ちいさなたからばこ。

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1:◆c.:2015/01/23(金) 20:44 ID:OTA


______…此処、○×町は、とても穏やかで平和な町。
住民も、他県の皆も、外国人も、誰もがそう思っていた。


…しかし、平和で穏やかだった○×町は、ある日を境に突然変化を遂げる。


そんな町に住んでいる、住民達のお話。


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荒らしはやめて下さい。
読みにくかったり表現が可笑しかったり、誤字や脱字があったりする場合があります。

以上を御了承した上でお読み下さい。

2:◆c.:2015/01/23(金) 21:11 ID:OTA



ピピピピ…ピピピピ……_______

カチッ


「…んー…」

6時半きっかりに、勇ましく鳴り出した目覚ましアラームをイラつき気味に止める。
目が覚めたばかりで気が悪いのか、頓狂な唸り声を出しながら、頭を付けて居たお気に入りの枕から顔を上げたのは、2週間程前から○×町に移住して来たK子。
のそりとベッドから体を除ければ、ゆっくりとした足取りでクローゼットへと向かう。がらりと音を立てて開くと、その中には、休日に着る普段着、そして○×町にある□○高校の女子制服がハンガーに掛かっていた。
今日は○×町に移住し、初めての学校登校日。前の学校の友達に別れを告げ、勢い付けてこの町へとやって来た。まぁ、移住した理由は親の仕事の都合なのだが。

___それにしても、□○高校はどんな高校なのだろうか。
登校日前日の昨日から、ずっと緊張感と不安感、そして喜々感を持ち続けていた。

どんな友達が出来るんだろう。

先程までの眠気が吹っ飛び、一気にやる気に満ち溢れた。
「頑張るぞーっ!」
大声でそう述べると、既に起きていたのだろう、弟のD樹が「煩い」と怒鳴ってきた。
しかし、今のK子の耳には、そんな声は届いていない。
ただただ、学校がどんなものか、生徒はどんな人か、それが楽しみで仕方なかった。


「ほら、早く食べなさい」
今日は早めに起きたはずのK子は、途中キッチンで爆睡してしまい、何だかんだで現在時刻は7時50分になってしまっていた。
「やばいやばい、 早く!」
「アンタがこんな所で寝ちゃうからでしょ!」
母親のS花は叱るようにそう言うも、そんなものは御構い無しにK子は「やっぱ要らない」とキッチンを出て、玄関で靴を履き始めた。そんなK子を追うように母親が玄関に行くと、K子は既に靴を履き終え、「行って来まーす」と元気な挨拶をして玄関の扉を開けていた所だった。
もう止める術は無かったのか、母親は「行ってらっしゃい」の一言を述べると、何事も無かったかのように扉はガチャンと音をたてて閉まった。

3:◆c.:2015/01/23(金) 21:55 ID:OTA

たたたっ、とテンポ良く階段を駆け下りると、あっという間に地上に足を着ける事が出来た。

K子が住んでいるのは、『にこすまマンション』という、9階建てのマンションの3階。名前の由来は『にこにこ」』と『すまいる』を掛け合わせたという、シンプルな由来。
3階から見る景色は、K子から見てはあまり良いものとは思えなかった。
逆に良いところと言えば、すぐに地上へ行ける事。運動神経が良いK子から言ってしまえば、9階は流石に疲れるが、6階程度なら難なく行く事が出来る。
しかし、3階には他にも住民が住んでおり、その住民は老人が多かった。
その老人が丁度扉から出て来たのか、K子を「行ってらっしゃい」と見送る。挨拶をされる事が好きなK子は、「行って来ます!」と大きい声で挨拶を残し、学校へと急いで足を運んだ。


約5分後。今日からK子が通う事になる□○高校に到着した。間に合ったのだろう、校門はまだ閉まっておらず、今到着した生徒もちらほら見える。
走って学校に向かっている時には感じなかった緊張感が再び芽生える。ふぅ、と溜息を吐き、校門の奥へ奥へと向かって行った。

