殺し屋with女子高生☆

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1:凛堂りんさ◆/A:2015/09/26(土) 16:28 ID:CS2

凛堂りんさです
飽きて単発で終わってしまうかもしれませんが、気が向いたら書こうと思いますーー;
感想やアドバイス、宜しくお願いしますm(--)m

digest
幼い頃、殺し屋に誘拐されて育った夏波レクト(なつなみ れくと)は、15歳でありながら凄腕の殺し屋として裏世界で有名だった。
しかし、彼は『罪を犯した者』しか殺そうとしない。

ある時、昔殺人を犯したという、叶咲高校1年サバイバルゲーム部の下っ端、美澄心鈴(みすみ ここり)を殺して欲しいと依頼され、殺そうとするが……
>>02 登場人物設定

2:凛堂りんさ◆/A:2015/09/26(土) 17:06 ID:CS2

登場人物設定

・夏波 レクト Natunami Reckt ♂ (主人公)相棒銃:日によって違う

クールな性格で、顔は美形。
幼い頃、殺し屋に誘拐されて、拳銃の使い方や毒の知識、変装術などを教わった。
頭脳明晰(IQ270)で、運動神経も良い。
早撃ち、狙撃、変装、ピッキングといった、ありとあらゆる特技を持つ。
高校には通っていなかったが、美澄心鈴に接近するために叶咲高校に入学した。

・美澄 心鈴  Misumi Kokori♀ (ヒロイン)相棒銃:S&W M19 コンバットマグナム

陽気な性格で、すぐに誰とでも仲良くなれる(と思っている)
幼少期に、コンビニ強盗に襲われた際に強盗の持っていたナイフを強盗に誤って刺してしまった過去を持つ。
しかし、あまりにもショックで、幼少期の事なのであまり覚えていないらしい。
アクション映画などが好きで、拳銃に興味を持ったため、サバイバルゲーム部に入部。
しかし、毎度毎度すぐにやられ、狙撃能力は皆無だが、銃の知識と、早撃ち能力に優れていた事が後に分かる。
その射撃能力はレクトを超える程。だが、学業成績はよろしくない。
刑事は刑事、母は元自衛隊員。

・金堂 昴流 Kondou Subaru ♂ 相棒銃:トカレフTT-33

幼少期、心鈴のコンビニ強盗事件の現場に居合わせていた。
心鈴の近くに居た際、一緒に人質として襲われそうになった時、心鈴が誤って刺した。
以来、助けてくれた(と思っている)心鈴に思いを寄せている。
高校で奇跡的に心鈴と再会し、彼女が拳銃に興味を持っていることを知って自らサバイバルゲーム部に。
元々才能があったのか、すぐに上達した。
いつも隣にレクトが居るので、恋敵だと勘違いしてレクトをライバル視している。

・白城 莉玖  Shiragi Riku ♂ 

美澄心鈴を恨み、レクトに殺しを依頼した張本人。
心鈴を襲った強盗の弟。

・美澄 翔武  Misumi Shoumu ♂
心鈴の父親で、刑事をしている。
この街に起きる、証拠が何一つ残らない不可解な事件を捜査している(レクトが起こした事件)
正義感が強く、殺人などは絶対に許さない。

・朝比奈 信乃 Asaihna Shinano ♀ 相棒銃:アサルトライフル
心鈴のクラスメートで、サバイバルゲーム部の副部長。別名、『狙撃の女王』
最初は心鈴の狙撃能力の低さに呆れていたものの、早撃ち能力がある事が分かって、今は認めている。
レクトの狙撃と射撃を見て感激し、サバイバルゲーム部に勧誘中。

3:凛堂りんさ:2015/09/26(土) 17:28 ID:CS2

 麗らかな午後、晴天で特に悪い事も無さそう……!
 と思っていた矢先。

 バンッ
「ぎゃあ!な、ナニなに何っ!?け……けけけけ拳銃っ!?」
 私は何者かに襲われていました。



 いつも通り、私は部活に行ってはBB弾にぶち当たり、直様やられた。
「いったぁ〜っ……あーあ、またやられたぁ」
 開始10秒。
 グラウンドで行われた模擬練習では、皆自分のエアガンにBB弾をつめ、部員に当てていくのがルール。
 だが、何度やっても誰一人にも当たらず、いつの間にかBB弾の雨をかぶっていた。

 体育館の壁に的を貼り、10mの地点で的に当てるという練習。 
 練習では、全く的に弾が当たらず、何度も引き金を引くも、弾は壁にぶち当たっては弾き返された。

「あんた10mの狙撃もできないの!?本当にやめなさいよ」
 そう機嫌を悪くしながら怒っているのは、副部長の朝比奈信乃だ。
「そ……そんなこと言われても……っ!」
 心鈴は少し涙目になりながら、訴えるように反論した。
「銃が好き、アクション映画が好きなだけじゃ、この部ではやっていけないわよ。父母を自衛隊と刑事に持つ子はどんな才能があるかと思ったら……狙撃能力皆無じゃない!」
 信乃は吐き捨てるようにそう言うと、速い足取りでつかつかとどこかへ行ってしまった。

 何度も部活をやめるように諭されてきたが、やっぱりサバイバルゲームは楽しい。
 でもその反面、上達せず、全く的に当たらない自分の狙撃能力を腹立たしくも思っていた。

「はぁー……っ……なーんであたしって才能ないんだろ」
 休憩時間、部室の椅子に座りながらぼんやり思っていた。
 父は狙撃能力があるし、母はどうか知らないが、多分拳銃の扱いに慣れているのだろう。
 それに引き換え、10m先のものですら当たらない……
「あーあ、部活やめさせられちゃうのかな……」
 相棒のエアガン、コンバットマグナムを掲げながら、元気の無い声で言った。



「それで、君に殺しを頼みたいのだが……これが写真だ」
 薄暗い部屋の中、社長室らしき部屋で、レクトと男性が対話していた。
 重厚で高級そうなデスクの前に、依頼人は立っている。
 そして、彼は一枚の写真を見せると、二ヤッと口角を釣り上げた。

「俺は基本的に罪を犯した者しか罰しませんが。ましてや、女子高生など言語道断」
「それがだね……彼女は一度、殺人を犯したことがある」
「!」
 彼の口からは、とんでもない事が吐き出された。

「私の兄を、誤って刺したのだよ。幼少期にね。正当防衛、しかも子供だったため、罪に問われなかった」
「……分かりました。その恨み、晴らして差し上げましょう」
 冷酷な瞳で、レクトは写真を受け取った。


 

