最速系妖怪彼女。

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1:羊羹:2014/10/30(木) 21:04 ID:hRQ

濡れ羽色の翼 黒い黒ろい
日陰に狭く折り畳んだ
凶器のような手足も 柔らかい布で覆ってって

凸凹のこの世界に 新たな凹凸が踏み混んだ
社交辞令に薄ら笑って
期待と怖れを胸にしまって

それは男の名を付けた 私の父から出た話
幼い私には複雑で 首をかしげさせる話
私にもわかったのは
ここに居られないこと

そこは近未来か異世界か 目を回すばかりで
私達は『人々』の視線を ひとりじめしてたのです

『専用の学校に行きなさい』
『危ないことはしちゃいけない』
『わざわざ目立つことはない』

人に近づいちゃいけないよ って

なるべく森に近い家で 親の帰りを待ちながら
私はいつも一人で おとなしくしてた
寂しいとかじゃなくて 苦しいとかじゃなくて
軟禁じみた生活は少しばかり 静かすぎたんだ

だからこそ一度くらい わがままを聞いてほしくて
試しに一度くらいは なんて
無理強いしてみたのです

翼を陽気に揺らして 足取り軽く目的地へ
振り返っては父母に手を振り 早く早くと急かす私を
困ったような声で微笑ましげに

見たことのない世界へ 駆け出してく喜びが
顔中に溢れそうで 止まりゃしないや
ああ若い好奇心と興味
なり出して 止まんないや

人々の視線を 独り占め


ようやく目覚めた私は 見知った天井を見上げた
金縛りにあったように 全身が動かず痛んでた

翼が 髪が 腕が 脚が 腹が
痣と 傷と 骨折 出血

かぎ爪が剥けていた


【異物の干渉】


・・・・・・・・・

どうも、羊羹です。
前に他所で書いていたのですが……積みまして((おい
でも設定がまとまっていくにつれ、小話が増えるにつれ、また書きたいなあ……なんて((
妖怪っこ可愛いよ!! わーい!!
きほんこんなテンションで御座いまする。
上の詞っぽいのは、なんというか、えー…… プロローグの代わりに! ね!
まあ書いたのは結構前なんですが((
では、宜しくお願いしますー

2:羊羹:2014/10/30(木) 21:12 ID:hRQ

第一話「走って、転んで、出会って」


あの法案が世界に出来た日。
俺が走っていた日。

朝から降り積もる白の中に、真っ黒な塊が、あった。

3:羊羹:2014/10/30(木) 21:34 ID:hRQ

「はぁ、やっべぇ……」


風景に溶け混む白い短髪をかきあげて、眼鏡に乗る雪を払う。
今日は朝から、雪が降っていた。
道の横に集められた雪は胸辺りまであると言うのに、尚も積もる雪は道を白く覆い、長靴に入りそうなほどだ。
その中を俺は、羽毛のジャンパーの前を閉めて、転びそうになりながら走っている。
不貞腐れた顔を、晒して。


「はぁ、っ。 はぁ……っ」


明日から冬休みという今日、俺は午後からのバイトを入れていた。
バイトの友人に、シフトを変わってくれと頼まれたからだ。
どうせ学校は午前中で終わるし、寂しい事に大した用事もない……
学校が終わったら、そのままバイト先のマックで腹拵えしよう。
だから気軽に了承した……




のだが。




「あんっの、校長っ!」




話が長過ぎんだろーー!!


俺は膝に手をつき、肩を上下させて額の汗を拭った。
只でさえ目つきが悪いのに、余計に悪化している気がする。


校長はわりと話が短い人で、中学の時の友人には、よく羨ましいと言われている。
俺自身それは有難く思ってる、小学生の時は酷かった。
それなのに…… 今回に限って校長の話は長かった。
なんか「差別はいかん」とか、「優しく」とか、そんな感じの話だった気がする。


まあ内容はともかく、このままでは腹拵えが出来ない所かシフトに間に合わない。
俺も友人も、良くて一週間タダ働き、悪くて即クビ。
というか、圧倒的に後者の可能性の方が高い。
社会とは信用が第一なのだ。


ああ……校長といい、この雪といい、今日に限って何なんだよ!
俺をそんなに邪魔したいのか?


思わず歯ぎしりしてしまい、奥歯がキリキリと音を立てる。
こうも上手いこと、不運が重なるものなのか?


って……こんなとこで怒ってもしゃあねぇべや。
怒ってマックに着くわけじゃあねぇんだぞ。


「はぁ……」


苛立ちを静めようと前を向いて深呼吸する。
前を向くと、果てなく続きそうな白い道に、おもわず肩を落とす。


「……」


しばらくしてまた溜め息をつき、重い足で駆け出した。
人気のない道を時々よろけながら、友人が手を合わせて頭を下げた姿を思い出す。


本当に頼むっ! その日、彼女の誕生日でさ。
最近お互い忙しくて、中々会えなくて……


「いや、お前の都合だろ」


走りながら小声で悪態をつく。
ぶすっとした表情で、溜め息交じりに前を眺めて。


プレゼントって、当日に渡さないと意味ないじゃん?
誕生日くらい、ずっと一緒に居たくて……


「……リア充が」


こんな事になるって解ってたら、安請け合いなんかしてねーよ。 バカ。


友人はそう言って、照れ臭そうに頭をかいていた。
正直言って、その気持ちはあまり理解出来ないが。
何故なら、彼女なんて異世界の存在の様なもの、一度として居たことが無かったからだ。
家族にプレゼント、と言うなら解るが、それとはまた違うのだろう。
他人に渡すのだから。


「……」


空を見上げて、想像してみる。


仮に。
もし俺にも彼女が居たら、その子の誕生日にソワソワしたりするんだろうか?


