異民族の少女と魔法使いと剣士の話。

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1:瑠璃:2013/11/16(土) 08:04 ID:tnI

ファンタジー系です!
続くか分からないけど頑張って書きこもうと思います、よろしくお願いします!
ここで登場人物紹介!

*ティファ*
伝説の部族、クスチュ族の少女。15歳。
無口で無愛想だが、面倒見がいい。
盗賊に捕らえられ働かされていたが、ふとしたことで
自由になる。

*シェリラング・アーノルド*
旅人の青年。17歳。
幼い頃から剣の腕を極めてきたらしく、腕は一流。
へらへらしていて掴み所がなさそうに見えるが、人を
いたわる心は人一倍。あだ名は『シェリラ』

*オーリン*
魔法使い(自称)。
明るい性格で、いつも周囲を和ませる。年齢は9歳くらい。
不思議な形の杖を持ち歩いている。
シェリラやティファとと行動を共にすることになる。

2:瑠璃:2013/11/17(日) 10:57 ID:tnI

アリオン山脈のとある洞窟に、盗賊の砦はあった。
旅人は労働を強制され、死ぬまで働かせつづけた。
そんなことから、この山脈を超える者はいなくなった。死ぬまで盗賊に
働かされたくなかったのだろう。
しかし、珍しく山脈を歩く旅人がいた。
「早くフィクラ様にお伝えしなきゃ」
ティファはこの盗賊団で働かされている。幼い頃に捕まったらしいが記
憶はあまりない。
ティファは、この世界の昔話にも登場する伝説の民族、クスチュ族だ。
その瞳は遠くのものをいち早く発見し、耳はどんなささやきでも聞きとる
ことができ、足は駿足、腕は万物を貫き、声は辺りに響き渡る。
そのため、賞金がつき、盗賊たちはクスチュ族を探しているのだ。
ここの盗賊の頭領、フィクラもその1人だった。
「フィクラ様、峠に人影を発見しました。旅人のようです」
「ふぅん。じゃあ、捕らえておやり。高価なものは全てあたいに渡しな」
「はい」
フィクラは妙齢の美女で、妖艶さと恐ろしさを併せ持つ人物だった。
逆らった者は容赦なく殺した。
(フィクラ様から殺されたくない!)
「はぁっ!」
居合の咆哮。
「?!なんだてめえ!」
旅人は顔を布で隠していたが、すぐさまティファの蹴りを避けた。
「いきなり攻撃は卑怯だぞ!」
「卑怯もへったくれもありません。ここで仕留めさせてもらいます!」
「仕留めるったって・・・・・・。あ、もしかしてお前、盗賊団で働かさ
れているのか?!」
「それがなんですか?!私は殺されたくないんです!なんとしても生きな
くちゃいけないんです!」
どすっ。
首に手刀を落とすと、旅人は倒れた。
「・・・・・・ごめんなさい・・・・・・」
ティファは旅人を抱え、盗賊団の砦に戻った。

3:瑠璃:2013/11/17(日) 18:00 ID:tnI

「旅人を捕らえました。金目のものもすべで奪取しました」
「そっか、ご苦労だったね。そうだ、あいつの監視をしてやんな。
逃げ出されたら困るからね」
フィクラに命じられ、ティファは牢屋に向かった。
多くの人々がティファに助けをこうた。
「ここから出してくれ!」
「頼む!」
「お願いだ!」
ティファはそれを無視して、旅人が入れられた牢に向かった。
「よっす。どうしたんだ?こんな時間に」
旅人はまだ顔に布を巻いていた。
「監視を命じられました」
「じゃあ、俺も暇じゃなくなるな。運がいいぜ」
「・・・・・・捕まった時点で不運なんじゃないですか」
ティファは旅人にかちんときた。
捕らえられたというのに、なんでそんな笑っていられるのだろう。
頭がおかしいのだろうか。さっきの人たちはみんな絶望してたの
に。
「まあな。でもよ、こういうときこそポジティブになんなくちゃ
いけないだろ?」
「知りませんよ、そんなこと。それよりあなた、よく身包みとか
はがされなかったんですね」
「あ、そうなのか?まあ、頼んだらOKしてくれたよ」
「どんだけブサイクなんですか?その顔の布、取ったらどうですか?」
「ブサイク?なんで?」
ついに堪忍袋の尾が切れたティファは、檻の壁に拳を叩き付けた。
当然、壁に穴があき、砂くずがこぼれてくる。
「あなたって人は、どれだけ人をいらつかせたら気がすむんですか!
こっちは必死で働いてるんですよ?!なのにその態度はあんまりじゃ
ないですか?!ええっ?!」
「うわあああ、いきなりキレられても困るって!」
「怒ってません!あんたは早死にしたいんですか!というかいいかげん
その布取ってくださいよ!お忍び旅行じゃあるまいし!」
「やめろって、そんなに壁蹴ったり殴ったりしたら・・・・・・。こ
こ、壊れちまうから!」
がらがらがらがら・・・・・・。
とたんに、壁が崩れ始めた。
「うわああ!」
「なんだ?!」
ティファは自分のやった行動に心底後悔した。
クスチュ族の最大の武器は人間離れした卓越した身体能力と握力、腕力、
脚力なのだ。それを壁にもろにぶつけたら、崩壊するに決まっている。
「ううっ・・・・・・。私が・・・・・・私が馬鹿なせいで!」
「泣いてる暇があったら逃げようよ!」
旅人がティファに大声で呼びかける。
「そ、そうですね。もう、フィクラ様に叱られても承知しませんから!」
動転しているせいで言葉遣いがおかしいが、ティファは拳を檻に叩きつけ
捻じ曲げた。
「おっしゃあ!やっぱ俺ってついてるな!」
「ぐずぐずしてないで逃げてください!あんた本当に死にたいんですか!」
他の人々は逃走(またの名を脱出)していた。
ティファは旅人の手を引き、脱出を試みた。

4:瑠璃:2013/11/18(月) 16:18 ID:tnI

「はあ、はあ、はあ・・・・・・。もう、あんたのせいでケガ
しちゃったじゃないですかぁ」
ティファは旅人を睨み付けた。
「悪い悪い」
「そんなのですむとでも思ってるんですか?大体、宝物を取って
来なければもっと早く出てこれたはずなのに」
「ったく、しょうがねーなぁ」
旅人は顔に巻いていた布を外して短剣で切り、包帯代わりにして
腕に巻いた。
(素顔はブサイクじゃなかったわ・・・・・・)
旅人は案外整った顔立ちをしていた。栗色の髪と、耳につけた飾
り(ピアスかイヤリングだろう)が印象的だった。
「今日中にこの山脈を超えましょう」
「馬鹿、それはクスチュ族のお前にしかできないだろ。普通の人
は無理だって」
ティファは背中が冷たくなるのを感じた。
なぜ、名乗ってもいないのにクスチュ族とばれたのだろうか。
たしかに、さっきの身体能力は人間ばなれしている。しかし、姿
は普通の人間と大層変わりないのだ。
「・・・・・・なぜ、わかったんですか」
「うちの故郷にもさ、クスチュ族がいたんだよ。なんとなく雰囲気
が似てたから、そうじゃないかって思っただけだよ」
「そうですか・・・・・・」
ああ、この人にもこき使われるかもしれない。力で押し返さなきゃ
一生召使いにされてしまうかもしれない・・・・・・。
ティファは思わず身構えた。
「そういえば、名前聞いてなかったな」
「は?」
「だから、お前の名前だよ。もしかして・・・・・・なかったり
・・・・・・?」
「ありますよ!ティファっていいます!そういうあなたこそ名乗って
くださいよっ!」
旅人はいたずらっぽく笑った。
「俺はシェリラング・アーノルド。シェリラでいいよ」
「じゃあ、シェリラさん。あなたは私を働かせるおつもりですか?」
「そんなんじゃねえよ。そんなことするもんか」
急に真面目な顔になったので、ティファは肩の力を抜いた。
このシェリラとかいう少年は、馬鹿なくらい正直者だということが
わかったからだった。

