出る

こぼれおちてく

教えて、

誰か教えて、


誰か私を救ってよ。



私が、



春那ちゃんと仲良くできる方法。

これからもずっとずっと仲良しで居られる方法を、誰か教えてよ。

15:梓:2013/07/06(土) 07:15 ID:JxA


「おはよぉ」

「おはようございます、先輩!!」

今日も朝から、生徒会室で仕事。すごーく気まずいけど、悠斗くんは、私を信頼して、私を生徒会役員に選んでくれた。

だから、その仕事はしっかりとこなさなくては。


「だから、悠斗くんのほうが年上でしょ?あたしたちを先輩って呼ぶ癖は治しなさい!!」


「だって、このガッコにきた順番的には先輩ですもん。」

「はははっ、そうかっ!!」

楽しそうに話す、春那ちゃんと悠斗くん。

そっか…良かった。悠斗くん、昨日のことは言わないつもりなんだ。


全部全部、春那ちゃんに話す必要もないのかもしれないし。

「悠春ー、し・ご・としますよー」

「なにその略し方ぁ」

「先輩はおもしろいですね」

「だから先輩言うな!!」


よかった。


変わってない。

16:大和:2013/07/06(土) 08:07 ID:/qE

とても面白い作品ですね。
読みやすいですし、一人称なのによくできています。
なんというか、表現が独特でいいですね。
僕自身、あまり視点を変えたりするものは好きではないのですが…
この作品に関してはそれもまた悪くないと思いました。
どうぞがんばってください。

17:梓:2013/07/06(土) 19:13 ID:JxA

大和さん
コメント、ありがとうございます!
まだまだ未熟ですし、小説に関してよく分からない部分もありますが、よろしくお願いします。

18:梓:2013/07/06(土) 19:24 ID:JxA


「春那ちゃん、この昨年度の文化祭の出し物なんだけどさ、」

黙々と仕事を進めていく春那ちゃんに、悪いかな?と思いながらも声をかける。

「…」

それでも、私の声が聞こえていないのか、返事をしない春那ちゃん。どうしたんだろう?私、声小さいからかなあ…
今度は、少しだけ声を大きくしてみる。

「春那ちゃん、」

「…」

「春那ちゃん?」

ぞくり。背筋が凍り付いた。

春那ちゃんがこっちをじっと見てる。

でも、信じられない。これが、春那ちゃんなの?

皺が寄った目尻、強く結びんだ唇、怒りの熱がこもった目。

なんで?

春那ちゃん。

私、何か、気に触るようなこと…言ってしまったのかな。

キーンコーンカーンコーン

「あ、予鈴だ!さて、行こうっ!!」

…なんで?

チャイムがなって、すぐに立ち上がり、教室へ向かおうとする春那ちゃん。

「はる、なちゃ、「早く、早く行こうよ、さほ」」

怖い。

分からない。


向こうを向いた春那ちゃんの、

顔が、

声が、

心が、


何を言ってるのか分からない。

19:梓:2013/07/06(土) 19:31 ID:JxA

春那ちゃんと会話も交わさないまま、教室に向かう。

どうしよう。

どうすればいいんだろう。


私、唯一の友達である春那ちゃんを傷つけるようなことを知らず知らずのうちに言ってしまったのかもしれない。

してしまったのかもしれない。


必死で頭の中を探す。記憶の箱を開けて、深く深くまで掘って。

いつなんだろう、

なんなんだろうと考える。

そこですぐに思い当たる。


「悠斗くん…のこと?」

私の小さな声に反応したのか、春那ちゃんがふと振り返る。

「ん、どうした?」

その振り向いた春那ちゃんの顔がいつもの笑顔でちょっと安心する。

「ううん、なんでもないよ」

20:梓:2013/07/06(土) 19:41 ID:JxA


昨日、悠斗くんに抱きしめられたのを、

もしかして春那ちゃんは見ていたの?知っていたの?

