一つの世界の物語。

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1:モカ:2014/02/23(日) 15:05 ID:rqE

これは、誰も知らない、たった一つの世界の、物語。

そこに住む、住民達は、何を考え、何を思うのか。

光か、闇か。

希望か、絶望か。

対極に位置する二つは、近くて遠い。

私達が住む世界と、この世界も、近くて遠く、同じで違う。

そういう風に、出来ている。

2:モカ:2014/02/23(日) 15:13 ID:rqE

【序章:とある少年の独り言】

小さな部屋に、少年が立っていた。

少年は、どこにでもいそうな普通の格好の少年だった。

その少年は、1人呟く。

「あーあ、面白くない。何も僕を楽しませてくれない。そんなの、理不尽じゃないか」

少年は考えた。

「そうだ!僕がこの世界に直接存在すればいいじゃないか!誰も僕のことなんてとがめない。邪魔をする者は、すぐに殺してしまえばいいだけだ」

そして、少年は旅立つ。

「まあ、あいつは怒るだろうね。因果を壊すなと。でも別にどうでもいいか。僕に気づくはずもないしね」

3:モカ:2014/02/23(日) 15:38 ID:rqE

【第一章:夕焼けの草原】

大陸の中央に位置する、カルメリア大草原。

そこは動物たちが暮らす楽園だった。人間は、ほとんど住んでいなかった。住んでいるとすれば、文明から孤立し、独自の文化を持った原住民ぐらいだろう。

「みんな、喜んでくれるかな・・・」

「ばーか、喜ばないわけないだろ。早く帰って見せてやろうぜ。俺たちの最初の狩りなんだからな!」

「うん!」

夕焼けの草原を、二人の子供が歩いていた。

1人は長い銀色の髪を持つ少女だった。腰に短剣を携えている。なかなか可愛らしい顔立ちをしていた。

もう1人は、褐色の肌の少年だった。手には野うさぎを持っている。先ほどの会話の中で捕まえたと言っていたから、狩りで仕留めた獲物なのだろう。

「それにしても、ユウは本当に白いよな。俺たち村のやつらはみんな黒いぜ。お前だけだよ、そんなに肌が白いのは」

「そんなことないよ!カイ。都市部に住む人達はみんなこういう肌の色なんだって。私は草原に捨てられていた捨て子だから、肌が白いんだよ」

少女の名はユウ、少年の名はカイというらしい。

「とにかく行こうぜ。暗くなるまで外にいたら、化け物に食われるらしいからな!」

「お、脅かさないでよ・・・。私、そういうのは苦手なんだから!」

仲良く歩いていた、そのとき。

「ぐっ?!」

ユウが倒れた。

「ユウ?!」

カイは問いかけたが、返事はない。それに、見たこともない大人たちが、ユウを抱えて連れ去ろうとしているではないか。

「待てよ!」

追いかけるが、大人たちは速く、カイは置いていかれてしまった。

「とにかく、村の奴らに知らせなきゃ・・・。このまま村まで乗っ取られてたまるか・・・!」

ユウの安否を心配しながら、カイは村に向かって一目散に走った。

4:モカ:2014/02/23(日) 16:03 ID:rqE

【第二章:馬車の中で】

「うっ・・・?」

ユウの意識が戻ったのは、ガタゴトと揺れる馬車の中でだった。

「気がつきましたか?」

背後から声をかけられ、思わず振り返った。

そこには、自分と同じくらいの少年が座っていた。顔色が悪く、暗い印象を持たせる。ユウは少年に聞いた。

「ここはどこ?」

「ナルセンク王国への馬車ですよ。僕たちは王国の王子のお付きにされるんです。だから、人里離れた場所から連れ去られたんです」

ナルセンク王国は、この辺りを治める大きい王国だ。ユウも名前くらいなら聞いたことがあるような無いような。確か、王子が権力を奮っていると聞く。

「そう・・・私はユウ。あなたは?」

「僕は疾風(はやて)といいます。和国の出事なんです」

疾風はユウと同い年で、見たところおとなしい感じの少年だった。ユウはすぐに疾風と仲良くなれた。

「ナルセンク王国までは、あとどれくらいかな?」

「少なくとも一週間はかかると思いますよ。その間はずっとこの馬車でしょうね」

ユウはため息をつくと、窓側に座り込み、景色を眺めた?