4:凛堂りんさ:2015/09/27(日) 19:45 ID:CS2

 社長室を出ると、写真と一緒に添えられていた資料に目を通した。
 電気一つ無い廊下で、窓からの月明かりだけが頼りだ。
 確かに、新聞には強盗のことが書かれてあるが、新聞には『少女』としか表記されていない。
 多分、心鈴の事を配慮して名前は伏せてあるのだろう。

 新聞ともう一枚あったのが、美澄心鈴のプロフィールをまとめた資料だった。
「美澄心鈴……ふーん……叶咲高校1年サバイバルゲーム部所属か。まぁ、でもサバイバルゲーム部と言っても、所詮拳銃遊び。実弾は扱えねーだろ」
 レクトは廊下で独り言を呟いていた。


「はぁーっ……きょーも疲れたぁ」
 一方その頃、心鈴はベッドにダイブし、愛用のイルカ抱き枕にアタックしていた。
 特に可愛いわけでもなく、冴えない面をしているのに何故か愛着が沸いて、かれこれ3年も大事にしているぬいぐるみだ。
「なによぅ……朝比奈先輩、あんなに怒らなくったっていいのにぃ」
 今日、朝比奈に叱責されてからというものの、気分が落ち込んでいた。
 自分も決して練習をサボったりしている訳でもないし、寧ろ家で自主練もしているのに上達しない。
 ちゃんと狙っているのに、弾が思い通りに動いてくれない。

 相棒銃のコンバットマグナムを見つめながら、ため息をつく。
 5年前、両親が一番最初にプレゼントしてくれたエアガンだ。

「ま、いーや……明日も明後日も練習頑張ればきっと……うまく……」
 段々目を開けていられなくなり、そのまま意識を手放した。

 ーー翌日。
「わっ、もしかして昨日寝落ちしちゃったぁっ!?てか、もー7時20分ッ!?」
 時計の針は7と4を指していて、心鈴は焦った。
「やばいやばい、ち、遅刻しちゃうーっ!あの先生怖いんだよおぉー!おかーさん、送ってぇ!」
「今日は仕事なのー。ちゃんと起こしたわよ?あ、朝食は食べなさいよー」
 階段下でお母さんが呆れながら言っている。
 超速で着替えると、パンを無理矢理喉に詰め込んで水で流し込み、急いで家を出た。
 

5:凛堂りんさ "":2015/09/27(日) 20:03 ID:CS2

 通学路には、同じ制服を着た者はおらず、もう皆学校へ登校してしまっているのだろう。
「あぁ、やばいよー、やばいって」
 グラウンドに着いた頃には、もう5分前の予鈴が鳴り響いていた。
 このまま教室へ到着するまで、多分ギリギリだろう。

「うおぉぉっ!」
 心鈴は重い教科書の入った鞄を揺らしながら、勢いよく階段を駆け上がる。
 一応、サバイバルゲーム部でグラウンドを何十週もしているため、スタミナはそこそこある。
「はぁっ、はぁっ……っ、あと……10秒っ」
 3階目の階段を登り終わり、渡り廊下を渡り終わるともう5秒。
 ーーガラッ
「はぁ、はぁっ……」
 教室のドアを開け、自席まで走ってあと4,3,2,1ーー

「ふぁああ〜ま……間に合ったぁ〜っ!」
 心鈴がそう言い、席に着くと同時にチャイムが鳴った。
 クラス一同、着席しながら心鈴の方を見ている。
 その数秒後、強面の怖そうな担任の先生が教室の引き戸を開けた。

「おはようございます」
「おはようございます」
 先生が挨拶すると、クラス全員声を揃えて言った。

 心鈴は、先生の話を頬杖をつきながらぼーっと聞いていた。
「そろそろ時間ですね。あ、最後に一つ連絡があります。最近、この付近で殺人が発生しています。未だに犯人は逃走中です。くれぐれも、皆さん気をつけて下さい。何かあったらすぐに学校と警察に連絡を……」
「えーっ、殺人事件!?怖ぁい」
「俺、犯人見つかるまで部活やすもっかなぁ」
 先生が言うと、口々に心配の声があがった。
 けれど、心鈴はまぁ、自分には関係ないか、と軽く受け流していた。


 いくつもの授業を終え、要約放課後になった。
「ふぁーっ!やぁーっと部活だぁ!ヒャッフー!」
 終業のベルが鳴った途端、電池が入ったロボットの如く、一気に走り出した。
 今日は体育館で的当て練習の予定だ。
 心鈴は体育館へ急いだ。

「全員、集合したかー?」
 副部長の朝比奈が、体育館の壁に立っていた。
 部員が全員集合し、体育座りをして話を聞いている。
「最近、この近くで殺人事件があることは知っているな?」
「えぇ。今日のホームルームで聞きました」
「そこで、今日から犯人逮捕まで、もしくは2週間経つまで、部活を休みとする」
 朝比奈は、きっぱり顔色一つ変えずにそう言った。

「えっ!?何でですか!?他の部は普通に部活やってるし……っ」
 心鈴は訴えるように反論したが、朝比奈は心鈴を冷めた目で見ながら言い放った。
「顧問の先生からの指示だ。従え」
 その時の朝比奈の瞳は、とても冷たくて、背筋がゾッとする程だった。


「はー。なぁんか今日の朝比奈先輩怖かったなぁ。って、怖いのはいつものことか」
 まだ、空が青色の内に帰路についた。
 

6:凛堂りんさ "":2015/09/27(日) 20:12 ID:CS2

「美澄心鈴は、いつもこのルートで下校するな」
 一方レクトは、短時間に綿密な計画を練り、依頼から僅か1日で殺人を決行していた。
 心鈴は鞄を肩にかけ、不服そうな表情で歩いている。
 背中にライフルケースを背負い、深くフードを被って心鈴の跡をつけた。
 何としてでも、罪を犯した者は排除する。

「よし、一通りの少ない道に入ったな」
 心鈴が通っているのは、長いトンネルの中で、壁には不良の落書きがある、いかにも人通りの少ない道だ。
 トンネル内は薄暗く、明かり一つさえ無かった。

「まぁ、帰ったら自主練してアニメでも見よっかなぁ」
 心鈴は、自分が狙われているということも知らずに呑気だ。

 レクトは黒い

7:凛堂りんさ:2015/09/27(日) 20:35 ID:CS2

 レクトはIMIガリル(ライフル)の黒い銃口を心鈴に向け、スコープを覗き込む。
「標的確認。ロックオン」
 カチャリと音がして、そのまま引き金をーー

「早くかーえろっ」
 心鈴が走り出そうとした、その時だった。

「ぎゃああ!」
 ーーバンッ

 銃声がし、それと同時に心鈴が倒れ込んだ。
「ったぁー……誰よ、こんなとこに空き缶置いたの!」
 心鈴はどうやら、缶につまづき、奇跡的に銃弾を逃れたようだった。

「って……さっきの銃声よね!?まさか、け、けけけ拳銃!?」
 心鈴が後ろに振り向くと、ライフルを持ったレクトが、悔しそうな顔で立っていた。
「バレたか。俺は殺し屋。お前はこれでおしま……「えーっ!ちょっとそれ見せてー!」
 レクトがライフルを構えたのにも関わらず、心鈴は動じないで、寧ろ元気よくレクトの元へ走っていく。

