なんであたしの恋は筋書き通りにいかないの?
あたし、真城優には幼馴染がいる。名前は小暮碧斗。幼稚園から高校二年生に至る現在までずっと一緒。
あたしはずっと碧斗のことが好きで、碧斗も絶対あたしのことを好きだと思ってた。だって、普通そうじゃない? 誰もが二人は結ばれると思うじゃない?
だから、ずっと待ってた。碧斗があたしに好きって言ってくれるのを。いつも一緒なんだよ? 10年以上ずっと。
いつだってあたしは碧斗の特別で、碧斗はあたしの特別だった。
女の子の中で碧斗の家に行けるのはあたしだけだったし、碧斗が下の名前で呼ぶ女の子もあたしだけだった。
勘違いしても、しょうがないよね……?
勘違いしてる系ちょいウザヒロインと正統派イケメン幼馴染の話です
亀更新になると思いますが、感想等頂けると嬉しいです!
学期末のテストが近づいてきたので、成績のいい碧斗に勉強を教えてもらいに碧斗の部屋に来ていたあたし。これは中学の頃から続く恒例行事だ。
碧斗の指導でようやく問題が解けるようになって、いい時間になったから帰ろうとした矢先。碧斗の口から爆弾発言が飛び出した。
「あのさ、優。俺、彼女できたから」
「へー……って、えぇ!? 今なんて!? 彼女!?」
「うん、彼女」
ちょっと待って、どういうこと!? あたしは碧斗の部屋から出ようとしていた足を引き返す。冗談だよね!? それとも悪い夢!?
「なんで!? 初耳なんだけど! いつから付き合ってるの!? ていうか彼女って誰!?」
物凄い勢いであたしは碧斗に迫った。
「うん、付き合い始めたのは昨日。告白されたんだ。隣のクラスの高梨さんってわかる?」
「えっ……、高梨さんってあのめちゃくちゃ美少女の!? 学年中のアイドルじゃん!」
「な、俺も正直驚いてるんだ。あんな子が俺なんかにって」
高梨日和。この学校なら誰もが知ってる美少女。肩にかかるくらいの黒髪に白い肌、大きな目に桜色の頬。芸能人レベルのルックスで、ファンは数えきれないくらいいる。
でも、碧斗だって負けないくらい人気者だ。『俺なんか』なんて自分を卑下してるけど、バレンタインには両手に抱えきれないくらいのチョコをもらってたし。いつも隣にいて、下の名前で呼ば
れてるあたしは女子から恨まれたことなんて数えきれない。でも、そんなポジションを誇らしく思っていたりして。
「俺なんかって……。ていうか、彼女できたのに部屋で二人きりで勉強会なんてしていいものなの?」
「優とはもともと約束してただろ。それにお前、俺がいないとテスト壊滅的じゃん。今更何かあるような間柄でもないしな」
「そうなんだ……。あはは! 良かったじゃん! 碧斗モテるのに女っ気ないしさー、あたしずっと心配してたんだよ? おめでとう! 今日はありがとね! じゃあまたね」
無理に笑って、碧斗の部屋を後にした。笑ってないと、涙がこぼれそうだった。
考えてみれば、あたしって大バカ者だ。根拠もなく碧斗もあたしを好きだと勘違いして、碧斗が言ってくれるのをずっと待ってた。自分から行動なんて何一つしなかった。
そんなあたしを、碧斗が好きになってくれるはずない。
碧斗は優しい。さっきだって、『優とはもともと約束してたから』なんて。できたばっかりの可愛い彼女がいたら、あたしとの約束なんて断ってデートをしてもいいはずだ。
だけど碧斗は絶対にそれをしない。
あたしはずっと甘えてたんだ。碧斗がモテるのもわかってた。なのに自分から行動なんてしなかった。碧斗が誰かのものになるなんて、今まで考えもしなかった。
涙があとからあとから溢れ出た。