´・ω・`短編集 〜明日〜

葉っぱ天国 > 小説 > スレ一覧 [書き込む] Twitter シェアする? ▼下へ
1:とかげ◆zA:2014/05/18(日) 10:40 ID:ffE

小説を書こうとスレを立てるものの、毎回挫折する駄作者・とかげです。
今までひとつの作品しか書こうとしか思っていなかったので、今回は短編集にしようと、視野を広げてみました。

感想・ご意見はご自由に。
文句があるなら喧嘩板でどーぞ。

テーマは『明日』です。

すた〜と(´・ω・`)

2:とかげ◆zA:2014/05/18(日) 10:54 ID:ffE

『にらめっこ 1』

 私は、小さい頃にらめっこが大好きだった。
 でも、今は好きじゃない。というより、どうでもいい。私は今中学生で、にらめっこなんていう子供がやる遊び、好きなわけがない。
 だけど、幼馴染みの健ちゃんは、よくクラスの男子とにらめっこしている。いつもいつも、楽しそうに。何が面白いのか、私には分からない。
「おーい、実希。にらめっこしようぜ」
「や、やだよ。そんな遊び・・・」
 健ちゃんは、よく私をにらめっこに誘う。それはなぜだか、分からない。
 誘われるたびに私は断るけれど、健ちゃんは昔からめげない子で、飽きるまで誘ってくる。そこが、健ちゃんの良いところなんだけどね。
 でも、おかしいんだ。
 私は昔っから暗い子で、健ちゃんとは正反対。なのに健ちゃんは、私と一緒に帰るし、行きも同じだ。
 明るくって、元気で、優しい健ちゃん・・・。小さい頃から大好きで、やっぱりずっと一緒にいたけど、私なんかと釣り合うはずがない。
 それに最近、なんだか分からないことだらけなんだ。

3:rumia:2014/05/18(日) 11:32 ID:Gas

あの……コメントしてもよろしいでしょうか? rumiaと申します。
 読んでいてなんというか、むずかゆくなる冒頭ですね。
私と健ちゃんの友達以上、恋人未満みたいな関係が……(/ω\*)
 続き楽しみにしてます。失礼しました。

4:とかげ◆zA:2014/05/18(日) 16:06 ID:ffE

>>3
コメントありがとうございます。

本当ですか!嬉しいです。
おかげで、続きも頑張れそうです。
ありがとうございます。

5:とかげ◆zA:2014/05/18(日) 16:20 ID:ffE

にらめっこ 2

 昼休み、私は友達の里沙と話していた。
「いいよねえ、古山くん」
「え? なにが?」
 古山くんとは、健ちゃん__古山 健斗のことである。
「実希はいつも古山くんと居られて、いいなあ。古山くん、すごく面白いし、女子からも人気あるんだよ」
「ふうん・・・」
あの健ちゃんが、女子から人気あるなんて、ちょっとびっくりだ。でも、なんか分かる気がする。ずっと、ずっと健ちゃんを見てきたから。それに、私も健ちゃんのことが、『好き』、なのかもしれない。
「どうせ、私なんて・・・」
 気がつくと、私はつぶやいていた。
「実希、なにか言った?」
「あっ、ごめん。なんでもないよ」
里沙は不思議そうにしていたけれど、心配をかけたくないし、なんだか嫌だったから、嘘をついた。でも、その嘘も、本当はどこか胸が苦しくなった。

6:とかげ◆zA:2014/05/19(月) 16:49 ID:ffE

にらめっこ <3>

 健ちゃんとの出会いは、14年前。
 私のお母さんの出産時の担当が、ちょうど健ちゃんのお母さんだったのだ。仲が良くなった二人は、産まれた私と健ちゃんを、対面させた。お母さんの話によると、すぐに打ち解けたとか。
 私が健ちゃんを『健ちゃん』と呼び始めたのは、多分5歳の頃。
 幼稚園は違ったけれど、それでも頻繁に会っていたし、家族ってぐらいに仲が良かった。健ちゃんがうちの家に預けられたり、お互い泊まり合ったりっていうのも、結構あった。
 健ちゃんは、小さい頃なら私のことを『実希ちゃん』って呼んでいたけど、時が経つにつれて、ちゃん付けしなくなった。多分、当然のことなんだろう。でも、私はできない。健ちゃんを、『古山くん』とか、『健斗』、『健斗くん』なんていう風に呼ぶことが。『健ちゃん』なんて呼び方が子供っぽいのは、分かってる。分かってるけど、できないんだ。だって、何かが変わってしまいそうだから。

7:とかげ◆zA:2014/05/21(水) 17:34 ID:ffE

にらめっこ<4>

 家に帰ってすぐ、私は健ちゃんにメールをした。
『健ちゃんなんて呼び方、もう嫌だよね?ごめんね。子供っぽくて・・・』
1分くらいで、メールはすぐに返ってきた。
『はあ?なんで?俺、別に嫌じゃないけど』
嬉しかった。そんな風に思ってくれて、嬉しかった。たとえそれが、私を気遣うための、嘘だとしても。
『そっか。じゃあ、また明日学校でね(*^_^*)』
 私はそう返信すると、なんだか何もしたくなくなり、ベッドにごろんと寝っ転がって、目を閉じた。
 健ちゃん。いつからだろう__私が健ちゃんを、恋愛対象として見始めた__それは。もちろん、正確には分からない。気づいたら、だったんだろうな。多分、11歳ぐらいの頃だったと思うけれど。どうして好きになったのかも、未だに分からない。ただ単に、私が愛されたいだけなのかもしれない。

8:とかげ◆zA:2014/05/22(木) 10:07 ID:ffE

にらめっこ<5>

 うとうとと、眠りに入ろうとしていたその時。携帯の着信音が鳴った。誰からだろう? 体を起こして確認してみると、健ちゃんからだった。
『今ヒマ?』
 携帯の画面には、そう映し出されている。
 私と、何かしようと誘っている文章だった。こんな風に聞かれたのはずいぶん久しぶりで、どこか懐かしい気がした。
 ・・・健ちゃんは、今も私を友達だと思っているのだろうか。仲が良い幼馴染みだと思っているのだろうか。それとも・・・。
 __私、しなくちゃいけないことがあるのかもしれない。

