美少女?ふざけんな、ぶっとばすぞ

葉っぱ天国 > 小説キーワード▼下へ
1:ミルフィーユ:2015/04/26(日) 19:27 ID:USA



_____ああ、世界とは何故にこうも酷なのか。


ーーー


「……っ!

す、すすっき、好きです!
好きですから、えー、あーっと、付き合って下さい!わ、私と!」

廊下に響き渡るのは、高くて、鈴のなるような声。
騒がしかったはずの廊下が一瞬にして静まり返り………日常ではなかなか耳にできない四文字に、皆が一斉に、慌てて振り返る。

見るとそこには色白・二重・サラサラの髪のまるで野に咲ける白百合をそのまま人にしたような、愛らしく美しい少女が。頬をほんのり薄ピンク色に染めて立っている。
そしてその丁度手前には黒髪の……勿論こんな美少女に告白されるのだから、それ相応の美青年。一瞬でマダムの餌食になりそうだ。

……この様子を見ていた者共は口を揃えてこういうだろう

「これは普通にOKだろう」

と。……あ、いやこんな空気だから言うのは心の中で、だが。
なんせ、美女に美男だ。
これは……とても絵になるな、と。

緊迫した表情で彼女達を見つめる彼等________は置いといて、さて、この告白した少女に視点を変えてみようか。

彼女は今注目されていることも気付かないくらい、緊張していた。
ずっとずっと好きだった……憧れの人に、漸く思いを告げることができたのだから。
とは言っても、当の相手の返答がまだこない。
告白しても、相手の気持ちを知ることができなければ意味はない。

____フられてもいい。でもどうか、 羽白君が私の事をどう思ってるかを知るぐらいは……

キュッと目を瞑り、また開ける。これを繰り返す。
これをすれば、きっと恋は叶う_____訳ではないが、今の彼女には少しでも気休めになるものであればなんでも良かった。

___落ち着いて、落ち着いて私。大丈夫。きっと大丈夫…

………上手くいけば、羽白君と付き合えるんだよね……
手をつないだり、デートしたり………きき、き、キスとかも……する、かな。
真っ赤になっていく顔を抑えつつも、妄想を続ける彼女。

ふと、羽白少年の返答があまりにも遅すぎる事に気が付いた。

___もう、1分、2分……くらいは経ってる?よね?

恐る、恐る、と。
彼女の、長い睫毛に縁取られた大きな瞳が上に向かう。
それに合わせて顔も上へ……
少女が、しっかりと羽白少年の顔を見据えた時。

ちらりと彼の目線が右側の……丁度、四組の教室の中にいるものを捉えた。
それはほんの、一瞬。
でも、すぐ彼女を見つめ直すと、こう言った。

「…ごめん、無理だ。」

2:のん:2015/04/26(日) 20:20 ID:NSs

続きが気になります!!

3:ミッチー ミッチー:2015/04/26(日) 20:26 ID:cNA

美少女に告白されたのに!なぜ〜〜〜

4:あかり:2015/04/26(日) 23:06 ID:NSs

 3
 ですね!

5:のん:2015/04/26(日) 23:07 ID:NSs

 すみません名前をかえてますが上の私です(汗)

6:ミルフィーユ:2015/04/29(水) 07:37 ID:USA

う、ま、マジか!
なんか、こんなの見てくれる人いねーよなーでもいたら嬉しいなーと思って書いてたら、読んでくださった方、いたのですね!
読みにくくないかな〜とは思ってたんですけど……
マジ、ありがとうございます!
ありがとうございます!!!
これからも、読んでいただけたら嬉しいです

7:ミルフィーユ:2015/04/29(水) 08:20 ID:USA

これが、私・上川リイカが先程見聞したことのすべてである。

少年……羽白陸人は、女子に大変な人気がある。
元から顔は良い方ではあったが、少し大人しめであまり目立つ方では無かったという。
しかし、成績優秀、運動神経抜群という二つの要素を知られてから、女子から王子様的存在として見られるようになった。

……まあ、私もその中の1人な訳だが。
私は、羽白の顔や世間体が良いから好きになった訳ではない。というか、自分のことだけれどそうであると信じたい。
羽白と私の関係は、お母さんの友達のさらに友達の子供。まあ遠い知り合いとでも言っておこうか。
羽白には、三人の兄と二人の弟がいる。六人兄弟だ。全員男でオマケに背も高いから前に並んで立たれたら威圧感が半端ない。

と、まあそんなことは置いといて、ここで、問題点が二つ。
一つ目。
私と羽白は、一言も会話を交えたことがないということだ。
軽くとはいえ結構長めの付き合いなのに、一言も、だ。一言も。
それなのに何故、私が羽白を好きになったのか____それは、私にもまだよく分からない。
ただ、少し口強いけど優しいところとか、真面目なところとか、見ていて安心する、はにかむような笑顔とか……

「……って、私は変態かよ。」

ちょっとヤンデレと思われるのは避けたいがため、妄想は強制終了だ。
ここで問題点二つ目。
結構、いや、めちゃくちゃ大事なところだ。

私が……私の顔が、「たいして可愛くもない」ということ。
これは謙虚でもなんでもない。事実なのだ。
____特別にブスでもないが、可愛くもない。
なんというか、異常なまでに普通、普通すぎる顔なのだ。
(付け加えると、身長,体重も平均。それから成績はど真ん中)

女の子は顔じゃないとか言うけどさ。嘘おっしゃい。ぶっ飛ばすよ。
だったらなんで、世の中は美少女から順に恋が実っていくのかな。
なんで、美少女でない者は辛い思いをするのかな。

………正直、こんな私が羽白に釣り合うとは微塵も思えない。
奴は完璧、私は凡人。
こんな二人が、一緒になれるなんて誰も思いはしないだろう。

8:のん:2015/04/29(水) 13:31 ID:NSs

お!続きだ!!
リイカちゃん頑張れ!平均が一番だ(笑)皆さん文才があってうらやましいです!('_'〃)

9:ミルフィーユ:2015/04/29(水) 18:09 ID:USA

リイカちゃん頑張るよ!というか頑張らせるよ!
のんさんの小説、ちょこっと見てきた!
歴史ある感じの小説ですね。
無駄な改行がないし、とても分かりやすく、伝わりやすい文章です!
……ってこれ、切支丹物語のところに書くべきだったか……?

