猫の手部、始動!!

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1:音音 ◆YmRg:2013/07/30(火) 17:05 ID:k.c

−市立芳優高等学校−
ここは、悩みを持つ者が集う場所−多分。

***

皆さん多分初めまして。
これは私が思いついたときに更新していく小説です・・多分←

▲諸注意▲
・正直、下手だと思います。(((殴
・多分、恋愛とかはあまりないほのぼの(?)になると思います。
・下らないものばかりだと思いますが、それでも読んでやんよ!! という方だけお願い致します。
・荒らす人はまぁいないでしょうが・・とりあえず荒らさないでくださいね(^言^)
・荒らさない程度の批評なら受け付けます。喧嘩しなければ、ズバズバ書いてってください。
・『なんだこれ超下らねぇおもしろくねぇ』な方はこのスレは無視してください;;;

以上です。
じゃあ、早速いってみましょー。

Are you ready?

2:音音 ◆YmRg:2013/07/30(火) 17:49 ID:k.c

市立芳優高等学校。
創立二十年の、ちょっと新しめの学校。
といっても、見た目も制服もそこらの学校と同じような、取り立てて何の特徴もない学校。
−だが、この学校には悩める者達が集う・・らしい。

***

「と、いうわけで、部活を作ろう!!」
そんな発言と共に、少女は机をバン、と叩き立ち上がった。
場所は、校内のとある教室。教室とはいってもあまり使われていないのか、狭い室内には事務用の長机が二つと、イスが五脚ほど、ちょうど会議をするように配置されているだけだ。
少女の名前は、桐生凛子(きりゅうりんこ)。金髪の長い髪を左の高いところで結び、こちらも長い前髪を左右に分け、それぞれ赤いピンで留めている。白いブラウスに赤いリボン、スカートという服装は、学校指定の制服を違反せずに着たものだ。二日前にこの学校に入学してきた一年生だ。
そして、室内にはもう一人、もう一つの机で凛子と向き合うようにイスに腰掛ける少年がいた。
「・・どういうわけで部活を作るんだ」
こちらは、腕をくんで呆れたように凛子を一瞥し、そう呟く。

【微妙なところで切れますが、文字数に制限があるので続きは次に;;】

3:音音 ◆YmRg:2013/07/30(火) 18:18 ID:k.c

>>2の続きから】

男子にしては少し長い黒髪、カッターシャツとズボンは少し着崩し、指定のネクタイは着けていない。こちらの少年の名は松岡恵(まつおかさとし)。凛子と同じく、先日入学してきた。
「で、何で部活作るワケ?」
恵は凛子に問いかける。が、あまり興味はなさそうで、机に置かれている、持参してきたであろう文庫本に目を落としている。
「暇だから」
凛子の方も軽い口調でそう答える。
「それだけかよっ」
思わず突っ込む恵。本気で聞くつもりは無かったのだが、あまりに軽い受け答えに突っ込まずにはいられなかったというところだ。
「つーか、まず何の部活を作んの?そういえばここから聞いてなかったわけだけど」
現在この学校には、運動部なら野球、サッカー、ソフトボール、バレーボール、バスケットボール、卓球その他、文化部なら吹奏楽部、美術部等、定番の部活は大抵そろっている。
「あと『ラノ漫ドル研究部』とかいうわけわからん名前の奴等もいるけどな」
「まぁ分けて考えれば内容はわかるっちゃわかるんだけどねぇ」
とにかく、本来ならこれ以上必要な部は無いだろう。だが、それでも凛子は『部活を作る』と言った。

【続き>>4

4:音音 ◆YmRg:2013/07/30(火) 18:46 ID:k.c

>>3の続き】

凛子が作ろうと言い出した、その部活の名前とは−−
「内容は、人助け! 名付けて−−」

「猫の手部ッ!!」

ビッ!! と人差し指を立てて声を張り上げた凛子。狭い室内にその声はよく響いた。
が、恵の反応はといえば、
「・・は?」
と短く声を上げ、怪訝そうに凛子を見上げるだけだ。
がっくりと肩を落とした凛子が呟く。
「もっとちゃんとリアクションしてくれたっていいじゃない・・」
「精一杯のリアクションだよ」
そんな凛子に、恵の方も言葉を返す。
「つーか、冒頭でいきなりのあの発言といい、結構わけわかんねぇから」
「そうかなぁ・・?」
「そうだよ。まぁ、お前は昔から困ってる奴は放っとかないタイプではあるけどさ・・」
因みに、二人は実家も近所同士で、親同士の仲も良い。凛子と恵は、いわゆる幼なじみというものだ。
「うん・・そうだっけ?」
「いや自分のことだろ!」
「まぁ昔のことはどうでもいいやぁ。肝心なのは、今でs「じゃあご説明どうぞ」」
今流行のフレーズでボケようとした凛子の言葉を遮り、恵は説明を促す。凛子の方はその対応にムッとしながらも、素直に説明を始める。

【続き>>5

5:音音 ◆YmRg:2013/07/30(火) 21:19 ID:1GA

「まぁ、まず一つは、何か人助けとかしてるマンガとかが好かれてる気がするから?」
「・・そういう問題かよ」
恵はその理由に思わずため息を吐いた。
「つーか、それは作者さんの描き方が上手いから売れるんだろ?」
「まぁまぁそうなんだけど、まだ続きはあるんだって」
凛子の方も、苦笑いしながら話を続ける。あまりいい話は期待できないだろうが、と恵も黙って聞く体勢に入った。
「私はつまり、それだけ困ってる人がいるんじゃないかなって。だから・・」
「・・だから?」
この時点で突っ込みたいところがある恵だが、凛子の話はまだ続くようなので、そこは我慢して先を促す。
「この学校にも困ってる人ってたくさんいるよねだからこういうのって必要だよね!!」
「ちょっと待てやっぱお前強引に話進めてるだろ!!」
凛子が強引に意見を押しつけて話を切り上げようとしたところで、ついに恵が突っ込んだ。
「だって、昔から万屋とかあったのはそういうことじゃない?」
凛子も口をとがらせて反論する。
一方、先ほどから凛子の突っ込みに徹している恵だが、
「いやごめん俺もちょっと納得しそうになったけどやっぱ違うだろ!」
こちらも凛子の無茶苦茶に釣られかけていた。

6:音音 ◆YmRg:2013/07/30(火) 21:48 ID:1GA

「じゃあ何よぅ、文句あるの?」
「あー、まぁ・・」
いじけ始めた凛子に、冷静さを取り戻してきた恵が自分の意見主張に入った。
「俺が思うに、困ってる人がいるとしても部活を作る必要があるのか、ということだ」
恵は真面目に言葉を選んでそう言うのだが、凛子はというと・・
「・・え?」
とぼけたような顔で首を傾げている。本当にわかっていないのだろうか。
(こんなバカ相手に真面目になるんじゃなかった)と思いながらも、恵は話を続ける。
「そりゃ、悩める人もたくさんいるだろうけどさ、学校だと友達とかと一緒に解決できるんじゃないか?先生とかもいるし」
気分は生徒に物事を言って聞かせる先生だ。が、この生徒は簡単に『はーい』なんて言わない。
「友達にも言えないことってあるじゃない」
こうやって、二人の言い合いは続いていった。
「いやどんだけ友達信用してねぇんだよ」
「他人だからこそ気楽になれるのよ!」
「ここネットじゃないから下手したらネットより怖いから!」
「てか恵は私に部活作らせたくないだけじゃん!」
「お前の方は部活作りたいだけだろ!」
「放っとけ!」
二人が開き直り始めたところで、

