偽者世界伝説

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1:氷雨:2013/08/22(木) 20:37 ID:1gw

彼等が生まれた理由――――根拠として残すものは何も無いが、唯一つ言えることがある。
この混雑仕切った世界には、必要なものだったのだ。

探知器――――所謂ディテクターとしての存在。
後に創造者となった大昔の囚人の我儘で、狂ってしまった世界を戻す役割を果たす。
その為だけに、無理矢理ながらも生かされてしまう彼等の絶対的存命理由。

生まれ変わりとは、此処まで過酷で残酷だっただろうか。





そんな三人の、物語である。

2:氷雨:2013/08/23(金) 11:41 ID:E8o

初めまして。作者の氷雨です。
初心者ですので、読み辛い点も多くあると思いますが、宜しくお願いします。

3:氷雨:2013/08/23(金) 13:42 ID:E8o

  α世界リアリティー


「個体0001です」
自己紹介というものは、やっぱり何度やっても慣れない。
予想していた通り、教室中はざわついている。

「0001……!?
 おかしいよね、あの子」
「0001って、普通人類一番最初の番号だろ?
 確実に俺たちと同い年なのに」
「親が色々とおかしかったとか?
 でも面白いんじゃない? こんなのが居ても」

……好き勝手に。煩い。
あたしが席に座ると、後ろの子が立ち上がる。


「……個体0002」
教室のざわめきが、大きくなった。
あたし自身も、凄く驚いている。
後ろを向いた姿勢のまま固まっていると、後ろの子は面倒臭そうに舌打ちをし、椅子をガタンと鳴らして座った。
「……本当に、0002なの?」
「そうだったら悪い?」
初対面でいきなり、睨み越しに吐き捨てられた。
こう言うのに慣れてないあたしは、少ししゅんとなって終う。
後ろの子は、そんなあたしを舐めるように見ている。
「……あんたも、同じ部類なんだ」
「………へっ?」
何ですと?
「同じ、部類?」
訳が、さっぱり、分からない。
「何でそんなに区切ってるんだ。……まあ良い。
 人類最初の人間でも無い癖に、あんたは何でか0001だ。
 そしてうちも、人類二番目の人間何かじゃない」
凄く納得出来る。
あたしも幼い頃から不思議でならなかったことを、彼女は代弁してくれているみたいだ。
「じゃあ色々と縁があるのね! あたしたち!」
「は? 何でそうなる………」

「個体0003、です」


「0003……!?」
彼女とハモって仕舞う。
ちょっと睨まれたけど、今は如何でも良い。
「あんたもか………」
あたしの後ろの後ろの……男子が顔を上げる。
「何?」
「0003……なのね。
 でも貴方の次は89344207。
 如何いう……縁なのかな」
「縁なんて要らない……でも、興味はある」
ぼそっと、男子が言う。
「面白い。
 何か関係あるだろうな。このbェ集まったってことは」
「そうよね。ac…ねえ、名前何て言うの?」
あたしの一言に、2人が変な顔をする。
「今言っただろ? 0002……」
「違う。
 それはこの世界で使われる、個体bナしょ?
 本当の名前は、何?」
微笑みながら彼女の目を見ると、少し照れたような顔をしていた。
「……エナ。間違ってたら御免」
やっぱり照れている様で、頭を掻きながら言う―――エナ。
何か……可愛いなぁ。
でも言うと怒られそうだから黙っておく。
「カル……だったと思う」
俯きながら言う彼―――カル。
顔を良く見たら、結構、恰好良い……って、あたし、そこまでメンクイじゃないんだけどなぁ。

