小さな街角。

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1:理実:2015/08/27(木) 22:08 ID:ZRo

商店街の日陰をセーラー服の少女が歩いていく。
彼女が通った後には、ほんのり甘いにおいが残っていた。
すると、少女は突然立ち止まり、手に持っていた白い日傘をさす。
それは、本当に似合っていた。
ふんわりとした黒髪のショートボブの髪型。
膝下まである、制服のロングスカート。
雪のように白い肌に、白い靴下に黒いローファー。
それから、小さな手に持った茶色い学生鞄。
それに加え、顔だちもとてもきれいだった。
何でもないように歩いていた彼女だったが、ある店で足を止めた。
そこは、商店街の本当の隅っこ……。
路地裏をいくつも通り抜け、やっと見つけられるほどの、目立たない、古いお店だった。
「ごめんくださーい」
少女はドアを開け、顔をのぞかせた。
しばらくして、聞きなれたおじさんの声が聞こえてくる。
「いらっしゃい……。おや?」
レコードを出したりしまったりしていたおじさんは、少女の顔を見ると、その手を止めた。
「こんにちは」
少女は笑顔で挨拶をする。
「ひなたちゃんじゃないか……」
「あはっ……マスター、見つかった?」
短い髪の毛をいじりながら、『ひなた』と呼ばれたその少女は慣れているように店の奥へを進む。
そんな彼女のほわん、とした笑顔に『マスター』は答える。
「ああ、見つかったよ。これじゃないかな?ひなたちゃんが探してたもの」
そう言うと、マスターは木製のテーブルの上にコロン、と一つの石を置いた。
ひなたはその石を手にとってまじまじと見つめると、やがて少しがっかりしたように首を振る。
「違うみたい」
「そうか……」
マスターはレコードをしまい終えると、ひなたを椅子に座らせ、ミルクティーを差し出した。
「飲みなさい」
「ありがとう」
ひなたはティーカップを口に運ぶ。
そんなひなたを見て、マスターは口を開いた。
「ひなたちゃんが見た石はどんなヤツだったのかな?」
「……それがさ、よくわからないんだよね」
ひなたはティーカップをコースターの上に置く。
「そうか……その石が、ひなたちゃんにとっていい思い出なのか、悪い思い出なのかはわからない……。でも、いつかきっと見つけ出せる日が来ると、私は信じているよ」
そんなマスターの言葉にひなたはにっこりとほほ笑んだ。
「ありがとう」
それから、ひなたはミルクティーを飲み干して店を出た。
相変わらず白い日傘をさしていたが、店を出る前とは違う思いが宿っているように見えた。


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