これが恋ってやつですか

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1:ゆーこ◆oo:2014/11/15(土) 21:56 ID:kII

本谷千寿(ちづ)。高2。今日から、高校2年生だ。
うわーー、緊張する。ただでさえコミュ障のあたしが友達できるのかな。1年の頃に仲が良かった理穂ちゃんとは違うクラスになってしま
った。

でもま、いっか。理穂ちゃんがいるし、無理して友達作ることないし。

教室に入る。あーー、もう既にグループが……。3年になったらクラス替えあるし、1年間ぼっちで過ごすしかないのかなー。

黒板の座席表を確認してあたしは席に着いた。えっと、隣の席はどんな人かな? そう思って隣を見る。

うわぁあああああ! イケメンだ! あたしの最も苦手とする人種だぁああああ! 生まれた時からリア充のやつだーー!

あたしに気付いたらしく、イケメンは声をかけてきた。

「おー、よろしく! 名前は?」

おおぉ! さすがにイケメンだ! いきなり名前とはーー! とか思いつつ冷静を装って答えた。

「本谷……」

「本谷? 下の名前は?」

え、そこ触れるかよ。ってか自分から名乗るのが礼儀じゃないの!? あたし、自分の名前嫌いだしなー。親には悪いけど、あたしは自分
の名前が好きじゃなかった。『千寿』なんておめでたすぎるし、初対面の人に読みを間違えられることもたまにある。

だからあたしは理穂ちゃんみたいなフツーで可愛らしい名前に憧れてた。

「ああ、俺は、三浦斗真ね。で、下の名前は? 本谷何?」

「千寿……です……」

「へぇ、どういう字?」

「漢数字の千に、寿です」

「へぇ、よろしく! 千寿!」

「えっ! なんで!?」

「ん、似合ってると思ったし。ダメ?」

ダメではないです。答えながら、思った。何か、くすぐったいな。あたしを下の名前で呼ぶのって、家族か理穂ちゃんぐらいだし、女
子でさえ名字で『さん』付けだったし。ましてや男子なんて、下の名前で呼ばれるのは幼稚園とか小学校以来だ。

やっぱりイケメンだし女の子慣れしてるのかな。何か、すごいなー。

2:ゆーこ◆oo:2014/11/15(土) 21:58 ID:kII

初めまして。ゆーこです。

元れん子で、その前はアイ子でした。最後まで書き切れる保証はないんですけど、頑張ります!

不器用女子と爽やかイケメンの恋愛もの(ベタ)を書きたいと思います!

感想やアドバイス大歓迎ですのでよろしくお願いします!

3:ゆーこ◆oo:2014/11/15(土) 22:53 ID:kII

2年生になって二週間。イケメンの三浦君は、やっぱり中身もイケメンで、女子にモテていた。

でもなんでか、下の名前で呼んでるのはあたしだけみたいだ。まあ多分、女の子扱いされてないんだろうなー……。

それにしてもあたしはぼっちを極めていて、お昼は理穂ちゃんが来て一緒に食べるけれど、理穂ちゃんには悪いなーって思っている。

理穂ちゃんは社交的で明るいし可愛いから、多分今のクラスでも友達がいるんだろう。それなのにお昼はわざわざあたしのところに来
てくれる。

「理穂ちゃん、なんかごめんね。お昼、わざわざあたしのところ来なくても平気だし、心配しないで」

「えー! 何言ってんの! あたしが千寿と食べたいから来てるんだよ! 気にしないで!」

「理穂ちゃん……!!」

あたしは思わずジーンときた。なんて優しいんだ!


あたしが理穂ちゃんと出会ったのは中1の時だった。引っ越して他県からこの町に来たあたしは知り合いが一人もいなくて、やはりぼっちだっ
た。そんなあたしに声をかけてくれるのが、理穂ちゃんだった。

明るくて友達が多い子だった理穂ちゃんは、あたしの憧れだった。今でも、憧れ。気にかけてくれて面倒見がいいし、あたしの大好きな親友だ。

そんな理穂ちゃんが三浦君の事を話題に出した。

「理穂のクラスってさ、三浦君って男子いるよね? 理穂は男子にキョーミないから気づいてない?」

「いや、知ってるよ。三浦君がどうかした?」

「珍しい! 名前まで覚えてるんだ」

なんか理穂ちゃん失礼じゃない!? 隣の席だしあたしを名前呼びするし知ってるよ、と理穂ちゃんに言った。

「そうなんだ〜! いいな〜! やばいよ、うちのクラスで超人気。イケメンだって噂だよー? 隣だなんてついてるね!」

「そうなんだ。あたしには関係ない事だな」

「あははっ! あ、やば、予鈴鳴っちゃった。行くね! 帰りにまた!」

うん、と言って理穂ちゃんに手を振った。同時に、教室の外にいた人たちがぞろぞろ戻ってくる。

理穂ちゃんがいなきゃあたしは本当にぼっちだ。

「よ、千寿。お前さぁ、あの隣のクラスのやつ以外に友達いないの?」

「えっ! いるし! 失礼だな!」

「じゃあ誰?」

「……そ、それはだね……」

「やっぱいねーんじゃん。友達作れよー」

「余計なお世話だ! 理穂ちゃんがいるから平気だ!」

納得したようなしてないような反応をして三浦君は授業の準備をしはじめた。それにしても失礼だな……。

4:ゆーこ◆oo:2014/11/16(日) 17:27 ID:kII

それからというものの、三浦君は頻繁にあたしに話しかけてくるようになった。

でも、あたしはそれが嫌だった。

多分、三浦君は優しいからクラスで仲がいい子のいないあたしを憐れんで話しかけてくれているんだと思う。それが、嫌だった。

友達が少ないからって男子の同情を買うほどこっちは悩んでないし。

「でさ、千寿。ってあれ? 聞いてる?」

「…………」

う、うわあぁあぁ! 無視してみた。怒るかな? どうしよ。でも、それで話しかけてこなくなるならいいや。

「おーい、もしもーし?」

三浦君はそう言って顔をグイッと近づけてきた。ち、近い!!

「な、何!? 近いし!」

「なんだ、聞いてんじゃん」

「あのさ、あたしに話しかけないでいいし! 友達なら理穂ちゃんがいるし、無理して作ろうなんて思ってないから!
三浦君もあたしが可哀想だからって話しかけないでいいから!」

