華に散る雪、雪に降る華

葉っぱ天国 > 小説 > スレ一覧 [書き込む] Twitter シェアする? ▼下へ
1:みちる:2014/12/16(火) 22:55 ID:YBk

時は江戸...

夜の灯りと華やかな彩が行き交っている....

たくさんの綺麗な"花”たちが咲いている...


「ようこそ、おいでくんなまし...」




☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆

第一話 「翡翠の輝き」

かぐわしい彩と華やかな灯りに包まれた夜の江戸。
その大通りから何やら賑やかな声が聞こえる。
「お蝶さまのお通りだよっ」
「あれが噂の花魁、お蝶かい、綺麗だねぇ」
どうやら、町で人気を集めている吉原の花魁、お蝶がいるようだ。
髪の毛にかんざしを溢れんばかりに飾り
ここらでは手に入ることのない豪勢な着物を、
なんの違和感もなく普段着のように着こなしてしまう。
まだ若く、子供の無邪気な面影も残しながら、
時々どことなくかげる表情には大人の色気があった。
そのうえ教養もあり、上品なために、
江戸で計り知れないほどの人気の的だった。
そんな華やかな大通りから少し離れたところに、
一本の川が流れていた。
そのほとりに小さなかたまりがうずくまっていた。
「うっ、うぇっ、おとっちゃん...おかっちゃん...」
うずくまっていたのは、ちょうど10になったかならないか
というくらいの少女だった。
少女が膝に顔を埋めて泣いていると橘の香りにつつまれた何かが
自分の肩に触ったのがわかった。
橘の香りは少女の母が好きだった香りだ。
少女は思わず顔を上げ、目を見開いた。
「あ....あなた....お蝶さん...?」
なんと、そこには大通りから抜け出してきたお蝶が立っていた。
「お蝶さん、なぜここに..?」
「わっちが聞きたいことさ、それは。」
お蝶が少し呆れた顔で言った。
少女は黙ってしまった。
「お嬢ちゃん、見たところ物乞いの子じゃないだろう?」
「.....はい」
「何かあったんだね?話聞くから、わっちについておいで」
そう言って歩き出したお蝶について行こうと立ち上がったその時だった。
「待てっ!!!」
「!?」
住宅の角から刀を持った男が3人出てきた。
「行かせねぇぜ?お蝶と来ちゃあ金になるなんてもんじゃねえからよ」
「無礼者がっっ!あんた、大通りまで行きな!早く!」
「でもっ...」
「でもじゃないよ!せっかく助けようとしてんのにあんたがなんかあったらどうするんだい!」
少女は、顔をあげて走り出した。
その背中に、お蝶の声がする。
「大通りに出たら、吉原にいくんだ!そこでお蝶に言われて来っていうんだよ!!」
少女は振り返らず走った。
(あたしがお蝶さんを助けなきゃ...!)
その一心で走りに走ってどの道を通ってきたかもわからぬまま
吉原の玄関に倒れ込んだ。
「ちょっと、あんた!どうしたんだい!?大丈夫かい!?」
女郎が駆け寄ってきた。
「あ...お..おちょ..」
「おちょ?お蝶さんかい!?お蝶さんがどうかしたのかい!?」
少女は首が取れんばかりに頷いた。
「お蝶さんがどこにいるか、知ってるのかい?」
「か..かわ..」
「川?」
その時だった。
ガラガラ...と扉が開いたかと思うと、お蝶がいた。
「お蝶さん!一体どこにいらしてたんです!?」
「すまないねぇ、ちょっと無礼者の相手を..ね」
そこでお蝶は少女に目をやり、
「あんた...!ここまでこれたんだねっ...心配したよ」
「お蝶さん、この子どこの子なんです?」
「なに、あたしの妹さ。明日からここに住まわせるよ」
少女は目を見開き、お蝶を見上げた。
「部屋まで、ついておいで」
お蝶の部屋はさきほどの橘の香りが漂っていて
とても居心地が良かった。
「座りな」
促されるままに少女は座った。
「あんた、帰る家ないんだろ?」
少女は、頷いた。
「理由は聞かない。あんたは明日から吉原の女だ。」
「.....あたいもお蝶さんみたいになれますか」
お蝶は少し窓を開けて言った。
「あんたはあたし以上になれるさ。最高の花魁にね。」
そして、窓を閉め
「今からあんたの名前は翡翠だ。明日からは女郎、翡翠だよ」
少女、いや。
翡翠は。
しっかりと顔を上げ頷いた。
「よろしくお願いいたします。」


書き込む 最新10 サイトマップ