5:モカ:2014/02/23(日) 16:17 ID:rqE

【第三章:ナルセンク王国】

疾風の言っていた通り、ナルセンク王国までは一週間はかかった。ユウと疾風は少ない水と食料をもらって空腹をしのいでいた。

ユウの荷物はとられておらず、短剣で脱出も試みた。しかし、疾風はそんなユウを何回も止めた。ここらは一帯が荒れ地だから、生き延びることはできないと。ユウはしぶしぶ言うことを聞いた。

「もうすぐお城に到着しますね」

「王子って、どんな人なのかな・・・?」

「恐ろしい人だと聞いたことがあります。脱出も難しいでしょう」

「・・・」

ユウたちはお城に到着するや否や、兵士たちに引っ張られた。疾風は地下につれていかれたが、ユウはきれいな部屋へと入れられた。

「あの、どうすればいいですか?」

ユウは思いきって近くのメイドに聞いた。メイドは無表情で返した。

「今日は体をきれいにしていただきます。王子の謁見に、そんな格好ではいけませんから」

ぼろぼろの服ではいけないということだろう。ユウは「わかりました」と言うと、ドアに鍵をかけた。

6:モカ:2014/02/23(日) 17:22 ID:rqE

【第五章:少女と王子】

とりあえず水浴びをして体の汚れを落とし、部屋にあったガーゼのワンピースを着てみる。村にはなかった高級品だ。

ユウは寝台に倒れ込んだ。ものの一週間しかたっていないのに、胸騒ぎが止まらない。こんな場所に押し込められて、本当にやっていけるのだろうか。もしも、殺されてしまったら・・・。

(そ、そんなわけない・・・!カイがきっと助けてくれる!)

必死になって心を落ち着かせる。今ユウが頼れるのはカイだけなのだ。

(そうだ、疾風は・・・?!今頃どうしてるかな・・・?地下につれていかれたけど・・・)

ランプを片手に部屋を出る。幸い、周りには誰もいなかった。

ユウは自分の記憶を頼りに歩いた。確か、城門の前から地下には行けたはずだ。ユウは早足になる。

「何をしてるの?」

どこか余裕のある声が響いた。

「?!」

「やあ、会えて嬉しいよ。僕はこの国の王子でね。君たちにやってほしいことがあるんだけど」

ユウは短剣を構えた。この少年が自分から家族や仲間を奪ったと思うと、怒りが押し寄せてくる。

「わーお、ずいぶん好戦的だね。安心しなよ、命は取らない」

「ふざけないで!だったらいっそ殺してよ!こんなところに押し込められているくらいなら、死んだほうがましだ!」

いつの間にか、ユウは泣いていた。短剣を持ったまま、涙を流していた。

「うーん・・・それは難しいかもね。僕は王子だから、今は忙しいんだよね」

「ならば、あんたを殺して私も死ぬ!」

「うわ、かなり混乱しているなぁ。そうだ、ニック、リライア、この子を頼むよ。優しくしてやりな」

ユウの目の前に、二人の少年が立ちふさがった。

二人とも大きい。1人は今流行りの「眼鏡」をかけている。もう1人は面倒くさそうに果実をかじっている。城門の前に、確か桃の木があったから、そこのものだろう。

「ユウ・・・だったか?お前には蔵書室の鍵を渡す。自由に見てよい」

「あ、俺はニックっていうんだー。お付きなんて超めんどいー。こっちの眼鏡がリライアねー」

「好きでかけているのではない!軽々しく眼鏡と呼ぶな!」

ユウは呆れながらも、鍵を受け取った。

7:モカ:2014/02/23(日) 18:05 ID:rqE

【第六章:書庫にて】

書庫に行くのにも、ニックとリライアがついてきた。ユウは沈黙を守りながら書庫で本を探した。

(せっかく脱走できるかと思ったのに・・・。この人達強そうだし、私の短剣だけでは太刀打ちできない・・・)

