公害二世さん「日々の目標は生きることです」

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1:ヨウカズ:2014/01/15(水) 20:46 ID:23U

街の近所の製鉄工場から、有害物資が流れていた。
その事が明らかになったのは、一人の妊婦が異常な症状を出したからだという。
その奥さんから産まれた赤ん坊は、母の血にながれる害を受け継いでいた。


畳部屋しかない、小さなアパートの一室に、その赤ん坊の成長した体があった。
部屋はこれといって片付けられている様子はなく、白い布のかかったキャンバス、端に追いやった絵の具箱やパレット、後はクローゼットと小さな箪笥……
それらに囲まれているのは敷布団一式。
その子は、そこでまだ寝息を立てていた。
しばらくして、折角の眠りを邪魔するかのように、廊下が子供の声と足音で騒がしくなる。
それらはこの子の部屋の前で留まると、古い戸をばんばん叩いて鳴らした。

「…さーん、おーじさーん!!」

薄い戸が振動でガタガタと鳴り、その音で布団がうごめく。

「ん、…んん〜…? はぁー…い」

布団の暗い隙間から、痛んだ黒髪が顔を出した

2:ヨウカズ:2014/04/19(土) 00:21 ID:23U

寝起きでまだ焦点の定まらない目を擦り、
手をついて体を起こすと、叩かれている戸がぎしぎしと軋んでいた。

「……ふぅ。」

彼は仕方ないな、と言うように柔らかく微笑むと、
はだけた寝巻きの帯と襟を直すと、壁に手をついて立ち上がる。

3:U◆R.:2014/04/27(日) 23:40 ID:23U

「ふぅ……」

男性にしては細腕で骨ばっており、いかにも頼りない体の彼は、一足歩いては息をつき、目線の先の引き戸を引き……

「あっーー」

途端、体から棒が抜けたようにふっと崩れた。
額に固い木の衝撃が走り、起き上がれないでうつ伏せで居ると、頭上から子供の声がする。

「うわー、死んだっ」
「ばか、この人から新聞代貰ってないだろ」
「おじちゃーん、平気? うわっ!?」

そして数秒の沈黙の後、子供達はドタドタと廊下を走り去って行く。
倒れて額を打ち付けた彼を残して。

「うう、ん…… え、……あれ?」

手をついて半身を起こすと、廊下に誰も居ないことに首をかしげる。

なんだったのでしょう?

疑問に思いつつ立ち上がろうとした時、額に生暖かさを感じ、手を当てる。
その感触はよく知っているものであった。

「……、あぁ……。」

納得して手を引き剥がすと、チクリと出来立ての傷が痛んだ。

小さいお手伝いさんには怖いでしょうね、これは。

そう思うと微笑ましくなって、少し口角を上げる彼は、「おじちゃん」にしては随分と若々しい姿である。


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