悶々と、想像してみる。
他人ぇあるのに大切な人、変な物は渡せない。
明日は彼女の誕生日で、俺はプレゼントを買いにデパートに入り……
こっちの方が似合うかな? いやいや……なんて、アクセサリーを見比べていて――


「……ハッ!?」


はっと我に返ると一気に顔が熱くなり、それを冷ますように首を横に振る。


何、こっぱずかしい事考えてんの俺……
うわあぁーーっ、もう! 消えて無くなりてぇ!
有り得ねぇから、マジで有り得ねぇっつーの!


今は兎に角急いでるんだと、キッと前に向き直った。
落ちつけ、落ちつけ。 今は何より、俺の首が掛ってん――




瞬間、足に何かが引っ掛かる。

4:羊羹:2014/10/30(木) 21:57 ID:hRQ

「え゛」


頬が引き吊り、顔が青ざめるのが分かる。


待て待て待て! ここで転ぶとかマジないって!
ああっ、そうだ。 こういう時こそいざ超能力を発動――


手足を踏ん張らせる間も無く、体が一瞬浮いたかと思うと、ボスリと倒れて人型を作った。
何か恥ずかしい事を脳内で考えた気がするが……


「……」


顔はすっぽりと雪にめり込んでいて、逆に冷静になれて良かったかもしれない。
しばらくの沈黙の後、寒さで体が震えてくる。


「むっ、ぐ…… ぶへぇっっ!」


勢いよく体を起こすと、辺りに雪が舞い散った。


……本当、今日はついてない。
いっそ謝罪の言葉を考えた方が良いだろうか。


「へくしっ!」


小さいくしゃみをしつつ、側の電柱を支えに立ち上がり、制服に付いた雪を払った。


でもまぁ、そこの角曲がればすぐそこだべ。


ほっと安堵して、胸を撫で下ろす。
今は何時だろうと袖を捲ると、シフトの交代まで30分もあった。


「ああ、これもう歩いて大丈夫だわ…… 、ん?」


その時ようやく、眼下の雪に妙な物が有るのに気付いた。


ん、なんだ? …… ――っ!!

それが何か解ると、背筋が冷たくなって横へ退いた。
雪の中から、下駄を履いた足首が突き出ているのだ。


ああ、多分これにつまづいて転んだんだな……と思えたのは後のことで、この時は足首の続く先を見やるので精一杯だった。
足首の先に続くのは――


「……」


体はすっぽりと雪に埋まっているらしく、盛り上がった雪の塊が転がっている。
その様は、なんだか……


えぇーと……何て言うか、 倒れた雪だるま?


場違いな考えのせいで少し冷静になり、再度片方だけ出た足首を屈んで見てみる。
幸いその足首は足袋を履いていて、直接雪に触れていた訳では無さそうだ。


「……てかさ、」


俺の足が引っ掛かっても反応が無かった、って事は……


もう死んでる、ってことないか? これ。

5:羊羹:2014/10/31(金) 09:41 ID:hRQ

「ひっ!」


その考えに至った俺は、少し後ろに退いた。
空気の冷たさが今更襲ってきて、顔面から血の気が引いていくのが判る。
ピクリとも動かない雪の小山と、下駄を履いた足が突き出た雪面。
相変わらずとしんしん降り積もる雪の中で、それはあまりに不気味で、逃げ出したい程だった。


いやいやいや、氷結死体とかマジであり得ねえって! いや北国だからあり得るっちゃあり得るけどさ……
っていうか、こういう時こそ誰かいないのかよ!


ガチガチと歯が鳴る音、それだけが聞こえている。
助けを求めて辺りを見渡してみるが、道の左にも、右にも、人影は見当たらない。
今日は厄日か何かだろうか。


……選択の余地無しっすか。


細く長い溜め息は、上へ昇る前に消えて行く。
俺は嫌々ながら、頭が埋まってる……と思われる辺りへ移動し、生唾を飲む。
この朝からの大雪だ、最悪の可能性は十分にある。
ニュースでこういった事件は何度か見た事が有るが、それは所詮画面越しの話。
コタツでミカンを剥きながら見れる内容である。


「うっ」


だが、現実にその場に出くわすのとでは大きく違う。
その場にいた人の行動で、誰かの生死に大きく関わることはある。
そう考えていると、いきなり大きな責任をなすり付けられた様な心持ちになる。
バイトのシフトがどうこうよりも、もっと大きな。


いっ、いいいいや、逆に考えようプラスに! うん、プラス思考!


嫌な悪寒の上、気分まで悪くなって、首を横に振ってその考えを打ち消す。

6:羊羹:2014/10/31(金) 10:20 ID:hRQ

「……」


前髪をくしゃりと撫で上げると、恐る恐る、道に誰もいないかを確認する。
相変わらず道には誰もいない。
この雪で大体の学校は午前中だけで終わるか休校だし、わざわざ出歩く人もいないだろう。
それだけ確認すると、俺は小さくガッツポーズする。


よし、これなら誰かに見られたりしないだろ。
問題は上手くいくかだけど……


雪の塊を改めて見下ろすと、高い所は俺の膝下くらいまで積もっている。


上手く行ったら、手でやるよりずっと速ぇっしょ。


胸に手を当てて深呼吸を何回か繰り返し、目を閉じる。
額の冷や汗を拭うと俺は、雪の塊に右手をかざした。


大丈夫、大丈夫。 何回か雪かきの時に隠れてやったから。
そう、腕に意識を集中させて…… 心で唱える!


――アイスブレイク!!