「あ…」

喉がカラカラになって、思うように口が動かせない。言葉を発することができない。

『春那ちゃん、昨日さ、』

なんて言って切り出して、謝って。

いつものように話をしたいのに。

怖い。

もしかしたら、

もしかしたら、春那ちゃんは私のことを許してくれないかもしれない。

春那ちゃんは私を友達じゃないというかもしれない。


_____________嫌だ。


そんなの絶対に嫌だ。


春那ちゃんを、


大切な友達という存在を、


失いたくない。

21:梓:2013/07/06(土) 19:50 ID:JxA

「あれ、さほの髪良いにおい〜」

「あ、シャンプー変えたの」

「へぇえ」

分かってる。

怒りの矛先が間違ってるのは分かってるけれど。

どうしても、どうしても悠斗くんが分からなくて、苛立たしくて。

『さほ、頑張ろう!!』

『さほ、大丈夫っ?さほ、がんばってたから疲れちゃったんじゃないかなっ』


優しい。

春那ちゃんは私の何倍も何倍も、明るくて、素敵で、可愛くて、

優しいのに。

どうして、悠斗くんは春那ちゃんを好きになってあげないの。

どうして、悠斗くんは私なんかが好きなの。

「悠斗くん、こういう柔らかいにおい好きそうだなぁ…」

「っ!!」

苦しい。

22:梓:2013/07/06(土) 19:53 ID:JxA

春那ちゃんは悠斗くんが好きなんだ。

こんなにも好きなんだ。

いつも元気で明るい春那ちゃんに、こんないとおしそうな表情をさせるなんて。


…ひどい、

悠斗くんも。


_____私も。



ひどい。

ひどいよ。


こんなの、ひどすぎるよ。


どうして、


どうして上手くいかないの。

私っていう存在が、みんなの邪魔をしてるの?

なんで、私は。


こんな。

23:梓:2013/07/06(土) 19:59 ID:JxA


その後の授業は全く頭に入らなくて、

ただどうすればいいのかを考えてて。

私がなにをしてしまったのかっていう事実がはっきりと見えて苦しくて。

春那ちゃんが幸せになる方法を考えて。

ないんだって思ったら。

私の存在が嫌で嫌でたまらなくて。

本当に申し訳なくて。

「春那ちゃん、」

あれ、私、こんなに涙もろかったっけ。

なんて思うくらい、

トイレの個室に入ると、涙が止まらなくなってしまった。

24:梓:2013/07/07(日) 15:01 ID:JxA


…っ、辛い。

胸の奥がズキリと痛む。少しだけ頭もガンガンしてくる。

でも、これ以上に辛いのは春那ちゃんだ。

私じゃない、私はなんてこと無いんだ。
ただ、悠斗くんに告白されただけ。春那ちゃんを裏切るようなことをしてしまっただけなんだ。

だから、私が傷ついちゃいけない。

私が被害者ぶっちゃいけない。

「しっかりしろ、さほ。」

声を出して、少女マンガの主人公のようにぱんっと自分の頬を叩いた。


それでもまだ頭の中は鈍い。


「顔洗った方がいいかな…」


そんなことをぶつぶつ言って、個室を出た。

25:梓:2013/07/07(日) 15:36 ID:JxA


「さほ〜トイレ長すぎ!!ホラ、お仕事お仕事〜悠斗くん、もう行ってるかな?」

ごめん、

ごめんね…、春那ちゃん。

罪悪感でいっぱいなんだ。

どうしようもないんだ。

泣きたくて、

叫びたくて、

心から謝りたくてしょうがなくて。

…どうしようもないんだ。


ズキリ。


また痛む頭の奥。

罰が当たったのかな。

「っ…、」

辛くなってくる。

26:梓:2013/07/09(火) 19:01 ID:JxA


「いち、にっ、さんっ!!」


「いち、にの、さん」で生徒会員の会議用の机を運ぶ。


ちょっとだけ重たくて、悠斗くんに手伝ってもらっている。

悠斗くんは意識していないだろうけど、春那ちゃんの手と重なっていて、春那ちゃんはドギマギしている。


ああ…

私って絶対この場所にいちゃいけない。




あ〜あ、重い。




頭も、気持ちも。



全部、ぜえんぶ。



辛い…、

27:梓:2013/07/09(火) 19:11 ID:JxA


「さほ、大丈夫?ほんと顔色悪いよ」

「そうですよ、先輩…早退したほうがいいです。絶対!!」

「大丈夫、」


これはただ気分から来るものだ。


春那に対する申し訳ない気持ちでいっぱいなんだ。


どうしようもなくいやなんだ。



こんな汚い自分。



「っ…、」


ぐらり。




やだ。




うそ、




空っぽ。





全部空っぽになる。




真っ白。



真っ暗。






全部消える。






消えちゃえ。



大嫌い、




私なんて。

28:梓:2013/07/09(火) 19:32 ID:JxA

Haruna side.

「はぁっ、はぁっ、…っあっ!!」

がくりと膝から崩れ落ちて、そのまま倒れたさほ。

「さほっ、さほぉっ!!」


あんなに苦しそうにトイレで泣いてたのは。


こんなに、倒れるくらい、辛かったからなんだ。


「ど…っ、ど…う、しよ、どうしよぉっ、はる、とくん!!」


頭の中が真っ白になる。



いやだ。



いやだ。


もう、


消えちゃわないでよ。



もう、誰も、あたしの前から消えないで。


もう嫌だ。




失くしたくない。



大切な物。



大切な人。

29:梓:2013/07/09(火) 19:38 ID:JxA


やだ、どうしよう。


また、まただ。



また、あたしのせいで。



大切な人が居なくなっちゃう。



「はぁ、はぁ、」



さほ。



ごめん、




ごめん。


「先輩?」




「ごめんなさっ、はぁ、はぁ、はぁ、ごめんな、さ、はぁっはぁ、はぁっ、ごめっ、はぁ、」


いや、いや。



「うっ、あ、っ、はぁっ、いやあああああああ」




そこでぷつり。意識が途切れた。

30:梓:2013/07/09(火) 19:58 ID:JxA

Saho side.