ガラッ

突然教室の扉が開いた。

7:音音 ◆YmRg:2013/07/30(火) 22:15 ID:1GA

「あれ?先客さんがいるー・・」
ぽわぽわと花を出していそうな空気で室内に入ってきたのは、一人の女子生徒だった。
天然パーマらしいくるくるの短い茶髪、睫の長い、少し垂れ目気味の目、制服は凛子と同じように違反がない。少し厚めの本を抱えている。
凛子と恵は同時に扉の方へ振り向いた。恵の方は『誰?』という顔をしただけだったが、凛子の方は
「あっ」と声を上げた。
「・・知り合い?」
恵は、凛子と少女を交互に見やる。
「うん。・・同じクラスの、野沢琉那(のざわるな)ちゃんだよね?」
因みに、凛子は1-C、恵は1-Bである。
「そうだよー。あなたは、桐生凛子ちゃんだよね?」

【続きはまた明日!!(((殴殴】

8:音音 ◆YmRg:2013/07/31(水) 14:19 ID:iHs

***
その後、三人は各自己紹介し、ついでにこの教室に来た経緯を話した。凛子と恵も一緒にここに来たわけではなく、恵がこの教室にいるというのを聞いて凛子も来たという感じだ。
因みに、恵と琉那は静かな場所を求めていたそうだ。
「ウサちゃん先生も適当な仕事するなぁ。一人になりたいっつってんのに同じ教室勧めたり」
『ウサちゃん先生』とは、宇佐美月子(うさみつきこ)という名前に凛子が勝手にあだ名を付けたものだ。1-Bの副担任であり、恵と琉那にこの教室を勧めた先生である。
「つーか、本持って校内さまよってたら声かけられた」
「あ、私もそれだぁ」
「何かそれ、裏がありそうね・・」
そんな話が人段落したとこで、ふと凛子が「ところで、」と切り出した。
「琉那ちゃん、部活作るのとか、興味ない?」
「関係ない人を巻き込むな!!」
恵が凛子の頭をはたく。
「関係なくないわよぅ!琉那ちゃんだってここの生徒じゃない!!」
「だからって・・」
そんな感じで言い合いをする二人に、
「楽しそう・・」
と琉那が呟いた。

9:音音 ◆YmRg:2013/07/31(水) 18:10 ID:e4c

「楽しそうって、何が!?」
その呟きに、凛子は敏感に反応した。期待の眼差しで、琉那の方へ身を乗り出している。
恵にも聞こえていたが、部活を作るのが楽しそうなのか、二人の言い合いが楽しそうだったのか・・。どちらにしろ、恵にはその感覚がよくわからない。
「え、えっと・・部活、一緒に作るのかな」
身を乗り出す凛子に少し戸惑いながらも、琉那はそう答えた。
「やっぱり?そう思う!!?」
「お前は落ち着け!」
目を爛々とさせて更に琉那に近づく凛子を恵が引き戻す。
「うん、部活を作るのも楽しそうだけど・・二人と一緒に作るの、なんか賑やかで楽しそうだなぁ・・って」
「琉那ちゃん・・っ」
えへへ、と気恥ずかしそうに笑う琉那に、凛子が飛びついていった。
「こんな恵でも、宜しくねぇぇえっ」
「な、何か結婚するみたいだし、凛子ちゃんは宜しくじゃないの〜?」
突然飛びついてきた凛子に戸惑い、少しおかしい日本語になりながらそう言う琉那。
と、
「ちょっと待て」
と声を上げたのは恵。
「その部活、俺も入るのか?」
恵の質問に、凛子と琉那は思わず動きを止め、
「は?」「え?」
と、同時に聞き返した。

空間は、沈黙に包まれた。

10:音音 ◆YmRg:2013/07/31(水) 20:23 ID:KBk

「恵・・」
沈黙を破ったのは凛子だった。
「あんたもしかして、この流れで自分関係ないとか思ってた!?」
凛子の隣で、今まで穏やかだった琉那の表情にも、心なしか呆れの色があった。
「いや、だって関係なくねぇ!?」
恵は必死に無関係を主張しようとするが、それを簡単に受け入れる者はこの場にはいない。
「つーか、何で無関係ならあんなに反対してたの!!?」
「何かバカがバカ言い出したとか思って止めてやったんだよ!」
「松岡君、それは苦しい」
琉那が穏やかに宥めるが、その穏やかな表情でため息を吐かれそうな感じだ。正直それが一番傷つく。
その後、琉那が見守る中、例によって凛子と恵の無茶苦茶な言い合いが幕を開けた。琉那もたまに発言するが、そのほとんどが凛子に味方するものだ。
そして結局、無茶苦茶な言い分に折れたのは恵の方だった。
「・・そこまで言うならわかったよ。やってやろうじゃねぇの」
何故か喧嘩腰で。というより、元は恵が原因の喧嘩であったが。
「いぇーい」「やったぁ」「さっすがぁ」「イケメンー」
凛子と琉那も調子に乗って色々言ってみると、さすがに二人とも頭をはたかれた。

11:音音 ◆YmRg:2013/08/01(木) 20:40 ID:rYQ


***

「はい、じゃあこの紙に必要事項書いて提出してねー」
職員室にて。
三人は部の創設許可を貰うため、担当の先生のところへ来ていた。
「え゛っ。今の説明でよかったんですか!」
と言ったのは、凛子である。ちなみに、先生に説明したのも凛子だ。嬉しそうなのだが、ここまで軽く通されるとは思っていなかったようだ。
「お前、あれだけ無茶苦茶言って作るってうるさかったくせに、自信ねぇのかよっ」
突っ込むのは、例によって恵だ。
琉那はというと、二人の隣で穏やかに微笑んでいるだけだ。
「人助けということは、私たち先生も色々頼んじゃっていいということだろう?」
先生は満面の笑みで言った。
「そういうことっすか・・」
凛子は苦笑いだ。
「まぁいいんじゃないかなぁ。先生も認めてくれるってことだよ、きっと」
琉那が穏やかにそう言う。

何はともあれ、ここに『猫の手部』が始動しようとしていた。

12:音音 ◆YmRg:2013/08/02(金) 18:39 ID:Epg

***

場所は変わり、また先ほどの教室にて。
三人は、設部届けの必要事項を確認していた。
「部員三人からか・・。丁度いいな」
「ホント、琉那ちゃんが来てくれてよかったー」
感心する恵に、凛子も嬉しそうに言う。
言われた琉那の方は、
「そんなぁ・・ここを勧めたのは宇佐美先生だから・・」
照れ隠しのようにそう言い、穏やかに微笑む。
『部活動名』、『設部動機』と確認していき、用紙に記入していく。
「ところで、『猫の手部』って、どういう意味?」
質問したのは琉那だ。
「そういえば、聞いてなかったな・・」
恵も気になっていたらしい。
確かに、少し不思議な名前ではある。シンプルにこない辺りは、凛子が考えたためだろうか。
が、凛子の説明はシンプルであった。
「ホラ、『猫の手も借りたい』とか言うじゃない?」
「そういうこと・・」
恵の表情が少し柔らかいのは、納得しているかららしい。
「つまり、私たちが『猫の手』になるってことだよねぇ」
先ほどと変わらない表情で琉那。実は少し予想していたらしい。
「あと、猫が好きだから!!」
「「単純だなぁ・・」」

13:音音 ◆YmRg:2013/08/02(金) 18:51 ID:Epg

そんな感じで記入を進めていた三人だが・・。
「皆さん、一つ問題があります」
神妙な顔で言ったのは凛子だ。恵と琉那も、少し堅い表情で凛子を振り返る。
「お気づきかと思いますが・・」
用紙の必要事項の一つを指さす凛子。

