ちあ@による自己満足短編集。

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1:ちあ@ ◆NLsI:2013/12/11(水) 18:10 ID:CmY





初めましての方、お久しぶりの方
こんにちは。
ちあ@と申します。
最近小説板どころか葉っぱ天国にも来れない始末のちあ@です。


今回は、
長編を書くと完結までにかなり長い時間がかかるので
久しぶり?に「短編集」を書いてみようかな、と思ってスレを立てました。



ジャンルはいろいろです。
恋愛系、バトル系、学園物。
リクエストをいただければ順次対応していきたいと思っています。



自己満足のgdgd短編集ですが、
お楽しみいただければ光栄です。

2:ちあ@ ◆NLsI:2013/12/11(水) 18:11 ID:CmY









episode one
「月の初恋」








.

3:ちあ@ ◆NLsI:2013/12/11(水) 18:20 ID:CmY







――この瞬間から、私の全てが狂い、堕ちていった。














「かぐや、早く!」





朝、七時四十分。
車のたくさん通る大通り。
……の、脇の歩道を歩く私、月島かぐや(つきしま かぐや)を急かす声が前から聞こえた。
その声に返事をして走りながら声の主を追えば、
早くしろ、と言いながらも待ってくれているハニーブラウンのボブヘアーの彼女。
村野ひなた(むらの ひなた)。
私の親友であり、幼馴染であるひなたを追いかけ、追いつき、背中に手を当てる。
今思えば、この時の行動をひとつ減らせば
こんなことにはならなかったのかもしれない。
ひなたは私の手のひらに押され、軽くよろめいた。
瞬間、通ったトラックに腕を巻き込まれ、引きずられる。
突然のことに、声も出なかった。

4:ちあ@ ◆NLsI:2013/12/19(木) 21:09 ID:CmY








「っ、ひなたっ!!」






叫んだ時には、もうひなたは目の前に立ってはいなかった。
代わりに、元は人間であろうとかろうじて認識できる血にまみれた肉片が
目の前の細い道路に落ちている。
それがひなたであると認識するのにはいわずもがなかなりの時間がかかった。
腰は抜け、おかげで地べたに座り込む。
周りの悲鳴など耳に届かない。
その代わりに頭の中をエンドレスリピートする文字。






――『私が、ひなたを殺したのかもしれない』。






もちろん殺意なんてあるはずもなく、
きっと私の立場であれば誰もが事故だと主張するだろう。
でも私にはそれができなかった。
事故だと自分に主張し、自己暗示をかけることすらできなかった。
目の前に広がる光景を
自分と無関係のものだと思い込みたかった。
自分と無関係の光景だと思い込みたくても、それは事実上不可能だ。
だって私の手のひらには未だに、
先ほど触れたひなたの背中の感触が残っているのだから。
それを確認した直後、ふと我に返る。
座り込んだまま周りを見回すと、
周りにはこちらを珍しいものを見るような目で見物する野次馬と
既に誰かが通報したのであろう、
救急車とパトカーがとまっていた。

5:ちあ@ ◆NLsI:2013/12/20(金) 16:52 ID:CmY







「すいません、現場保存のため移動して頂いてもよろしいですか?
 それと、目撃証言も頂きたいのですが……」






座り込む私に声をかける男性が一人。
パリッとしたスーツに身を包み、
見るからに真面目で誠実そうな人柄を思わせる男性だ。
その人に手を貸されて立ち上がる。
力の抜けた足と腰は自分の言うことなんて聞いてくれない。
それでもなんとか立ち上がり、
すぐ傍に停まっていたパトカーまで連れて行かれる。
車の中に入ると温かい紅茶が渡された。
きっと落ち着くように、という配慮なんだと思う。
だけど私にはそれは逆効果で、
渡された紅茶が私の手の中で震えているのを見るだけで自分が震えていることを再確認してしまう。
それでも口元まで持って行って飲むと、
アールグレイの香りが口内にふわりと広がった。
それは少しの落ち着きを体中に巡らせていった。
ふぅ、とため息をつくと、
一緒に車内にいたさっきとは違う男性が話しかけてきた。