「ねぇ、これってイスラエルの軍事用ライフルIMIガリルよね!?口径は7.62mmかぁ!うわぁ、初めて見たぁ」
「お……おいっ!」
 殺されそうな状況で、ましてや殺し屋にこんな事をするとは予想外だ。
「すごいねぇ!でも、日本だと銃刀法違反になっちゃうから、しまっておいたほうがいいよー!警察には言わないからっ」
「こいつ……人の話を聞け!」
 いつもは冷静沈着なレクトだが、こればっかりにはペースが乱れてしまう。

「なぁに?」
「俺は、お前を殺しに来た。そんなに間近で殺されたいのか?」
 レクトは蔑んだ目で心鈴を睨みつけながら、低い声で言った。
「…………ふぇ……っ、えええぇえっーーー!?」
 要約心鈴は、自分のおかされている状況を理解した。

8:凛堂りんさ:2015/09/29(火) 21:05 ID:CS2

 レクトは相変わらず、冷酷な視線を心鈴に向けながらライフルを構えている。
 暗く人気のないトンネルの中、2人の間に緊張が走る。
 
「ちょ……っ!待って!せめて、私を殺す理由を聞かせて?」
 心鈴は重い教科書の入ったスクールバックを盾替わりにしながら、恐る恐る尋ねる。
「俺は罪人を処刑する殺し屋。お前も、過去に殺人を犯したそうじゃないか。それも、正当防衛で」
「!」
 レクトの一言は、心鈴の心を容赦なくえぐった。
「そ……それは……どうしようもないことだったのよ!私が悪いの!?」
 思い出したくもない、淡くも辛い過去の記憶が心鈴の脳内をよぎる。
「法律上の法はどうあれ、お前が殺した強盗犯の親族がお前に恨みを持っている。依頼されたからには、どんなに可愛い高校生でも、殺さねーと」
 感情が篭っていなかったが、さり気なく、心鈴の事を可愛いとレクトは言った。
「か……可愛い?」
 自分が殺されかけているという状況なのに、心鈴は頬を赤らめて興奮する。

「そうだな……そういや、お前サバイバルゲーム部なんだって?」
 レクトは急に思考を変えたのか、ライフルの銃口を心鈴に向けるのをやめた。
「そ……そうよ。それが何?今も愛用のコンバットマグナムを持っているわ」
 BB弾と実弾では威力が違いすぎると分かっているが、それでも少し強気になってみせた。
 心鈴は震える手で、太ももに装着していたホルスターに挿してある拳銃を取り出す。
「ふーん……コンバットマグナム、ねぇ……」
 もちろん、この程度のエアガンなどは、実弾を持つレクトにとっては大したことない。
 レクトは余裕しゃくしゃくの態度で言う。
「銃を扱う者同士、楽しく殺そう。俺と早撃ちで、先に弾を当てたほうが勝ち。俺を止めなければ、お前は実弾で……おさらばだ」

 レクトも実弾が入っているであろう、心鈴と同じコンバットマグナムをポケットから出した。
 二ヤッと口角を釣り上げ、薄気味悪い笑みを浮かべながら。
 

9:凛堂りんさ:2015/09/29(火) 21:28 ID:CS2

「そ……そんな!殺し屋と早撃ち対決ーっ!ちょっと待ってよ、酷い!ぎゃあああ!」
 心鈴は助けを求めるべく大声を出すが、トンネルの周りは住宅は一つも無い。
「騒ぐな。お前を……殺せなくなる」
 大声を出されても逃げ切る自身があるのか、レクトはポーカーフェイスで表情一つ崩さない。
 
「こうなったら……ダメモトでもやるっきゃないよねっ!」
 心鈴は動揺しながら、強く拳銃を握り締めた。
「でも、実銃とエアガンじゃ速さが異なるんじゃ……というか、いくら勝てても0.数秒の差じゃどちらにしろ、私殺されない?」
「心配ない。お前が俺より速く撃てばいい。弾が当たったら今日のところは諦めてやる。警察にでも何でも通報すればいい」
 レクトは自分が殺せる自信があるのか、警察に連絡していいとまで言い放った。

「分かった……いくわよ……」
 狙撃が不得意な心鈴は、イチかバチかの覚悟で、レクトにつかつかと歩み寄る。
 その距離は、10mにも満たない距離。
「おいおい、そんなに近くに来ていいのか?近くで殺されてーのか?」
 レクトもサッと拳銃を構え、引き金を引こうとしたその時だった。

 ――パカッ

 と、情けないBB弾の音がしたかと思うと、レクトの胸元に黄色い弾が貼り付いていた。
 そして、弾はレクトの胸から落ちていき、カンカンと地面に落ちていく。

 その時、レクトは引き金を引く直前で、あと僅か0.数秒で撃てたのだが。
「嘘……だろ?」
 心鈴はこの暗い中で、速く、しかも正確に胸元を当ててみせたのだ!
「はぁっはぁっ……狙撃は苦手だけど、早撃ちは得意。けれど、まさか殺し屋に勝てるとはね……」
 心鈴は、緊張と安堵で息を切らしている。

 サバイバルゲーム部では、主に狙撃の練習がメインで、早撃ちはあまり需要がない。
 試合においても、心鈴が早撃ちを披露する前に狙撃でやられるため、皆早撃ちの才能を知らないのだ。

「まぐれ、だろ」
 レクトは、こんな女子高生に自分が早撃ちで負けたなど、殺し屋のプライドが許さなかった。
「えーっ、でも私まぐれでも勝っちゃったわけだし……お願いだから殺さないで」
「く……っ」
 先程の動揺が嘘のように、心鈴は自分が勝ったと分かった途端、優位に立って、意地悪く言った。
 そして、スチャッと拳銃をスカート内のレッグホルスターにしまう。

「まぁいい。だが今日のところは見逃すと言ったまでだ。また殺しに来るよ。精々お父さんにでも泣いてすがりつくんだね」
 レクトは少し苦悩の色を見せながらも、最後まで心鈴を罵った。
「うん、ばいばーい。というか、お父さんの事も知ってるんだね」
 心鈴は殺し屋に勝ったことが嬉しく、機嫌よく見送った。

10:凛堂りんさ:2015/09/29(火) 22:52 ID:CS2

 その後、周りを警戒しながら帰路についた。
 特に襲われることもなく、難なく家まで到着することができた。 

 自室に行き、ドサッと荷物を床に放り投げると、ベッドにダイブする。
 そして先程の出来事を振り返り、感慨に耽っていた。


 何か――……脳がビビッと刺激された――……

 心鈴は、あの時一瞬だけ体験した未知なる感覚に襲われた事を思い出す。
 今まで銃を握ってきたけれど、あんな感覚は全く無かったのに。
「何か怖いけど燃えるぅーっ!これぞスパイ映画的な!?」
 確かに銃口を向けられた時は怖かったが、殺し屋に勝った時はスカッとした。
 スパイ映画への憧れ、これがさっきの感覚の正体なのか。

 それとも……?

