さよならの願いは。

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1:レモン:2015/12/20(日) 15:39 ID:ZRo

第一章「別れ」


卒業式。

高校3年生が卒業する日。

皆、先生や後輩とお喋りしたり、自分の友人と泣きあったりして、思い思いの時間を過ごしていた。

あたしも、大好きな人と話をするために、人気がない、裏庭へ向かう。

彼に、「来て」と呼ばれていたからだ。

裏庭に、彼はいた。

―瞬……。

「瞬」

名前を呼ぶと、彼はゆっくりと顔を上げた。

目が、合う。

しばらく沈黙を貫くと、彼は震えている声を出した。

「ユリ……」

ユリ。

ユリ、と。

あたしの名前を、呼んで。

「ユリ……、俺たち、別れよう」

あたしは、一瞬頭の中が真っ白になった。

次に、えと思った。何で?と思った。

「どぉして……?」

あたしの声も震えた。

震えが止まらなかった。

「俺な、アメリカに行くことになったんだ」

アメリカ……?

「何で、行くの?どういう理由で……?」

「サッカー推薦、だよ」

サッカー。

確かに、彼はサッカー部だった。

部長だった。

上手だった。

でも……それが……それで……。

「それで、あたしと別れるの?」

彼は、一瞬かすかに目を伏せた。

でも、それは本当に一瞬の事で。

「あぁ」

と。

彼は、認めた。

自分がしようとしていることを。

あたしと別れる理由を。

「あぁ」という言葉で。

「本当に……ごめん。本当に、悪い、悪かった。
 ユリと一緒にいてすごく楽しい。楽しかったよ。
 毎日、ずっと、ずっとずっと幸せだった。
 俺、ユリの事、大好きで……本当に、愛し……っ」

「言わないで!!」

あたしは叫んだ。

彼の話を遮った。

そうじゃないと、泣いてしまいそうだったから。

笑顔で……彼の背中を押してあげられないと思ったから。

「言わないで……」

もう一度言った。

「ユリ……やっぱり俺、ユリと離れたくない。
 ユリとずっと一緒に居たい……居たかった!」

彼は、あたしに抱き着いてきた。

あたしは、素直に嬉しかった。

でも、だけど……、だけど!!

あたしは、彼を引きはがした。

そうして、ようやく口を開く。

「あたしは、瞬と別れたいよ……」

という。

最低最悪な言葉で別れを告げる。

最低最悪な女。

そんな自分を、今、作り上げなければいけない。

本当に大好きな人との別れなら、悲しくない別れなんてない。

傷つかない別れなんてない。

瞬に「さよなら」を告げるためにも、あたしは瞬を傷つけるしかない。

「瞬と、一緒にいていいことなんて一つもなかった。
 全然楽しくなんてなかった」

最低……最低だ。

「……瞬はアメリカで頑張って。
 そして、あたしの事も忘れて。
 あたしも、瞬を……忘れるから」

「だからあたしは、瞬と別れたい」

言った。言い切った、言い切った!

最低な女め……。

瞬は、泣きそうな顔であたしを見ていた。

あたしも、瞬を見た。

そのあとで、瞬に言われた言葉が、胸に、深く、深く突き刺さった。

「お前、最低……」

分かってるよ、分かっているけれども、こうするしかない。

瞬にはちゃんと自分の夢をかなえて、幸せになってほしいから。

「さよなら」

あたしと瞬は、同時にそう告げると、真逆の方向に向かって歩き出した。

あたしは、泣いた。

ただ泣いた。

泣き続けた。

さよなら、最愛の人……。

それから、あたしは静かに携帯を取りだし、彼のアドレスを消した―……。

2:レモン:2015/12/24(木) 22:23 ID:ZRo

第二章「誘い」


あれから、半年がたった。

当然だけど、あれから瞬とは一切連絡は取り合っていない。

今日は大学もバイトもないし、何もやることがない。

漫画でも読もうと本棚に向かおうとする。

すると、あたしの携帯が鳴った。

大学で知り合った莉子からだった。

「……もしもし、莉子?」

『ユリちゃんー?今ぁ、お暇ぁ?』

莉子特有のとろい口調に思わず笑いそうになる。

「うん。暇だよー。で、どーしたの?」

『あのねぇ、みんなで合コンやろーかぁってゆー話が出てるんだけどぉ、ユリちゃん来ないぃ?』

あたしは、黙った。

瞬とはもう別れていて、縁がない。

あれから彼氏も作っていないし、この機会に新しい恋に目覚めるのもいいのかもしれないけれど……。

「んー……。あたしはいいや」

悩んだ末、あたしは断った。

本当に大好きな人と別れたのだ。

ちょっとやそっとの事で忘れられるはずがない。

『えー!?何でぇ?行こうよぉ!』

断っても、莉子はしつこく誘ってくる。

「うーん、でもなぁ……」

『ユリちゃん行こうよ!ねっ、行こ!?絶対楽しいって!』

……莉子、しつこいな。

そう思いながらもこんなに頼まれているのに断るわけにもいかず、あたしは

「いいよ」

と返した。

「で、いつなの?」

『今日!』

「は!?」

今日!?

あたしは声にならない声を上げた。

「い、いきなり過ぎない?」

『そーお?そんなことないと思うけどぉ」

マイペースな莉子にとってはそうかもしれないけど、あたしにとっては違うんだよ!

そう言ってやりたかったが、それはグッと飲み込んだ。

そのあと、莉子に場所と集合時間を聞いて、あたしは人生初の合コンに行くこととなった。


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