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1:com◆7Q:2014/08/08(金) 17:44 ID:QbI

私は高校生の頃に神様と話をしたことがある。
以来一度としてお目にかかれてはいないが、
それは鮮明な記憶として今も胸の中で息づいている。


樹林が日に日に生気を帯びて、どこからともなく春の息吹が漂ってくる時期。
早生まれの私はまだ15歳で、高校に入学してそろそろ一年生も終わろうという頃だった。
その日は暗鬱とした気持ちに苛まれてしょうがなかったのを覚えている。
下校時間はとうに過ぎていて、雪のせいでほの明るい教室には私を含めて三人しか残っていなかった。

文芸部に所属していた私は、作品を作る振りをしながら机とにらめっこをしていた。
家路に向かうのが嫌だった。そして教室から出ていく気もしなかった。
その理由は疑いの余地なく分かりきっている。
その日、私の住む地域一帯は記録的な豪雪だったせいで、朝から下校時まではしゃぎ通す同級生が大勢いたのだ。
つまり思春期に入りたての男子中学生さながらにませていて大人ぶっていた私には
全面的に疎ましく感じられる一日だったために、私は心が沈み立ち上がることさえ億劫だったということだ。

教室の窓からほとんど最終とも呼べるバスがクラクションを鳴らして去っていくのが見えた。
これを逃すと次にバスが来るのは二時間も後だった。
バスが走った跡は粉雪が煙のように舞い、ライトが示す光の中でのみマーブル柄に光り輝いている。
間もなくして蛍光灯がチカチカと明滅した。
窓に映った自分の顔。私はむすっとした仏頂面の自分とじっと目を合わせながら時間を潰した。

2:com◆7Q:2014/08/08(金) 17:46 ID:QbI

しばらくすると、当然のように私以外の人間が教室からいなくなってしまう。
時計に目をやれば八時を回ろうかという頃になっていた。
下校を促すチャイムが鳴ったとき、その女の子は入ってきたのだった。
リボンの色から察するに同級生らしい。
化粧っ気のない顔には未だあどけなさが残っている。
彼女はまっすぐ私の方へ歩いてきた。

廊下に流れる冷たい空気と教室の暖かい空気は交接して、
彼女の香りを私の元へと運んでくる。
私はどっしりと座り込んだまま、何をしようともしなかった。
名前も知らないが、同級生だ。気にすることはない。
もしもそのほかに私が教室から退出しなかった理由を付け加えておくなら、
雪に騒ぎ立てるあの同級生達から感じた疎ましさを、彼女からは感取できなかったということも言えるかもしれない。

ふいに女の匂いが鼻を衝く。
私は驚き、振り返った。
彼女はなぜか私の真横の席にしかもわざわざ机をくっつけてピタリと座った。
そのとき私はちょうど鏡に映った自分を注視するのに夢中になっていた……いや、それは正確ではない。
正しくは自分の顔が親族の誰に似ているのかという思索に夢中になっていた。

彼女はどこにでもいるような顔をしていた。
低い鼻、品のよいとは言えない耳たぶ、つやつやとした黒目。
けれど、私の中に沸き立った哀愁にも似たあの感情をどう表現したらよいのだろう。
どこにでもいるからこそ、懐かしく思えるような。
それでいて、古い知人を見かけた際に沸き上がる、気恥ずかしさのような。

窓には私の困惑した顔と彼女の横顔が映っていた。

いまや白銀と化した校庭がその奥にはあるはずだが
蛍光灯の下、窓は鏡としての機能を十分に発揮して、それらは暗闇の中へと隠されてしまっていた。
私はぼんやりとこんなことを考えた。
もし窓の向こうから誰かがこちらを眺めたのなら
私たちはどんな関係に映るのだろうかと。

3:com◆7Q:2014/08/08(金) 19:29 ID:fBg

「死んでしまいたいって思っているのね」
彼女は静かに、しかし力強い声で言った。

はじめその言葉が自分に向けられているとわからなかった。
私にはあまり女友達がいない。
だから、女性の声が自分に向けられている事に慣れていなかったのかもしれない。
言葉が発せられた瞬間、私は無意識にペン先を動かして文字を書く振りをした。
一年間続けてきた癖なだけあって、その動作は実に自然だった……はずだ。

カチリと時計が八時を指すと同時に、低く鳴っていたストーブの唸りが掻き消え
雪の降る淡い音が冷たさに乗って教室に染み入った。

「どうして死んでしまいたいんだろう、僕はそんなふうには思いたくないのに」
自然と言葉がこぼれた。
私は彼女の顔を見ていない。
彼女は小さく息をもらして、それは人が思案する際に漏らすため息にも、似ていて。

