花冠 、

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1: 泡沫 ◆c.:2014/08/12(火) 02:06 ID:84s



遠くなる視界の端に、嗚呼次こそはと涙を零した。

2:泡沫 ◆nk:2014/08/13(水) 01:26 ID:84s




君とはじめて出逢ったのは、きっと初夏の事だった。
今となっては随分と色褪せた想い出だが、そこに確かに君はいた。

その日の町は賑わっていた筈だ。客引きや雑談、はたまた何処かで起こったらしい暴動の声と声に押されて、とても窮屈だった。
雑音に雑音を重ねたそこからやっと抜けたところで、思わずため息を吐いた。肺は思ったより長く空気を放った。

早く家に帰って、ひとりになりたかった。その日は仕事の関係で少し気が沈んでいたのだ。

「花はいりませんか」

そんな時に、後ろからひとり僕に声を掛ける者がいた。あどけなさの残る儚い声、忘れる筈がない。
もしも。今その声を聞いたとしたら、僕は大粒の涙を零して、もう離さないと抱きしめるだろう。だけど、この時の僕は少し愚かだった。嗚呼こんなところにまで売り子は追ってくるのかと、怪訝な目で声の主を見つめた。

「ごめんね、あいにく花をたしなむ気ではないんだ」

自分でも驚くほど愛想の無い返事をした。先述の通りひとりに欲す僕に、十代半ばの少女から買う花など必要ではない。

「かなしい人だわ」

「なんとでも言ってくれ、折角此処まで来てくれて何だけど、僕は早く帰って寝たいんだ」

正直苛立ちが溜まっていたので、先程よりも少しだけ早口になった。じゃあ僕はこれでと止めていた足を進めようとしたところ、諦めの悪い少女はまた言葉を寄越してきた。

「やっぱり貴方はかなしい人だわ。そうだ、花の代わりに私がお話をして差し上げましょう」

それの何が代わりになるのだと僕が言うよりも早く、少女は言葉を続ける。大丈夫、お代は頂きませんと付け足す。

そうして少女は、君はひとつめの話を始めた。


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