宵月の古刀

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1:ミクサ ◆YUb2:2013/07/19(金) 18:38 ID:okU

『宵月の古刀』−手毬唄−

 水面一面、紅蓮の花が咲き乱れ、それはまるで、燃える水の様だった。
水面には、鏡のように花が映し出され、それは幻想的な景色を作り出している。

 思わず目を奪われるような光景の中、水面の上に一人の童女が手毬を突きながら唄っていた。
それはとても、愉しげに。そしてとても、妖しげに。


『今宵の闇は、如何なる事か。蜘蛛の古刀は、如何なる物か。
公算、乱舞し人は皆。宵に酔って殺し合う。赤き鮮血、身を汚し、いざ勇敢に永逝す。

今宵の闇は、如何なる事か。今宵の古刀は如何なる物か。月の城には鮮血が、兎を象り燃ゆる』


舌足らずな少女の声だが、よく耳に届く。高く小さな声は、止まらない。
いつまでも、いつまでも、紅蓮の手毬を突きながら、愉しげに、妖しげに唄う。

2:ミクサ ◆YUb2 hoge:2013/07/19(金) 18:43 ID:okU

改めまして、ミクサです
この名前を使うのは久しぶりですし、いつもは違う名で書かしてもらっています

ある友人に、会いたいなあと、分かりやすいようにこちらの名にしました
まあ、ともかく今回の話は蜘蛛切丸という刀を奪い合う、妖怪と共存していた遥か昔の話です

駄作になりますが、どうか楽しんでいただけるよう頑張りますので、宜しくお願いします

3:ミクサ ◆YUb2:2013/07/19(金) 20:14 ID:okU

『宵月の古刀』−新参者−

 時は、あやかしと呼ばれる、俗でいう「妖怪」と人間が共存していた頃に遡る。
その頃は、人々は妖怪から身を守るために、妖刀を家宝として置くことが多かった。
そのためか、刃社という神社のように、刃を祀る社が、國々にあった。

 それは、田舎である小々陬國でも同じだった。
小々陬國の遥か北には、小さいながらも立派な刃社があり、そこには代々受け継がれる妖刀、時雨丸が祀られていた。
時雨丸は時雨丸でも、小夜時雨丸といい夜に強い効力をもつものだ。


 そんな、小夜時雨丸の祀られる間に少年……いや、少女とその父が向き合って座っていた。
少年と見間違うほどに、凛とした精悍な顔つきをした少女は、父に向かって大声で叫んだ。

「父上。都は所有者を失った蜘蛛切丸を奪い合う戦乱が起こっていると聞きます」
「うむ」
「どうか、私にこの小夜時雨丸を持って、都へ行かせてください!」
 少女が、目を閉じて深刻な顔つきをする父に向かってそう言った。その瞳には決意の意志が見え、とても凛々しい。
覚悟も充分にあるようだが、父は俯くと首を横に振った。

「駄目だ。それは、流石に……」
「何故ですか?!」
口籠る父に、少女は意を決したように、立ち上がり、小夜時雨丸に近づきながら言った。
「私が……女だからですね」
その涼やかな言葉に、父親の方は分かりやすく動揺した。それを、しっかり見た少女は刀を手に取ると
「…………ならば、私は……いえ俺は今日名を改め、男になる」
そう言うや否や、刀を鞘から引き抜き、後ろで束ねていた髪を切った。

 そのまま、刀を鞘に納めると腰に差し、父を見る。
父は、まるでそれを予測していたかのように微笑み、そして少し寂しげに目を伏せて言った。
「それでこそ我が『息子』。都での戦乱を治めてきなさい」
「……御意」

4:ミクサ ◆YUb2:2013/07/19(金) 20:23 ID:okU

(※小々陬→オオスミ・・・日本の九州辺り<大隅>
  刃社→ジンジャ・・・刃を祀っている社
  小夜時雨丸→サヨシグレマル・・・時雨丸の一つ
  蜘蛛切丸→クモキリマル・・・源頼光が土蜘蛛を切ったといわれる刀)

この物語は、異次元の昔の日本という設定になっています

5:ひなの@ ◆NLsI:2013/07/20(土) 13:42 ID:bdU



お久しぶりです、白夜です。覚えてますか?

前よりももっと上達してませんか…?
私も見習いたいです^^

6:ミクサ ◆YUb2 hoge:2013/07/20(土) 13:45 ID:okU

お久しぶりです!!

ひなの(白夜)さんにそう言っていただけるなんて(涙)
ありがとうございます<(__)>

7:ミクサ ◆YUb2:2013/07/23(火) 18:08 ID:Qds


 『少年』となった少女は、父の顔を見ずに、少し躊躇ってからそう言った。
淋しさや、期待や、不安や……そんな物の所為で、父の顔を見ることが出来なかった。

 そこから、二人とも一言も交えぬまま、"少年"は荷物を纏め、もう一度父の前に正座した。
腰から刀を抜き、片足を立てるような膝立ちになり、立ち上がった父に頭を下げる。

「『我が露命尽き果てるまで、戦わんこと誓う。偉大な小夜時雨と我が露命、如何なる時も共にあれ』」
「『その誓い聞き届けたり。小夜時雨と共に、如何なる時も共に分かち合いたまえ』」

 妖刀、小夜時雨丸に言い継がれる継承の誓いの言葉を述べると、少年の腕にそれを表す紋が現れる。
赤黒い、血のような色をしており、手首辺りに鎖のように描かれていく。
そして、最後にまるで焼けたかのようにジュッと音を立て、怪しい形のものが現れた。

 流石に、これには堪えたのか顔を歪めて手に力を込めた。
が、運が悪いのか刀を鞘からも抜いていたために手から血が滴る。点々、と板間に赤い模様を作った。
少年は、まるで痛覚がなくなったのか血が出ているところを、あり得ないというように凝視する。
その手には、傷跡が、全くといっていいほどなく、残っていたのは綺麗な赤い血だけだった。

8:ミクサ ◆YUb2:2013/07/26(金) 09:07 ID:Kis


「……それが、契約だ」
 父はそう静かに言うと、布でその血を拭き取った。そして、契約印の隠れる幅の輪を取り出した。
そして、それを少年の腕につける。まるで、それは、そこに付くのが分かっていたようにピッタリしていた。

「ありがとうございます、父上」
「…………どうしても、……行くんだな」
 その言葉に思わず少年は、父を見る目線を外した。父も、背を向け、間の奥へと歩く。
そんな父の足元だけを見つめながら、少年は、落ち着いた、静かな口調で返答する。
「はい。……今まで、ありがとうございました」
少年は、そのまま立ち上がると振り返りもせずに、出入口へと向かう。
父も、その場から動くことなく、たった一人の娘の別れを見送った。


 ____「大丈夫だ。お前なら、絶対に出来るから」
そんな父の声が刀の置いてあった間に響いた。その声は、少年に届いたのか……少年は頬を緩めた。


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