9:とかげ◆zA:2014/05/23(金) 16:59 ID:ffE

にらめっこ<6>

『私は、健ちゃんのことが好きです』。
 そう言わなくては、そう伝えなくてはならないのかもしれない。メールで? いや、ちゃんと、私の口から、私の言葉で言わなくちゃいけない。きっと、それじゃ伝わらないから。
 だけれど、こんな暗くて、ネガティブで、可愛くなくて、女の子らしさの欠片もない私なんかが、人気者の健ちゃんに告白して、良いのだろうか? そうだ。きっとフラれるに決まっている。だって私はモテないし、健ちゃんだって、それを知っているはずだ。昔からの幼馴染み、友達だったから付き合ってくれているだけで、本当は、私に対する好意だって、ないのかもしれない。でも、健ちゃんはそんな私とずっと一緒にいてくれている。
 だから、嫌なんだ。何が嫌って__フラれて、気まずくなるのが嫌なだけ。

10:rumia:2014/05/23(金) 23:47 ID:Gas

 もどかしいですね……。
好きが止まらないから踏み出したい、でも振られたらどれだけ痛いだろう……。
 そんな葛藤が感じられます。
 

11:とかげ◆zA:2014/05/25(日) 14:39 ID:ffE

>>10
コメントありがとうございます。
そんな風に感じてくださって、とても嬉しいです。

12:とかげ◆zA:2014/05/25(日) 14:59 ID:ffE

にらめっこ<7>

『実希って、いつも暗いよな』。『実希ちゃん、もっと努力した方が良いよ』。
 今までに言われてきた、私に対する言葉の数々。・・・分かってるよ。でも、明るくも可愛くもなれないんだよ。努力だって、・・・多分・・・した。だけど、私にはとても無理。努力するだけ無駄な気がする。そう思えてならない。もし、私が努力して健ちゃんと付き合えるなら、私はよろこんで何でもする。
 何でか急に悲しくなって、私は携帯を手に取り、里沙にメールをした。
『今度の土曜日、どこか出掛けない?』
送信ボタンを押した瞬間、またメールの着信音が鳴った。
『さっきのメール見た? 今ヒマ?』
 健ちゃんからだ。そういえば、さっきメールが着たのを、すっかり忘れていた。
『うん、ヒマだよ(*^^*)』
『マジで。じゃあ明日の放課後、うち来て。』
『分かった〜。また明日ね。』
気が付くと、健ちゃんといつものように会話していた。私は健ちゃんと話すのが好きなんだと、改めてそう思う。

13:とかげ◆zA:2014/05/26(月) 14:23 ID:ffE

にらめっこ<8>

 私はベッドに座り直し、受信メールの一覧を見た。健ちゃん、健ちゃん、健ちゃん、健ちゃん、里沙、お母さん、里沙、里沙・・・。健ちゃんからのメールは、11件しかなかった。携帯を買ってもらってから、半年。私、健ちゃんと全然メールしてなかったんだ・・・。
『健斗さあ、実希ちゃんとやっとメールできるって、喜んでたよ』。
 ちょっと前に、健ちゃんのお母さんから言われたことを思い出す。私が悪いのかもしれない。健ちゃんに甘えていたのかもしれない。自分から踏み出すことを、ずっと恐れていて。だから、あの時も。だから、いつも。だから、毎回毎回。

14:とかげ◆zA:2014/05/28(水) 17:02 ID:ffE

にらめっこ<9>

『うちの子って、すぐ自分を責めて、いつもネガティブ思考なんです』。
 去年、いや、毎年家庭訪問で、お母さんにそう言われているのを、私は知っている。分かってる。お母さんが正しいんだ。だってそうしないと、辻褄が合わないんだもの。だけど、そう、昔は違った。時が経つにつれて、私はどんどん変わっていった。それ以上に、健ちゃんはますます大人っぽくなっていく。だから、私は恥ずかしい。
 しばらくぼーっとしていると、里沙から返信メールが着た。今度の土曜__明後日は予定がないから、出掛けて良いそうだ。

 次の日、私はいつも通りに学校に行き、いつも通りに過ごした。
 健ちゃんとはほとんど話さずにいたし、里沙としゃべっていてばかりだった。
 ただ、昨日色々と考え事をしていたせいか寝不足で、授業中は寝ていたりした。おかげで、先生にも怒られた。そのとき、健ちゃんに真顔で見られていたのが、なんだか心に引っ掛かる。

15:とかげ◆zA:2014/05/29(木) 18:18 ID:ffE

にらめっこ<10>

 帰りのホームルームが終わり、生徒がいっせいに部室や家へ向かおうとする中、私は教室の向かいの廊下の壁へ寄っ掛かり、健ちゃんを待った。しばらくすると、友達と話している健ちゃんが、教室から出て来た。
「それじゃ、また明日」
健ちゃんは、その友達に手を振ると、私の方へ歩いて来た。
「じゃ、行く?」
どこか微妙な表情をした健ちゃんは、私の目をじっと見つめている。なんだか恥ずかしくなり、私は目をそらした。
 私と健ちゃんは無言で学校を出て、そこからしばらく歩いた所にある、人気のない公園へ行った。
 まだ3時頃なのに、誰もいない。私と健ちゃん、2人だけだ。

16:とかげ◆zA:2014/05/30(金) 17:06 ID:ffE

にらめっこ<11>

 私は健ちゃんの後ろに立って歩いていたのだけれど、やっぱり、健ちゃんはなにも言わない。健ちゃんが立ち止まっているから、しばらく空をぼーっと眺めていたら、いつの間にか、健ちゃんがブランコに座っていた。3つ椅子が並んでいたのだが、健ちゃんはそのうちの、右端に座っていた。なんだか微妙な雰囲気だったので、私は左端に座った。

