ビー玉

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1:塔 ◆iUSU:2013/07/19(金) 03:46 ID:i-yHk


カンッ。

近くで何かが落ちた音がした。それはゆっくりと転がり、私の足元に辿り着いた。
屈んでそれを拾い、光にあてて覗き込んだ。

「…ビー玉…」

ビー玉にうつったものは、ぎこちない笑みを浮かべる昔の私だった。

2:塔 ◆iUSU:2013/07/19(金) 04:12 ID:i-0l.


「まーた暗い顔してる」

首筋が凍った。後ろを振り向くと、親友の萌花が冷たそうなペットボトルを手に、上から見下すような、そんなカオで私を見ている。

「びっくりした?」
「別に」
「つまんないヤツ」
そう言うと萌花は私の席の隣に豪快に座り、ペットボトルの蓋を開けジュースを飲んだ。

「いる?」
萌花がペットボトルを私に差し出した。
「いらない」
私は萌花の顔も見ずに答えた。
「ふっ、もしあたしが鏡だったらこのペットボトル受け取ったんでしょ」
楽しげに笑う萌花に私は呆れることも怒ることもなく、遠くにいる鏡を見た。

3:塔 ◆iUSU:2013/07/19(金) 04:52 ID:i-0l.


「あっ、また鏡のほう見てる〜。白状しちゃいなって美麗、鏡が好きなんでしょ?親友のあたしにはバッレバレ〜」
萌花が私の頬をつついてきたが、私はそれに反応することもなく「どうしてそう思うの?」と尋ねた。
「だって、授業中何度も鏡のほうを見てるんだもん」

鏡優人。外向的な性格で、誰とでも仲が良い。凛々しい顔立ちは女の子達から人気だ。少し着崩した制服に赤いベルト。彼は“学年一のイケメン”と言われている。

私と萌花は再び鏡のほうを見た。
鏡は友達と話していたが、こちらの視線に気づき会話をやめ、私か萌花、どちらかに微笑んだ。

「「!」」
私たちはすぐさま鏡から視線を離した。

4:塔 ◆iUSU:2013/07/20(土) 01:53 ID:i-O.c


「ねえ、萌花」
いつも通りの帰り道。いつもと何ら変わらない風景を眺めながら、蝉のせわしい鳴き声に負けない大きなはっきりとした声で、私は萌花の名を呼んだ。
「何?」
萌花はアイスが溶けてたれそうなのを気にしながら返事をした。
「萌花、鏡のこと好きなんでしょ」

ボタッ。

萌花のアイスが溶けて、地面に落ちた。

「…は?」
萌花の頬が赤く染まってゆく。
「私、前から気付いてたの。だって萌花、しょっちゅう私に鏡の話題を振るんだもの」
「違うわよ!あたしは…」
「親友だもん、それくらい分かるわよ」
「……」
観念したようだ。萌花は立ち止まり、俯いた。
「…でも、美麗だって好きなんでしょ、鏡のこと」
「私は毎日黒板を見ていただけ。ちょうど黒板を見ると鏡が視界に入るから…それで勘違いしたんでしょ、私が鏡を好きだって」
「…そうなの?」
「うん」
私は少し微笑んだ。
「…じゃあさ。私を応援してくれる?」
萌花は顔を上げた。まだ顔が赤い。
「もちろん」
「…親友よ!」
萌花は私に抱き着いた。そして身体を離してから、「そうだ、これ」と何かを私の手に握らせた。私はゆっくりと手を開いた。

「…ビー玉?」

ガラスでできた透明なビー玉が手のひらに乗っていた。
「そ。最近集めてんの。私のお気に入りのビー玉、あげる」
「ありがとう」
私は萌花に笑んでから、ビー玉をぎゅっと握った。


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