「何言ってんだよ、お前。別に俺、お前が可哀想だからって理由で話しかけてんじゃねーよ? 俺が話したいと思ったからだから」

何それ、そんな事言われたの初めてだ。くすぐったい……。

「へ、へぇ!」

結局それしか言えなかった。

5:ゆーこ◆oo:2014/11/19(水) 19:12 ID:kII

お昼休み、また理穂ちゃんが来てくれた。他愛ないお喋りをしながらお弁当を食べていると、三浦君が近寄ってきた。

「千寿ー、今日の弁当は? おっ、うまそーじゃん」

「ありがと」

「えーっ!? 何々、千寿と三浦君って仲いいの? 初耳ーっ!」

そっか。理穂ちゃんには言ってなかった。三浦君が私にたくさん話しかけてくること。

「別にそんなことないよ」「ああ、友達だ!」

あたしの声と三浦君の声がかぶった。しかも言ってることが真逆。理穂ちゃんが大爆笑した。

「あははっ! 結局どっちなの?」

「だから違うって! 三浦君が勝手に……」

ハッとして三浦君の方を見た。すごく傷ついたような顔をしていた。……そんな顔しないでよ。なんでさ……。

「……あ、ごめん」

三浦君は何も言わずに立ち去った。何か後味悪いな……。

「ちょっとー! 何今の!? 千寿ってば三浦君と仲いいの?」

「……三浦君が勝手に話しかけてくるだけだよ。あたしは迷惑だし……」

そう言った途端、理穂ちゃんの目が輝いた。何度か見たことあるこの顔。

「きゃーっ! それって三浦君が千寿の事好きなんじゃないのー!? いいないいなー! あたし応援するよー!」

「…………!! そ、そんなわけないでしょ! ありえないから! あたしは好きじゃないし!」

あ、やば……。結構声のボリュームが大きかったかも。普段は目立たない癖に何やってんだって思われるかなー。幸い、三浦君は教室にいな
かったけれど。

「ふーん。まっ、好きになったら教えてよ〜! じゃあね〜」

そう言い残して理穂ちゃんは自分の教室に帰って行った。それと同時に三浦君も戻ってくる。

「俺はお前の事友達だと思ってるから」

あたしの目を見て、そう言ってきた。やだ、理穂ちゃんがあんなこと言うから……。変に意識して三浦君の顔が見れない。

あたしが何も言わないから三浦君はさらにこう付け加えてきた。

「千寿が、どうしても嫌だって言うなら絡むのやめるから。嫌だったら言って」

嫌なんて一言も言っていない。さっきのもつい意地になってしまっただけだ。そんな風に誤解されているのは嫌だ。

「別に、嫌って一言も言ってないし」

それだけ言ってそっぽを向いた。顔が熱いのは何でだろう。

6:◆oo:2014/11/19(水) 21:02 ID:kII

あたしの、『嫌なんて言ってない』発言以来三浦君はますますあたしに絡んできて、理穂ちゃんはますますそんなあたしと三浦君をからかう
一方だった。

理穂ちゃんはいつも

「三浦君が千寿に絡むのは千寿の事が好きだからだよ」

なんて言う。理穂ちゃんはあたしたちとは違うクラスだから知らないだろうけれど、三浦君は基本的に男女問わず誰にでも平等で優しい。

いいな、と思う。そんな風に人にやさしくできる三浦君が。あたしは中学の頃から友達が少ない方だった。どうも優しさというものが苦手だ
った。人に優しくするのもされるのも苦手で、『愛想が悪い』とか『感じ悪い』とかよく言われた。

だから、誰にでも優しくできる三浦君が羨ましい。あたしはつい最近、三浦君とアドレスを交換した。正直ちょっと感動した。アドレス帳に
、家族と理穂ちゃん以外の人が追加されるなんて……!

メールは苦手だからあたしからは送らないけれど、三浦君からはたまに来る。

三浦君にも理穂ちゃんにも言ったことはないけれど、あたしも三浦君を『友達』と思えるようになってきた。

理穂ちゃん以外に友達がいなかったあたしは、それが嬉しくて嬉しくて仕方なかった。メールが来るのも話しかけられるのも、『友達』の証
みたいで良い。

三浦君は男子だけどそんなこと全然関係ないくらい楽しかった。

ある日、三浦君にこんなメールを送ってみた。

『前は友達じゃないなんて言ったけれど、今は友達だと思ってます。』

あたしは、理穂ちゃん相手でも家族相手でもメールだと敬語になる癖がある。こんなこと絶対口じゃ言えないからメールで言ってみた。ドキ
ドキする。

5分くらいして、返信が来た。

『俺は千寿の事友達だと思ってないよ。俺、』

メールはそこで途切れていた。

そっか、友達って思ってたのはこっちだけか。なんだ、そっか。勘違いしちゃいけないな……。

やっと友達ができたと思ってたけど、違うよね。うん、わかってた……。わかってた……。

7:◆oo:2014/11/19(水) 21:03 ID:kII

>>8で、三浦君視点のを書きます

8:◆oo:2014/11/19(水) 21:10 ID:kII

千寿からメールが来た。いつもメールするのは俺からだ。千寿から来たことは一度もない。

メールアドレスを聞くとき、気持ち悪がられるんじゃないかとかなりヒヤヒヤしたけれど、意外とあっさり教えてくれた。

それにしても千寿からメールが来るのは初めてだったので、俺は小躍りした。

速攻で返信して嫌われると嫌だが、メールを見るとどうしてもすぐに返信したくなる。

その衝動を抑えるために本文は読まずに5分ほど放置して、それから返信した。これはなかなか名案だと自分でも思う。
千寿からのメールにはこう書いてあった。


『前は友達じゃないなんて言ったけれど、今は友達だと思ってます。』

メールでの敬語はあいつの癖らしい。そこも可愛い。

嬉しかった。以前、友達なんかじゃないと言われて結構へこんだけど、今こう思ってくれているなら過去の事なんてどうでもいい。

でも、俺自身の千寿に対する感情はもう友情じゃなくなってきた。

俺は、あいつと友達どまりじゃ嫌だ。

『俺は千寿の事友達だと思ってないよ。俺、千寿の事』

そこまで打ってやめた。『千寿の事』の部分を消す。あえて俺、で終わらせておこう。

9:◆oo:2014/11/22(土) 13:27 ID:kII

あたしはあれ以来三浦君の事を避けるようになってしまった。

三浦君もあたしに避けられていることに気づいてから、無理に話しかけてこなくなった。

三浦君に『友達だと思ってない』と言われたことは理穂ちゃんにも話していない。

あたしは、三浦君を怒らせたり三浦君が傷つく言動を何かしてしまっただろうか。あれ以来ずっと考えている。

だって三浦君は最初、『友達だと思ってるから』と言ってくれたのだ。なのに……。あたしが何かしてしまったとしか考えられない。

それが何かわかれば改善して、謝れば済む話だ。でも、わからないから途方に暮れている。あれだけ避けておいて本人に聞くこともできない。

理穂ちゃんに言ってしまえば楽かもしれない。理穂ちゃんはきっと、あたしと一緒に悲しんで、三浦君に怒ってくれる。もしかしたら三浦君に直
接抗議だってしてくれるかもしれない。

でも、それは違う。あたしが何とかしなきゃ。

彼の方から何か言われるのを待ってちゃダメなのはよくわかるけど……。あたしは何をすればいい?

あたしは、何ができる?

10:◆oo:2014/11/22(土) 15:36 ID:kII

次の日も、またぐるぐる悩んでいた。隣の席なのに、話しかけようと思えば、簡単なのに。メールだってできるのに。

「なあ、千寿」

「へっ!? な、何!?」

ぐるぐる悩んでたら、三浦君に声をかけられた。うそ……。あたしから話しかけるのは、無理だったか……。

「ちょっと来て」

三浦君に立つように促されたので、後を追った。言葉はない。三浦君は、踊り場で足を止めて振り向いた。

「あのさ、俺が千寿に『友達だと思ってない』って言ってたの、なんでかわかる?」

「あっ、それ……。あたしも気になってて……。つまり、あたしがなんかしちゃったんだよね。ごめんね……。あたし……」

「違うよ」

そこまで行って三浦君に遮られた。違うの?

