記憶〜消えた村〜

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1:千代紙:2014/01/22(水) 06:25 ID:PYM

キーン!
互いの剣が交じり合い、火花を散らす。
「ハア……ハッ…」
息遣いが荒いのが自分でも分かる。
だが、相手は落ち着いた呼吸で、散った火花を楽しんでいるようにさえ見える。
「……終わりだ、リカーサ」
もう、終わる……。
そう思った刹那、相手の剣が腹部に刺さるのが分かった。
ドサッ……。
その音に呼応するかの如く、相手は呟く。
「リカーサ、死はお前を選んだぞ」

***

どうも。
いきなりですが、戦いの描写が入るので、残酷なものになる可能性が見られています。
苦手な方はダッシュでお逃げ下さい。
コメント等、してくださったら拝みます←
荒しはスルーですね。
では、start☆

2:千代紙:2014/01/22(水) 06:30 ID:PYM

少年には、過去の記憶が無かった。
両親や、昔住んでいた所。
そんな幼少期の思い出は無かった。
いつしか少年はこう考えるようになっていた。
記憶は必要ない。
しかし、彼は心の奥底で言い様の無い不満があった。
みんな、過去の記憶があるのに、俺だけ……。
そんな思いは、武道の練習に励むことで、美しく消え去る。
俺は今を生きる。
記憶なんて必要ない。

3:千代紙:2014/01/22(水) 06:52 ID:PYM

「ロロンさんですか?」
真後ろで声が聞こえた。
振り向くと、一人の少女の姿。
「お前は誰だ」
ロロンが聞き返すと、少女は言った。
「私はリカーナです。叔父に頼まれて、ロロンさんを連れてこいって言われました。どんな人か聞いたら『しなやかな体つきの毎日トレーニングしてる青年』って言ってたからあなたかなって」
「ちょっと待て。毎日トレーニングしてるって言うだけで俺を特定出来たのか?」
「ええ、もちろんですよ」
ロロンは眉をひそめる。
怪しい。
「大丈夫ですよ。叔父は優しいですし。行きましょうよ」
リカーナが袖を引っ張る。
これも、何かの縁なのかもしれない。
ロロンはふと、そう考えて頷いた。
「分かったよ」

4:千代紙:2014/01/22(水) 18:13 ID:PYM

目的地に着くまでの数分間、二人は一言も話さなかった。
その代わり、周りの人々の話し声が聞こえてくる。
そもそも、ここは一ヶ月に一回催される「幻市」。
珍しい品々が店頭にならぶため、人々が押し寄せる。
「もっと値下げしてよ!」
「これ、良いわね!」
たくさんの声があちこちで巻き起こる。
そんな中、リカーナは幻市から少し外れた寂しげな道に入っていく。
ロロンもそれに続いた。
「ここです」
リカーナは、いきなり止まった。
「ここ……?」
そこは、古いビルだった。
『春風・コーポ265』
と、かろうじて読める看板があった。
「このビルの三階に行きます」
リカーナは呟くようにそう言い、ビルの中へと足を進めた。

5:& ◆tEkM:2014/01/22(水) 19:25 ID:1jE

野薔薇です!
楽しみにしてるよ☆

6:千代紙:2014/01/23(木) 17:27 ID:PYM

>>5
♭野薔薇♪
来てくれてありがとう!
パソコンの前で思わず拝んだよ!←

7:匿名さん:2014/01/23(木) 17:43 ID:PYM

古い階段を上る。
エレベーターは無い。
そもそも、この国には存在しないのだ。
階段を上り終えると、唐突に扉が現れた。
他は寂れているのにも関わらず、その扉には装飾までされていた。
『holck's house』
お洒落な文字で、そう書かれている。
「ホルクの家。」
ロロンは訳して言い直す。
「そう、私の叔父の名はホルク」
ホルク。
リカーナやホルクと言う名前たちは妙に聞き覚えがある。
ロロンが悩んでいると、リカーナが扉に手をかけた。
苦もせずに開く扉。
「不用心だな」
思わず呟くと、リカーナが振り返って笑った。
「これ以上の防犯はありませんよ」
「はぁ?」
「これは、魔扉。指定された者でしか開くことの出来ない扉なんです。」
魔扉。
初めて聞く名前だ。
ロロンが扉に手を当てたとき、内側から扉が大きく放たれた。
「おやおや、姪とお客様の登場じゃないか。ロロンくん魔扉、試してみるかい?」
それは、一人の男性だった。
まだ若く、25歳くらいだろうか。
明るい茶髪に、青いフレームの眼鏡がよく似合っている。
「あなたがホルクさん?」
ロロンは扉から手を離し、聞き返す。
すると、男性は微笑んだ。
「そうだよ、ロロンくん。僕はホルク。リカーナの叔父に当たる。」
「初めまして、ホルクさん」
ロロンが用心深く、しかし礼儀正しく頭を下げる。
すると、ホルクは悲しそうに言った。
「ああ、覚えていないんだねロロンくん。僕たちは昔、何度も会っているんだ」

8:千代紙:2014/01/23(木) 21:03 ID:PYM

>>7は、千代紙です!  


「詳しいことは、中で話そうか」
と言う、ホルクに賛成しロロンたちはリビングへ入った。
家の中は案外広く、部屋も四部屋あった。
しかし、
「叔父はこのビル三階を独り占めしてるんです」
という、リカーナの説明で納得することが出来た。
「適当に座ってほしい」
ホルクはそういい、あらかじめ準備をしていたらしいココアを出した。
「紅茶の方が好きかもしれないが、リカーナがココアが好きなものでね」
「俺もココアは好きですよ」
「それは良かった」
ロロンは、ソファーに腰かけた。
リカーナは隅のイスに、ホルクはロロンの向かいのソファーに座った。
「さて、まずは君が幼少期の記憶をどれだけ持っているかしりたい」
ホルクが真面目な顔で言う。
茶髪がサラッと揺れた。
「実を言うと、俺に記憶はありません。物心ついた時から両親は死去していて、親戚に預けられていました。とにかく武道にはげむ毎日で、今ではそれについての仕事にもつけています」
ロロンの答えに、ホルクはやんわりと頷く。
「得意な武器は弓矢。しかし、剣術にも優れていて普段から剣を持ち歩いている。そうだね?」
「良くご存じですね」
「このくらい、本気で調べれば苦にもならないよ。さて、本題に入ろう。なぜ僕が君を呼んだのか。」
ロロンの唾を飲む音が聞こえた。
リカーナは、ジッと二人を見ている。
ホルクは二人の視線を受けながらも、ゆっくりと切り出した。
「僕は……」

9:千代紙:2014/01/25(土) 16:23 ID:PYM

「僕は、君の両親を知っている」
ホルクから発せられた言葉に、ロロンは混乱する。
「両親を……?」
「ああ。……そして、君が住んでいた村のことも」
ロロンは、村のことは初耳だった。
「俺は村に住んでいたんですか?」
ホルクは頷く。
「ああ、そうだよ。やっぱり覚えていないんだね。」
ホルクは、淡々とロロンに教えた。
「村の名前は『ホートリート』。しかし、今はもう存在しない。村長であった、君の両親が亡くなったから。」
「俺の両親が……村長?」
ロロンが聞き返すと、リカーナが口を開いた。
「私も知っています。歴史上名の高い人物で、ホートリートはとても有名な村だった。そして、私の母親はこの村の追放令を受けていた。」
「ああ。追放令という制度がホートリートにはあった。これは罪のない人間でも無差別にやってくる物で、追放令を受けたものは村を出なければならない。村の人口が増えるのを防ぐために行われた物だ。」
追放令……。
目眩がした。
ここに来て数分で、新しい事実がたくさん浮かび上がる。
ロロンは村に住んでいて、ロロンの両親は村長だった。
そして、その村には追放令という掟がある。
……ここに来なければ、こんな事実は知らなくて良かった。
そんな後悔の念と共に、ロロンの心には好奇心と似た感情があった。
知りたい。
自分が産まれ、幼少期を過ごした村のことを。
そして、両親の命を奪った村のことを……。

