集会 

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1:とかげ ◆y4Oc:2014/02/25(火) 17:19 ID:ffE

      /ーーーー\
( ・∀・)< ウェルカム!! |
      \ーーーー/

開覧は自己責任でお願いしますね(・ω・ )
ぬこたちのほのぼのな日常を描いていきたいと思います
        ^  ^
        (´・ω・`)ーーノ  
         υυーーυυノ

>>2からStartです つ旦

2:とかげ ◆y4Oc:2014/02/25(火) 17:42 ID:ffE

*
 それは、ある日の昼下がりの公園のことだった。
 ツツジの植え込みの、その葉っぱが日光に当たって、きらきらと輝いている。そしてまた、つやつやとした銀色の滴がぽたり、と流れ落ちてきた。
 昨日は雨だった。ぱらぱらとした小雨ほどだったが、公園の遊具は雨に濡れ、びしょびしょになっていた。
「やあ、昨日はどしゃぶりだったね」
 振り返るとそこには、見慣れた顔がはっきりと映った。
「でも、6月のざあざあぶりのに比べたら、どうってことないよ」
 ちぃは言った。それも少し、自慢気に。それを聞いた寅吉は、思わずかっとなって、まだ子どものちぃに、恐ろしい勢いでとびかかった。
「ニャアーゴ!!」
 低い唸った声で、2匹は争いを始めた。しかし、邪魔が入ってしまった。
「にゃんちゃんたち、喧嘩してるー!!」
 それは、幼い子供の声だった。その子よりもずっと小さい2匹は、思わず身構えた。
 子供は、まだ4歳ほどの、しっかりしていそうな女の子であったが、それにしても幼いので、何をされるのか、分からなかった。

3:とかげ ◆y4Oc:2014/02/25(火) 17:58 ID:ffE

*
 2匹は、『猫』であった。ちぃは子どもで、寅吉はもう立派な大人の猫だった。
 だが、小さな人間の子供、それもまだ他人の痛みも知らないような子供や、悪巧みをした中学生小学生には、よくいたずらをされたもんだ。
 長くスラッとした、綺麗な尻尾を踏まれたり、銀色のひげを、思いきり引っ張られたりした。
 先輩である寅吉は、すでに経験済みだったが、まだまだ経験の薄いちぃは、その痛みを知らなかった。
「にゃんちゃん、喧嘩しちゃ、めっ」
 少女は2匹に、指を指した。こんなに幼い人間の女の子に注意されるとは、ちぃも寅吉も、少ししゅんとした。
 しかし、そのあとすぐに公園に、まだ若い女の人が入ってきた。走ってきたのか、息をずいぶん切らしている。
「こら明李、猫さんにいたずらしちゃ駄目じゃない」
 女の人は、少女に向かって叱りつけた。
 少女はしぶしぶうなずいたが、ちらっちらっ、と2匹を見ていた。何か不満でもあるのだろうか。
 油断できないなあ、と、勘のするどい寅吉は思っていた。
 ちぃがその油断をした頃に、女の子はようやく口を開いた。

4:とかげ ◆y4Oc:2014/02/25(火) 18:09 ID:ffE

*
「ねぇ、お母さん。わたし、このにゃんちゃんたちが欲しい!!」
 何を言うのかと思ったら、突然寝言のようなことを、少女は言った。
「……駄目よ。猫さんたちも自分のお家があるし、連れて帰ったら、お部屋が汚れちゃう」
 母親である女の人が、なだめるように言うと、
「やだー!!にゃんちゃんと一緒にいたいー!!」
と、少女はだだをこねた。母親は呆れていた。
 身の危険を感じた寅吉は、体中の美しい毛を逆立て、シャーッと威嚇した。慌ててちぃも、真似をした。
 それを見た少女は、急に恐ろしくなったのか、ビクッと震えた。
 だが、諦めてはいなかった。恐々しながらも、
「汚れないもん、大丈夫だもん。わたしが喧嘩しないでって言ったら、ちゃんと言うこと聞いたもん」
 女の子は、猫たちの威嚇を恐れたのか、よっぽど2匹を家に欲しいのか、目に涙を浮かべていた。

