天井いと電話

葉っぱ天国 > 小説 > スレ一覧 [書き込む] Twitter シェアする? ▼下へ
1:曰く ◆9/wA:2014/03/04(火) 18:27 ID:Umg

初投稿で緊張気味、曰くです。

至らない点も多々ありますが、
暖かく見守ってくださると嬉しいです。

あんまりわるいことしないでね。
感想くださると喜びます。

不適切な表現が多いかもしれません、ご注意。

2:曰く ◆9/wA:2014/03/04(火) 18:31 ID:Umg


 プロローグ

 ▽アパルトマン入居者募集
 美しい少年はその容姿ゆえに、外へ出ることを拒んだ。
 入居を決めたアパルトマンには、天井からダラリと糸電話がぶら下がっていた……。
 ちょっと変わったアパルトマンの入居者と、あなたも暮らしてみませんか?

3:曰く ◆9/wA:2014/03/04(火) 18:42 ID:Umg



 僕がこのアパルトマンに住もうと思ったきっかけは、
天井からぶらりと下がっている糸電話があったからだ。
 大家はこの糸電話、何度とっても翌日には下がっていて
不気味で誰も住まないと迷惑がっていた。

 灰色の床板が貼られた、正方形の部屋に
壁からぶらんと下がっている糸電話。
 黄色くヤニに侵された壁とどういう趣味だと疑いたくなる
灰色の床板に嫌に似合っている。


 電気から、30センチほどのところから出ている無言の糸電話が
なんだかいっそ愛しくて、この部屋にしますと僕は決めた。


 虐待から逃げ出した僕には家族というものが存在せず、
友人もいなかった為、一日中家にいることが多かった。

 この部屋にある家具はカーテンと布団だけ。
 家から持ち出した布団は、昔友達だと思ったら僕を
“そういった目”で見ていたアイツが……、皆まで言わぬがなんだか嫌な記憶のある品で、
カーテンは嫌いだった弟がつけていたものにそっくりな灰色のカーテンだ。


 僕はふと糸電話に手を伸ばす。


「もしもし、」

 虚しいくらい空の部屋に僕の声が響く。
 数秒待って、糸電話が震えた。

「だれ」



「……こんにちは。僕は、今日からこのアパルトマンに住む住人です。」

 糸電話からは俳優をしている整った顔をした弟のような、
昔友人だと思っていた人形の様な顔のアイツのような、可愛らしい男の声がした。

「はじめまして、こんにちは住人。見たところ君は、17歳くらいかな? 僕に話しかけてくれるなんて優しいんだね。」

「あたり。なんでわかるの。」

「君のことなら何でもわかるさ。父親に昔××されていたこと、友達だと思っていたヤツの性癖が変わっていたこと、弟に執拗に好かれていること。なんだって知ってる。」

「やめてよ。」

「あは、ごめんよ。つい夢中になって。」


 嫌な思い出ばかりが僕を蝕んで、形を作った指先は、
歪んだ爪が嵌め込まれている。爪より指先の方が長い、
奇妙な指は白い紙コップを持って震えていた。

「仕方がないよ、君は可愛いから。」
「あいつらの方が可愛い顔してただろ。それに、××なら僕より弟の方が向いてただろうし。」

4:曰く ◆9/wA:2014/03/04(火) 19:07 ID:Umg


「そんなこと言ったら可哀想だよ」

 優しい声が紙コップに響く。
 彼はもう一度、「可哀想だよ」と呟いた。

「君は上の階の人? 」

「そうだよ、でも、会いに来ても出ないからね。ちょっと見せられないんだ。……ほら、ねぇ? わかるでしょう? 」

「僕の嫌な思い出たちじゃなきゃ、会わない理由はわかんないんだけど。」

「人には色々あるんだよ。君だって、姿を見られたくないんだろう? 」

 もっとも説得力のない、僕にだけ有効な理由だった。
 そう、僕は人に容姿を見せられない。その姿形は、人にとってよくないものだから。

「此処の住人はみんな“曰くつき”さ。」

「そうなんだ」


 興味なさ気に答えても、紙コップ先の相手はくすくす笑う。

「101号室の女は、依存症。どの男にも別れないでと泣きついて、金を貢ぎ今は身売りをやっているのさ。」

「ふぅん」

「104号室の男は、外国人。彼、とってもいい人でね? 毎日みんなの部屋の前にご飯を作って置いていくんだ。手作りなんだけどすごく美味しくて、もうインスタントじゃ生きて生けない身体にされるよ。ただね、彼、自殺願望が強くて放っておくとすぐ死のうとするんだ」

