禁欲寺

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1:イサナ ◆410o:2013/11/30(土) 23:01 ID:XU.

『欲望こそが、人の禁じざるべきものである』

その寺の名を、禁欲寺。
欲することを厳しく禁じ、罰し、一度入れば欲を克服するまでは二度と出られない。
そんな禁欲至上主義の寺に、5人の高校生が集められた。

2:イサナ ◆410o:2013/11/30(土) 23:11 ID:XU.

第一章・篠宮あかりの睡眠欲

ひらひらとどこかを漂っていた私の意識が、突如、吸い込まれるようにして私に戻る。
横たわっていた私は、ゆっくり身体を起こして辺りを見渡した。

「ここは・・・?」

全長2mほどの大仏を囲む御殿が正面にあり、四方は木造の壁で覆われている。
床は十数枚の畳が広々と敷き詰められ、天井は秋の空の如く高い。
内装的にはどこかの寺の本堂のように見える。

「・・・だ、誰だ?」

私の背後から、誰かがもぞもぞと起き上がりながら声をかけてきた。
振り返れば、そこには見覚えのある少年が立っていた。

3:イサナ ◆410o:2013/12/01(日) 13:58 ID:XU.

「瀬戸くん・・・」

彼は『瀬戸翔太』。
私が通う高校の同級生で、生徒会長だ。
他のクラスメイトが「文武両道、容姿も性格も良いという、非の打ち所がない完璧少年」とヨイショしているのを寝ぼけながら聞いたことがある。
瀬戸くんは頭を掻きながら言う。

「あっ、篠宮!何があったか覚えているか?」
「林間合宿にこの山に来て・・・私たちの班で散策していたら、いつの間にかこのお寺みたいなところに・・・」

私は眠たい目を擦りながらゆったりと話す。
上手くまとめれない私がむにゃむにゃ言っていると、瀬戸くんの後ろから3人の同級生が顔を出した。
彼ら3人も林間合宿の班のメンバーだ。
その中の一人、ひょろっとした黒ぶちの眼鏡の『中村亮介』が早口で喋りだす。

4:撫子:2014/02/25(火) 16:40 ID:4aY

この小説、去年のだけど続きが気になるなぁ。
書き方も上手だし。
葉っぱ天国の小説板で続きが気になるのは久しぶりかなぁ。

5:イサナ ◆410o:2014/02/26(水) 20:45 ID:iks

>>4

本当ですか!?ありがとうございます!!
実は、この作品、別の場所にかなり書き溜めてあったのですが
投稿するタイミングを見失ってしまいまして・・・・・

でも一人でも読みたいと言ってくれる人がいるのなら、
精一杯頑張ります。><

6:イサナ ◆410o:2014/02/26(水) 20:58 ID:iks

「ここは一体どこなんでしょうねえ。皆目見当もつかない」
「そんなことより、お腹すいた・・・」

中村くんの横に、腹を抱えてドスンと座り込んだのは『野良大吉』。
大食い大会荒らしとして千里に名を馳せるほどの大喰らいである。
そのせいで、まん丸く肥えたぽっちゃり系だった。

「野良、大丈夫か?」
「少しなら・・・」

瀬戸くんに支えられ、野良くんはなんとか立つ。
それを見て、水商売風でセクシーな『月見菜穂子』が

「翔太くんはかっこええなぁ〜」

と黄色い声を贈った。
月見さんは大阪からの転校生で、男子の間で「スタイル良くてエロい」と人気の女子らしい。

「俺、篠宮、中村、野良、月見・・・全員いるな? 取り敢えず状況を整理しよう」

瀬戸くんがそう切り出したので、私たちはこれまでの経緯を振り返ることにした。

7:れい:2014/03/02(日) 11:28 ID:9Fk

書き込むタイミングを失っていただけだったのか…書き込めば良かった(-_-;)

密かにスレ立てた時から読んでたから、上がってるの見て*おお!*ってなって来た♪

がんばってください!!