カッと目を開くと、右手から静電気のようなものが不規則に雪の塊へ広がる。
そして…… 雪の塊が鈍い音を立てて、立ちあがるように浮き上がった。


ええ、まあ。 俺、超能力者なんです。
超能力者、なんだけども――


「っ、く……!」


右腕にかかる負担に、思わす目を閉じてしまう。
俺の体は少しのけ反っていて、右腕がだんだんと、がくがくと震えていく。


ああ、やっぱダメかもしんない。
えっ、超能力者なのにこんな事で苦戦するのかって?
いや、だってさあ……


ぐらり。
視界が白く、暗くなる。


片腕だけで人体支えるとか普通無理だからーー!!


瞬きをした瞬間、雪の塊から静電気のような光が消え、此方に倒れかかってきた。


「おわぶっ!!」


まるで雪合戦の最中、大きな雪玉を投げられたように。
違うのは、それが顔や肩などではなく、体全体だということだろうか。
今日は上からも下からも、よく雪に埋もれる日だ。

7:羊羹:2014/10/31(金) 10:31 ID:hRQ

「……」


雪が乗った顔を払おうともせず、俺は雪のサンドになっていた。


なんて言うか、今の状況……スゲー、ダサい。
そんな気がする。


そもそも普段、歯磨きと本読みを同時にやるとか、雪かきを楽したい時に使っていたような超能力だ。
人、ましてや雪に覆われた状態でなんて、浮いただけでも頑張った方である。


ていうか何だよ、アイスブレイクって。
ガキが考えた最強の必殺技か何かかよ。
何をバカみたいなことを…… ああ、恥ずかしい恥ずかしい。
ついでにアホらしい。


そう自分に呆れながら、顔に乗った雪を払う。

8:羊羹:2014/10/31(金) 21:20 ID:hRQ

眼鏡と目の間に雪が溜まってしまったので、一旦眼鏡を外して雪を落とす。
当然視界はぼやけたが、辺りを把握出来なくなるほど悪くはなってない。
そのぼやけた目で上を見上げても、降る雪の見え方はあまり変わらなかった。


「……重たい」


こうして髪も身体もほぼ雪に埋まっている状態で、しんしんと雪の降る空を見上げていると、自分との境が判らなくなっていくようだった。
まあ、それはともかくとして……首から下に覆いかぶさる雪が、段々と体温を奪うし、誰かの体重も合わさって重たい。


ていうか、マジで死んでないよな


出来ればこの後自力で何処かに行って欲しいのだが、それも相手が生きている前提での話だ。
少し間を置いて、チラッと胸元の方へ視線をやる。


ん? ロングヘアー……女子か? やけに長ぇな


いかんせん眼鏡を外していたので、しっかりとした把握はできなかったが、埋まっていた相手は黒髪か黒服かのどちらかだろう。


「いよ、っ……と」


とりあえず相手の生死を確認しようと、片手をついて上半身を起こす。
黒が相手の足よりも少し長かったことから、この黒は髪の毛なのだろう。


だとしても長すぎだろ、どうやって手入れしてるんだ。
そういえば……なんか、貞子3Dこんくらい髪長いの出てきたような――


そんな事をふっと考えてしまったせいで、余計に寒くなった気がする。


「さ、さっさと確認するかっ」


俺は自分を奮い立たせるように、わざわざ声に出して言った。
少し躊躇って、おっかなびっくり相手の頭に手を伸ばす……
勘違いしないでもらいたいが、別に相手が女子だからという理由では無い。
第一、そんなこと考えられる状況でもないだろう。
肝まで縮んで……いや、掴まれてるんじゃないか? と思う、そんな心持ちだ。


ああ、どうか生きてろよ……


さらさらした髪に震える指をかける。
手が震えるのは、かじかんだせいだけではないだろう。
我ながら、涙目になってないのだ不思議なくらいだ。
それとも人ってやつは、あまりに怖いと逆に涙が出なくなるのか?

9:羊羹:2014/10/31(金) 21:46 ID:hRQ

まあ、関係の無い話はすぐに頭を通り過ぎて行ったので、頭を軽く揺さぶってみる。


「おい、おい…… あの、もしもし?」


反応は……無い。


喉がヒュっと鳴って、背筋に冷たいものが滑ったような感じがした。
途端に怯えが焦りに変わっていく。


い、いや、きっと話し声程度じゃあ気付かないだけだべ!
あ、こういうのって耳元で言わないと意味ねえかな?


雪を払ってから、左手に握ったままだった眼鏡をかけ、耳の位置を確認しようとする――




「…………………… んぇ?」


鳩が豆鉄砲を打たれたような顔とは、恐らく今の俺のような顔のことを言うのだろう。
冷えきった指で眼鏡を外し、かけ直す。
そして、「それ」を再びじっと見る。


おかしい。


俺の目が一瞬にして悪くなったのなら、強引にでも理解できる。
でも周囲の輪郭がはっきりしている事からすると、残念ながら俺も眼鏡も正常のようだ。
この寒さだと言うのに、またもや冷や汗が伝ってきた。


こういうとき……って、さ。
ラノベの主人公なら、


それよりも、先程から目を離せないそれは、倒れた雪から姿を露わにしたそれは。
ロングヘアーの黒髪でなければ、ロングコートでもない。


どうするんだっけ……


「彼女」の赤いベストの穴から、しっかりと生えている――
巨大な翼だった。




目を覆いたいほど無数の傷を纏っていて。


周囲の雪が、ほんのりと朱く染まっていて。


烏の濡れ羽色の翼が、薄紫の艶を出していて。


「っ……!! う、……うぅ、っ」


慌てて両手で口を覆い、大きく肩で息をして、出てくる筈だった叫びを宥める。
俺は、ようやく涙目になった。


酷く悲惨な状態なのに、それでも精霊のようだと、柄になく思ったりして。

10:羊羹:2014/10/31(金) 22:08 ID:hRQ

なんだ。 お前はなんだ?
こんなのって…… 創作の世界だけの話じゃないのかよ、なあ。


口を覆う手を離せないまま、かといって彼女から目をそらすこともできない。
よく見ると風も無いのに、翼は彼女の背中を覆ったまま、小さく上下していた。
これは良いことなんだろうか。
起こしちゃいけないんじゃないか。
起こしたら、襲いかかってくるんじゃないだろうか。
もしかして何処かの実験施設から脱出してその最中に怪我を負って――


って……、バカッ! 怖がってる場合じゃねえだろ!