17:とかげ◆zA:2014/05/30(金) 17:18 ID:ffE

にらめっこ<12>

 何を話せばいいのか分からなかったが、ふと、頭によぎったことを口に出してみた。
「あのさあ、昨日、メールくれたよね。『うち来て』って書いてあったのに、なんで公園に来たの? っていうか時間空いてるか聞いたんなら、昨日会えばよかったのに__」
「お前が、わざわざ俺のこと待ってたんだろ」
・・・確かにそうだ。でも、そんなの答えになっていない気がする。私が言いたいのは、そうじゃなくって・・・。
「あと、家よりこっちの方が、良いと思ったんだよ」
突然そう言われたが、意味がよく分からなかった。健ちゃんが言っているのは、どういう『良さ』なのだろう? 家よりもマシなのか、家よりもずっと良いのか。昔から思っていたけど、健ちゃんは不思議な人だ。

18:とかげ◆zA:2014/05/31(土) 16:05 ID:ffE

にらめっこ<13>

「ここの公園、人少ないし」
・・・分からない。健ちゃんの気持ちが、分からない。さっきから、何がしたいのだろう?
 沈黙の中、私は足を伸ばして、キィ、とブランコをこいでみた。涼しい風が肌に当たり、とても気持ちが良い。しかし、日差しが強いからか、汗をかいてしまった。そういえば、ずっと前にここに来たんだったっけ・・・。

 __そう、それは日差しの強い、梅雨に入る前の出来事。
 まだ10歳だった私達は、アイスを食べながら、ブランコに座っていた。まだ5月の下旬だというのに、じっとりと汗をかいて、まるで夏のような日だった。
『健ちゃん、口に入れたままこいだら、危ないよ』。そう言って注意する私。
 今のようなぎこちなさなんて、全くなかったし、私の大好きだったにらめっこも、その頃はまだしていたはずだ。

19:とかげ◆zA:2014/05/31(土) 16:16 ID:ffE

にらめっこ<14>

 にらめっこの楽しさが、今となっては全く分からない。むしろ、つまらないと感じる。
 どうして? どうして私は、こんなにもひねくれてしまったのだろう?
 本当は、恐いんだ。大切な人を、ずっと大切にしてきた人を、失ってしまうかもしれないと。絶対にそんなはずないと思うのに、私のひねくれた場所が、言うことを聞かないでいる。本当は、好きでいるのも辛いんだ。

「__なあ、暑くね? アイス食おうぜ」
「え?」
 私は、ハッと我に返った。
 何してるんだろう。また、くだらないことで悩んでいる、そんな自分がいる。
 とにかく気分転換がしたくて、私はこう言った。
「じゃあ、そこのコンビニでアイス買ってくる」

20:初葉@ういは◆Go:2014/05/31(土) 23:24 ID:Et.

とかげ〜(。・ω・。)ノ!!

新スレおめたん•。:.゚ヽ(´∀`。)ノ゚.:。

て・ゆ・う・か上手すぎでしょ!(((゜Д゜)))!?
びっくりしたわ*

もう、、初めの文で、とかげの小説の世界に引き込まれていったよ!
テーマ『明日』なんて。。。素敵♪

21:とかげ◆zA:2014/06/02(月) 09:32 ID:ffE

>>20
ういぱっちゃんやあ(。ノ´ω`)ノww
ありがとう(^^)

全然上手くないよww
でも、ありがとう(。^^。)
これからも頑張りまっする〜

22:とかげ◆zA:2014/06/02(月) 09:42 ID:ffE

にらめっこ<15>

 財布だけを持って行き、小走りで公園を飛び出した。ちょうど、公園を出たすぐ目の前にコンビニがあったが、私はそれを無視し、大通りに出たところの、コンビニへ入った。
 店内は涼しく、冷房が効いていた。
 さっきまでの出来事が、まるで嘘のようだ。あんなに暑かったのに、この涼しさに飲み込まれて、なんだか気を失ってしまいそうだった。
「おいどけ、ガキ」
 突然、ドスの効いた声が聞こえ、私は身を震わせた。
「出入り口の真ん前で、邪魔なんだよ」
「ごっ、ごめんなさい」
私ってば、何してるんだろう。ドアの前に立って、何ぼーっとしてたんだろう。スッ、と身を出入り口から避けると、黒いタンクトップを着た派手な男の人は、舌打ちをしながら店から出ていった。

23:とかげ◆zA:2014/06/03(火) 17:23 ID:ffE

にらめっこ<16>

 考え事をしていたからか、特に恐いとは感じなかった。いや、考え事と称して、本当は私は、何も考えちゃいない。同じことを、ただぐるぐると、追いまわしているだけなんだ。さっきだって、何かを考えているようで、ぼーっとつっ立っていただけだ。
 ・・・それにしても、どんなアイスにしようかなあ・・・。
 アイス売り場には、たくさんの種類のアイスが並んでいた。おまけに、いっそうひんやりと涼しく、むしろ寒いぐらいだ。

24:とかげ◆zA:2014/06/06(金) 16:52 ID:ffE

にらめっこ<17>

 そういえばあの日、健ちゃんはソーダ味のアイスを食べていたっけ。美味しそうに食べていたなあ。そんなことを思い出していると、なんだか私も、そのアイスが食べたくなってきた。
 私は目立つパッケージのアイスを二袋つまみ上げ、レジへ持って行った。
「380円になります」
そう言われ、慌てて財布のチャックを開けて、500円を差し出すと、「お釣りの410円になります。ありがとうございました」と、アイスの入った袋を渡された。
 今頃健ちゃん、待ちくたびれてるかな。__そう思うと、なんだかにやっとしてしまう。私は、どこかおかしいのかもしれない。