10:のん:2015/04/29(水) 19:43 ID:NSs

ミルフィーユさん、ありがとうございます!!いやいや、あれは見づらいだけですよ(笑)更新楽しみにしてます♪

11:ミルフィーユ:2015/05/09(土) 10:33 ID:USA



そう、あれはいつも通りの休み時間。
特にやることもないから、私はただぼーっと窓の外を見ていた。
最近はこれといった学校行事もないため、割とありきたり、と言った感じの毎日。
退屈。暇。
皆言わずとも、そのようなことを思っているんだろう。
窓から見える景色も、いつも見ているものと本当に変わらなくて。
どこにも行き場のない、やることもない、牢屋に閉じ込められているような気分だ。

「何かこう、楽しいことないかな。」

「ま、あるわけないけど」
と、自分で言ったのに、何故かさらに落胆した気分になってしまった。
ため息をつきながら、今度は廊下の方に視線を移した。

「あ」

羽白がいた。
その瞬間私の背筋はシャキンと伸び、無意識のうちに手はもう直り用もないほどグシャグシャの髪の毛を梳き始めていた。
ああ、クソ絡まってんな。
最悪じゃん。

とりあえず最低限の身なりを整えると、私はまた羽白を見た。
あんまりジロジロ見ると、羽白にばれてしまう。ま、それはそれで気付いてもらえたから嬉しいのだが……
でも、やっぱ小っ恥ずかしいじゃん。ウガァァァァ!!ってなるじゃん。
だから、顔は羽城の方を向かないようにし、目だけを羽城の方に向けるようにしている。
そうしたら、多分羽城はこちらに気づかない。目がめちゃくちゃ痛いけどね。

「それにしても……」

珍しいな。あの羽白が教室から出た……か。
普段羽白はずうっと教室で本を読んでいたり、勉強していたりするのが多いのだけれど……
最も、休み時間には羽白見たさに3組まで大量の女子が押しかけてくるから、勉強に集中できているかどうかは定かではないが。

12:ミルフィーユ:2015/05/09(土) 22:54 ID:USA


それからも、ずっと私は惚けていた。
だって、羽白に全く動きが見られないから。
好きな人が近くにいても、ずっと眺めていよう、と思うだろうか。
まあ、了承を得ているのならばまだしも……そうでなければ、下手すりゃ警察にお世話になる。
オマケに私は今少し微睡んでいるということもあり、早速机に突っ伏す事にした。
でも、何かイベントが起こったら即座に反応するつもりだ。

そうそう、例えるなら、あっちらへんから駆けてくる美少女に羽白が告白される、とかね。

眠たいにも関わらず、もうすでに私の目線は彼女に釘付けだった。
ああ、綺麗な茶髪だなぁ……お手入れ、頑張ってるんだろうな。
雪の如く白い肌に、薔薇色の頬。
無垢な瞳には、少し恥じらいの色が混じっていて……
本人は気付いていないが、大勢の道行く人々の目線を独り占めしている。
女である私も思わず見惚れてしまうのだ。本当に可愛い。美少女という言葉は、まるでこの子の為にあるようだ。

彼女は、彼女に気づいた羽白と二、三言会話を交えると、大きく息を吸った。
付け加えると、そんな姿さえも愛らしかった。

「……!

す、すすっき、好きです!
好きですから、えー、あーっと、付き合ってください!私と!」

思わず、といった様子で目を瞑り、声を張り上げる彼女。
その頬は、爆発しそうな程上気していた。
付け加えると、そんな姿さえも可愛かった。
さらに付け加えると、そのお陰で私の眠気は宇宙の彼方へ飛んで行った。

場の空気が一瞬にして固まる。
皆が皆、息をつめてその場面を凝視していた。
そして、実況しております等の私はーーー


「結城さん……だったかな。お幸せに。」

自分ができる一番仏に似ている顔をしながら、その様子を見守っていた。
即ち、諦めたのである。
隣の席から、「カシャッ」とカメラの音がした。
レンズは、あの二人……ではなく、首から上が仏になった私に向けられていた。

13:ミルフィーユ:2015/05/09(土) 23:23 ID:USA


……もう、いいんだ。
私は、平気よ。

この恋が終わるのも。
…………私の写真見て腹抱えて笑ってやがる隣の奴も……

「ねえ田代さん田代さん。
………ぷっ……うわっはっはっはっ!ギェャッハハハハハ!」
「貴方の笑い方と物言いに私大変な不快感を覚えましたわ。宜しければ写真とその口の一生涯封印をご所望であります」
「?どーゆうこと?」
「要するに『黙せKY』ということだ」

こんな緊迫した空気の中爆笑できるお前の精神力に呆れを通り越して感動さえ覚えるよ。
てかお前誰だよ。


ーーーーー

お久しぶりでござる!ミルフィーユです!
今日は久々に更新しましたが、眠たいのでここまでです!中途半端ですが、ご容赦下さい。
いろいろグダグダなこの小説ですが、頑張って更新していこうと思っていますので、どうか応援宜しくお願いします!