でも―――皆、覚えて無いんだな。自分の名前。
自分の番号に囚われ過ぎて………


「あたしはフウ。
 宜しくねっ」





これが全ての始まりだった。
もうすぐ、あたしたちの持って生まれた宿命の歯車が、回り始める。
カウントダウンは、何時の間にか始まっていた。

4:氷雨:2013/08/25(日) 20:36 ID:dYo

「フウ、帰ろう」
下校のチャイムと同時に、後ろから声を掛けられる。
あたしの正式な名前を発したという事態に、教室中がざわめいた。

「あれ、OKなの……?」
「知るか。今まで個体番号以外の名前で呼んだ奴なんて、見たこと無いし」
「先生が居ないからって、馬鹿みたい」
「関わらなきゃ良い話だろ」

また、好き勝手に言われる。
後ろのエナは一際椅子を大きくならし、カルはそんなエナを前にぼーっと立ち尽くしている。
自然と、教科書を鞄に収める手が早くなった。




この世界の、言わずと知れた通称――――α世界。
えーせかいでは無く、アルファせかいと読む。
αがあればβもあるのか? と誰もが不思議に思うけど、はっきりしたことは分かって無い。
そんな世界に、個体bニいうものがある。
人は生まれれば名前を貰える。でもこの世界では、その前に、番号が貰える。
この世界で貴方は何人目の人間ですという記録だ。
多くの人はこのbナ相手を認識しているので、親から貰った名前がまるで役に立たない。
親だって本当の名前を呼びたくても、国家によって、人のことは番号で呼べと決められているから出来ないことだ。
だから当然だろう。本当の名前で呼んだ人に、何か罰が下ると考えることを。


あたしたちは今朝、この国立α学園中等部に入学した。
そうそうミスを犯せば、即刻処刑台へと送られてしまう。




「……う、フウ」
「へっ、何?」
「何ぼーっとしてんの。
 見た目通りって面白く無いし」
みっ 見た目?
「あたしって、そんな……?」
「……当たってると思う」
カルがぼそっと言う。
「そっ、そんなかなぁ……」
今のあたしは、ちょっと変な顔になっていると思う。
「おいカル、何処行くの?」
見ると、別れ道の反対側に、カルは進んでいる。
「……男子寮、こっちだから」
「あ、そうか。
 じゃあ、また明日」
「また明日ね〜」
遠ざかるカルの背中に手を振り、あたしは、エナと女子寮に向かった。


偶然か知らないけど、あたしとエナは同室だった。
つまり、ルームメイト。
「……ちっ」
でもエナは、何だか不満そうだ。
「エナ……舌打ちって、癖?
 それとも、感情表現?」
「立派な感情表現だ」
「ちなみに今は如何いう心境?」
「何で寝る部屋を他人とシェアしなくちゃいけないんだ。
 選りによってフウとはなって感じ」
「なっ、何それぇ!」
ボカっ
「うっ」
「……あれ?」
何故か、エナが床に倒れ込んでいる。
頬が少し赤い。
「あたし、今……」
「……見かけの割には力があるんだな……」
起き上がりながら、言う。
「気を付けるようカルにも言っておこう」
「酷いっ」
また手が出てしまった。
それを、ひゅっと避けられる。
実はあたしには、馬鹿力と言うものが存在するらしい。
「し、知らなかった……」
「行くぞ」
さきにすたすたと歩き始めたエナを、あたしは急いで追い駆けた。

5:氷雨:2013/08/26(月) 11:59 ID:KAY

あたしとエナの部屋は、二階の突き当りにあった。
エナは先に入っちゃったらしく、中でごそごそ音がする。
荷物とか、片付けてんのかな………
「エナ?」
「………っ!」
え?
違う。エナじゃない!
「……誰、あんた」
挑発を掛けながら、あたしは、音が止んだ方向へ歩を進める。
一端壁に背を向け、深呼吸。
ばっと、振り返った。


――――怪しい雰囲気ばっちばちじゃない、こいつ………
目の前には、全身黒衣で覆ったポーカーフェイスの男。
明らかに、動揺している。
―――気付けば、エナが居なかった。
「エナを何処にやったの!?」
「………くそっ」
そう吐き捨てると、窓から出て行こうとする。

そう………そうやるの。
へぇ………

「……あんた、習わなかった?」
あたしの台詞に、びくっとする男。
それを見て、あたしは――――――一気に、行動を開始した。

「敵に、背を向けちゃいけないってこと――――!」

あたしは男の背中に脚を当て、思いっ切り蹴飛ばした。
奇声を上げながら、落ちて行く男。
植え込みに落下し、呻いている。
でもやっぱり危機感覚が鋭いらしい。すぐさま立ち去った。

怪我はしてない筈。だって、わざと植え込みに落ちるように蹴飛ばしたから。
バトルのときは自分も見方も、傷一つ無しって習ったから。
「……でもエナ、何処行っちゃったんだろう………」