25:とかげ◆zA:2014/06/07(土) 15:50 ID:ffE

にらめっこ<18>

 袋をガサガサと揺らしながら店を出ると、太陽のまぶしさで、思わず目をつぶった。おまけに暑さで、とけてしまいそうだ。
 私は元来た道をたどり、公園へと急いだ。公園に着くと、健ちゃんはさっきと変わらず、ブランコに座っている。
 健ちゃんの所まで行くと、私は、ガサッと袋を差し出した。
「アイス、買ってきたよ」
「あ、サンキュー」
思っていたよりもそっけなくて、ちょっと残念に思う。もし、これが健ちゃんの大好きな人なんだとしたら、きっと健ちゃんは、まぶしいくらいの笑顔で、ありがとう、と言ってくれるだろう。そう思うと、なんだか胸が苦しい。

26:とかげ◆4lKzA:2014/06/08(日) 10:14 ID:ffE

にらめっこ<19>

 健ちゃんのことを想うたびに、胸が苦しくなる。私じゃ、駄目なのかと。私は、釣り合っていないんじゃないかと。私と健ちゃんはただの幼馴染みで、一生恋愛関係を築けないんじゃないかと。
「何、ぼーっとしてんの?」
 突然そう聞こえ、私はビクッと、体を震わせた。
「・・・何でもないよ」
「ふーん」
なんだか、愛想のない返事だ。
「アイス、取らないの?」
「あ、いいの? てかこれ、昔食ったアイスじゃん。実希、覚えてたんだ」
「・・・__え?」
 心臓が、鼓動が、ものすごい早さで高鳴る。胸に手を当てなくても、十分分かる。その時の健ちゃんの表情といったら、信じられないくらいはっきりと、鮮やかに映っていた。何で。何で、そんな風に笑うの?
「・・・違うよ。たまたま、取っただけだから」

27:とかげ◆4lKzA:2014/06/09(月) 17:12 ID:ffE

にらめっこ<10>

「・・・・・・」「・・・・・・」
何となく、微妙な空気だ。私の一言が、いけなかったのだろうか。
「なんか、ごめん」
 私はそう言い、アイスが一袋入ったコンビニ袋を持ちながら、ブランコの椅子に座った。・・・それにしても、空気が重たい。何とかしないと。
 はあ__、と深く息を吐いて、私はこう言う。「ねえ、さっきの話の続きだけど」
横を見てみると、健ちゃんはなんだか、渋い顔をしている。しばらく答えを待ってみると、こう返ってきた。
「この公園なら話しやすいと思ったし、遅い時間になるより、明日にした方が良いと思ったんだ」
健ちゃんはこっちに向くことなく、ただ淡々とそう言った。それは、特に意味のあるものじゃなかったけれど、多分・・・自分で言うのも変だけど、“私”のことを考えてくれている、そういうことだと思う。でも、自分でそんな風に思うのは、なんだか恥ずかしい気がする。

28:とかげ◆4lKzA:2014/06/11(水) 16:57 ID:ffE

>>27
にらめっこ<10>は、
にらめっこ<20>の間違いです。
すみません。

*

「・・・ありがとう」
 自分でそう思うことの恥ずかしさと、健ちゃんが気遣ってくれたという恥ずかしさで、なんだか黙っていられなかった。健ちゃんも同じように、照れ臭そうにしていたけれど、彼は何も言わなかった。
 それと、人通りの少ない公園の中でも、この公園を健ちゃんが選んだ理由。それは、私と健ちゃんが幼い頃、ここに来たことがあるからだと、私はそう感じる。
「・・・アイス、食べよ?」
 やっぱり、その場の空気には流れさえなかったが、このままではいけないと思い、私はこう言った。それに、アイスも溶けちゃうし。
 健ちゃんはこくり、とゆっくりうなずくと、アイスの袋のはじっこを、ペロッと破いた。

29:とかげ◆4lKzA:2014/06/14(土) 16:55 ID:ffE

にらめっこ<22>

「うまい」隣で、シャクシャクとアイスを食べる音が聞こえる。
私も早く食べよう、そう思い、袋を開けた。ひんやりとした冷気が溢れてきて、心地良かった。氷の粒がまぶされた水色のアイスは、なんだか久しぶりに見るような気がする。中学生になってから、アイスを食べる暇なんてなかったからだろう、きっと。多分、それも言い訳だろうけど。少しぼーっとしていたら、アイスのはじっこからツーッと汁が流れてきたので、私は上の方のとんがった部分を口にくわえ、かじった。美味しかった。冷たくて、甘くて、美味しくて。ソーダの味がした。
「うまいね」どこかで聞いた言葉だった。つい、さっき、健ちゃんが言った言葉だ。
「うん、うまいね」健ちゃんもそう言った。

30:rumia:2014/06/14(土) 19:00 ID:KCM

 お久しぶりです。
いや、やっぱり会話で進んでゆく恋愛ものもいいですけど、
追憶、相手への憧れからの自己嫌悪からの憧れも、哀愁があっていいですね〜。
 はたして、実希は健ちゃんから『肯定』されるのでしょうか……?
続き待ってます、では。

31:とかげ◆4lKzA:2014/06/16(月) 13:55 ID:ffE

>>30
お久しぶりですね。
いつもコメントありがとうございます。

色々お考えになられているようで、嬉しく思います。
そろそろラストが近づいていますが、引き続き応援よろしくです。

32:とかげ◆4lKzA:2014/06/16(月) 14:06 ID:ffE

にらめっこ<23>

「このアイス、また今度食おうぜ」
そう言う健ちゃんは、なんだかとても嬉しそうだった。
 しばらくしてアイスを食べ終わり、ブランコをゆっくりこいでいると、健ちゃんは携帯を見ながら、何かを考えているようだった。気難しそうに顔をしかめ、時おり私に背を向けて、コソコソとしている。不思議に思った私は、携帯を覗こうと、健ちゃんの前まで回った。
「何してるの?」
「うわっ!」
私に気づいた健ちゃんは、ひどくびっくりして、顔を真っ赤にしている。なんだろうなあ、と、携帯に目をやると、健ちゃんは鏡を見ていた(“鏡”というのは、携帯の鏡のアプリケーション)。
「・・・びっくりするじゃん」
健ちゃんはそう言い、携帯の電源を切った。
「ごめん」
なぜそんなことで謝らなければないないのかと思ったが、一応そう言っておいた。でも、どうして鏡なんか見る必要があるのだろう?相変わらず健ちゃんは、顔を真っ赤にしている。