 とにかく疲れているので、心鈴は深く考えることをやめた。 
 どうせ考えたって、今の自分じゃ分からないし。

 普通の少女なら、否、正常な人間なら殺し屋に襲われたら恐怖に飲み込まれ、警察に通報するだろう。
 けれど、彼女は頭がおかしいのか、それとも楽観的なのか、通報しなかった。
 
 
 ――翌日
 いつもながらクラスは騒がしいが、今日は一段と騒がしい。
「イケメン!?」
「うん、見たんだってばぁ〜っ!」
「試験を満点で通過したらしいぜ!」
 男子も女子も騒いでいたが、特に女子が色めき立っていた。

「何だろ?」
 心鈴はそう思いつつ自席に着くと、黒板の文字が目に入った。
『本日転入生が来ますので、皆さん、暖かく迎え入れてあげて下さい』
 黒板の端に、小さくそう書いてある。
「ほぇー、転校生かぁ。女子がイケメンって騒いでたっけ」
 転校生=(イコール)イケメンというのは、大体お約束である。
 
 ――ガラッ
「皆さん、席に着きなさい」
 あの怖そうな強面担任と、それに続いて、制服を程好く着崩した美形の男子生徒が入ってきた。
 皆、待ってました!と言わんばかりに、目を輝かせる。
「うわぁ、うわーっ!ホントにイケメン!」
「あれは10年に一人の逸材よっ!ファンクラブ結成は決定したわね!」
 口々に女子が騒ぐ中、心鈴は唖然として声が出なかった。
「あ……あ……!」
 驚きすぎて、その後の言葉が紡ぎ出せない。

「初めまして。両親の都合でこちらに転入してきた夏波レクトです。宜しくお願いします」
 レクトと名乗った少年は、深くお辞儀をすると顔をあげ、心鈴を軽く睨みつける。
「夏波君は、編入試験を満点で合格した、歴代最高得点者です」
 先生がそう言うと、クラス一同が「お〜っ!」と騒いだ。
「噂は本当だったんだな……」
「下手したら、そこら辺のアイドルグループよりイケメンかも!」
「超絶イケメンな上に、勉強もできるなんてぇーっ!」
 女子の目は皆ハートマークになり、あの気難しい学級委員でさえ頬を紅潮させるくらいだ。

「ちょっ、何で!?あんた昨日の……っ」
 心鈴はガタッと椅子から立ち上がると、我を忘れて尋問しようとした。
 クラスの視線が一斉に心鈴の方へ注がれていく。
「おい、ちょっと黙れ!」
 レクトは急いで心鈴の席に駆け寄り、すかさず心鈴の口を塞ぐ。
「んんーっ!ふぁふぁふぃふぇひょーっ!(離してよーっ!)」
「いいから黙れ!俺が殺し屋だって事は内密にしろ。さもなければ……殺す」
 レクトは低く恐ろしい声で心鈴に耳打ちし、脅した。

「キャーッ!ここりん羨ましいぃーっ!」
「レクト様に口を塞がれた上に耳打ちなんてぇーっ!」
「なになに、ここりん知り合いなの!?」
 それを見ていた女子が騒ぎ出し、教室中は蜂の巣をつついた様な騒ぎだ。

「静かにしなさい」
 担任の先生は厳しい声で言うが、虚しく騒ぎの声にかき消されてしまった。
 

11:凛堂りんさ:2015/09/29(火) 23:04 ID:CS2

 ホームルーム後、追ってくる女子から何とか逃げたらしいレクトは、屋上で自販機のブラックコーヒーを寝っころがりながら啜っている。
 屋上には、レクト以外には誰もおらず、人影は疎らだ。
 暖かい日差しがよく当たり、とても気持ちのいい場所なのに。

「はー……何なんだ?まさか、俺が殺し屋だってバレて追っかけられた……?」
 女子に目をつけられ、あちこち女子に声をかけられるので、レクトは警戒していた。
「鈍感ね。皆あんたに惚れてんのよ」
 どこからともなく声がしたかと思うと、屋上のドアが開いて心鈴が入ってくる。
「んなわきゃねーだろ。アホらし」
「乙女ゴコロの分からないヤツ……」
 心鈴は溜息混じりに呆れながらボソッと呟いた。

「……で?なんだよ。俺に何か用か?」
 レクトは、心鈴を怪しむように睨む。
「なんだよ、じゃないよ。何で昨日の殺し屋が私の学校に来たわけ?」
 心鈴も負けじと訝しげな表情で睨み返す。
「……別に?俺も一応15歳だし?高校に転入するのは普通だろ」
「うそ、私を偵察するためでしょ?」
 眉をキッと釣り上げ、顔を顰めている。
「……さすがにバカでもこれは分かったか」
 レクトは飲み終わったコーヒーの缶を握りつぶすと投げて、何mもの先のゴミ箱に命中させた。
 缶はカラカラッと音をたてて、ゴミ箱の中へ勢いよく入っていく。

「ちなみに、顔は素顔じゃねーし、名前も偽名。戸籍を偽って入ってきたんだよ」
「女の子にモテたいからって、イケメンに変装したのね!?」
「いや、鬘かぶって多少化粧を施しただけだから、それ程変わんねーよ」
 レクトは欠伸をしながら起き上がった。

12:凛堂りんさ:2015/10/01(木) 21:01 ID:CS2

 ――5時限目。

 5時限目からレクトの席は、心鈴のすぐ隣になった。
 本当はは後ろの方だったが、レクトが心鈴に接近するため、視力が悪いと偽って前へ移動させてもらった。
 でも、右左6.0という、マサイ族もビックリな視力の持ち主なのだが。
 