「先輩、早く!!早く目を覚まさないと、はるちゃんが…」

『はるちゃん』 



朦朧とする意識の中で、分かった。



そんな声がすることと、


その声が悠斗くんのものだということと、



春那ちゃんの呼び名だということ。



理解できない悠斗くんの言葉を必死に理解しようと、悠斗くんに問いかけようと、言葉を発そうとする。



それなのに、頭も、口も、瞼も。


思うように動いてくれない。


そして、やっと掠れた声が自分の口から出たのは、悠斗くんが涙を流したときだった。


「あ…、」


「っ、先輩?!先輩!!大丈夫ですかっ、」



私が目を覚ましても、

悠斗くんの涙が止まらなくて。


あぁ、その涙は、



春那ちゃんのために流しているんだね。

31:梓:2013/07/09(火) 20:02 ID:JxA


「ここ、病院…?春那ちゃんは、?」


「はい、慶永病院一般病棟です、先輩、倒れて…」



そんな会話をしながら、


悠斗くんが春那ちゃんを大切にしてるんだって分かって、嬉しくなる。


それと同時に、



そのことに対して、嫉妬している私が居るのが、


_______嫌になる。




そうだ。


春那ちゃん、



春那ちゃんは?



「先輩は、」



「発作が出て…今、絶望的な状態です。」







なにも言えなかった。



一瞬で飲み込めるようなことじゃなかった。


なに。


『発作』



『絶望的』



どういうこと。


どういうことなの。

32:梓:2013/07/11(木) 20:05 ID:JxA

勢いよく立ち上がった私を静めると、悠斗くんは決心したように言った。


「先輩、先輩には、覚悟がありますか?」

ぞくり。

怖い。


すごく怖い。


悠斗くんが、何を言おうとしてるのか。

だいたいの予想がつくから怖い。

「どういうこと…、」

カラカラになった喉を少しずつお茶で潤しながら、悠斗くんに問う。

「受け止めることは、できますか。」


怖い。

すごく怖い。


でも、それでも。やらなくちゃ。


私は、悠斗くんに向かって強く頷いた。

33:梓:2013/07/11(木) 20:11 ID:JxA


「実は________」


事の重大さを伝えるような、重々しい口調で悠斗くんは話し始めた。


悠斗くんの話を聞くと、私の不安は収まるどころか、『絶望』へと変わっていってしまった。

嫌だ。

怖い。


悟ってしまったから。

春那ちゃんは、今私の想像を絶する状態にいるのだと。

膝が、ガクガクと震え、立てなくなった。

でも、辛いのは。

本当に苦しくて辛いのは。


春那ちゃんじゃないか。


私が、


私が苦しいなんて言っちゃいけない。


だめ、

だめだ。


「春那ちゃん!!春那ちゃんは、どこっ、」


どこ?この病院のどこ?


凄い勢いで立ち上がり、カタカタと腕から伸びている点滴のパックが揺れる。


行かなくちゃ、そう思うのに。

「だめです、先輩の保護者の方も今こちらに向かってるので、お願いですから安静にしてください!!」


悠斗くんの声に、揺れる。

34:梓:2013/07/11(木) 20:25 ID:JxA


「で…も、」

立っていることさえ辛くて、苦しくて。

へなへなと座り込んだ私に、悠斗くんは言った。

「はるちゃんの思いを、無駄にしないでください…っ、」


それはあまりにも弱くて。

それでも強い願いで。


悠斗くんの悲しみが伝わるには、強すぎて。


「はる…、と、くんっ…、」



同時に、私の恋が、終わった瞬間でもあって。

35:梓:2013/07/11(木) 20:30 ID:JxA

そして、今は日が暮れてしまって、夜。

私は念のため1日入院。

悠斗くんは春那ちゃんの病室に居るそうで。


私だけなにも出来ることが無く、空しく窓の向こうを見つめてる。


終わってみれば、

恋ってこんなものだったのかなあなんて客観視することができる。

あんなに渦中にいるつもりで、

自分が春那ちゃんの恋を邪魔してるつもりだったんだな。


「春那ちゃん」


会いたい。


もう一度。

もう一度だけでいいから。


あの明るい声を、


あの笑顔で、


『さよなら』じゃなくて



『またね』って言ってほしいんだ。

36:梓:2013/07/13(土) 18:57 ID:JxA


Haruna side.