慌てて口から手を離すと、首を横に振って自身の頬を叩く。
大丈夫、相手は女子だ。
いざとなったら背の高い俺の方が有利。
確かなことは……
相手は怪我人で、ここに放置したら、間違いなく死ぬ、ということ。

11:羊羹:2014/11/04(火) 13:25 ID:hRQ

だとしたら、俺は助けたい。
少なくとも、そういう人間でありたい。
ここで放置してバイトに急ぐのは、あまりに後味が悪すぎる。


最悪、クビなんだっけな……


雪の降る空を見上げて溜め息をつく俺は、重大な事態に反して案外冷静だった。
今は……この人? を、どうするべきなのか、それを考えよう。


とりあえずは、俺んちに運ぶしかねぇよなぁ…… 下手して大騒ぎとか嫌だし。


そんなことを考えながら頭をかく。
しゃがんで確かめてみるが、骨折した怪我は見えない。
動かしても大丈夫そうである。


「……」


腕を組んで、白い顔を眺める。


いやいや、わかってますよ? そんなこと言ってる場合じゃないだろって。
でも、ちょっと。
ちょっと言わせてもらって良いですか?


相手は得体が知れないとはいえ、女の子。
季節に合わない半袖のシャツに赤いロングベスト、膝丈スカート。
黒く長いアーマーと、ニーハイソックスのように長い足袋。
俺の顔が、またふつふつと熱くなってくる。


あのー、うん……


どういう抱え方すればいいんすか?




第一話「走って、転んで、出会って」 終了

12:羊羹:2014/11/04(火) 13:30 ID:hRQ

第ニ話「自宅と、『彼女』と、静かな変化」


普通の男子高校生なら、女子に触れる上人助けという大義名文があるという好条件に飛び付くのだろうか。
だとしても……俺には酷く恥ずかしいことのように思える。
後から怒られないか? とか、胸に当たったら九割方平手打ちだろ、とか。


……バッカ、これじゃただの変態だろ。


「俺、最低……」


顔が冷めないまま、ぽつりと呟く。
まぁ、士郎との約束を破った時点で最低かもしれないが。
最もな話、そんなのはやはり映画やアニメの話で、普通に過ごしていたらそんな事態には会わない。
仮にあったとしても、お互い後々気まずくなって……それで終わりだ。
空から落ちてきた少女との冒険ファンタジーなんて、始まらないのだ。

13:羊羹:2014/11/04(火) 13:39 ID:hRQ

だから、今俺がしていることは――


「……何かの、間違いなんじゃないか?」


自宅へ足を進める俺の腕には、『彼女』がいる。
ジャンバーで翼ごと体を包まれた状態で、気絶か眠りか解らないまま、彼女は寝息を立てる。


……自分の服を見ず知らずの誰かに着せるって、どうなんだ? これ。


自然に浮かんだその想像を、首を横に振って打ち消す。
つくづく妄想脳だなと、自分でも悲しくなった。
しかし相手が生きていると解ると、こんな考えまで安心して浮かんでくるのだから、単純である。

14:羊羹:2014/11/04(火) 14:00 ID:hRQ

抱え上げる時もそうだった。
実際抱え上げてみれば、翼の大きさに反した軽さに目を丸くしてしまい、そんな考えは吹き飛んだのだが。
そう思い返しては情けなくなっていると、雪に隠れた段差に足を取られそうになる。


「っ!? と、ととっ…… とっ!」


彼女をしっかりと抱えて、無事だった片足を雪に突き刺して止まる。
危うく上に放り投げてしまうところだった。


っはーー。
ぎりぎりセーフ……


「はーー、はぁ……」


溜め息交じりに足を引き抜き、額に滲んだ冷や汗をむず痒く思う。
彼女の顔色を確認すると、相変わらず寝息を立てていた。
腕が疲れないのはいいが、吹けば飛ぶようで冷や冷やする。
ただ運ぶだけと言っても、案外神経を使うのだ。


まあ、可愛いから許す。


もう一度ちゃんと抱え直すと、また自宅へ歩みを進める。
あれだけ懸命に走っていた道を、Uターンして歩みを進める。
先程作った俺の足跡は、もう既に薄く雪が積もっていた。


「なげぇなぁ、雪……」


少し鼻をすすって、鬱陶しそうにそう呟く。
普段なら上着なしではこの寒さは堪えるが、返って今はそれが良かった。
友情を破った俺への、ささやかな罰のように感じる事が出来たからだ。

15:羊羹:2014/11/04(火) 14:07 ID:hRQ

「……」

その分、彼女に雑な扱いは出来ない。
約束を破ったなら破ったなりに、そうする価値のある行動をするべきだと、俺は思う。


明成にも、バイトの先輩にも、めちゃくちゃ怒られるだろうな……

16:羊羮◆R.:2014/11/04(火) 14:37 ID:hRQ

>>12の下から7行目、「士郎」じゃなくて「明成」です。
途中で設定変えた名残ですね、確認しとけやってやつですわ。




どうも、羊羮です。
えーー、二話を平然と書き進めてる所、訂正と休憩がてらこれを書いています。
なんとか一話が終わりましたよーーキャホーーイ!
やったね主人公くん! 新しい続きが書けるよ!((おいやめろ