10:千代紙:2014/01/26(日) 07:42 ID:PYM

「教えてください」
ロロンは、ホルクの瞳を見た。
「村の事を知りたいです。ホートリートのことを」
ホルクは、優しげに微笑んだ。
「その事を知る事で、君の何かは確実に変わる。それでもいいのかい?」
何が変わるんですか。
ロロンは聞こうとしたが、聞けなかった。
多分、聞いても答えてくれないだろう。
黙ったロロンを見て、ホルクはさらに言う。
「その決心がなければ、知りたいと思うのは野望だよ」
ロロンは必死に考えた。
そして、とうとう答えを口にした。
「教えてください」

11:yuki:2014/01/26(日) 11:34 ID:FKM

おぉー内容が深い!!
期待してます!!(é^è)>

12:千代紙:2014/01/26(日) 12:15 ID:PYM

>>11

コメントありがとうございます!
期待に答えられるように頑張りまっす☆

13:千代紙 ◆9X3s:2014/01/30(木) 18:31 ID:PYM

しばらく更新出来ません。
暇な時にあげて頂けると嬉しいです←←

14:& ◆tEkM:2014/02/01(土) 15:47 ID:07I

age☆

15:千代紙 ◆9X3s:2014/02/01(土) 17:23 ID:PYM

「ホートリートは、いつできたのか知られていない。ただ、滅びた日やその時の様子は今でも明確に思い出せるよ。滅びた日は今から25年前の今日だった。」
ホルクは、資料も用意せずに話出す。
……きっと、ホートリートをこよなく愛していたのだろう。
「25年前の今日を思いだし、僕は君を呼んだ。……ロロン、君の両親があの日、急に避難命令を出したんだ」


…………

「逃げて!」
「どうしたんですか、村長!?」
「いいから!」
急に出された避難命令。
当然村はパニックに陥った。
しかし、村長であるロロンの両親の誘導のおかげで、村人は皆無事だった。
皆がホッとしている中、”それ”は起こった。
『ゴオオオオオオオン』
大きな爆発音。
そして、立ち上る炎。
「村長!」
村長は、まだ村に残っていたはずだった。
村で何が起こったのか。
そして、ロロンの両親はどのような行動をとったのか。
何ひとつ分からないまま、村は滅びた。
そして、その煙幕の中一人の男の声が響いた。
「我輩はホートリートを滅ぼすことが出来た」
……と。

16:千代紙 ◆9X3s:2014/02/02(日) 12:01 ID:PYM

「あの日以来、村人はそれぞれ別の地に移って行った。僕は母と一緒にここ、ルータ王国に逃げてきた」
そう、ここはルータ王国。
経済的にも安定していて、国民は王様を尊敬している。
日々人口が増えている、発展国だ。
「リカーナ……さんは、いつから一緒に暮らしているんですか?」
ロロンは、そう言ってから顔をしかめた。
おかしい。
リカーナとは初対面なのに、リカーナという名前に聞き覚えがある。
遠い昔に、口にした気がする。
妙なデジャブ。
ロロンは首を振ってそれを思考から消そうとした。
そんなロロンに構わず、リカーナは答えた。
「呼び捨てで構いませんよ。私は、ホルク叔父さんの歳の離れた兄の娘に当たります。私の父、ルルクもホートリートの民だったそうです。しかし、私の両親は離婚していた。だから私はずっとここ、ルータ王国で母と暮らしていました。でも、母は若い男性と再婚しました。私はそれが嫌で……。そんなときに、ホルク叔父さんから手紙が来たんです。」
今は電話もない時代だ。
だから手紙を送ったのだろう。
しかし、何のために?
その答えは、ホルク自身が明かした。
「僕の母が病死してね。……38歳という、若い年齢だった。僕は当時15歳。村の崩壊の10年後。」
つまり、ホルクは今30歳か。
ロロンはすばやく計算する。
それにしても。
5歳の時に起きた村の崩壊をよく覚えているな。

17:千代紙 ◆9X3s:2014/02/02(日) 13:08 ID:PYM

「それでね、ロロン」
ホルクがサッと立ち上がった。
ロロンはそれを見て戦いの時の癖で身構えてしまった。
ホルクはロロンを不思議そうに見つめたが、やがて笑った。
「僕は君を大切に思ってるから、そんなに緊張しなくてもいいよ」
そして、言った。
「僕はね、ホートリートを爆発させた犯人と、君の両親を殺害した犯人は同一人物だと考えている。今まで、それについても調べてきた。それで分かったことがある」
「何ですか……!?」
「犯人は、ホートリートが生まれたことで村人が移り住んでしまった村、ムカリスの住民、もしくは村長の家系の者だということが分かった。ムカリスは今でも存在している。……ホートリートに住んでいた者がムカリスに移り、住人が再び増えたんだ。」
「じゃあ、そのムカリスに住む者、もしくはその村長が……」
「ああ。君の両親を殺害した犯人だ。

18:千代紙 ◆9X3s:2014/02/02(日) 14:04 ID:PYM

「ムカリスは……どこにあるんですか?」
ロロンも立ち上がっていた。
「ホートリートがあったすぐ近くだ。……行くのかい?」
「俺には記憶がありません。きっと、両親が殺されたショックで失われたのでしょう。……仇を打ちたい。俺と俺の家族を滅茶苦茶にした奴を!」
ロロンは腰の剣に触れる。
チャリン、と小気味の良い音がした。
ロロンの言葉に、ホルクは頷く。
「ロロン、僕たちも行くよ」
「……え?」
「リカーナも僕も、そいつを憎んでいる。リカーナには、人を見ただけで身体能力が分かる能力がある。僕も、呪術が使える。」
「呪術?」
「例えばね……」
ホルクは、葉を一枚手に持った。
そして聞く。
「これはなんだい?」
「葉っぱです」
ロロンの答えに、ホルクはニヤリと笑う。
「いくよ。」
それは、瞬時に起こった。
葉が大きな刃物になったのだ。
「それから、こんなことも出来るよ」
ホルクが、指をひとふりすると刃物が消える。
そして、ホルクが手のひらを上に向けると、何枚もの葉が生まれた。
ホルクの手の動きに会わせ、様々な動きをする。
「僕は葉を得意とするが、葉以外も出来る。ホートリートには僕みたいな呪術師がたくさんいたよ。……僕を連れて行けば大きな戦力となるはずだ」

19:千代紙 ◆9X3s:2014/02/02(日) 23:05 ID:PYM

確かに、ホルクやリカーナを連れて行けばロロンはより得をする。
それに……。
「分かりました。一緒に行きましょう」
ロロンは仲間という物を作ってみたかった。
生まれてこのかた、仲間が出来たことはない。
武道の稽古では、皆が敵。
親戚の者も、ロロンには冷たい目を向けていた。
ロロンは居候の身だったから、それも仕方のないことだと思っていた。
……記憶がない数年間は仲間がいたのかもしれない。
しかし、思い出そうとすると頭がうずく。
「ありがとう。さっそくだが、今日の夜に出ようと思う」
ホルクが口にした言葉に、ロロンは目を丸くする。
「今夜……!?」
「ああ。実を言うと、ムカリスは非常に警備の強い村でね。部外者が入るという噂が漏れただけで、殺られる。」
ゾクッ……。
背筋に嫌な汗が流れる。
戦闘は何回も経験したロロンは、扉の方にさっきから気配を感じていた。
ホルクの友達とかだと思ったが……。
「……誰だ」
ロロンが素早く扉を開ける。
しかし。
「誰もいない」
リカーナがロロンの隣に来て、言う。
動きが速い。
ロロンの背中に、今度は冷たい汗が流れた。
こんなに速い動きをする者と戦い、勝てるだろうか?
……無理だ。
「どうしたんだい、ロロンくん?」
ホルクも二人の所へ来る。
「……勝てませんよ、あんな奴らに。」
ロロンは震えそうな声を抑える。
「でも、奴らに聞かれたからには行かなくては。ここにいたら間違いなく……」
ホルクが首に開いた手を当てる。
その手をスーッと横に引いた。
ロロンの顔は、真っ青だった。

