主人公はいつも『男』

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1:暇つぶしの短編集:2015/09/01(火) 03:52 ID:vs6

男は深夜、帰路を歩いていた。深夜の為、終電もおわってしまい、男は自宅まで歩くしかなかった。
歩くしかなかった、というのは少しおかしい。
男の選択肢の中には、タクシーで帰る、という選択もあったのだが、男は少しでも節約をするために徒歩で帰宅することを決めたのだ。
タクシーで帰れば20分ほどで着くが、徒歩となると50分はかかるだろう。

それでも、稼ぎが多いとは言えない男にとっては、そんな運動は金の為と考え、歩き続けた。

少しすると、何かが妙だ。
夢見心地の、頭がぼーっとしているような状態になり、空気がなにかおかしい。
けれど、まったく気持ち良くない。その感覚に、男は不快感さえ抱いていた。
知ってるはずの道に、違和感がある。

まるで、どこか知らない世界に迷い込んでしまったかのように、空気が変だ。

そのおかしな感覚から逃れたい男は、少し急ぎ足で歩を進めた。
家に着いてしまえば、こんな感覚は消えると思ったからだ。
先ほどより早く進んでいく風景、だが、そこにも違和感がある。


さっきから、同じ看板が何度も何度もある。
まるで、同じ道を繰り返しているかのように、歩を進めても、その看板は男の視界に現れる。

その看板に描かれているのは、文字。その文字は、いつも違う文字がたったひとつ書かれている。
今は、「し」だった。

その時男は、ハッとした。
記憶をさかのぼっていくと、その文字は言葉になるのだ。
「し」のまえは、確か「は」だった。その次は、「え」。その前は「ま」。

「し」「は」「え」「ま」……そして、「お」。
それに気づいた時、男は戦慄した。

その言葉の続きが、この道の先にあるような気がしてならなかった。
次の文字は、きっと「ぬ」。
それを見てしまえば、きっと、きっと。

きっと俺は――――。



男は、その場に座り込んだ。
もう、ここから先に進む事は出来なくなった。そして、戻ることさえも。


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