14:ミルフィーユ:2015/05/10(日) 22:34 ID:USA

名前ミスった!
「田代」ではなく「川上」です!
「田代誰だし」って思われた方、申し訳ございませんでした。

ーーーーー


「あー……アレな」
「アレってなんだアレって。うちの学校内じゃ大問題だぞ。」

空気も読まず、この緊迫した告白現場を「アレ」呼ばわりする名も知らぬ隣人。
めんどいからAさんでいいや。
Aさんは特に興味もなさそうに椅子をガッタンガッタン鳴らしている。うるせえ。

学年の隔てなく大人気!というあの二人。
羽白と、告白した女子ーー名は、結城マリカというーーが、付き合ったら。

多分、喜ぶ人は少ないと思う。

現に羽白のことが好きな私が悲しいし、それ以上に二人の熱狂的なファンが悲しみを通り越して「人生が苦しみだけのものになってしまった」と死んだ目で語り始めるくらい絶望する。
また、熱狂的ではなくとも女子は泣き叫び、男子は叫び悶える。
支離滅裂、阿鼻叫喚。
全てが闇色に染まるのだ。学校崩壊だ。
特に羽白なんか……言いたくないけど老若男女関係なしにモテるらしいから………結城さん、ファイト。

「えー……でも、あの子フられるよ。絶対。」
「……はぁ?」

………何を言い出すと思えば。

「……あんな可愛い子だったら、話したことなくても付き合うけどな、私。」

結城さんは、さっきも話したけど結構な有名人。
容姿だけでも目立つのに、成績もいい、誰に対しても優しい、など。
存在がもうチートなのだ。完璧すぎるのだ。
高嶺の花ってレベルじゃない。天上の女神だ。

そんな彼女に告白されて、断らない人はいるのだろうか。
いや、いたとしても告白されたことを嫌に思うことは絶対ない。

「え、川上さんにそんな趣味が……っ!?」
「私が男だったらの話ね」

ドン引きするような視線を向けてくる貴様には我が鉄拳をくれてやろう。感謝しろ。

即座に言い返すと、「えー…ちょっと期待してた」と恐ろしい返事が聞こえたような気がした。
うん、ちっちゃい声だったからね。
聞き間違いかもしれないからね。
今度耳鼻科行ってみよう。うんうん。

……多分、この空気の中でこんなベラベラ喋っているのは私たちだけだと思う。
故に、先程から周りの視線が痛い。とても痛い。
いや、私はなるだけ小さな声で話してたんだけどね?
この人……Aさんが、空気も読まず大きな声で喋るので。ええ。私はなにも悪くありませんよ。

「それより……ちゃんと見なくていいの?気になるんでしょ?」
「いや、あなたが邪魔したんでしょう……」

と、言いつつもまたあの場に視線を戻した。
今度は、何言われても無視を決め込む。そう心に誓って。

その時。

「!」

突然の事に、私はふっと目を逸らした。

一瞬で顔に熱が集中していくのが分かる。
喉の奥が熱くこしょばゆくなり、口からは奇妙な単語が漏れ出した。


___今、一瞬……羽白と目があった………?




「…ごめん、無理だ。」

15:ミルフィーユ:2015/05/11(月) 09:01 ID:USA



ずっとずっと前から、あの子だけを見てきた。

ーーーー

あの子が好きだ。
あの子は俺にとって大切な存在だ。

だから、この子には残念だけど……この告白に応じることはできない。


「…ごめん、無理だ。」

さっき目があった時。
すぐに目を逸らしてしまった彼女の頬が真っ赤だったのは、気のせい?

16:ミルフィーユ:2015/05/14(木) 18:57 ID:USA

あれから一ヶ月もたった今日。
やはりなんの変哲もなく、ただただいつも通りの時間が穏やかに過ぎてゆく。

ーーー

『!』

あの日、羽白と目が合った瞬間。私は「今死んでも本望だ」と本気で思った。割とガチな方で。
そして、その直後に聞こえた結城さんへの返事。これ、夢なんじゃないかと。もしかして羽白大好きな私が見ちゃった幻覚なんじゃないかと。驚きながらも、心の何処かで安堵している私がいた。
私如きが、結城さんに随分と失礼で最低なことを考えてしまった、と熱が冷めた後に思う。
しかも、羽白がこちらを見たのはただ単に私たちが五月蝿かったからーー又は、最初から私たちの方じゃなくて別の方を見てただけ、とか。
その可能性を考えれば考える程、自分の自意識過剰っぷりに恥ずかしくなる。ああ、本当に最低だ。私。

多分、今私の顔は真っ赤なのだろう。
それはもうリンゴと並んでも見劣りしないぐらいに。
その証拠に、隣では未だ名も知らぬAさんが私にスマホを向けて爆笑している。

「うっひゃっふゃっはっはっ!!川上さん川上さん!真っ赤!あんた顔真っ赤だよ!ウケる!なに熱?熱ですか?お大事にぃ!」
「黙しなさい。ぶっ飛ばしますよ。」

私の言動一つ一つにまるで腹踊りでも見ているのかってぐらいの爆笑っぷりを見せてくれるAさん。
かなりムカつくその笑い方と全然心のこもっていない「お大事に」は、なかなか早々に私の堪忍袋を切断してくれたようだ。
逆に相手の好感を買わぬように、とよくよく考えてひねり出した一言。
そんな深き努力も虚しく、私の言葉は此奴のまたもや腹の立つ笑いに一蹴された。

「ねーねー聞いて川上さん。俺あなたの面白い行動に笑いすぎて腹筋割れたんだ。本当にありがとー。」
「……何故かしら。これっぽっちも嬉しくないわ。むしろ酷く貶されたような気分………」