憂鬱な気持ちで帰ろうとすると、一つの本が目に留まった。

題名は「この世界の歴史」というものだ。分厚いが読めなくもない。ユウは村ではいちばん頭が良かったのだ。

「あの、ここの本って持ち帰っていいですか?」

ニックに聞くと、あっけらかんと「いいよー」と許可された。リライアはお説教するだろうが。

「そろそろ帰ろうっと」

「ふむ、お前が洪に興味を示すとは意外だな。いいだろう、いつでも利用すればいい」

リライアに言われて、ユウは書庫を後にした。

8:モカ:2014/02/23(日) 18:45 ID:rqE

【第七章:書物に記録されし過去】

部屋に戻り、ユウは書庫で借りてきた書物を開いた。

「細かい・・・。でも読めるな。ええっと・・・なになに?」

書物には、こう書かれていた。

『貴様らの暮らす世界は、光の神ユノレシオンによって創られた。ユノレシオンは、強大な魔力を持ち、邪悪な魔物たちを滅ぼした。

ユノレシオンの死後はその子孫が国々を創ってそれぞれの文明を築いた。しかし、子孫たちは傲慢で、みずからが世界を支配しようと考えていた。その為、子孫たちは互いにぶつかり合った。これが戦争の火蓋となった。

その戦争を終結させたのが1人の巫女だった。巫女の出事は不明で、今その巫女の子孫がどこにいるかは明らかとなっていない。

巫女について一つだけ記述がある。それは、血のような赤い目をしているということだ。』

ユウは眠くなって、読みながら寝てしまった。

9:モカ:2014/02/23(日) 21:10 ID:rqE

【幕間:少年の旅路】

ぼろぼろの服に、汚れた肌の少年が、城下町の広場に倒れていた。

まだ息はあるが、もう少しで危ないだろう。しかし道行く人々は目もくれずに通りすぎていく。

「ねえ、君大丈夫?」

そこに、顔を隠したマント姿の人物が、少年に声をかけた。

「参ったな・・・。これから謁見なのにさ。しょうがない、看病してやるか」

人物は少年をかつぐと、お城に向かって歩き出した。

10:モカ:2014/02/23(日) 21:44 ID:rqE

【第八章:謁見の時間】

これから、王子とユウ、疾風たちの謁見がある。

ユウ、疾風の他にも数人連れてこられているようだった。疾風は元気そうで、ユウはひとまず安心した。

「あの子達は?」

「僕たちと同じで、連れてこられた人々です。ユウは知らないんですね」

「まあ、あのときは絶望しててわからなかったけど・・・」

その中の1人の少女が、ユウを睨み付けていた。黒髪のお下げが印象的だ。どこか暗い目をしている。

(あの子と会ったことないんだけど・・・)