20:千代紙 ◆9X3s:2014/02/03(月) 08:14 ID:PYM

その日の夜。
春風・コーポ265から、三つの人影が姿を現した。
ロロンとホルク、そしてリカーナである。
三人共、リュックを背負っている。
ロロンは腰に剣を携えていた。
「行くよ、二人とも」
ホルクが小声で囁き、一歩足を踏み出した。
瞬間、現れる六つの影。
……包囲された!?
ロロンが思った時には、敵は剣を抜いていた。
ロロンに刺さろうとする剣。
しかし、剣は途中で何かに当たったかのように火花を散らしてはねかえった。
ホルクが呪術を使ったのだ。
相手に隙が生まれる。
その隙を狙い、ロロンは剣を抜いた。

21:千代紙 ◆9X3s:2014/02/03(月) 22:27 ID:PYM

弱いな。
ロロンは戦いながら思う。
いつも戦っているロロンとしては、相手の力量は不十分だった。
……一気に行くか。
ロロンは急に攻撃を仕掛ける。
「くっ……」
相手はロロンの急な変化に戸惑い、そしてついて行こうとする。
しかし、ついていけない。
スピードが遅いのだ。
ロロンが少し後ろに下がった。
そして呟く。
「華の舞い」
ロロンの姿が消えた。
と、同時に相手から赤い華が飛び散る。
それまでホルクが止めていた他の五人の敵、全てにも華は咲いた。
それは鮮やかに宙を舞い、やがて地に落ち着いた。
「流石だね、ロロンくん」
息一つ乱れていないロロンにホルクが言う。
ロロンは剣先を布で拭き、鞘に収めた。
「相手はそれほど強くはありませんでしたね」
側で戦いを見ていたリカーナがつまらなさそうに言った。
「何、これから嫌と言うほど強い敵に出会うさ」
ホルクが何でもないかのように返す。
「そういう者たちに、俺は勝てるでしょうか」
ロロンの問い掛けに答えたのはリカーナだった。
「あなたは強くなれる。私には分かるんです。私たちは、この旅で強く成長します」
ロロンは不思議とその言葉を信じることが出来た。

22:千代紙 ◆9X3s:2014/02/04(火) 17:51 ID:PYM

「さあ、行こうか」
ホルクがリュックを背負い直す。
「はい」
こうして、短いようで長い三人の旅は始まった。



なんだこの短い更新笑

23:千代紙 ◆9X3s:2014/02/05(水) 18:28 ID:PYM

「ムカリスに行くには、たくさんの方法がある。例えば、大きな通りを通って行く道や、森をずっと行く道、川沿いや村を転々とする道。どれがいいかい?」
ホルクが小声で、しかし明瞭に聞く。
ロロンは少し考えて言った。
「森……ですかね。通りだと人が多くて動きづらい。川沿いや村を通る道は、痕跡を辿られやすい。……森だってそれらの危険が無いとは限りませんが、やはり可能性が低い方が良いでしょう?」
リカーナも頷く。
「森は追われた時にも、見つかりにくい気がします。通りは、ロロンさんのおっしゃったように、見つかりにくくても速く動けません。ここは森へ行くべきでしょう」
「わかった、森にしよう」
ホルクも賛成し、一同は森へ向かって歩みを進めた。

……………

「奴等が動き出しました。」
暗い部屋。
一番奥にある椅子に座っていた男は、ゆっくりと振り返った。
「……ロロン。そしてホルク、リカーナ。奴等は動き出すと分かっていたが……。一緒に行動するとはな。」
そして、中央で頭を垂れている部下に、男は告げた。
「よく見張れ。そしてこの聖なる村、ムカリスに汚れた奴等が入る前に……」
男は手のひらを広げ、そして素早く閉じた。
ヒュン!と音がする。
「奴等を狩れ」
「仰せのままに」

24:千代紙 ◆9X3s:2014/02/07(金) 19:24 ID:PYM

「今夜はここで休む。でも、交代で一人ずつ見張りをしよう」
ホルクが荷物を置く。
すでに日は傾きかけている。
三人はあれからほぼ一日歩き続けていた。
しかし、敵は現れない。
……現れるなら、夜だろう。
ロロンは荷物を置きながら考えた。
「晩御飯にしたいが、火を使う料理はまずい。何しろ、煙が上がってしまうからね」
ホルクがリュックをあさりながら呟く。
それを聞いたリカーナが同じようにリュックをあさりながら答えた。
「火を使わない料理はほとんどないです。だから、ちゃんと煙が上がらない火をつけられるライターを持って来ましたよ」
そして、そのライターを取り出した。
それはとても長く、燃料がたっぷり入っていた。
色は水色。
「これはたくさんの機能があって便利なんですよ」
リカーナがロロンに説明する。
頷くロロン。
そのロロンに向かって、ホルクが何かを投げた。
「これは……?」
見事にキャッチしたものの、何か分からない。
ベージュ色の布だ。
「テントだよ。これが説明書なんだが、立て方は分かるかい?」
ホルクが説明書を手でヒラヒラとさせた。
「いえ……、普段はそのまま横になるので」
ロロンの答えに、ホルクはしばらく目を閉じて思考していた。
そして、リカーナが料理の食材を探し終えた頃、ようやく目を開けた。
「色々シュミレーションしてみた。確かにテントは無い方がいいね。テントがあると敵に見つかり安いし、逃げにくいから」

25:千代紙 ◆9X3s:2014/02/07(金) 22:42 ID:PYM

晩御飯は、三人で協力して作った。
ロロンとリカーナは器用に手先を使う。
ただホルクだけは不器用で、彼だけはたきぎに火をつけたりをしていた。
出来た食事は簡素だが、栄養がとれる物で、リカーナとロロンが相談して作ったレシピだ。
山菜スープに、干し肉と野菜炒め、そしてご飯。
もちろん箸なんてないから、素手で食べる。
一同が休憩をとる場所は近くに綺麗な川も流れているので、好都合だ。
しかし、ホルクとリカーナは素手で食べるのを躊躇っている。
そこでロロンが躊躇なく素手を炒めものに突っ込んで見せた。
それを見た二人も、恐る恐る手を入れる。
一度手を入れてしまえば、後は躊躇なんてしない。
三人は貪るように食べた。
何しろ一日、何も食べていないのだ。
味なんて気にする暇もないくらいお腹が減っていた。

26:千代紙 ◆9X3s:2014/02/08(土) 14:41 ID:PYM

最初の見張りはロロンだった。
リカーナとホルクは、すでに隣で寝息をたてている。
ロロンにも眠気はあったが、日頃の訓練でそれはいくらでも耐えられる。
眠気なんてどうでもいいのだ。
考えるべきことはたくさんある。
例えば……
「ムカリスはどうしてホートリートを襲ったのか」
ロロンが呟く。
ホートリートの成立のせいでムカリスの人口が少なくなったからだ、とホルクは告げた。
しかし、本当にそうだろうか?