5:瑠璃:2013/11/18(月) 16:47 ID:tnI

ひとまず、シェリラは信用できる人物だったので、ティファはしばらく
行動を共にすることにした。
シェリラは神々の宿る『神器』を探しているらしい。
「それをみつけて・・・・・・何をなさるんですか」
「まだ決まってないよ。でも、それって強大な力を持つんだろ?なら、
手に入れたいよ、命がけでも」
「そういうものなんでしょうか」
「まあ、お前は叶えたい願いとかないだろ?わかんなくて当然だよな」
「・・・・・・」
ティファは考えた。
故郷も、家族も、世の中のことも知らない。願いなんてあるはずない。
(でも・・・・・・一目でいいからシェリラさんの知り合いのクスチュ
族に会いたかったわ・・・・・・)
「どうした、ティファ?」
「なんでもありません。行きましょう」
   

アリオン山脈越えは、思ったよりも辛かった。
しかし、険しい所はティファがシェリラをかかえて移動したので、予定
よりうんと早く辺境の村に着いた。
「ここがアリオン山脈のふもとですか?」
「ちげーよ、ここは原住民の村だ。昔は、ここらへんに高度な文明が存
在したらしいんだ。でも、今はバリスティーナ帝国に侵略されて、こう
いう小さい村が残っているだけなんだ」
2人は村で休むことにした。
この村はめったに人が来ないらしく、手厚くもてなされた。シェリラは
ドサクサ紛れに村人にこう聞いた。
「あの、ここらへんに古い遺跡とかありませんかね?」
『神器』は古い遺跡や神殿に残っていることが多いのである。村人たち
はそっけなく答えた。
「ああ、アリオン文明の遺跡のことかね。古代に栄えた文明の古城だよ」
「それはどこにあるんですか?!」
シェリラはよほど嬉しかったのか、村人に掴みかかりそうな勢いで聞いた。
村人は押されながらも丁寧に答えた。
「この村から南西に行った所に岩でできた階段みたいなのがあるんだ。そ
れを登って行けば、遺跡の中にはいれるよ」
「あざーっす!」
「でもお若いの、考古学に興味を示すなんてえらいねぇ。そうだ、わしら
が村長様に頼んで、階段のところまで連れていってあげるよ」
「やったぁ〜〜!本当にありがとうございます!」
「でもお若いの、行くなら明日にし。今日はもう村長様は用事があるんで
連れて行けないのじゃ」
シェリラはぶんぶんと激しく首を振った。
ティファは、少しだけシェリラを軽蔑しようと思ったのであった。

6:瑠璃:2013/11/18(月) 17:14 ID:tnI

「はあ〜っ、もう俺腹いっぱいだ!」
「私もです。こんなにたくさんのごちそうを食べたのは初めてです」
2人は、村人たちに連れられて村長の家へと連れてこられた。
簡素なつくりの粗末な家だったが、村人たちはそれでいいらしく、しきり
に村長の家を紹介した。
「今から何かあるんですか?」
ティファは村人の子供に聞いた。
「村長様が、未来を見るんだよ!そのおかげで、僕たち今まで生きてこら
れたんだ!」
「未来を・・・・・・見る・・・・・・?」
「ほらっ、村長様が出てきたぁ!」
村長と思われる人物は、身長が低く小柄だった。顔をベールで隠し、白い
ケープとドレスを着ていた。黄金の杖をしゃらんしゃらんと鳴らす。
そして、星空を見上げた。
「明日は・・・・・・平穏に過ごせるでしょう・・・・・・。神々に祝福
あれ・・・・・・!」
がしゃん!と杖を鳴らして、村長は去って行った。
しかし、また戻ってきた。しかも、ティファとシェリラの所に。
「え、な、なんですか?」
シェリラの言葉に目もくれず、村長は話す。
「あなたたち、今晩私の家に来なさい」
「はっ?」
「いいから来なさい。これは命令よ」
そう言い残し、家に入っていった。
「・・・・・・行ったほうがいいですよね?」
ティファはシェリラに言い、気配を隠して村長の家へと向かった。

7:瑠璃:2013/11/19(火) 17:17 ID:tnI

「よく来たわね。さあ、中に入って」
村長は、2人にお茶を出した。
さっきとは違い、柔らかく友好的な雰囲気だった。
「あの、なぜ私たちをお呼びしたんですか?私たちはただの旅人なのに」
「あなたたち、『神器』を探しているんでしょう?」
村長がいきなり言ったので、2人はぎくっとして冷や汗をたらしながら
恐る恐る聞いた。
「なんでわかったんすか?」
「・・・・・・あなたたち、いきなり古代遺跡の話をするからよ。さっき
村人に案内をしてくれと頼まれた所よ。大体、あなたたち『神器』のこと
何も知らないんでしょう?」
「はぁ」
「『神器』はね、もともと権力のある人が持つべきものなのよ。でも最近
は、冒険者の憧れの的になったわ。手に入れられる直前で、神々に拒まれ
ることも多々あるの。それに・・・・・・神々は好みがあって、好みじゃ
ない人には仕えないそうよ。しかも、探すのは命がけで、死ぬこともある。
行かない方が身のためよ」
一気に話し終えて、村長は溜息をついた。
しかし、シェリラは大真面目な顔で村長に詰めより、言い返した。
「それだけを言いたいがために、俺たちを呼んだんですか?」
「そうよ」
「だったら、邪魔しないでもらえますか。俺には使命がある。こんな所で
逃げるわけにもいかないんです」
村長は圧倒されたようにその場に立ち尽くしていた。ティファも、シェリラ
の訴えに呆然とした。
シェリラは意外と頑固だった。その後も、村長に気丈に言い返しつづけた。
「・・・・・・わかったわ・・・・・・。その代わり、頼みがあるの」
やっとこさ、村長が折れた。
シェリラの顔がぱっと輝く。
「本当ですか?!」
「ええ。でも・・・・・・あの・・・・・・気をつけてね。絶対に死んだら
ダメよ」
「はい!」
かくして、2人は古代遺跡に行くことを許可された。
しかし、村長だけはどことなく暗い表情だった。

8:漣 ◆WOJE:2013/11/19(火) 19:55 ID:uwA

お邪魔します。
私、小説コンテストというものをしているのでよかったら推薦を。
http://ha10.net/test/read.cgi/novel/1384855318/l50
お邪魔しました。

9:瑠璃:2013/11/20(水) 16:10 ID:tnI

「いよいよですね」
ティファは長い石造りの階段を上りながら言った。
遺跡に続く階段はけっこう長くて、途中で休憩をしながら2人は上って
いった。
「ああ。でもさ、俺が選ばれない可能性もあるんだよな?」
「そ、そんな・・・・・・。私が選ばれたらなんとしてもシェリラさんに譲り
ます」
ティファはそう言うと、どんどん階段を上った。
(私なわけないじゃない。こんな、ちょっと昔まで盗賊団なんかで働かさ
れていたんだから。謙虚で優しいシェリラさんに決まってる)
「おい、ティファ!前見ろ、前!」
「へ・・・・・・?」
とたん、ずるりと足が滑り、ティファは崖からまっさかさまに落ちてしまっ
た。
「ティファ!」
シェリラが手を伸ばすが・・・・・・届かない。
ティファは不思議と落ち付いていた。なんとかしなければと考えて、空中で
体勢を整えた。
崖は深く、日光がささない限り真っ暗だったが、地面はあった。ティファは
着地し、辺りを見まわした。誰もいない。
(クスチュ族でよかった・・・・・・。しかし、深い崖だな。谷みたい)
ティファは持ち前の視力と嗅覚で歩きつづけた。
ちなみに、食べ物は持っていたがずっと食べなかった。クスチュ族は数時間
空腹でも生きていられる種族なのである。村人はそうともしらずに、保存食
をわんさかくれた。
しばらく歩きつづけていると、地面の質感が変わってきた。さっきまでは土
だったのに、石でできた床になっている。
(遺跡だわ!この崖、遺跡につながっていたんだ!もしかしたらシェリラさん
と合流できるかもしれない!)
「あらあら〜?こんな所に人間がいる〜・・・・・・」
そこに、絹のワンピースに鎖帷子、盾と剣を持った小柄な少女が現れた。