5:とかげ ◆y4Oc:2014/02/26(水) 16:57 ID:ffE

*
 その様子に、さすがに2匹も少し気の毒に思った。だが寅吉は、絶対に少女の元へ行かない、死んでも行くもんか、と決心を固めていた。ちぃは、ほんの少し、心を許していた。
「おい、ちぃ。絶対に駄目だ。人間は信用しちゃいけない」
 寅吉は、ようやく口を緩めた。
 ちぃは迷った。「これでは、少女があんまりだ」と思いつつも、人生における先輩である、寅吉の言うことが正しいことも考えていた。
 『ごめん』。『僕はお家に行けません』。
 ちぃは、寅吉に従うことにした。
「分かった。じゃあ、早く逃げよう!!」
 未熟者の黒斑猫はそう言ったが、寅吉はいいや待てと言った。
「人間は、高い所に手が届かないはずだ。そこのわきを通って__」
 寅吉は、淡々と説明した。ちぃもそれにうなずいている。
 やがて、その時はやってきた。
「にゃんちゃん!!さっきから何お話してるの?」
 少女は、ちびな猫の尻尾を掴もうとした__が、猫はそれをサッと避けると、大きな猫のあとを追い、人間の手の届かない、高いブロック塀に登り、壮快に駆け抜けた。

6:とかげ ◆y4Oc:2014/02/26(水) 17:12 ID:ffE

*
 にゃんちゃーん……__。
 途中、何度もその叫び声が聞こえてきた。
 ちぃは、ぐっと涙を堪えた。猫だって、泣くもんだ。寅吉は、「泣くな。同情しちゃいけない」と、声をかけた。先輩として、厳しく。
 2匹は、その後は無我夢中で走っていた。我を忘れて、とにかく走る。
 灰色のブロック塀は、雨に濡れて、しっとりと湿っていた。

 空が一面、灰色になった頃、ちぃと寅吉は商店街へ出た。
 八百屋や雑貨屋、古着屋など、様々な店が並んでいるが、今日に限って、人は全くいなかった。
 その時、ぐう〜、というなんともいえない音が、聞こえてきた。
「わりぃわりぃ。腹が減っちまってさ」
 その音の正体は、寅吉のお腹の音だった。
 ちぃは、嫌な予感しかしなかった。
「やい、やい、ちびな猫。魚屋からいわしを1匹、とってきてくれよ」
 寅吉はちぃの周りをぐるぐる回り、嫌味っぽく言った。寅吉は、良い奴ではあるが、ときどき人使いが荒く、他の猫をいじめたり、使いっ走りにすることがある。
 『いやだ』。と言えなかったちぃは、しぶしぶ魚屋へと向かった。

7:とかげ ◆y4Oc:2014/02/26(水) 17:32 ID:ffE

*
 ちょうどその時は、お店のおじさんが奥に行っていて、店内は無人だった。
 ラッキーだったなあ、とちぃは思い、発泡スチロールの箱に入った小さないわしを2匹、口にくわえた。
 その時。店の奥から、おじさんが戻ってきたのだ。
 ガチャッ、というドアの音にびっくりしたちぃは、思わず口からいわしを落とした。
「こ、こら!!この泥棒猫め!!」
 ちぃに気づいたおじさんは、慣れたように叫び声をあげた。
 慌てて、落としたいわしをくわえ上げると、ちぃは一目散に走り出した。

 さっきの場所まで戻ると、茶色い虎模様をした、強面な猫がにこにこしながら待っていた。
「なあ、ちぃ。ちゃんといわしを持って来たか」
「う、うん」
 ちぃは、少しどきどきしていた。『このいわしはあまり新鮮じゃない』だとか、『小さくてもの足りない』だとか言われるのが、恐かった。