27:千代紙 ◆9X3s:2014/02/08(土) 15:19 ID:PYM

ホートリートには、追放令があった。
追放令を受けた者の中には、必ずムカリスに住んでいた者もいただろう。
そういう者たちは、故郷であるムカリスに帰った筈だ。
それなら、人口は減っても帰ってきた者はいるはず。
ホートリートを襲う必要もない。
まてよ。
ロロンの中で何かが引っ掛かる。
リカーナは、ロロンの両親は有名で、ホートリートの名も知っていた。
しかし、ロロンはホートリートの事は初耳だった。
つまりリカーナはホートリートのことやロロンの両親を知りやすい環境で育ったのではないか。
それに当てはまるのはムカリスしかない。
ロロンは考える。
リカーナとリカーナの家族は、ムカリスに住んでいた。
しかし、ホートリートが出来てからホートリートに一家で移り住んだ。
その後、母親は追放令を受けた。
母親と父親は離婚。
リカーナは母親についていった。
その時、どうして二人はムカリスに戻らなかった?
どうしてこのルータ王国を訪れたのだろう。
もしかすると。
ムカリスには戻れなかったのかもしれない。
そう仮定すれば、全てが腑に落ちる。

28:千代紙 ◆9X3s:2014/02/08(土) 17:11 ID:PYM

じゃあどうして戻れなかった……?
ロロンがそこまで考えた時、近くでサクッという音がした。
ロロンは音をたてずに剣に手をやる。
__誰かいる。
気配を消そうとしているが、音をたててしまってる時点で消せていない。
まだ弱い方の敵だろう。
そう踏んだロロンは、立ち上がった。
カサッと音がしたが、気にしない。
瞬間、遅い来る刃物。
ロロンはとっさにかわしていた。
遅い。
敵の人数は三人。
いける。
一歩後ろに下がるロロン。
また華の舞いをしようとしたのだ。
しかし。
「……!?」
血が噴き出す。
相手からではない。
ロロンからだ。
左腕をやられた。
しかも深く。
しかしロロンは、左腕を庇うことをせず、攻撃を仕掛ける。
「華の舞い」
姿を消した。
しかし。
キーン!
交わされる剣。
……嘘だろ?
強い。
そして気付く。
さっきは音をわざとたてたのか!?
自分を弱く見せかけた……。
作戦だったのだ。
圧倒的に不利な状況。
しかし、ロロンは笑っていた。
「……やりがいがあるな」

29:千代紙 ◆9X3s:2014/02/08(土) 19:47 ID:PYM

ロロンの足が地を蹴る。
そして高く飛び上がり、敵を襲う。
かわされる攻撃。
と、その時。
「全くロロンくんも無茶するね」
「私たちもお手伝いしますよ」
という二人の声。
ホルクとリカーナが起きたのだ。
二人は近くの木々に寄りかかってロロンたちを見ていた。
二人に目をやる敵。
ロロンはその隙を見逃さなかった。
リーダーのような男に向かい、剣を出す。
「う……」
舞い上がる血。
相手が倒れた。
ロロンの剣が、見事に相手の腹部に刺さったのだ。
しかし、残りの敵二人がロロンに襲いかかった。
瞬間。
「う〜ん、最近の訓練を怠っている体つきですね」
「集中攻撃なんて卑怯だね」
との声と同時に巻き起こる炎と襲い来るスイクル(小鎌)。
ロロンの目の前で、敵二人は地に倒れた。

30:千代紙 ◆9X3s:2014/02/09(日) 19:27 ID:PYM

無論、炎を起こしたのはホルクだ。
しかし、スィクルは……?
振り返ると、スィクルをしまおうとするリカーナの姿。
「どうしてスィクルを……?」
リカーナはスィクルをずいぶんと扱いなれた様子だった。
ロロンの問いに、リカーナは平然と答える。
「言ってませんでしたか?母が武器を使うのが得意で、教えてくれてたんです。私、空手もそれなりに出来るんですよ」
意外である。
華奢な体つきのリカーナが、軽々とスィクルを扱え、それに加えて空手も出来るとは。
更に、相手の力量も見抜ける。
子供だからといって、侮ってはいけない。
それをロロンは改めて感じた。



♭余談♪

はい、だいぶ推理的なものになって来てますね〜←
過去の更新から、その場で頭をひねってロロンに推理させている今日この頃。
下書きを書いてる作品もありますが、これは思い付きで書いたので……。
ムカリスを出したのも、更新途中の思い付きです。
必ず辻褄の合わない所があると思いますが、勘弁してください←
この作品をかきはじめた理由はですね、戦闘シーンを書きたかった、それだけなんです。
その戦闘シーンもグダグダですが;
さて、最近ロロンとリカーナ、そしてホルクの絵を描こうと思っています。
描き終わり次第、載せますね!

31:千代紙 ◆9X3s:2014/02/09(日) 20:29 ID:PYM

♭プロフィール♪

キャラクターの名字を明かしてないと気付いたので、明かすついでにキャラクター紹介!
ただ、ロロンだけは事情があり、()です。


♭ロロン(・ラステニー)♪

幼少期の記憶が消えてしまった青年。
黒髪に、黒い瞳。
容姿端麗で、スタイルもよい。
両親はホートリートの村長だったが、ロロンの幼少期に亡くなってしまう。
ボーガンを扱うのが得意だが運びずらいため、剣を常備している。


♭ホルク・タスニード(30)♪

ホートリートに住んでいた若者。
少し長めの明るい茶髪に、青いフレームの眼鏡、そして緑の瞳。
元々ホートリートの民だったが、ホートリートの崩壊により、ルータ王国に移住。
崩壊から25年後に、ロロンを自分の家に呼ぶ。
呪術の使い手。


♭リカーナ・タスニード(17)♪

ホルクの兄、ルルクの娘。
焦げ茶色の髪と、赤い瞳を持つ。
髪は常に赤いリボンでひとつに結わえている。
両親はホートリートの民だったが、母親が追放令を受ける。
その後両親は離婚し、リカーナは母親についていった。
武器ならなんでも使いこなし、空手も有段者、おまけに人の力量も見抜ける天才少女。

32: ◆9X3s:2014/02/10(月) 20:41 ID:PYM

「さてと、僕は十分休んだからロロンくんとリカーナは寝てなさい」
ホルクが二人に微笑みかける。
ロロンは素直に頷いた。
「分かりました。」
横になる。
しかし、寝れそうにない。
とりあえず体力だけは温存しよう、とロロンは思い目を瞑る。
リカーナが隣で寝息をたてている気配がした。
この2日間、いろんなことがあったな……。
リカーナに声をかけられ、ホルクの元に訪れたときは、ここに来るなんて思いもしてなかった。
不思議なものだ。
これだから、“生きる“というのは面白い。
ロロンは今までで一度も死にたいと思ったことはない。
記憶が無くて苛立っても、武道をすれば忘れられる。
この生活に、不自由は無かったのだ。
そんなことを思い返すうちに、ロロンも浅い眠りについていた。


…………


「また奴等を殺れなかった、だと?」
男が無表情で聞く。
ゾッとする部下。
……昔、この村のスパイとしてホートリートにいた時は、こんな表情はしていなかった。
部下はそんな考えを振り払い、答える。
「はい。……申し訳ありません…。次はちゃんと…」
「次?お前の次は一体何時なんだ!」
急に大声を出され、部下は飛び上がった。
「今度は殺れ!決して逃すな!」
部下は一礼して、部屋を出た。









































男は気づいていたのだ。
“奴等“が逃げる度に、ホッとしている自分を。

33:千代紙 ◆9X3s:2014/02/10(月) 21:12 ID:PYM

♭余談♪

実は、この記憶〜消えた村〜、シリーズにしようと思ってます。
次の作品のネタももう考えてて……。
題名は多分、『記憶〜荒れた都市〜』です。
記憶シリーズで攻めようかな、と←
記憶シリーズとは別に、新たな長編も作るかもしれません。
でも、さすがに三つ連行は厳しいかな;
とにかく、今はこれを完結させます!