「あー、マジつまんねー……」
 黒板にはxやらyやらの数字と共に、長い数式やグラフが白色の文字でズラッと書かれている。
 先生はその後も、まだ絶えることなく白チョークを走らせていく。
 さらに、普通の中学生なら目が回るほどの速さで解説している。
 
 だが、とっくの昔に中学生レベルの勉強を理解しているレクトにとっては、退屈なものであった。
 さらに、ノートも取らずに、余裕の態度で居眠りを始めたのだ。
「なによぅ、ちょっと頭がいいからって……!」
 先程の小テストで自分が低得点をとったのに対し、レクトが余裕で満点をとっていたのが気に食わなかった。
 まぁ、ただ単に自分がバカなだけであるが……


 しかし、それでも心鈴は、レクトが頭の回転に長けている事を感じた。
 なぜなら、彼は難関過ぎてクリア不可能と謳われてきた知恵の輪を、開始10秒で軽々とやってのけてみせた。
 それだけじゃない。
 10×10マスのルービックキューブを高速で揃えたり、ボードゲーム部部長にチェスで圧勝したり……

 ――こいつ、只者じゃない――!
 
 殺し屋ということだから、一応頭はいいとは思ったものの、まさかここまでとは……
 心鈴はそう驚愕した。

13:凛堂りんさ:2015/10/03(土) 16:49 ID:CS2

 ――下校時間。
 部活に燃える者達は走って部室に向かい、そうでない者達はのんびり帰っていく。
 夏波レクトと美澄心鈴は後者である。
 殺人事件の安全考慮によって部活を中止されている部が多いため、帰宅生徒が多い。
 校門から、次々と生徒たちが吐き出されていく。

「ねぇ、ちょっと!」
 ポケットに手を突っ込み、下を向きながら無表情で歩くレクトを心鈴が引き止めた。
「……何だよ」
 レクトは機嫌を悪くしながらも立ち止まり、心鈴の方を振り返る。
「何だよ、じゃないよ!いつ私をまた襲うの?不安でたまらないんだけれど」
 前の早撃ちは偶然だと、心鈴も自惚れずに自覚していた。
 あの勝利の快感も束の間。
 今度またレクトにライフルで狙撃でもされたらたまったもんじゃない。

「いつだろうな。そんなことを教える殺し屋がいると思うか?」
「殺し屋の存在自体を疑うわ」
 心鈴はキッと鋭い目つきでレクトを睨み、吐き捨てるように言った。
「罪を犯すお前が悪い。あの時強盗を殺していなけりゃ、そいつの親族からの恨みも買わなくて済んだだろうに。俺は罪を犯した者を殺し、罪を精算する殺し屋だ。正義か悪か、解釈はお前次第だが」
 下を向いて歩いていたレクトは、空を仰ぎながら意味深長に言う。
「……貴方、罪を犯した者を殺すの?」
「そう言っているだろう。無罪のヤツなんか殺さねーよ」
 レクトは溜息混じりに呆れて言う。

「強盗だって、罪を犯したよね?殺して何が悪いの?」
 そして、無表情だった冷静なレクトが、ゾッとして、動揺している。
 なぜなら、心鈴の表情が恐ろしくなったからだ。

 目つきは先程よりも鋭い、というより冷酷な、レクトを蔑むような視線。
 低く、脅すような声。
 周りをも凍らせるような、物凄い強い殺気――

 今、周りの状況がシャットアウトされ、時間が止まっているような錯覚に襲われる。
 
 
 ――殺して何が悪いの……?

 教室内では天真爛漫に振舞っていた彼女が、そんな表情、そんな声でこんな事を口にしたのだ。
 とても女子高生が言う言葉とは思えない、殺人鬼が言いそうな言葉。

 取り乱していたレクトは数秒後ハッと我に返り、落ち着きを取り戻した。
「殺す価値も無い罪だろう?人殺しならともかく、犠牲者のいない強盗だ。殺す命に値するものがない」
「私が殺さなかったら、犠牲者が出ていたかもしれないよ?」
「ふん、その可能性は薄いな。犯人もこれ以上罪を背負いたくないだろう。金を持ったらさっさと引き上げたはずだ」
 レクトはまだ残る動揺を隠しながら、冷静を装った。

「ふーん。じゃあレクトは殺し屋の任務中に殺されそうになったらどうするの?武器を持ったまま追い詰められたら?殺す?殺さない?」
 心鈴は先程の殺気は抑えたものの、まだ目つきが怖い。
「それは…………」
 
 ――それは、殺すに決まっているだろう?

 続きが喉まででかかっているのに、言葉が紡ぎ出せない。
 この状況は、心鈴が巻き込まれた強盗の時の状況。
 誰だって武器を持ったまま殺されそうになったら、自分も相手を殺そうとするだろう。
 それは、例えレクトでも同じこと。
 レクトだってこの状況におかされれば、心鈴と同じ行動をとるはずだ。


「そう。それでも貴方は人を殺さずに、自分を殺すのね。自分の身を、人の身を守るための殺害も罪だ言うの?」
 核心をつかれたレクトは、黙りこくったまま。
「全ての殺人が罪とは限らないよ。時には正義となる殺人もあるはず」
「うるさい!強盗の命がお前に奪われた。いかなる理由でも、命を奪ったからには、お前も同じ代償を払え」
 レクトは心鈴に指差すと、背を向けてさっさと行ってしまった。

 
 

 
 

14:凛堂りんさ:2015/10/09(金) 20:48 ID:CS2

「ったく、何なんだあいつは!」
 レクトはイライラしながら、早足で歩いている。
 ポケットに手を突っ込み、あからさまに不機嫌な顔をして。
 下を向いて歩けば、どんなに歩いてもアスファルトの地面だけが流れていく。


 ――全ての殺人が罪とは限らないよ。時には正義となる殺人もあるはず

「ふん、殺人はどんな理由であれ、れっきとした罪だ。目には目を、歯には歯を。殺人には殺人だ」

 俺は絶対に間違ってなどいない。
 あいつがいくら正当防衛とはいえ、人殺しは人殺しだ。
 俺は罪を精算し、裁く者。
 あいつを殺していいはず、あいつは必ず俺が処罰する!

