ずいぶん馬鹿らしい死顔を望んだものだ
カタブツの少尉も、妻子持ちの忍者も、もうちょっと人生に悩んだ顔をしていた。熊は始終ちゃらんぽらんしていたけれど、やっぱりわたしの見えないところで死んでいった。哀しみより、やつの真面目な顔を見たかったといういやしい無念さがおおきくあった。
わたしも死を望むひとりではあるが、少尉に理由を訊いては笑い、忍者の懺悔を受けてはさんざんに貶してやった。
わたし自身が動機を語ると、仕返しとばかりに騒ぎ立てやがる。熊はずっと酒を呑み、適当に笑っていた。
たぶんささいなことがらだ。誰彼がどう死ぬだの、どう思うだの。わたしたちのあいだには一体感はなかった。それこそ情けも容赦もない、たちのわるい冗談が跋扈する空間に、皆は偶然迷い込んだのだ。
わたしはすこし考えるが、やはり笑むのは気味が悪く、神妙な面持ちで逝くことに決めた。魂の存在を信じてみると、いくらか気持ちがやわらいだ