困惑する私に笑うAさんには今度不幸の手紙を頂戴しよう。

17:ミルフィーユ:2015/05/14(木) 20:13 ID:USA



「と、言うわけで。一ヶ月後の文化祭での劇は、『禁断の恋〜王子とメイド〜』に決まりました!」

学年朝会の、厳かたるこの場で。
まぶしすぎる笑顔で委員長がそう言い放った時は、流石に耳鼻科行こうと固く決意した。

真っ赤な眼鏡、お下げ髪。明らかに優等生な彼女は、実は超の付くほどの少女漫画好き&乙女ゲーマー。語り始めたらもう手がつけられないレベルである。
今日も、彼女と乙女ゲームの素晴らしさについて語り合ったこの身ではあるが。
どんな難乙女ゲームも彼女の手にかかればアラ不思議!1日以内に全キャラを攻略してしまう。
ヤンデレキャラ?だからなんだって話だ。彼女のコントローラーを握る手を止められるものは最早ない。あるとすれば焼きプリンくらいだろうか。
おまけに、彼女は少女漫画の続きを大体予知することができる。が、それは特に珍しいものでもない。彼女は少女漫画を読み耽り漁り、もうこのありきたりな展開に慣れてしまったのだ。

そんな彼女が今回書いた劇は、超有名貴族の王子と彼専属・スラム街出身のメイドの禁断の恋を描いた純愛ストーリー。二人の恋が着々と進めば問題ないのだが、それは勿論許されない。
イケメン王子に恋い焦がれ彼女に嫉妬する淑女方。
王子の両親ーーつまり国王とその妃の、彼女に対する辛辣な当たり。
同じメイド達からの密かな嫌がらせ。
なんと言っても「王子とメイド」。明らかに身分が違いすぎる。
でも、それらに耐えながら過ごす彼女を、最終的には王子が救ってくれて………ハッピーエンドである。なんともありきたりだ。でも、そこがまたなんとも言えない案配。さすが委員長。乙女ゲーマー中の乙女ゲーマー。

文化祭は、学年ごとに出し物をする事が決められている。
早速委員長が黒板に書き始めたのは、配役。

「今回王子役をするのは……みなさんご存知、羽白君です!主人公メイド役は結城マリカさん!反論は認めません!」

満面の笑みで迷うことなく書いていく彼女を、先生方は死んだような瞳で見ていた。

18:ミルフィーユ:2015/05/16(土) 00:08 ID:USA



_____ああ、無情。

ふと頭に浮かんだこの言葉は、まさに私の現状を表すにピッタリの言葉。
目の前で微笑み談笑する2人。私はすでに蚊帳の外。
いや……わかってましたけど。うん。こうなるってことぐらい。うん。……うん。


「ああ、無情。」


やはり、こう呟かずにはいられなかった。


ーーー


目の前には愛しの(?)羽白、隣には白百合の擬人化こと結城マリカ。
一体、何があったから私がこの『THE☆美女・美男子コンテスト』のど真ん中のような場に立たされなければならないのだろう。誰もが見惚れるようなこの場の雰囲気を、私という存在がぶち壊しにしているのに違いない。言わば私は薔薇の中のラフレシアだ。

今、羽白の目には何が見えているか?
結城さんと私ーーだが、それを比喩として表せば。
月とすっぽん?……否、不正解だ。そんな甘っちょろいものではない。
正答は、女神とモグラ。無論、結城さんが女神で、私がモグラ。モグラは土まみれなのにも気づかず惨めに女神の下で這いつくばっているのだ。

ああ、そうだこの場に至るまでの報告をしなければならない。

19:ミルフィーユ:2015/05/17(日) 12:19 ID:USA



「……と、言うわけで川上氏、我、貴殿が悪辣メイドの役を演じる事を所望す」
「………あら、申し訳ないわ。少し微睡んでいたの。もう一度、その言葉をお願いするわ。」
「だから、あなたの配役は悪役メイドBって言ってるの!」

目の前で少し怒り気味に頬を膨らませる委員長………あら、可愛いじゃない。なかなか悪戯心をくすぐられる。と、調子に乗っておちょくっていると今度は本気で憤慨された。私の頬には紅葉マーク。

「反論は認めないわ。これは仕方のないことなのよ。あなたにとっては受け入れ難い現実だとしてもね。」

私に哀れむような目を向けて、「これを……」と最新の乙女ゲームのソフトを握らせる委員長。
有難や。有難や。
でもね、このソフトを交換条件に「あの役」をやれと言うのなら、それはちょっと釣り合わないと思うの。
「あの役」は、私には荷が重たすぎる。

「………なら、これも」

と、今度は大人気少女漫画の全巻を差し出してきた。あ、逃げないで委員長。

「………」

手渡されたソフトと漫画をちゃんと鞄に入れたことを確認すると、私は自分でも思うくらい荒々しく椅子を引いた。
………ああ、もう本当に頭が痛い。
どうか神よ。こんな非道な現実を私に突きつけないで頂けるかしら。
誰かのちょっとした悪戯、又は何かの間違いであって欲しい……心底そう思う。
悪戯した人、怒ってないから素直に名乗り出なさい。少しの謝罪で、全ての事は治るのだから………

「あ、ならハイハイ!俺がやったよ川上さん!」
「失せなさい外道。」

冗談も程々にしてほしい。全く。
何故私が悪役メイドなんぞを演じなければならないのか。
いや、悪役メイドでなければいいという訳ではなく。そもそも劇に出ること自体を断固拒否する。

事の発端はと言えば、そう、配役決めの時のこと。
取り敢えず主要人物を決め、皆が軽く台本に目を通したら、後日その他出演キャラを決めるという事になった。
配られた台本をパラパラとめくる……今夜のおかずを考えながら、私がそんな簡潔な作業をしている間、女子達の目に留まったのがこの配役「悪役メイドB」。

普段なら、誰もが嫌がるこの役……が、今回だけは例外だ。
物語の主要人物として出てくる王子様ーー即ち羽白と一番接触できるのが、この役「悪役メイドB」だったのだ!
____嫌われキャラでもなんでも良い。ただ、あの手も届かぬような場所にいる羽白と、少しでも交わりの時を持てるなら………と、いう考えの女性従が多数いらっしゃったわけでして。
悪役メイドBの座を狙って、三学年女子のそれはもう熱い熱い戦いが幕を開けた……