 レクトはそう、心に強く誓ったのだった。


 ――一方、心鈴の様子は……

「ふぁああー!もうっ、何なのよあいつ!」
 こちらもこちらで、憤りを隠せていないようだ。

 帰路につき、自宅へ帰宅すると、すぐにカバンを投げ捨てベッドへダイブ。
 そして枕をギュッと強く握り締め、何度もベッドに打ち付ける。
「何よナニよなによーっ!私が悪いの!?強盗する方が悪いんじゃないっ!あーもー!」
 心鈴も自分は悪くないと、自身の主張を通そうとしているようだ。

 何度か枕を打ち付けると、息を切らして要約落ち着く。
「はぁ、はぁ…………私、殺されるのかな……?」
 枕を握ったまま、ぼーっと天井を仰ぎながら呟いた。

15:凛堂りんさ:2015/10/11(日) 18:18 ID:CS2

 ――翌日。
「ふぁーっ、レクトに殺されないか警戒してよく眠れなかったぁ」
 心鈴は昨晩、いつ殺しに来るか分からないレクトを警戒して、よく眠れなかったのだ。
 目の下にクマができ、睡眠不足がひと目でわかる状態だ。
 あまりよく眠れなかったため、いつもより早く起きてしまった。

「……6時……はぁ、もう支度しよ……」
 あくびをし、水分を含んだ目を拭うと、パジャマを着替え始めた。
 ボタンに手をかけ、全て外すと制服のYシャツを取る。
 まだ母親以外起きておらず、静寂な雰囲気が漂う。
 次の瞬間――

 カチャッ
「へっ……!?何の音!?」
 窓の外からカチャリという微かな音がし、心鈴は驚く。
 普段なら気には留めないが、狙われている以上微かな音にも敏感になってしまう。
「まさか……っ、拳銃……とかとかっ!?」
「ご名答。はぁ、まさかこの時間に起きているとはな。予想外だ」
 聴き慣れた声がしたかと思うと、カーテンがシャッと開き、見慣れた姿が現れた。
 黒いパーカーで、長いライフルを持ったあの少年……夏波レクト。

「あ……あ……っ!あんた……」
「あ……悪ぃ」
 心鈴は驚愕のあまり言葉が紡げず、レクトはレクトで少し動揺する。
 なぜなら、心鈴はパジャマを脱ぎ、Yシャツを握ったままで、上は下着のままであったからだ!
「あ……!って……変態!ぎゃああああっ!」
 驚愕していた心鈴も数秒後、要約自分の姿に気づいて叫んだ。
 心鈴はレクトがライフルを持っている事より、着替えを覗かれた事で悲鳴をあげる。
「悪ぃ、そんなつもりじゃ……つーか誰がてめーの着替えなんか覗くかよ!つーか騒ぐな!」
「嘘よ!殺しに来たとか口実作ってホントは覗きに来たんだぁ、そんなつもりじゃないなら狙撃しないでよ、変態ーっ!」
 心鈴はYシャツで下着を隠しながらぎゃあぎゃあ喚き始める。
「俺はカーテン越しからでもお前を狙えるんだよ!この時間なら寝てると思ったんだよ!お前に感づかれたから、仕方なく狙撃から近距離射撃に変更しようと思ったらお前が……その……」

 冷静沈着なレクトは、こんな事になるなんて、と調子が思いっきり狂った。
 

16:凛堂りんさ:2015/10/12(月) 14:28 ID:CS2

「んもうー、何の騒ぎ?」
 当然、心鈴が悲鳴をあげたため、当然起きていた心鈴の母は不審に思う。
 ギシッギシッと階段が軋む音が段々大きくなってくる。

「やべぇ、殺害中止だ!俺は退散する。色々誤解されると厄介だ」
 若い男女2人が早朝に、しかも女性の方は下着姿、となると誤解を招かれるのは当然だ。
 レクトは素早くライフルをしまうと、窓から勢いよく飛んで行ってしまった。
 心鈴は窓の外を見るも、もうレクトの姿は無い。

「心鈴ー、悲鳴をあげていたけれど、どうかしたの?」
 母が訝しげな表情でドアを開ける。
「あ、うん、ちょっと……ご、ゴキブリが出て……逃げられちゃったぁ。はははっ」
「そう……」
 母は心鈴のぎこちない態度に、納得いかないという顔だったが、さっさと引き上げた。


 一方、レクトはまるで映画のように、屋根を伝って走っている。
 大きいライフルケースを抱えながらも、足音立てずに、縫うように走っていく。
「はぁ、俺としたことが……やっぱこんな時間に殺害するのは迂闊だったな……」
 先程の心鈴の姿が、脳内で鮮明に思い出される。
「って俺は変態か!すぐに忘れろ、すぐに!」
 人一倍記憶力が良い分、なかなか忘れることが出来ない。
 レクトは普段、男子にエロ本などを見せられたりしても平然としているのだが、今回に限ってはかなり動揺している。
「別に、俺はそういうことには興味ねーのに……」
 彼女だけは、調子を狂わされるのだった。

17:凛堂りんさ:2015/10/16(金) 22:45 ID:CS2

 ――数時間後。
 結局殺されずにすんだものの、なんともいえない複雑な気持ちになる。
 恥ずかしい、とはまた違う……でもレクトと顔を合わせるのが嫌な感じで……
 レクトとは席が隣で近いため、気まずくなりそうだ。
「もーっ、私レクトどどんな顔して会えばいいの!?」
 心鈴はモヤモヤした気分で教室のドアを開けるのだった。

「レクト君ーっ!」
「おっはよー!レクト様ぁ〜」
 引き戸をガラッと開けて最初に目に飛び込んできた光景……
「げっ!?何よコレッ」
 レクトの席の直径約5m程に、クラス全員の女子が群がっていたのだ。
 心鈴は席にも座れず、周りの男子と同じく唖然としている。

「いいから、俺に構うな!鬱陶しい……」
 レクトはあからさまに迷惑そうに、怪訝な顔をしているが、女子はお構いなし。
「レクト君、クールで素敵!」
「生徒会長が白馬の王子様なら、レクト君はツンデレ俺様ってカンジ!」
「もう、生徒会長よりレクト様の時代よーっ!」

 女子がぎゃあぎゃあ騒いでいる生徒会長とは、露塚冬季(つゆつか ふゆき)で、レクトとは対照的なフェミニストなイケメン。
 高校生ながら父親の探偵事務所で助手を務めているという、いかにもアニメチックな人だ。
 成績優秀で常にトップだったが、先日のテストにてレクトに順位を越されてしまい、生徒会長の座が危うくなっている。
 

18:凛堂りんさ:2015/10/16(金) 23:04 ID:CS2

 そんな中、レクトはドアの前につっ立っている心鈴の存在に気づいたようで、ぷいっと心鈴から目を背けた。
 心なしか、少し頬が桜色に色づいているように見える。

 心鈴はおずおずと女子を押し退けながら自席までたどり着いた。
 が、勿論座れるような状況ではない。
「あの……すみませ……ヴッ!」
 女子達の鞄やら荷物に押しつぶされ、また自席から遠ざかってしまった。
 それを見るに見兼ねたレクトは、呆れたように溜息をつき、
「座れない奴がいて迷惑がっている。いい加減自席に着いたらどうだ?」
 と、低く脅すような声で女子を睨みつけながら言い放った。