「此処だけど?」


「っぁう!?」
「何吃驚してんの?
 っつか、派手にやらかしたな………」
へ?
「下がすっげー煩いだろ?
 人が落ちた人が落ちたって騒いでんだよ」
嘘ぉ………
「あっ 今、下は覗くな。
 現場の真上なんだから、今覗いたら、犯人がフウになってしまう」
「でっ、でも犯人、あたしだし………」
「バレなきゃ良いんだよ。バレなきゃ」
そう言い、エナはカーテンを閉めた。
「でもさっきの奴……何で忍び込んでたのかな」
「推定年齢からして疑ってしまうけど、下着ドロじゃないみたいだし………あっ」

エナが何かを拾った。そのまま、注視している。
「エナ……? 何、それ………」
エナは、黙ってそれあたしに差し出した。

6:氷雨:2013/08/27(火) 19:59 ID:xUY

「えっ! それって………」
「α端末だ。所謂」

α端末。α世界で使用されている携帯端末のうち、最も性能が良い端末だ。
主に国家などという機密組織内で使用されており、ただの子供や大人が所持しているようなものではない。

「何でこれが、あたしたちの部屋に……?」
「さあな。どっちみち、これはうちらの物だろうし」
「えっ、何で?」
「2つある。
 それに………」
エナがあたしの前に待ち受け画面を翳した。
シアンの背景色の真ん中に、白字の明朝体で、「個体0001 フウ」と表示されている。
「これが、あたしの………」
ブラックのボディに、液晶画面。シアンの背景は変わらないのかと思ったら、マゼンタ、シアン、イエローと淡くグラデーションで発光している。
ひっくり返してみると、内臓カメラの部分も同じように発光していた。そのすぐ下に、コーティングされたαという文字。
「……ふぅん……面白いな、これ」
エナのも同じらしい。持ち主の設定が違うだけだ。
「えっ、じゃあ、これ置いてったのってさっきの侵入者?」
「恐らくな。運が悪けりゃ、相手はプロで、しかも国家の御用達ってとこかな」
「嘘っ。あたし、そんな人、蹴飛ばしたの……?」
「言っただろ。相手はプロだ。
 見つかった場合、こうなることも大体は分かってただろうし」
一通り弄ってみたらしく、エナは、自分の太腿に付いている携帯端末ケースから、もう一つ端末を取り出した。
「フウ、壊せ」
「えっ、何で、あたし?」
「さっきの馬鹿力だったら壊せるだろ」
有無を言わせず、端末を放り投げられる。
㌁端末だ。一般的に使われている携帯端末。
α端末とデザインが酷似しているが、サイズが少し大きい。
エナが壊せと言ったのは、勿論、αがあれば㌁の方はもう必要ないからだ。

「そう言えば、エナ、あたしが侵入者撃退したとき、何処に居たの?」
「ん? あぁ、ロビーの自販機でコーヒー買ってた」
「そっか」

べキバキッ!!
派手な音を立てて、㌁端末が、木っ端微塵に弾け飛ぶ。
「……よし、と。
 エナー、出来たよっ」
「……今何やったんだよ」
「取り敢えず、カッターの刃で上からがつんと」
「……今後、気を付けとく……」
カッターの刃、折れちゃったから買わないとな。
そう思いながら、あたしは、自分の㌁端末も壊す。



「よし、じゃあ行くか」
「何処に?」
「決まってんだろ。カルのとこだよ」
何で? と、不思議な顔をしたあたしを、エナは呆れ気味に見つめる。
そしてすぐに、真剣な炎を瞳に宿した。

「うちらのところにこれが届いたんなら、きっとカルのところにも届いている筈だ。
 何せうちらは―――同類、だしね。
 届いた物の正体はすぐに解かったけど、如何してこれが届いたのかはまだ解けてない。
 カルのとこに行けば、何か解かるかもしれない」

7:氷雨:2013/08/27(火) 21:02 ID:xUY




女子寮と男子寮を分つ、三叉路に向かうと、予想通りカルが居た。
やっと来たか。みたいな顔で、こっちを見ている。

「そっちにも届いたんだな?」
「……にもってことは、エナたちの所にもか」
やっぱり、目的は同じだったようだ。
「でもやっぱり……如何してこれが届いたか、解らない?」
「残念だが、僕もそうだ。
 フウはさておき、エナも駄目だったか」
「……カル、フウを怒らせたら、不味いぞ」
「ちょっとそれ、今言わないでも良いでしょ!」
また手が出そうになったとき、脚に何か、波動を感じた。
続いて、ヴヴヴヴ……という音が聞こえる。