「そう」

「でね、」

「僕は君をもう少し知りたいな。」

 そう声をかければ、一呼吸置いて「変わってるね? 」と返ってきた。

5:曰く ◆9/wA:2014/03/04(火) 19:20 ID:Umg


「でも、教えてあげられないんだ。そういう“キマリ”だからね。」

 ちょっとトーンを高くした声になんだか嫌気が差して、僕は適当に答える。
 翌々考えれば、僕は紙コップ相手に何を話しているんだ。

「で? 僕は君のこと、なんて呼べばいいのさ」

 何か考えているのか、時にして一分程黙ってからまた喋りだす。

「……君が決めていいよ? 」

「はぁ?」

「名前とか、あだ名とか、そういった個別に区分されてしまうものを答えられないんだよ。ごめんね? だから、君たちみたいに自分を一人称で呼んだり、君たちを個別の名前で呼んだりは出来ないんだ。“キマリ”だからね。」

 本当に変な奴。
 紙コップを見つめて、一度部屋を見渡した。
 嫌になるくらい灰色のカーテンと絨毯は主張をし、染みだらけの壁は黄ばんでいる。
 ……ん? よくみると壁一面にうっすらと文字が書いてある。
 そんな部屋の中に、だらりと垂れ下がったこの真っ白い糸電話はまるで蜘蛛の糸のように感じた。
 ……蜘蛛? ああ、それだ。蜘蛛にしよう。

「じゃあ、蜘蛛って呼ぶことにするよ」

「……クモ? うん、わかった。じゃあそう呼んでくれ。今日は疲れているんだろう? もう休むといい。」


 そう言うと、糸電話はひとりでにぷつりと切れた。
 僕は首筋に落ちてきた紐に鳥肌を立てて、首を掻いた。

 そうだな、今日はもう疲れたし、寝ることにしよう。

 家具は電気、カーテン、布団だけの部屋で、僕は静寂に包まれながら眠りに落ちた。

6:曰く ◆9/wA:2014/03/04(火) 19:59 ID:Umg


 翌朝、目が覚めると僕の顔の前にぶらりと糸電話がぶら下がっていた。
 昨日は鍵をかけて寝たはずなのでもちろん誰も入れないはずだが、
昨日糸が切れたはずのそれは今日もかわらずぶら下がっている。
 それは元々この物件を借りた理由であり、僕は少年のように心を躍らせた。

「おはよう、蜘蛛」

 僕らしくもなく、嬉しそうに挨拶をしてみる。
 友達もいない、家族とはそういった関係でない僕にとってはそれは
とても暖かい行為だった。
 友達でも家族でもない、他人だからこそ出来る事でもある。

「おはよう、君は早起きさんなんだね」

「え? ごめん、時計なくって。今、何時? 」

「朝六時だよ。ドアを開けてごらん。昨日、君の事を104号室の外国人に話したら君にもご飯を作るって喜んでいたからさ」

「……ドア? 」

「大丈夫、すごく美味しいから」

 そんな怪しい紙コップ越しの声に、僕は騙されたとおもって廊下を歩いた。
 ドアを、静かに、静かに開く。

 朝になりきれていないのか、怪しい空の色が視界に広がる。まるで朝ではなく逢魔時だ。
 足元を見る。
 丁度、ドアにぶつからない位置にお盆がぽつねんと置いてあった。
 マリメッコ柄の派手なお盆には和食らしきご飯が並んでいる。 ……見るからに怪しい。