いやー、当初士郎くんはモブとして華々しく(笑)空気になる予定だったのですが……
「キャラ多いな→そうだ、こいつとこいつ同じにしよう」
ってなノリで、長い付き合いをするべく改名したのです。

ついでに言うと、最初は主人公君が家に着く手前で一話終了でした。
が、抱き抱えるまでの過程が長かったのと、一々赤くなる主人公さんが煩かった(笑)ので、割愛←
割愛前は本当にただの変態でしたよww
これでも大分、すっきりしたんですよ、一話……(震え声)。
ちなみに他所で詰んだ理由は、アイスブレイク(笑)……超能力を序盤でサラッと出し忘れたからです。
え、じゃあどうやって雪から出したのかって? 手作業です(
あのシーンは凄く雑だったので、少しはマシになったかなーと、一石二鳥の気分で居ます。
ですが話の進み具合とか、個人的には心配なところも多々あります。
よろしかったら……図々しくも、アドバイスなんか頂けないかなー、と思ってます。
チラチラッ((


さあて、二話では主人公さんのおかんが登場!
そして明成より出るのが遅かった、主人公の名前が明らかに!
スヤァしていた『彼女』も、遂に閉じられていた目を開く……!?
次回、最速系妖怪彼女・第二話!
「自宅と、『彼女』と、静かな変化」
サービスサービスゥ!!




……まあ、とっくに二話はじまってますけどね。
終了ごとに予告しようかと〜。

17:羊羹:2014/11/08(土) 10:21 ID:hRQ

一話の文字数6013-6301かあ…… その辺で一話一話終わるよう頑張りますね!

18:羊羹:2014/11/08(土) 11:25 ID:hRQ

誰かと出くわさないかひやひやしながら、そんな事を考える。
バイト先はともかくとして、友人の明成には何と説明すればいいのだろう。
あいつは本当に困った時の口は固いが、一度機嫌を悪くすると直るのに数日かかるのだ。
考えれば考えるほど、もしかしなくても、面倒な事に首を突っ込んだ……そう思う。
でも。


馬鹿な俺には他の考えなんて浮かばねーし、一度手ェ貸したら最後までやれ、って誰かが言ってた気がする。


うん、大丈夫大丈夫、後で後悔するよりずっといい。
そう頷いて思いなおすと、彼女の顔を確認する。
俺のシャツの袖に掛かる、緩く内巻きになった髪は柔らかに揺れていた。
相変わらずすやすやと寝ているが、呼吸が安定しているのは良いことだ。
ホッとして息を吐くと、白く雲って消えていった。
毛の量が多くふさふさしているが、決して絡まったりはしていない。


「……」


綺麗な髪だな、しかし……おい。
良いのか? 良いのか?
いや、見ず知らずの他人に易々と全体重預けたりするものなんですか母ちゃん!
まぁ相手気絶してるから無意識なんだろうけど!


頭の中で一人討論をしていると、次第に顔に熱が上がっていく。
どうして男って奴は、こんな時でもやらしー事を考えられるのだろう。
俺の頭は煩悩ばっかりなのか? なんて低俗な奴なのか……


うわあぁすんません、変態ですんませんっ!!
見付けたのが俺でごめんなさい、本当に。


腕を動かすわけにもいかないので、脳内で土下座を繰り返す。
こうして抱えていることすら申し訳なくなってきた。
とりあえずは落ち着こうと、少し顔を雪面に剃らして呼吸を整える……


「はあ……。 っ、もうちょい待ってろな」


今は狼狽えている場合じゃねぇだろ、うん。
とりま抱えて家まで歩く! 最優先だべ、これ!


ほら、俺は冷静になれば、ちゃんとした判断が出来る子だ。
さて……今のところ誰とも出くわさない。


「まあ、注意するに越した事は無い、か」


俺は先程よりも注意深く、且つそれなりの早足を保つ。
まるで密輸売人の如く、目を細くして遠くを見るように。


さあ、どっからでも出て……じゃない、いや出てくるな!
ちょっとでも気配を感じたら……一目散に物影へ逃げてやるっ!


俺のその無駄に神経を使った警戒は、結果から言えば、ほぼ無駄に終わる。
途中で誰かに見つからないかと冷や冷やしていたが、雪遊びに夢中な小学生2,3人を、遠目に見かけただけだった。


「はあーー……」


二階建ての橙色の屋根が見えてきた時、肩が落ちて溜め息が出る。


ああ、なんだか……無駄に疲れたな、うん。

19:羊羹:2014/11/08(土) 11:52 ID:hRQ

しかし、嘆いた所で疲労に滑車をかけるだけなので、玄関の光へと足を動かず。
彼女が幾ら軽いとはいえ、同じ体制をキープしたままの腕は冷えきっていて、その緩い明りは安心させられる。
鍵を開ける際、手が塞がっていてどうしようかと思ったが、


鍵はジャンバーのポケットに突っ込んでたんだよな――


試しにドアノブに肩を引っ掻けて下ろし、内側に押すと……


「おっ、」


良いのか悪いのか、鍵は掛かっていなかった。


おお……母ちゃん、グッジョブ。


普段なら不用心だと悪態を付く所だが、状況が状況だ、感謝せざるを得ない。
そろそろとドアを押し開けると、奥からニュースの音声が微かに聞こえる。
恐らく母ちゃんがリビングでテレビを見ているのだろう。
動くなら今の内だ、この子もまだ目を覚まさないし。