筈だった。


ーーー

最後に決める「悪役メイドB」の役………女子の誰もがその役に挙手した時。


「ここは、くじ引きで公平に決めましょう」


イケメンが微笑み、それを誰もが妙案だと言うように賛同した。

20:ミルフィーユ:2015/05/17(日) 15:41 ID:USA



羽白と出会うまでの私は、恋愛に事如く興味が無かった。

色恋に現を抜かし、それ以外の事が何も出来なくなる。それが怖かった。
幸せに男女の恋愛を堪能している者は、傍目から見れば羨ましく、又、鬱陶しくもある。
そうなるのが嫌だった。
周りからそんな目で見られるのが、堪らなく怖い。そう思った。
だから、好きな人が出来ても、側から見ているだけ。
直接関わって仮に噂などを立てられて仕舞えば、私にとっても幸いでも相手が嫌な思いをするかもしれない。それにより、私という存在は徐々に拒まれ始める。そうなるくらいなら、噂を建てられる前ーー否、そもそも関わろうとしなければ良い。

そうして、私は常に周りの男子と一定の距離を保ち続けていた。
変に話しかけて、「男好き」とか言われないように。又、好きでもない人との噂が流れぬように。
それから、極力目立たないようにした。変に印象付けなければ、どうしても話さねばならぬ時相手の記憶の片鱗にすら残らないかもしれない。そうしたらこちら側としてはとでも楽だ。

「川上……さん?」

_____もし、それでも私に語りかけてくれる人がいるのなら。

こんな私でも、良いと言ってくれる人がいるのなら。
私はその人の側に許される限りいようと思う。
相手が、「もういいよ」と言うまで。

ーーー


中途半端だけど失礼!
出かけて参ります!

21:春ル◆/M hoge:2015/05/17(日) 16:10 ID:Y7U


失礼します、読ませていただきました!
最初っから続きが気になる展開で…
楽しませていただきました、更新楽しみにしています!

22:ミルフィーユ:2015/05/17(日) 19:44 ID:USA

>>21

春ル◆/M 様
まさか、見ていただけていたとは……
拙い文章でありますが、そのように言って頂き光栄に存じます。
有り難き幸せ!幸せ!
嬉しすぎて泣いちゃいそうだよ……

23:ミルフィーユ:2015/05/17(日) 21:31 ID:USA



「あんた、地味で根暗でさ………キモいのよ。はっきり言って。
何、運に物言わせて羽白君と一緒になれて?調子乗んないでよ!」

ドンっ!と低く響く音が、少々耳に煩い。

で、出たー出ましたー。出ましたよコレー。
お約束で御座いますね。全く持ってお待ちしておりませんでした。
でも………まさか、私の平凡であるべき人生で、このような貴重な経験ができるとはね……
うむ、非常に不愉快であるな。

ーーーー


「四組の川上リイカって子が、『悪役メイドB』になったって!」

この噂は、女子から女子へと口伝いに、それはもう瞬く間に広まっていった。
これまで目立つこととは疎遠で、そもそも興味も無かった私。
それが、一瞬で眩しいステージの上に駆り出されたかのようだ。
私の目に映る世界が、急に反転してしまった。
一言でいうと、非常に居心地が悪い。

「川上さん、三組の子がセリフの練習付き合うよーって!」
「……そっスか。」

私に向かって嬉しそうに手を振る女生徒。名前は知らないが、えくぼが素敵。なんとも可憐で、無垢だと思った。
そんな彼女の笑顔を原動力に、渋々、と私は腰をあげた。
私の重さから解放された椅子が悲鳴をあげる。誠に痛々しいものだ。

(早く終わらせて………寝てしまおう。今日は疲れた。)

もう既にくたびれていた私に、これから起こることの予想など…………安易にできた。

劇に出る生徒は、ほとんどが三組の女子たち。
しかも、「悪役メイドB」の座を狙って落ちた子ばかり。
言わずもなが、その座を奪っていった私に強い怒りを覚えているのだろう。
だから、今から「台詞の読み合わせ」という名目で私を呼び出し、なんかいろいろする。
ここまで、いとも容易く推理してしまった川上探偵に盛大な拍手を______

「……っだ〜……面倒だわ。不愉快だわ。」
「川上さん、あ、まさかアレ?アレですか?カッターキャーですか」
「流石にそこまではしないと思うな。」

別に、私と羽白が彼女達の目前で実際に何かした訳ではない。
だから、彼女たちは「悪役メイドB」の座についた私に、「軽く」釘を刺すだけ。
彼女たちの「軽く」が如何程のものか、知ったものではないが。

「んじゃ、行ってきます。」
「ふーん……『川上リイカ、いざ参らん!』みたいなの言わないの?」
「言うわけないでしょう」

酷く暗澹とする気持ちを抑えて、訳の分からないことをいうAさんを一睨み。
でも、等のAさん顔ははニヤニヤと薄気味悪い笑み湛えていた。

「……これ、持ってって。川上さん。」
「?」

彼が手渡したもの……それは、白い小さな箱のようなものだった。

「なにコレ」
「あ、そこにスイッチあるでしょ。それ押したら………そうそう。録音スタートだよ。」

その言葉で、私の手にある「コレ」が何であるか、直ぐに理解できた。

ーーボイスレコーダー……

なんてモン持ってんだ、というツッコミはさておき。

「いってらっしゃい_____リイカ」
「誰が名前呼びを許可したものですか。………まあ、いいや。


か、川上リイカ、いざ参らんっ!」


ーーー


んで、冒頭に至る、と。

24:ミルフィーユ:2015/05/19(火) 22:09 ID:USA



私川上リイカ、F2空き教室にてただいま人生初の壁ドンなるものをされております。


「髪も適当に括って、制服の着こなしもゴミレベル。あんたホント女子力無い。きもい。そんなんで羽白君と話そうとか………」

目の前でペラペラと、私を罵倒し続ける彼女。
発せられる言葉一つ一つが微塵の惜しみなく、又、間違ってもいないためグサグサと容赦無く心に突き刺さる。この子、なかなか私見てるわね………
彼女たちは皆同じように私を睨んでいる。嫉妬と、怒りと、嫌悪とが混じりあった、酷く恐ろしい目だ。
……まさか、たかが「悪役メイドB」になっただけでこうなるとはね……