10:瑠璃:2013/11/20(水) 16:44 ID:tnI

突然少女が現れたので、ティファは思わず後ろに下がった。
「やだなぁ。ちょっと驚かしただけじゃんか」
「あなたは・・・・・・一体?」
少女はにこにこと笑いながら言った。
「あたしはアテナ。ちょっと前からここにいるんだけどさ、
よかったら一緒に出ない?外に」
「すみません・・・・・・。私、神器を探しているんです。
そんな暇はないんです」
アテナというらしい少女は、ふんふんと鼻を鳴らした。
「大丈夫。その必要はなくなったから」
「はぁ?」
「だってあたしがここの守り人である神だもん。もう探さな
くていいんだよ」
アテナは言うなり剣をティファに押し付けた。
重そうな銀の剣だったが、不思議と重くはなかった。しかも
手に合っている。
「あ・・・・・・でも・・・・・・」
「あんたは選ばれたんだよ!少しは嬉しがりなさいよ」
「や、でも、こんなにあっさりしてていいんですか?」
「いんじゃね?あたしも暇だったのよ?それにあの男の子も
無事に出してやるから」
アテナはそう言うとティファの手を握った。
「さあ、行くよ!」
「ちょ、ちょっと・・・・・・。ひゃああああ?!」
アテナはすごいスピードで走り出した。クスチュ族のティファ
でさえ驚くほどだった。
走っている途中、ティファは誰かとぶつかった気がした。
「よぉ〜っし、出るぞ!あ、そうだ。あたし、地上では実体化
できないんだ。だからこの剣に宿るね。戦いになったら使って
ね〜」
「なんなんですかこれっ?!無茶ブリやめてくださいよぉ!
ちょっとぉー!」
ティファの悲鳴むなしく消えて行ったのであった。

11:漣 ◆WOJE:2013/11/20(水) 16:51 ID:KvY

結果発表の日時はまだ決まっておりませんので決まった次第、書き込ませていただきますね。

12:瑠璃:2013/11/20(水) 18:38 ID:tnI

ティファに意識が戻ったのは、少ししてからのことだった。
「ここは・・・・・・あの村・・・・・・?」
「きゃあああっ!」
「誰か、誰か助けて!」
人々の悲鳴が飛び交う。まるで戦場のようだった。
「どうしたんですか?!」
ティファは村長と出会うきっかけとなった村人の子供を引き止めて
聞いた。
「む、村長様の家から黒い竜巻が出来ているんだ!村長様が中にい
るのに!」
「嘘・・・・・・」
「本当だよ!お姉さんも早く逃げた方がいいよ!今はまだみんな無事
みたいだから!」
子供の必死の訴えに、ティファは驚いた。
盗賊の砦の人達とは違う。誰かを助けたいと思っている。
「ごめんね。でも、私、村長様と約束しているの。だからちょっと
行ってくるね」
「あ・・・・・・」
子供を振りきって、ティファは駆け出していた。
村は小さい。だから、すぐに村長の家へとついた。
家の中心部から、黒い渦が出ている。見た瞬間に邪悪なものだと判断
させられた。周りの木々も押し倒している。
「村長様!」
家に入ると、ものすごい突風がティファを襲った。普通なら立ってい
られないほどの強風だった。村長は頭を抱えて苦しそうにうめいてい
た。
「大丈夫ですか?!早く逃げないと!」
「だ・・・・・・だめ・・・・・・!近寄ったら殺される・・・・・・!だから
あなたが逃げて!これ以上・・・・・・あんな奴の思い通りにはさせないから!」
「む、村長様?!」
(様子がおかしい!なんなの一体?!)
村長はその場にばたりと倒れてしまった。
「村長様!しっかりして!」

「うるっせえんだよ!」

突如、村長が起き上がり叫んだ。
ブロンド色の髪を逆立てて杖をこちらに向けている。
『ああ・・・・・・やっぱり機嫌そこねちゃったかぁ』
「アテナ?!」
『あいつはハトホル。またの名をセクメトっていうんだ。あいつも多分
神器を持ってるんだと思う』
「なんであんなことになってるの?!普段とは全然違うじゃない!」
『ハトホルは、普段は慈愛に満ちた貴婦人なんだ。でも、どこかで戦争
が起こるとセクメトになる。セクメトは冷酷非道なんだ。つまり、ニ重
人格ってこと』
「ええっ?!」
村長は舌なめずりをした。
戦いを待ちわびているかのように・・・・・・。

13:漣 ◆WOJE:2013/11/21(木) 18:39 ID:TuE

突然ですが・・・
今日、結果発表をしたいと思います
突然で本当すいませんっ

14:瑠璃:2013/11/25(月) 17:25 ID:tnI

ぴりりりりりりっ!
村長の杖から超音波が放出される。
「くっ!」
「あはははははっ!よく避けたね!それに当たると体が木っ端微塵になっちゃう
んだよ!いつまでもつかな〜?!」
村長、いや、セクメトは笑いながらティファに向かって攻撃を続ける。クスチュ
族のティファでも避けるのは難しく、足や服に超音波がかすった。
(なんとかしなくちゃ!でも、私剣術なんて知らないわ!どうやって使えばいい
の・・・・・・?!)
「あ〜あ、もうお前、終わったね。潔く死ねって」
超音波の波動が一段と強くなって行く。
当たったらひとたまりもないに決まっている。しかし、ティファの体力も限界に
近づいていた。足がもつれ、倒れこむ。
「おらあっ!」
ぱああん!
「死んだかな?一体どんな無残な姿なのやら・・・・・・」
「生きてるよ」
突然、フードを被った小さな子供がセクメトに襲いかかった。
「なっ?!」
「この優しくていい子のオーリンが助けたからだよ?そんなに頭が悪いの?」
オーリンというらしい子供は、不思議な形の杖でセクメトに攻撃を仕掛ける。
ティファはそのすきに、体勢を立て直し、剣をまじまじと見た。そんなに重くな
さそうだし、手にも馴染む。使えそうだ。
(よし・・・・・・!)
「ちいっ!このガキャア!」
「ガキ呼ばわりしないでー!炎の魔球(フレア・ボール)!」
ドッガーン!
村長の家がめちゃめちゃになる。セクメトは怒り狂ってオーリンに超音波を投げ
つける。『神器』使いの必殺技といったところだ。

15:霧臘 ◆WOJE:2013/11/25(月) 19:59 ID:js2

結果発表しまーす。
漣です。

16:瑠璃:2013/11/26(火) 18:43 ID:tnI

オーリンはティファに向かって叫んだ。
「まずいよ!『神器』使いの最大の技だ!」
「そんなこと言われたって!私はどうしたらいいんですか?!」
「とりあえず逃げて!ここはオーリンが食いとめる!なんたって、
オーリンは魔法使いなんだからね!」
この子、大丈夫かしら・・・・・・とティファは心配しつつ、物陰に隠れて
様子をうかがった。
セクメトの杖が巨大な琴をつけた杖になった。
「死者の演奏会(ヴェニカリア・リデオーン)!」
杖から美しい音色が響き渡る。
しかし、美しいのは音だけだった。強烈な超音波で村ごと吹き飛ば
してしまう勢いの強さだった。
オーリンの姿は見えない。潰されてしまったのだろうか。
「ははっ、やった・・・・・・。邪魔者がいなくなった・・・・・・!」
セクメトは歓喜に震えた。
「いなくなってなんか、ないよーだ!」
「?!」
もとから立っていた場所に、オーリンはそのまま立っていた。しか
も、無傷だった。