33:とかげ◆4lKzA:2014/06/17(火) 17:04 ID:ffE

にらめっこ<24>

 10分ほど経っただろうか。
 暇で暇でしょうがなく、携帯のゲームをしていると、突然健ちゃんから「こっち向いて」と言われた。言われた通り、健ちゃんの方へ顔を向けると__
「・・・ぷっ」思わず、吹き出した。
 健ちゃんは、とても変なカオをしていた。眉毛はぐにゃっと曲がり、顔もくしゃくしゃ。目は手で引っ張ったので細く、口は突き出ている。そう、それはまるで・・・
「なあ、どう? 面白い」
「う、うん」
なんとなく、そう答えるのに戸惑ったが、確かに面白かったので、うんと答えた。すると、健ちゃんは急に元に顔に戻り、にっこりと笑った。嬉しかったのだろうか。
 ふと、さっきまでの顔を思い出してみると、なんだかおかしくなって、あははは、と声を出して笑ってしまった。

34:とかげ◆4lKzA:2014/06/18(水) 17:00 ID:ffE

「そんなに笑うことないだろ」健ちゃんは、不機嫌そうに言った。それもなんだかおかしくって、私余計にあはは、と笑った。こんなに笑ったのは、久しぶりだ。
「ごめんごめん。でも、本当面白くて・・・」
そう言うと、健ちゃんはまた、元のにっこり顔に戻った。というより、その嬉しそうなのがばれないよう、もじもじしているようだ。でも、そんな健ちゃんが、なんだかかわいいと思ってしまった。
 すると、健ちゃんは急に真顔になり、低い声で話し始めた。
「・・・あの、俺さ。ずっと、思ってたんだよ。どうしたら、お前を笑わせられるのか。ほら、実希さあ、中学入ってから、すごい暗くなっただろ? おばさんにも聞いてみたけど、おばさんも分からないって言ってて。だから、俺がなんとかしないと駄目だって、思ったんだ。でも、無理だって諦めかけてた。昔、実希とよくにらめっこやってたから、その・・・小学生のときにもまだしてたし、俺も、子供っぽいけどさ、実希の影響で、好きになってたから。だから、友達にも誘ってたんだ。それで、ええと・・・。つまりさ、今の実希でも、にらめっこなら笑わせられると、元に戻ると、思ったんだよ。でも、お前すぐに断るだろ? そのとき、お前の気持ちなんて分からなくて。ごめん。だけど、今日みたいにこうすれば、無理やりでも笑わせられると思って・・・。本当ごめん」

35:とかげ◆4lKzA:2014/06/21(土) 09:41 ID:ffE

にらめっこ<26>

 私は、しばらくじっとしていた。なんて反応すればいいのか分からなかったし、まだ頭の中で、整理がついていなかったから。
 健ちゃんが、にらめっこやろう、と、私を誘っていた理由。__ああ、そうだったんだ。やっと、今分かった。というより、やっと理解ができた。
 自惚れても、いいのだろうか。
 でも、今なら、多分言える。「・・・あの、健ちゃん」ジリジリと陽が照りつけてくる中、私は少しどきどきしながら、やっと声を発した。健ちゃんは声に気づいて、こっちを向く。
「・・・好きです」

36:とかげ◆4lKzA:2014/06/22(日) 09:53 ID:ffE

にらめっこ<27>

 まだ夏にすらなっていないのに、その暑さで、頭がくらっとなる。喉がからからだ。飲み物も買ってくればよかったなあ、と、今さら思う。
 __健ちゃんは、とてもおどろいた顔をしている。ああ、やっぱり、駄目だったのかな。やっぱり、勘違いなのかな。そう思うと私は、急に恥ずかしくなり、うつむいた。
「あの、さあ」
うつむいた私は、声をかけられた。顔を上げると、じっと動かない、健ちゃんがいた。なぜか真顔だった。
「・・・俺も」
そう、聞こえた気がする。

37:とかげ◆4lKzA:2014/06/23(月) 18:10 ID:ffE

にらめっこ<28>

『いま、なんて?』私はそう聞きたかった。でも、それをぐっとこらえて、自分を信じて、健ちゃんを信じて、こう言った。
「付き合ってください」
十数年生きてきて、この言葉を、生まれて初めて言った。
 不思議なものだ。相手からの答えを聞いてからじゃないと、すんなり、そういう風には、言えないんだ。
 健ちゃんの顔が、たちまち真っ赤になる。赤くなったり真顔になったり、健ちゃんは面白い。ただ、私も気づいていないだけで、そうなのかもしれない。
 __健ちゃん。
 初めて好きになって、初めて、告白した人。

38:とかげ◆4lKzA:2014/06/24(火) 17:28 ID:ffE

にらめっこ<29>

「よろしくお願いします」
 顔が真っ赤なまま、だけど真剣な顔で、健ちゃんは言った。それを見て、ここまで真剣な健ちゃんの顔を、今まで私は見たことがなかったから、ついびっくりしてしまった。
 その後、悩みに悩んだ結果、ようやく出てきた言葉は、「・・・うん。そろそろ帰らない? 後でメールするね」、である。