上靴を履き、トントンと爪先を地面に叩いて見せる。そして、前日に案内された教室へと向かう。

『1-B』

教室の前でもう一度溜息を吐き、ガラガラと音をたてて扉を開ける。
すると、その音に反応した同級生らが、一斉にK子を見た。そして、ざわざわと耳打ちを始めた。

『なぁ、アイツが今日来るって言ってたK子ちゃんじゃね?』
『結構可愛いじゃん』
『なんかタイプの子キター』

そんな会話がちらほら聞こえてくるが、K子は気にせず席に座る。すると突然、K子の周りには、4人程人が集ってきた。
「ねぇ、貴方がK子さん?」
綺麗な長い黒髪の女の人にそう訊ねられると、K子は「はい」と短く返事をした。
よっぽど嬉しかったのか、黒髪の女の人は、後ろの3人と顔を見合わせ、表情を緩ませた。
そして暫くすると、再びK子に視線を移す。
「私、E那って言うの!」
そう言うと、それからはもじもじと恥ずかしそうに「えっと」だの「あの」だのという言葉を挟め、また暫く経つと「あの!」と大声を上げた。

「と、友達になって下さい!」

4:◆c.:2015/01/24(土) 17:14 ID:OTA

____……子。K子!」

教師に指名されたのも気付かず、ずっと窓の外を眺めていると、教室中にK子の名前が響き渡った。
「は、はい!」
慌てて立ち上がると、隣の男子は「ぷっ」と吹き出して笑った。

…学校に来て初めての友達申請。突然のK子は戸惑いを隠せず、「えぇ!?」と変な声を上げてしまったが、その後は申請を喜んで引き受けた。
そりゃあ、こんなに早く友達が出来るなんて思ってもいなかったし、それよりも、登校初日の自分を好いてもらえた事に喜びを覚えた。断る理由が見当たらない。
これから楽しい学園ライフが始まるのだ。何よりも楽しい事が好きなK子が楽しみじゃない訳がない。

「この問題を解いてくれ」
立った後でも、問い掛けられた後でも、自分の考えでぼーっとしていると、再び「K子!」と大声を浴びせられた。

「どうしたんだ。具合悪いか?」
「あ、ち、違います…。すみません」
ぽんぽんと意味もなく頭を二度叩き、問いに答えると、見事正解したためか、今度は怒号ではなく拍手が浴びせられた。この学校はきっと、『褒めて伸ばす』がモットーなのだろう。

5:◆c.:2015/01/26(月) 17:08 ID:OTA

キーンコーン、とお馴染みのチャイムが学校中に鳴り響く。
それと同時に、日直の「起立」という号令が掛かる。
「礼」
「「ありがとうございました」」
そして再び号令が掛かると、周りの皆は一斉に挨拶をし、次の授業の準備に取り掛かった。
K子が以前通っていた学校とは一味違う行動に、K子は戸惑いを隠せず、周りをキョロキョロと見渡す。すると、そんなK子に気付いたのか、一人の少年が近付いて来た。
「アンタがK子?」
「へ?」
突然話し掛けられた事にも驚いたが、突然のタメ語にも驚く。
冷や汗をかきながら「そうですけど…」と返すと、少年は両手の掌をぱんっと合わせ、「やっぱり!」と目を輝かせた。
「俺、N雄。 宜しくな!」
N雄と名乗る少年は手を差し出し、握手を求めてくる。それを察したのか、K子がN雄の手を握ろうとすると、K子よりも先にN雄が手を握り、ぶんぶんと上下に手を振った。
そして手を離すと、にしっと笑って「あと8分くらいか」と教室の時計を見ながら述べ、K子に向き直った。
「な、何ですか」
「何ですかって…。タメ語で良いよ」
敬語な事に違和感を感じたのか、N雄は口を尖らせながらそう言う。するとK子は「うん、良いよ」とすんなり認め、敬語をやめた。

「それで、私に何か用なの?」
「用が無けりゃ声掛けねーよ。んで早速だけど、今日の放課後、屋上集合。おーけー?」
K子の机にばんと両手を付け、突然そんな事を言って来た。
答える間も無く「拒否権ナシ。じゃー放課後なー」とK子を後にした。
後にされたK子は、「え? え?」とまだ混乱したまま、背中を向けたN雄を見ていた。

え、何なの? 何の誘い? もしかしてカツアゲとか…?
いや、でも確か「集合」って言ってたな…。他の人達も来るのかな?
いや、その人達もカツアゲの仲間だったら…!