制服のポケットに入った、角ばった物に手を這わせる。
___さっさと帰って寝たいところだけれど………
『コレ』を見せつけて脅すというのも、私の良心が咎めるものがある。
仕方ない、特にないけれど別の策を考えよう。

「……一つだけ、言わせてください」
「……?なによ?先公にでもチクるつもり?言っとっけどねー」
「違います。ただ、貴方滑舌いいなあと思いまして。」

私がにこやかに言って除けると、一瞬彼女は面食らったように怯んだ。
まあ、これはこの状態から抜け出すための策略の一つとも言える。
まるっきり嘘でもないけどね。
だって、さっきからずっと止まることなく私の悪口言えるんだよ?
放送委員に長く勤めている私にはわかる。____この子、喋る才があるわ、と。

「あ、あとそれから……」
「だ、黙れ!」

不意に、拘束が解けた野獣のように彼女に襲いかかられた。

「!」

突然のことに、体は追いついてくれなかった。
先程の音とは比べ物にならないくらいの音が、狭い空き教室に響く。

「……痛い。」

一瞬遅れて私の頬を襲った、強い痛み。

____嗚呼、口の中を切ってしまった。
こりゃあ口内炎は免れない。

「……あ」

ふと、祖父の家から箱いっぱいに送られてきた、瑞々しいみかん達を思い出した。

(……これじゃあ、当分はみかんを食べられないな………)

一言で「美味しい」と言ってしまえば、むしろ素っ気ない気がする。それ位祖父の作ったみかんは美味しかった。
うまく表せないけれど……どこか懐かしくて、優しい味。
それは、祖父の姿とよく似ていた。

「たくさん食べて、大っきくなれよ。お前らが元気でいてくれることが、じいちゃんの生きがいだからさ。」

そう言って手渡してくれた重み、そして爽やかな香り。
闘病中にも関わらず、私たちのためを思って毎年送ってくれるのだ。
そんな祖父の優しさと笑顔と、健気さを思い出した瞬間。
私の中で、何かが大きな音を立てて砕けた。

「!な……んだよ!」

目の前の少女は荒い息継ぎを繰り返し、酷く戸惑っているようにも見えた。
そらそうだわな。
自分が嫌がらせしてる人物がこうも平然としているんだもん。

「私を……罵倒し、貶した。それまでは、良しとしましょう。」

私が一歩一歩と近づくにつれ、彼女たちも後ろへ、後ろへと下がっていく。
面白いくらい怯えているのが、目に見えてわかった。

「____頬を……強く殴る、ですか。
貴方、今なにしたか分かっているのですか?」

「!」

「貴方のしたこと……それは大きな罪です。やってはいけないことです。

______貴方は、私の祖父の思いを蔑ろにした!
非道だわ!人の道に反している!」

びしっと、「本当に刺さってしまうのでは」と思うほど強く指差して。
私が絶叫すると、一瞬「訳がわからない」という顔をする彼女たち。

いいんだ。そんなことは。
ここからが、私の思い____


「こんな……面倒事に付き合わされて……
いいわ!どうぞ貰ってって『悪役メイドB』だなんて!
やろうとも思わないしやりたくもない!
熨斗をつけて頂戴するわ!!」


ふん、スッキリした。
まだ少し痛む頬を抑えて、私は空き教室を出て行った。

25:ミルフィーユ:2015/05/25(月) 22:32 ID:USA



「ただいまー」
「おかえりリイカ」
「………」

もうすでに名前呼びを突っ込む気力すらない………

私が帰ってきても、Aさんはまだニヤニヤと君の悪い笑みを浮かべていた。
しかし、今はそんなことに構っている暇はない。

いますぐにでも瞼を閉じてしまいたかった。それ位私は疲弊していたのだ。

ーーー

あのちょっとした騒動の後、私はすぐ保健室へ向かった。
口内炎はもう仕方ないとしても、せめてこの腫れは退いてほしい。
だから、湿布をもらおうとわざわざ階段を下って下って………こんな時だけ、この無駄に上等な螺旋階段を恨みに思う。

この校舎は建設からもうすでに40年。木造で朽ちかけている廊下は一歩歩くたび「ギシギシ」となかなかスリリングな音を聞かせてくれる。
それ程に古いのに、何故この螺旋階段は光沢のように眩い光を放っているのか。それは誰にも分からない。

階段を見れば思わず這い寄って頬ずりしてしまうという大変奇異な趣向をお持ちである、我らが校長が学校の資金を使って勝手に改修工事をしたという声もあるが………
真相は未だ闇の中である

そんな面倒くさい螺旋階段を下り終え漸く保健室についたかと思えば。
可愛らしいウサギのイラストとともに「養護教諭の先生はお休みです❤︎」とのプレートが。

「………」

ウサギが、私を嘲笑っているようで酷く憎たらしかった。

ーーーー

「それよりリイカ。『アレ』返してよ」
「………あ、アレね。」

眠たいけれど、仕方がない。これは相手のもの。早く返さなければ。
落としていないかの確認も合わせてポケットに手を這わせれば、ああ確かに。固いものが指先に当たった。
視界の隅に入るそれは、そこにあるだけでその存在を主張していた。

「………」

ポケットから少し出して見れば、にゅっとAさんの手が伸びる。
素直に手渡す____かと思いきやそれを巧みにかわしつつ私は手を高く上げた。

「………なんのつもり?」

26:ミルフィーユ:2015/06/03(水) 23:28 ID:IkI

中学生になって初めての中間テスト!
無事終了!
更新再開しようと思いますので、応援お願いします!
応援されなくても頑張るんで!大丈夫です!

