prologue
「お姉ちゃーん!」
妹に呼ばれ、私はひかりに満ち溢れている野原を走る。
私が走るたびに、白い、たんぽぽの綿毛が飛び散って、とてもきれいだ。
「お姉ちゃんっ!」
背景は、たんぽぽが咲き乱れる花畑から、涼しそうな森に変わっていた。
小さな私は、走るのをやめて妹を探し出す。
「緋色ー?」
私が呼びかけると、かわいらしい声が聞こえていた。
「お姉ちゃん、こっちだよー!」
振り返ると、緋色が私に向かって手を振っていた。
「緋色?どうしたの?」
私が聞くと、緋色は川の向こうを指さす。
視線を向けると、そこには白い花が咲いていた。
「わぁ!綺麗な花だね!」
近寄ろうとすると、緋色は私のスカートをつかんで薄い唇に指を当てた。
「お姉ちゃん、あれはダメだよ?」
「なんで?」
私が聞くと、緋色はただ笑って見せた。
「あれはね、桔梗っていうの」
「キキョー?」
「うん……、白い桔梗の花言葉はね……」
失くしものが見つかるとき、10年前の、奇跡の物語がよみがえる。
いい話です!
これからもぉがんばってください