そんな考えが頭を過ぎり、衝動で「うわぁぁ!」と大声を上げてしまう。その大声と同時に周りの人達がK子の方を一斉に向いた。

6:◆c.:2015/01/27(火) 19:05 ID:OTA

時が過ぎて放課後。皆は学校を終え、友達とさよなら挨拶を交わしながら、自宅か寄り道場へと足を進めて行った。
当のK子は、屋上へとほぼ強制的に誘いを受け、何か嫌な予感はしながらN雄を待った。
時刻は午後5時26分。辺りは茜色に染まり、もう15分も待てば日が沈むだろう。

15分経ったのだろうか。日が完全に沈んだ。少しビクビクしながら待っていると、突然ばんっと扉を強く押し開ける音が聞こえ、反射的に音の方向へ体を向かせる。
「ごめ…遅れた…はァ……」
現在の時刻は午後5時48分。もう20分近くも経っていた。

遅れた…と言われても、集合時刻とかは言われてないし、大丈夫だとは思う。

そんな考えを持ちながら「大丈夫大丈夫」と笑いながら言うと、その時、扉の後ろ側に誰かが居る事に気付いた。
何か用かな、と思い、しかし動じる事は出来ずに動く事を躊躇う。指すら動かす事が出来ずに固まっていると、N雄が口を開いた。
「こいつら紹介しに呼んだんだ」
片手を扉の方に向け、見えない誰かの紹介する。K子は「透明人間か?」と怪しむも、そうではないらしい。2人程の人影が見えた。
「A沙とU菜!」
正直、初見のK子には、どちらがA沙でどちらがU菜なのかが分からない。
色々と戸惑っていると、片方のフワフワとした少女が口を開いた。
「わ、私がU菜です…! よ、宜ひくお願いしましゅっ…、あ…」
所々を噛み、U菜と名乗る少女が「ふえぇ…」と涙目になった。
そんなU菜を見、もう片方のサバサバとした外見の人が「しょーがねーな」と口を開いた。
「アタシはA沙。こいつはU菜。宜しくな」
にっと笑いながらU菜の分も自己紹介をすると、N雄はげふんと一度わざとらしい咳払いをし、こう言った。

「この○×町には、不可思議な事が多々起きる! その謎を解明しよーじゃあないか!」

7:◆c.:2015/01/27(火) 19:45 ID:OTA

突然何を言い出すのかと思えば、ふんっと鼻息を荒げ、「謎解明」なんて子供がやりそうな事を言った。

…ていうか、あれ? 待てよ。さっき『摩訶不思議な事』って言った…?

「何それ?」
遠回りで言うのも面倒なので、単刀直入にそう問うと、N雄は「聞きたい? ねぇ、聞きたい?」とでも言いたそうに目に輝かせ、K子を見る。
しかし、輝かせていた目をすぐに止めると、真剣な表情で自分の顎を触りながら言った。
「やっぱりそこ聞きたいよな」
真剣だが きらん、と効果音が付きそうな顔で言うと、K子は少し呆れた様子で「あ、あぁ…うん」と曖昧に答える。
すると、N雄は再び目を輝かせ、「よーし! 教えてやろう」と腰に手を当てる。
「摩訶不思議な事っつーのは、なんか…行方不明とか、他にもとにかく多いわけ。だから、その謎をな?」
「へぇ…。詳しくはどんな事件が起きるの?」
少し興味が湧いて来たのか、K子は足をぱたぱたとぶらつかせながら訪ねる。
すると、パソコンか何かで調べて来たのだろうか。ポケットから紙を一枚取り出し、読み上げるように言う。

「そうだな…。まずは、さっき言った行方不明事件。ここにきた人に限らず、ペットなんかも行方不明になってる。3年前に行方不明になった人も、まだ身元不明。情報は何ひとつない」
その言葉を聞き、K子はごくりと唾を飲み、少量の冷や汗をかく。