項目は・・『顧問』。

他の二人も、それは気にしていたようで。
「やっぱ、見つけなきゃいけないよな・・」
「顧問の先生いないと、部活にならないもんねぇ」
一様に頭を抱える三人。

教室のスピーカーからは、最終下校時間を告げるチャイムが流れた。

14:音音 ◆YmRg:2013/08/02(金) 19:34 ID:Epg

***

翌朝、学校。
多くの部活は朝練が始まり、学校中が賑やかになってきた時間帯。
丁度、教師たちも出勤してくる時間帯だ。

玄関から職員室に続く廊下で、教師たちや生徒の挨拶が交わされる。
職員室の前まで来ると、多くの教師が足を止めた。
そして、多くの教師が疑問を口にする。

「昨日までこんな掲示物あったっけ・・」

15:音音 ◆YmRg:2013/08/02(金) 22:06 ID:Epg

***

放課後。
凛子、恵、琉那の三人は、昨日と同じように教室に集まっていた。
もう既に、この教室は三人のたまり場−−もとい、『部室』になりかけていた。

「顧問の先生、どうしよっか・・」
言ったのは、琉那だ。
設部の許可は下りたものの、三人にはまだ一つ、問題が残っていた。

それが、『顧問の先生』である。

昨日から三人を悩ませているが、今のところこれと言った打開策は示されていない。
「つーか、こんな部についてくれる先生とかいんのか・・?」
机に頬杖をついた恵が呟く。
とは言え、顧問が一人つかなければ、部活として認められない。

『どうしたものか・・』と恵と琉那が頭を抱えているところに、凛子が声をあげた。
「・・私にいい考えがある」
机に肘をつき、指を絡ませた向こう側で凛子が微笑んだ。

「「・・?」」
恵と琉那は、一斉に凛子振り返る。

「いい方法って、何?」
琉那が、期待を込めた眼差しで凛子を見つめる。
「うん、実はもう実行されてるんだけど・・」
「マジか!!」
恵が、イスが倒れるほど勢いよく立ち上がった。
その計画とは−。


とその時、教室の扉が開いた。

「職員室の前にこれ貼ったの、君たち?」

16:音音 ◆YmRg:2013/08/03(土) 15:02 ID:WDU

そこには、広告らしき紙を持った一人の女教師が立っていた。
「ウサちゃん先生だぁっ」
凛子が嬉しそうに立ち上がる。

前にも少し紹介したが、『ウサちゃん先生』とは、1年B組の副担任、宇佐美月子のことだ。
年齢はそこそこ若いよう。顔もそこそこ可愛い。昔は雑誌の読者モデルなどもやっていたようだ。

「・・『ウサちゃん先生』って、私のこと?」
宇佐美は怪訝そうに聞き返す。凛子たちはこの学校に入学して四日目であり、凛子と月子が話すのもこの場が初めてなので、月子はこのあだ名を知らない。
「私が考えたんです! 可愛いでしょ?」
自慢げにそう言う凛子。月子の方は−−
「・・いいかもしれないわね」
結構本音らしい。
「いや、先生もこいつの話真に受けなくていっすから」
突っ込むのは恵だ。

「で、この広告の主は君たちでいいのよね?」
宇佐美の見せた紙に、恵と琉那は訝しげに顔を見合わせる。遠くから見ても目立つ色を使用した、ポスター仕様の広告。だが、恵と琉那には見覚えのないものだ。
ただ一人、得意げに笑うのは凛子だ。
もしや、先ほど言っていた『いい考え』とは、このことだろうか−−?

「私が貼りました!この部の顧問の募集です!!」

17:音音 ◆YmRg:2013/08/03(土) 22:08 ID:j2c

「『猫の手部新設企画! 顧問についてくださる先生を募集します! 〜猫の手部とは〜今年の一年生三人が人助けを目的として作ろうとしている部活です。 気になる方は1-D隣の教室まで』」
宇佐美が広告の内容を読み上げる。
遠くからも見つけられるように目立つ色を使っているが、よく見ると紙面はスッキリしたデザインで、字も読みやすく整えられていた。

「このポスター、凛子ちゃんが作ったの?」
琉那が意外そうに尋ねる。
「見やすい字、目に優しい配色、スッキリまとめるセンスと、堅くなりすぎないためのスタンプ。・・これを作れるのは、この中では恐らくこいつだけだろ」
恵が視線で凛子を示す。
「・・!」
琉那は驚きの表情を見せる。
凛子のセンスにも驚くが、恵が素直に凛子を誉める発言をするのも意外だった。
凛子も驚いているらしく、
「・・えへへ」
と照れ笑いをしていた。

「つか、いつ貼ったんだ?」
尋ねるのは恵だ。
凛子は得意げに話す。
「今朝早起きして、日直の先生が通勤してきたときに一緒に来て貼ったの!」
よく見ると、凛子の目の下には薄く隈があった。
「この部のために、そこまで・・」
「いや、これは深夜アニメ見てたから!」

18:音音 ◆YmRg:2013/08/04(日) 16:23 ID:g2E

「まぁ桐生さんのセンスは認めるとして、多分、許可なく貼ったんでしょう?先生方が驚いてたわよ」
凛子のセンスには感心しつつ、少し非難するように言う宇佐美。
「・・ごめんなさい」
そこは凛子も反省しているらしく、俯き気味だが素直に謝る。

「・・それはそうと、職員室の反応はどうでした?」
場を取りなすように尋ねるのは琉那だ。だが、それに対して宇佐美は、
「ノーコメント。」
ニコリと笑って避ける。気になるような、聞かない方がいいような。

「じゃ、センセーも顧問につきたくてここに来た訳じゃないんすか」
恵が、宛にしていた期待が外れたような顔で言う。
「ま、そうなるわね」
宇佐美は平然と言うが、三人に対してこれは大ダメージだ。
「また振り出しかぁぁ・・」

「じゃ、私は仕事に戻るから」
そう言って宇佐美が退出した後の教室。
「先生の反応だと、職員室の先生たちはあれだけじゃ顧問にはなってくれないよねぇ」
神妙な表情で琉那。
その後、しばらく沈黙が訪れる。

と、沈黙を破ったのは凛子だった。
イスから立ち上がり言う。

「強行手段に出るわよ」

19:音音 ◆YmRg:2013/08/05(月) 18:00 ID:ZtY

翌日、放課後。

バタバタと大きな足音が一つ、一年生の階の廊下を走る。
ある小さな教室の前で止まると、その人物は一つ深呼吸をし、勢いよく扉を開いた。

「あなた達、これはどういうことなの!!?」

その人物、宇佐美は、声を張り上げそう言った。
だが、室内に目的の人影は見あたらない。
宇佐美はニヤリと笑うと、
「隠れたって無駄よ・・?あなた達がここにいることはわかっているんだから!」
と言って、室内に入っていく。ついでに「・・学校中探し回ったから」とボソリと付け足しながら。

20:音音 ◆YmRg:2013/08/05(月) 18:20 ID:ZtY

まずは、入り口から見て奥に置かれている長机。
下を覗くと、標的の一人がいた。
「野沢さん、みーっけ」
子供のかくれんぼのように嬉しそうに笑う宇佐美に、
「ふえぇ、見つかっちゃったぁ・・」
と一声上げて、琉那は素直にお縄を頂戴した。

次に、教室の後ろに備え付けられている掃除用具入れに向かう。
扉を開こうとすると、用具入れの内側からの力があり、少しは開くものの、後は内側から引っ張られる。
「鍵をかけない扉が、開かないわけないわよね・・?」
意地悪な笑みを浮かべた宇佐美がそう言う。
すると、中の人物は意外とあっさり扉を開いた。
「・・ごめんなさい」
しょげた様子の凛子に、宇佐美は得意げだ。

「さて・・、後は松岡君だけね」
そう言って宇佐美は辺りを見回す。
他より狭い造りの教室。更に、現在は使われていないため、隠れるような場所も物もない。

「松岡君、どこー?」
琉那が呼びかけるが、それに応える声はない。
「私たち、もう見つかったけどー!!?」
凛子が更に声を張ると、恵の声が返ってきた。
「マジでっ」
・・外から。

宇佐美が窓を開けると、恵は上からぶらさがるようにして顔を出した。
宇佐美は腰を抜かした。

21:音音 ◆YmRg:2013/08/15(木) 17:45 ID:hK.