17:瑠璃:2013/11/27(水) 17:36 ID:tnI

セクメトは魔力を使いきってしまったらしい。その場にしゃがみこんで
荒い息でオーリンを睨み付ける。
「お前・・・・・・。なんで生きていたの・・・・・・?」
「言ったでしょ?オーリンは魔法使いだって。さっき、一種の防御魔法
を使ったんだ。『聖者の聖壁』(アレスト・マレンヌ)っていうんだけ
ど。そういうことはもういいからさ、ハトホルちゃんを解放してあげな
よ。かわいそうだよ」
「・・・・・・わかったよ」
そう言った瞬間、セクメトの目から殺気や闘争心が消え、穏やかな表情
になった。もとの村長に戻ったようだ。
村長はとっさに叫んだ。
「村のみんなは?!」
「みんな、自分の判断で逃げていました。死者はいないようです」
ティファが優しくいうと、村長は安堵した顔になった。
そして、杖を握り締め、ティファとオーリンに淡々と語り出した。
「私は・・・・・・小さい頃に、祖母からこの神器を託されました・・・・・・。
それ以来、戦争が起こるとセクメトと意志の共有ができなくなり、この
ような結果を招いてしまうことも多々ありました。しかし、そんな自分
を止められないまま・・・・・・祖国を滅ぼし、今だって、村人たちにこんな
恐ろしい思いをさせてしまった・・・・・・。罪悪感でいっぱいです・・・・・・」
「そんな・・・・・・」
村長は、くるりとティファに顔を向けた。
そして、アテナの宿る剣をじっと見つめた。アテナがいるのがわかって
いるようだった。
「私は、謝罪をしなくてはなりません・・・・・・。村人と、あなたたちに・・・・・・。
これはせめてものお詫びです。持って行ってください・・・・・・」
村長は、金貨や銀貨のずっしり詰まった革の袋を手渡してきた。2人は
村長に礼を言い、村の人々に今日あったことを話すようにと伝えた。
「何もかも、ありがとうございます。お礼をするにもできないわ。あな
たたちの幸運を祈るしかできませんが・・・・・・どうか、お気をつけて」
「はい。ありがとうございます」
2人は村を出て、山脈をてくてく歩いた。
途中、遺跡探検のときに残っていた、保存食や涌き水で空腹を満たし、夜
は洞窟で一晩を過ごした。
「そういえば、ティファはこれからどうするの?オーリンは、世界を回る
旅に出ている最中なんだけど、ティファは目的があるんでしょ?」
「目的・・・・・・かあ」
クスチュ族に会いたい。同胞に会って、身の上を知りたい。
シェリラにお礼を言わなければならない。きっと、助けを呼びに行ってく
れたのだろう。あのとき、盗賊団から出て来れたのもシェリラのおかげだ。
シェリラの故郷へ行けば、どっちも願いが叶うかもしれない・・・・・・。
「恩人の・・・・・・故郷へ行きたいです」
「へー、そうなんだ。じゃあ、オーリンの旅に混ざりながらできるかもね。
いいよ、一緒に行こう!」
「ありがとう・・・・・・オーリン・・・・・・」
「後言っておくけど、オーリンは女の子だからね」
「・・・・・・えええええっ?!」
ティファの大声で、山にいた動物たちが一斉に飛び起きたのはいうまでも
ない。

18:瑠璃:2013/11/30(土) 08:05 ID:tnI

とつぜんですが、新キャラ紹介です。

*ウェッデル・バリスティーナ*
バリスティーナ帝国の姫君。神器使いだが腕はまだ未熟。
髪をひと房後ろでしばっていて、残りの髪は垂らしてい
る。剣術が得意で、神器も剣。属性は水。16歳。

*ディニオン・バリスティーナ*
ウェッデルと同じくバリスティーナ帝国の姫君。神器使
いで、属性は回復能力。博愛主義者で、戦を嫌う。皇帝
の実子。19歳。

*ニコラス・レミニエンヌ*
レミニエンヌ王国の王。22歳。バリスティーナ帝国と
の戦に向けて軍事力を増加している若き君主。騎士団を
信頼し、自分の『神器』を預けた。

19:瑠璃:2013/11/30(土) 08:22 ID:tnI

山脈を超え、畑や農地が見えてきた。
「やっとこえられたね〜」
「ええ。この辺りは確か、バリスティーナ帝国とかいう帝国の
領地だと思います」
ティファとオーリンは、関所を目指して歩を進めた。途中、小
さな村で休んだりもしながら、のんびりして歩いた。
すると突然、悲鳴が聞こえてきた。
「何?!」
「オーリン、あそこ!馬車が襲われています!」
馬車に盗賊がたかり、中にいた貴族らしき人々が悲鳴を上げて
いるのだ。
ティファは盗賊を蹴ったり殴ったりして馬車から引き離す。
「げぇっ、なんだこいつら!」
「やっちまえ!」
次々に飛び道具の弾が飛んでくるが、俊敏なティファにはきき
もしない。その隙に、オーリンが魔法を放つ。
「炎の魔球!(フレア・ボール)」
「ぎゃあああ!」
「なんだこれ!」
「一旦撤収だ!ものども、俺に続け!」
親分らしい男が部下を連れてそそくさと退散する。
貴族たちはホッとした顔で2人にお礼を言った。
その中でも特別豪華な服を着た少女が、2人を馬車に乗せてく
れることになった。
「いいんですか?」
「いいわよ、それくらい。私はウェッデル・バリスティーナ。
バリスティーナ帝国の姫君よ」
「「・・・・・・はあぁぁぁっ?!」」
2人の叫び声で、周りにいた牛たちが逃げ出したのは、言うま
でもない・・・・・・。

20:瑠璃:2013/12/01(日) 11:17 ID:9IM

1週間後、一行はバリスティーナ帝国の帝都に到着した。
「ここが私の家よ」
「家っていうより、神殿でしょ、これ・・・・・・」
オーリンがすかさずツッコミをいれる。
2人はウェッデルの軍の傭兵になることになった。今バリスティーナ
帝国は隣国のレミニエンヌ王国と戦争をしなければならないため、兵
が必要なのだ。
「今から私たちの一族の方々に挨拶をしに行くわよ。着いていらっしゃ
い」
ウェッデルを始めとする王族はみんな神器を持っている。
ウェッデルは皇帝の末娘のため軍は小規模だが、兄や姉はそれなりの
強力な軍隊を持っているらしい。
しばらく歩いていると、黒髪が美しい女性に出会った。
「こちらが、ディニオンお姉様よ」
「お初にお目にかかります、ディニオン・バリスティーナです。長い
名前ですので、ディーと呼んでください」
ディーは皇帝の実子で、かなりの地位を持っている。神器使いで強い
らしい。
「よろしくおねがいします」
「あなたも、『神器』使いなのでしょう?よかったら、神器の使い方
をお教えしましょうか?」
「いいんですか?」
「もちろんです。ウェッデル殿の命の恩人ですから」
皇族といっても、ディーは物腰やわらかで話し掛けやすかった。する
と、ウェッデルがディーに反発する。
「ひどいですわ。私にも鍛錬をつけてくださいませんの?!」
「はいはい、わかっておりますよ。あ、私の神器には、会いと豊穣の
神、フリッグが宿っています」

21:瑠璃:2013/12/01(日) 12:33 ID:9IM

「じゃあ、今からあなたの神器について説明します。あなたには
崇高なる戦姫、アテナが宿っているはずです」
ディーの鍛錬は、意外にも哲学的な理論から始まった。ティファ、
オーリン、ウェッデルはよくわからないまま説明を聞いた。
「アテナの能力は風です。その名の通り、風の力を操れるという
ことですね。その力を駆使して戦うのが『神器』使いなのです」
「質問なんだけれど、私の神器の属性は・・・・・・?」
「ウェッデルはフレイヤの主ですから、水の力を持っているはず
です」
「へーっ」
こうして、ディーの講義は延々と続いた。
2時間くらい聞いた後、次は神器の使い方について実践訓練をす
ることになった。
外の中庭で、2人は剣を構える。
「あの、私、一回だけアテナと会話したことがあるんですが・・・・・・」
村長との戦いのときだ。
あのとき、剣から直接声が聞こえてきたのを、ティファは覚えて
いる。テレパシーのような感じだった。
「それは、意志を共有できている証です。それなら、近いうちに
技も使えるようになりますよ」
「私はまだってことですか、お姉様」
「大丈夫よ。始めは少しづつ慣れてくるものだもの。ウェッデル
にも才能はあるから、ね?」
「はーい・・・・・・」
ディーはまず、ティファに剣術の基本を教えた。基本の構えや踏
みこみ、剣の持ち方なども丁寧に説明した。
そのため、ものの数時間でティファは少しだけ剣術を覚えること
ができた。これなら、普通の傭兵は楽々倒せるだろう。
「今日はここまでです。わからないことがあったら、いつでも私
に聞いてね」
「はい、ありがとうございます」
ティファはウェッデルとディーと別れ、用意されている部屋に向
かった。ここで寝起きすればいいとのことだ。ウェッデルが特別
に2人に用意してくれた。
「今日は色々聞けてよかったね」
「はい。オーリンも、ちょっとは勉強になりましたか?」
「うん!明日も色々聞きに行こうよ!もしかしたら、剣術も教え
てくれるかもしれないし!」
「そうですね。じゃあ、おやすみなさい」
「おやすみ〜」
2人はすぐに眠りについた。