 僕はお盆をそっと持ち上げて、また静かに静かにドアを閉めた。
 灰色の床を歩いて、糸電話の前にお盆を置く。

「ほんとにあった」

「おいしいよ」

 優しい声に諭されて、もう一度床に座ってからお盆を眺めた。

 白地に赤い大きな花の散った、マリメッコのお盆に食欲が失せそうな
スカイブルーの皿が行儀よく並べられている。
 ピンク色の焼きジャケはいい具合に焼けているし、生卵は黄色を越してオレンジ色だ。
味のりに納豆までついてきている。味噌汁の具材は大根、ほうれん草、油揚げだろうか。
 本当に美味しそうだ。(食器は除く)

「これ、なんでくれるの? 」

「かれ、被害妄想信者だからだよ。誰かに優しくしていないと、自分を嫌ってくると思っているからさ。」

「そうなんだ」

 割り箸を手にしたことで気づく。何か小さな文字で、
割り箸の袋にメッセージが書いてある。

 “アレルギー ト,キライナモノ ハ アリマスカ”

 気の使い方は日本人顔負けだ。

「いただきます」


 恐る恐る、ご飯に手をつける。 ……美味しい。

7:曰く ◆9/wA:2014/03/04(火) 20:26 ID:Umg


 つたないのか汚いのか迷うところだが、一生懸命書いたであろう
その割り箸袋のメッセージを、また眺める。

「おいしいでしょ。インスタントじゃ生きていけない身体にされるでしょう? みんな。」

「……っは、ははっ。確かに、これは美味しい。」

 久しぶりに笑った。
 ご飯を平らげて、僕は早々にキャリーバックを漁った。
 ボールペンを取り出して、箸袋に返事を書く。

 “オイシカッタヨ、アリガトウ。”

 気づいてもらえるように、なるべく大きな文字で書いた。
 お盆に食器を全て乗せて、玄関先に置いた。
 ……お昼には読んでくれるだろうか?

「ねえ、蜘蛛。此処の住民、他にはどんな人が居るんだ? 」

「おやまあ、君、厳禁ね? 昨日は興味ないと言ったくせに、少し優しくされただけで。」

「……そうだね。」

「嘘、ウソ、うそ! 教えてあげるよ! せめて、今日関わる人物くらいさ」

「……僕、蜘蛛以外とも関わるの?」

「そりゃ、まあ…… じゃないと君、此処から“出て”生活しなきゃいけないわけだし。此処の人はみんな曰くつきだけど、おせっかいなんだ。」


 此処を、“出て”。
 その言葉には恐らく、買い物や仕事、挨拶などのことであろう。
 スーパーヒッキーの僕には到底、無理な話だ。

「でも、どうやって関わるのさ。僕は他の住民の事なんて知らないし。」

「お風呂場に行ってごらん」

 そう言われて風呂場に行けば、シャワーカーテンのついた風呂が静かにそこにいた。
 なんなんだろう…… そう思いながらシャワーカーテンを引くと
 真っ赤な文字でこう書かれていた。

 “ようこそ、私たちのアパルトマン! 109号室少女”

 一瞬血かと思って目を見開いたが、それはもっと粘着質で
 そう……何かやわらかい粘土の様な赤いものが壁にべったりとくっついていた。

 部屋に戻って蜘蛛にアレはなんだと尋ねると、「口紅だよ」と答えられた。

「どっかの魔女っ子に憧れてるんだってさ。 は、はっ、は」

 変な笑い声である。

「どうやって書いたんだ? 」

「内緒で方法を教えてあげたのさ。此処の住人はみんなそう、そういった内緒のツールを持っているんだ。」

 僕は胡散臭さ100%の彼に、109号室の少女についてを語られた。

8:曰く ◆9/wA:2014/03/04(火) 20:33 ID:Umg


本日はココマデ。
読んでくださった方、もし居ましたらありがとうございました。
私の拙い文を読んでくださり感謝です。


書き込む 最新10 サイトマップ