「改めて貴方達、」
腕を組んでイスに腰掛ける宇佐美。
向かい側では、凛子、恵、琉那が横に並んでイスに座っており、居心地悪そうに視線を泳がせたり、頭をうなだれていたりする。

宇佐美が、目の前の机に自分の手のひらをバン、と叩きつけ、静かに言う。
「これは、どういうことなの?」

よく見ると、宇佐美の手のひらと机の間には、くしゃくしゃになった一枚の紙があった。
向かいの三人はその紙の正体に気づいているらしく、更に居心地悪そうに、少し青ざめた表情を見合わせる。

「まぁ、どういうことと言われればそういうことだけど・・」
「覚悟はしてたんだが・・」
凛子、恵が恐々そう呟き、宇佐美の表情を伺う。

琉那は顔を引きつらせ、宇佐美から視線を外しながら呟く。
「先生の顔が・・怖すぎて」

その宇佐美はというと、顔は青ざめ、怒りに眉をつり上げ、目からは混乱しているのか表情は読みとれない。が・・
その表情を誤魔かそうとしているのだろうか。
口だけは、口裂け女のように大きく笑っていた。

22:音音 ◆YmRg:2013/08/15(木) 18:36 ID:hK.

***

時間は遡り、昨日の放課後、宇佐美が退室した部屋。

「強行手段に出るわよ」
覚悟を決めたような凛子の表情に、恵と琉那も感づいたようだ。

「ついに・・あれを実行するのか」
神妙な表情で言う恵に、
「まぁただ単に設部届けの顧問の欄にウサちゃん先生の名前書くだけなんだけどねー」
とけろりとした表情で凛子が返す。

緊張した雰囲気が、一瞬で緩んだ。
「そんなに軽いことじゃないんだけどねぇ」
苦笑いで琉那が言った。

「恵、油性ペン持ってる?」
「あぁ、持ってる・・って、本気だな」
恵はペンケースから油性ペンを取り出した。
『やっぱりマズイんじゃないか』という思いも恵の中にはあったが、他に方法が思いつかないと考えれば、覚悟を決める他ないと思い、潔く油性ペンを凛子に渡した。

神妙な表情でペンを握る凛子。
この紙に宇佐美の名前を書けば、もう後戻りはできない。
覚悟を決めて、ペン先を紙面に下ろす。

・・が。
「あっ」
五文字目を書き終わったところで、凛子が声をあげた。
何事かと恵と琉那が紙面をのぞき込むと−−

「『ウサちゃん』って、書いちゃった・・」

23:音音 ◆YmRg:2013/08/15(木) 18:54 ID:hK.

その後、三人は職員室に届けを提出に来ていた。

「お、顧問の先生は無事見つかったのか」
担当教師が、感心したように言う。
因みに、『ウサちゃん』はしっかり修正し、修正テープの上に『宇佐美月子』と、油性ペンで丁寧に書かれていた。

三人は先生の言葉に内心ギクリとするが、なるべく表情に出さないように微笑む。
「はい、宇佐美先生が快く引き受けてくれました」
『快く』の部分を強調させて、凛子が言う。

その言葉に先生は納得しているのかいないのか。
「じゃあ、今日は宇佐美先生も帰られたから、君たちも早く帰りなさい。」
とニコリと笑う。

「わかりました」
「ありがとうございました」
三人がペコリとお辞儀をして立ち去ろうとすると、先生は三人に聞こえるくらいの声で呟く。
「明日、宇佐美先生に確認してみようか」

その言葉に、今度こそ三人は凍り付いた。

24:音音 ◆YmRg:2013/08/15(木) 19:16 ID:hK.

***

時間は戻って、現在の部室(?)。

「まぁ、遅かれ早かれバレてるんだけどさ・・」
凛子が呟くと、恵と琉那も黙って俯いた。
宇佐美の方も混乱は落ち着いたらしく、顔も恐ろしい表情は消えていた。

が、だからと言って怒りが収まっているわけではない。
「さっき担当の先生から聞いたときはビックリしたわよ。まさか勝手に私の名前を書いてるなんて」
一息に巻くしたてると、大きくため息をついた。
「しかも、この『ウサちゃん』って何!?」
付け足すように言って、紙を裏返して見せた。油性マジックが裏写りして、裏返った『ウサちゃん』が見える。

「それは・・ただのミスです」
『あははー』と笑う凛子を宇佐美が睨みつけた。

25:音音 ◆YmRg:2013/08/15(木) 19:35 ID:e.k

「全く。『快く引き受けた』なんて言ったそうじゃない。私がこんなヘンテコな部に望んでついたみたいじゃない」
宇佐美はまた一気にそう言うと、ガックリと肩を落として、またため息を吐いた。

三人は、次に宇佐美がする行動が予想できた。
恐らく、設部届けを突きつけて、『今すぐこれを書き直しなさい』と言うだろう。
そう考え、三人は一様に身構えた。

・・が、宇佐美はそれをせず、
「もう、取り返しがつかないじゃない・・」
と言って俯くだけだった。

「「「は・・?」」」
三人は、怪訝そうに聞き返す。
宇佐美が顧問を拒否すれば、まだ取り消せると思っていた。
が、宇佐美は『取り返しがつかない』と言った・・?

三人は、一つの可能性を思い浮かべた。

26:音音 ◆YmRg:2013/08/15(木) 21:18 ID:e.k

「センセ、本当に引き受けたんすか?」
尋ねるのは恵だ。希望の色を含んだ、明るい表情で宇佐美の方に身を乗り出す。
宇佐美は、俯きがちのまま暗い目を恵に向けると、
「・・断ろうとしたに決まってるじゃない」
と呟いて、また目線を落とした。

「そりゃぁ断ろうとしましたよ、でもあの先生この子たちのこと本当に信じちゃったのかしら、・・もう取り消せませんよなんて、もう、もう・・」
独り言のようにポツリポツリと呟く宇佐美。最後の方は手で顔を覆い、涙声にも聞こえた。
「取り消せないって・・」
「昨日あの先生、『宇佐美先生に確かめる』って言ってたよねぇ?」
三人は、顔を見合わせる。
何か、裏があるのだろうか・・?