「え?」

「俺、千寿の事すきだから。それで、あんなこと言った。まあ困らせるってわかってんだけど……」

「……え? すきって、あたしを? 三浦君が? え、なんで? いつから? 嘘でしょ?」

「嘘じゃないよ。こうなるのもわかってたし。高1の頃から、ずっとすきだ」

「え……。でもあたし、三浦君は友達だって……」

「別に、今すぐ付き合いたいとかそういうわけじゃないから。でも千寿、ずっと勘違いしてるみたいだから言ったんだ。ごめん、じゃあ」

三浦君はあたしに背を向けて歩いて行った。

すきって……。あたしを……? 嘘でしょ? 三浦君はみんなの人気者だし、あたしなんかをすき? しかも、1年生の頃から……?

「どうしよう……」

あたしは途方に暮れた。

11:◆oo:2014/11/22(土) 15:43 ID:kII

>>10
誤字った…orz
10行目の「そこまで行って」は「そこまで言って」の間違いです。
お詫びして訂正いたします

12:◆oo:2014/11/23(日) 18:00 ID:kII

あたしが朝からあんまりぼーっとしているから、見かねた理穂ちゃんが話しかけてきた。

「ちょっと千寿!? どうしちゃったのよぼーっとして! 廊下で声かけたのに気付かないし。具合でも悪いの? 何かあった? 三浦君?」

あたしが『三浦君』という言葉に反応したから、理穂ちゃんはさらに畳みかけてきた。

「やっぱりそうか……。どうしたの? 何があった? 一から全部あたしに話してごらん?」

「うぅ……、理穂ちゃん……ぐすっ」

あたしは全部理穂ちゃんに話した。友達だと思ってないと言われたこと、さっきすきだと言われたこと。洗いざらい、全部。

「今まで黙っててごめん。心配かけるかなって……」

「もう! 千寿のバカぁ! 心配かけさせろよー!」

「ごめん、ごめんね……」

「もういいよ! それより、三浦君はどうするの?」

「あ、それなんだけど……あたしもよくわかんないし。だって三浦君は、理穂ちゃん以外に初めてできた友達だし……嬉しかったのに……」

本当にそうだった。三浦君があたしのことをすきな以上、友達ってわけにはいかない。今まで話しかけてくれたり優しくしてくれたのも、すきだっ
たから……なのかな。純粋な友情ってわけじゃ、なかったのかな。