「まずは君の名前を教えてもらってもいいかな」

6:ちあ@ ◆NLsI:2013/12/24(火) 15:07 ID:CmY













「じゃあ、君が殺ったっていうのかい?」






私に話を聞いていた男性は私の話を聞いて驚きを隠さない。
口をぽかんと開け、
目を見開いた男性に私は「はい」と答える。
しかし男性は『私が殺った』ということを聞いてもまだ尚、
簡易事情聴取を続ける。
私は何もかも包み隠さずに話していく。
ひなたと一緒にあの道を通ろうとした時に、
ひなたの背中を誤って押してしまいトラックにひなたが巻き込まれたこと。
できる限り詳しく細かく話す。
男性がメモをとるスピードに合わせながらゆっくり話す。
その話を聞き、男性は当初聞いていた私が殺ったということを否定した。
これは事故だ、と。












それから少し時間が流れ、
ひなたの事件は事故として処理された。
つまり私は無罪として放免されることになった。
でも、私はひなたを殺した。
とても大切な、かけがえのない存在だったひなたを殺した。
自責の念は誰が何を言おうとも変わらず私を蝕んだ。

7:ちあ@ ◆NLsI:2013/12/27(金) 12:31 ID:CmY













「ねぇひなた、私はどうすればいい?
 ひなたを殺してから、もう二年経ったよ。
 でもね、苦しいの。
 今でも夢にひなたが出てくるの。
 ひなたはいつも、かぐやは悪くないって言ってくれるけどね、
 私はそうは思えないの。
 すごく辛くて、苦しくて、ひなたが死んだことは自分のせいだから。
 だからさ、償うよ、私。
 法律じゃ私は裁かれないみたいだから、
 死んで償うよ」






夜の高層ビルの屋上は気味が悪い。
このビルは高い割に施錠が甘く、
ていうかむしろ入ることに鍵なんて必要なくて
屋上の鍵は管理人に適当な嘘をつけば手に入る、
とても適当なスポットだ。
“自殺”の。






屋上の淵の柵を軽く飛び越え、
足の先が空中に浮くくらいにまで少し歩く。
強い風が吹くたびに体ごと煽られて、
心の準備ができないうちに落ちてしまいそうになる。
髪の毛が風に煽られ、膨らみを見せる。
私は今から、
この場所から、
落ちて、死ぬ。






「――サヨナラ」






心の準備は出来た。
体の重心をゆっくりと前にかけていく。
あと少し。
あと少しで死ねる――……






「なにしてんの」






死ねる、はずだった。
誰かが、私の腕を掴んで引き止めなければ。

8:ちあ@ ◆NLsI:2013/12/29(日) 17:15 ID:CmY








「なにしてんの」






不意に聞こえたその声と
掴まれた腕のおかげで、
私の体は落下寸前で戻される。
声の主を探せば、
私の腕を掴む手が視界に入り、
そこからゆっくりと上に視線を持っていけば、
風になびく眺めの前髪が目に入った。
夜であり暗いこともあって顔は見えない。
髪型は男性で言えば長め、女性で言えば極端に短い長さ。
聞こえた声に太みがあったことから男性であると推測した。







「死のうとしてたの。というか、死ぬの。
 離してくれる?」






一応命の恩人にこの言い草は酷いと自分でも思ったが仕方がない。
この人には関係なく、私一人の問題であり
なおかつ巻き込みたくないことでもあるのだから。
軽めに握られていた腕から相手の手をほどき
引っ張られた拍子に転んでいた体を起こしてもう一度柵を乗り越える。






「おい、待てよ」






柵を乗り越えた瞬間、
先ほどの男の声で呼び止められる。






「なによ」






自分の意思を妨害されて少し怒りをにじませた声で聞き返せば、
後ろで衣擦れの音がする。
立ち上がるのと同時に服を脱いだのだろう。






「アンタがなんで死のうとしてるとか、
 アンタが自殺するとか、
 俺にとっちゃそんなことどうでもいい」






その声は夜の静けさを邪魔しない。
しかし私の体にダイレクトに侵入する。






「ただ、自分の前で死なれんのは嫌だ。
 だからお前、死ぬな」






この自分勝手な言葉がなんで体に侵入したのかはわからないけれど
何故か、
どこか、
自分勝手に隠れたなにかを感じたんだと思う。
だからこの瞬間、
死にたくないかもしれないと思ってしまったんだと思う。