とはいえ。
「ウサちゃん先生、それで了解したの!?」
凛子が、恵よりも更に明るく、また更に身を乗り出す。
「だってもう・・しょうがないじゃない」
諦めたように呟く宇佐美。
その言葉に、三人は顔を見合わせると、

「「「ぃやったぁぁぁぁぁぁぁあああ」」」
三人一斉に歓声を上げた。

かくして、ここに『猫の手部』が成立したのである。

27:音音 ◆YmRg:2013/08/15(木) 22:40 ID:e.k

凛子と琉那は手を取り合い、キャッキャとはしゃいでいる。
恵はさすがにその中に入ることはできなかったが、傍で柔らかく微笑んでいた。

が、いまいち盛り上がらないのが約一名。
「はぁーぁあ、悩みの種がまた一つ増えたわぁ」
宇佐美は大きくため息をつくと、机に頬杖をついて三人に聞こえるくらいの声で言う。
三人もこれに気づき、動きを止めて宇佐美を見遣る。

しばらく場が静まると、まず声を上げたのは凛子だ。
「悩みって・・もしかして、彼氏とか?」
ニヤニヤ笑って尋ねるのは、恐らく冗談のつもりだろう。
が、
「そうよ」
宇佐美はあっさりとそれを肯定した。

三人がきょとんとしている内に宇佐美は話を続ける。
「勝手に顧問にしたのはあなたたちだしねぇ。私だって少しわがまま言ってもいいわよねぇ」
顔を上げると、先ほどまでの沈んだ様子は嘘のように、意地悪な笑みを浮かべていた。
「そういうわけで、私が顧問につく代わりに、条件をつけるわ」

「私の彼氏になってくれる人を、探してきてちょうだい!!」

***

28:音音 ◆YmRg:2013/08/15(木) 22:49 ID:e.k

さて、こんな駄文を読んでくださっている皆様、こんにちばんは。
って、一人も読まれてなかったら寂しい奴なんですがw←

ここで、一つのお話が終わりました。
プロローグではありませんが・・なんでしょう、接続章? そんな感じですかね。

で、次のお話に行く前に、【息抜き】と称しまして、gdgd会話文を投下しようと思います。
気が向いたら、改めてキャラ紹介もするかもしれません。

では、ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございます。
これからもお付き合い頂ければ泣いて喜びます←
末永くよろしくお願いいたしますm(_ _)m

29:音音 ◆YmRg:2013/08/15(木) 23:09 ID:e.k

【息抜き】No.1:「僕らの部室」

***

琉「そういえば宇佐美先生ー。こないだ何で私たちにこの教室を勧めたんですか?」

恵「そういや、ノータッチだったな」

宇「あぁここねぇ、教材置き場にするつもりだったのよ」

「「「?」」」

宇「だから、私がここの片づけ頼まれちゃって」

凛「つまり、二人に任せるつもりだったと?」

宇「まぁそうねぇ」

恵「自分でやれよ・・」

琉「って、そんなとこ私たちが使っちゃっていいんですか?」

宇「安心しなさい! 私が担当の先生に使わせてもらえるように頼んだから☆」

凛「教材置き場はどうするんですか?」

宇「空き教室は他にもたくさんあるから」

恵「設立20年で全く使われない教室があんのかよ」

琉「新しいわけでも古いわけでもないし、全教室埋まっててもいいよねぇ」

凛「まぁいいんじゃない? 私たちが使えるとこがあるなら」

宇「・・・」

「「「・・・」」」

宇「あれ、私への感謝の言葉は?」

「「「・・あぁ、あざーっしたー」」」

宇「何よその言い方ーッ(泣」

ちゃんちゃん。

***

30:音音 ◆YmRg:2013/08/16(金) 09:10 ID:1Rk

本当にgdgdですね←
では、改めてキャラ紹介してみようと思います。

【キャラ辞典】No.0:

桐生 凛子 (キリュウ リンコ)
強引な考えで猫の手部を設立した張本人。自分の意志を全うする、ちょっとやそっとのことでは揺らがない。やろうと思えば意外と何でもできる、頼れるのかわからない部長。

松岡 恵 (マツオカ サトシ)
凛子の幼なじみ。主にツッコミ役重視。
幼い頃から凛子を見てきたこともあり、凛子の尊敬できるところを知っている。

野沢 琉那 (ノザワ ルナ)
凛子と同じ1-Cで、偶然その場にいたので、本人の意志もあり猫の手部設立に携わった。
穏やかな性格と表情はいつも変わらず、凛子と恵を見守っている。

宇佐美 月子 (ウサミ ツキコ)
恵のクラス、1-Bの副担任。三人が勝手に顧問に設定した。
『彼氏を見つける』という条件付きで顧問についている。

31:音音 ◆YmRg:2013/08/17(土) 16:34 ID:EMA

じゃ、本編に入っていきまーす←

【活動】No.0:「独り身」

***

『猫の手部』が部活として正式に成立した翌日、昼休み。
午前の授業から解放された生徒たちは、食事場所を探して校内をさまよったり、既に場所を確保している者達は弁当片手に雑談に花を咲かせていたりする。

1-Bの生徒達も例外無いが、四限の直後ということもあり、直前の時間の教師を捕まえて話しかけている者もいた。

「先生、ここわかりませーん」
「一緒に食べましょー」
「弁当の中身くださーい」
大半は下らない質問だったりするが、その男性教師は丁寧に応えている。

教師の名は、能塚幸斗(のうつか ゆきと)という。
見た目は若く見えるが、老人のような落ち着きもあるように見える。パッと見ただけでは今一年齢がわからない。
生徒達の中では、『優しくておもしろい』と評判の社会教師だ。
10分ほど捕まった後、ようやく解放され、教室を出ようとした能塚だが…

「先生」
教室の扉の前に立ちはだかる生徒がいた。
能塚は相手に微笑み、
「やぁ。 君は確か、松岡恵君だったよね」
と声をかける。

そこには、弁当を片手に立っている恵がいた。
「話があります」

32:音音 ◆YmRg:2013/08/17(土) 23:35 ID:zJU

***

その後、恵と能塚は屋上に来ていた。
校舎は三階建てだが、それでも屋上からの見晴らしは悪くない。
生徒達も集まっていると考えていたが、実際に来てみると人影は疎らだった。

「…案外、人来ないもんすね」
弁当箱を広げながら恵が言う。 能塚も自前らしい弁当箱を開きながら、
「評判はあるんだろうけど、逆に人が多いと思って来にくかったりするのかなぁ」
と苦笑いで応えるた。

二人とも腹は空いていたようで、準備ができると黙々と食事をした。

「ところで、珍しいね。君が俺に声かけるなんて」
二人が食べ終わると、能塚が微笑みながら言った。
「俺に、何の話だい?」

能塚の言葉に、恵の方は『何から言うべきか…』と少し沈黙し、一つの質問を投げかける。
「…先生、確か部活関係の…生活? の先生もやってますよね」
その質問に、能塚はある程度予想していたのだろうか。心無しか笑みを深くして応える。
「…ああ、そうだよ」

生活の先生、つまり部活関係の様々を担当している教師は、今回猫の手部の届けを直接受け取った教師ともう一人、この能塚の二人だった。
つまり、宇佐美の顧問の件を、本人の確認なしに認めたのも、能塚という可能性がある

33:音音 ◆YmRg:2013/08/18(日) 00:05 ID:zJU

>>32の先生の最初の発言の後、『応えた』が『応えるた』になってました;;
訂正したところで、再び本編どぞ←】

その事実を確認したところで、早速宇佐美の件を質問しようとした恵だったが−−
一瞬先に口を開いたのは、能塚だった。

「あの後、宇佐美先生とは何かあったかい?」
恵は一瞬その質問の意味がわからず、
「…は?」
思わず聞き返してしまった。
「宇佐美先生が、もう顧問を取り消せないって言われた後。何もなかったわけはないだろう?」
能塚は優しく言い直す。
「はぁ、まぁ…」
恵は納得すると、
「…って、やっぱ先生が宇佐美先生を勝手に顧問にしたんすかっ」
はっと気づくとそう言った。

突然の質問でとっさに理解できなかったが、それは恵の質問を先読みしたものだと理解した。
「まぁ何か…彼氏見つけろとは言われましたが」
恵がそう言うと、能塚は
「やっぱりそうかい」
と返した。