ムカリスvs元・ホートリートの民
隠されたムカリスの真相。
ロロンの両親のこと。
村の崩壊。
そして、影でうごめく謎の男。
ロロンたちは、どのように解決していくのか!?
お楽しみに!

34:千代紙 ◆9X3s:2014/02/10(月) 22:08 ID:PYM

ロロンが目を覚ましたのは、早朝だった。
森の中には、朝霧が立ち込めている。
どうしても視界が狭くなる。
ロロンは顔をしかめ、体を起こした。
そしてそのまま川へ向かう。
寝床ではリカーナはまだスヤスヤと寝ていて、ホルクは見当たらなかった。
だから川にいるだろうとロロンは見当をつけたのだった。
川には、ロロンの予想通りホルクがいた。
霧の中、ただ立っている。
「ホルクさん……?」
ロロンは小さく声をかけ、歩み寄った。
綺麗な水面が朝日を反射し、朝霧の中に光を散りばめる。
まるで宝石のようだった。
「ロロンくんか」
ホルクは一瞬手のひらに緑の光を浮かべたが、ロロンを見るなり消した。
ロロンは肩をすくめる。
「そんな簡単に警戒を解かない方が良いですよ。敵が俺に化けてるかもしれない」
「ああ、そうだね。でも、君だって僕を警戒しなかったろう?」
ホルクの反撃に、ロロンは水を手にこぼさないようにいれてから答えた。
「俺は手元に剣がありますから」
そして、水を顔にかける。
冷たいヒンヤリとした水が気持ちいい。
ホルクはその様子をぼんやりと見ている。
「そう言えば、どうしてホルクさんはここに?」
顔を洗い、顔中水びたしのロロンにタオルを差し出すホルク。
その口から、ボソボソと言葉が漏れた。
「ホートリートにも朝霧があったな、と思ってね。不思議なことにね、小さいながらに霧の出た日は危ないと感じていたんだよ」
ロロンはホルクの寂しげな表情から目をそらす。
そして、片手でタオルを返した。
「タオル、ありがとうございました。……ホートリートは崩壊しました。それは変わらないんですよ。でも、崩壊に導いた奴に復讐する。そう決めたじゃないですか。……だから泣かないで下さい。」
ホルクは袖で涙を拭いそうだね、と呟く。
「ロロンくんの言う通りだ」
そして、儚げに微笑んだのだった。

35:千代紙 ◆9X3s:2014/02/10(月) 22:24 ID:PYM

二人で寝床に戻ると、リカーナがおにぎりを作っていた。
そして二人を見ると、嬉しそうに声をかけた。
「おはようございます!昨日余ったご飯でおにぎり作ったんで、お腹が空いたら歩きながらでも食べれますよ!」
なるほど。
渡されたおにぎり二個をリュックにいれながら、ロロンは感心する。
確かにこれならわざわざ止まらなくても良い。

三人は荷物をまとめ終わると、何か落としていないかを良く確認してから再び歩き出した。
森だから、所々に段差がある。
おまけに木やら石やらで、転びやすい。
慣れている者なら逃げやすいし追いやすくもあるから便利な道だが、慣れてない者には地獄である。
それを知っていて、ロロンはわざとこの道を選んでいた。
ホルクとロロンは腕のたつ呪術師と剣使いだ。
リカーナはともかくとして、逃げやすい。
そう踏んだのだ。
そして、リカーナは空手有段者。
これ以上都合の良いことはない。
三人は昨日以上にスピードをあげながら、着々とムカリスに近付いて行った。

36:千代紙 ◆9X3s:2014/02/12(水) 19:41 ID:PYM

「…………」
黙々と歩く三人。
言葉はないにせよ、その目には共通の意志が読み取れる。
『必ず犯人を倒す』
特にロロンはその思いが強かった。
なにしろ両親を殺され、自分の記憶までもを奪われたのである。
何の罪も無いのに。
むしろ、ホートリートを作ったという功績があるのに。
ロロンは足を動かしながらも唇を噛み締める。
ツ……、と一筋の血が流れた。
その血を舐めると、金属のような味がした。
「自分の血が美味しいかい?」
ホルクが突然聞く。
彼はロロンの動向を見ていたのだ。
「別に……」
ロロンの答えにホルクはため息をつく。
もちろん早足で歩いている。
「じゃあどうしてそんなことをするんだい?」
「意味は無いですけど」
ロロンがめんどくさそうに答えると、リカーナが呟いた。
「もうすぐムカリスですよ。喧嘩は止めて下さいね」

37:千代紙 ◆9X3s:2014/02/13(木) 00:20 ID:PYM

リカーナの一声で、二人は口をつぐむ。
緊張して、些細なことでもつい言い合ってしまう。
そんな恐怖があった。
と、その時。
サッと目の前に現れる三つの影。
影は男性か女性かさえ見分けられないほどの動きでロロンたちに襲いかかる。
……これまでとは格が違う!
ロロンは少し恐れを感じながらも剣をぬいた。
ホルクは葉を操っているし、リカーナもスィクルを振り回している。
ロロンたちは頷き合い、自ら敵に向かって走って行った。

38:千代紙 ◆9X3s:2014/02/13(木) 19:27 ID:PYM

キーン、キーン!!
激しくぶつかる剣の金属音が静かな森に響く。
ロロンは敵のリーダーらしき者と戦っている。
男性のようだ。
まだ戦いは始まったばかりである。
ところがロロンは、早くも息を切らしていた。
「ハァ……ハァ、…………ゲホッ……ハァ」
しかし、涼しい顔で相手は目の前に迫ってくる。
その瞳が、『お前はそんなものか』と告げている気さえした。
……悔しい。
ロロンの中の”何か”が音を立てて切り替わる。
ロロンはまず、呼吸を整える。
整えると言っても、時間はかけない。
なにしろ敵は目の前にいるのだ。
しかし、ロロンにはその動きがスローモーションのようにはっきりと見えた。
敵はやはり男性だったな、とどうでも良いことを考える。
そして、剣を横に凪ぎ払った。
血の嵐。
返り血を浴びて真っ赤に染まったロロンは、頬を伝う血を拭ってまだ生きている男性に剣先を再び向けた。
「殺……すな…ら……、殺…せ…」
男性の苦し気な声を無視してロロンは問う。
「ムカリスの秘密を教えろ」
まだ戦っているリカーナとホルクを見ながら、男性は呟いた。
「悪……い…が………村の…秘…密は教…えら……れ…ない」
そして、口から血を吐いた。
とどめをささなくても、このまま行けば死ぬ。
そうと気付いたロロンは血で汚れた剣先を服で拭いて、剣を納めた。
「良い心掛けだ。俺もその立場なら、決して言わない。……ホートリートが崩壊していなければ、そういう立場になっていたかもしれないな」
男性は小さく笑う。
いや笑うと言うより、顔を歪めたという表現の方が正しいだろう。
しかし、ロロンには笑ったように見えた。
「お前の母親が作った村か。……ろくでもない村だったな」
ロロンはカッと頭に血が登るのを感じた。
そしてその次の瞬間には、男性は息をしていなかった。