よし、さっさと部屋に連れ込……
いや、そういう表現に至るのはやめようぜ俺。


小さく頷いて、またすぐ首を横に振る。
とりあえず長靴を脱ごうとするが、手が塞がっていて上手いこと抜けない。
思わず舌打ちをして、靴飛ばしのように後ろに蹴飛ばすと、ようやく片方が抜けた。
片足が自由になれば、後は楽に脱げ――




あっ。


背後で大きな音がして、腕の中の彼女がピクリと動く。
玄関扉が音を立てて閉まったのだ。
決して大きな音ではないが、俺の顔色を悪くさせるのと、リビングの母ちゃんを呼び寄せるには、十分すぎた。

20:羊羹:2014/11/08(土) 21:52 ID:hRQ

「昴、帰ったのーー?」


母ちゃんののんびりとした声と共に、スリッパがフローリングに擦れる音がする。
一難去ってまた一難とは、正にこの事だ。
廊下の奥で扉が開く音と一緒に、ニュースの声も大きくなる。


って…… もうすぐ曲がってくるじゃないかやだーー!!


俺は半泣きになりながら、自由になった足で長靴を踏んづけ、もう片足を急いで引き抜いた。


ちょっ、ヤバいよヤバいって!
あー、もー……っ、この上母ちゃんに見つかったら面倒くさいったらありゃしない!


「昴ーー、居ないのぉ?」


廊下の角の床に、ふっと人影が映ると、すぐ横の階段へ逃げ込む。
なるべく音を立てずにいたいのだが、そんな余裕は毛頭無かった。
まだ覚醒しきってない、眠気眼の彼女の頭を押さえ、ドタドタと忙しい音を立ててかけ上がる。


「あっ、こら昴ーーっ! ちゃんと揃えなって、何度も言ってるっしょ!」


一階から母ちゃんの罵声が聞こえてくるが、お構い無しだ。


ていうか、言うことなんか思いつかないし。


俺は自室に滑り込むと、足でベッドの掛け布団を払い退けて、そこへ彼女をそっと横たえる。


「……。 っ、はぁーーあぁ……」


急に体の力が抜けて、その場にへなへなと座り込む。
室内の暖かい空気に帰ってきて、ようやく腕が解放されたのだ。
頭をかきながら彼女を見やると、不思議と目を閉じて寝息を立てている。


この短時間にまた寝たのか? まあ、別にいいけど……


「あ。 そーだブレザー、」


上半身を包んでいたブレザーを取っておこうと、止めていたボタンに手をかけた時。


「すぅーーばるーー?」


トントンと階段を登ってくる足音と、声がした。
いつもなら大抵、呆れてリビングに戻るのに、今日は何だかしつこいようだ。


っだぁーーッ! もう!
今日はなかなかどうしてか、休まる時間の少ないことこの上ない!
じゃあなくて……ど、どうすっぺか!?
女の子連れ込んだーー、じゃ済まないし……
いやそんなやましい思いなんてねえから!


おろおろと一人うろたえている内に、足音は階段を登り終える。


「返事くらい、したらどーだ!」


そして足音は俺の部屋の前で止まると、勢いよく扉を開いてきた。

21:羊羹:2014/11/08(土) 22:38 ID:hRQ

「……はい」


しばらくの沈黙の後、俺は苦笑で短い返事をする。


「んもぅ…… 濡れた長靴は! 変な置き方すっと乾きにくいの分かるっしょ!?
 乾かねえで冷たい思いすんの、昴だからね!」


年相応におばさんらしくなってきた母ちゃんは、腕を組むと焦げ茶のボブヘアが軽く揺れた。


「ああ、わかったっての。 ごめんごめん次から気をつけるから……部屋出てってくれよ」


安堵のため息をつきながら、少しふて腐れて応える。
間一髪、彼女に掛け布団をかけてベッドに腰掛けた。
幸い冬場でボリュームのある羽布団は、全く違和感を感じさせなかった。
問題は起きて布団を払い除けないかで、心臓は今にも飛び出そうなほど、素早く打っていた。


「出てけ、って…… あっ」
「?」
「ああ〜〜、そういうことか。 昴もそういう年頃だもんね」


母ちゃんは首をかしげた後、何か勝手に察したのか、急に気まずそうに苦笑する。


そういうこと? 年頃?
一体何の話だっての……


俺が首をかしげた時、母ちゃんはその疑問に回答した。


「そりゃあ、見られたくない本の一つや二つ、買って来るべな?」
「な!? ばっ……!!」


ああ、また顔に血が上ってきた。
口をパクパクとさせて言葉に詰まっていたが、そんな俺を見て母ちゃんは、自分まで照れ臭そうに言う。


「そんな照れなくて良いのよ〜〜
 別に悪かないし、恥ずかしいことじゃなかよ? ね?」
「違うわ! そんなん買ってねぇべよ! 四十路前で何言ってん……」
「何か言ったべか?」
「いんや、なんも」


頭をかきながら視線をそらして応えると、うっかり出た発言に肝を冷やした。
こういう風勘違いされたのは癪だが、どうにか気づかれずに過ごせそうで、内心ほっとしている。
俺の悪運には、時々感心する。


「あ、そうそう。 昴ちょっと下降りて来てーー」


思い出したように手を叩き、部屋を出ながら母ちゃんが言う。


「えっ、何で……」


俺はぽかんと口を丸くした。
そうして、頭の中では例の如く一人討論がはじまる。


な、なんだ? 俺何かしたのか!?
そういえば、今日はやけにしつこく叱りに来たし……
いやっ、特に怒られるようなことはしてないぞ! 先程の長靴の事以外は!