能塚の表情は満足げだ。
そこで、恵は気づく。
−−試しているのか。

34:音音 ◆YmRg:2013/08/18(日) 00:35 ID:zJU

能塚は、宇佐美に『顧問は決定したので取り消せない』と言えば、宇佐美は『条件』として無理難題を押しつけるだろうと考えていた。
その上で、宇佐美の顧問を確認無しに決定したのだ。

−−俺達を試すために。
宇佐美は、その無理難題に恵達が折れて、『条件』が満たされない→顧問解雇を望んでいる。
そして、能塚はそんな恵達がどのように難関を乗り越えるか、或いは逃げるか。
−−つまり、俺達の意志を試しているのだ。

「先生、」
恵は立ち上がる。
「?」
少し表情を引き締めた能塚が見上げると、恵は強気な笑みを浮かべていた。

「俺、…俺達、負けませんから」

「絶対、宇佐美先生の条件満たして、俺らの部活を認めさせてやりますよ」

言い終えると、右拳で左胸を強く叩いてみせた。
そんな恵に能塚は、
「ああ…期待しているよ」
そう言って、先ほどよりもまた深く、満足げに笑った。


勿論、先ほどの推測は、確定している『事実』ではない。
だが、恵は事実だと思いこむことにした。
たとえ、それが全くの的外れで、能塚が試しているわけではないとしても。
−−そう思いこんだ方が、好都合だからな。

その方が、こちらも意志を折らずに済む。

35:[ ◆YmRg:2013/08/18(日) 11:25 ID:UFk

***

その日の放課後、正式に猫の手部の『部室』となった教室にて。
凛子、恵、琉那の三人は、ミーティング−−宇佐美の彼氏の件をどう解決するか、の会議を行っていた。

「ウサちゃん、モテそうだけど…」
腕を組み、首を傾げながら唸るのは凛子だ。
「高校生に『彼氏探せ』とか…大人げないというか、なんていうか…」
まずは宇佐美の愚痴から始まる会議らしい。

そんな凛子を、琉那が穏やかに宥める。
「まあまあ。愚痴を言う前に彼氏を探してあげ…」
『探してあげよう』と言いかけた途中でふと考えるように黙ると、
「…確かに、それを顧問につく条件にするのは…ねぇ」
と、苦笑しながら呟いた。琉那も心境は凛子と同じらしい。

恵はというと、凛子や琉那の言いたいことはわかるがそれよりも、早くこの条件をクリアしたかった。
条件を先延ばしにして、『やはりクリアできないのか』と能塚や宇佐美になめられるのは嫌だ。

「昼はあんなこと言ったけど…ホントどうなるんだよ。クリアできんのか…」
そう、無意識に呟いていた。

36:音音 ◆YmRg:2013/08/18(日) 11:48 ID:UFk

凛子や琉那にも、その呟きは届いた。
二人は、昼に何があったのか知らないし、恵が何を言ったのかもわからない。
だが、恵が本気で挑もうとしていることは、伝わった。

凛子は嬉しそうに笑うと、恵の肩を軽く叩いて言う。
「昼、何があったのかは知らないし聞かなくてもいいけど…」
もう一度叩くと、表情をキリ、と引き締めて強く言う。

「何を言われても弱気になるなんて許さないよ」

その言葉は、凛子の強い意志をしっかりと伝えてくるように感じた。
強い圧力を感じる言い方だったが、恵を立ち直らせるには十分だった。
昼に能塚に見せたのと同じように強気に笑うと、
「…わかってるよ」
とだけ言った。

凛子もそれで満足したのか、いつもの明るい笑顔に戻ると、
「じゃ、ちゃっちゃと条件クリアして、先生たちに認めさせてやろう!」
と、また元気づけるように言った。
「「おーー!!」」
恵と琉那も合いの手を入れる。

先ほどまで恵と琉那のやり取りを見ていた琉那も、二人に負けじと強い笑顔を見せた。
−−二人に置いて行かれたりしないように。

猫の手部の意志は、きっといつでも、三人で一つなのだから。

37:音音 ◆YmRg:2013/08/18(日) 21:41 ID:F56

気合いを入れ直した三人は真剣に会議を始めた。
……のだが。

「やっぱ、彼氏見つけるとか簡単にできることじゃないし!」
会議を仕切っていた凛子が机を叩いて言う。
三人とも知恵を振り絞ったが、結局いい案は出ず、体力と時間を消耗するばかりだ。

「諦めるつもりは無いけど…こんなことしてても埒が明かないよねぇ」
苦笑いで琉那が言う。
「ホント、何であの先生彼氏いないんだろうなぁ……」
恵は疲労をあからさまに表情に出し、机に頬杖をついてため息を吐く。
「彼氏いない人に限って、理想高かったりするよね……」
凛子が背もたれにもたれ掛かり、虚ろな目であはは、と笑った。

38:音音 ◆YmRg:2013/08/19(月) 18:59 ID:Se2

***

翌日、昼休み。
この日も、恵は能塚を連れて屋上に来ていた。
が、昨日とは違う点が一つ。

「あー、恵やっと来たー!」
そこには、凛子と琉那の姿があった。
恵を待っていたのか、弁当箱は広げているが食べた形跡はない。
「悪い悪い、先生がほかの奴等に捕まってたから……」
恵も右手で敬礼するように答える。

凛子、琉那、恵の三人は待ち合わせをしていたようだが、能塚はただ一人、状況が全くわかっていない。
授業の後に恵に連れてこられたのだが、途中で話は全く無かった。

−−部活のことなら、昨日もう話はついたと思うんだけど……。
表情には出さないが、心の中で疑問を巡らす。
この三人が、ただ単に楽しく食事をするためだけに自分を呼び出すとは限らない。
直感ではあるが、能塚にはそんな確信があった。

−−では、この子達は何故俺を呼び出したのか……?

39:音音 ◆YmRg:2013/08/19(月) 22:00 ID:Se2

恵はほぼ無表情だが、凛子と琉那は表情に怪しげな笑みをたたえていた。
それと同時に、何かを賭けるような不安げな雰囲気もある。

そして、能塚は思い当たった。
三人が自分を呼び出した理由を−−。

「というわけで能塚先生、ウサちゃん先生の彼氏に「ちょっと待って落ち着こうか」」
表情を引き締めた凛子の言葉を、表情を引きつらせた能塚が慌てて遮った。
『彼氏を探せ』という宇佐美の条件を思い出したときに、嫌な予感はしていた。
結果的に、能塚の嫌な予感は的中したのだ。

「私たち、これでも落ち着いてますよ?」
琉那が穏やかに言う。
「これでも、ってことは、おかしな頼みごとをしている自覚はあるんだね……」
参ったな、と能塚は頭を抱えた。

まさか、彼氏候補が自分に回ってくるとは思っていなかった。
「つーか、なんで俺……?」
ため息を吐いて三人を一瞥して、ハッとなった。

「今、態度に素が出た……?」
恵の新しいものを見つけたような驚いたような表情に、能塚は何も言えない。
「へぇ、先生元から落ち着いてるのかと思ったー!」
「意外な一面ですね」
追い打ちをかけるように言う凛子と琉那を、今度は意識して睨みつけた。

40:音音 ◆YmRg:2013/08/24(土) 16:01 ID:Ojg

「で、何で俺なんだい?」
落ち着いた能塚は、いつもの調子に戻り改めて問う。
答えたのは凛子だ。
「いや、先生若そうだし、ウサちゃんの好みもわかんなかったから……何となく」
あまり考えは無かったのだろうか。最後に付け足すように言うと、『えへへ』とごまかすように笑った。
「そんな理由で……」
能塚はまたため息を吐き、凛子を軽く一睨みする。もう落ち着いた自分に戻るのは諦めたようだ。