 私は家に帰り、そのとき言ってしまった言葉を、後悔した。健ちゃんは、本当に本当に、真剣によろしくお願いします、と言ったのに、どうして私はあのとき、「そろそろ帰らない? 後でメールするね」、などと言ってしまったのだろう。
 ただ、もう私と健ちゃんは、一応、恋人同士なのだ。
 健ちゃんも、私が健ちゃんを好きなのと同じように、私のことを好きなのだ。あの時、今なら言える、と踏み込んだが、今になって思うと、あの時以上に嬉しい。きっと、ようやく冷静になれたからだ。

39:とかげ◆4lKzA:2014/06/24(火) 17:44 ID:ffE

にらめっこ<30>

 私は、健ちゃんにメールをしなければならないことを、思い出した。ただ、なんて送ればいいんだろう? 『今、家着いたよ』、とか、そういう内容の方がいいのか、それよりも『ありがとう』、とか、そんなのを送った方がいいのだろうか。悩んだけれど、私はこう送った。

『今、家着いたよ。
 今日はありがとう。本当に嬉しかった。
 また、明日学校で会おうね!

             大好き』

どきどきしながら打って、どきどきしながら待った。しばらくしたら、携帯の着信音が鳴った。無論、相手は健ちゃん。携帯の画面には、こう映し出されている。

『俺もさっき着いた。
 全然話したりできなくて、ごめん。
 明日はいっぱい話して、にらめっこもしようよ!

  俺も、実希のことが大好きです』

嬉しかった。嬉しくて、涙が出そうなくらい。
 明日、健ちゃんといっぱい話したい。にらめっこもしたい。放課後、またあの公園に行きたい。
 きっと明日からは、今までよりもずっと、楽しい毎日になる気がする。

        
               Fin.

40:とかげ◆4lKzA:2014/06/24(火) 17:53 ID:ffE

<にらめっこ> あとがき


読んでくださった方々、ありがとうございました!

このスレに関しては、<にらめっこ>が初の作品です。
実希の感情をたくさん表現できたのではないのかな、と感じます。
ただ、最後辺りの展開が早すぎたのかなあ、と思います。
他にも、無理矢理つじつまを合わせた部分などがありました。ごめんなさい。

個人的には、結構上手く書けたと思っています。
今まで書いた中で、一番感情を細かく表せたと思うので。。。

次回からは、<喧嘩上等>を書いていきます!
よろしくお願いします!

41:猫又◆Pw:2014/06/24(火) 22:54 ID:KCM


 こんにちは、とかげさん。
rumiaから改名しました。猫又です。(打ちにくいですからねrumia……半角だし)
 さて、『にらめっこ』最後まで読ませていただきましたが……面白かったです!

 不安だらけ、曇り空だった明日に暖かな日が差したような、そんなENDでしたね。
もっと一緒にいたいのに、また明日。そんな展開に引っ付くだけじゃない恋愛の切なさも感じました。
 次回作も期待……するとプレッシャーになるかもしれないので、気長に待ってます。
……では。

42:とかげ◆4lKzA:2014/06/29(日) 10:36 ID:ffE

>>41
猫又さん、こんにちは!

そんなところまでじっくり読んでくださって、ありがとうございます!
いつもコメントに助けられてました 笑

次回作も多少長くなるかもしれませんが、もし読んでくださるのなら、よろしくお願いします。

43:とかげ◆4lKzA:2014/06/29(日) 10:49 ID:ffE

喧嘩上等<1>

 辺りが、がやがやと騒がしい。黙っていれば、人の声しか聞こえない。小説を読んでいる私は、うっとおしくて仕方がなかった。
 もちろん、話したりするのは、悪いことではない。ただ、周りに迷惑をかけるような、やたらと大きい声で、ペチャクチャとしゃべり散らしているのが、私は気にくわないんだ。
 __が、そう思っているのもつかの間。突然、私はびしょ濡れになった。
 初めは、何が起こったのか、理解できなかった。が、すぐに事態を把握した。上から水が降ってきたのだ。・・・というよりも、誰かが私に水をかけた、その方が正しいだろう。
 気がつけば、辺りはしんと静まりかえっていた。あんなにうるさかったのに、物音さえ聞こえない。__ああ、そういうことか。
 小説は水に濡れてぐしょぐしょ。なんとか読める状態だ。それよりも、私の髪の毛は絡まり、制服も机もバッグも、私の身の回りの何もかもが、ひどい有り様になっている。

44:とかげ◆4lKzA:2014/06/30(月) 18:18 ID:ffE

喧嘩上等<2>

 クスクスと、周りから笑い声が聞こえてくる。まあ、こんなのは普段から慣れいてどうってことないのだけれど、さすがに腹が立つ。
 うつむいたまま辺りを見渡して(できる限りの範囲だけれど)みると、やっぱり、みんな笑っていた。その笑い方も人それぞれで、ニヤニヤと楽しむように笑う者、クスクスと友達と話しながら笑う者、今にも吹き出しそうに笑いをこらえている者・・・。しかし、どんな笑い方だろうと、みんなが私を馬鹿にしているのは、同じことだ。
「あれ、山田さん、もしかして泣いちゃった?」
 真後ろから、憎たらしい声が聞こえた。

45:とかげ◆4lKzA:2014/07/02(水) 17:41 ID:ffE

喧嘩上等<3>

 荻原 沙夜__私のクラスメイトであり、いわゆる『いじめ』のリーダーだ。どうしてかは分からないが、同じクラスになってから、周りの者を引き連れては、私に嫌がらせをしてくる。
「ねえ。泣いてるんでしょ?」
 また、辺りからクスクスと、小さな笑い声が聞こえてくる。
 本当に、本当に困ったものだ。
「泣いて、ないよ」私はそう言い、顔を上げた。後ろを見てみると、荻原 沙夜は私が泣いていないことにびっくりしたのか、目を見開いている。こんなことでは泣かないし、泣いてたまるか。
 他の人たちはもう飽きてしまったのか、ぞろぞろと、自分の机へと戻っているようだった。
 それがくやしかったのか知らないが、突然、「キャッ!」というあの女の悲鳴が、後ろの方から聞こえた。それに驚いた人たちが、なにやら、荻原 沙夜が泣いていると思ったのか、また私の机の周り__というよりも、荻原 沙夜の周りに集まってきた。泣いているらしいその本人は、ハンカチで顔を被い、しゃくり上げる真似をしている。もちろん、泣き真似なのだろうが、涙を出せないためか、ハンカチで顔を、わざと隠しているのだろう。そんな彼女に、無性に腹が立つ。