「じゃあ、謁見に移るよ。僕はこのナルセンク王国王子、クリストファー・ナルセンクだ。今回君たちに来てもらったのは、優れた人材を集めるためさ」

「・・・何よ・・・家族や仲間と離ればなれにしておいて、よくもそんなきれいごとが言えるわね・・・!」

さっきの少女だった。ユウも昨日はずっとあんな感じだったから、気持ちはよくわかる。

クリストファーは首をかしげた。

「なんで僕が憎まれなくちゃいけないのかな?」

その態度に、少女はますます憤る。

「とぼけないで・・・!あんたなんかに、あたしの気持ちなんか分かるもんか・・・!」

「殺されたい?」

突然言い渡された冷たい言葉に、誰もが静まり返る。

クリストファーは真顔でいい続ける。

「お前は身分差を知らないようだけれど。僕が怒っていたら君の首は飛んでいるところだ。僕は王族、お前はただの民衆。逆らえるご身分じゃない」

ユウは背筋が寒くなるのを感じた。疾風は相変わらず無表情だったのだが、焦っていることはわかる。

そんなこんなで、謁見は終わった。

11:モカ:2014/02/24(月) 17:11 ID:rqE

【第九章:アンリとエル】

謁見の後は、ユウたちの初仕事の時間だ。

ユウたちは王子のお付きとして、武術の訓練や学問、さらには掃除洗濯なども覚えなくてはならなかった。要するに召し使いとしての仕事をするということだろう。

とりあえず、自己紹介をしなくてはならない。召し使いにも班編成があって、同年代の者たちで班をつくる。

「俺の名はエル!よろしくな!」

金髪碧眼の美少年がフレンドリーに話しかけてきた。ユウはたじろぎながらも自分の自己紹介をした。

「私はユウです。エルさん、よろしくお願いします」

「俺のことはエルでいいよ。ほら、アンリも自己紹介しろよ!」

先程も顔を合わせたお下げの少女が自己紹介する。

「私はアンリよ・・・。どうせすぐに忘れるんだろうけどね・・・」

(後ろ向きの人だな・・・)

ユウはそう思ったが、あえて言わないでおいた。

12:モカ:2014/02/24(月) 20:53 ID:rqE

【第十章:仕事の日々】

まずユウたちが任されたのは、汚く悪臭の漂う地下室の掃除だった。アンリは

「臭い・・・」

「僕、ちょっと気分が・・・」

「うわぁー・・・」

「こんなの墓場の掃除を1人でするのよりはましよ・・・!」

アンリは1人で墓場の掃除をしたことがあるのだろうか。

そこは置いておいて、さっそくユウたちは掃除に取りかかった。しないよりはいいだろうという疾風の提案である。ユウは掃除は初めてだが、やり方はすぐに覚えた。

「こんなところに閉じ込められていたの?」

ユウが聞くと、疾風は平然と答えた。

「いや、ここではなくて、用水路のところにいました。寒いですが住めなくはなかったですよ」

「そういう問題じゃないでしょ?!」

「疾風ってば、ずいぶんユウちゃんと馴れ馴れしいですね〜?何かあったんですか〜?」

ずいっとエルが割り込んでくる。疾風はうっとおしそうにエルの手を払いのけた。

「やめてください」

「けちだな、もうっ!」

ユウは二人を無視してアンリのところに向かった。

さっきからアンリはずっと眉間に皺をよせて黙々と掃除している。相当几帳面で潔癖なのか、はたまたユウたちの会話に混ざりたくないだけなのか。

「アンリさんはどこの出身なんですか?」

アンリは忌々しそうに答えた。

「どこでもいいでしょ・・・。それより掃除しなさいよ・・・早く帰りたいのよ・・・!」

「す、すいません!」

「ペコペコしてないでさっさとなさい・・・。あんた見てるといらいらするのよ・・・!」

ユウは仕方なく掃除に移った。

13:モカ:2014/03/15(土) 22:18 ID:rqE

【第十一章:ユウとリライア】

仕事が終わると、ユウ達は各自部屋に戻るよう言われた。

掃除はかなりの時間がかかったが、なんとかやりとげることができた。ほとんどアンリがやっていたので、お礼を言いたいのだが、また何か言われてはもとも子もない。

(早く仲良くなりたいのに・・・)

「どうした?悩み事でもあるのか?」

リライアが声をかけてきた。こう見えて心配性らしい。

「同じグループの子と、仲良くなりたいんです。なかなか打ち解けられなくて・・・」

「まあ、入りたての頃は皆が警戒しあっているだろう。しかし、そのうち互いのことをわかりあえる。俺とニックもそのようにしてパートナーになった」

リライアは懐かしそうに目を細めた。

いつもは真面目で固い顔をしているけど、案外いい人なんだな・・・とユウは思った。

「ありがとうございました。お忙しい中すいません」

「別にいい。俺も仕事が一段落したところなのでな」

そう言うと、リライアはすたすたと歩いていってしまった。

(いい人なんだな、リライアさん。仲良くなれそう)