一方凛子はと言うと、睨まれたことに口を尖らせて言う。
「だって、ウサちゃんを正式に顧問にしたのはどうせ先生なんでしょ?私たちを試してるつもりなんだろうけどさぁ、出された条件は無理難題。少しくらい協力してくれたっていいでしょ?」

「!!」
能塚は驚きを素直に表情に表した。
「……言ったのかい?」
恵に問いかけるが、そちらも驚いているようだ。言っていないらしい。
琉那の方にも目を向けると、こちらは状況がわかっていないらしく、戸惑っている様子だ。

「あ、図星だった?」
驚いたような、嬉しいような表情の凛子。
しばらく黙っていた能塚だったが、ふと我に返ったように顔を上げる。
……フ、と笑った。

41:音音 ◆YmRg:2013/08/24(土) 16:30 ID:Ojg

他の三人には、その笑みの意味がわからない。
が、その表情には、感心しているような、満足したような、そんな色があった。

「……驚いたよ。部長さんには何でもお見通しかい?」
「いや……ただの推測だし、お見通し、とか別にそんなつもりは……」
能塚の言葉に、凛子が戸惑ったように答える。能塚は、次こそ本調子に戻ったようだ。

「多分、俺が何かするまでもないと思うよ」
能塚は表情を変えぬまま言う。

「でも、私たちだけで彼氏見つけるのは……」
困り顔で言うのは琉那だ。
『無理です』と続けようとしたが、能塚はそれを遮った。
「まだ、無理だとは決まっていないよ?」

その言葉に、三人は静まった。
能塚は更に続ける。
「桐生さんも言ったように、俺は君たちを試している。なのに俺が直接アドバイスしたり、俺自身が答えになってしまったらおもしろくないじゃないか。……それに、」
能塚は視線を凛子の方に向け、一つ息を吸って言った。

「……この部には、こんなに頭の回る部長さんもいるんだ」
突然自分に話を向けた能塚に、凛子は戸惑った。
「いやだから、私そんなつもりは無くて……」
慌てて言おうとするが、次の瞬間、言葉を失った。

42:音音 ◆YmRg:2013/08/24(土) 16:49 ID:Ojg

能塚の表情は、驚くほど穏やかだった。
が、それだけではない。
何かを確信しているようだった。そうでなければ、何かに期待しているような。

とにかく、そんな能塚の表情に、凛子は何も言えなくなった。まるで、その穏やかな笑みに気圧されたような。

「……君たちだったら、きっと宇佐美先生の条件なんてすぐに満たせるんじゃないかな」
虚空を見上げながら呟く能塚。
三人には、何を根拠にそんなことを言っているのか、わからない。
それでも、能塚は確信しているようだ。

三人が何も言えないうちに、能塚は立ち上がる。
そして歩き出しながら、言った。

「期待しているよ、猫の手部」

43:音音 ◆YmRg:2013/08/25(日) 18:14 ID:/9U

***

「期待してる、かぁ……」
放課後、部室。
ぼーっとした表情で呟いたのは凛子だ。
他の二人も、考え込むように沈黙している。

三人とも、昼からそのことしか頭になかった。
「……ねぇ、私たち、期待されちゃったよね?」
困ったような表情で恵の方にイスを寄せる凛子。
恵はまだ考えに耽っているようで、
「あぁ、そうだな」
と適当に相づちを打つだけだ。

また三人が沈黙すると、不安げな表情の凛子が次は琉那の方へイスを寄せた。
「ちゃんと彼氏見つけられるかな……」
琉那の方はそれに苦笑いし、
「見つけないわけにはいかないし……きっと能塚先生も応援してくれてるから大丈夫だよぉ」
と応えた。

また静まると、次は泣きそうな顔になる凛子。
その様子に、琉那は恵に近づき小声で問う。
「凛子ちゃん、いつもの元気がないみたいだけど……」
恵は凛子に目を遣ると、こちらも小声で応えた。
「あいつ、意志は強い癖にプレッシャーには弱いんだよ」

44:音音 ◆YmRg:2013/08/29(木) 16:02 ID:rqo

凛子がおろおろし、琉那は頭を抱える。
そんな中、恵は制服のポケットから携帯を取り出すと、何やら操作し始めた。
「これは最終手段だったが……」
そんな独り言を漏らす恵の表情は、何かを覚悟しているようだった。

「「……!!?」」
後ろから携帯の画面を覗いた凛子と琉那は、青ざめた。
「ちょ……っ、それはマズいでしょ恵っ」「私もそれちょっと思ったけど、さすがにそれはダメだよぉ」
恵が何をしようとしていたかは、ご想像にお任せします。


と、その時、
−−ガラッ

突然、勢いよく部室の扉が開いた。
「二日ぶりね、貴方達っ」
そこには、ニコニコ顔の宇佐美が立っていた。

「ウサちゃん先生っ」
それにいち早く気づいた凛子が声をかける。

宇佐美は室内へ入ると、三人の方へ近づいてきた。
「私の彼氏、ちゃんと探してくれてる?」
フフ、と微笑みながら聞く宇佐美に、三人は携帯を隠して笑みを引きつらせることしかできなかった。

45:音音 ◆YmRg:2013/08/31(土) 16:43 ID:uO6

***

その後は、三人の中から提案が出るわけでもなく、下校時間になればその日の部活は解散しそれぞれの家路についた。

凛子、恵と別れ、一人帰っていた琉那が不安げに呟く。
「先生の彼氏、ちゃんと見つけられるかなぁ……」

今はその問題に頭を抱えている琉那だが、実際は他にも悩むところはあった。
『楽しそう……私も二人と一緒に部活作りたいな』
そう言って猫の手部設立に携わった琉那だったが−−。

よくよく考えると、自分は二人の輪の中に入れているか不安になった。
凛子と恵は幼なじみで、琉那よりも付き合いは長く、その分絆も深い。
更に、猫の手部を作るに当たって、二人はそれぞれ部活のために自分のできることを何でもやって、功績を上げている。
……ように、琉那には思えた。

−−私なんて、二人についていくのが精一杯で……。
自分は場違いなんじゃないか、そういう考えを深くさせていた。

46:音音 ◆YmRg:2013/08/31(土) 17:08 ID:uO6

「……ううん、今は先生の彼氏のことを考えなきゃ」
首を振って、今までの考えを振り切った。
よし、と改めて彼氏問題に取り組もうとしたとき、目線の先で何かが動いたのを確認した。

そこで、琉那の中にある考えが浮かぶ。

***

夜、凛子の家。
一通りの日課を済ませた凛子は、自室でくつろいでいた。
ふと、彼氏問題を考え始めたところで、自分の携帯が震えるのと同時にお気に入りの着メロを鳴らし始める。

ディスプレイには、『琉那ちゃん』という名前。
それを確認すると、明るい表情で通話ボタンを押した。

「もしもーっし」
『あ、もしもし、凛子ちゃん?』
携帯の向こうからは、いつも通りの琉那の声。

「うんー。ところで、琉那ちゃんが私にかけてくるって珍しくない?」
『うん、まぁ……ちょっとねぇ』
「? 何かあった?」
『うん。……先生の彼氏のこと』
琉那は嬉しそうな、何かを企んでいるような声で言った。