「千寿は、三浦君とどうなりたい?」

「友達がいい……。勝手かもしれないけど、今のままがいい」

「そっか! じゃあ、三浦君にちゃんとそうやって言いな? 三浦君だって、千寿に告白するの勇気出してくれたと思うし。頑張りなっ!」

「うん! 理穂ちゃん、ありがとう!」

頑張る。三浦君にちゃんと、あたしの気持ちを伝えるために。

13:◆oo:2014/11/24(月) 17:54 ID:kII

次の日、あたしは意を決して三浦君に声をかけた。

「み、三浦君っ!」

「ああ、千寿」

「ちょ、ちょっと話が……。来て!」

昨日とは逆。あたしが三浦君の先を歩いて、踊り場へ向かう。

「あの……昨日好きって言ってくれて嬉しかったんだけど、あたし三浦君とはまだ友達でいたい……」

「……うん、ごめん。友達、な」

「う、うん……。それじゃっ!」

踵を返して教室に戻る。あー……、調子狂う。なんか緊張した。勇気いるなあ。

「千寿♪ どうだった?」

「あ、理穂ちゃん! ありがとう! ちゃんと言えたよ!」

「そっか! じゃあ放課後はケーキ食べに行こうっ!」

「行くーーー!」

あたしはケーキが大好きだ。理穂ちゃん、優しい。

そして待ちに待った放課後。

「あったー! ここ、この間雑誌で紹介されてたよ。美味しいんだって〜」

おしゃれなカフェだな。オープンテラスがあって、そこで食べるのも良さそう。

理穂ちゃんと店内に入って、ケーキを頼んだ。あたしはチーズケーキ、理穂ちゃんはガトーショコラ。理穂ちゃんの大好物はチョコレートだ。

運ばれてきたケーキを食べながら、他愛ないお喋りをした。それにしてもここのケーキ、すっごく美味しい。

「千寿……、あたしね、好きな人ができたの」

意外な発言だった。理穂ちゃんに好きな人!? 誰々、と詰め寄る。

「三浦君……」

「え!? 三浦君って、あの三浦君!? ホントに!?」

理穂ちゃんが三浦君を好き!? 嘘でしょ!? 接点あるなんて思ってなかった。

「うん、三浦君。千寿には悪いんだけどさ……、好きになっちゃった」

真っ赤な顔で理穂ちゃんはそう言った。こんなに可愛い顔の理穂ちゃん、見たことないかも。

きっかけを、理穂ちゃんは話してくれた。最初は、あたしのところに来るときに顔を合わせるだけだったが、だんだん好きになっていったらしい。

「顔見るだけで……ドキドキしちゃって……三浦君が千寿の事好きだってすぐ気付いた。なのに、ごめんね……」

「あたしはいいよ。気にしないで」

口ではそう言ったけど、何でこんなにもやもやするんだろう。

14:◆oo:2014/11/24(月) 18:07 ID:kII

次の日も理穂ちゃんとお昼を食べて、そこに三浦君が割り込んできたりした。あたしは注意深く理穂ちゃんを観察してみた。

うーん……三浦君が来ると、少し赤くなってる……? 気のせいかな。あんまりいつもと違いがなさそう。

でも、理穂ちゃんと三浦君が親しげに話している場面はあった。理穂ちゃんが教室に戻った後、三浦君に聞いてみた。

「三浦君、理穂ちゃんに手出さないでね?」

「は? 俺が中村に? なんで手出すんだよ。俺がすきなのは千寿だよ。俺、別に誰でもいいってわけじゃねえし」

「そう……」

そういえば三浦君は、あれ以来やたら好き好き言ってくるようになった。あたしはいちいち反応に困る。

そしてこのもやもやは何なんだろう。あたしは、理穂ちゃんの泣き顔は見たくないなあ。

15:◆oo:2014/11/27(木) 18:55 ID:kII

三浦君は相変わらずあたしに(というか誰にでも)優しいし、理穂ちゃんは三浦君の事を好きっぽい。

でも、理穂ちゃんが三浦君に告白したりすることはしていないから何も進展していない。あたしはどうすりゃいいのさ……。

複雑すぎる。理穂ちゃんとあたしは親友で、三浦君は(本当かどうかわからないけれど)あたしを好きで、理穂ちゃんは三浦君を好きなのだ。

厄介だ……。あたしは理穂ちゃんが大好きで、三浦君の事は別に何とも思っていない。だから余計に厄介だ。

中学の頃は、あたしは男子とかかわりがなかったから恋云々の話は理穂ちゃんとしたことが無かった。

みんなが言うところの「恋バナ」も、あたしにはくすぐったいだけで共感も何もできなかった。

早くどうにかしたい。たとえば、理穂ちゃんが三浦君と付き合ったり三浦君があたしのことを好きじゃなくなればいいのだ。

なのに三浦君は理穂ちゃんの気持ちも知らずにやたら好き好き言ってくる。理穂ちゃんも笑ってるけれど、本当はどう思ってるんだろう……。

あたしは思い切って、理穂ちゃんに言ってみた。

「理穂ちゃん! 三浦君に告白しなよ!」

「ええっ!? な、なんで? 無理だよぉ……。三浦君は千寿の事好きなの確定してるし」

「言う前からあきらめるのは良くないよ! 三浦君だってあたしに飽きたかもしれないし! ねっ!?」

「えぇ……。どうしたの急に。前の千寿なら絶対そんなこと言わなかったもん」

うっ、気づかれた……。あたしは理穂ちゃんに、三人の関係をどうにか進展させたいと話した。

「そっかぁ。でもあたしはなぁ……。千寿が、三浦君と付き合えば?」

「えぇっ!?」

今度はあたしが驚く番だった。

「だってさー、三浦君は千寿の事すっごく好きみたいだし、千寿だって彼氏欲しいとか思わないの? 人生変わると思うの」

「人生変わるって……。大袈裟じゃない? あたしは三浦君の事何とも思ってないし、彼氏欲しいなんて思わない。それに、理穂ちゃんに悪いし」

「ええ! そんなの気にしてるの? あたしは千寿の恋なら応援するって!」

「いや、でも……」

あたしがうろたえているとちょうどよくチャイムが鳴って、理穂ちゃんは名残惜しそうに教室から出て行った。

そしてそれと入れ替わりに三浦君が戻ってくる。

「なあ、千寿。俺、返事はすぐじゃなくていいって言ったけど、やっぱ千寿と付き合いたい」

みんながいる前で、堂々とそんなことを言いだした。モテる三浦君があたしなんかにそんな事言うから、女子はざわざわして男子は冷やかした。

「無理だよ! ってかみんなの前でそんな事言わないで! 迷惑なの!」

そう言い捨てて、教室を飛び出した。

16:◆oo:2014/11/29(土) 19:47 ID:kII

「おい、千寿! 待てって!」

三浦君が後を追ってきた。速い……。追いつかれちゃう。いやだ。

「いや! 来ないで!」

あたしも必死で逃げる。体育の成績が良いわけじゃないけれど、いつもより速く走れてるのは気のせい?

それでもとうとう捕まった。息が切れる……。

「逃げんなよ。ごめん、勝手なこと言って。もうお前には関わらないから……」

「えっ?」

こんなに必死で追いかけてきて、言うのはそれだけ? それを言いに追いかけてきたの?

「じゃあなんで追いかけてきたの? それだけ言うために?」

「……悪いかよ」

「別に? 授業遅れるんじゃないの? 行けば?」

「それは千寿もだろ。行こうぜ」

三浦君があたしの手首をつかんでぐいぐい進み始めた。誰かに見られたらどうするの。誤解される……。なのに……、嫌じゃない。

「離してよ。関わらないんじゃないの?」

「やっぱ前言撤回だわ」

突然そう言われた。前言撤回? はやくない?

「だって千寿、俺がもう関わらないって言った時寂しそうな顔した」

「……!! してないし! ていうか手離して! あたし最初から授業サボるつもりだったの!」

「じゃあ俺も一緒にいるわ」

何も言えなかった。三浦君が、サボりならここがいいと資料室を指した。あたしはサボったことなんてないからよくわかんない。

「めったに人も来ないしさ、日当たりもいいよ」

「……そうなんだ」

本当だ、確かに日当たりもいい。ちょうどいい広さでパイプいすと机も置いてあった。椅子は二つあって、向かい合う形になっていた。

あたしが腰掛けると三浦君も当然腰掛ける。

「千寿ってさ、俺の事嫌い? 迷惑?」

「……別に」

「良かったー……。じゃあ、俺がこれからも千寿の事好きでいるの認めてくれる?」

「勝手にすれば?」

「ん、じゃあ好きでいる。大好き」

笑顔でそう言った。心臓の鼓動がうるさいのは、こういう事言われるの慣れてないから……だよね?

17:MIYABI:2014/11/29(土) 22:55 ID:/Y2

どきどき・・・(οωο)
題名とピッタリで面白いです!
頑張ってください^^

18:◆oo:2014/11/30(日) 12:14 ID:QNk

>>17
ありがとうございます!

19:◆oo:2014/12/05(金) 16:15 ID:kII

資料室から戻ると、案の定クラスの人に冷やかされた。

「あっれー? お前ら二人で消えて二人で戻ってきたのー? いやらしいことでもしてたのー?」

誰かがそう言った。そんなんじゃないし! あたしが声を上げる前に、三浦君が言った。

「うるせえなあ! 別にそんな事してねえよ。あくまで俺の一方通行だし」

ヒューヒュー! 片思いー! 冷やかしはさらにエスカレートしていった。

一日中冷やかされ続けて、疲れ切ったあたしはチャイムが鳴るのと同時に帰ろうとした。

「ねぇねぇ、本谷さーん?」

クラスの三人の女の子たちが声をかけてきた。前田里琴ちゃん、楠原安未果ちゃん、藤堂楓ちゃんの三人だ。クラスでもリア充系グループに属し
てて、派手で可愛い三人。

嫌な予感……。そしてそれは、的中した。

「ちょっと来て? 話があるの」

あー……やっぱり。大方三浦君の事だろう。

「ちょっとこの後外せない用事があって……」

ダメもとで言ってみる。それも無視され、体育館裏に半ば連行されるように向かった。

「本谷さんってさあ……何? 斗真の何なの? 彼女!?」

里琴ちゃんに問い詰められた。やっぱりな……。ダッシュで逃げ出したい気分。

「別に、付き合ってるとかじゃないよ! 友達!」

「はぁ? 友達ィ!? お前ごときが調子乗ってんじゃねーよ、ベタベタ斗真に絡むなっつーの!」

そう言ってどつかれた。不意打ちだったので大きく尻もちをついてしまった。痛い……。

「アッハハハ! いい気味〜! 写メ撮っちゃおっと。お前、これ以上調子乗るなよ?」

男子の前では可愛らしく振る舞ってる里琴ちゃんとは思えないほどの声で凄まれた。

「ほんっと、里琴の言う通りだよ〜! 斗真はさー、あんたの事好きみたいだけどすぐ冷めるよ? やだ、もしかして本気で勘違いしてた? 
恥ずかしー! 斗真はいっつもそうだもん。地味子ばっか好きになってすぐ冷めるの。それに、斗真はみーんなの斗真だからね?」

そう言い捨てて、三人は立ち去った。悔しい、悔しい、悔しい……。あんな奴ら、許せない。それに、最後に楓ちゃんが言ったことが頭に残って
いた。『斗真はいっつもそうだもん。地味子ばっか好きになってすぐ冷めるの』……。だとしたらあたしも、その中の一人?