「そうだねえ」と彼女が間を繋ぐように「でも、これならどうだろう?」
と言った瞬間、
町中の光が消えてしまう。


誇張ではない。
私は眩惑して数秒の間、視界さえ失ってしまったのだから。
突然の出来事に慄いた私は、開いた口をふさぐことを忘れてしまう。
すぐさまに彼女がクスクスと笑った。
どうやら私は思いがけない変事に言葉を失うタイプの人間らしかった。

違和感があった。
「なにが、起きた?」
私はすぐにその原因に気がついた。
彼女の匂いが変わっていたのだ。

「あはは、そんなに驚かないでよ」
いまや胃がその身をよじるほどに甘く、心地よい香気が教室中を満たしていた。
熟れきった香り、大人の香り。
まるで、生け花をちぎって張り合わせた造花の香りのような
生と死の混淆がかもす、蠱惑的な匂い。

徐々にお墓のような私たちの机が輪郭をもって立ち上がってくる。
ようやく目が順応してきたのだ。
窓の外からは積もった雪が幽霊のように光を放っていた。

私は息を飲んで、彼女を見た。

そして、椅子から転げ落ちそうになった。

私の隣にいたはずの女生徒はいまやまったくの別人だった。
あどけない子犬のような顔をしていたはずなのに、
目の前にいる彼女は、目鼻がくっきりとした凛々しい顔つきの女性に変わっていた。
あわてて教室を見渡すも人が出入りしたような気配はなく、
いつの間にか閉まりきっていたドアが隙間風に吹かれてガタガタと揺れるばかりだった。
もしかして、停電の隙に元々示し合わせていた二人の女性がタイミングを見計らい
私を驚かそうと一計を案じたのだろうか?いったいなんのために?

私は彼女の顔を見つめることが出来ず、目を逸らして窓の向こうにあったはずの街の光を探した。
100万ドルの夜景を、ホタルイカを誘うあの淡青色の光を探した。
けれどそれらはことごとく失われ、冬の底に眠っていた。
女手二つで街中の電気を落とすなんて土台無理なことなのだ。

私は理屈を探すのをあきらめ、彼女をみた。

4:テイル:2014/08/08(金) 21:48 ID:fBg

綺麗な文章書きますすねぇ

更新楽しみにしてます@

5:com◆7Q hoge:2014/08/10(日) 02:36 ID:qVE

>>4
もう私は疲れたからバトンパス

6:com◆7Q hoge:2014/08/10(日) 02:51 ID:7hg

comプロット考えないで物語書き連ねる派だから(予防線)早くも展開に窮してしんどい
唯一読んでくれたテイルくんゴメン……二人の共同作業でガンバってコレ完成させよ@

7:猫又◆Pw:2014/08/10(日) 15:11 ID:e.M

 こんにちは、エントリーがあったので来ました。猫又です。
アドバイスということですが、
はっきり言って基礎事項しか指摘できない私には、
このレベルの文に言えることは少なそうですね……。
 まあ、あえて挙げるなら行頭を開けてほしいなとは思いました。
小説は論文なんかと違って展開が早いですから、
何か目印がないと読み見くいと思います。(強要はしませんが……)

 それとcomさん自身が↑で仰ってますが、やっぱり文に方向性が感じられませんでした。
比喩表現、繊細な情景描写、それはホントに非の打ち所がないのですが、
プロットが無いせいか、描写の入れ方にメリハリが無いです。
 1文1文丁寧に描写しているのは分かるんですが、そうなるとやっぱり、
『ちょっと表現が遠回りすぎるかな?』とか『一体どの部分を強調したいんだろう……』
といった印象が出てきてしまうので、オチだけでもいいのでまず物語の方向性を決定してから、
書くことをオススメします。
 文章表現のレベル自体はかなり高いので、もっといい作品になると思いますよ? では、

8:くりごはん:2014/08/10(日) 16:02 ID:HjQ

デカい伏線を張るのも大事だぞ少年
それ以外は他所でも通用する

9:com◆7Q:2014/08/10(日) 20:37 ID:hPU

そうなのですか……!
たしかに、読んでる人に誤解を与えないようにと過敏になっていて
どうでもいい箇所の説明が不必要に多く感じます
プロット云々に関しても手間暇がかかるという点に折れて疎かになっていたので改善します
調べてみたら、会話文以外は行頭を一字空けるってルールもあるんだね
まず基礎的なところから見直します

時間割いてくれてありがと〜($・・)/~~~


くりごはん少女も一緒に頑張ろう(のちに若手売れっ子作家コンビくりこむとして一世をふうびする伏線


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