39:千代紙 ◆9X3s:2014/02/14(金) 17:22 ID:PYM

「……ロロンくん」
ホルクがロロンの名を呼んだ気がした。
あれからどのくらい時間がたっただろう。
気づけば三人はすでに息絶えていた。
ロロンはそれも分からないほどぼんやりとしていたのだ。
感情にまかせて人を殺したのは初めてだった。
複雑な気持ちが心を支配する。
アイツは俺の母親を貶した。
だから殺っても良いじゃないか。
それに、どうせ死ぬ運命だったんだ。
そんな考えもあったが、一番頭を占めているのはショックと、自らへの失望だった。
自分は今まではそれなりにクールに戦っていたつもりだ。
考えや感情を表に出さずに、無表情のまま相手を殺る。
それがロロンだった。
それなのに、自分からその自分を壊した。
失望した。
リカーナやホルクにも合わせる顔が無い。
ロロンは黙っていた。
すると、ホルクが隣に座ってきた。
周りには死体があるのに、気にならないようだ。
「ロロンくん」
ホルクがロロンに手を伸ばす。
それを振り払うと、ロロンは立ち上がった。
「どこにいくんだい?」
ホルクの問いには一言しか返さなかった。
「散歩です」

40:千代紙 ◆9X3s:2014/02/14(金) 18:59 ID:PYM

ロロンは川の畔に立っていた。
冷たい新鮮な空気を出来る限り吸い込む。
それが終わると、今度は大きく息を吐き出した。
それを何度か繰り返すうちに、ロロンの心は落ち着いていった。
頭のぼんやりしたものが消え、クリアになる。
さっきまでの不安や絶望感も綺麗に無くなっていた。
「母さんを貶されただけじゃないか」
ロロンは小さく呟き、川の水で顔をすすぐ。
血で汚れていた顔や手が、心と同様に綺麗になった。
そして、気付く。
「どうして母さんだけ……!?」
ホートリートの村長だったのは父親も同じ。
しかし、敵は『お前の母親が作った村』と言っていた。
父親は?
父親だって村作りに関与していた筈だ。
じゃあなんで……?
「まさか」
ロロンはハッと目を見開く。
それは信じたくない事実だった。
「父さんはムカリスの民だった……?そしてホートリートを作った母さんと結婚?でも、それだと父さんを貶さなかった理由にはならない。……じゃあ」
ロロンは頭の中に浮かんだただひとつの真実から目を背けた。
そんなの信じない、とばかりに。

41:千代紙 ◆9X3s:2014/02/15(土) 07:12 ID:PYM

散歩から戻ると、二人はリュックを背負って待っていた。
ロロンが戻って来ても、何も言わない。
その沈黙はロロンへの咎めなのか、それとも慰めなのか。
ロロンには後者のように思えた。

ロロンもリュックを背負い、二人の元に歩み寄る。
三人はそのまま歩き出した。
沈黙の中足音が響く。
三人とも足音へ意識はしているのに、やはり足音は鳴ってしまうのだ。
そんなことを頭の片隅ぼんやり思いながら、ロロンは必死に考えていた。
さっき思ったことを言うべきだろうか。
もし自分の父親がムカリスの民、しかもさっきロロンが考えた存在だったとしたら、二人はどう思うだろうか。
きっと、ロロンを責めるだろう。
『お前の父親の事なら自分でやれ』
とか何とか言って。
二人を信じないのはいけないが、今は言わないでおこう。
ロロンはひとり固く心に誓った。

42:千代紙 ◆9X3s:2014/02/15(土) 12:06 ID:PYM

「ここからは森を抜け、山沿いを歩きます。山に沿って行けばムカリスがあるみたいです」

リカーナが地図を見て言った。
太陽の光が木々の間から溢れる。
冬なのにとても暑かった。

「分かった。なるべく速く歩こう。山沿いはあまり隠れることが出来ないからね」

ホルクがそう言いながらおにぎりを出す。
本当に急ぐ気があるのか、疑わしいがホルクはマイペースなのだから仕方がない。
ロロンはポケットの中の笹に包まれたおにぎりを触り、ため息をついた。

森は木が日陰を作っていたが、山沿いはそうはいかなかった。
日陰は無く、とにかく暑い。
空気は冷たいのに日射しのせいで邪魔をされる。
ロロンは鬱陶しげに太陽を見た。

「暑いですね」

リカーナが不意に言った。
あまりにも急だったので、ロロンは慌てた。

「あ、ああ……そうだね」

しかし、ホルクは平然としていて、おにぎりを食べながら

「暑いよ〜」

と呑気に返した。
考えてみれば、リカーナとホルクは一緒に同居していたのだ。
リカーナが突然呟くのには、もう慣れているのかもしれない。
そう思うと、少し疎外感があり恨めしく思った。
……ホルクがマイペースなだけかもしれないが。
そう思いチラッと見ると、当のホルクはおにぎりを食べ終わったらしく、笹を適当に折っている。
その様子は小さい子が折り紙をしているようだった。

「ピクニックって、こういう感じなんでしょうか」

リカーナがまた唐突に言い、目を細めた。
ロロンは返事が出来ない。
なにしろ親戚に預けられてからは、ずっと武道をしてきたのだ。
それに、親戚からは冷たい目で見られていたから、いずれにしろピクニックなんてもっての他だった。
そう言うと、ホルクも頷いた。

「僕も五歳のときに村が崩壊してからは、親が働き続けてたからピクニックには行ったことがないよ」

リカーナは二人の答えを聞き、苦笑する。

「やっぱりみんなそうなんですね。私も行ったこと、無いんですよ」

それを聞いて、ロロンはホルクとリカーナが仲間であることを実感した。
考えてみれば、それぞれ違うが幼少期に受けた心の傷は、みんな同じだ。
『孤独』
三人は、それを知っているから心から仲間になれたのだ。
ロロンはソッと胸に手を当てて、微笑した。





♭余談♪

「もうすぐムカリスですよ」
というリカーナの台詞があるのに、全く着いてませんねw
二、三回目の更新には着いてると良いですね←
そのうち辻褄が合わなくなって来そうです。
でも、絶対完結させます!

43:千代紙 ◆9X3s:2014/02/16(日) 15:03 ID:PYM

しばらく歩いてから、休憩をとった。
もちろん日陰がある所を選ぶ。
とにかく日射しが強く、暑かった。
しかし、休んでいるうちに寒くなる。
さっき流れた汗が冷えたのだ。

「そろそろ行きましょうよ」

リカーナが震えながら言う。
他の二人も賛成し、三人は再び歩き出した。

「敵が来ないね」

ホルクが呟く。
それはロロンも思っていたことだった。

「どうしてでしょうか」

ロロンが言うと、リカーナが何かを思い出すように告げた。

「実は、母にムカリスのことを聞いたことがあるんです。」

それが何の関係があるのか分からなかったが、ロロンはとりあえず黙っておく。

「ムカリスは、宗教の村なんだそうです。」

「宗教の村!?」

ロロンとホルクの声が重なる。
二人は目を丸くしていた。

「はい。この山沿いの道は、もしかしたらもうムカリスの領域なのかもしれません」

リカーナは何を言おうとしているのだろう。
ロロンは目で話の続きを促す。

「ここがもしそうだとしたら、領域で血は流したくないんじゃないですか?」

なるほど。
ロロンは考える。
それに、宗教の村というのが正しいとすれば、今までの疑問も解決する。
追放令を受けた者がどうしてムカリスに帰れなかったのか。
答えは簡単だ。
ホートリートに行った者は、『宗教を捨てた者』だから。
入る者、出る者は拒まないが、もう一度入ろうとする者は拒む。
ムカリスはそういう宗教の村、いや宗教団体なのだ。

44:千代紙 ◆9X3s:2014/02/16(日) 16:23 ID:PYM

「着いた……!」

ロロンは思わず声を漏らす。
約3日に及ぶ旅は、ようやく終わったのである。
目の前には大きな黒い門と、村を囲むようにして作られた塀。

「着いたのはいいんだが、どうやって入ろうか」

ホルクがロロンの隣で聞く。
確かに、これでは入れない。
無論、入れてくれとは頼めない。
すると、リカーナがリュックから縄を取り出した。
先には鉤爪のような物が付いている。

「それは……?」

「母から最後に渡された物です。いつか役に立つ、と……」

リカーナの母は未来予知でも出来るのだろうか?
ともあれ、これでロロンたちはムカリスに侵入することが出来る。
リカーナは縄を振り回し、見事に鉤爪を門の上部に引っかけたのだった。

45:千代紙 ◆9X3s:2014/02/16(日) 16:52 ID:PYM

♭余談♪

別の長編、作ることに致しました!
今すぐではないですが、近いうちに作るつもりです。
今、設定資料を作成しております。
それさえ出来れば後はなんとかなるんでw
題名は未定です。
あらすじはですね……

異世界、ホーラスハニーへと迷い込んでしまった少女、陽菜。
ホーラスハニーは、妖怪と人間そして妖精が協力して暮らす世界だった。
陽菜が来てしまったリフェース国では事件が起こっていた。
陽菜たちは、事件解決へと足を踏み出した……。

こんな感じですね(結構今考えました←え)
是非見てみて下さい!

