「いいよー。あかりちゃん、かわいい!」
そんな言葉と共にまぶしく光るフラッシュ。
私に注目する、沢山の大人たち。
小野山あかり。それが私の名前。
「はい、お疲れ!30分の休憩ね」
そう言うと、カメラマンさんたちは出ていき、代わりにスタイリストの香川さんがやってきた。
「あかりちゃん、衣装チェンジするからこっち着て!」
「はい」
私は役者。だけどモデルもやっている。
「あかりちゃん、今度あかりちゃんが出るドラマがはいるんだって?」
香川さんが私の髪をとかしながら言う。
「はい。主人公をやらせていただきました」
「そっか、絶対観るよ」
「はい」
私が笑顔で答えると、香山さんは再び口を開いた。
「あのさ、今度、あかりちゃん、雑誌の表紙モデルになるじゃん?」
「はい」
「それでさ、ひかりちゃんとコラボしてとりたいって監督さんが言ってたんだけど……いいかな?」
「はい、もちろんです!」
「そっかー!よかった。なら、そう伝えておくね」
香川さんが部屋から出て行った瞬間、私の顔から笑顔が消えた。
ひかりとは私の双子の姉の事で、彼女もまたモデルだ。
だけど、私みたいに役者ではない。
一緒に役者になろうと誘ったのだが、ひかりが
「いいよー!そうじゃなくても私達、そっくりなのにさ。これで職業まで同じって、何だか気持ち悪いよ」
と、言われ、諦めるしかなかった。
私もひかりも、小さなころから「かわいい」と言われ続けてきた。
だから、高校3年生になった今でもそれは変わらない。
でも、ひかりと私を二人で一つ扱いしないでほしい。
それが、私の本音だった。
その日の撮影が終わったのは、夜の7時だった。
なぜだか最高潮だったはずのカメラが壊れ、照明がつかなくなってしまったのだ。
それで、今日の撮影はあきらめた。それでもひかりはまだ中にいる。
冷たい風が吹く。
午後7時19分。それは訪れた。
ドンという大きな爆発音。それに合わせてやってくる熱風。
あちこちから聞こえてくる悲鳴と、鉄が焼けるにおい。
じっとしていられなかった。
パイプの残骸や、倒れている棚をかき分け、私は必死でひかりを探した。
逆流しているトイレの水に浸っている部屋に、ひかりはいた。