8:とかげ ◆y4Oc:2014/02/26(水) 17:53 ID:ffE

*
「うーん」
 寅吉は、思いきりいわしにかぶりつくと、口いっぱいに頬張った。
 つられてちぃも、がつがつと食べ始めた。幸せな気分だった。たとえ、盗みを犯して得たものだとしても。ちぃは食べることが、好きだった。
「うまい。よくやってくれた」
 5分も経たないうちにぺろりと食べ終えた寅吉は、ちぃの背中をペロペロと舐めてやった。
「寅吉、ありがとう」
 ちぃは嬉しかった。たとえ、誉めてくれた相手が、悪友だとしても。寅吉は、大切な友達だった。
 そのうち、ポツポツと雨が降ってきた。
 濡れるのが嫌な2匹は、サッと物陰に隠れた。
「・・・早く止むといいね」
 ちぃは言った。外は寒く、雨が降るともっともっと寒かった。
「なあ、ちぃ」
「うん?」
 ちぃの素直な反応に、寅吉は少し戸惑う。ほんのちょっと間を空けてから、寅吉はまた口を開けた。
「その・・・、さっきはごめん。くだらないことで、喧嘩しちゃったよ」
 寅吉は、照れくさそうに言った。短い前足で、顔を拭くようにこすった。
「ううん」
 ちぃは嬉しかった。初めて、寅吉に謝ってもらったのだから。舞い上がるような気分だった。
 初めはポツポツだった音も、気づけばザーッという音に変わっていた。
 そのうち、2匹は眠った。商店街の、暗い物陰で。

9:とかげ ◆y4Oc:2014/02/27(木) 12:39 ID:ffE

*
「ううーん」
 ちゅんちゅん、というスズメの鳴き声が聞こえてきて、ちぃは目を覚ました。
“鳥だ!!”
 ちぃは瞬間的にそう思い、本能として、何かを狩りたくなってきた。
 ふと、隣に在る(いる)存在に気づいた。
 寅吉はいびきをかきながら、まだ眠っていた。
「えいっ」
 ちぃの小さな手が、寅吉の顔面にクリティカルヒットした。さっきスズメを見たからか、興奮し、本能として寅吉にパンチをかましてしまったのだ。
「う・・・、この、ちぃ・・・」
 しまった。
 寅吉が、苦しそうにうなる。やってしまった、とちぃは、とても後悔した。
「馬鹿っ、俺の獲物を取るんじゃない!!」
「うわっ!!」
 びっくりした。寅吉は、叫ぶように怒鳴った。
 だがちぃは、それが寝言なんだと、初めて気づいた。
 自分の事じゃないんだと、ホッとして、また眠りについた。
 もうとっくに、雨はすっかり止んでいた。

10:とかげ ◆y4Oc:2014/02/27(木) 12:57 ID:ffE

*
「ありゃ?」
 ようやく、寅吉が目を覚ます。
 いつもと違う風景に、少しびっくりする。
 ああ、そうか。
 昨日のことを思いだすと、何だか眠気も覚めてきた。
 ふわあ、と大きくあくびをすると、ちぃの背中を揺らした。
「おーい、起きろ。朝だぞ」
 ちぃの背中が、ゆらりゆらりと揺れる。時々ううん、と聞こえるので、意識はあるが、まだ眠たいようだ。
 どうしようもなく、暇になった寅吉は、空を見上げてみた。
 それは青く澄んでいて、真っ白い雲が、ところどころに見えた。風はひんやりと冷たかったが、陽の当たっているところは、とても温かそうだった。
 と、顔を下げると、何かを見つけた。黄色くて円い形をしたプラケース2つと、キャットフード、それにミルクだった。

11:とかげ ◆y4Oc:2014/02/28(金) 15:05 ID:ffE

*
 プラケースの中には、キャットフードとミルクが、たんまりと入っている。
 それを見た寅吉は、みるみるうちに、自分の欲が溢れ出してきたようだった。
 いてもたってもいられなくなり、慌ててちぃを揺さぶり起こす。
「おい、ちぃ!!起ーきーろー!!」
「う・・・ん、ちょっと待って」
 寅吉があんまりにも激しく揺らしてくるので、これ以上は無理だ、と思い、ちぃはようやくよっこらしょ、と起き上がった。
「どうしたんだよ」
 寅吉の様子が少し異常だと思った彼は、呆れたように聞き出す。
 一方寅吉は、目を宝石のようにキラキラ輝かせ、興奮している。
「それがさあ、見てみろよ。餌が置いてあるんだよ」
 ちぃは、寅吉の向いた方向を、ちらっと見てみた。