22:瑠璃:2013/12/01(日) 13:06 ID:9IM

ドーン、ドーン、ドーン。
どこかで銅鑼の音がする。ティファははっとして起き上がった。
「よかった、やっと目覚めたんだね!」
オーリンが肩を揺さぶっている。ティファはここで始めて自分が
馬車に乗っていることに気づいた。
「今から戦争が始まるのよ!」
ウェッデルも馬に乗っている。ディーの姿は見えなかった。多分、
もっと前の方で軍をまとめているのだろう。
バリスティーナ軍はレミニエンヌ王国の国境を抜け、王都に進軍
しているところらしい。傭兵の2人は、外に出て、ディーが宣戦
布告する声を聞く。
「こちらはバリスティーナ軍です!私たちは戦争をしたくはあり
ません!そちらの応答次第で、この国の未来が変わるのです!」
しかし、レミニエンヌ軍は応答しようともしない。明らかに戦争
をすると言っていた。
「全軍・・・・・・」
ディーの声が響く。
「突撃せよ!」

23:瑠璃:2013/12/01(日) 13:18 ID:9IM

バリスティーナ軍5万VSレミニエンヌ軍2万。ほぼ半分の総兵力
だった。
「よし、力で屈服させよう!そうすれば、かのレミニエンヌも傘下
に加わるはずだ!」
バリスティーナ軍はそう思っていた。
しかし、レミニエンヌには多くの『神器』使いが王家に従属してい
た。普通の傭兵たちはまたたくまに倒されてしまう。
「フリッグ!傭兵のみなさんを頼みます!」
ディーの力で死は免れるも、傭兵たちは動けなくなっていた。この
ままではレミニエンヌの参加に加わることとなる・・・・・・!
「オーリン!行きましょう!」
「うん!」
2人は敵に突っ込んで行った。
「なんだ、こいつら」
「ふん、白々しいがきどもめ、俺たちの力でひねり潰してやるわぁ!」
兵士たちが一斉に襲いかかる。
「水神の津波(チェリン・マッカール)!」
ばっしゃあああん!
近くの川と接続し、オーリンが大波を起こす。
「ここはオーリンに任せて!頭領をやっつけておくれ!」
ティファは次々と襲いかかる兵士たちをなぎ倒して行った。

24:瑠璃:2013/12/01(日) 16:28 ID:9IM

「やばい、このままじゃ騎士団長がやられちまうよ!」
「どうにかなんないのか?!」
傭兵たちの叫びが聞こえる。
(どうやら、騎士団長ってのが一番偉い人みたいだわ。その人を説得すれば
この戦争がちょっとはましになるかもしれない・・・・・・!)
ディーやオーリンの魔力が尽きる前に騎士団長を探し出さなくてはならない。
ティファは無我夢中で走りつづけた。
しばらく走っていると、重そうな甲冑を纏った騎士がティファの前に立ちふ
さがった。兜や鎧で年齢などは分からないが、かなりの強者であることはた
しかだ。
「そこをどいてください。私は騎士団長に会わなくてはならないのです」
ティファは騎士に言った。
「俺が騎士団長だ」
騎士は馬から飛び降りると、ティファに剣の切っ先を向けた。
隣りには、身軽な鎖帷子と刀を数本携えている少女がいて、ティファをぎろ
りと睨み付けている。
「勘違いしないで下さい。私はあなたと戦いたくて来たのではありません。
この戦争を止めてほしいんです。それだけを頼みに来たのです」
「馬鹿を言うんじゃない。どうせ、騎士団長を倒しに来たんだろう?それな
ら僕は容赦しないよ。バリスティーナ帝国に下りなどしない」
少女が刀を構えた。『僕』などと言っているところからして、相当男勝りな
性格なのだろう。
(どうしよう、この人は本気で戦うつもりだわ。騎士団長はどうなのかしら)
「ランディ、お前は下がってろ。ここは俺がかたをつける」
「しかし、騎士団長。僕は本気で戦いたいんだけれど・・・・・・」
「いいから、俺は大丈夫だから。もし、俺が倒されたらお前の神器でこいつ
を倒してくれ」
はい、とランディは素直に従った。そして、傷ついてうめいている兵氏を抱
え、自軍に走り去って行った。
「あなたも・・・・・・神器使いなんですね」
ティファがいうと、騎士はどうでもいいといったふうに溜息をついた。声か
らしてまだ若い。ティファは剣を抜いた。
騎士は件を高々と上げ、こう叫んだ。
「草木を全て燃やし尽くせ!『草薙の剣』!」

25:瑠璃:2013/12/03(火) 17:33 ID:9IM

(まさか、あの人も『神器』使い?!どうしよう、私はまだ『神器』
を使いこなせていないのに!)
「とっとと逃げた方がいいと思うぜ、傭兵さんよ!」
ティファはとっさに大木に飛び移った。
見下ろすと、草地だった所は一面火の海になっているのだ。この大木
もそのうち燃えて朽ちてしまうかもしれない。
(まずいっ!)
周りを見まわすにも、逃げられそうな所はない。このまま死ぬか、あ
の騎士団長を倒すしか手はないのだ。ティファは選択を迫られた。
(せめて、どこかに水があれば!この炎を消すことができれば!)
しかし、無常にも炎は音を立てて大木を燃やして行く。
「あの傭兵、この木と一緒に死にたいみたいだ。全然動かない」
「ランディ、言いかたってもんがあるだろ。あいつもきっと使命があ
って戦ってるんだ。敵だからって、そんなこと言っちゃだめだと思う」
「でも・・・・・・」
ティファは剣に力を込めた。
しかし、何も起きない。風が起こるどころか、うんともすんともいわ
ないのだ。
(やっぱり、私なんかじゃだめなのかしら・・・・・・)
そのとき、一面に霧がかかった。
霧とは言えど、もとは水である。炎の勢いが弱まって行った。ティファ
はこのすきに大木から飛び降りた。
「ちょっとぉぉぉぉっ!!!」
甲高い声が響き渡った。

「私の友達にぃぃぃぃっ、何をしてんのよぉぉぉぉぉっ!!!!」

鬼の形相でウェッデルが走ってきたのである。
「な、なんだあいつっ?!騎士団長、知り合い?!」
「しらねーよ!怖すぎるよ!大体よく見ろ、あの剣から霧が出ている!
あいつも『神器』使いだ!つーかおっかねー!」
ウェッデルは般若の如く恐ろしい顔で騎士団長に踊りかかる。ランデ
ィが思わず避けてしまうほどだった。
「私の大切な友達を傷つけてくれたようですわね?!ここはいわゆる
倍返しでこてんぱんにしてやるわ!」
「待て待ってくれーっ!」
思わぬ援軍に集氏唖然としていたティファだっかが、ふと気がついた。
(今・・・・・・友達って・・・・・・)
「大丈夫、ティファ?!」
「ウェッデル殿、激昂しすぎですってば〜!ともあれ、私も本気を出
しますよ!」
ディーやオーリンもかけ付けてきた。
ここに、大乱闘の幕が開けるとは、今だ誰も思ってはいなかった。

