第一話「よみがえる悪夢」
―パッパー……
鳴り響くクラクション。
急ブレーキをかけるトラックの残像。
悲鳴を上げる女の子。
そして、その女の子に手を伸ばすもう一人の少女は……私?
―りあらっ……!
目の前にいる私は勝手に叫んで、勝手に道路に飛び出して―……。
―ピピピピッ……
「りあらっ……」
目を開けると、そこは、私の部屋の白い天井。
鳴り続ける目覚ましを止めて、私は上半身を起こした。
―コンコン……ガチャッ……
「せあらー?」
声のする方に顔を向けると、そこにはいつもの姿のりあらが。
じっと見つめていると、りあらが不思議そうに首をかしげる。
「せあら?どーした?」
「……あっ、ううん。何でもない」
「?そう?まぁ、良いけど。早く起きなよー」
良かった。りあらはいつも通り元気そう。
私の名前は、火宮せあら。
りあらの、双子の妹。
私は、あの夢をもう何回も見ている。
6年前……いや、6年後と言った方が正しいかな?
私、火宮せあらは、あの日、短い人生のページを閉じた……。
はずだったんだ。
あの夏の日、私はりあらと一緒に下校していた。
そして、信号が青になり、横断歩道を渡ろうとしたとき、私よりも前を歩いていたりあらに、大型トラックが突っ込んできたのだ。
私は考えるより早く、その、姉の背中を押した。
それからの記憶は無い。
今でも覚えているのは、ほとばしる痛みと鮮血。
周りの人たちの悲鳴だけ。
もっと書いてください!
面白いです!
とっても面白いです!早く続きが読みたいです。
6:雪:2015/09/17(木) 18:36 ID:ZRo二人とも、コメントありがとう☆
7:雪:2015/09/17(木) 18:44 ID:ZRo そして、目が覚めたら6年前のまだ幼い姿に戻っていた。
しかも、外傷もなく、自分のパジャマを着て―。
「……あら……せあら!」
パンッと目の前で手をたたいて、りあらが私に話しかけてきた。
その顔は、凄く心配そう。
「りあら……、どうしたの?」
「どうしたじゃないよ。せあら、あんた今日ちょっと変だよ?」
りあら……。
「……ごめん、何でもないよ」
「まぁ、話したくないならいいけど。でも、あまり溜め込まないようにね」
「ありがと……」
ごめん、りあら……。
心配してくれてるんだよね。
でも、これは誰にも言えない、私だけの秘密。
でも……りあらも私と同じく未来から来たのなら、話は別なんだけどな。
まぁ、そんなことありえないからね。
帰り道、私はりあらと一緒に歩いていた。
その頃になると、私は夢のことなどほとんど忘れていた。
何回も見ているから、慣れってやつかな?
「あ、そういえばせあら」
「何?」
りあらが突然思い出したように私に話しかけた。
「私達のクラスの森川翔っているじゃん?」
「うん」
りあらはくるりと振り返ってにっこりとほほ笑んだ。
いや、正確にはニヤついていた。
「あいつ、せあらの事好きらしいよ」
「はっ!?」
「おー、良いね。せあらはかわいいねぇ」
りあらはさらにニヤニヤしている。
そして、私の顔は多分赤い。
「何言ってるの、りあら……。私とりあらって顔は同じじゃない。なのに、何で私だけを好きになるのよ」
りあらは呆れたように首を横に振る。
笑ったり呆れたり……表情豊かだこと。
「あのねぇ、人って見た目だけどその人を好きになるんじゃないと思うよ。確かに私たちは同じ顔だけど、性格は少し違うじゃん」
「うん、まぁ……」
確かに、私とりあらは顔は同じだけど中身は違う。
りあらは活発で運動が得意な女の子。
私は結構おとなしくて、読書が好きな女の子。
りあらが言うには、翔君はそんな私の内面を好きになってくれたらしい。
一瞬嬉しく思ったけれど、今の私は、10歳の女の子。
本当の私は未来にいる。
「……ねぇ、せあら」
「ん?」
「……ごめんね」
「えっ?」
何を言い出すかと思えば……。
「何言ってるの?」
「ごめんなさい……」
ごめんなさいの後に、りあらが何か言ったような気がしたけれど、私はそれをスルー。
りあらは時々不思議なことを言う。
オカルト好きな私の血が混ざっているのか……。
りあらの瞳に一瞬透明な雫が浮いているように見えたけれど……。
多分、私の気のせいなんだろう。
―キィィィィ!
この音は……。
ボーっとする頭を動かして、私は音がする前の方を見た。
目の前には、私そっくりな女の子。
―りあらっ……!
私は反射的にその女の子の背中を押す。
その瞬間、何かがぶつかった大きな音が聞こえてくる。
―せあらっ、せあらぁ!!
りあらが私の体を揺らしながら、泣いている。
―おねが……ま……なん……を……い……。
私は、そこで目が覚めた。
何だか……昨日よりも夢が進んでいるような気がする……。
これは、きっと気のせいなんかじゃない。
あの時、りあらはなんて言っていたのかな……?