8:イサナ ◆410o:2014/03/02(日) 11:45 ID:iks

瀬戸くんがそう切り出したので、私たちはこれまでの経緯を振り返ることにした。
私たちの高校は、6月に県境の山に行って、林間合宿をすることになっている。
その過程で班に別れて山を散策するのだが、わたしたちの班には何かが起こり、この場所に来てしまった。
短くまとめるとこうだが、肝心なその何かを覚えていないので、みんな状況が飲み込めないままだ。
記憶喪失している身だが、何かが起こったことだけは確実な気がする。
直感だけど。

「そういえば出口も開いてないようですねえ。荷物も無くなっていますし」

中村くんは御殿の反対側にある扉と格闘した。
しかし、動いたのは彼の黒ぶち眼鏡だけだった。

「なんかちょっとこわいなぁ〜、翔太くん助けてや〜」

月見さんが瀬戸くんの腕に絡みつき、瀬戸くんは苦笑した。
私は月見さんのがっつき具合に若干驚く。
同時に、クラスメイトが月見さんのことを『発情期のメス犬』と言っていたのを思い出した。

不意に、抑揚がないゾッとするような女の声が、どこからともなく聞こた。

「皆様、お揃いのようで。ようこそおいでくださいました」

女の声は、脳内に直接届いているような感覚だ。
不意に、辺り一帯の空気が形容し難い雰囲気に変わる。
まるで夢の中にいるような『非現実感』というべきか。

9:イサナ ◆410o:2014/03/02(日) 11:48 ID:iks

なんと・・・・!
もう何ヶ月も前のことなのに覚えてくれるとは!
とてもうれしいです><
期待に応えれるよう、頑張ります!!

10:イサナ ◆410o:2014/03/02(日) 18:27 ID:iks

一同はその『違和感』にアテられて石のように固まった。
だが、瀬戸くんだけはリーダーシップを発揮し、怯まずに女の声に対応する。

「誰です?俺たちはここに来るつもりなどなかった!」
「私が呼んだのですよ。皆様・・・いえ、欲深き高校生たちを」
「欲・・・?」
「ええ。あなた達は一人一人強い欲を持っているようです」

「欲?」と私は小首を傾げた。
女の声は淡々と話を続ける。

「なので欲を制御出来るよう、ここで修行をしてもらいます」
「えっ・・・・?」
「社会に皆様のような貪欲な若者が増えている今、それを少しでも改善するためにあるのがこの場所、『禁欲寺』のなのです」
「じゃあ、あなたは誰?」

禁欲寺・・・なんだか安直なネーミングだなあ、と私は密かに思いながら、女の声の正体を聞き出そうとする。

「申し遅れました。わたしは巫女のシズミでございます」

シズミ。
そう名乗った女に、中村くんは落ち着かない様子で尋ねる。

「待ってくださいよ。じゃ、これは学校が関わってるって事ですか?」
「いえ、関係ありませんよ」
「それじゃあただの迷惑やでぇ〜。ウチらは早く他の班と合流せなアカンのに」
「月見さま、何か勘違いしてらっしゃるようです」

シズミに名前を呼ばれ、月見さんの肩が少しビクついた。
・・・あれ?
なんでシズミという人は、月見さんの名前を知っているんだろう。
私の脳裏にはてなマークがポン、と1個生まれた。

11:イサナ ◆410o:2014/03/02(日) 21:08 ID:iks

一方、瀬戸くんは月見さんに代わり、強気でシズミに問い詰める。

「勘違い?どういう事だ!」
「皆様は禁欲寺での修行を強制させられる身なのです。断れば、身の安全の保証はできませんよ」
「・・・俺たちが行方不明になったことは、先生達にもすぐ知らされる。じきに警察も来るぞ?」
「残念ですが・・・皆様がいた世界と、禁欲寺は全くの平行世界であり、私の力が無ければ外部からの干渉は不可能です」

摩訶不思議な事を言うシズミのせいで、私の頭にはポンポンと次々にはてなマークが大量生産される。
他のみんなも目を点にして呆然としていた。
その中で瀬戸くんだけはシズミに負けず劣らず言い返す。

「そんなのハッタリだろ? 何が目的だ!」
「そ、そうだ!」

野良くんはさっきまで背筋をカチンコチンにしていたが、便乗して野次を飛ばす。
しかしシズミは冷笑した。

「皆様が信じなくとも、助けがこないのには変わりませんよ」
「ねえ・・・その、修行って何?」
「篠宮さま、やる気を出していただけましたか! それについては紙に記してあるので後でお渡しします」
「篠宮!」