27:ミルフィーユ:2015/06/03(水) 23:29 ID:IkI

ID変わってる〜

28:ミルフィーユ:2015/06/15(月) 22:04 ID:IkI



私はただ、Aさんはこのボイスレコーダーをなんに使うのか、と考えた時。

(もしかして………彼女たちを脅す気かしら。)

そんな考えがふと頭をよぎったのだ。

別に、Aさんを常に疑っている訳ではない。
でも、悪知恵働くAさんのことだ。もしかしたら…………と考えると、渡すのが躊躇われたのだ。

ただ、それだけのこと。
………なのに!!

「なんのつもり?」

「!」

いつもヘラヘラしているAさんには珍しく、眼光鋭く睨みつけられた。
正直、びっくりしたし怖かった。

でも……Aさんがこんなに怒る姿って………下手すりゃ生涯見れないものかもしれないわ。
……こちらを怪訝そうに威嚇するAさん…………

私の目には今、珍百景が映っているわ!!

そう確信した時、私はすでに行動に移していたッ!

別のポケットから取り出した『撮れルンです』。
枚数が限られているのであまり使いたくないけれど……これを使うだけの価値が、今この一瞬にある!
ノブをフルスピードで回す。「ジジジジ………」と小さく響く音と親指の残像だけが、私の目に残っていた。
ノブが止まれば、それは準備はできたという合図。

この間:1.2秒

Aさんの表情が僅かにでも変わろうとするその前に、と私は『撮れルンです』を構えた。
____少しのブレも許されないわ!

「カシャッ」

無機質なシャッター音が響いた。

「よし!完璧!」

我ながら動作の持ち運び一つ一つが素晴らしいものだったと思う。
日頃あまり動かす機会のない親指が、突然の大仕事に痙攣を起こしてしまっているけど。
最高の一瞬が撮れた。とても誇らしい。
子供の運動会に来たお父さんも、こんな気持ちだったのね………

1人「うんうん」と考えている私は、後ろから迫る殺気に気付いていなかった。

29:ミルフィーユ:2015/11/07(土) 21:58 ID:SlM



「……い、………い、し、………


……おい!!羽白!」

「!っ、お、おう?」

目の前に白い稲光が走るようにして、俺はふと現実に戻った。

……駄目だ。また見惚れていた。

再び目を向けた先には、ふわふわ揺れる黒髪が綺麗な彼女。
眠たそうに目を擦ったり、猫のように机に突っ伏したり、頬杖を付いて微睡んでいたり……
そういう仕草一つ一つさえ愛らしく思う。俺は病気なんだろうか。

「……ったく、最近よくボーッとしてんなぁ。大丈夫か?」
「うん……」

少し困ったように俺の顔を覗き込む親友。
よく俺の事を心配してくれる、いい奴だ。

どうやら図書館へ行くのにわざわざ俺を誘ってくれていたらしい。
……それなのに全然聞いてなかったとか。失礼にも程があるな……

「……すまないけれど、まだ読み終わっていないものがあるんだ。」
「あー……っそっか!そか!OK!じゃ、行ってくるわ!」


親友が少し、残念そうな顔をしていたように見えた。


ーーー

「ねぇねぇ羽白くーん!!!見て見てリイカちゃんの新しい写真ー!」
「盗撮か……出歯亀ではないか。
とりあえずいつから彼女に名前呼びを許された。」
「怖い怖い怖いって羽白さん!写真あげる!あげますからうぎゃああああああ!!!」

本日も絶妙に腹の立つ笑いを振りまきながら俺に向かってきたのは、 友達……否、最近知り合ったばかりのほぼ赤の他人だ。素性は知らん。
職質されたら、「流離いのハート泥棒です★」とか答えそうなタイプ、とだけ言っておこう。

名を、結城リュウという。

名前の「リュウ」は、あの伝説の生き物「竜〈ドラゴン〉」からとったらしいが………
この明らかにひ弱な世で『可愛い系男子』と称されるような容姿の美少年から、そのような勇ましい様子は全くと言っていいほど見てとれない。

そっとその生糸のような茶髪の流れる頭に手を伸ばして力を込めると、めりめりと頭蓋骨の軋む音が鳴った。
真っ白な肌を紅潮させながら、「痛い痛い」ともがく結城。『様を見ろ』と内心理不尽なことを考えるが、奴に同情する前に俺のこの複雑な心情を察してくれ。

こいつは俺の思い人を知っていながら、応援するどころか逆に彼女と仲良くしている様を見せつけてくるのだ。気づいたら名前呼びしてるし……むぅ。

「白羽くん、うちのマリカと付き合えばよかったのに」

目に半透明の雫を浮かべ口を尖らせながら、頭を摩る結城。

「リイカちゃん、顔も頭も地味だし……体型も……………くびれと胸がぁあああああいだいいいだいいいいい!!!」

今度こそ頭をかち割るつもりで掴んだ。その証拠に手応えがかなりある。
泣き叫ぶ美少年の制止も聞かず………というとなんか卑猥に聞こえるが今は関係ない。彼女を侮辱したのだ。万死に値することをしでかしたのだこいつは。罰としてそのポジョン変われください。