それに、今部屋を離れるのは気が引ける。
彼女はまだ起きないし、怪我の手当てもした方が良いだろうし……


「いいからいいから、今ニュースで大事な事やってるのよ! あんたにも関わりある事よ!」


腕を組んで唸る俺をお構いなしに、母ちゃんは真面目な顔で階段を降りていった。


「……んん?」


さっぱり分からん。
えーーと、ニュースっつったっけ。
学校は朝早いから、天気予報くらいしか見てないけど……なんか、あったかな?


まぁ、また部屋に来られるのも困るので、仕方なく部屋を出ることにした。
扉を閉める時にベッドの方を振り返ったが、特に変化は見られない。


マジで寝てるのか? 大丈夫、かな……せめて顔くらい、布団退けてやった方が、


「早く来なさーーい」
「ああ、はいはーーい!」


少し戻りかけて、一階からの呼ぶ声に急かされてリビングへ向かう。


「何なん、大事な事って…… スーパーの値上がり?」


頭をかきながら、急かすように俺から口を切った。
リビングでは母ちゃんが座布団に腰掛けていて、不満げな顔を向けると、もうひとつに俺を促す。


なんだ、違うのか?


「それはもうとっくに上がったわよ! あ、ほらほら見て……」
「はいはい」


促されて座ると、テレビにはいつものアナウンサーが映っていて、天気予報をやっているようだ。


何時ものニュースじゃん。
また何かと勘違いして……


『では、先程のニュースですが』


パッと、アナウンサーの下の表示が切り替わった。


「……えっ」


とたんに、画面下半分に目が引き付けられる。
新しく表示された単語は、見覚えのないものだった。




「人妖間……交流、保護法……?」

22:羊羹:2014/11/08(土) 22:51 ID:hRQ

無言になる俺をよそに、母ちゃんは微笑みながら画面を指す。


「そうそう! お昼のニュースから、ずーーっとこの話題で持ちきりなのよ〜〜」


そんな声も耳に入らず、ただ説明を続ける画面を食い入るように見た。
……軽く要約すると、こういう事のようだ。




随分前から、人類以外の知的種族の存在が明らかになっていた。
今までは、彼らとの交流を安全なものにする、この法案を作る為に国際連盟が動いていた。
これより彼らは人間社会に溶け混んでいき、お互いの交流を深めていくのだ、とか。




テレビ画面に、角と牙の生えた大柄な男性と、どこかの国の大統領らしき人が、握手を交わしているのが映る。
難しい事はよく分からない。
確かなのは、日本はこういったデマやドッキリを流さない、ということだ。


「昴の学校も、交流対象校? っていうのに含まれてるらしいから、こういう子が来るかもしれないわねぇ」


意外にも抵抗はないのか、母ちゃんは楽しげに微笑んでいる。
だがそれも、俺の耳には左から入って右から出ていくばかりだ。
明らかに人間ではない鬼のような男性が、画面越しに此方へ微笑む。


人類以外の……知的種族…… 異形の、男性……


これと似たような、人間らしいけど人間ではない者を、先程まで見ていたじゃないか。
じゃあ、あれは、彼女は――


「えっ? ちょっとぉ、まだニュース終わってねえだよーー!」


俺は跳ね起きるように立ち上がると、自分の部屋へと階段をかけ上がる。
無論、頭は混乱していて、母ちゃんの言葉は耳に入らない。


「……そんなに早く見たい雑誌なのかしら」


部屋の前にたどり着き、扉を勢い良く開ける。


あの子は多分、いや恐らく、きっと――


「あ、っ?」


息も荒く駆け込んで、俺は肩を上下させる。


「はあ、はあ……」


羽根布団は、それの尻に敷かれていた。
琥珀色の猫っぽい細目が此方に気付く。


「おや、早かったですねぇ」
「…… あ、は…… は、い」


相手の対応が意外に普通で、つい敬語になってしまう。
声変わり前のような高い声の彼女は、ベッドの端に腰かけて、脚をぶらぶらさせていた。

23:羊羹:2014/11/08(土) 23:04 ID:hRQ

その足元には自分で取ったのか、俺のジャンバーがぺしゃんこになっている。
全身傷だらけで倒れていたというのに、その顔はけろっとしており、口元には微かな笑みさえ湛えている。
つむじから外と内巻きの二段階になっている、艶やかな黒髪。
M字前髪から覗く澄んだ瞳と、こちらを小馬鹿にしたようなハの字の眉。
赤いセーターがよく似合う彼女は、そこだけ見れば中々可愛い子だ。
だけども、額には冷や汗が伝う。
どうしても視界に入る鴉の濡れ羽色の翼は、大きすぎて羽根布団に引きずっている。


「、あ」


生唾をごくりと飲み込むと、相変わらず笑んでいる彼女に口を開く。


さっきのニュースの内容からすると…… やっぱり、そういうことだよな?


「あの……」
「はい」
「あの、あのさっ!」
「はい」


彼女は表情を少しも変えずに、微かな微笑みで機械的に返事をした。
どうやら、日本語の通じる相手のようだ。
俺は震え声になりながら、恐る恐る震える指で相手を指す。


「じっ……人類以外の、知的種族さん……です、か?」
「……」


表情は変わらなかったが、彼女は少し首をかしげ、笑んだままの口を閉じてしまった。


……黙っちゃったなオイ。
あれ? この言い方がまずかったのか?
もしかしたら、彼女なりの差別表現とかになっちゃってたのか……??


暴れだしたり怒られたりしないかと、俺の顔に動揺と困惑が溢れてくる。


「……」
「……」


沈黙。


ええい、何か言ってくれや! 頼むから!!