12:とかげ ◆y4Oc:2014/03/01(土) 12:16 ID:ffE

*
 うわあ、と、思わず声を出しそうになった。
 ちょうどお腹の減っていた2匹は、たいそう喜んだ。何しろ、昨日の昼から、いわし1匹しか食べていない。
 ちぃと寅吉は顔を見合わせて、同時に、顔を容器に突っ込む。
 小さな頭と大きな頭が1つずつ入ったので、容器はぎゅうぎゅうである。
 幸せな気分だった。
 しばらくすると、あっという間に、プラケースの中身はからっぽになった。よほど、腹が減っていたのだろう。
 次に、喉がカラカラの2匹は、ミルクが入った容器に、顔を突っ込む。
 甘かった。
 ここのところ、ちぃも寅吉も公園の水ぐらいしか飲んでいなかったので、久しぶりに飲むミルクは、今までよりもずっと美味しく感じられた。
「うまいなあ。そうだろ?ちぃ」
 あまりの出来事に、寅吉はちぃに尋ねた。
「うん」
 ちぃは、にんまりと笑った。それは、彼の幸せな気持ちがにじみ出ていた。

13:とかげ ◆y4Oc:2014/03/01(土) 12:27 ID:ffE

*
「だけど」
 ちぃは空を見つめた。
 寅吉も真似をした。
「いったい、誰が置いてくれたんだろう」
 ちぃのその言葉に、寅吉はぎくっとする。そういえばそうだ、いったい誰がいつ?
「に、人間は信用できないっていうのに。ああ、どうしたら」
 まるで毒でものんだみたいに、寅吉はのたうちまわる。本当に毒が入っていたらどうしよう、もっとよく考えてから食べればよかったのにと、ちぃは後悔した。
 だが、こんな風に今更考えていても仕方ない、ちぃは『死んでも構わない』と思った。
「とにかく、商店街を出ようよ」
 ちぃは、寅吉を慰めるように言った。いつもは、寅吉がちぃを慰めていたが、今回は違う。
 泣きそうな目をした寅吉が、こくりとうなずく。
 ちぃはにこっと笑って、寅吉の背中を、ぐいと鼻先で押した。
 しかし、リーダー格である寅吉のプライドが、許さなかった。

14:とかげ ◆y4Oc:2014/03/02(日) 10:43 ID:ffE

*
「この借りは必ず返す」
 寅吉が、ぼそり、と呟いた。ちぃには聞こえていないようだ。
「? まあいいよ、行こう」
 2匹は並んで、そろそろと商店街を出た。

 空は相変わらず、青々と晴れ渡っている。
 朝の8時頃だろうか。辺りに人はいなかった。
 住宅街の、濡れたアスファルトの道を、ちぃと寅吉は進んでいく。
 空はカラッと晴れているのに、空気は何だかじめじめしていた。
 その時、前方から、見慣れた声がした。
「あっ!!寅吉さーん!!」
 どこか調子のいい、若者といった感じの声だ。
 その声の調子を聞いて、寅吉はすぐにピンときた。

15:とかげ ◆y4Oc:2014/03/02(日) 10:45 ID:ffE

>>14 訂正

× その時、前方から、見慣れた声がした。
o その時、前方から、聞き慣れた声がした。

16:とかげ ◆y4Oc:2014/03/05(水) 16:00 ID:ffE

*
 ほっそりとした影は、遠くからだんだんこっちへと向かってきていた。タタッ、タタッと、足取りは軽い。
「ヤサか」
 ぽつり、と寅吉は呟いた。ちぃも「ああ、ヤサか」と、同じように言う。
 気づくとその影__ヤサは、ちぃと寅吉の目の前まで来ていた。
 彼、ヤサはにんまりと笑うと、突然へらへらとした表情で、話し始めた。
 寅吉さん、ちょっと太りました?いやあ、僕も昨日、馬鹿食いしちゃいましてね!あれ、ちぃさんじゃないですか、気づきませんでしたよ!あ、そういえばね、そこのお宅の犬が__。
 話し出したら、止まらなかった。
 ちぃと寅吉はそんなヤサに、うんざりしている。いつも呆れっぱなしだ。

17:とかげ ◆y4Oc:2014/03/06(木) 16:46 ID:ffE

*
「あ、そういえば。昨日寅吉さん、来ませんでしたよね」
 ヤサは、さっきと変わらず、へらへらしたまま言う。
 そういえば、と寅吉は思い出した。昨日は、大事な用があったのだ。だが、昨日だけではない。明日も、__明後日も。
「いや、すまない。昨日は来れなかった」
 寅吉は、少し落ち着いた様子で言う。しかし、ほんのすこしがっかりしていた。
「じゃあ、じゃあ、今日は来てくれますよね!?でないと僕、帰れませんから!」
 何故かヤサは、急に焦ったように言い、妙な事を口にした。それもそのはずだった。・・・訳を知っていれば。
 だが、その可笑しげな様子を見た寅吉は、なんとなくピンときた。
 話についていけないちぃは、ただポカンと見ていただけである。
「ねぇ__」