「俺は彼女以外眼中にない。できれば彼女だけをただただ見ていたいほどにだ。あの猫っ毛ももちもちの肌もつぶらな瞳もふわふわ唇も」
「やめて怖い」

ずっとずっと、ずっと好きだったのだ。
彼女と俺が出会ったその日から、一度も彼女のことを忘れることがなかった。

今更、別の人を好きになれる訳がない。

「……………ふーん。羽白くん、そんなにリイカちゃんのこと好きなんだ…」
「当たり前だろう」

「即答かい」なんて苦笑を漏らした結城が____次の瞬間、目つきが変わった。
一瞬別人かと違えるほどに。

奴は、真っ直ぐに俺を睨みつけていた。

「……ねえ、羽白くん」
「……………なんだ」

三日月型に弧を描いた口元から、見た目にそぐわない艶めかしい笑い声が溢れる。
こいつ、誰だ。

「…ね、俺も好きって言ったらどうする?__リイカちゃん」
「……なんだと?」
「もぅやだ、そんなプリプリしないでよぉ〜男前が台無しだよ?」

いつも通りに聞こえるけど、いつも通りじゃない。音声から読み取れる感情は、どこまでも無表情で。
嗚呼、こいつ本気なんだな、と頭の片隅で理解する。

_____逆光にある奴の顔は、結局見えなかった。

「__幼馴染だかなんだか知らないけど、覚悟してて。
今優勢にいるのは、俺だよ。羽白くん♪」

30:紫愛刹那@秘書・暗殺者◆lXapdKP.:2015/11/07(土) 22:31 ID:OJQ

スレ名に釣られてやって来ました!!www
続き期待です!!

31:ミルフィーユ:2016/03/26(土) 23:07 ID:VXE



思えば、好きになる理由なんてたくさんあった。

まず最初に、羽白はイケメンだ。とてつもなくイケメンだ。
私はこういうことに関しては「顔じゃなくて性格が大事!!」とか良い子ぶるつもりはない。はっきり言おう。イケメンは大好物だと。いつだって、イケメンとイケメンが戯れる一画を見るだけで幸せな気持ちになるのだから。
ここで間違って欲しくないのが、私の容姿の整った人間に対する「好き」は恋愛感情の「好き」ではないということ。美少年は観賞用としては大いに好きだ。然し、イケメンを見りゃ即恋に落ちるだなんて、そんなに私の尻は軽くない。どっちの意味でも重いのだ。………はい。痩せます。痩せます。

ま、それは置いといて。

羽白は顔の良さに続いて勉強までできる。
確か、この間のテストで学年三位だったっけ?私にとって一桁だなんて、夢のまた夢だわ。
然もそんな素晴らしい成績を維持しておりながらも決して奢らず威張らず、尚も努力を怠らないという。

運動だって、なんでも簡単にやりこなしてしまう。
柔軟性、瞬発性、持久力。何をとっても完璧で、体力テストは男子の中で一人だけ綺麗な五角形ができていたらしい。
……ちなみに私は柔軟性の欄だけ突き出た奇妙な図形が出来上がっていたが。

実は音楽にも精通しており、ピアノ弾かせりゃプロ級。歌わせりゃ歌手級。
美術のセンスもピカイチ。あの堅物先生が文句無しの満点をあげるくらいなんだから、すっごいことなんじゃないかな?

…………これでなんとなく分かったと思うが奴はチートだ。
とんでもないチートだ。

しかし、これらの成果は全て彼が努力したからこそのものであると私は知っている。
初めて出会った6年前のあの日から、ずっと見ていたから。それこそ血の滲むような努力を。苦しそうに歪んだ顔を、よく、覚えている。
あんなの、幼い子がする顔じゃない。たったの、弱い十にも満たない子が。
一体何が、羽白を苦しめていたのだろう。何が、羽白をあそこまでさせていたのだろう。

「そんなに頑張らなくてもいいよ」と。「もう少し、自由に生きていいのに」と。

そう、幾度となく思った。けれどそれは努力している羽白を否定する言葉だから。彼がどうしてそんなに努力しているのかを知らない私にその言葉を言う権利はないから。
口に出すことは、無かった。

彼のその姿を見ていた時から、私はだんだんと彼に惹かれていたのかもしれない。

ただ、一度だけ。
暗い闇を携えたその背中に小さく呟いたことがある。

…… きっと、届いてはいないだろうけれど。

32:ミルフィーユ:2016/03/26(土) 23:10 ID:VXE

>>30

紫愛刹那@秘書・暗殺者◆IXapdKP.様

ありがとうございます!!
返信が遅くなってしまって大変申し訳ない……
これからもちょっとずつでいいので更新していけたらなーと思うので、暖かく見守って頂きたいです。

33:みる神:2016/03/29(火) 21:18 ID:5O2

こんにちわ私もスレ名に釣られました!
続きが楽しみです!
美少女大好きなんですww

34:ミルフィーユ:2016/03/29(火) 21:46 ID:Ks6

>>33
みる神様

ありがとうございます!!
奇遇ですね、私も美少女大ッッッッッ好きなんですよ、本当に。
でもこの作品、主人公が美少女ではないというwww
器用貧乏平凡顔の子を目指しております。
変な方向に話が突っ走りましたが、これからも応援お願いします!!

35:みる神:2016/03/30(水) 11:04 ID:5O2

みるふぃーゆさん頑張ってください!
応援してます

36:堀ちゃん←← (=゚ω゚)ノ ―===≡≡≡ dice2:2016/05/28(土) 18:41 ID:.xk

これは・・・2か月前だな。

んーでも、続きマジ読みたいなぁー(^^)読みたいなぁー読みたいなぁーww


みるふぃーゆさん、お願いしますーーー!!

37:ミルフィーユ:2016/05/28(土) 20:05 ID:eQ2

書きたいんだけどさ!!!!
続きもまあまああるのだが、だが、然し!!!
時間が圧倒的にないいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!

どないしましょ。IDも変わってもうたし。
少し、考えたいです。、

38:堀ちゃん←←:2016/06/19(日) 10:47 ID:.xk

書いてくださいよぉぉお泣

ミルフィーユさんの小説めっちゃおもろかったですよぉー!!

39:ミルフィーユ:2016/06/19(日) 11:15 ID:eQ2


よし、ならば書こう(単純)

本当に本当に、遅くなってしまうかもしれません。
でも、応援してくださる方がいるのなら頑張りたいです。


書き込む スレ一覧 サイトマップ ▲上へ