話も謝罪も出来やしない。
この沈黙に耐えられなくなりそうだ……
実際耐えられずに、本日何度目かの溜め息が出そうになる。


「そう呼ばれてますね」


不意を突くようにサッと振り返り、早口に応える彼女。

24:羊羹:2014/11/09(日) 09:43 ID:hRQ

http://ha10.net/up/data/img/288.jpg
【昴さんと最速系妖怪彼女さんですたい!】

25:羊羹:2014/11/09(日) 10:11 ID:hRQ

「うおっ! お、おお……」


い、いきなり答えるなよ! ビビるだろうが!


沈黙が途切れてくれて安心したものの、後に続く言葉が出てこない。
頬をかきながら文章を組み立てる間、彼女は此方をジーーッと見ていた。
とても、興味深そうに。
そう思った所で、俺が彼女を観察してるから警戒してるのではと気付いて、あわてて目をそらした。
窓の外を踊る雪は、心なしか先程より弱まった気がする。


うーん。
見た所、あっちに敵意はなさそうだし、別段攻撃はしてこないみたいだし……


とにかくまず、警戒を少しでも和らげようと、笑顔を向けて腕を組む。


「えっと。 ちょ、ちょっとお互い整理しようか?」
「構いませんよ」


彼女は首だけを縦に動かして、重い俺の言葉を遮る勢いで返答してくる。

26:羊羹:2014/11/09(日) 10:46 ID:hRQ

えらく気の短い子だな、と思う。
なんだか静かに責められている気分だ。


「えーと……お前は、人類以外の知的種族の一人、で……いいんだよな?」
「はい」
「それで、雪に埋まってて―― あっ!!」


いきなりの大きな声に、彼女はまた首をかしげる。
対する俺は目を丸くして、この距離を少々、気不味く感じていた。


そう言えばこの子、酷い怪我してて……


よく見たくはなかったが、一度考えたら次々に目に着いてしまう。
片翼は根本が深く抉れており、衣類の色ではない赤がちらほら見え、膝には紫に腫れた痣が幾つか。
白い首には、指で強く締め上げられた跡。
まるで落雪でも入ったように、背中が震える。


「っ……」


ああ、彼女に何が有ったのか、それを想像するのは難しくなかった。


もし何も知らない誰かが彼女を見たら、学会や何かの研究対象として……
そういう関係者じゃなくても、何かしら金を貰える程度の事を考える連中は……
いやいや、もう考えるのは止そう。


考えを頭から振り落とすように首を横に振る。
彼女は俺の視線の先に気付いたようで、あっけからんとした様子で頷く。


「ああ……これですか。
 この程度のケガなら2,3日で完治します、心配には及びませんよ?」

27:羊羹:2014/11/22(土) 18:20 ID:hRQ

は…… 2,3日で完治? その傷が?
いやいやいや、可笑しいだろ!


普通掠り傷でも、跡が見えなくなるまでそのくらいは掛るもんじゃないか。
彼女の言葉を脳内でそう否定する。
だが、目を見開く俺を見返す彼女は、まるで掠り傷だと言うように、ケロリとした表情で微笑んでいる。
満身創痍に近い体とは対照的なその表情は、なんだか怖く感じる。
自分より小さい女の子に、情けないものだ……


なんて考える余裕が出来たのは、勿論後の事なんだが。


俺がいつまでたっても間抜けな顔を晒していたからか、彼女の方から口を開いてきた。


「えーと……どうやら私、助けて頂いた感じですか?」

28:羊羹:2014/11/22(土) 19:04 ID:hRQ

「えっ? あ……ああ、まあ。 そういうことに、なるのかな?」


頭の後ろを掻きながら、歯切れ悪く答える俺。


まあ、誘拐犯や変質者に思われなくてよかった……
というか、こういう場合って感謝とかされるものなのか? 瀕死状態を助けた訳だし。
そう考えると少し照れるな……って待てよ? 手当てがすんで初めて完全に助けたって事に――


「じゃっ! これ以上居座っても迷惑でしょうから、帰らせて頂ますねーー」
「へ?」

29:康:2014/11/24(月) 21:50 ID:Pl6

羊羹さんすごい…!!(≧▽≦)

話は面白いし絵もうまいし…

もうなんなんですか!wwww崇拝レベルですwww

もう頑張ってください!!

死ぬほど応援していますからッ!!(∩´∀`)∩

30:羊羮◆R.:2014/11/25(火) 18:36 ID:hRQ

>>29
レスありがとうございます!

読み返す度に頭を抱えてしまうんですがね……ここ、こうした方が良かったかなーとか;
いやいや崇拝だなんて恐れ多いですよ!
でも、ありがとうございます。
応援嬉しく思います!

康さんは何か書いてらっしゃいますか?
有れば見に行きたいのですが……!

31:康:2014/11/25(火) 20:32 ID:Pl6

え…と…

恐縮ながら小説板で「アント・ワーム〜妖魔のウイルス〜」などを

書かせていただいてます!((ノェ`*)っ))タシタシ

まだ始めたばっかですけどね…(*ノωノ)

羊羹さんは「最速系妖怪彼女。」以外にも何か

書いていますか?書いていたらすっごく見てみたいです!!

32:羊羹:2014/11/29(土) 10:03 ID:hRQ

>>31
ほほう、後で読みに行きますね!
わたしも途中までは断念した奴のリメイクですよ。
末に直したい所がちらほらありますがw

他には書いていないのですが……
惑星擬人化とか書いてみたいですね!((
すみません、異質すぎましたなw

33:康:2014/11/29(土) 21:29 ID:Pl6

いえいえ、そんなことありませんよ!!

僕も見てみたいなあ…惑星擬人化!!書くとしたら

頑張ってください!!これからもお互い頑張りましょう!!

*・゜゚・*:.。..。.:*・'(*゚▽゚*)'・*:.。. .。.:*・゜゚・*


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