18:とかげ ◆y4Oc:2014/03/07(金) 16:51 ID:ffE

>>17 訂正
× 昨日は、大事な用があったのだ。だが、昨日だけではない。明日も、__明後日も。
○ 昨日は、大事な用があったのだ。だが、昨日だけではない。今日も、明日も、__明後日も。

19:とかげ ◆y4Oc:2014/03/07(金) 17:01 ID:ffE

*
 おどおどとしたちぃが、2匹に尋ねる。
「何の話をしているの?」
 ああ、そうだった。
 寅吉は心の中でそう呟き、少々面倒くさく思った。
 ヤサは、なんとなく状況が呑み込めない。
「ちぃには、まだ話していなかったな」
 そこで、寅吉が口を開いた。
「俺ら猫にはな、『集会』があるんだ。どこの誰が始めたのかは、分からない。でも、到底人間には、理解されないだろうな!」
 寅吉は、口を荒げた。その様子に、ヤサはビクッとしたが、ちぃは黙って聞いている。
 3匹の中で一番大きな猫は、話を続けた。
「そいでな。夜に、人間が寝静まったあと、町中の猫が集まって、気づかれないようにひっそりと、話したりするんだ。それが『集会』。」
 ふうん、という風にちぃは聞いていた。そして、胸がどきどきした。まだ経験したことのない彼は、楽しそうだと思ったのだ。

20:とかげ ◆y4Oc:2014/03/07(金) 17:47 ID:ffE

*
 そこで、ヤサは気づく。得意気ににやっと笑うと、目を見開いて言った。
「ああ、そういえばちぃさんはまだ行ったことないんでしたっけ?良ければ今日来ませんか、寅吉さんと一緒に」
 まるで心をくすぐられたような心地になったちぃは、もちろんですとも、と合図した。
 だが1匹、やれやれ、と思っている猫がいる。
 寅吉だ。
 彼は呆れていた。ちぃではなく、ヤサに関してだ。彼、ヤサはいわゆるしたっぱである。集会に新しい猫がやって来るのは珍しく、極端にいえば、お祭りものだ。そこでヤサは、考えたのだろう。『ちぃを連れて来れば、自分の手柄になる』と。
「全く調子のいいやつだなあ」
 ヤサにもヤサの、プライドというものがあった。“生きていくため”。

21:とかげ ◆y4Oc:2014/03/09(日) 10:39 ID:ffE

*
「え?寅吉さん、何か言いましたか?」
 ヤサはきょとんとしている。多分、無意識だったのだろう。その考えが、からだに染み付いてしまっていたから。いたずらよりもほんの少し黒い、ずるい考えが。
 寅吉はぶんぶんと首を横に振り、ヤサをじっと見つめた。
「お前、飯は食ったのか」
「いいや、食べてないです」
「なら、まさひろの所へ行こう」
 そんな会話を2匹はした。
 __まさひろ。
 ここらの猫の中で一番食い意地が張っていて、無論ぽっちゃり。金持ちなお嬢の家に住んでいる、贅沢な奴である。

22:とかげ ◆y4Oc:2014/03/12(水) 16:58 ID:ffE

*
 ちぃは、そいつを知らなかった。なぜって、そいつ__まさひろは滅多に出歩かないし、外へ出たとしても、それは1ヵ月に数回ほどだ。人間でいう、いわゆる「引きこもり」である。
 ちぃはまさひろがどんなやつか知らなかったから、毛並みの綺麗な猫なのかなあ、とか、面倒見の良い優しい猫なのかなあ、とか考えていた。でも、それは明らかに違う。まさひろは、食ってばかりいる、図々しい猫だった。
 そして、なぜ寅吉はそんなやつの家に行く計画を立てたのかというと、まさひろの飼い主は非常に猫が好きで、飼い猫とは似ても似つかず礼儀の正しい、おまけに侵入した猫には餌を与えてくれるという、とても都合の良い、優しい人間だからである。寅吉が、こいつなら信用できる、と確信するほどの人なのだ。


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