46:とかげ◆4lKzA:2014/07/05(土) 10:42 ID:ffE

喧嘩上等<4>

 また、教室がザワザワとし始める。
 どうせ、私が責められることになるのだろう。どう考えたって、この状況からして。それにしても、びしょびしょに濡れたいじめられっ子と泣き真似をしているいじめっ子とは、なかなかシュールな光景だ。
 そこでようやく、荻原 沙夜が口を開いた。「私、さっき、こいつに叩かれた。痛いよお」ヒックヒック、としゃくりあげる__真似をして__彼女は、周りに同情を求めていた。なにがなんでも、とにかく私を敵にしたいのだろう。
 私は水に濡れたままなので、だんだん寒くなってきた。エアコンが効いているせいもあってか、ますます肌寒い。それにこの、窓とドアをすっかり閉めてしまっている状態というのは、こいつらにとって、とても都合が良いのだろう。
 そこで誰かが一人、声を上げた。「お前山田、荻原のこと叩いて、泣かせたのかよ?!」
その言葉にハッと、何かを気づかされたように、みんなが急に目付きを変え、言いたい放題の、悪口大会が始まった。『キモい』『ブス』『ぶりっこ』『ダサい』『うざい』『最低』__たくさんの悪口が聞こえた。なかには、『死ね』という言葉まで出てきた。多分、多分この人達の目的は、『“私”を泣かせること』なんだと、今、初めて気がついた。

47:猫又◆Pw:2014/07/06(日) 12:11 ID:qaQ


こんにちは、猫又です。
今度はいじめ系っぽい入り方ですね。
 喧嘩上等というタイトルから主題は出会いと打破といったところでしょうか……。
まぁ、私の勝手な予想ですがw
 兎にも角にも、応援してます! では、

48:とかげ◆4lKzA:2014/07/06(日) 16:10 ID:ffE

>>47
こんにちは。
コメントありがとうございます。

いじめからのスタートですが、ここからどんどん、展開が変わっていきます。
この作品は前にもここで書いていたものなのですが、結構気に入っている話なので、ぜひ楽しんで読んでもらいたいです。

応援ありがとうございます、
頑張りますm(_ _)m

49:とかげ◆4lKzA:2014/07/06(日) 16:51 ID:ffE

にらめっこ<5>

 私は、黙って聞いていた。ここで反論したとしても、きっとつまらないだろうし。ただ、荻原 沙夜とみんなの顔がだんだんと笑みに変わってゆくのが、やけにむかつく。
 ずっとこの場にいてもしょうがないし、いい加減身震いしそうなほどまでに寒くなってきたので、トイレでジャージに着替えようと、私は立ち上がった。
 ふと、後ろを見てみると、私が逃げようとしたと思ったのか、荻原 沙夜が目をハッと見開いた。焦っているようにも見える。それに気づいたからなのだろうか、私の真ん前に立っている男子が、急に真剣な表情になった。何を思ったのかは分からないが、とくかくここを出て着替えようと思っていたので、その横を通り抜けようとした__が、鼓膜が破れそうなくらいの怒鳴り声が耳元で聞こえた。『山田 美苗! 逃げるな!』__多分、そう言っていたと思う。声の聞こえた方を見てみると、ちょうどそいつの拳が、私の顔面に向かっている頃だった。

50:とかげ◆4lKzA:2014/07/06(日) 17:02 ID:ffE

にらめっこ<6>

「__・・・喧嘩上等・・・・・・!」
 一か八かだった。
 その瞬間の出来事だったので、よく分からなかった。が、私は飛んできた拳を右手で受け止め、『喧嘩上等』と、強くつぶやいたのだ。
 多分、その場にいた全員が、驚いていると思う。なんとなくもやもやとした、誰も一言も声を発しない空気が、それを物語っていた。
 私は、ずっと拳を握っていた。何と言えばいい? 黙って、ここを出ればいいのか? しんとした、緊張感が漂うこの雰囲気は、なんだか苦手だ。
 相手の様子はどうだろうと、拳の主の顔を見てみると、少し怯えているようだった。私のせいだろうか。それはとても都合が良かったので、私は右手をパッと離した。すると、奴は急にホッとした表情になり、小声で「ごめんなさい、ごめんなさい」と言ってきた。なんて正直な奴なのだろう。

51:とかげ◆4lKzA:2014/07/06(日) 17:04 ID:ffE

>>49-50
うわああああ!!!!
ごめんなさい、「にらめっこ」じゃなくて「喧嘩上等」です!!

すんません・・・・orz

52:とかげ◆4lKzA:2014/07/10(木) 18:27 ID:ffE

喧嘩上等<7>

 ちらりと横に目をやると、荻原 沙夜はいかにもワナワナ、というふうに、苛立ちを見せつけていた。
 私は無意識にこくり、とうなずき、静かに教室を出た。
 冷房のせいか、頭が痛い。
 そこでふと、ジャージの入った袋を持ってくるのを忘れたことを思い出した。教室に取って来なければならない。またあの教室へ行くのかと思うと、なんだか憂鬱だ。
 教室のドアを開けると、途端に、ひやりとした空気が流れ込んできた。ふんわりと冷たくて、思わずゾクッとする。これが、今でなければいいと思った。頭が痛くて、気持ちよくなんて感じやしない。
 みんな、なぜか黙っていた。
 荻原 沙夜も、おとなしく机に座っていて、いつものような雰囲気ではない。さっきまでの態度は、いったいどうしたというのだろうか。
 私は、自分の机の横に掛かっている袋を手に取った。体の中に、じんわりと重みを感じた。
 さて、着替えなければ。