瀬戸くんは私を説得でもするつもりか、口を開きかけたが、それをシズミが遮る。

「瀬戸さまも大変強い欲をお持ちのようです。他の皆様も、欲の種類は違えど、貪欲さ極まりない」

瀬戸くんの強い欲・・・? 想像がつかない。
しかし、何の欲が強いのかというのは、私の場合、考えるまでもなかった。

睡眠欲である。

12:イサナ ◆410o:2014/03/03(月) 23:22 ID:iks

私は過眠症なため、常に眠気が晴れることは無く、1日に総合して16時間は寝る。
過去に睡眠を1日7時間に減らそうとしたが、体力が尽きて倒れ、それから三日三晩寝たきりであった。
そのため禁欲修行をしたいとは思わないが、助けがくるまでの間は従っておいた方が身のためなのだ。

「みなさん、自分の中の欲望に心当たりがあるみたいですね」

急に一同は黙り込む。シズミに誰も言い返せないのだ。
野良くんや月見さんは大体分かるが、これと言った欲がなさそうな中村くんや瀬戸くんまでもが。
特に瀬戸くんは誰もが欲しいものをすべて持っているような人なのに。
私は、瀬戸くんが何の『欲』を持っているのか気になった。

「では、生きて元の世界に帰りたければ、扉の鍵を開けましたので、まずは外においでください」

シズミが私たちの心を揺さぶるように呼びかけた。
瀬戸くんが「助けが来るまでの辛抱だ」と、渋るように言って扉に手をかけると、他の3人も少し怖がった様子で瀬戸くんに続く。
ゆっくりと重たい扉が開いた。
本堂から見渡せた禁欲寺全域は、寺というより山だった。
ただ、石階段が山の下へ限りなく続いているだけだ。
標高もとても高そうに見える。
目の前では赤く染まった夕日が山へ落ちようとしていた。

その日の入りは、これからの修行生活のスタート合図のように思えた。

13:イサナ ◆410o:2014/03/06(木) 00:11 ID:iks






パチン。背景が現れた。
眼前に、穏やかな風が吹き渡る我が家のリビング。

パチン。物が現れた。
眼前に、何か書かれた一枚の紙。
横倒しになり、水が零れたガラスのコップ。
木製の背が低い丸机。
机上には、散乱した白い錠剤。

パチン。人が現れた。
机に突っ伏し、微動だにしない女性。
血色がない。死んじゃったのかな?
それにしても誰だろ、この人。

「彼女を思い出してください」

そんなこと言われても知らない人だから。

「いえ、貴方が深く知っている女性です」

違うよ。私はこの人を初めて見たんだよ。

「現実を見なさい。彼女は・・・」

・・・違う。

「あなたの・・・」

違う!

「一番・・・」
「違うよっ!!!!」


そして私は目を覚ました。
どうやら、夢を見ていたようだ。

14:イサナ ◆v6:2014/03/23(日) 19:55 ID:iks

見たくない夢を見てしまった。
これまで悪夢を見たことなんて一度もなかったのに。
私の睡眠は、いつだって快適だった筈なのに。
にしても真っ暗だ。ここは、布団の中・・・?

寝起きで曖昧になっていた記憶の欠片が、糸を紡ぐようにして繋がっていく。
禁欲寺・・・禁欲修行・・・睡眠欲・・・シズミ・・・

あの時、私たちは本堂から出た後、シズミの姿を見た。
彼女は黒い髪を束ねた、いかにもな巫女だった。
しかし、身長が低くて幼女みたいだったのを覚えている。
声は冷たくてゾッとする大人の声だが。
ともかく、姿を現したシズミに連れられ、私たちは宿舎に向かった。
禁欲寺の本堂から続く石階段を少し下れば、宿舎に着いた。
シズミが石階段を宿舎よりもっとずっと降りると元の世界に辿り着くと言っていたが、信用できない。
取り合えず宿舎に着いた私たちは疲れていたので、シズミの提案もあり寝ることにした。
男子の瀬戸くん、野良くん、中村くん。
女子の私と月見さん。
男女で部屋わけをし、今に至る。
記憶が整理できたら、また眠くなってきた。
もう一度寝ようと布団に深く潜り込もうとした私の横から、月見さんが声をかけてくる。

「何や?あかりちゃん、眠れへんのか?」
「・・・いや、ちょっと覚めちゃって」

あかりちゃん、なんて同級生に呼ばれたのは初めてだった。
私は普段クラスの隅っこで寝ているだけでクラスメイトと絡んでいないし、呼ばれたとしても苗字だからだ。
というか、月見さん私の名前知ってたんだ。


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