「それに、防犯カメラなんかにも映ってないし、最後まで居た人に聞いても何も知らないんだとか何だとか。

あと、『無人無差別殺人事件』とか名前付けられてる事件。指紋も無し。ヒントも無し。それに、殺されてるのは人が多い住宅街とかでさぁ…」
淡々と真剣に喋っている様を見れば、嘘をついているようには見えない。K子は一瞬にして恐怖に見舞われた。

8:◆c.:2015/01/28(水) 20:58 ID:OTA

「有り得ないありえないアリエナイ……!」
その日の帰り道、K子は呪文のように何度も同じ言葉を吐きながら家へと向かっていた。その足取りは小幅で、他人から見れば少し怯えているように見える。
しかし、K子の恐怖ゲージは少しどころじゃなかった。いつ狙われるのか、いつ行方不明になるのか、もし死体を見つけてしまったらどうしよう、という恐怖感に見舞われていた。
先程の人達は居ない。それに、時刻は既に午後6時を過ぎており、子供も大人も問わず、家の中へ居るのだ。
たまに見る人と言えば、自転車で隣町へ買い物へ行ったのだろう叔母ちゃんくらいだった。何故隣町へ行くのかは知らないが。

「ただいまー!」
やっと家に着いた安心感で、先程まで危うく限界に達しそうだった恐怖ゲージは一気に低下した。
靴を脱ぎ、ばたばたとリビングへ急ぐ。これも、家族の顔を見て安心するためだ。
「…D樹?」
しかしそこには、いつも「おかえり」と言ってくれる母親は存在しなかった。代わりに、俯いたまま無言を貫くD樹の姿が在った。
「ど、どうしたの?」
「………姉ちゃん…」
やっと口を開け、K子を呼ぶ。しかし、その声は震えており、K子を見るために上げた顔にある目は潤み、今にも泣き出しそうだった。
「母さんが……母さんが急病で倒れて…」

「…………………え」

9: ◆c.:2015/01/30(金) 22:03 ID:OTA


_____母さんが……急病で倒れて…___

朝まであんなに元気だったお母さんが、自分勝手な行動でご飯も食べずに学校へ向かった私を「行ってらっしゃい」と送り出してくれたお母さんが…。
病気の前兆なんて無かった。いや、隠していたのか? …そんな事はない。お母さんは素直に自分の事や意見を言う反面、辛辣な事を言ってしまったりする性格だ。それに、何か隠している時は、いつも分かりやすかった。
私なんかに、勘が鋭いD樹なんかに、隠し通せる訳がない。
じゃあ何だろう。本当に急病か?

色々な考えが頭を過る。そして、とうとうここまで考えついてしまった。
……死んでしまうのではないのだろうか。

そう思うと、K子の目からは自然に涙が溢れてきた。しかし、そんな目から出る涙を邪魔するかのように、D樹は強気で述べる。
「見に行こうよ、母さんを」

10:◆c.:2015/02/02(月) 18:31 ID:OTA

母親が緊急搬送されたという△○病院に到着した。
ここまでの道筋の代金は、K子とD樹が割り勘をして払ったが、遠かったために、お小遣いが少ない二人には痛い体験となってしまった。
しかし、母親の心配の方が大きく、小遣いの事などを頭に入れる暇は無かった。

ぱたぱたと足を急がせて病院に入ると、思ったほど人は少なかった。
K子が受付委員の女性に話し掛け、病室が分かればすぐさま指定された病室へと急いだ。
「母さん」
あまり大声を上げるのも迷惑だと思ったのか、D樹は病室に入るためのドアを開けて入ったかと思えば、いつも通りの声量、しかしいつもより暗い声色で母親を呼ぶ。
「D樹?」
母親はすぐにD樹の声に気が付き、声を上げる。その声をヒントに、母親が寝ているだろうベッドへと向かった。勘が鋭いD樹は、数秒もせずに母親のベッドを見つけることが出来た。
「どうしたの、K子まで…」
「心配で来たんだよ」
K子が震えた声で言うと、母親は「まぁ」と微笑んで見せた。
「母さんは調子どうなの…?」
微笑んだのを見たD樹がそう尋ねると、母親は「大丈夫」と言い、続け様に答える。
「命に別状は無いって。先生の薬が早くも効いたのかなぁ」
そう報告を受ければ、安心したのか、強張っていたD樹の表情はみるみる緩くなっていった。


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