9:ちあ@ ◆NLsI:2014/01/21(火) 19:08 ID:CmY







「なによ、その理屈。アナタが嫌とかそんなこと私には関係ないわ。
 アナタが嫌なら屋上から出ていけば?」






自分でも可愛くない言い方をしてしまったことに気づき少し後悔したけれど
直ぐにそんな感情は消え去った。
コイツが私に関わったから悪いのだ。
個人の都合で邪魔をされてたまるか。
数秒前には一瞬だけ死にたくないと思ってしまったが
そんなことはなかったものとして考えよう。
私は今日、
死ぬためにここに来たのだ。
死ねなければなんのために来たのかわからないし
のこのこ帰れない、というか帰りたくない。






「ここは俺の一番っつか唯一の心休まるところなんだけど?
 そこで勝手に自殺とかしねぇで欲しいんだけど。
 つーかアンタなんで死のうとしてんだよ。
 理由次第ではいなくなってやらんこともないけど」






なんでコイツはこんなに上から目線なんだろうか。
とても腹が立つ。
腹が立つレベルを超越して腹が立つ。
まぁ、過去を話して消えてもらえるならそれもいいか。
どうせ私はもういなくなるんだ。
その前に誰かに過去を打ち明けて楽になってから逝くのも悪くない。






「――……私は、二年前にね」






初対面の男に過去を話すのなんてどうかと思う。
でもそんなことはどうでもいい。
さぁ、これから、
最終の仕上げを始めようか。
一番気持ちよく死ぬための、最終仕上げを。






「一番の親友を殺したのよ」






空気が急に氷点下にまで下がったような感覚がした。

10:ちあ@ ◆NLsI:2014/02/18(火) 16:08 ID:zME








「……は?」






予想通りの反応、予想通りの言葉、予想通りのリアクション。
やっぱり人間なんて皆一緒なんだろう。
コイツもこのあとすぐにここを去っていくに違いない。
私に背を向けて
開きっぱなしの屋上の扉から出ていくのだろう。
……学校の皆もそうだった。
最初は親友を亡くした可哀想な子として皆から同情の目を向けられたけど
私が殺したといえば皆背を向けて離れていった。
皆、一様に。






だからコイツも、きっと。
すぐに聞いて悪かったな、なんて言って背を向ける。
そして扉をくぐる瞬間に「あんな奴に関わるんじゃなかった」とこぼすに違いない。
きっと暴虐の王、ディオニスはこんな気持ちだったんだろう。
信じかけた人にことごとく裏切られていれば
「これだから人は信じられない」とこぼすのも無理はない。






心の中でディオニスに同調していると、
目の前の男は私に背を向けた。
あぁ、頭の中のシミュレーション通りだ。






「……、聞いて悪かったな」






予想通り。
予想通りの言葉のあとに「辛かったんだよな」と付け足した。
そんなことは大した差ではないが。
さぁ、さっさと出て行け。
私のことは忘れて、
テレビで報道された場合には本当に死んだのかと感傷に浸ってくれればいい。
だから私のことは放っておいてくれ。






心の中で語りかけていると、
その言葉が届いたかのように男は振り返る。
近づいてくるのだと数秒かけて理解。
予想とは違うが、
多方別れでもいいに来るのだろう。
「話させてごめんな。そういう事情なら出てくわ」
言いそうなセリフが頭に浮かんだ。






目の前に男が立つ。
思っていたより高い身長で見下ろされ、
急に少しの恐怖感が私をおそう。






「なに、……よ!?」






なによ、と突っぱねるつもりだった。
瞬間。
瞬間、私の体は温かいものに包まれた。

11:ちあ@ ◆NLsI:2014/02/19(水) 18:40 ID:zME







温かいものに包まれた、と形容した事実は私の頭の中に混乱を招く。
私の背中に回る男の腕。
耳元にある顔、というか唇。






「なに、よ。離してよ。
 事情話したら出て行ってくれるって言ったじゃない」






「確かに言ったけどさ、こんな悲しそうな顔してる奴ほっとけるかよ。
 生憎俺はそんな薄情な人間じゃねーもんでな」






抱きしめる力を少しずつ強くする男。
それに伴って、
男の温かさが少しずつ体に染み込む。
凍った心が溶けていくような。
そんなイメージが頭の中に浮かんだ。






「……アンタが薄情な人間であろうとなかろうと関係ないわ。
 離してよ、死ぬの。私、死ぬの」






離れようと体をひねっても、
引き剥がそうとして男の胸板を強く押しても。
所詮私は女で、男の力に適うわけがない。
抵抗する気力も次第になくなり、
引き剥がすために相手の胸板においていた手を少しずつ、体の横のラインに合わせて下ろす。
それを抵抗終了の合図と受け取ったらしい男が、
私の顔に顔を近づける。
……、近い。