26:瑠璃:2013/12/04(水) 17:47 ID:9IM

「あの、ウェッデルさんはいつの間にあんなに『神器』を使える
ようになったんですか?」
ティファはディーに聞いた。
「この辺りの地域は、湖や池が多いんです。『神器』は自然現象
を取り入れれば初心者でも技が使えたりするんです。つまりです、
ウェッデル殿は湖の力を借りているということです」
「そうなんですか・・・・・・」
ティファの『神器』はまだ力を放出できない。
放出する方法は2つ。ウェッデルのように自然現象を取り入れる
か、自分自身でアテナに語りかけるかのどちらかだ。
(よし、私が直接アテナに語りかければいいんだわ)
そう、決断したとき。
「騎士団長様ー!」
「王よりの援軍部隊です!皆でバリスティーナ軍を追い払いま
しょうぞ!」
なんと、レミニオン王国国王からの援軍が来たのである。ここ
は兵力差でレミニオン王国の方が上だ。バリスティーナ軍は窮
地に立たされた。
「やだぁ、援軍じゃない!ディニオンお姉様、どうしましょう?!」
「ここは私がなんとかします!ウェッデル殿、オーリン殿、そ
してティファ殿は騎士団長を捕らえてください!」
「わかった!」
ティファたちは騎士団長に向かって走った。
しかし、騎士団長の配下が邪魔をしてくる。オーリンが魔法で
蹴散らしながら、ティファとウェッデルに言った。
「ここはオーリンが食いとめるから!君たちは先に行って!」
「わかったわ。後を任せるわよ!」
「オーリンも気をつけて!」
2人が向かう先には、3人の『神器』使いがいた。

27:あい:2013/12/08(日) 11:41 ID:9IM

続き楽しみにしてます!これからもがんばってください!

28:瑠璃:2013/12/08(日) 14:54 ID:9IM

2人は剣術を駆使しながら兵たちを倒して進んだ。もちろん、
殺さない程度に容赦はしている。
「さっき、あなたが戦ってた・・・・・・騎士団長はね、きっと『神器』を
王から託された人だと思うの」
ウェッデルが唐突に言った。
「なぜですか?」
「だってね、あの剣、かなり古い時代のものなの。今じゃあ
んな剣はないわ。あの人はまだ若いでしょ?だから、王国で
代々受け継がれてる『神器』を使ってるんだと考えたのよ」
「・・・・・・」
ティファはアテナの剣を握り締めた。
まだ何も力を使えない。なんとかしなければ、みんなの足を
引っ張ってしまう。それだけは嫌だった。
(アテナ・・・・・・なんで答えてくれないんだろう?」
「ティファちゃん、危ない!」
突然、目の前の木々が倒れてきて、ティファはとっさに身を
ひるがえした。

「お前ら、さっきのバリスティーナ軍じゃん。こんな所で何
してんの?」

ランディが、太刀を振りかざして立っていた。
「お前も、『神器』使いなの?!」
ウェッデルが叫ぶ。
ランディは答えずに太刀から波動を生み出す。当たった木々
は一瞬にして真っ二つになってしまった。
「僕の『神器』はヘラクレスが宿ってる。波動を自由自在に
飛ばすことができるんだ。だからお前らは、死ぬしかないん
だよ?」
「いい度胸ね。私のフレイヤに勝てるとお思いで?死ぬのは
あなたでしてよ、愚鈍な輩め」
ウェッデルが挑発する。その間に逃げろと言っているらしい。
ティファは心の中でウェッデルに感謝し、謝罪しながらその
場をそそくさと後にした。
「あーあ、君、見捨てられちゃったね」
「ふふっ、ティファちゃんはそんな冷たい人ではなくってよ?
ここは私がお相手をして差し上げますわ!」
2人の戦いが始まろうとしていた。

29:瑠璃:2013/12/08(日) 15:32 ID:9IM

どーん、どーん!
湖のほとりで、ウェッデルとランディは戦っていた。ランディの
波動が木々を押し倒して行く。
(このままじゃいけないわ!手を打たないと!)
「あれ、もう終わり?つまんないなあ」
ランディが鼻を鳴らす。
「このまま・・・・・・終わるわけにはいかないのよ・・・・・・!」
湖の水を剣に集中させる。どくん、どくん、と心臓が高鳴り、剣
から水滴がかかってくる。
ランディは、危険を察知して木上へと逃げる。
(あいつ・・・・・・何をしてるんだ?!)
「凍れ!」
ぴきぴきぴきぴき!
水が凍ってゆく。剣は氷に覆われた鋭い剣へと姿を変えていた。
「やあっ!」
木に剣を突き立てると、木は瞬く間に倒れてしまった。ランディ
は地面に着地し、感心したような表情でウェッデルを見た。
「やるじゃん!でもさ、『神器』との一体化はできないみたいだ
ね。それじゃ、僕には勝てっこないよ!」
一体化、とは、なんだろうとウェッデルは思った。

30:瑠璃:2013/12/10(火) 18:11 ID:9IM

新キャラ紹介その2!

*リーゼ・レミニエンヌ*
ニコラスの妹。19歳。
神器『カーリー』の主で、武器は槍。カールした髪にティアラ
を付けている。おっとりしていて穏やかな性格。
シェリラ、ランディとは幼なじみで、兄弟のように育った。

*アーシャ・バリスティーナ*
ディーの義姉で、年齢は不祥。皇帝の妻。
未だに謎が多く、一部の家臣たちからは国を乗っ取るのではな
いかと噂されている。今回の戦には参加しなかったが・・・・・・。

31:瑠璃:2013/12/11(水) 18:52 ID:9IM

あいさん>>
IDが同じなんですが・・・・・・。偶然ですか?

32:瑠璃:2013/12/12(木) 20:17 ID:9IM

一方、ティファは、ひたすら森林の中を走りつづけていた。目指す
は王宮である。
(王宮へ行けば・・・・・・きっと、この戦争も・・・・・・!)
「また会ったな!お嬢さんよ!」
若い男の声がした。
騎士団長が剣を構えて立ちふさがっていたのだ。ティファはぐっと
歯を食いしばった。ここで諦めてはすべてが終わってしまう。
「今度こそ・・・・・・決着をつけます!」
「それはどうかな?俺はまだまだいけるぜ!」
草薙の剣が、火を吹く。
(お願い、アテナ!声を聞かせて!)
「何やってんだよ!」
炎が、騎士団長が、ティファを追い詰める。
いくら語りかけても、アテナから返事は返ってこない。風も一陣も
起こらない。
ティファの中の、何かがぱちんと弾けた。

「無視してんじゃねーよ、クソ女がぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!」

怒鳴った。
罰が当たろうと関係ない。アテナが怒っても関係ない。とにかく、
返事をしてほしい。
「えっ?えっ?!」
さっきまで丁寧な口調だった少女が、いきなり罵詈雑言を吐き出し
たので、さすがの騎士団長もずざっと後ずさりしてしまった。
ティファは叫びつづける。
「てめーが出てこないせいでどんだけ迷惑してると思ってんだよぉ!
神のくせに役立たずで何がしたいの?!お前は一体っ、何がしたい
んだぁぁぁぁぁぁ!!!!」
『えっと・・・・・・。どうしちゃったの?』
「どうしたもこうしたもねーよ!貴様が出てこないせいで・・・・・・んっ?」
きた。
アテナが答えてくれた。
「よしっ!アテナ、よろしくお願いします!」
『よしっじゃないだろ〜?!お前は二重人格ですか?まあ、そんな
所も嫌いじゃないけどぉ〜』

33:瑠璃:2013/12/13(金) 16:43 ID:9IM

アテナの声が響いた瞬間、剣から突風が吹き込んできた。ティファは
思わず後ろに下がった。
(な、なんなの・・・・・・?)
『使えばいいじゃん!使い方次第では国滅ぼせちゃうかもよ?』
あまりに軽い乗りのアテナをシカトしつつ、ティファは剣を構えた。
頭の中に、呪文やらなんやらが流れこんでくる。不思議なことに、忘
れはしなかった。
「お前もやる気かよ?じゃあ、俺も容赦しないぜ!」
草薙の剣が、ティファに迫る。
「烈風の鎮魂歌(レリラファル・レクイエム)!」
竜巻が、炎を消し去って行く。ティファは高らかに雄叫びを上げた。

「・・・・・・ティファ・・・・・・?」

騎士団長が突然言った。
「え・・・・・・?なんで、私の名前を・・・・・・?」
気づくと、頭に巻いていた布がはずれていた。顔を覚えられないよう
に巻いておいたものだった。
「・・・・・・あなたは・・・・・・一体、何者なんですか?」
「こういう・・・・・・者なんだけどさ・・・・・・」
騎士団長が、頭を覆っていた兜を取った。
栗色の髪。耳につけた飾りが、太陽を反射してキラキラと輝いている。
驚きに見開かれたその顔には、ティファも見覚えがあった。