ニックさんはユルすぎるけど・・・と苦笑して、ユウは自室に戻った。

14:モカ:2014/03/16(日) 16:01 ID:rqE

【第十二章:とある人物】

次の日、ユウはクリストファーに呼び出された。

「この間、王都の広場に人が倒れていてね。ついさっき目をさましたようだから、食べ物を持っていってくれないか?腹も減っているだろうし」

「わかりました。えっと、その方はどちらに・・・?」

「君の部屋の裏の部屋だよ。ほら、これを持っていって」

両手に食べ物を渡され、ユウはよろよろしながら目的地に向かった。

そこは、ユウ達の部屋のような、簡素な部屋だった。ドアを開けて中に入る。ノックをしても返事がなかったからだ。

「失礼します・・・?」

人気はない。

しかし、ユウはそこはかとなく気配を感じていた。このような気配は、王都ではあまり感じない。平原にいたころはしょっちゅう見に受けていた気がする。

(まさか・・・?!)

「動くな!」

のど元に何かが突きつけられた。それはユウのと同じ短剣だった。

15:モカ:2014/03/16(日) 18:09 ID:rqE

【第十三章:再会】

「カイ・・・?」

思わず、口からその名前が漏れた。

相手は驚いたらしく、びくりと肩を震わせて短剣を落とした。ユウはその隙に相手の腕から抜け出した。

「じゃあ、まさかお前はユウだってのかよ・・・?!」

そこにいたのはユウの幼馴染みで仲間の、カイの姿だった。ユウは嬉しくなってカイに飛び付いた。

「カイ!」

カイはよろめき、なんとか姿勢を正す。

「ユウ、無事だったのか!よかった・・・!」

「うん!カイこそどうしたの?倒れていたって聞いたんだけど・・・。大丈夫?痛いところとか、ない?」

「おうよ!俺は大丈夫だ。それより、お前、こんなところで何をしてるんだよ?」

ユウは顔を曇らせた。

疾風やアンリ、エルに、カイのことを話すべきだろうか。彼らは信頼のおける仲間だし、話しても支障はないだろう。しかし、もしカイの存在がクリストファーに知られたら、カイは殺されてしまうかもしれない。

「カイ、いつくらいまで安静にしていなきゃいけないの?」

ユウが聞くと、カイは首をひねった。

「うーん・・・。一週間くらいまで安静にしといたほうがいいんじゃねえの?まあ、王子さんが何て言うかだな」

「早く逃げな、カイ。王子様は恐ろしい人だから、殺されてしまうかもしれない。もしくは、私みたいに労働を課せられてしまうかもしれない。だからお願い。一刻も早く故郷に帰って」

ユウが真顔で言うと、カイは納得したようにうなずいた。

「わかった。でも今は仕事に戻ってくれ。いつまでもここにいたら怪しまれるからな」

「そっか。じゃあ私は戻るね。また来るから」

それだけ言い、ユウは部屋を出た。

16:モカ:2014/03/17(月) 11:04 ID:rqE

【第十四章:ユウとアンリ】

部屋を出ると、運がいいのか悪いのか、アンリと出くわした。いつも通り、暗い表情でこちらを睨み付けている。

「アンリさん!」

「何よ・・・いちゃいけないって言うの?!」

「そんなこと言ってないけど・・・」

そうユウが言うと、アンリはため息をついた。目の下の隈が連日眠れなかったことを物語っている。アンリも故郷のことを考えていたのだろうか。

ユウはためらいがちに聞いた。

「あの、アンリさんの故郷はどちらに?」

アンリは少し間をあけてから答えた。

「北のムシャッカというところよ」

「ムシャッカっていうと、毛皮の加工で有名なところですよね。私も話には聞いたことがあります」

アンリは目を細めた。ユウのほうに向き直り、話を続けた。

「これからあたしが言うのは、全て本当の話よ。覚悟があるのなら、あたしの話を聞きなさい」


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