「お前もさ、辛かったんだと思うよ。
 俺だって色んな過去を背負ってる」






「……」






突然語りだした男についていけず、
ただ呆然と耳を傾ける。






「でもな、そんなことお前を見て吹き飛んだ。
 なんつーのかな、見た瞬間に、コイツを俺のもんにしたいって思った」






綺麗な顔を私の顔から少し遠ざけて、夜空を仰ぐ男。
群青色のバックに輝く白い点達。
薄紫の雲に隠されながらも懸命に光る姿が魅力なのだろう。






もう一度こちらに顔を向けた男が口を開く。
今度は、さっきよりも慎重に。
なにか重いものを吐き出す雰囲気を併せ持ちながら。






「一目ぼれした。だから死なせたくなかった。
 今気づいたけどな」






夜空に輝く星達。
私は罪深いですか。
許されることではありませんか。
許される頃には私は白骨化していますか。
私は、生きていていいのですか。
私に生きる意味をください。

12:ちあ@ ◆NLsI:2014/02/19(水) 18:40 ID:zME







ニカッと笑った彼の白い歯が、
何故か暗い中はっきりと見える。
告白されたという事実が私の体温を上昇させていく。






「私、人殺してるんだよ?それでもいいの?
 こんな私でアンタは愛せるの?」






馬鹿な質問をしたかもしれない。
それでも聞いておかなければいけなかった。
私の感情云々抜きで、
コイツの感情をちゃんとしたものか確かめないと。
そんなことを考えながら顔を覗き込むと、
先程からの笑顔を保ったまま、「ああ」と言われた。






こんな私を愛してくれる人がまだいたんだ。
それがたまらなく嬉しかった。






「……アンタに免じて、死なないでおくわ。
 時が来たら勝手に死ぬわけだし、時間をかけて罪は償うことにする」






男に背を向けて、
地面に立っているより数倍近いところにある空に手を伸ばす。
届かない。
つかもうとしても、指のあいだを空気が通り抜けるだけ。
それが私と、ひなたとの今の距離を表していた。






「……ひなた、ごめんね。
 私はまだこの世界に未練があるみたい。
 もう少し生きててもいいかな、時間をかけてひなたに詫びたい。
 また会えた時に、許してもらえるように、ひなたの分まで精一杯生きてもいいかな……」






「いいと思うぜ。親友も許してくれるよ、きっとな」






いつの間にか私の横に立っていた男はそう言うと私の手を握った。
温かい。
どこかひなたに似ているぬくもりが、
今。
私の心を溶かした。






男と向き合って、正面から相手を見る。
そして、口を開く。






「私でよければ、付き合ってください」






告白された身のはずが、告白したみたいになってしまったけどそれは置いておくとする。
今は笑顔で頷いたこの男を、
心のどこかで愛しいと思えることだけで。
もう、充分だ。












―fin―

13:ちあ@ ◆NLsI:2014/02/19(水) 19:08 ID:zME





気分短編、ひとつ完結です*´`
このお話は、本当はもっと複雑な設定になる予定だったんですが
短編でまとめられる気がしなくてやめました。
このお話の長編をかける時が来たら、
そっちの設定にすり替えてみるのも面白いかもしれません。




なにはともあれ、「月の初恋」完結です。
最後まで男の子の名前はわからないままでしたけど、
それはそれでミステリアスでいいのかもとか思ったり。




感想等お待ちしています。

14:ちあ@◆y6:2014/06/14(土) 14:51 ID:pwo








あぁ、あたしは今日も。






無様に落ちていく。












「ココロ」

15:ちあ@◆y6:2014/06/14(土) 14:52 ID:pwo








陰口、悪口、罵倒、批難。
それらが当たり前のように行われる空間で、
あたしは何度も死にかけた。







そして、あの人に何度も救われた。


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