「はいっ、レクト様のご命令なら!」
 女子は嫌気が差すどころか、寧ろ嬉しそうに自席へ戻っていく。
「あ……ありがとう……」
 心鈴は去っていく女子を見ながら、消え入りそうな小声で呟くように言った。
「別に。俺も非常に迷惑だ」
 女子に埋もれて見えなかったが、レクトは読書をしていたようだった。
 茶色い革表紙に金色の文字が印刷されていて、赤い紐のしおりがついている。
 金色の文字で印字されていたのは『Hamlet』。
 あのシェイクスピアのハムレットらしい。

「ハ……ハム……?」
 心鈴は題名が読めず、変な顔をした。
 横からレクトの本の中身を覗き込む。
「げっ、英文!?」
 ズラッと細かい英字が横に並び、遠くから見たらそのページが黒く見えるくらい字がギッシリ。
「あぁ。6歳の時に始めて読んだ。暇つぶしに読んでいた」
 レクトは一分もしない内に次のページをめくった。

 

19:凛堂りんさ:2015/10/17(土) 14:54 ID:CS2

「レクト君ってー、ミステリアスで素敵!」
「うんうん。それもわざとっぽくなくて、自然というか、ミステリアスでこそレクト君みたいなっ!」
 周りの女子は追い出された後もなお、うっとりとレクトを見つめている。
 それもそのはず、レクトは超絶イケメンな顔。
 本人が意識しているかは分からないが、顔を隠さずに歩けばモデルや俳優のスカウトは間違いなく来る。
 青い髪で、右目を前髪で隠している、所謂メカクレという奇妙な容姿だ。

「全く、こんなやつのどこがいいの?まぁ、ミステリアスというのは否定しないけれど」
 心鈴は頬杖をつきながら、読書を続けるレクトを横目で見た。
 女子達が言うように、彼には謎が多い。
 殺し屋と自ら名乗り、殺してやると言ってきたり……
 全く、訳の分からない人だ。


 時は過ぎ、放課後。
「はぁ。まだあれから4日かぁ……」
 部長が殺人事件考慮のため、部活を休止すると言ってから4日が過ぎていた。
 部長は犯人逮捕、もしくは2週間経過するまで部活動は再開しないと言っていたはずだ。

 心鈴は鞄を持つと、正門を出て行く。
 そして周りを警戒しながら、挙動不審な様子で帰路に着いた。

「ただいまー!」
「あら、おかえりなさい」
 キッチンでは母がなにやらグツグツと煮込んでいる。
 心鈴は自宅に着くと、すぐに2階へ駆け上がった。
「さーて、録画したアニメでも見ようっと!」
 自室にある、小さい自分専用のテレビのリモコンに手を伸ばし、ピッと電源をつける。

「おい、殺すぞ」
 誰もいないはずの室内なのに、背後から聞き慣れた低い声がした。
「この声……レクト!?」
「あぁ。また勝手に入ったらお前怒るだろ」
 レクトは心鈴が着替えていないのを確認すると、シャッとカーテンを開けた。

20:凛堂りんさ:2015/10/17(土) 15:09 ID:CS2

「ぎゃああああ!出たぁっ!また私を殺しに来たの!?」
「ふん、知らない間に狙撃されて死ぬよりマシだろう?それに、お前の相棒銃で殺してやるんだからな」
 心鈴は窓際に立ってコンバットマグナムを構えるレクトから遠ざかり、怯えている。
「今度こそ、お前を…………」
 レクトが拳銃の引き金を引こうとした、次の瞬間――

「きゃあああ――っ!やめて!」
「!」
 家中に甲高い悲痛な叫びが響き渡る。
「な、ナニなに何っ!?お母さんの声!」
「あ、おい待てっ!」
 心鈴は半分、否、完全に自分が殺されかけているという状況を忘れ、部屋を出て行く。
 ダダダダダッと勢いよく階段を駆け下りる……というより途中から飛び降りるとリビングで信じられない光景が心鈴の瞳に焼き付けられた。

「おかあ…………さん?」
 心鈴はその光景を見るなり、唖然として立ち尽くしたまま。
 レクトも後から駆けつけ、その光景に驚愕した。

 キッチン中に紅の液体が広がっていき、その中央に母が横たわっていた。
 母の身体の傍には、果物用ナイフが真っ赤になって置いてある。
「お母さん、お母さんっ!?」
 心鈴が駆け寄り、レクトは腕をとって脈を診る。
「ダメだ、脈が無い」
「そんな……っ!いくら殺し屋だからって、レクトあなた……っ!」
「勘違いするな。俺じゃない」
 レクトはキッと視線を玄関先に移すと、黒い服を着た、体格の大きい男性を睨みつけた。

「やべぇ、見つかっちまった!」
 男はサングラスにマスクという、典型的な空き巣の格好だ。
 空き巣は急いで宝石類が入った袋を引きずりながら逃げようとする。
「ここで金目のモンを置いて逃げるわけには……っ!」
 
「どうする?追いかけるか」
 いくつもの遺体を見てきたレクトは、冷静だ。

「許せない、許せない――……殺す、殺す、殺す、殺す、殺してやるんだからあぁっ!」 
「な…………っ!」
 心鈴はこれ以上ない、というくらい物凄い大きい声で、落ちていた果物ナイフを握り締めている。
 そこからは、レクトでさえ動揺してしまうほど、とてつもなく強い殺気が感じられた。

 ――殺して何が悪いの――……?


「あの時の……!」
 以前も心鈴から物凄い殺気を感じられたが、その時以上に強い殺気が心鈴から出ている。
「絶対に、殺してやるううぅっ!」

 心鈴は泣き叫びながら、玄関先の強盗に突進していった。

21:凛堂りんさ:2015/10/17(土) 15:25 ID:CS2

 強盗は、心鈴が果物ナイフを握り締め、鬼のような形相をした心鈴に怯える。
「ひいいいぃっ!」
 さすがに強盗も、宝石類の入った重い袋を捨て、逃げようとドアに手を伸ばした……が。
 ガンッガシャン
 ――と、心鈴はドアに花瓶を投げつけ、強盗の行き先を阻む。
「あなた……母を殺した代償……払ってもらうわ」
「やめてくれ!許してくれえぇっ!」
 強盗は涙目になり、目の前に果物ナイフを突きつけられる。

「貴方が母を殺すために使った凶器……これで貴方も死ねばいい……」
 冷淡、冷酷、残酷、残忍、残虐――……
 その言葉を全て合わせたような、それ以上の殺気。
「死ね」
「うっ…………っ!」
 男はその殺気に怯え、抵抗する間もなく心臓を刺された。
 黒い服に、赤い染みがじわっと広がっていく――