「αか!」
エナが太腿の端末ホルダーから、逸早くα端末を取る。
あたしとカルも、画面をタップする。

そこにあったのは、一通のメール。
しかも、三人共、全く同じメールだった。


「何……?」



【この街に、明日、偽者が出没する。
 止められない。もう、誰にも。
 だが、見つけられる。
 それが出来るのは、0001、0002、0003。
 世界の命運を背負う者よ――――――健闘を祈る】



「偽者……?」
「止められない、見つけられる………」
「世界の、命運を背負う者………!?」




まだ状況が呑み込めていないあたしたちの前で、α端末の色は、無慈悲に煌々と光っていた。

8:氷雨:2013/08/28(水) 19:52 ID:uMY

『ニュース速報です。
 今朝未明から、α警察署に大量の捜索願が提出されました………』


寮のロビー。そこに設置されているテレビから、大音量でニュースが流れる。
学校に向かう傍ら、あたしとエナは、足を止めた。

『尋常じゃないくらいの数だと、α県警は発表しています。
 中には、警察関係者の中からのものもあるようで………
 全ての捜索願は、恐らく、関連性のないものだと思われます。
 此処で、同じく捜索願を提出した、980554さんと中継が繋がっています』
一瞬画面全体に光の粒子が飛び散り、映像が切り替わる。
次の瞬間、あたしたちは凍りつく。

『にせものっ にせものよこんなのっっ
 違うわ。あの子はあんなんじゃないものっっ』


偽、者………

「……出たな。偽者が」
「出た……ね」


段々と、鼓動が早くなる。
最中、突如左手が握られた。
「エナ」
「行くよ。カルのとこに」





「エナ、フウっ!」
この展開、前にもあったな。徐々に既視感が芽生えて来る。
「観たか? あのニュース」
「観た。ってことは、カルもだな」
「あぁ……あのメール、本当だったんだな」
カルが、訝しげな顔で考え込む。
無意識に、あたしは微笑んでしまった。
「……何?」
少しむすっとした顔で、やっぱり少し睨まれる。
「ふふ。だって今まで、ずっと無表情だったから。
 今のカル、前よりずっと格好良いよ」
あたしがそう言って微笑むと、カルは驚いた顔をした。
そして、顔を赤らめ、少し俯いた。

何かで監視されているのだろうか。タイミング良く、α端末が鳴った。

9:氷雨:2013/09/03(火) 20:15 ID:b4o

「……要するに、こういうことだ」
エナが画面を見て、呟いた。



所変わって、此処は教室。
朝のニュースでざわめいているクラスメートたちを後目に、あたしたちは、α端末を片手にミーティング。
「偽者っていうのは、捜索願を出された人たちのこと。
 本人は実際行方不明になんかなっていないけど、家族、親戚、友人たちが、こいつはこいつじゃない。
 本者じゃない。偽者だって思ったから、本者を探してくれと捜索願を出した。
 そして今朝未明から、それが相次いでいる」
「本者が偽者と摩り替るっていうのを、僕たちは知って置いて、何も手を下さなかった」
「でもそれはしょうがないわ。
 何も手立てが無かったんだから」
沈黙が訪れる。
あたしは、新たに口を開く。
「でも、之からはあるわ。
 本者を見つける資格があるのはあたしたちだけで、恐らく、見つける為の能力があたしたちには有る筈よ」
エナが顔を上げる。
逸らすまいと、あたしはじっと見つめる。
「……能力、か」
「それを、こいつ等は教えてくれるのかもな」

カルが持つ、α端末のスクリーン。
学校に来る前に届いた、一通のメールが表示されている。

【本日の午後7時半、α学園地下深部。
 遅れずに来い】

「何処……? 地下深部って」
「……エナ、調べられるか」
カルが、眼鏡の奥から目を光らせる。
「出来るよ。
 一時間目のうちに、済ましておく」
きっぱりと、エナは言い切った。