凛子は携帯を握りしめ、期待した声で聞く。
「何かいい案出た!?」
『いい案って言うか、正直これでいいのか不安だけど……』

『拾っちゃったんだ、先生の彼氏になってくれそうな−−』

47:音音 ◆YmRg:2013/09/01(日) 11:25 ID:2xY

***

翌日。
この日は日曜日で、大会前の運動部などが部活動をしている他は、校内に人影はあまりない。
が、猫の手部の部室には、部員と顧問がしっかり集まっていた。

「日曜日に呼び出したりして……何のつもり?」
不機嫌そうな顔で言うのは、顧問の宇佐美だ。ほとんど寝起きのようで、時々欠伸をかみ殺している。

怪訝そうな宇佐美に、凛子は自信満々という顔で応える。
「ついに見つけたんです! 先生の彼氏n「本当に!!?」」
『彼氏になってくれそうな』と言い終えないうちに、宇佐美が驚きと歓喜に満ちた顔で遮る。

「は、はい……本当に」
宇佐美の様子に苦笑いで応える琉那。
凛子は意味深そうな笑みを浮かべると、
「ちょっと、変わり種かもしれないけど……」
と呟いた。

「? それって、どういう……」
宇佐美がまた怪訝そうに訊ねると、恵がそっと教室から出ていった。
「まぁ、見てのお楽しみです」
『ねー』と楽しそうに笑いあう凛子と琉那。

その『彼氏』は外に待機させていたようで、ほどなくして扉は開いた。
外の物音がハッキリ聞こえるようになると、聞こえたのは−−

にゃー……

48:音音 ◆YmRg:2013/09/04(水) 21:21 ID:a2s

外から聞こえたそんな音(?)に宇佐美が固まっているうちに、恵は室内に入った。
恵が連れてきた……正確には、腕に抱えてきたのは−−

一匹の猫だった。

「どうですか先生、この彼氏候補は!」
宇佐美が何も言えないでいると、凛子が得意げに言った。

宇佐美としては何かの間違いだと考えたかったが、目の前のこの猫は、間違いなく『彼氏』として連れてこられたものらしい。
宇佐美は大きく息を吸うと、それを吐き出しながら言った。
「私としては人間がよかったかな……」

49:音音 ◆YmRg:2013/09/06(金) 20:08 ID:cKk

「ていうか、何で猫? そんなに人間が見つからなかったの?」
怪訝そうに訊ねる宇佐美に、琉那が穏やかに、
「はい、先生のリクエストは無茶ぶりすぎたのでー」
と、簡単に肯定した。
「それでいいのか猫の手部……」
宇佐美がため息を吐く。

だが、凛子は
「それだけじゃありません!」
と話し始めた。
「え……」
宇佐美が凛子を見遣る。

凛子はちらりと琉那に目線を遣ると、軽く笑みながら続ける。
「私も昨日まで気づかなかったんですけど、先生がそんなに彼氏を捜し求めるのは……」
「私そんなに言われるほど『彼氏彼氏』言ってたかしら」
困ったような顔で呟く宇佐美。
それに対し、恵は呆れたように言う。
「って思うなら生徒に探させんなよ……」

50:音音 ◆YmRg:2013/09/06(金) 20:22 ID:cKk

「と、とにかく!」
凛子は皆を集中させるために言い直す。
「先生が彼氏を欲しがっているのは−−」

「寂しいからじゃないかって」

凛子が言い終えると、一瞬場は静まる。
沈黙を破り立ち上がるのは、宇佐美。
「いや、寂しいけど?」

凛子の言いたいことはわかった。が、とにかく文句を言いたい。
というより、凛子が言い終えるとき、少し悲しげに笑ったのが無性に腹が立った。
−−そんなに私が寂しそうな人ですか、猫を薦める程!?

「先生、顔が歪んで……」
「あなたどんだけ失礼なの!?」

51:音音 ◆YmRg:2013/09/06(金) 21:37 ID:cKk

宇佐美は両手で顔を覆うと、悔しそうに言う。
「確かに私は寂しい人よ……!」
「ウサちゃん大丈夫!!? ご、ごめんなさいっ」
凛子はそこまでダメージを食らうとは考えていなかったようで、慌てて謝罪する。

「でも、人間と猫ってえらい違いよ……? 私は猫程度の……」
「うぅ、ごめんなさぁい」
宇佐美が皆まで言わないうちに、琉那が困ったように謝る。

ふと、顔を上げた宇佐美が琉那を見る。
「そういえば、これを考えたのはもしかして野沢さん?」
今までの会話などから察したのだろうか。

当の琉那は、突然話を向けられて戸惑っているのか、緊張したように応える。
「あ、はい。昨日帰ってたら、その子がついてきたから……寂しそうな先生に、彼氏の代わりに猫だけでも、って」
宇佐美にとっては、その言葉がトドメだったと言ってもいいだろう。

52:音音 ◆YmRg:2013/09/08(日) 17:53 ID:vn2

宇佐美は、凛子や琉那に対し何も言えなくなったが、足元に猫が擦り寄って来るとそれをキッと睨む。
猫の方は可愛らしい顔でこちらを見上げ、それに宇佐美はまた何も言えなくなる。

「よく見ると可愛いし……」
猫を抱え上げる宇佐美。
恐らく拾ってきたのだろう。雑種のようで、ベースは白で、三毛猫のようにところどころ茶色があり、それもよく見ると縞のように見える。目は黄色で、黒い瞳孔がよくわかる。
そして、初対面の宇佐美にも威嚇しない、どころか擦り寄ってくる辺り、大分人懐っこいのだろう。
「……しかも、ご丁寧にオスなのね」

猫を抱えたまましばらく険しい表情をしていた宇佐美だったが、ふとその表情を緩めると、柔らかく微笑んだ。

53:音音 ◆YmRg:2013/09/08(日) 18:16 ID:vn2

宇佐美のその微笑みに、凛子、琉那、恵は期待に表情を輝かせる。
三人の表情に苦笑すると、再び視線を猫に戻した宇佐美が言った。
「ま、いっか」

「それは、つまり……」
凛子が確認するまでもなく、宇佐美はにっこりと笑って言う。
「この子、私の彼氏代わりにするわ」

三人は息を呑み、一瞬遅れて歓声を上げた。
「やぁっっったぁぁぁぁぁあああっ」

54:音音 ◆YmRg:2013/09/14(土) 20:32 ID:kZw

猫の手部の三人が喜び合う姿は、先日宇佐美が顧問になったときの様子を再現しているようだ。
だが、当時とは違い、三人は本当に心から喜んでいる。
先日は誰もわけがわからずに顧問が決定し、素直に喜べないような状況だった。

だが、今回は違う。
本当に宇佐美に認めてもらい、納得させたのだ。
自分たちの手で、やり遂げたのだ。

55:音音 ◆YmRg:2013/09/22(日) 16:29 ID:L.k

読んでいる方がいらっしゃるかわかりませんが……
久々に更新しまーす←

56:音音 ◆YmRg:2013/09/22(日) 17:15 ID:L.k

「予想外の結果ではあったけど、条件はクリアしちゃったわね。……おめでとう」
宇佐美は改めて三人を讃え微笑むと、
「私も、一人寂しい生活から抜け出せるわ」
抱いている猫を眺めながら呟いた。
『独り身』からは抜け出せないが、寂しさを紛らわせるペットがいるだけいいらしい。

そんな宇佐美に、得意げな表情をしていた凛子だが、ふと琉那に向き合うと、
「……でも、今回は琉那ちゃんの閃きがあってこそだったよね」
そう言った。
そして、満面の笑みで言う。
「ありがとう。 これからも宜しくね!」

改めて言われた琉那の方も、照れくさそうに笑いながら言う。
「こちらこそ、二人の役に立てて光栄です。 ……これからも宜しくね」

そんなやり取りを見ていた恵も、
「ホント、俺や凛子じゃ思いつかなかったからな。……ありがとう」
そう言って軽く微笑む。
が、琉那の方は
「まぁ、松岡君のはちょっと……やばかったからね」
そう言って苦笑いした。


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