もうサイアクの気分だ。三浦君に好かれても、女子には嫉妬されるし男子には冷やかされる。もうやだ……。すぐ冷めるなら、そうしてほしい。

それに、あたしもどうせ、三浦君が好きになるらしい『地味子』のうちの一人なんだろう。

あーあ……。

20:◆oo:2014/12/09(火) 16:31 ID:kII

「千寿〜! 今日中村休みだろ? 天気良いし一緒に弁当でも……」

「ごめん、無理」

うっ、ちょっと辛いけど頑張れ、あたし。里琴ちゃん達には三浦君に近づくなって言われたし、あたしも関わりたくない。

逃げるようにして足早に教室を出た。お昼休み、どこもお弁当を食べる子たちで埋まってる。どこか一人になれる場所ないかなぁ……。

考えながら歩いていると、思い当たる場所があった。資料室! あそこなら一人になれる。三浦君の事考えそうになるけど、関わらない関わらな
い……自分に呪文をかけて資料室に向かった。

やっぱり! 予想通り誰もいなくて、1人でゆっくりお弁当を食べた。いつもは理穂ちゃんか三浦君がいてくれるから、一人で食べるのって久し
ぶりだなあ。話しながらだとじっくり味わったことないけど、お母さんの作ってくれるお弁当はやっぱりおいしい。

今日は梅おにぎりと唐揚げ、卵焼き、プチトマト、きんぴらごぼう、デザートはリンゴだった。ありきたりだけど全部あたしの好物だし、おいし
い。お米も甘いんだなあって思いながらゆっくり食べて、デザートのリンゴを食べていた時だった。

「千寿……」

三浦君が資料室に入ってきた。なんで? あたしのこと探しに来たの?

あたしが慌てて立ち上がろうとしたから、三浦君があたしを引き留めた。

「ごめんって! まさかいるとは思わなかったし、俺もびっくりだって。何もしないからここにいて!」

ほんとかなあ、と思いつつもあたしは黙って椅子に座りなおした。気まずい沈黙……。

「前田達に何か言われただろ、千寿? 気にすんなよ、あんなの」

「なんでそれ……」

「あいつらが自分から言ってきたんだよ、俺ホントああいうの大っ嫌いなんだ」

「……。三浦君は、『地味子』が好みなんでしょ? だからあたしの事も好きになったんでしょ? なら諦めて。あたし三浦君を好きになんか絶
対ならないし、そういう気持ち持たれるのも、みんなに冷やかされたりするのも迷惑なの!」

「は!? それもあいつらに言われたのかよ!? そんなのデタラメだ!」

「デタラメだとしても、迷惑なの! だからやめて! あたしに関わらないで!」

そう言って資料室を飛び出した。しまった。お弁当箱を忘れてきた……。どうしよう、後でとりに行かなきゃ。そんな事を冷静に考えていても、
本当は心はぐちゃぐちゃだった。

最初は、自分に純粋な好意を持ってくれている三浦君にうろたえつつも、そう思ってくれているのは嬉しかった。でも、三浦君がどんどん大胆に
なって、そのうえ理穂ちゃんも三浦君を好きだって言うし、あたしは困ってた。

そこに来ての、昨日のアレだ。もう本当に困ってたし、迷惑だと思ってた。ああ言ったのは本心からだ。三浦君には早くあたしのことを諦めてほ
しい。

だいたい、顔も良くてモテる三浦君があたしなんかを好きになる理由が分かんない。あたしは地味だし、性格はひねくれてるし。三浦君なんて彼
女を作ろうと思えば簡単に作れると思う。なのになんであたしなんか……。

意味わかんないし、ほんと、好きとか言われるの慣れないし、最悪。三浦君の事が大っ嫌いで憎くてしょうがないってわけじゃない。だから余計
に困る。早くあたしなんかよりマシな別の子を見つけてその子と恋すればいいのに。そしたらあたしも、楽になれるのに。

21:桃モッツァレラ◆Ow:2014/12/10(水) 18:36 ID:kII

うぅ……。一人じゃ何も解決できないよ。理穂ちゃんが恋しい。風邪を引いてるのを承知で電話した。

「もしもし、千寿? どしたの?」

あ、やっぱり少し鼻声だ。咳もしてるし。

「ごめんね、理穂ちゃん、風邪引いてるのに……。私、三浦君とはもう関わらないって決めたの」

「風邪はいいよ、治りかけだし。それよりなんで!?」

「うん、実はね……」

里琴ちゃん達に言われたこと、三浦君に好意を持たれることにすごく困ってること、理穂ちゃんも三浦君を好きだというし、それも困ってること。
全部話した。理穂ちゃんはうんうん、と相槌を打ちながら聞いてくれた。

「前田さんたち、ひどいねぇ。でも、三浦君の言う通りデタラメなんじゃないの? あたしもさ、三浦君はもう諦めたよ。千寿にはかなわないっ
て思ったし、三浦君の事も千寿の事も応援したい。これはホントだよ。遠慮してるとかじゃないの。二人がうまくいくといいなぁって思ってる」

理穂ちゃんはそう言ってくれた。本心じゃなくても嬉しい。あたしの事も三浦君の事も思ってくれてる。

「理穂ちゃん、ありがとう。でもね、あたしじゃもったいないと思ってるの。三浦君さ、イケメンだし、モテるでしょ? なのにあたしなんかの
こと好きになってさ、すごいアピールしてくるの。きっとあたしなんかより良い子はいっぱいいるから、早く諦めてほしいの。あたし以外の人と
幸せになってほしいの」

「千寿……。千寿は気づいてないだろうし一生気付かないだろうから教えてあげるけど、あんた三浦君の事好きになっちゃってるよ。あたしが三
浦君と千寿が幸せになればいいなあって思うのは、二人の事が好きだから。三浦君はもう諦めたけどね。千寿もなんだかんだ言って、三浦君に幸
せになってほしいって、思ってるんでしょ? それに、あたしが三浦君の事好きって聞いたときもやもやしたんでしょ? 千寿がそんな事言うの
初めてだし、三浦君の気持ちは本気だと思う。告れとは言わないけど、自分の気持ち自覚した方が良いよ」

好き、なの……? あたし、三浦君の事好きになっちゃったの? 