46:千代紙 ◆9X3s:2014/02/18(火) 20:04 ID:PYM

まずはロロンが登っていく。
どこかから来た旅の者に教わった『ニンジャ』とは、こういうことをするのだろうか。
門の上につくと、ヒョイッと地に飛び降りる。
スタッという綺麗な音がした。
次に、リカーナが登ってきた。
苦労なんてせず、スルスルとやってくる。
ただ、そのまま飛び降りるのはどう考えても危険なので、ロロンはリカーナを受け止めてあげた。
最後のホルクは、縄を回収しなければならない。
運動神経があまり良くないホルクは、魔法を使って宙を舞い、一度門の上に立ち縄をつかんだ。
しかし。
『カランカラン』
回収する際、鉤爪が門に当たり大きな音がした。

「まずい……!」

慌てて降りてきたホルクと共に、ロロンとリカーナは近くにあった草むらに咄嗟に身を隠した。
しばらくして、足音がドタドタと聞こえて来た。

「どこに行った」

「分かりませぬ」

そんな会話が足音に混じる。

「村の内部に入ったかもしれない。探せ」

「はっ!」

足音は遠ざかっていく。
会話からして、別の場所を探すらしい。
ロロンたちは五分ほど待ってから、安全を確認し動き出した。

47:千代紙 ◆9X3s:2014/02/21(金) 18:40 ID:PYM

ムカリスは整然とした綺麗な村だった。
地は土で固められていて、いたる所に木が植えてある。
花壇や先程ロロンたちが隠れた草むらなどもたくさんあった。
家の形はだいたい同じ。
宗教で統一されているのかもしれない。
白いレンガで造られた壁に赤い屋根。
至って普通だが、シンプルで良い。
こんな村がホートリートを滅ぼしたのかと、ロロンたちは驚いたものだ。

「さて、どうしますか?」

リカーナが呟くように問う。
それに答えたのはホルクだった。

「実はさっき草むらから敵を見ていたんだがね」

と平然と爆弾発言をし、そして続けた。

「みんな自由な服装だった。その点は宗教で定められていないらしいんだ。ただ、共通点があった。みんな頬に白丸が描かれていた」

白丸……?
ロロンは思わず自分の頬に手を当てる。
それから二人の方を向く。

「白いペンとか、持ってますか……?」

48:千代紙 ◆DMOY:2014/02/23(日) 08:34 ID:PYM

「待てええええ!!!」

「泥棒おおおお!!!」

そんな声と共に、背後からは足音。
ロロンたちは無茶だと知っていながらも逃げた。
戦わないのは、相手が戦い慣れていない女性たちだから。
しかし、これでは不毛な鬼ごっこになってしまう。
仕方なくロロンは振り向く。
そしてあることを確認しながら声を張り上げた。

「皆さん、これには訳があるんです!」


*****


時は少し前に遡る。
ロロンの問いに、二人はリュックを確かめていた。
しかし、やはり白いペンなどという旅に何の関係も無いものを持ってくる馬鹿はいなかった。

「困ったね〜」

と、何も困って無さげな声のホルク。

「ちゃんと考えてます?」

そんなホルクにロロンが疑わし気に聞くと、彼は当たり前だよ、と笑った。

「盗めば良いんだよ」

何を馬鹿げた事を、とロロンはスルーしようとしたのだが、意外にもリカーナは賛成のようだった。

「他にどんな考えがありますか?」

と真顔で聞くリカーナにロロンは何も返せなかった。

そして、鍵がかかっておらず、おまけに人もいない不用心な家に潜入し、白いペンを手に入れたのは良いのだが、運悪く家主の女性が帰ってきたという訳だ。
しかも、女性たちは団結力が強いらしく、騒動を聞き付けた他の女性までも追いかけて来た。
そんなわけで冒頭に戻る。

「訳って何よ」

家主の女性が気の強そうな顔で迫ってくる。
やっぱり、とロロンは思った。
彼女、いやその他の女性の頬にも白い丸は無かった。

「その前に、ひとつ教えてください。あなたがたは頬に白丸を描かなくて良いんですか?」

ロロンが疑問を口にすると、一瞬女性らは黙り込み、それから一斉に不満を言い出した。
しかしそれだと何も理解出来ないので、ホルクが家主である女性にまとめてくれと頼んだ。

「白丸は強さの象徴で、昔は女性だって付けてたんだ。けど、ホートリートを攻める計画をたてだした頃から女性は付けられなくなってしまった。……まあ、これは母さんに聞いた話だ。でも、女性が付けていないのは事実だし、弱い男性も付けられなくなっているんだ」

じゃあ……とロロンはホルクを睨む。

「わざわざ白いペンを盗まなくても良かったじゃないですか!!」

49:千代紙 ◆.EnE:2014/02/23(日) 17:17 ID:PYM

「まあまあ、ロロンくん落ち着きたまえ」

ホルクはまるで何でもないかの如く平然と言い、女性たちに向き直る。。

「お教えいただき、ありがとうございました」

そして、優雅にお辞儀した。
すると、女性たちが黄色い悲鳴をあげた。

「きゃあああー!」

「何てカッコいい人なの!?」

「ずっと見ていたいわ〜♪」

その様子に呆気に取られているリカーナとロロン、そして相変わらず平然としているホルク。
その三人に、家主の女性はにっこり笑った。

「あたしの名はクローゼ。一人暮らしなんだ。あんたたちを停めてあげる」


***

「お腹いっぱいに食べな」

そう言って、クローゼが三人の目の前にたくさんの料理を置いていく。
綺麗に拭かれたテーブルに、暖かそうな暖炉。
フカフカのカーペットにソファー。
そしてひとつ置かれたベッド。
どれもあるべき所におかれており、村と同じくらいに整然としていた。

「いただきます」

三人は手を合わせてから、一斉に食べ始める。
とても美味しい料理だった。
食べながら、ロロンはクローゼに質問をする。

「俺たちがここにいても良いんですか?仮にも侵入者ですよ?」

すると、クローゼは少しカーテンが閉められた窓を見る。
カーテンを閉めたのは、もちろんロロンたちを見られないようにするため。

「あたしが子供の時は村にはたくさんの人が訪れたよ。でも、最近では異常な程に警戒が厳しくなってね。宗教に入りたい人たちも入れやしない。……この村は変わったよ」

そして少し寂しげな顔になり、続けた。

「今では周りはみんな見知った人ばかりだ。不満は無いが、楽しみは無い。みんな追い出されたくないから言わないだけで、刺激を求めているんだ。だからお前さんたちをみんなが歓迎した」