10:氷雨:2013/09/04(水) 09:56 ID:6WE




授業中。
突如、脚に伝わるバイブレーション。
「ちょっ……わぁ」
あたしは、少し慌ててしまう。
すぐ後ろから、しっ! と声が聴こえて来た。

やっぱり、α端末だ。
【1つの着信があります】と、画面に表示されている。

【送信者:エナ
 件名:見つけた

 α学園地下深部、発見。】

素っ気無いメール。
だけど、今は、唯胸が躍る。
自然と返信画面へと指が伸びる。

【送信者:フウ
 件名:Re見つけた

 偉い! カルには送った?】

また着信。

【送信者:カル
 件名:件名なし

 エナからメールが来た。
 立体画像地図も送って貰うよう催促したから、すぐ来ると思う】

立体画像地図……か。
確かにあると便利だ。

【送信者:エナ
 件名:Re見つけた
 立体画像地図、添付されてる筈。】

下にスクロールすると、あった。
ふぅん……此処かぁ……
…………
………え?

「待って! まさか此処………」
「フウっ!!」
え?
「……個体0001、如何かしたのか」
………あ"。
「い、いえ……何でもありません………」
そうだ。授業中だった………
そんなときにも、着信が来る。

【送信者:エナ
 件名:馬鹿

 何やってんだよ】
【送信者:カル
 件名:………

 何やってんだよ】

全く同じ、文面……

【送信者:フウ
 件名:Re馬鹿

 ごめんなさい】
【送信者:フウ
 件名:Re………

 ごめんなさい】

そこまで打って、あたしは更に切り出す。

【でも、此処って……】


ちょっと気が動転しているのか、早くタイプ出来ない。
でもそれ程に、吃驚した場所だったのだ。
あたしたちが行く、α学園地下深部。
物語は少し、核心に近づいていく――――――。

11:氷雨:2013/09/04(水) 16:08 ID:qEA

「エナー、まだ?」
「もうちょっと待って」
エナが高速でキーを叩いている。
画面には、何やらページがいっぱい。

「さっきから何してるの?」
「侵入ルート制作。
 出来たらメールで送るから、カルと連絡取れ」
あたしは小さく頷くと、通話画面をこちゃこちゃと弄る。


「カル?」
『如何した?』
「もう準備出来た?」
『あぁ。さっきからいつもの三叉路で待ってるんだが、そっちは如何なってる?』
「あ――… 何か、エナがこちゃこちゃやってる」
『何だと!?』

カルが声を荒げた。
如何したんだろう。ちょっとおかしい。

「カル?」
『時計見てみろ』
「え……うあぁっ!?」

カルの言う通りだった。
約束の午後7時半まで――――あと、6分。

「ど、如何しようっ 間に合うかな……」
『今すぐそこを出ろ。じゃないと遅れる』
「うん……エナっ」

「出来た。着替えろ、フウ」
「うん………」

え? 着替えろ?

「ちょっ……! 何言ってんの? もう時間が無いのよ!?」
「ああ。だから言ってんだ。
 あと、カルとの電話をテレビ電話に切り替えろ」
取り敢えず、言われた通りにする。
すると、あたしのα端末に、怒気を含んだカルの顔が大写しになった。
『エナ、何言ってる!
 もう3分を切ってるんだぞ!?』
「だからこそ急いでくれ。
 あぁ、カルも出来れば着替えてくれると嬉しい」
『これから戻って着替える時間があるなら、女子寮に忍び込んだって良い』
「カル、それは危ないよ……」
「そう怒るな。此処で揉めたって如何にもならない。
 着替えるっつったって、20秒もあれば大丈夫だ。
 カル、お前、作ってたろ?」
『……あの服のことか』
あの服?
思い当たることが無い。あたしには。
『エナ……お前、知ってたのか』
「まぁね。
 んで、今持ってるか?」
『……持ってる。
 確かに、あの服の方が良いだろうな。
 集まったときに、着るか?』
「そうしようと思ってる。
 こっちの準備は整った。すぐ行く」

エナが通話を切った。
「フウも電話の間に済ませてたんだろ?
 行くよ。時間が無い」
「ちょ、ちょっと待って。
 あたし何にも知らないんだけどっ」
「カルと落ち合えたら話すっ」

時刻まで―――――あと2分半。


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