「……お前……」
 レクトはその光景を、止めなかった……止めようとしなかった。
 あの冷酷な瞳で相手を怯ませ、さらに大声を出さず、即死させるというテクニック。
 現に、あの強盗犯は抵抗しなかった。

「この死体どうしよう……」
「……とりあえず、指紋を拭いておけ」
 レクトは落ち着きを取り戻し、溜息をつく。
 先程の殺気は薄まり、心鈴は果物ナイフの柄をハンカチで拭き取った。
 
 自分の指紋を消滅させるために――……

22:凛堂りんさ:2015/10/17(土) 16:09 ID:CS2

ここで想像して頂きやすいよう、キャラクターの容姿を紹介します^^
といっても、私が勝手に想像したのですが^^;

夏波レクト
・髪は濃い青
・身長は172cm
・メカクレ(右目が隠れている)
・殺し屋などの仕事をする際は黒いパーカー、左目にモノクルを装着

美澄 心鈴
・黒髪で腰まである
・身長は160cm
・実は結構胸がある...
・本気を出す時は髪を縛り、ポニーテールにする
・体育など運動する時はツインテールにする。

露塚 冬樹
・ブロンド(金髪)
・身長170cm レクトよりやや低め

NEW! 紅戸 楠香(くど くすか) 毒をひっくり返し、くど。薬でくすか。
レクトの協力者で、毒を提供する。あだ名は教授
身長は低く、子供扱いされるが実は高校3年、心鈴やレクトの先輩。
・白衣を着用しているが、袖が長すぎて手が出ていない
・髪色は赤で、ボブ。アホ毛がある。
・身長140cm
・本人も気にしているが、ロリ体型

ちなみにこの4人の誕生日は

・夏波レクト 6/22   夏至
・美澄心鈴  3/21   春分
・紅戸楠香  9/23   秋分
・露塚冬雪  12/22  冬至

となっています。seasons(シーズンズ)。
楠香や冬樹はまだ出ていませんが、後ほど重要キャラとなってきます。
シーズンズ=レギュラーメンバーです

23:凛堂りんさ:2015/10/18(日) 20:34 ID:CS2

「どうしよう……人、殺しちゃったよ……私……」
 赤く染まった果物ナイフの柄を、震える手で拭き取った。
「私……恨みや憎しみに勝てなかった。衝動的に殺してた……」
「これで分かったろう?殺し屋の仕事が。殺し屋とは、人の恨みや憎しみを代行して晴らすことだ。今のお前みたくな」
 レクトは冷めた視線で、腕を組んで立ったまま心鈴を見据える。

「とりあえず、この状況は警察が来たらまずい。死体を破棄するんだ」
「で……でもどうやって……!?」
 レクトは強盗のポケットの中を軽く探ると、財布を取り出した。
「まず身元を確認する。幸いポケットに財布があった。運転免許証もな」
 レクトは財布から一枚の免許証を抜き取ると、心鈴に渡す。

「白城莉玖……48歳。住所はここから離れた青森県」
「な……おい、今なんて言った!?白城莉玖だと!?」
 レクトは免許証を心鈴からひったくる様に奪うと、まじまじと見つめる。
「なんてことだ……こいつは、お前の殺しを依頼した張本人。つまり、お前が幼少期殺めた強盗の弟だ!」
「!」
 レクトは確認のため、ニット帽とマスク、サングラスを外す。
 案の定、免許証と同じ顔の男だった。
「やはり、あの時依頼してきたヤツだ……しかし何故宝石を?さっさと殺して逃げればいいものを……実に理解不能、非合理的な殺し方だ」
「たまたま強盗に入ったとこが私の家……とか?」
 心鈴はレクトの持つ免許証を覗き込むようにして見た。

「あいつは、確かにお前の顔を見てギョッとしていたな。兄弟もろともお前に殺されるなんて、皮肉なもんだ」
 レクトはため息をつきながら、慣れた手つきで死体を処理していく。

「私……人として……ましてや、刑事の娘としてとんでもないことを……」
 心鈴は拭き終わった果物ナイフを床に置き、俯く。
「俺に依頼してくる奴らも、みんな今のお前みたいな感情を抱いている者だ。最も、お前は自分の手で殺めたがな」
 心鈴が顔を上げた時にはもう、床に一滴の血も残っていなかった。

24:凛堂りんさ:2015/10/18(日) 20:50 ID:CS2

 レクトは、死体をまるで魚でも裁くかのように解剖している。
 手際よく、腸や心臓などを取り出してはバラバラに切り刻む。
 赤く染まったモノが、次々と処理されていく。
 心鈴は直視できずに、死体から目を背けた。

 あの人を殺したときに感じる……ビビッと来た感じ……
 前にレクトと早撃ち対決したときに感じたのと同じ……

 カイカン?カイラク?

 正体不明の感情は、私自身を殺意に飲み込んでいくようで、とても怖い。
 いつしか、私は殺人鬼になってしまいそうで――

「レクト……私、殺し屋になろっかなぁ。報酬弾みそうだし」
 軽々しく、まるでサッカー部に入ろっかなぁ、みたいなノリで言った。
「は……はぁ!?冗談だろ!?」
 心鈴は力なく、諦めたように微笑えむ。
「私みたいに人を恨んでいるのに、その人を殺せないなんて……それに、悪いことだとは知っていたけど、殺人がこんなにも楽しいなんて……恨んでいる相手を殺すって、こんなに楽しいことなんて……」
 
 あぁ、ダメだ――
 イケナイ欲望が、私の理性を蝕んでいく――
 殺人なんてイケナイ、でも罪を犯した者を裁くのは当然のこと……

 普通の日常生活を送って、この2回の殺人を永遠に私の思い出の傷の一つにするのか。
 それとも殺人を日常茶飯事にして、この2回の殺人も私の仕事の一つにするのか。

「……お前の殺し方、尋常じゃないな」
 黙りこくっていたレクトが発した最初の一言。
「見たところ、殺人慣れしている殺人鬼のようだ。常人はあれほどスムーズに殺せない」
「バカな……私殺人なんて2回しか――」

 あ、そっか……

 幼少期、人にナイフを刺した感覚――

「殺すのに夢中になって意識していなかったけど、幼少期に刺した感覚を思い出して……」
「お前、なろうと思えば殺し屋になれるかもな。……だが。あまりお勧めはしない」
 最後の言葉を強調し、心鈴の方を冷淡な視線で見据えた。

 レクトは解体し終わった死体を、黒い袋に詰めて玄関から出て行った。


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