「シェリラ・・・・・・さん・・・・・・?」

自分を救ってくれた恩人、シェリラング・アーノルドの姿が、そこに
あった。

34:瑠璃:2013/12/13(金) 18:10 ID:9IM

「なんで・・・・・・なんでこんな所にいるんですか?!シェリラさん!!」
ティファは力の限り叫んだ。声が枯れそうになって、げほげほと
咳き込む。
シェリラはへらっと笑い、話し始めた。
「本当はさ、いつか話そうと思ってたんだ。でも、なかなか言え
なくて・・・・・・」


アーノルド家は、古くからレミニエンヌ王国に使えてきた騎士の
一族だった。シェリラの父も、騎士団長をやっていた。
しかし、シェリラは騎士になるのには反対だった。自分で好きな
ことをしたいと言い張り、父とぶつかった。そして、頭に血が上
って、家を飛び出してしまったのである。14歳のときだった。
それから、ずっと気ままに旅をしていた。少しも戻ろうとは思わ
なかった。
「俺、馬鹿だったんだよな、あの頃。ついついかっとなっちまっ
てさ。アホらしいよな」
シェリラは悲しげに言った。
そして、半年前、父が死んでしまったことを聞いた。
そのときはシェリラも焦った。後継者争いで戦争になりかねない。
シェリラはレミニエンヌ王国に戻る決意をした。
「その途中で、お前に会ったんだよ」
「はい・・・・・・。でも、1つ、聞きたいことがあります」
「なんだよ?」
「あのとき・・・・・・なんで、私を置いて行ってしまったんですか?」
『神器』を探しているときのことだ。
シェリラは、ティファを見捨てて帰ってしまったのだろうか。テ
ィファは一番それが聞きたかった。

35:瑠璃:2013/12/16(月) 17:21 ID:9IM

「ああ・・・・・・あのときか・・・・・・」
シェリラはとたんに顔を伏せた。
「信じてくれるかわからないけどさ。あのとき、知らない女の子が、出口
まで誘導してくれたんだよ。そして、やるべきことをやれ、って言われた。
だから・・・・・・」
アテナだ、とティファは思った。
たしかにあのとき、『あの男の子も無事に出してやるから』とアテナが言
っていたような言っていないような。
「とにかく、俺は親父の後を継いだ。そして、国王様から、草薙の剣をも
らったんだ。これでいいよな?」
「はい。真実を教えていただき、ありがとうございました」
シェリラはまじまじとティファの顔を凝視した。
「な・・・・・・なんですか?」
「いや、雰囲気変わったと思ってな。前はいつもむすっとしてたのに」
ティファはよく分からなかったが、とりあえず誉めてくれているようなの
で、「ありがとうございます」とお礼を言っておいた。
遠くから、爆発音のようなものが聞こえる・・・・・・。
「ああっ!」
「ど、どうした?!」
「忘れてました!湖のほとりで、ウェッデルが戦っているんです!早く伝
えてあげなくては!」
「まじかよ!そりゃあ忘れたら大変だぜ!」
2人は湖に向かって走った。シェリラは後々足手まといになりそうだった
ので、途中からティファが背負ってやった。
ウェッデルとランディの戦いはすさまじかった。ウェッデルのいきはもう
絶え絶えで、それにランディが追い討ちをかけているように見える。
「ランディ!そいつは俺の知り合いの知り合いなんだよ!もう戦うのはや
めろ!」
ランディはぎょっとした顔で尋ねた。
「でも、騎士団長!こいつは帝国の姫君だよ?!」
「いいから!訳は後でじっくり話すから!もうやめろって!」
「・・・・・・わかった」
ランディが刀を納めると、ウェッデルが半泣きになりながらティファに飛
びついてきた。
「ティファちゃあん!怖かった〜〜〜〜!!!!」
「もう、大丈夫だと思います。シェリラさんが王様を説得してくれますか
ら」
「ああ。陛下にこのことを伝えて、バリスティーナ帝国と同盟を結んでも
らうつもりだ。それでいいですよね、姫君?」
シェリラに聞かれたウェッデルは、渋々といったふうにうなずいた。

36:瑠璃:2013/12/17(火) 16:46 ID:9IM

その頃、王宮。
「状況はどうだ?少しはましになったか?」
レミニエンヌ王国の若き君主、ニコラス・レミニエンヌが家来に
尋ねた。
「いえ、やはり帝国軍の方が戦力は上回っております。このまま
では、王国が滅亡する恐れもあるかと・・・・・・!」
「・・・・・・そうか」
ニコラスは溜息をついた。今の自分は『神器』をすべて配下に渡
してしまっているため、剣や槍でしか戦えない。ニコラスは小さ
く舌打ちをした。
すると、ドレスを着てティアラを光らせた少女が微笑みながらニ
コラスに言った。
「大丈夫ですわ。シェリラやランディが死ぬはずがありませんわ。
それに、いざとなれば私が王宮を守りますわ」
「わかった。しかし、無茶だけはするなよ、リーゼ」
「もちろんですわ、お兄様」
ニコラスの妹でレミニエンヌ王国王女のリーゼだった。
彼女も『神器』使いであり、かなりの実力を誇る腕前だった。
「あらあら、お兄様?お兄様に会いたいと申し出る者がおられる
ようですわ」
「そうか。入れ」
ニコラスが促すと、4人の人物が入ってきた。
ティファ、シェリラ、ウェッデル、ランディだった。一同は驚い
てニコラスとシェリラを見比べた。
「なんの用だ、シェリラ?それに、その者たちは何者だ?」
ニコラスが尋ねると、シェリラは静かに言った。
「俺の知り合いと、帝国の姫君です、陛下。この度は、陛下に伝
えたいことがあって、ここに参上致しました」
シェリラの言葉を聞くといなや、リーゼが聞き返す。
「伝えたいことって、なんですの?」
「レミニエンヌ王国と、バリスティーナ帝国で・・・・・・」
シェリラは力強く宣言した。
「同盟を結んでいただきたい!」

37:瑠璃:2013/12/17(火) 17:13 ID:9IM

「どっ、同盟?!」
王宮がざわついた。シェリラは困ったような顔を一瞬見せたが、
構わず続けた。
「このまま、戦争が続けば、この国は滅びます。だから帝国に
下りましょう!姫君も許可してくれているし、今なら死者も減
ります!だから、陛下!」
ニコラスはちらりとリーゼを見た。リーゼも、険しい顔つきで
シェリラたちを睨み付けた。
「我々は誇り高きレミニエンヌの王族だ。たとえ、国が滅びよ
うとも!国を捨てるなどしないのだ!」
「しかし、陛下・・・・・・」
「シェリラ、やはりお前は見込み違いだったようだ。他国の口
車に乗せられて・・・・・・。なんと愚かなのだ!」
シェリラはびくっとして顔を伏せた。
見込み違いと言われて、かなりショックを受けたようだ。肩が
ぶるぶると震えている。ティファは思わず壁を叩き付けた。
しかし、ニコラスは動じなかった。リーゼに目配せをすると、
奥へ下がってしまったのだ。
「シェリラ、ランディ。あなたたちを殺したくはありませんわ。
だから、帝国軍の小娘だけを始末いたします」
リーゼは槍を構える。ばちばち、と電気がほとばしった。