「でも……、もし三浦君とあたしが付き合ったら、里琴ちゃん達にもっとひどい事されちゃうし……」

「もう、千寿! この際だからはっきり言うよ? あたし、昔のハッキリした千寿の方が好きだった。なのに今はでもでも、だってだって、ばっ
かりじゃん! 自分の事守ってばっかり! 前田さん達なんか気にすんな! 自分の気持ちに正直になれ!」

「…………。うん、じゃあね……」

電話を切った。理穂ちゃんに怒られた……。でも、理穂ちゃんの言う通りだ。あたし、自分ばっかり守ってた。もやもやしてたのは、気づいてな
いフリしてた。あたしはもう自分に正直になろう。

「あたしは、三浦君が好き」

声に出してそう呟いてみた。今なら、本当の気持ちを言える気がする。

22:桃モッツァレラ◆Ow:2014/12/10(水) 19:33 ID:kII

『今日はごめんなさい。三浦君に会いたいです。話したいことがあります。学校の近くのこぐま公園で待ってます。』

三浦君にそうメールしておいた。来てくれるかな……。わかんないけど、あたしはやれるだけやろう。私服に着替えて、制服以外で人生初のスカ
ートを履いた。

ドキドキしながらこぐま公園で三浦君の事を待った。

何度も何度も、深呼吸。

「千寿……」

三浦君が、来た。ちょっと驚いた顔をしてる。

「スカート、可愛いね。あっ、ごめん、嫌だった?」

あたしは黙って首を振る。いやじゃないよ、うれしいよ。

「今日は関わらないとか迷惑とか、ひどい事言ってごめんね。あたし今日、理穂ちゃんに怒られちゃった。理穂ちゃんに泣きついたの。そしたら
、ほら、理穂ちゃんってお母さんみたいだからさ……って、ごめん。こんなこと言いたいんじゃないの……。あのね……、あたしね……」

泣かないって決めたのに。なのに、言葉よりも先に涙が出てくる。

三浦君は、黙ってあたしを見守ってくれている。

「うっ、ごめんね……。それでね、あたし、理穂ちゃんに言われて気付いて……。三浦君の事、好きなの……。すっごくすっごく好きなの……。
なのに今まで、正直になれなくてごめんね。嘘ばっかりのあたしで、ごめんね」

「本当に? 俺の事、好きになってくれたの?」

涙は溢れるばっかりで、言葉に出せないから、あたしは何度も頭を縦に振った。

「あ〜〜〜っ!」

三浦君が突然叫んだ。

「どうしたの?」

「俺、世界一幸せ者かも。今なら死んでもいい」

とびっきりの笑顔でそう言ってくれた。そんなにあたしの事、思ってくれてたんだ……。

「し、死んだらダメだよっ」

「うん、死なないけどね。俺、千寿の事すっげー好きだわ。大事にする。好きになってくれてありがとう」

「あっ、こちらこそ……」

三浦君が深々と頭を下げたので、慌ててこっちも頭を下げた。

そして、二人で同時に顔を上げて、笑った。

今日は最高にいい日だ。

23:桃モッツァレラ◆Ow:2014/12/12(金) 21:14 ID:kII

三浦君と毎朝一緒に学校に行く約束をして、公園で別れた。

「じゃあ明日、朝千寿の家の前で待ってるな。寝坊すんなよ」

「しないよ! 三浦君こそ!」

「確かに楽しみな予定がある日は眠れないから、寝坊すっかも。じゃーな」

「う、うん」

楽しみな予定って……。あぁ、あたし、三浦君の彼女になったんだ……。部屋でそう実感していた。

そうだ、理穂ちゃん。理穂ちゃんに報告しなきゃ、ありがとうって言わなきゃ。

「千寿〜! どうだった?」

「うん、ありがとう、理穂ちゃん! ちゃんと、好きって言えたよ。理穂ちゃんが言ってくれなきゃあたし気付かなかっただろうし、ホントにあ
りがとう。明日、三浦君と一緒に学校行く約束して、バイバイしたよ」

「ラブラブじゃん! 三浦君は千寿にベタ惚れだからね! 末永くリア充爆発しろー!」

「あははっ! ありがとう、理穂ちゃん。大好き!」

「うん、あたしも。じゃあね、おやすみ」

電話を切った。理穂ちゃん、ホントはまだ三浦君の事好きなのかもしれないけど、明るく振る舞ってくれているのは嬉しい。

その直後に、なんと三浦君から電話がきた。

「もしもし? ど、どうしたの?」

「あー、いや、用事はないんだけどさ。声聞きたくなったていうか……」

「…………!!」

さりげなく心臓に来ることを言ってくれた。無意識、なのかなあ。だとしたらスゴイ。

「俺、学校ある日ほぼ毎日千寿と会ってるけどさ、やっぱ声聞きたくなるんだよ。でも付き合ってもないのに電話すんのって変だよなーと思って
今まで我慢してたんだけど」

「そうなんだ。あの、電話、あたしは全然いいよ」

「よっしゃ! じゃあ俺、毎日9時ごろ千寿に電話してもいい?」

「うん、待ってる……。あたし寝ちゃうときあるかもしれないけど、頑張って起きるね!」

「えっ、千寿ってそんな寝るの早いの?」

「いつもだいたい9時半から10時くらいだよ」

「早っ! 健康優良児だなぁ」

「そう? あっ、そろそろ寝るね! またね」

「おやすみ!」

わぁ、幸せ……。あたしは今すごく幸せ。優しい親友と大好きな人に囲まれて、優しくしてもらえてる。

24:柚音:2014/12/13(土) 13:27 ID:AvU

めっちゃ面白いです!
o(^-^o)(o^-^)o
更新頑張ってください!

25:桃モッツァレラ◆Ow:2014/12/13(土) 13:31 ID:kII

>>24
ありがとうございます!
がんばります

26:桃モッツァレラ◆Ow:2014/12/19(金) 16:55 ID:kII

三浦君と付き合い始めてから、あたしの生活が変わった。まず、朝一緒に学校へ行くようになった。そして、毎晩の電話。

電話の内容は他愛ないことで、今日の授業は難しかったとか、宿題はやったとか、そんな話。それでもすごく、幸せだった。

声を聞くたび、目が合うたび、あたしは三浦君の事が好きなんだと思えて、嬉しかった。

そんな幸せ絶頂期に、三浦君からメールが来た。

『もし日曜暇だったら、映画館行かない? 前に千寿が見たいって話してた映画のチケットが偶然手に入って。返事待ってる』

こ、これは……。俗に言うあれだ、デートだ。初デートだ……。そうだ、返信しなきゃ。日曜は予定無いし、OKだよね。お母さんになんて言お
うか。

『日曜、暇です。映画楽しみです』

っと……。あーあ、理穂ちゃんを見習いたい。いつも理穂ちゃんから来るメールは絵文字や顔文字がたくさん使われてて、可愛らしい字面なのに
、あたしのはですます敬語だし絵文字なんてほとんど使わないから可愛くない。


理穂ちゃんにもいろいろ相談して、さんざん悩んだ服を着て、やってきたデート当日。待ち合わせ場所の駅に、既に三浦君はやってきていた。あ
たしを見ると片手を上げて、おー、と嬉しそうに笑ってくれた。

ラフなシャツにジーンズ。私服の三浦君は見慣れないせいかいつもよりかっこよく見える。

「千寿の私服見るの、これで二回目だ。すげー、可愛い」

「……っ。あ、ありがとっ」

「映画始まるまで時間あるから、その辺ぶらぶらしよう。昼飯、食べた?」

「うん、そうしよ。お昼ご飯はまだ」

三浦君とあたしは近くのレストランを見て回ったけど、日曜のお昼なのでどこも混んでいて時間がかかりそうだった。

「今のところ入れそうなの、マックしかないんだけど……」

「仕方ないよ。そこに行こう」

「ごめん、千寿。情けねーな、俺。予約とか取っておけばよかった……」

「仕方ないって。あたし、ハンバーガーがいい。だって三浦君と一緒だもん。それだけですっごく美味しく感じるからね。あんまり高級なのは舌
に合わないだろうし」

「…………。ありがとう、救われた。行こうか」

そう言って三浦君は手を差し出してきた。……え? これって……手をつなぐって事……だよね? どうしよう、一気に手汗が!