さほ、

はるくん、


ねぇ。


2人は今何をしてるのかな。


何を思ってる?


悲しんでる?

哀れんでる?


それとも、事実を伝えなかった私を憎んでいる?


どっちでもいいや、



あたしは。



ただ、さほとはるくんには。



笑っていてほしいんだよ。

37:梓:2013/07/13(土) 18:59 ID:JxA


さほはさ、自分のこと嫌いかも知れないけど

あたしはさ、


丁寧で、優しくて、強いさほが大好き。


ごめんね、


『ずっと一緒にいたい』


だっけ。


あの願いを、叶えてあげることが出来なくて。



でも、さほ。大丈夫。


さほには、はるくんがいるよ。

38:梓:2013/07/13(土) 19:02 ID:JxA


はるくんはね、さほのことを想ってるよ。

大切だって、

壊したくないって。


あたし…、ズルいなぁ。


あたし、どこまで未練があるんだろう。


2人を邪魔したいんだろう。



でも、あたしは。


もう戻れない。


なんでなんだろうね。


悪いことは進むばっか。


いいことはなくなってくばっか。



あたしも、はるくんにかっこつけたこと言っちゃった手前、もう引けないんだよなぁ。


つよがるんじゃなかったなぁ。


白くて無機質な天井を見つめながら、独りでそんなことを思った。

39:梓:2013/07/14(日) 12:49 ID:JxA


Saho side.

わたしが居なきゃ良かった。


春那ちゃんを苦しめることもなかった。


自惚れて、


気づかないこともなかった。



『ずっとずっと、はるちゃんが好きでした。』



悠斗くんが、春那ちゃんを好きだって。

40:梓:2013/07/14(日) 13:11 ID:JxA

なんで気づかなかったんだろう。
悠斗くんの行動は全て、春那ちゃんのためのものだった。

私と二人きりのとき、悠斗くんは私のことを「英田さん」と呼ぶのに、春那ちゃんが居るときは「先輩」。

それは、春那ちゃんのことを「木崎さん」と呼べなかったから。ましてや、「はるちゃん」なんて呼べば、女子の反感を買うのは間違いのないことだったから。

だって2人は、「兄妹」だったから。

41:梓:2013/07/15(月) 16:58 ID:JxA

そう。

悠斗くんから聞いた話。

悠斗くんと春那ちゃんはもともと「木崎」だったけれど、5年ほど前。生まれつき持っていた春那ちゃんの病気が悪化。余命が3年だということを知り、その時父親との不仲でうつ病になりかけていた母は教育を放棄。離婚を選択した。出来の良かった悠斗くんは母方に引き取られ、この街を離れた。
だけど悠斗くんは決心してた。春那ちゃんの余命が1年になったらひとりでこの街に戻ってこようって。絶対に悲しい最期にさせないんだって。
だから、今こうして。うちの学校に来ているんだ。

なんで、すぐ戻ってこなかったのかって聞いたら、悠斗くんは言ってた。

『そのときはるちゃんは10歳で、僕は11でした。突然兄と母が消えて、すぐに戻ってきて。理解できないだろうし、4年の間は、忘れてほしかったんです。はるちゃんを嫌った…母の存在を。それに、その時ははるちゃんの中に無かったんです。憎しみという感情が。だから、そのままであってほしかった。憎しみを持たず、自分を愛してくれたお母さんだと思っていてほしかった。最期まで…。無理だったみたいですけど』


そんな風に吐き捨てた悠斗くん。

春那ちゃんは、そのままじゃなかったね。憎しみではなく、申し訳なさを持ってしまった。

『お母さんは…?』

『…、死にました。3年前。うつ病が悪化してしまって。自殺です。はるちゃんが病気だってこと、分かる前は良い母でした。それで…、それを父に知らせたら、父がはるちゃんに知らせて。自分のせいでうつ病になったと思ってしまって。』

 

42:梓:2013/07/16(火) 17:36 ID:JxA


ああ。馬鹿だ私は。

『ずっと一緒にいたい』?
『笑っていたい』?

出来もしないくせに。春那ちゃんはもう居なくなっちゃう。それを知らなかったとはいえ、春那ちゃんにそんなことを云って強く傷つけた。最低だ。
私、嘘をついた。きっと春那ちゃんの余命が僅かとなったら、私は泣いてわめくんだ。笑ってなんて居られないよ。強くいるなんて出来ないよ。

…私、春那ちゃんの友達として失格だ。

なにやってるんだろ。

「さいあく…、」

涙が零れた。

43:梓:2013/07/21(日) 14:21 ID:uKw


私が居なきゃ良かったよ。


そうなら。


私が居なかったら。


春那ちゃんは悠斗くんに思いを伝えられていたのに。


馬鹿。馬鹿。


最低だ。


そんなことを考えて、目を閉じると、深い眠りに落ちていった。


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