「……」

結局ホートリートを襲ってまで手に入れた住民は、この村に不満を持っている。
ホートリートの方がよっぽど良かったに違いない。
でも、村人が悪い訳じゃない。
悪いのは全部、上の者なんだ。
ロロンはそんなことを考えながら、クローゼの作ったスープを飲み干した。

50:千代紙 ◆.EnE:2014/02/28(金) 19:51 ID:PYM

「じゃあ、消灯するよ」

「はい!」

結局、ロロンたちはクローゼに勧められるまま、クローゼの家に泊まることにした。
ロロンたちは客室を使って寝させてもらうことになった。
ロロンは、そのベッドの上で目を瞑りながら考える。
ムカリスの民は、思っていたほど悪くはなかった。
むしろ、とても優しいくらいだ。
ムカリスに復讐したら、ここの優しい者たちまでもが居場所を失ってしまう。
ホートリートだって、もうない。
どうすれば……。
そんなことを考えているうちに、ロロンは眠りの世界へと落ちていった。

51:千代紙 ◆.EnE:2014/03/07(金) 21:30 ID:PYM

チュンチュンチュン……。

「ん……まぶし……」

ロロンは目を開きかけたが、眩しい光に再びまぶたを閉じた。
それから飛び起きる。

「寝坊だっ!」

昨日、リカーナとホルクと約束をしたのだ。
朝日が昇る前に起きて、ムカリスの民が外を見る前には村の中心に行こう、と。
しかし、もう朝日はとっくに昇っているし、小鳥も鳴いている。
慌てて時計を見て、また驚く。

「8時……!?」

完全なる寝坊。
ロロンは思わず頭を抱えた。

「しまった……」

52:千代紙 ◆.EnE:2014/03/09(日) 10:43 ID:PYM

♭余談♪

春の陽気がごくまれに訪れる季節となりました。
花粉症で困ってる方も多数いるのではないでしょうか。
私?
私は違います←

今回は作者、千代紙について。
私はボカロのオタク……ではないですけど、好きです
現在も聴いております。
今は永遠に幸せになる方法、見つけました。ですね((黙
えー、中1です。
別名Holly-Leaf。
交流板、二次創作板、ポエム板、自己紹介板、フリト板、いじめ板、人生相談板……etc.など、多くの板に生息しています。
見かけたら是非是非声をかけてみてください←

53:千代紙 ◆.EnE:2014/03/09(日) 17:59 ID:PYM

急いで客室を出ると、リカーナとホルクそしてクローゼの姿。
朝食をとっているらしい。
三人はロロンを見つけると、笑みを溢した。

「ロロンくん、遅かったね」

ホルクがパンをかじりながら言う。
怒っている様子は全くない。

「ロロンさんの朝食もありますよ」

と、リカーナ。
柔らかく笑って、自分の横の席を指差す。
クローゼはスープをズビズビと飲みながら告げた。

「朝4時に行く計画は変更になった。もうムカリスの女はお前さんたちの味方だからね。こそこそする必要もないんだよ」

それ、昨日言ってたことと若干矛盾してないか?
ロロンはそうつっこもうとしてから思い出した。
小さく声をあげてしまう。
ロロンが目を覚ましたとき、朝日が顔に当たった。
つまり、カーテンは開けられていた……。
それって。

「凄くまずくないですか!?」

キョトン、とする三人に説明をすると、クローゼが笑った。

「何もまずくないさ。ムカリスの民は朝3時半には起きるんだけど、今朝は朝会があってね。女全員にお前さんたちのことを話した。そしたら、『私たちが守ろう!』ということになってね」

朝3時半に起きるのか……。
結局朝4時に起きるのは意味なかった……。
まあ、何はともあれ。
この村の女性たちに守ってもらえるらしい。
どういう形でかは分からないが、これは大きい。
ロロンは思わず心の中でガッツポーズをし、席についた。

54:千代紙 ◆.EnE:2014/03/15(土) 17:40 ID:PYM

食べ終わると、さっそく荷物をまとめた。
一晩泊まらせてもらっただけだから、それほど散らかっていない。
だから30分ほどで終わった。
クローゼはその間台所にいて何かをしていた。
荷物がまとめ終わると、三人はその荷物を持ってクローゼのもとへ行った。

「昨日今日とお世話になりました。」

ロロンが声をかけると、奥からクローゼが出てきた。

「もう行くのかい?ならちょっと待ってな」

そして再び台所に戻っていく。

「どうしたんでしょう?」

「さあ……」

三人が呆気にとられていると、しばらくして甘い香りが漂ってきた。
バニラのような気もするが、少し違う。
クッキーのような香ばしい匂いもする。
ロロンが首をかしげているとクローゼが篭に入った何かを持ってきた。

「はい、これを持っていきな。」

「これは?」

篭には布が被さっており、何があるのか分からない。
すると、クローゼが布をソッと取った。
瞬間、あの匂いが強くなる。
それは小さなケーキのような形をしていた。
しかし、ロロンの見かけない食べ物だ。

「これはムカリスで古くから作られてきたお菓子、バムリナさ。これを食べると元気が出てね。戦力があがるよ」

クローゼがそう説明し、また布を被せる。
バムリナ、という名前らしいそれは見えなくなった。

55:千代:2014/03/23(日) 18:00 ID:PYM

クローゼから貰ったお菓子をありがたく頂いた一行は、クローゼの家を後にした。

「上の奴らは、あの山の上にいるからね」

と言う言葉を背に。
"あの山"は、あまり高くないが登るのはそこそこ大変そうな山だった。

「一時間ほどで登れるかな?」

というホルクの呟きにロロンはいいや、と答える。
そして指を三本立てた。
決まったか、と期待するロロンにホルクが聞く。

「三時間かい?」

ロロンは怒りを通り越して、むしろ想像力を尊敬しよう、と心に決める。
そして、まるでブッダのような穏やかな声で返した。

「30分です。」

いや、無論ブッダの声を聞いたことは無いのだが。


「もうリタイアだよ〜」

ホルクが後ろで言う。
すでに答えることを諦めていたロロンは、さっきから無言で隣を歩くリカーナに声をかける。

「大丈夫かい?」

56:千代:2014/03/26(水) 06:54 ID:PYM

リカーナはロロンの問いかけに笑顔で答えた。

「大丈夫です。何処かの誰かさんと違って貧弱ではありませんから」

「そうか、なら良かった。何処かの誰かさん、そして見かけと違って君はタフだね」

「ありがとうございます」

和やかな会話。
いつまでも続けていたい、と思う。
でも、この戦いに勝ったら僕たちは離れ離れなんだな。
と、その時。
ロロンとリカーナの間に何かが割って入った。

「何処かの誰かさんとは誰のことかな?」

何か……もといホルクは怖いくらいの笑顔で問いかけてくる。
しかしリカーナはきっぱりと言った。

「あなたのことですよ」

するとホルクは演技っぽく胸を押さえ、しゃがんだ。

「僕は大変傷ついたよ…」

そして泣き真似。
はっきり言って下手。
と、リカーナは笑い出した。

「演技下手ですね」

と言いながら。
その言葉にホルクとロロンも笑い出した。
笑いながら、ロロンは考える。
"仲間"とはこういうことなのかな、と。
ずっと憧れていた。
子供の時から仲間は愚か友達だっていなかった。
武道一筋だった。
でも、今ここで仲間と笑い合えてる。
幸せだ。
しかしやがて幸せは失われる。
ロロンはそれを知っていたから、いつも何かに期待したり何かを望んだりはしない。
けれど。
この仲間を失いたくない、と思う。
こんなに強い欲を抱いたのは初めてだった。

57:匿名さん:2014/03/31(月) 10:10 ID:PYM

あげます

58:匿名さん:2014/04/06(日) 14:32 ID:PYM

あげ


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