「ええ、あの、ちょっと待って……。手汗がすごくて……ハンカチどこだっけ……」

「はははっ、千寿、顔真っ赤。可愛い、りんごみたい」

「赤くもなるって!」

手を念入りに拭いて、深呼吸してからあたしも手を差し出した。あんなに拭いたはずなのに、つないだ瞬間にまた手汗をかいてしまった。

だって、三浦君の手は、すごく男の子の手って感じがしたから。

「ごめんね……。手汗、すごくって。緊張しちゃって……」

あたしがそう言うと、

「いや、俺もだから、大丈夫。どっちの汗かわかんねーし」

と、言って三浦君は無邪気に笑った。些細なことでも、三浦君があたしに笑顔を向けてくれるとすごく嬉しくなる。

27:桃モッツァレラ◆Ow:2014/12/19(金) 16:56 ID:kII

マックでハンバーガーを食べて、映画館に行き映画を見た。あたしの好きな小説が原作の映画で、とても面白かった。

途中、あたしの手の上に三浦君が手を重ねてきて映画どころじゃなくなりそうだったけど、何とか頑張って映画を観続けた。

映画館を出て、三浦君があたしに訊いてきた。

「前から気になってたんだけど、千寿は何で俺なんかの事好きになってくれたわけ? 最初は俺の事なんて眼中にないって感じだったし」

「俺なんか、じゃないよ。三浦君はあたしに持ってないものをたくさん持ってるんだもん。かっこよくて、人望が厚くて、クラスの人気者で……
そして何より、みんなに優しいじゃん。あたしにだって話しかけてくれたし、最初はね、憧れだったと思う」

今まで心の中だけに閉ざしていた思いを、三浦君にぶつけてみた。三浦君は黙って聞いてくれている。

「でもだんだん、憧れが恋に変わっていったの。あたしはそれを認めたくなくて、三浦君を遠ざけた。気付いてないふりをした。でも、理穂ちゃ
んに言われて、やっと自分で自覚した。だって、三浦君が遠くなればなるほど、あたしの好きって気持ちは強くなっていったんだもん。だったら
もう、好きですって言っちゃうしかないよね」

「ありがとう、千寿、本当にありがとう。俺の事、好きになってくれて」

「うん、あたしも。ありがとう。あたしが話したんだから、三浦君も話してよ。どうしてあたしを、好きになってくれたの?」

あたしが訊くと、今度は三浦君が話してくれた……。

28:桃モッツァレラ◆Ow:2014/12/19(金) 20:57 ID:kII

「千寿はさ、俺がみんなに優しいって言ったけど、それは違うよ」

三浦君は初めにそう言ったのだ。なんで? 三浦君は、みんなに優しいのに。

「俺は千寿には特別優しくしたよ。俺の事見てもらいたかったから。まあ、千寿は気づいてなさそうだったんだけどさ」

そう、三浦君は笑った。特別、か……。あたしは三浦君の『特別』なんだ……。それがすごく嬉しかった。

「俺、一年の頃から千寿が好きだった。きっかけはすごい単純なことなんだけど、千寿、怪我した俺に絆創膏渡してくれたんだ。覚えてる?」

そういえば、一年の頃から好きだったって言ってくれてたな。絆創膏……は、覚えてないかも。

「あははっ、覚えてないかー。俺、一年の頃サッカー部だったんだ。今はいろいろあって辞めちゃったんだけどさ。練習してる時に、グラウンド
の外に転がっていったボールを取りに行ったら、すごい無様に転んだんだよね。すげー恥ずかしくて、同じ一年の奴にも先輩にも散々笑われて、
ちくしょーって思ってたわけ」

思わずクスリと笑ってしまいそうになる。三浦君、サッカー部だったんだ。うーん……二年になってから三浦君の存在を知ったからなあ……。

「よく見たら膝をすりむいてて、血がどくどく流れてた。痛いな、ドジふんじゃったな、って思ってたところに千寿が通りかかって、俺になんて
言ったと思う?」

「え? あたし、なんて言ったの?」

「千寿、俺の膝を見て『うわー、痛そう』って言ったんだ。俺、笑っちゃったよ。普通は『大丈夫?』とか言うじゃん? でも、『痛そう』って
と思って。多分、無意識にそう言ったんだと思うんだ。俺が笑ったらハッとして、カバンから絆創膏を出して俺に渡してくれたんだ」

「えー、あたし、そんなことしたんだ。ごめん、覚えてないかも」

「まあ仕方ないよ。それから俺、千寿の事を目で追うようになってた。名前も知らないから心の中では『絆創膏の人』って勝手に名づけてたんだ
けどね。俺、千寿の事好きなんだって気づいて、自分の中でルールを決めたんだ」

「ルール?」

「うん。二年になって同じクラスになれたらまだ好きでいよう、違うクラスになったらその時は諦めようって。だからクラス発表の時はすげー緊
張してた。そしたら見事に、同じクラスになれた。席も隣で、幸せだった。だから、今こうして隣にいられるのはめちゃくちゃ嬉しいんだ」

「そっか……。そんなに、あたしの事、好きでいてくれてたんだ。嬉しいなあ……」

「俺も、千寿になって好きになってもらえて嬉しい。それとさ、千寿は自分の事優しくないみたいに言うけど、それは違うよ」

え? と思わず聞き返してしまった。だって、あたしより三浦君の方がよっぽど優しいもん。

「大袈裟かもしれないけど、この人は人の痛みを自分の痛みとして考えられる人なんだ、って思った。絆創膏渡してくれたのも、とっさにそうし
てくれたわけだし、反射的にそういう事できる人なんだって思った。そういう人の隣に立ちたいんなら、俺もそうしなきゃいけないと思ってなる
べく人に優しくするように心がけてるんだ。俺、千寿と一緒にいると優しくなれる」

優しい優しい笑顔でそう言われて、思わず涙がぽろぽろこぼれ落ちてきた。

「ありがとう……ありがとう、三浦君。好きになってくれてありがとう。あたし、すっごく幸せ」

「へへっ、照れるな。俺も幸せ。行こう?」

そう言って三浦君が手を差し出してきたので、今度は素直にあたしも手を差し出して、二人で手をつないで、並んで歩いて帰った。

29:桃モッツァレラ◆Ow:2015/01/07(水) 18:28 ID:kII


季節は七月。夏真っ只中で、今日から夏服だ。

お昼はいつも通り理穂ちゃんと食べていた。

「相変わらず中村のうまそー! 誰が作ってんの、それ」

理穂ちゃんとあたしに話しかけてきたのは、同じクラスで三浦君と仲がいい黒瀬涼真君。理穂ちゃんによく絡んでる。

「ありがと、黒瀬。お弁当はあたしが作ってるんだよ。すごいでしょ?」

「へー、すげえな。あ、卵焼きうまそー。一個もーらい!」

黒瀬君は理穂ちゃんの卵焼きに手を伸ばして食べた。

「うまい! すっげえうまい!」

「あー! 卵焼き取っておいたのに!」

理穂ちゃんがふくれた。やっぱり理穂ちゃん……。

「ごめん、ごめん。今度ジュースかなんかおごるよ! じゃあな! 行こうぜ、斗真」

「じゃあね、千寿。帰りね」

「あっ……うん! また!」

そうだ、あたしは三浦君と一緒に帰る約束してたんだった。三浦君と黒瀬君が行った後、理穂ちゃんに思い切って聞いてみた。

「理穂ちゃんって、黒瀬君といい感じじゃない? 好き、なの?」

「えっ! 違うよ! 違うよ……」

二回「違うよ」と言ったけど、最後のは語尾が弱々しかった。やっぱり……?