53:ミケ:2014/07/10(木) 19:42 ID:WkQ

どうもミケと申します。

文章上手いですね(文章下手な自分が言うセリフじゃないですけどw)

面白いです。頑張ってください。

54:とかげ◆4lKzA:2014/07/12(土) 15:18 ID:ffE

>>53
初めましてミケさん(o・ω・o)

全然上手くないですよ。
まだまだ未熟です。。。

ありがとうございます。
引き続きよろしくお願いします( ´ω ` )

55:とかげ◆4lKzA:2014/07/12(土) 15:32 ID:ffE

喧嘩上等<8>

 私は、トイレの個室に入った。
 カチャリと鍵を閉め、制服のボタンをはずす。
(休み時間もほんの少ししかないし、早く着替えないとなあ__)
 気がついたら、あっという間にジャージに着替えていた。
 そこで、予鈴のチャイムが鳴った。
 早く教室に戻って、教科書の準備をしないと__制服の入った袋を持って、鍵を開けようとしたその時__
 ドアの向こうで__ドサッ__という音がした。
 そして、ドアの隙間から、何者かの陰が離れてゆく。
 まさかと思った。
 鍵を開け、ドアを押してみる。__開かない。
 閉じ込められたということは、言うまでもなかった。

56:匿名希望:2014/07/12(土) 18:03 ID:v9.

腺が多い

57:とかげ◆4lKzA:2014/07/16(水) 15:40 ID:ffE

>>56
多い回になっちゃいました。

58:とかげ◆4lKzA:2014/07/16(水) 15:57 ID:ffE

喧嘩上等<9>

 まったく、情けない人たちだ。
 私は少し考えた、どうやってここから出るか。
 ・・・といっても結局、ドアを登って飛び降りることしか、思いつかなかった。
 今はジャージだし、都合が良い。
 制服の入った袋は置いていって、後で取ることにしよう。
 便器の横には、トイレットペーパーホルダーになっている小さなカウンターが付いている。
 ここに登って、なんとか抜け出すか・・・。
 別に、大したことではない。
 私はできるだけ体重をかけないように、カウンターの上に登った。
 こんな小さいのだから、40いくつという重さのものが乗ったら、すぐに壊れてしまうに違いない。
 カウンターが折れてしまう前に、素早くドアの上の縁に片手を掛けた。足元で、ぎしぎしと唸り声が聞こえる。
 早く__そう思いながら、もう片方の手をドアに掛ける。そのままドアに体重をかけ、縁に自分のお腹を当てた。
 一瞬、ブランコに乗っているときのように、視界がぐらっと傾く。
 視界のはしっこで何かが見えたが、それを無視して、片足をくぐらせぶらんと下げた。もう片方も同じように。
 すると、ドアの上の縁に腰かけている形になった。
 降りるのは簡単だった。
 そのまま、飛び降りればいいのだから。
 ただ、“そのあとが”重要なことだった。

59:とかげ◆4lKzA:2014/07/18(金) 14:32 ID:ffE

喧嘩上等<10>

 ドアの前には、平積みされた教科書やリュック__それも私のが__置いてあった。
 教科書には、しっかりと「2年3組30番山田美苗」と書いてある。おまけに、見覚えのない「死ね」「バカ」とう文字も。
 そこで、昼休み終了のチャイムが鳴った。
 私は遅刻をしたのだ。
 教科書をリュックの中に詰め込み、教室の後ろのドアを開けると、もうすでに授業が始まっていた。
 すると、生徒と先生から、馬鹿にされたような、とてもいやらしい目で見られた。
「遅れてすみません。」
 素直にそう謝ると、クスクスと笑い声を浴びせられた。先生は「今度からは遅刻しないように。」と言ったが、眉毛をクイッと上げていた。それは、先生が人を馬鹿にしたときの、癖である。

60:とかげ◆4lKzA:2014/07/20(日) 16:34 ID:ffE

喧嘩上等<11>

 それからというものの特に大したことはなく、当たり前のように嫌がらせは受けたが、何事もなく帰ることができそうである。
 帰りのホームルームが終わり、私は学校近くを歩いていた。
 いつもの道を少し早足で歩いていると、いかにも不良、ヤンキーといった感じの人たちが話しかけてきた。
「よお、姉ちゃん。可愛いねえ。今からカラオケでもどう?」
 親指を軽く立て、お誘いのポーズをしている。
「ああ?」テキトーに言ってみた。すると、「んだと?調子乗んな。」・・・案の定の結果だった。
「姉ちゃん、誰に口聞いてるんだ。可愛いからって良い気になるなよ__ウグッ!?」
相手のつき立てられた親指をつかんでひねると、なんだか変な方向に曲がってしまった。
「死ね!ぶっ殺すぞ!」「クソガキ!」曲がったままの親指を立てたそいつとその仲間は、あれこれ文句を言っている。
「黙れ、軟弱者。」
そう吐き捨てると、奴らは痰を吐き捨てたりしていた。
 また、やってしまった。

61:とかげ◆4lKzA:2014/07/28(月) 19:16 ID:ffE

更新放置しててスマソです

喧嘩上等<12>

 後ろに振り返ると、男が痛そうな顔をしていた。なんだか哀れな気持ちだ。
 家に帰ると、お父さんが待っていた。なんともいえない無表情で。「おかえり。」と言われたが、私は無視した。
 手を洗っていると、声をかけられた。
「終わったら、机の上に置いてある本を読んで読んでおきなさい。」「・・・・・・うん。」本当は、とても嫌だったが。

62:柚季なつ ◆:2014/08/11(月) 16:59 ID:dcU




「初心者専用評価屋」の柚季です。

評価は当スレにて書かせて頂いたのでご確認くださいませ。


書き込む 最新10 サイトマップ