38:瑠璃:2013/12/18(水) 18:06 ID:9IM

「なっ・・・・・・この人も『神器』使い?!」
ティファは即座に剣を抜き、リーゼに切っ先を向けた。しかし彼女は
相変らずの柔らかな笑みを絶やさずに笑っている。
シェリラは震えながら剣を向けた。ランディに至っては何もできない
ような状態だった。昔から使えてきた王族に剣を向けるわけにはいか
ないといったふうだ。
「そうよ、小さい『神器』使いさん。私の『神器』カーリーは、電気
の力を操れるのよ。すごいでしょう?」
リーゼはふふっと笑うと、黄金の床に向けて電気を放出した。
「危ない!」
突如、ディーが駆けこみ、4人に結界を張った。電気は床全体に行き
渡り、黒焦げにしてしまった。
「お姉様!どうしてここに?!」
「王宮が騒がしかったので、様子をうかがいに来たのです。オーリン
も一緒に来ていますし・・・・・・ひとまずここはなんとかしましょう!」
オーリンも深刻な顔でティファに言った。
「オーリンの目的はね、あのときの村長様みたいに暴走する人たちを
止めることなんだ。この人も、最悪の場合、暴走してしまうかも・・・・・・!」
「暴走・・・・・・!」
「だから、なんとしてでもあの人を止めなくてはいけないんだ!」
リーゼはくすくすと笑った。
「何をおっしゃっていられるのか知りませんけど、私は負けませんわ。
『一体化』もできるんですもの!」
「『一体化』?!」
「なんだよそれ!」
ランディが恐る恐る刀を手にする。
すると、刀が輝き出した。そこから、屈強な男の影が浮かび上がり・・・・・・、
ランディに重なった。
すると、ランディは重そうな鎧に巨大な刀を持つ姿になっていたの
だ。まさに戦の神、ヘラクレスだった。

39:瑠璃:2013/12/21(土) 15:05 ID:9IM

「ランディ・・・・・・。私を裏切るの?」
リーゼが悲しそうな顔をしてランディに問うた。ランディはがちゃがちゃ
と鎧を鳴らしながらリーゼに近づく。
「ごめんなさい、姫様。でも、僕は・・・・・・」
ランディが、太刀を振り上げた。
無言で振り下ろし、そのまま涙をボロボロと流した。
(死んで・・・・・・しまったのかしら?)
しかし、ティファは冷静だった。盗賊団でずっと殺された人を見てきたか
ら、死体を見るのも平気だった、が・・・・・・。
死体がないのだ。血しぶきも飛んでいない。
結論・・・・・・リーゼはまだ生きている!

「よくわかりましたわね。さすがクスチュ族ですわ」

なんとリーゼは瞬間的に王座の後ろに移動したのだった。電気の力を使っ
たのだろう。大理石にふれるとかすかにぴりぴりと静電気が走った。
ティファは急いでシェリラたちを抱きかかえると、特別太い柱の後ろにか
くれた。しかし、ランディは息切れしながらもリーゼの前に立ちふさがっ
ている。
「何をしているんですか!早く非難してください!」
ティファは思わず叫んだ。
「無駄ですわ。あなたがいくら呼びかけようと、ランディは動くことがで
きない。なぜなら、電気で張り付けているんですもの!」
ランディの足に電気が絡み付いていた。リーゼはくすくすくすと笑いなが
ら、槍を手にした。
「裏切った・・・・・・。信じていたのに・・・・・・」
「あ、あの方、様子がおかしくってよ?!まさか・・・・・・!」
ウェッデルが口を抑えた。リーゼはたしかにおかしかった。口調が変わり、
ぶるぶると震えているのだ。
「お前らのせいだ・・・・・・ランディと、シェリラを・・・・・・」
「いけません!罪のない人々を恨めば恨むほど、あなたの自我は・・・・・・!」
ディーの呼びかけにも応答しようとしない。そして、リーゼは叫んだ。

「みんなを・・・・・・返せ!」

40:紫水晶:2013/12/23(月) 11:31 ID:9IM

「なあ、リーゼはどうしちまったんだよ?!なんだか様子がおかしい
ぜ?!」
シェリラがオーリンに尋ねた。
「彼女は今、激しい怒りと憎しみで暴走しているんだ。止める手は・・・・・・
ないんだ・・・・・・!」
シェリラは「そんな・・・・・・」とうなだれた。
ティファは、リーゼが無言になったので、近づいた。顔を伏せている
ので、表情はよく分からない。でも、シェリラを悲しませたくなかっ
た。だから、いちかばちか試してみようと思ったのだ。
「あの・・・・・・大丈夫ですか?」

「大丈夫なわけないでしょう?!仲間に裏切られたのに!少しは空気
読みなさいよっ!!」

突如、リーゼが大声で叫んだのだ。
村長のときと同じだ、とティファは思った。あのときは、なんとか救
うことができた。
「シェリラさんはあなたを裏切ったんじゃないんです!この王国を少
しでも救おうと思って、考え出した答えなんです!」
「他国に屈服することがいいことだとでもいうの?!リーゼはね、こ
の王国でずっとずっと生きてきて、王国を大切に思ってたんだ!なの
に、このクソガキは、同盟やらなんちゃらを引っ張り出してきてさあ!
ふざけてるとしか思えないね!」
リーゼ、いや、カーリーの答えは確かに正論だった。リーゼはこの国
の王女で、国に誇りを持っている。他国に屈服など、王族としてあり
えないことだった。
「でも、このままじゃ死者は増え、国が滅びるかもしれないんですよ!
屈服とか侵略とかは関係ないじゃないですか!」
「だったら私と本気で戦ってみなさいよ!それであんたらが勝てたら
考えてあげてもいいけどね!言っとくが、私は強いよ!」
にやにやと笑うカーリーは、自信にあふれていた。
「わかりました。やりましょう」
ティファの答えに、カーリーと一同は唖然とした。それをよそに、テ
ィファは1つだけ条件を出した。
「その前に、食事を取ってもいいですか?私、朝ご飯を食べていない
んです」
「ははっ!そういうことを言ったのはあんたが初めてだよ!よろしい、
ゆっくり味わって食ってきな!」
ありがとうございます、とティファはいうと、自分の軍のテントに走
っていったのである。

41:紫水晶:2013/12/25(水) 14:56 ID:9IM

食事もし終えて、満腹のティファはカーリーと対峙していた。その横で、
ウェッデルたちがハラハラしながら見守っている。
「逃げ出すかと思っていたのに、けっこう見所のある奴なんだね」
「そんな卑怯なまねはしません。少なくとも、この場では絶対にしない
と思います」
ティファが真面目な顔でいうと、カーリーは意外そうな顔になった。ど
うやら逃げられると思っていたらしい。
「じゃあ、楽しんでから葬ることにするよ!」
言った瞬間、カーリーが消えた。
「なんだあれ?!」
「電気の力で加速したのでしょう!ティファ殿は・・・・・・!」
ディーが心配そうな面持ちで事の成り行きを見守るしかなかった。カー
リーは、戦いに乱入したらティファを強制的に殺すと言ったのだ。だか
ら、いくらティファが危ない状況でも助け舟は出せないのである。
(消えるなんてありえない!きっとどこかにいるはず!)
「隙あり!」
カーリーの槍がかすった。頬から血が一筋流れた。
「今のは・・・・・・!」
「私の電気の力でね、地面と接続させたんだ。だから、クスチュ族であ
ろうと、見極めることはできないよ!」
カーリーが自慢げに言った。
ティファは剣を構えなおすと、カーリーに踊りかかった。カーリーはま
たしても一瞬のうちに消えてしまう。
(どうしたらこいつを倒せるの?!)
「あはははっ!もう、終わり?」
カーリーのあざ笑う声が聞こえる。ティファはやりきれない気持ちにな
った。剣が、地面に落とされようとする。

『そんなんでいいの?』

声が聞こえた。
(アテナ?!)
『こんな奴に負けてていいの?こいつはただの馬鹿だよ?あんたは馬鹿
にされているんだよ?プライドとかはどうなるの?』
(わかってるよ!でも、勝てっこないわよ、こんな・・・・・・)
『あんたは変わったんじゃないの?あたしも似たようなもんだよ。こん
なあたしでも変われたんだよ?あんただって、できるはずじゃないの?』
(変わる・・・・・・か)
『そうだよ!あんたはやれるんだ!あたしが言ってるんだから本当だよ!
希望を捨てないで!』
アテナの呼びかけが、または、この極限状態が、ティファを変えた。
(私だって、変われるのかもしれない。希望を捨ててはいけない!捨て
たら、励ましてくれたアテナや、みんなの努力が無駄になってしまう!)
「この・・・・・・三下があああああ!!」
ティファは、思いっきり叫んだ。
これから何があろうとも、今日のことは忘れないと心に誓った。


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