「いや、ほんと違うの……。そう思いたい……けど……」

「どういう事?」

「あたしさー、ほんとに三浦君の事は好きだったんだ。あ、でももう未練とか全っ然ないんだけどね。んで、すぐ黒瀬の事気になってる自分がい
てさー……。なんかもう、軽いのかなって、あたし。ふつう、そんなにすぐ好きな人って変わんないでしょ? なんか、自分がイヤなの。まじ、
自己嫌悪っていうか……」

「悩んでるんだね、理穂ちゃん」

「そうなのよ……。黒瀬があたしの事好きかどうかはわかんないけど、なんか……」

「でも、いいと思う。中途半端だったら失礼だって思うんでしょ? それだけ本気って事じゃん」

「そう……かなあ……」

「うんうん! まだはっきりしてないなら無理にとは言わないけど、好きになったらいつでも応援するよ!」

「ありがと……」

30:桃モッツァレラ◆Ow:2015/01/07(水) 18:29 ID:kII

(今回は三浦君視点です)


**

俺は、念願かなって千寿と付き合えることになった。付き合ってみて意外だったのは、千寿は涙もろいし「すき」という気持ちを言葉にして伝え
てくることだ。

「だって、すごく大切な気持ちなんだもん。言わなきゃもったいない気がして」

と、前に言っていた。会うたびに、俺は千寿を好きになる。千寿はどうなんだろうか。


「三浦君!」

中村理穂。千寿の友達。千寿とかなり仲が良くて、少し嫉妬してしまう。

「あのさ……千寿の事、大事にしてあげてね? 三浦君って手出すの早そうだけどさ、ホントに」

「……人聞き悪いなあ。俺、そんなんじゃねーし。本気だから、わざわざ言わなくても大事にするよ。心配すんな」

「……ならいいけどさー」

「あれ? 理穂ちゃんと三浦君だ。どうしたの、珍しい」

千寿が来た。手なんか出すわけねーよ、出せないし。大事にするから……。

「何でもないよー、ちょっと話してただけ。千寿ー、パン買えた? お昼食べよっか」

「そうなの? クリームパン、買えたよ! 三浦君も一緒に食べよ」

「ああ、俺、黒瀬と学食だから。残念だけどまた今度な」

くそ……意識してしまう。手をつなぐのだって精一杯だったのに……。ウブなのか、俺? ヘタレなのか?

黒瀬に訊いてみよう。あいつなら恋愛経験もそこそこあるしな。それより、黒瀬と中村が最近妙にぎくしゃくしているのは何でだろうか。

でも俺は、大事にするんだ。

31:桃モッツァレラ◆Ow:2015/01/11(日) 13:22 ID:kII

……やっぱり理穂ちゃん、黒瀬君の事意識してるのかなぁ。最近の二人は、妙にぎくしゃくしてる。

「三浦君は、何か知ってる? 理穂ちゃんと黒瀬君、変じゃない?」

「うーん……そう簡単には言えないけど、まあ普通ではないよな。黒瀬、あれで結構頑固だし下手に口出ししない方がいいと思う」

「そっか……」

あたしにできることってないのかなあ。なんだかんだ言って黒瀬君といる時の理穂ちゃんは自然な感じがするし、お似合いだと思うんだけどな。

好きなら応援したいけど、黒瀬君の気持ちはわからないからそう簡単にはいかないんだな。

「そうだ、三浦君。今日ね、あたしお弁当作ってきたんだよね。あの……迷惑じゃなかったら食べてくれる? 腐ってはないと思うから!」

「まじ!? 嬉しい! ありがとう! 千寿の手料理、楽しみー」

お昼休みが来た。この間からお母さんと特訓していた。三浦君の為にもなるし、あたし自身料理のスキルが身につくし一石二鳥

「すっげーーー!」

お弁当箱を開けると、三浦君は歓声を上げてくれた。三浦君の好みはわからなかったし、事前に言ってしまったらサプライズ感が無くなるから聞
けなかった。アレルギーの有無はそれとなく聞いておいたら、無いと言っていた。あの時、バレてなかったんだな

だから、おかずやおにぎりの具材はあたしの好きなものにした。あたしだけじゃなくて、嫌いな人はいないと思うおかずの組み合わせ。

おにぎりだと普通すぎるから苦労して海苔巻を作ったけど、それ以外は何の変哲もないメニュー。

「食べていい? いただきまーす」

海苔巻を口に入れた三浦君は押し黙ってしまった。どうしよう……美味しくなかったかな。変なものでも入ってた?

「ど、どう……かな?」

恐る恐る訊いてみた。

「うっめー! すげえ、千寿! 感動のうまさだわ」

「良かった〜! 何も言わないから美味しくないのかと思っちゃった……」

「ほら、千寿も食べなよ」

三浦君はそう言いながら海苔巻を差し出してきた。えっ……これって、カップルがよくやる「あーん」ってやつ? 

「ん、ありがと」

平静を装いつつ三浦君の手から直接海苔巻を食べた。すると、三浦君はとても驚いた顔をした。

「えっ……ああ! ごめん、違うよね! ごめんね! 勘違いした!」

やっちゃった……。超恥ずかしい。

「いや……別に……」

「そ、そうだ! 三浦君いつも学食だし、あたし作れるときは作ってくるからね」

「いいよいいよ! 千寿大変じゃん。早起きしなきゃなんないし」

「さすがに毎日は無理でも! 頑張るから! 頑張りたいの!」

「そっか、ありがとう」

「あ、もうすぐ予鈴鳴っちゃうから早く食べなきゃね!」

そんな風にしてお昼休みを終えた。

32:桃モッツァレラ◆Ow:2015/01/11(日) 13:32 ID:kII

投稿してから気付いたのですが、>>31にちょっとおかしな点がありました…orz

>だから、おかずやおにぎりの具材はあたしの好きなものにした。あたしだけじゃなくて、嫌いな人はいないと思うおかずの組み合わせ。

おにぎりだと普通すぎるから苦労して海苔巻を作ったけど、それ以外は何の変哲もないメニュー。

「おにぎりの具材は〜」って書いたくせに「苦労して海苔巻を作った」って書いてました。すみません
次の話は第三者視点で男の子たち(三浦君と黒瀬君)のお話を書こうと思ってます!


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